JP2019169671A - 磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】大きい磁歪量を示し、かつ機械的強度に優れた磁歪材料を提供する。【解決手段】下記式(1)Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)で表されるFeGaC合金からなる、磁歪材料。【選択図】図3
Description
本発明は、FeGaC合金からなる磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイスに関する。
近年、自律的に通信する機能を持ったモノ同士が情報交換を行い自動的に相互に制御を行う世界、即ち、モノのインターネット(IoT:Internet of Things)の世界が到来することが期待される。IoTが社会に浸透すると、通信機能を持ったIoTデバイスが大量に出回ることになる。センサーのようなIoTデバイスを動作させるためには電源が必要である。しかし、デバイスの数が膨大になると、配線やメンテナンスの時間およびコストの面で電源確保が困難となる。そのため、IoTの実現にはIoTデバイスに適した電力供給技術が求められる。こうした背景に基づくと、我々の身の回りのどこにでもある微小エネルギーを電力に変換して活用する技術である「エネルギーハーベスティング」が重要と考えられる。エネルギー源の1つである振動は、自動車、鉄道、機械、または人等が動く度に必ず発生するため、発生箇所が多くあり、気象、天候に左右されないエネルギー源である。そのため、これら移動体の動きと連動したアプリケーションの電源供給を振動発電でまかなうシステムの構築が、IoTの実現の糸口になり得ると考えられる。
振動発電の発電方式は、磁歪式、圧電式、静電誘導式、および電磁誘導式の4種に分類される。磁歪式は、応力を加えることで磁歪材料内部の磁場の変化に伴って外部へ漏れた磁束を、巻き付けたコイルを通じて電気に変換する方式である。他の方式よりも内部抵抗が小さいため、発電量が大きい。また、磁歪材料として金属合金を使用するため耐久性に優れているという特徴を有する。そのため、磁歪式は、振動発電デバイスの課題の1つである耐久性の向上が可能な方式として期待され得る。
一方、振動発電デバイスの磁歪材料として、FeGa(ガルフェノール)系合金の材料が開発されている。FeGa系合金は、その材料において希土類元素を含まず、かつ磁歪量も大きいため、センサーまたはアクチュエータ等の用途として期待されている。例えば、特許文献1には、車輌用の磁歪式トルクセンサーに用いられるFeGaAl系合金の磁歪材料が開示されている。
具体的には、特許文献1には、Bを1〜2at%、Alを4〜7at%、Gaを12〜14at%含み、残部がFeである合金を用いてなる磁歪式トルクセンサーが記載されている。FeGaAl系合金について、添加元素とその添加量、組織、熱処理等を適切に制御することにより、合金からなる磁歪材料の機械的強度を向上させることができるとされている。
しかしながら、現状の磁歪式振動発電デバイスでは発電密度(体積当たりの発電量)が小さく、IoTの実現となり得る小型化を実現できていない。実用化には、発電密度と比例関係にある磁歪材料の磁歪量向上により、デバイスの発電密度を向上させることが必要である。例えば、タイヤ空気圧監視システムや工場内センサーネットワークに磁歪式振動発電デバイスを適用する場合、消費電力密度は約0.3mW/cm3が求められ、磁歪量としては400ppm以上が必要となる。特許文献1に記載されている磁歪材料は、機械的強度には優れるものの、磁歪量は約50ppmと小さく、振動発電デバイスとして小型化を実現できない。
本発明は、大きい磁歪量を示し、かつ機械的強度に優れた磁歪材料を提供することを目的とする。
本発明の1つの要旨によれば、下記式(1)
Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)
で表されるFeGaC合金からなる、
磁歪材料が提供される。
Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)
で表されるFeGaC合金からなる、
磁歪材料が提供される。
本発明の1つの態様において、前記式(1)中、xおよびyは、y≦0.5x−8、y≧0.5x−8.75、y≧−x+19かつy≦−x+19.75を満たし得る。
本発明の1つの態様において、前記磁歪材料の最大歪み方向に対する、前記FeGaC合金の<100>方位の方位差が、0°以上10°以下の範囲にあり得る。
本発明のもう1つの要旨によれば、前記磁歪材料を含む磁歪式デバイスであって、
前記磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、前記磁歪材料の最大歪み方向が0°以上10°以下の傾斜角度をなすように構成されている、
磁歪式デバイスが提供される。
前記磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、前記磁歪材料の最大歪み方向が0°以上10°以下の傾斜角度をなすように構成されている、
磁歪式デバイスが提供される。
本発明によれば、大きい磁歪量を示し、かつ機械的強度に優れた磁歪材料が提供される。
以下、本発明の実施形態における磁歪材料およびその製造方法、ならびに磁歪式デバイスについて説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
<磁歪材料および磁歪式デバイス>
本実施形態における磁歪材料は、
下記式(1)
Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)
で表されるFeGaC合金からなる。
