以下、本発明を実施するための形態の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係る不整地走行車両は、軟弱地、起伏地、傾斜地、岩や倒木などが存在する不整地を移動するのに使用する走行車両に適用することができる。特に、本発明に係る不整地走行車両は、森林にて作業を行う林業用の走行車両に好適であり、また、レジャー用やモータースポーツ用の走行車両として適用することも可能である。
図1〜3、図8に示すように、本実施形態に例示する不整地走行車両1は、前後方向に延びる車体フレーム12と、車体フレーム12の後部側に配置された鞍乗り式の着座部13と、車体フレーム12の下方に配置された単一のクローラ部20と、クローラ部20の左右に所定間隔をあけて配置された左右の操舵輪11L,11Rと、車体フレーム12の前側上部に配置された操舵部であるハンドル40と、ハンドル40を左右の操舵輪11L,11Rに連係するステアリング機構50、などを備えている。
図1〜2、図4〜8に示すように、車体フレーム12は、丸パイプや角パイプおよびプレートなどの複数の鋼材を溶接などで結合することで構成されている。車体フレーム12には、左右の操舵輪11L,11Rを上下動可能に支持する左右の平行リンク機構66L,66Rと、左右の操舵輪11L,11Rの独立した上下動を許容する左右の緩衝機構である左右のダンパ69L,69Rと、左右の操舵輪11L,11Rを昇降駆動する左右の電動シリンダ67L,67Rと、CPUやEEPROMなどを備えた制御部80と、ダンパ69L,69Rおよび電動シリンダ67L,67Rを覆うフロントカバー14と、着座部13の下方においてクローラ部20の左右両側部を覆うサイドカバー15、などが組み付けられている。そして、左右の平行リンク機構66L,66Rと左右のダンパ69L,69Rと左右の電動シリンダ67L,67Rなどにより、左右の操舵輪11L,11Rを前側下方の下降位置と後側上方の上昇位置とにわたって昇降駆動する昇降機構60が構成されている。
図1、図8に示すように、着座部13は、平面視で前後方向に長い略矩形状であり、車体フレーム12における後部側の上面に、緩衝部材である複数のスプリング19を介して取り付けられている。これにより、運転者は、着座部13を跨いで臀部を着座部13の上面に乗せた姿勢で不整地走行車両1を運転することになる。着座部13の構成は種々の変更が可能であり、例えば、運転者の臀部に対応した凹凸を有する構成であってもよく、また、背もたれを有する構成であってもよい。さらに、着座部13は、緩衝部材を介さずに車体フレーム12に直に取り付けられる構成であってもよい。
図1、図8に示すように、クローラ部20は、不整地走行車両1の前後両端部にわたる前後長さを有している。クローラ部20は、車体フレーム12に支持されたトラックフレーム28と、ゴム製で無端形状のクローラベルト27と、クローラ部20の上側後端部に配置された駆動スプロケット21と、クローラ部20の上側前端部に前後方向に位置調節可能に配置されたアイドラ22と、クローラ部20の下部側においてクローラベルト27を回動案内する4つの転輪23〜26、などを備えている。
図1、図8、図13に示すように、トラックフレーム28は、その後端部において、駆動スプロケット21を駆動する原動機である電動モータ31と、駆動スプロケット21に作用してクローラ部20を制動する第1ブレーキとを支持している。トラックフレーム28は、その前端部において、トラックフレーム28に対するアイドラ22の前後位置を調節することでクローラベルト27のテンションを調節するテンション調節機構(図示せず)を支持している。トラックフレーム28は、その前後中央側において、バッテリ32とインバータ33とリレー34とが搭載されている。電動モータ31は、駆動スプロケット21にインホイール状に設置されている。電動モータ31は、バッテリ32からの電力によって駆動され、制御部80によって制御される。電動モータ31は、その駆動力で駆動スプロケット21を回転させてクローラベルト27を回動させる。なお、トラックフレーム28の前後中央側には、工具を収納する工具箱や冷却装置などを搭載するようにしてもよい。
第1ブレーキは、左右のスイッチ群45L,45Rに含まれる制動スイッチ48に電気的に操作連係されている。なお、第1ブレーキは、運転者によって足踏み操作されるフットレバーに操作連係されていてもよい。また、第1ブレーキの構成は、クローラ部20を制動することができれば種々の変更が可能である。例えば、第1ブレーキは、アイドラ22に作用してクローラ部20を制動するように構成されていてもよい。第1ブレーキには、ドラムブレーキやディスクブレーキなどを用いることができる。
図1、図8に示すように、クローラベルト27は、駆動スプロケット21とアイドラ22と各転輪23〜26とに掛け回されている。クローラベルト27の外周面には、地面へのグリップ力を高めるために複数のラグ(図示せず)が形成されている。クローラベルト27における各ラグの形状や配置パターンなどは、不整地走行車両1が走行する不整地の状況などに応じて種々の変更が可能である。
図1、図8に示すように、クローラ部20において、駆動スプロケット21は、電動モータ31とともにトラックフレーム28の後端部に支持されている。アイドラ22は、テンション調節機構を介してトラックフレーム28の前端部に支持されている。4つの転輪23〜26は、前側の第1転輪26とその後方に位置する第2転輪25との間隔が、第2転輪25とその後方に位置する第3転輪24との間隔よりも広く設定されている。また、第2転輪25と第3転輪24との間隔が、第3転輪24とその後方に位置する第4転輪23との間隔よりも広く設定されている。第1転輪26は、左右の操舵輪11L,11Rの間においてトラックフレーム28に直に取り付けられている。第2転輪25は、トラックフレーム28に揺動アーム30を介して上下動可能に取り付けられている。第3転輪24と第4転輪23は、トラックフレーム28にイコライザアーム29を介して上下動可能に取り付けられている。つまり、このクローラ部20においては、第2転輪25と第3転輪24と第4転輪23とが、不整地における起伏の変化や倒木などへの乗り上がりに応じて上下動するようになっている。これにより、不整地の起伏や倒木などに対するクローラベルト27の接触面積を極力広くすることができ、起伏や倒木などが存在する不整地での不整地走行車両1の走破性を高めることができる。
図1、図8に示すように、クローラ部20は、その前端部が左右の操舵輪11L,11Rよりも車体前方側に突出している。これにより、不整地走行車両1は、不整地の隆起部や倒木などの障害物を乗り越える場合に、左右の操舵輪11L,11Rよりも先にクローラ部20の前端部が障害物に接触し易くなっている。その結果、不整地走行車両1は、クローラ部20と障害物との間に高いグリップ力が得られて障害物を乗り越え易くなっている。つまり、不整地走行車両1の障害物に対する乗り越え性能の向上が図られている。
なお、クローラ部20の構成は、車体フレーム12の下方に配置され、不整地走行車両1の前後両端部にわたる前後長さを有する構成であれば、駆動スプロケット21、アイドラ22、4つの転輪23〜26、電動モータ31、バッテリ32、インバータ33、およびリレー34などの配置、転輪23,24,25,26の数量、転輪23,24,25,26の取り付け構成などは種々の変更が可能である。また、例えば、バッテリ32、インバータ33、およびリレー34などは、車体フレーム12に搭載されていてもよく、電動モータ31は、インホイール状ではなく、電動モータ31の出力軸がチェーンやギア等の動力伝達部材を介して駆動スプロケット21に連動連結される構成であってもよい。
さらに、クローラ部20と車体フレーム12とは、緩衝機構を介して接続されていてもよい。緩衝機構としては、オイルの粘性によって衝撃を吸収するオイルダンパ、エアダンパ、スプリングなどの弾性部材、または、これらを組み合わせた構成などを用いることができる。例えば、クローラ部20は、トラックフレーム28の前部が車体フレーム12に左右方向に延びる軸を介して回動可能に連結され、トラックフレーム28の後部が緩衝機構を介して車体フレーム12に連結される構成であってもよい。このように構成することで、不整地走行車両1は、走行時の衝撃を吸収することができ、走行性および乗り心地の向上を図ることができる。
図1〜8に示すように、左右の操舵輪11L,11Rうち、左側の操舵輪11Lは、左側の平行リンク機構66Lに連結された円筒状のキングピンポスト64Lと、キングピンポスト64Lに回転可能に差し入れられたキングピン63Lと、キングピン63Lの下端に連接されたナックルパイプ61Lと、ナックルパイプ61Lの下部に連接されたアクセルハウジング62Lとを介して、キングピン63Lを回転軸とした操舵が可能な状態で左側の平行リンク機構66Lに支持されている。右側の操舵輪11Rは、左側の操舵輪11Lと同様の構成で、キングピン63Rを回転軸とした操舵が可能な状態で右側の平行リンク機構66Rに支持されている。左右のナックルパイプ61L,61Rには、それらの上部から車体内側に向けて延びるナックルアーム65L,65Rが備えられている。
左側のアクセルハウジング62Lは、左側の操舵輪11Lの車体内側である右側に配置されている。左側のアクセルハウジング62Lの内部には、左右方向に延びて左側の操舵輪11Lを支持するアクスルシャフト(図示せず)と、左側の操舵輪11Lを制動する第2ブレーキ36Lとが備えられている。右側のアクセルハウジング62Rは、右側の操舵輪11Rの車体内側である左側に配置されている。右側のアクセルハウジング62Rの内部には、左右方向に延びて右側の操舵輪11Rを支持するアクスルシャフト(図示せず)と、右側の操舵輪11Rを制動する第2ブレーキ36Rとが備えられている。左右の第2ブレーキ36L,36Rには、ドラムブレーキやディスクブレーキなどを用いることができる。
図1、図2、図13に示すように、ハンドル40は、上部がフロントカバー14から上方に突出したステアリングシャフト41と、ステアリングシャフト41の上端に取り付けられたハンドルバー42とを有している。ステアリングシャフト41は、後倒れ姿勢で車体フレーム12に回転可能に支持されている。ハンドルバー42は、その左右両端側に、運転者が把持する左右のグリップ43L,43Rと、運転者によって握り込み操作される左右のブレーキレバー44L,44Rと、運転者によって切り替え操作される左右の昇降操作スイッチ46L,46Rなどを含む左右のスイッチ群45L,45R、などが備えられている。右側のグリップ43Rは、ハンドルバー42に回転可能に支持されるとともに、ハンドルバー42に対する回動角度を検出するアクセルセンサAS(図13参照)を有している。不整地走行車両1は、右のグリップ43Rの回動操作に応じて、クローラ部20が作動するように構成される。
図2に示すように、左側のブレーキレバー44Lは、運転者が左側のグリップ43Lを把持した状態で操作できるように、左側のグリップ43Lの前方に配置されている。右側のブレーキレバー44Rは、運転者が右側のグリップ43Rを把持した状態で操作できるように、右側のグリップ43Rの前方に配置されている。左側のスイッチ群45Lは、運転者が左側のグリップ43Lを把持した状態で操作できるように、左側のグリップ43Lの近傍に配置されている。右側のスイッチ群45Rは、運転者が右側のグリップ43Rを把持した状態で操作できるように、右側のグリップ43Rの近傍に配置されている。左側のブレーキレバー44Lは、左側の操舵輪11Lを制動する左側の第2ブレーキ36L,36Rに電気的に操作連係されている。左側の第2ブレーキ36L,36Rは、左側のブレーキレバー44Lが左側のグリップ43Lに向けて握り操作されるときの操作量に応じて制動力が変化する。右側のブレーキレバー44Rは、右側の操舵輪11Rを制動する右側の第2ブレーキ36L,36Rに電気的に操作連係されている。右側の第2ブレーキ36L,36Rは、右側のブレーキレバー44Rが右側のグリップ43Rに向けて握り操作されるときの操作量に応じて制動力が変化する。
つまり、不整地走行車両1は、左右のブレーキレバー44L,44Rの手動操作によって左右の操舵輪11L,11Rが独立して制動されるように構成されている。これにより、不整地走行車両1を左旋回させる場合には、旋回内側となる左側の操舵輪11Lを制動することにより、旋回半径を小さくする左ブレーキ旋回を行うことができる。また、不整地走行車両1を右旋回させる場合には、旋回内側となる右側の操舵輪11Rを制動することにより、旋回半径を小さくする右ブレーキ旋回を行うことができる。これにより、不整地走行車両1の旋回性能を向上させることができる。
ちなみに、左右のブレーキレバー44L,44Rは、左側のブレーキレバー44Lが左右の操舵輪11L,11Rを制動する左右の第2ブレーキ36L,36Rに操作連係され、右側のブレーキレバー44Rがクローラ部20を制動する第1ブレーキに操作連係されるように構成されていてもよい。また、左右のブレーキレバー44L,44Rは、左側のブレーキレバー44Lがクローラ部20を制動する第1ブレーキに操作連係され、右側のブレーキレバー44Rが左右の操舵輪11L,11Rを制動する左右の第2ブレーキ36L,36Rに操作連係されるように構成されていてもよい。
左右のスイッチ群45L,45Rには、前述した左右の昇降操作スイッチ47L,47Rに加えて、制御部80の起動および停止させるスタータスイッチなどの各種スイッチが含まれている。左右のスイッチ群45L,45Rに含まれるスイッチの種類は、不整地走行車両1の構成に応じて種々の変更が可能である。また、各スイッチとしては、例えば、自動復帰型(モーメンタリ型)スイッチ、位置保持型(オルタネイト型)スイッチなどを用いることができ、また、押圧式スイッチ、スライド式スイッチ、ボタンスイッチ、シーソースイッチなどを適宜選択することができる。
図3に示すように、ステアリング機構50は、不整地走行車両1の左右中心線を対称軸とする左右対称形状に構成されている。ステアリング機構50は、車体フレーム12に対してステアリングシャフト41と一体回転するセンタプレート46と、センタプレート46の前方に配置された左右の連係プレート51L,51Rと、センタプレート46から左右の連係プレート51L,51Rにわたる左右の第1タイロッド52L,52Rと、左右の連係プレート51L,51Rから左右のナックルアーム65L,65Rにわたる左右の第2タイロッド53L,53Rとを有している。
センタプレート46は、ステアリングシャフト41の軸心方向と垂直な方向に延びる左右対称の三角形状に形成され、ステアリングシャフト41の下端部に固定されている。左右の連係プレート51L,51Rは、左右方向に伸びる略ひし形状に形成されている。左右の連係プレート51L,51Rは、それらの左右中心位置に、車体フレーム12に回転可能に支持された回動シャフト58L,58Rを有している。左右の回動シャフト58L,58Rは、ステアリングシャフト41と平行に配置されている。
左側の第1タイロッド52Lは、その後端部がセンタプレート46の左端部にボールジョイント54Lを介して接続され、その前端部が左側の連係プレート51Lの右端部にボールジョイント55Lを介して接続されている。右側の第1タイロッド52Rは、その後端部がセンタプレート46の右端部にボールジョイント54Rを介して接続され、その前端部が右側の連係プレート51Rの左端部にボールジョイント55Rを介して接続されている。
左側の第2タイロッド53Lは、その前端部が左側の連係プレート51Lの左端部にボールジョイント56Lを介して接続され、その後端部が左側のナックルアーム65L,65Rにボールジョイント57Lを介して接続されている。右側の第2タイロッド53Rは、その前端部が右側の連係プレート51Rの右端部にボールジョイント56Rを介して接続され、その後端部が右側のナックルアーム65L,65Rにボールジョイント57Rを介して接続されている。左右の第2タイロッド53L,53Rと、左側の連係プレート51Lの左端部と、右側の連係プレート51Lの右端部とが、フロントカバー14の横外側に配置されている(図1、図2参照)。