本実施形態における磁歪材料は、
下記式(1)
Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)
で表されるFeGaC合金からなる。
本開示において「磁歪材料」とは、磁界が印加されることによって寸法変化を生じ得る材料をいう。本実施形態の磁歪材料は、上記FeGaC合金からなる限り、任意の適切な形態または形状を有し得る。磁歪材料は、任意の適切な形状を有し得、バルク状(または塊状)、例えば円柱形状、立方体形状、直方体形状またはその他の立体形状を有し得、あるいはシート状、例えば円形、楕円形、矩形またはその他の平面形状(または表面)を有するシート(あるいは薄膜状、薄帯状等)であり得る。
本開示において、元素の「含有率」とは、FeGaC合金全体の原子数に対する各元素の原子数の割合であり、at%(原子パーセント)の単位を用いて表される。より詳細には、FeGaC合金を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析することにより、各元素の含有率を測定することができる。
本実施形態の磁歪材料におけるFeGaC合金の組成は、列挙した元素で実質的に構成されている限り、不可避的に混入する微量元素(例えば、酸素0.005at%未満)を含んでいてもよい。
本実施形態における磁歪材料は、FeGa合金組成にCを添加することにより、Fe格子内に正方晶ひずみを誘起させることにより、高磁歪量化を実現することができる。FeGaC合金におけるC含有率が上記の式で表される範囲(y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5、後述する図3参照)にあることにより、Fe格子内に正方晶ひずみを誘起させることができ、特許文献1に記載されたような従来のFeGaAl系合金と比較して、磁歪量の向上を実現し、かつ機械的強度をも維持することができる。
磁歪量とは、磁歪材料における磁歪効果による寸法変化の割合をいう。より詳細には、本開示では、磁歪量(ppm)は、歪みゲージのゲージ軸に対して平行に磁場を印加した際の試料の歪みから、歪みゲージのゲージ軸に対して垂直に磁場を印加した際に測定される歪みを差し引いた値で表される。
さらに、本実施形態における磁歪材料は、上記式(1)中、xおよびyは、y≦0.5x−8、y≧0.5x−8.75、y≧−x+19かつy≦−x+19.75を満たすこと(後述する図4参照)によって、より効果的に高磁歪量化を実現することができる。
本実施形態において、FeGaC合金は任意の結晶構造を有し得、例えば単結晶または多結晶の結晶構造を有していてよい。
本実施形態において、例えば、磁歪材料の最大歪み方向に対する、FeGaC合金の<100>方位の方位差は、0°以上10°以下の範囲とすることができる。かかる方位差は、好ましくは0°以上8°以下、より好ましくは0°以上6°以下、さらに好ましくは0°以上4°以下である。
磁歪材料をこのような結晶状態とすることによって、良好かつ容易に、より効率的に磁歪特性を得ることができ、後述する磁歪式デバイスに用いられる際に、より好適に利用され得る。これは、本発明はいかなる理論にも拘束されないが、FeGaC合金では<100>方位が磁化させ易い方位であり、磁歪材料の最大歪み方向に対するFeGaC合金の<100>方位の方位差を10°以下の範囲としてできるだけ小さくすることにより、より効率的に磁歪特性を得る(上記方位差が10°を超える場合と比較して、例えば、同じ磁場印加でより大きい磁歪量が得られ、あるいは、より小さい磁場印加で同等の磁歪量が得られる)ことによると考えられる。
なお、本開示において、「磁歪材料の最大歪み方向」とは、任意の形状であってよい磁歪材料に対して、磁場を印加した場合に、磁歪材料の歪み(寸法変化割合)が最大となる方向を意味する(磁歪材料の結晶構造が不明な場合には、「磁歪材料の最大歪み方向」は、例えば、磁場の印加方向を適宜調整しながら磁歪材料の任意方向における歪みを測定して試行錯誤的に決定可能である)。また、本開示において、磁歪材料の最大歪み方向に対する、FeGaC合金の<100>方位の方位差は、公知の方法によって決定され得るが、例えばEBSD(Electron BackScatter Diffraction)法により決定され得る。より詳細には、かかる方位差は、本実施形態の磁歪材料のFeGaC合金の表面に対してEBSD法による結晶方位マップを適用し、磁歪材料の最大歪み方向(これは試料方向または試料座標系における指定方向として理解される)に対する<100>方位の分布状況を測定することによって決定できる(当該表面は、磁歪材料が本来有していた表面であっても、結晶方位マップの適用に際して露出させた表面であってもよく、磁歪材料の最大歪み方向に従って選択され得る)。具体的には、例えば、「磁歪材料の最大歪み方向に対する、FeGaC合金の<100>方位の方位差が、0°以上10°以下の範囲にある」とは、この測定の際に、磁歪材料の最大歪み方向に対して<100>方位が0°以上10°以下で配向している測定点を求めた場合に、測定可能領域中の測定点に占めるかかる測定点の割合が100%であること、即ち、測定可能領域中の全ての測定点において、磁歪材料の最大歪み方向に対して<100>方位が0°以上10°以下で配向していることを意味する。方位差に関する他の数値範囲についても、同様に理解され得る。
また、本実施形態において、上記のような磁歪材料を含む磁歪式デバイスも提供される。本開示において「磁歪式デバイス」とは、上記磁歪材料を含むもの、より詳細には該磁歪材料を構成要素(例えば磁歪素子)として含み、それを利用してエネルギー(例えば発電エネルギー)を取り出し得る構造となっているデバイスを指す。具体的には、例えば磁歪式振動発電デバイス、磁歪式センサーまたは磁歪式アクチュエータ等の各種磁歪式機器が挙げられる。これらのデバイスには、上記磁歪材料が各々の機器に適した構造および/または形状等でその一部として含まれる。