上記の構成により、ステアリング機構50は、ハンドル40が右方向(時計回り)に回動操作されると、左右の操舵輪11L,11Rを右方向(時計回り)に操舵する。より詳細には、ハンドル40が右方向(時計回り)に回動操作されると、左側の第1タイロッド52Lが前方に押し出され、右側の第1タイロッド52Rが後方へ引っ張られることにより、左右の連係プレート51L,51Rが左方向(反時計回り)に回動する。そして、左側の連係プレート51Lが左方向(反時計回り)に回動することにより、左側の第2タイロッド53Lが後方に押し出され、左側のキングピン63Lが右方向(時計回り)に回動して左側の操舵輪11Lが右方向(時計回り)に操舵される。また、右側の連係プレート51Rが左方向(反時計回り)に回動することにより、右側の第2タイロッド53Rが前方に引っ張られ、右側のキングピン63Rが右方向(時計回り)に回動して右側の操舵輪11Rが右方向(時計回り)に操舵される。これにより、不整地走行車両1は右旋回する。なお、ステアリング機構50は、ハンドル40が左方向(反時計回り)に回動操作されると、上記の動作とは逆の動作をすることにより、左右の操舵輪11L,11Rが左方向(時計回り)に操舵され、これにより、不整地走行車両1は左旋回する。
つまり、不整地走行車両1は、ハンドル40の回動操作によって左右の操舵輪11L,11Rが操舵されることで進行方向が変更される。
図3に示すように、ステアリング機構50は、アッカーマン・ジャント方式のように、ハンドル40が右方向(時計回り)に回動操作された場合は、右側の操舵輪11Rの舵角が左側の操舵輪11Lの舵角よりも大きくなり、ハンドル40が左方向(反時計回り)に回動操作された場合は、左側の操舵輪11Lの舵角が右側の操舵輪11Rの舵角よりも大きくなる。これにより、不整地走行車両1は、スムーズな旋回が可能となっており、旋回性能の向上が図られている。ハンドル40の回動量に対する左右の操舵輪11L,11Rの舵角は、ステアリング機構50の節部である各ボールジョイント54L,54R,55L,55R,56L,56R,57L,57Rの位置や、連係プレート51L,51Rの位置などを変更することによって調節することができる。
なお、ステアリング機構50の構成は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、上記のステアリング機構50において、センタプレート46を車体フレーム12に回転可能に取り付け、ステアリングシャフト41とセンタプレート46とを複数のギアによって連動させる構成であってもよい。このように構成にすると、ハンドル40を軽い操作力で回動させることができ、不整地走行車両1の旋回性能が向上する。また、ハンドル40は、操作時の最大回動角度が大きくなる場合、ハンドルバー42に代えて丸型のステアリングホイールを採用してもよい。この構成においては、左右のスイッチ群45L,45Rを、ステアリングホイールに備えられたスポーク部に備えることが考えられる。また、左右のブレーキレバー44L,44Rに代えて、運転者によって足踏み操作されるフットレバーを備えることが考えられる。
また、ステアリング機構50は、ハンドル40の回動操作に応じて、左右の操舵輪11L,11Rを操舵する電動モータを備えるパワーステアリング方式に構成されていてもよい。この場合、ステアリングシャフト41と左右の操舵輪11L,11Rとを機械的に連係する構成に代えて、ステアリングシャフト41(ハンドル40)の回動操作角を検出する回転センサと、左右の操舵輪11L,11Rを操舵する左右の電動モータと、回転センサの出力に基づいて左右の電動モータの作動を制御するステアリング制御部とを有して、ステアリングシャフト41と左右の操舵輪11L,11Rとを電気的に連係する構成が考えられる。この構成においては、アッカーマン・ジャント方式の操舵に代えて、パラレル方式の操舵などを採用することが可能になり、操舵方式の選択の自由度が高くなる。
図1、図8に示すように、左側のサイドカバー15Lは、クローラ部20、バッテリ32、インバータ33、リレー34などの左側を覆うことにより、運転者をクローラ部20やバッテリ32などから保護するとともに、バッテリ32やインバータ33などを保護する機能を有している。左側のサイドカバー15Lは、クローラ部20の左側に所定間隔をあけて配置されている。左側のサイドカバー15Lは、左側の操舵輪11Lの後端近くから着座部13の後端近くまで延びている。左のサイドカバー15Lは、側面視で前後方向に長い略矩形状であり、後端縁が後上がり傾斜している。左のサイドカバー15Lは、上端部が車体フレーム12に固定され、内面の一部がクローラ部20のトラックフレーム28に固定されている。
図1〜2、図8、図11〜12に示すように、左側のサイドカバー15Lには、左外方に突出する板状の左側の第1足置き部16Lと左側の第2足置き部17Lとが形成されている。左側の第1足置き部16Lまたは左側の第2足置き部17Lには、運転者の左足が載置される。左側の第1足置き部16Lは、左側のサイドカバー15Lの下端に沿って前後方向に水平に延びている。なお、ここでの水平とは、完全な水平のみを示すのではなく、多少の傾斜を含むものであり、以下における水平も同様とする。左側の第2足置き部17Lは、左側の第1足置き部16Lよりも後方に配置され、その前端が第1足置き部16Lの後端に連接されている。左側の第2足置き部17Lは、左側のサイドカバー15Lの後端縁に沿って後上がりに傾斜している。
右側のサイドカバー15Rは、左側のサイドカバー15Lと左右対称形状であり、詳細については説明を省略する。右側のサイドカバー15Rは、クローラ部20、バッテリ32、インバータ33、リレー34などの右側を覆うことにより、運転者をクローラ部20やバッテリ32などから保護するとともに、バッテリ32やインバータ33などを保護する機能を有している。右側のサイドカバー15Rには、右外方に突出する板状の右側の第1足置き部16Lと右側の第2足置き部17Lとが形成されている。
左右のサイドカバー15L,15Rは、クローラ部20などを覆って運転者などを保護する保護機能を有していれば、その構成や形状などは種々の変更が可能である。例えば、左右のサイドカバー15L,15Rは、クローラ部20の前端まで延びるように形成されていてもよい。また、左右のサイドカバー15L,15Rは、それらの後端がクローラ部20の後方において接続されて、クローラ部20の後側を覆うように形成されていてもよい。
図1〜2、図4〜8に示すように、昇降機構60は、不整地走行車両1の左右中心線を対称軸とする左右対称形状に構成されている。昇降機構60は、左右の平行リンク機構66L,66Rと、左右のダンパ69L,69Rと、左右の電動シリンダ67L,67Rと、左右のカウンタプレート68L,68Rとを有している。左右の電動シリンダ67L,67Rは、車体フレーム12と左右のカウンタプレート68L,68Rとにわたるシリンダ部と、シリンダ部を伸縮作動させるモータ部とを有している。昇降機構60は、左右の操舵輪11L,11Rをそれぞれ独立して昇降駆動する。以下には、昇降機構60において左側の操舵輪11Lを昇降駆動する左側の構成を取り上げて説明し、右側の操舵輪11Lを昇降駆動する右側の構成については説明を省略する。
平行リンク機構66Lは、キングピン63Lなどを介して操舵輪11Lを支持するキングピンポスト64Lを車体フレーム12に連結している。平行リンク機構66Lは、アッパーアーム70Lとロアアーム71Lとブラケット72Lなどを有している。アッパーアーム70Lは、前後方向に延びており、アッパーアーム70Lの前端部に車体内方に延びる回動シャフト73Lを有している。回動シャフト73Lには、下方に向けて延びるクランク74Lが固定されている。回動シャフト73Lは、車体フレーム12に回動可能に支持されている。これにより、アッパーアーム70Lの前端部は、車体フレーム12に上下方向に回動可能に連結されている。一方、アッパーアーム70Lの後端部は、ブラケット72Lの上端部に上下方向に回動可能に連結されている。
ロアアーム71Lは、前端部を除いてアッパーアーム70Lと同じ構成である。ロアアーム71Lは、アッパーアーム70Lの下方に配置されている。ロアアーム71Lの前端部は、車体フレーム12に上下方向に回動可能に連結されている。ロアアーム71Lの後端部は、ブラケット72Lの下端部に上下方向に回動可能に連結されている。ブラケット72Lは、キングピンポスト64Lの左外側に固定されている。
図4〜7に示すように、電動シリンダ67Lは、バッテリ32からの電力によってロッド75Lを出退移動させる。電動シリンダ67Lは、ステアリングシャフト41の左側の近傍に、ロッド75Lが前後方向に出退移動するように配置されている。なお、電動シリンダ67Lに代えて油圧シリンダを採用してもよい。
カウンタプレート68Lは、側面視で下方に向けて先細りになる三角形状に形成されている。カウンタプレート68Lは、下端部が車体フレーム12に前後方向に回動可能に支持されている。カウンタプレート68Lの後上部には、ロッド75Lの前端部が連結されている。
ダンパ69Lは、オイルの粘性によって衝撃を吸収する棒状の緩衝機構であり、いわゆるオイルダンパである。ダンパ69Lの後端部は、カウンタプレート68Lの前上部に連結されている。ダンパ69Lの前端部は、クランク74Lの先端部に連結されている。なお、ダンパ69Lはオイルダンパに限定されるものではない。例えば、ダンパ69Lは、エアダンパ、スプリングなどの弾性部材、または、これらを組み合わせた構成などであってもよい。また、カウンタプレート68Lは、車体フレーム12に前後方向に回動可能に支持され、ロッド75Lの前端部およびダンパ69Lの後端部が連結される構成であれば種々の変更が可能である。例えば、カウンタプレート68Lは側面視で円形状や四角形状に形成されていてもよい。
図5〜7に示すように、昇降機構60は、左側の電動シリンダ67Lのロッド75Lを出退移動させることで左側の操舵輪11Lを昇降させ、右側の電動シリンダ67Rのロッド75Lを出退移動させることで右側の操舵輪11Rを昇降させる。図5の状態において、電動シリンダ67Lのロッド75Lを突出させると、図7に示すように、操舵輪11Lが下方に移動する。
より詳細には、電動シリンダ67Lのロッド75Lが突出することで、カウンタプレート68Lが下端部を支点にして前方に(反時計回りに)回動し、ダンパ69Lが前方に移動する。ダンパ69Lが前方に移動することで、アッパーアーム70Lが下方に(時計回りに)回動し、操舵輪11Lが下方に移動する。なお、電動シリンダ67Lのロッド75Lが退避した場合には、カウンタプレート68L、ダンパ69L、および、アッパーアーム70Lが上記の動作と逆の動作をすることで、操舵輪11Lは上方に移動する。
このように、不整地走行車両1は、昇降機構60によって左右の操舵輪11L,11Rを車体フレーム12に対して昇降させることができる。そして、不整地走行車両1は、例えば、図1に示すように、左右の操舵輪11L,11Rを車体フレーム12に対して上方に移動させることにより、クローラ部20の前部側を地面に接地させた第1走行姿勢に姿勢変更することができる。この姿勢では、クローラベルト27の接地範囲GA1として、第1転輪26と第3転輪24との間の前後に長い範囲を得ることができる。この接地範囲GA1は、不整地走行車両1の前後方向の中央の位置を含んでいる。また、接地範囲GA1は、前後方向において、左右の操舵輪11L,11Rの接地部の近傍から着座部13の前後中央付近まで延びている。これにより、不整地走行車両1は、走行時の安定性を十分に確保することができるとともに、地面とクローラ部20との間において高いグリップ力を得ることができ、不整地における高い走破性を確保することができる。
なお、接地範囲GA1の前端は、左右の操舵輪11L,11Rの接地部の近傍に位置することが好ましい。このように構成にすることで、接地範囲GA1を広くして地面とクローラ部20とのグリップ力を高めることができるとともに、旋回時における左右の操舵輪11L,11Rの滑りが抑制されてスムーズな旋回が可能になる。これにより、不整地走行車両1の旋回性能が向上する。また、接地範囲GA1における前後方向の前側に、運転者が乗車した状態における不整地走行車両1の重心が位置することが好ましい。このように構成することで、不整地走行車両1は、不整地における高い走破性を確保することができる。
一方、不整地走行車両1は、例えば、図8に示すように、図1の状態から左右の操舵輪11L,11Rを車体フレーム12に対して下方に移動させることにより、クローラ部20の前部側を地面から浮かせた第2走行姿勢に姿勢変更することができる。この姿勢では、クローラベルト27の接地範囲GA2として、第3転輪24と第4転輪23との間の前後に短い範囲を得ることができる。この接地範囲GA2は、不整地走行車両1の後部に位置している。そして、不整地走行車両1は、前部に位置する左右の操舵輪11L,11Rと、後部に位置する接地範囲GA2との3箇所が接地した状態となる。つまり、不整地走行車両1は、クローラ部20の前側を地面から浮かせた状態にしても、安定性が損なわれることが防止されている。また、不整地走行車両1は、クローラ部20の接地範囲GA2が狭くなることで、クローラ部20による摩擦抵抗が低減され、エネルギー効率の良い高速走行などが可能となるとともに操舵性が向上する。
つまり、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rを車体フレーム12に対して昇降させることにより、クローラ部20の接地範囲を容易に調節することができ、地面の状況に応じた走行が可能になる。
また、接地範囲GA2に対応する2つの転輪23,24は、イコライザアーム29を介してトラックフレーム28に取り付けられている。これにより、クローラ部20は、クローラ部20の前部側を地面から浮かせた状態であってもイコライザアーム29が揺動することで走行時の衝撃を吸収することができ、不整地走行車両1の走行性および乗り心地の向上が図られている。
また、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rを地面の傾斜や凹凸に応じて昇降させることで、不整地における安定した走行が可能になる。例えば、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させることで、傾斜地での安定した等高線走行が可能になる。具体的には、図1に示す状態から、図17に示すように、等高線走行する傾斜地の傾斜に合わせて、山側に位置する操舵輪11Rを上方に移動させ、谷側に位置する操舵輪11Lを下方に移動させる。このような状態にすることで、クローラ部20の接地範囲GA1の高所側部(山側部)を傾斜地にエッジとして食い込ませることができる。また、車体フレーム12の山側または谷側(左右方向)への傾倒は、左右の操舵輪11L,11Rによって防止される。さらに、クローラ部20は広い接地範囲GA1が傾斜地に接地するため、傾斜地とクローラ部20との間において高いグリップ力が得られて、クローラ部20の谷側への滑りが防止される。これにより、不整地走行車両1は、傾斜地での等高線走行を安定した状態で行うことができる。
図1〜2、図4〜7に示すように、不整地走行車両1において、左右の操舵輪11L,11Rは、左右の平行リンク機構66L,66Rを介して昇降することから、鉛直線に対する左右のキングピン63L,63Rの角度は一定に維持される。つまり、昇降機構60は、操舵性への影響が少ない状態で左右の操舵輪11L,11Rを昇降させることができる。
不整地走行車両1において、平行リンク機構66L,66Rは、車体フレーム12の前部に連結され、車体フレーム12の前部から後方に向けて延びている。これにより、不整地走行車両1の全長を短くすることができる。
図3に示すように、不整地走行車両1において、ステアリング機構50の第2タイロッド53L,53Rは、側面視で平行リンク機構66L,66R(アッパーアーム70L,70R、ロアアーム71L,71R)と平行に配置されている(図1、図8参照)。これにより、左右の操舵輪11L,11Rが昇降される場合に、ステアリング機構50、特に左右の第2タイロッド53L,53Rには応力が生じ難くなり、ステアリング機構50の耐久性が向上する。
図4〜7に示すように、不整地走行車両1において、昇降機構60は、左側の操舵輪11Lに対応した左側のダンパ69Lと、右側の操舵輪11Rに対応した右側のダンパ69Rとを有している。これにより、昇降機構60は、車体フレーム12と左側の操舵輪11Lとの間における衝撃と、車体フレーム12と右側の操舵輪11Rとの間における衝撃とを個別に緩衝するように構成されている。その結果、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rと車体フレーム12との間における衝撃を効果的に緩衝することができ、左右の操舵輪11L,11Rを安定性良く接地させることができるとともに、不整地走行車両1の走行性や乗り心地を向上させることができる。
図1〜2、図4〜7に示すように、不整地走行車両1において、平行リンク機構66L,66R(アッパーアーム70L,70R、ロアアーム71L,71R)は、操舵輪11L,11Rよりも上方に配置されている。そして、平行リンク機構66L,66Rは、操舵輪11L,11Rが昇降した状態で操舵されても左右の操舵輪11L,11Rに接触しないように構成されている。これにより、不整地走行車両1の車幅を狭くすることができる。
不整地走行車両1において、平行リンク機構66L,66Rは、ブラケット72L,72Rを介してキングピンポスト64L,64Rの横外側に連結されている。また、ステアリング機構50の第2タイロッド53L,53Rは、ナックルアーム65L,65Rを介してキングピン63L,63Rの横内側に連結されている。これにより、左右の操舵輪11L,11Rの昇降時および操舵時に、平行リンク機構66L,66Rは、第2タイロッド53L,53Rと干渉し難い構成になっている。その結果、不整地走行車両1は、操舵輪11L,11Rの最大昇降量および最大操舵角を大きくすることができる。
図4〜7に示すように、不整地走行車両1において、昇降機構60は、電動シリンダ67L,67R、ダンパ69L,69Rが前後方向へ延びるように配置されている。これにより、不整地走行車両1の車高が高くなり難く、安定性が高くなる。
なお、昇降機構60は、左右の操舵輪11L,11Rを車体フレーム12に対して昇降させることができる構成であれば種々の変更が可能である。例えば、昇降機構60は、平行リンク機構66L,66Rが左右方向に延び、平行リンク機構66L,66Rが車体フレーム12に前後方向に延びる軸を支点にして上下方向に回動可能に連結される構成であってもよい。
また、昇降機構60は、図9に示すような構成であってもよい。ここで、図9は、昇降機構60の変形例が示された模式図であり、上方から見た図である。図9において、左側が前方で、右側が後方である。また、図9において、左右の操舵輪11L,11R、昇降機構60と同じ構成の左右の平行リンク機構66L,66Rなどの記載は省略されている。
図9に示す昇降機構160は、昇降機構60における左右の電動シリンダ67L,67Rおよび左右のカウンタプレート68L,68Rに代えて、回動ユニット176およびシリンダ167が備えられている。回動ユニット176は、支持プレート177、回動プレート178、電動モータ179などを備えている。支持プレート177は、車体フレーム12に前後方向にスライド可能に支持されている。回動プレート178は、左右方向に延びる略ひし形状に形成されている。回動プレート178は、中心が支持プレート177に回動自在に支持されている。回動プレート178の左側端部には、左のダンパ69Lの後端が連結されている。回動プレート178の右側端部には、右のダンパ69Rの後端が連結されている。左側のダンパ69Lの先端部は、ここでは図外の左側のクランク74Lに連結されている。右側のダンパ69Rの先端部は、ここでは図外の右側のクランク74Rに連結されている。電動モータ179は、支持プレート177に支持されている。電動モータ179の出力軸は回動プレート178の回動軸に連動連結され、回動プレート178は電動モータ179によって回動される。電動モータ179は、バッテリ32の電力で駆動される電動モータである。そして、回動ユニット176は、車体フレーム12に前後方向にスライド可能に支持されている。
シリンダ167は、バッテリ32からの電力によってロッド175を出退移動させる電動シリンダである。シリンダ167は、車体フレーム12に固定されている。シリンダ167のロッド175の前端部は、支持プレート177の後端部に連結されている。そして、シリンダ167は、回動ユニット176を車体フレーム12に対して前後方向にスライドさせるように構成されている。
このように構成された昇降機構160は、電動モータ179によって回動プレート178が回動されることで、左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させることができる。例えば、図9において、回動プレート178が時計回りに回動すると、左側のダンパ69Lが前方に押し出され、右側のダンパ69Rが後方に引っ張られる。そして、左側の操舵輪11Lが下方に移動し、右側の操舵輪11Lが上方に移動する。一方、回動プレート178が反時計回りに回動すると、左側のダンパ69Lが後方に引っ張られ、右側のダンパ69Rが前方に押し出される。そして、左側の操舵輪11Lが上方に移動し、右側の操舵輪11Lが下方に移動する。
また、昇降機構160は、シリンダ167のロッド175を出退移動させることで、左右の操舵輪11L,11Rを同方向に昇降させることができる。例えば、図9において、シリンダ167のロッド175を突出させることで、回動ユニット176が前方にスライドし、左右のダンパ69L,69Rが前方へ押し出される。そして、左右の操舵輪11L,11Rが同時に下方に移動する。一方、シリンダ167のロッド175を退避させることで、回動ユニット176が後方にスライドし、左右のダンパ69L,69Rが後方に引っ張られる。そして、左右の操舵輪11L,11Rが同時に上方に移動する。
このように構成された昇降機構160は、回動プレート178を回動させる電動モータ179を制御することで、運転者が色々な操作感を楽しめるようにすることができる。例えば、制御部80が電動モータ179をゼロトルク制御するように構成されることで、運転者は、左右方向の体重移動によって左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させて車体フレーム12を左右方向に傾倒させることが可能となる。また、電動モータ179の位置制御におけるゲインを調節することで、左右の操舵輪11L,11Rと車体フレーム12との間における緩衝力を調整することも可能であり、使い勝手がよくなる。
また、昇降機構60は、図10に示すような構成であってもよい。ここで、図10は、昇降機構60の別の変形例が示された模式図であり、上方から見た図である。図10において、左側が前方で、右側が後方である。また、図10において、左右の操舵輪11L,11R、昇降機構60と同じ構成の左右の平行リンク機構66L,66Rなどの記載は省略されている。
図10に示す昇降機構260は、昇降機構60における左右の電動シリンダ67L,67R、左右のカウンタプレート68L,68R、左右のダンパ69L,69Rに代えて、回動ユニット276、左右の連結ロッド280L,280R、2つのダンパ281,282、およびシリンダ267が備えられている。回動ユニット276は、支持プレート277、回動プレート278、ダンパ281、シリンダ283などを備えている。支持プレート277は、車体フレーム12に前後方向にスライド可能に支持されている。回動プレート278は、左右方向に延びる略ひし形状に形成されている。回動プレート278は、中心が支持プレート277に回動自在に支持されている。シリンダ283は、バッテリ32からの電力によってロッド284を出退移動させる電動シリンダである。シリンダ283は、支持プレート277に左右方向に延びるように配置されている。シリンダ283のロッド284の先端部は、ダンパ281を介して回動プレート278の後側端部に連結されている。シリンダ283は、回動プレート278を支持プレート277に対して回動させるように構成されている。そして、回動ユニット276は、車体フレーム12に前後方向にスライド可能に支持されている。
左右の連結ロッド280L,280Rは、前後方向に延びている。左の連結ロッド280Lの前端部は、左側のクランク74Lに連結されている。左側の連結ロッド280Lの後端部は、回動プレート278の左側端部に連結されている。右側の連結ロッド280Rの前端部は、右側のクランク74Rに連結されている。右側の連結ロッド280Rの後端部は、回動プレート278の右側端部に連結されている。
シリンダ267は、バッテリ32からの電力によってロッド275を出退移動させる電動シリンダである。シリンダ267は、車体フレーム12に固定されている。シリンダ267のロッド275の前端部は、ダンパ282を介して支持プレート277の後端部に連結されている。そして、シリンダ267は、回動ユニット276を車体フレーム12に対して前後方向にスライドさせるように構成されている。
このように構成された昇降機構260は、シリンダ283によって回動プレート278を回動させることで、左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させることができる。また、昇降機構260は、シリンダ267のロッド275を出退移動させることで、左右の操舵輪11L,11Rを同じ方向に昇降させることができる。
なお、昇降機構260は、支持プレート277とシリンダ283のロッド284との間にダンパ281を備え、回動ユニット276とシリンダ267のロッド275との間にダンパ282を備えている。これにより、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rと車体フレーム12との間における緩衝力の調整の自由度が高くなり、走行性および乗り心地を向上させることができる。
また、昇降機構60は、例えば、運転者の体重移動によって、左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させるように構成されていてもよい。このような構成としては、図9、図10に示される昇降機構160,260において、電動モータ179、シリンダ283を備えない構成とすることができる。なお、図10に示される昇降機構260のダンパ281は、支持プレート277と回動プレート278との間に配置されている。
このように昇降機構60を運転者の体重移動によって左右の操舵輪11L,11Rを互い違いに昇降させる構成にすることで、不整地走行車両1は重量が低減されて小型化および軽量化が可能となるとともに、制御構成の簡略化を図ることができる。これにより、不整地走行車両1は、機動性および生産性が向上する。
また、昇降機構160,260は、左右の操舵輪11L,11Rを所望の位置で固定するロック機構を備える構成としてもよい。このようなロック機構としては、支持プレート177,277に対する回動プレート178,278の回動を停止させる構成が考えられる。より詳細には、支持プレート177,277に取り付けられ、パッドなどで回動プレート178,278を両側から挟み込むことで回動プレート178,278の回動を制動する構成が考えられる。このように構成することで、不整地走行車両1は、左右の操舵輪11L,11Rが互い違いに昇降する場合と昇降しない場合との2通りの形態をとることができ、使い勝手がよくなる。
また、昇降機構60は、左右の操舵輪11L,11Rを受動的に昇降させる構成であっても良い。このような構成としては、図9、図10に示す昇降機構160,260において、電動モータ179、シリンダ283、およびシリンダ167,267を備えない構成とし、回動ユニット176,276が車体フレーム12に固定される構成が考えられる。このように構成した場合、運転者の体重移動によって、左右の操舵輪11L,11Rが受動的に互い違いに昇降する。このように構成することで、不整地走行車両1は重量が低減されて小型化および軽量化が可能となるとともに、制御構成が簡略化される。そして、不整地走行車両1は、機動性および生産性が向上する。
また、昇降機構60は、左右の電動シリンダ67L,67Rおよびカウンタプレート68L,68Rを備えない構成とし、ダンパ69L,69Rの後端部が車体フレーム12に連結される構成であってもよい。左右の操舵輪11L,11Rは、地面の凹凸に応じて受動的に昇降する。このように構成することで、不整地走行車両1の構成が簡易になり、生産性が向上する。
ここで、不整地走行車両1は、クローラ部20が車体フレーム12の前部から後部に掛けて延びた鞍乗型の走行車両である。車体フレーム12は、左右両側に、第1足置き部16L,16Rを有する。そして、図11に例示したように、運転者Dは、鞍乗式の着座部13に着座して左右の第1足置き部16L,16Rに足を載置した姿勢で乗車する。図11は、運転者Dの乗車姿勢の一例が模式的に示された側面図である。そして、不整地走行車両1は、単一のクローラ部20によって走行し、運転者Dがクローラ部20を跨ぐように乗車する形態である。したがって、不整地走行車両1は、車幅、車高、および全長を小さくすることができ、自動二輪車のような高い機動性を有している。
また、不整地走行車両1は、操舵輪11L,11Rがクローラ部20の左右両側にそれぞれ配置されているので、車体フレーム12の左右方向の傾倒が防止され、安定した走行が可能である。また、不整地走行車両1は、クローラベルト27の左右方向の幅を狭くしても安定性が損なわれることはない。そして、不整地走行車両1は、クローラベルト27の左右方向の幅を狭くすることで、旋回時におけるクローラ部20による摩擦抵抗が低減され、操舵性を向上させることができる。
ここで、左右の第1足置き部16L,16Rは前後方向に水平に延びている。したがって、運転者Dは、体格、好み等に応じて足を載置する場所を前後方向で移動させることができ、使い勝手がよくなる。
また、車体フレーム12は、左右両側に、第1足置き部16L,16Rよりも後方に配置される第2足置き部17L,17Rを有している。そして、運転者Dは、図11に例示した姿勢とは異なる姿勢で乗車することができる。例えば、運転者Dは、図12に例示したように、傾斜地において上り走行する場合において、鞍乗式の着座部13に着座せずに、左右の第2足置き部17L,17Rに足を載置して前方へ体重をかけた姿勢で乗車することもできる。図12は、運転者Dの別の乗車姿勢の一例が模式的に示された側面図である。このように、不整地走行車両1は、運転者Dが前方へ体重をかけた姿勢で乗車することが可能であり、傾斜地での上り走行において後方への横転が防止される安定した走行が行える。そして、不整地走行車両1は、急な傾斜、例えば傾斜角度が約30°の傾斜地であっても走破可能になる。
また、左右の第2足置き部17L,17Rは、前後方向に後上がりに傾斜して延びている。これにより、図12に例示するような運転者Dの乗車姿勢がより安定的に行える。また、左右の第2足置き部17L,17Rは、前端が左右の第1足置き部16L,16Rの後端にそれぞれ連接されていることから、左右の第1足置き部16L,16Rと左右の第2足置き部17L,17Rとの間に切れ目がなく、運転者Dは、乗車姿勢を変更する際に足を踏み外し難く、姿勢を容易に素早く変更することができる。
なお、第1足置き部16L,16Rおよび第2足置き部17L,17Rは上記の構成に限定されるものではない。第1足置き部16L,16Rは、鞍乗式の着座部13に着座した運転者Dが足を載置することができる構成であればよい。第2足置き部17L,17Rは第1足置き部16L,16Rの後方に配置される構成であればよい。
例えば、第1足置き部16L,16Rおよび第2足置き部17L,17Rは、車体フレーム12に取り付けられる構成であってもよく、クローラ部20のトラックフレーム28に取り付けられる構成であってもよい。また、第1足置き部16L,16Rが取り付けられる部材と、第2足置き部17L,17Rが取り付けられる部材とが異なっていても構わない。また、第1足置き部16L,16Rは第2足置き部17L,17Rと滑らかに接続され、第1足置き部16L,16Rと第2足置き部17L,17Rとが区切りなく一体に形成にされていてもよい。このように構成することで、運転者Dは第1足置き部16L,16Rと第2足置き部17L,17Rとの接続部にも足を載置することができる。また、第2足置き部17L,17Rの前端が第1足置き部16L,16Rの後端に連接されない構成であってもよい。例えば、第1足置き部16L,16Rおよび第2足置き部17L,17Rは、外方へ突出する円柱状に形成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る不整地走行車両1の制御系統について説明する。図13に示すように、不整地走行車両1は、その動作が制御部80によって制御される。
制御部80は、種々の設定値や、各種センサによる検出値などの入力信号を読み込むとともに、制御信号を出力することで、不整地走行車両1の動作を制御する。制御部80としては、演算処理および制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、データが格納される主記憶装置、タイマ、入力回路、出力回路、並びに電源回路などを有するマイクロコンピュータが例示されている。ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)に例示される主記憶装置には、本実施形態に係る動作を実行するための制御プログラムや、各種データが格納されている。なお、これらの各種プログラムなどのデータは外部の記憶装置に格納され、制御部80が読み出す形態に構成されていてもよい。
制御部80の構成は種々の変更が可能であり、例えば、不整地走行車両1に複数の制御部が備えられ、CAN(Controller Area Network)通信などの車内通信によってそれぞれが相互に通信可能に接続された構成であってもよい。図13には、1つの制御部80により、昇降機構60などを備える不整地走行車両1の動作を制御する構成が例示されている。
図13に示すように、制御部80には、クローラ部20のインバータ33、昇降機構60の左右の電動シリンダ67L,67R、電動式の第1ブレーキアクチュエータ81、電動式の左右の第2ブレーキアクチュエータ82L,82R、アクセルセンサAS、左右のスイッチ群45L,45Rに含まれた昇降操作スイッチ47L,47Rと制動スイッチ48と、左右のブレーキレバー操作量検出センサ83L,83R、左右のブレーキ動作量検出センサ84L,84R、不整地走行車両1のロール角を検出する傾斜センサ85、車速センサ86、ハンドル操作角検出センサ87、左右の操舵角検出センサ88L,88R、などが電気的に接続されている。インバータ33は、電動モータ31に電気的に接続されている。アクセルセンサASは、ハンドルバー42に対する右側のグリップ43Rの回動角度を検出する回転センサである。第1ブレーキアクチュエータ81は、クローラ部20を制動する第1ブレーキを操作する。左右の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rは、左右の操舵輪11L,11Rを制動する左右の第2ブレーキ36L,36Rを操作する操作機構である。なお、制御部80には、図13に例示された構成以外の各種センサやスイッチ、例えばバッテリ32の電圧や電流を検出するバッテリセンサ、車速制限スイッチなどが電気的に接続されている。
制御部80は、アクセルセンサASの検出値に基づいてインバータ33へ制御信号を出力して電動モータ31の回転を変更することで不整地走行車両1の走行速度を変更する。また、制御部80は、左右の昇降操作スイッチ47L,47Rの操作信号などに基づいて昇降機構60の電動シリンダ67L,67Rへの制御信号を出力して左右の操舵輪11L,11Rを昇降させる。
ここで、左右の昇降操作スイッチ47L,47Rは、グリップ43L,43Rを把持した状態で運転者が操作できる左右いずれかのスイッチ群45L,45Rに含まれている。これにより、運転者は、ハンドル40から手を離さずに左右の昇降操作スイッチ47L,47Rを操作することができ、運転性を低下させることなく安全かつ容易に左右の操舵輪11L,11Rを昇降させることができる。なお、左右の昇降操作スイッチ47L,47Rは、左右の電動シリンダ67L,67Rを同時に操作する単一のスイッチであってもよい。
図13、図14に示すように、不整地走行車両1は、左右の昇降操作スイッチ47L,47Rの操作に基づいて、制御部80が、昇降機構60の作動を制御して、左右の操舵輪11L,11Rを前側下方の下降位置と後側上方の上昇位置とにわたって昇降駆動することにより、段差に対する乗り上がり走行をスムーズに行うことができる。
その乗り上がり走行について詳述すると、図14の(a)に示すように、不整地走行車両1が段差の手前に達したときに、運転者が左右の昇降操作スイッチ47L,47Rを操作して左右の操舵輪11L,11Rを下降させると、図14の(b)に示すように、左右の操舵輪11L,11Rが前側下方の下降位置に移動することによってクローラ部20の前部側が地面から浮き上がり、左右の操舵輪11L,11Rが段差の垂直面に達する前に、クローラ部20の前部側が段差の上面側に接地する。その後、クローラ部20の推進力で不整地走行車両1が前進して段差に乗り上げていくときに、運転者が左右の昇降操作スイッチ47L,47Rを操作して左右の操舵輪11L,11Rを上昇させると、図14の(b)〜(c)に示すように、左右の操舵輪11L,11Rが、前側下方の下降位置から後側上方の上昇位置に移動することにより、段差の垂直面から離れる側に移動しながら、クローラ部20の接地面よりも上側の位置に移動する。これにより、図14の(c)に示すように、クローラ部20の前部側が段差の上面側に接地し、かつ、クローラ部20の後部側が段差の下面に接地した状態で、左右の操舵輪11L,11Rを段差に干渉させることなく、不整地走行車両1を前進させていくことができる。そして、図14の(d)に示すように、左右の操舵輪11L,11Rを下方に移動させても段差の垂直面に干渉しない位置まで不整地走行車両1が前進したときに、運転者が左右の昇降操作スイッチ47L,47Rを操作して左右の操舵輪11L,11Rを下降させると、左右の操舵輪11L,11Rが下方に移動しながら、不整地走行車両1が更に前進することにより、図14の(e)に示すように、車体重心が段差の垂直面よりも前側に移動するのに伴って、不整地走行車両1は、段差の角部に接地するクローラ部20の接地部を支点にして段差の上面に向けて回動し、この回動により、図14の(f)に示すように、左右の操舵輪11L,11Rとクローラ部20の接地面とが段差の上面に接地する。これにより、不整地走行車両1は、段差の下面から上面に移動する段差への乗り上がり走行を果たしたことになる。
上記の構成では、左右の操舵輪11L,11Rが、左右の平行リンク機構66L,66Rの上下動によって前側下方の下降位置と後側上方の上昇位置とにわたって昇降移動するように構成したが、これに代えて、例えば、後倒れ姿勢に設定された左右のキングピン63L,63Rが、左右のキングピンポスト64L,64Rに出退移動可能に支持され、左右のキングピン63L,63Rを出退操作する左右のアクチュエータを備えることで、左右の操舵輪11L,11Rが、左右のキングピン63L,63Rの出退操作によって、前側下方の下降位置と後側上方の上昇位置とにわたって昇降移動するように構成してもよい。
図1、図8、図13、図15、図16に示すように、制御部80は、左右いずれか一方の昇降操作スイッチ47L,47Rが操作された場合は、操作された昇降操作スイッチ47L,47Rに対応する電動シリンダ67L,67Rを作動させて、対応する左右の操舵輪11L,11Rを独立して昇降させるように構成されている。
これにより、運転者が旋回時に旋回内側の昇降操作スイッチ47L,47Rを操作して旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇させると、このときの操作量に応じて、不整地走行車両1を旋回内側に傾倒させることができる。このように不整地走行車両1が旋回内側に傾倒すると、旋回内側の操舵輪11L,11Rにかかる接地抵抗がクローラ部20にかかる接地抵抗よりも大きくなり、これにより、旋回内側の操舵輪11L,11Rが回転し難くなるとともに、クローラ部20が、旋回内側の操舵輪11L,11Rを支点にして横滑りし易くなる。その結果、不整地走行車両1を小さい旋回半径でスムーズに旋回させることができる。
図13に示すように、制御部80は、傾斜センサ85の検出に基づいて、不整地走行車両1の旋回内側への傾斜量が設定値を超えたと判断した場合に、旋回内側の操舵輪11L,11Rを制動する第2ブレーキ36L,36Rが作動するように、旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの作動を制御する。
これにより、運転者が旋回半径を小さくするために不整地走行車両1を旋回内側に設定値を超える程度まで大きく傾倒させた場合は、旋回内側の操舵輪11L,11Rが制動されることにより、旋回内側の操舵輪11L,11Rが回転し難くなり、その結果、不整地走行車両1をより小さい旋回半径で旋回させることができる。また、不整地走行車両1の旋回内側への無理な傾倒を防止することができ、これにより、不整地走行車両1の旋回操作性を向上させることができる。
なお、制御部80は、不整地走行車両1の旋回操作に関して、以下のような制御作動を行うように構成されていてもよい。
例えば、制御部80は、運転者による昇降操作スイッチ47L,47Rの操作に基づいて旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇させるのではなく、運転者が不整地走行車両1を旋回させるための旋回内側への体重移動を行ったときに、このときの不整地走行車両1の旋回内側への傾倒を傾斜センサ85が検出することで、この検出に基づいて旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇又は制動させるように構成されていてもよい。
上記の構成では、運転者は不整地走行車両1を旋回させるための旋回内側への体重移動を行うだけで、昇降操作スイッチ47L,47R又はブレーキレバー44L,44Rの操作を行わなくても、旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇又は制動させることができ、不整地走行車両1の旋回半径を小さくすることができる。つまり、旋回操作性の向上を図ることができる。
例えば、制御部80は、運転者が不整地走行車両1を旋回させるためにハンドル40を操作したときに、ハンドル操作角検出センサ87の検出に基づいて、旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇又は制動させるように構成されていてもよい。
この構成では、運転者は不整地走行車両1を旋回させるためのハンドル操作を行うだけで、昇降操作スイッチ47L,47R又はブレーキレバー44L,44Rの操作を行わなくても、旋回内側の操舵輪11L,11Rを上昇又は制動させることができ、不整地走行車両1の旋回半径を小さくすることができる。つまり、旋回操作性の向上を図ることができる。
例えば、制御部80は、左右のダンパ69L,69Rの変形代を測定するセンサからの検出に基づいて、左右の操舵輪11L,11Rの分担荷重を求めるとともに、求めた分担荷重から、不整地走行車両1の走行姿勢が、クローラ部20の前部側を地面に接地させた第1走行姿勢か、クローラ部20の前部側を地面から浮かせた第2走行姿勢かを判別し、第1走行姿勢である場合は、クローラ部20の前部側が接地していて、旋回時に、旋回外側の操舵輪11L,11Rには殆ど荷重がかからないことから、左右の操舵輪11L,11Rを制動し、第2走行姿勢である場合は、クローラ部20の前部側が浮き上がっていて、旋回時に、旋回外側の操舵輪11L,11Rにかかる荷重が大きいことから、旋回内側の操舵輪11L,11Rのみを制動するように構成されていてもよい。
例えば、制御部80は、前述した分担荷重から、不整地走行車両1の走行姿勢が第1走行姿勢か第2走行姿勢かを判別し、第2走行姿勢であれば旋回内側の操舵輪11L,11Rに対する制動力を制限して、旋回時における不整地走行車両1の安定性を確保するように構成されていてもよい。
例えば、図18のフローチャートに示すように、制御部80は、左右いずれか一方のブレーキレバー44L,44Rが操作された場合に、ブレーキレバー操作量検出センサ83L,83Rの検出に基づいてブレーキレバー44L,44Rの操作量を算出し(ステップ#1)、この操作量に基づいて、旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの操作量を算出し(ステップ#2)、傾斜センサ85の検出に基づいて不整地走行車両1の傾斜量が不整地走行車両1の旋回内側への傾斜量が設定値を超えたか否かを判断し(ステップ#3)、超えたと判断した場合に、ステップ#2で算出した旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの操作量に、傾斜量が設定値を超えた場合の補正値を加え(ステップ#4)、補正値を加えた後の操作量で旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rを作動させる(ステップ#5)、という不整地走行車両1の傾斜量を考慮したブレーキ旋回制御を行うように構成されていてもよい。
この構成によると、不整地走行車両1の旋回半径を小さくするための不整地走行車両1の旋回内側への無理な傾倒を防止することができる。
例えば、図19のフローチャートに示すように、制御部80は、左右いずれか一方のブレーキレバー44L,44Rが操作された場合に、ブレーキレバー操作量検出センサ83L,83Rの検出に基づいてブレーキレバー44L,44Rの操作量を算出し(ステップ#1)、この操作量に基づいて、旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの操作量を算出し(ステップ#2)、傾斜センサ85の検出に基づいて不整地走行車両1の傾斜量が不整地走行車両1の旋回内側への傾斜量が設定値を超えたか否かを判断し(ステップ#3)、超えたと判断した場合に、ステップ#2で算出した旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの操作量に、傾斜量が設定値を超えた場合の補正値を加え(ステップ#4)、さらに、車速センサ86の検出やハンドル操作角検出センサ87などの検出に基づいて遠心力を求めるとともに、求めた遠心力が設定値を超えたか否かを判断し(ステップ#5)、超えたと判断した場合に、ステップ#4で得た旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rの操作量に、遠心力が設定値を超えた場合の補正値を加え(ステップ#6)、それらの補正値を加えた後の操作量で旋回内側の第2ブレーキアクチュエータ82L,82Rを作動させる(ステップ#7)、という不整地走行車両1の傾斜量と旋回時の遠心力とを考慮したブレーキ旋回制御を行うように構成されていてもよい。
この構成によると、不整地走行車両1の旋回半径を小さくするための不整地走行車両1の旋回内側への無理な傾倒を防止することができる上に、遠心力による旋回半径の増大を防止することができる。
例えば、制御部80は、ハンドル操作角検出センサ87の検出と操舵角検出センサ88L,88Rの検出に基づいて、それらの検出値から得られる旋回半径が、予め設定された所定値に近づくように、旋回内側の操舵輪11L,11Rに対する制動力を調整するように構成されていてもよい。
例えば、制御部80は、車速センサ86の検出に基づいて、不整地走行車両1の車速が設定速度を超えたことを検知した場合に、旋回内側の操舵輪11L,11Rに対する制動力を制限して、高速走行時の急旋回を防止するように構成されていてもよい。
例えば、制御部80は、旋回内側の操舵輪11L,11Rを制動するときに、クローラ部20を同時に制動するように構成されていてもよい。
例えば、図17に示すように、制御部80は、傾斜センサ85の検出に基づいて不整地走行車両1の傾斜角が所定の角度に維持されるように昇降機構60,160,260を制御する構成であってもよい。不整地走行車両1の傾斜角は、左右方向のロール角であってもよく、前後方向のピッチ角であってもよく、この両方を含むものであってもよい。傾斜センサ85としては、例えばジャイロセンサなどを用いることができる。このような構成にすることで、不整地走行車両1は、例えば鞍乗り式の着座部13の座面を水平に保った走行ができ、不整地を走行する場合の安定性や運転性の向上を図ることができる。
不整地走行車両1は、バッテリ32からの電力で駆動される構成に限定されるものではなく、原動機としてのエンジン、燃料タンク等を備え、エンジンの動力によって駆動する構成であってもよい。
図20に示すように、昇降機構60は、車体の正面に取り付けられた平行四節リンク方式のリンク機構90と、このリンク機構90と左右の操舵輪11L,11Rとにわたる左右のサスペンション機構91とを備えて、運転者の旋回内側への体重移動に連動して旋回内側の操舵輪11L,11Rが車体に対して大きく上昇して、不整地走行車両1が旋回内側に大きく傾倒するように構成されていてもよい。
5を採用している。
また、図示による説明は省略するが、不整地走行車両1は、車体フレーム12の後部であって、着座部13の後方に配設される別のハンドルと、左右の操舵輪11L,11Rの後方であって、クローラ部20の左右両側にそれぞれ配置されて別のハンドルと連動する別の左右一対の操舵輪を更に備える構成であっても良い。つまり、不整地走行車両1は、前後対称の構成であって、前部と後部にそれぞれ左右一対の操舵輪11L,11Rおよびハンドル40を備える構成であっても良い。このような構成にすることで、不整地走行車両1は、運転者の乗車の向きを前後で入れ換えたスイッチバック方式の走行が可能となる。そして、不整地走行車両1は、走路が狭い場所、例えば林間における走行性が向上される。