本実施形態の磁歪式デバイスは、磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向が0°以上10°以下の傾斜角度をなすように構成され得る。傾斜角度は、より好ましくは0°以上8°以下、さらに好ましくは0°以上6°以下、よりさらに好ましくは0°以上4°以下である。
磁歪式デバイスをこのような傾斜角度で構成することによって、より効率的に磁歪特性を得ることができる。これは、磁歪材料の最大歪み方向と、磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向とがなす傾斜角度を10°以下の範囲としてできるだけ小さくすることにより、磁歪材料の磁歪特性をより効率的に利用できる(上記傾斜角度が10°を超える場合と比較して、例えば、同じ磁場印加でより大きい磁歪量をデバイスに利用することができ、あるいは、より小さい磁場印加で同等の磁歪量をデバイスに利用することができる)ということによる。
なお、本開示において、磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向は、例えば磁歪式デバイスからエネルギーを取り出すために、磁歪式デバイスにおいて磁歪材料が寸法変化することが予定または所望される方向であって、磁歪式デバイスにおける磁歪材料への磁場の印加方向ならびに磁歪式デバイスの形状、構造および/または用途等に応じて定められ得る方向である。本開示において、磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対する、磁歪材料の最大歪み方向の傾斜角度は、磁歪材料が磁歪式デバイスに組み込まれた状態において決定される。
磁歪式デバイスの具体的な例について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態における磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向が0°の傾斜角度をなすように構成されている1例を上方から見た概略図である。図1に示すように、磁歪式デバイス1は、その寸法変化の予定方向α1に対して、前述の手法により決定される磁歪材料2の最大歪み方向β1は平行となっており、即ち0°の傾斜角度となっている。図2は、実施形態における磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向がθの傾斜角度をなすように構成されている1例を上方から見た概略図である。図2に示すように、磁歪式デバイス2は、その寸法変化の予定方向α2に対して、前述の手法により決定される磁歪材料4の最大歪み方向β2はθの傾斜角度をなしている。この場合、θは、前述したように、0°以上10°以下の傾斜角度をなし得る。このような傾斜角度で構成され得ることによって、より効率的に磁歪材料による磁歪特性を得ることができる。
<磁歪材料の製造方法>
本実施形態にかかる磁歪材料の製造方法は、該FeGaC合金の磁歪材料が得られる方法であれば、任意の適切な合金製造方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、チョクラルスキー法(CZ法)、ブリッジマン法、または急冷凝固法等が挙げられる。CZ法により製造すると、大型の結晶において、化学組成および結晶方位を精度良く製造することができる。
本実施形態にかかる磁歪材料の製造方法は、該FeGaC合金の磁歪材料が得られる方法であれば、任意の適切な合金製造方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、チョクラルスキー法(CZ法)、ブリッジマン法、または急冷凝固法等が挙げられる。CZ法により製造すると、大型の結晶において、化学組成および結晶方位を精度良く製造することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、FeGa合金にCを添加したFeGaC合金の試料を作製して、機械的強度および磁歪量の測定を行い、Cの添加の有効性を確認する。
実施例1では、FeGa合金にCを添加したFeGaC合金の試料を作製して、機械的強度および磁歪量の測定を行い、Cの添加の有効性を確認する。
<FeGaC合金の測定用試料の作製>
後の表1に示す、Ga含有率(at%)およびC含有率(at%)と、残部のFe含有率(at%)とで構成される複数のFeGaC合金の試料(実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3)を準備する。
後の表1に示す、Ga含有率(at%)およびC含有率(at%)と、残部のFe含有率(at%)とで構成される複数のFeGaC合金の試料(実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3)を準備する。
各合金試料を作製するため、まず、Fe(純度99.999%)、Ga(純度99.999%)およびC(純度99.99%)を、電子天秤を用いてそれぞれ秤量する。各合金試料における各元素の含有率は、EPMA分析により測定および調整する。
各合金試料は、高周波誘導加熱型CZ炉を用いて育成する。内径φ50mmのグラファイトルツボの内側に、外径φ45mmの緻密質アルミナ製ルツボを配置し、秤量した各々の合金試料についてのFe、GaおよびCの原料400gを投入する。原料を投入したルツボを育成炉に投入し、炉内を真空にした後、アルゴンガスを導入する。その後、炉内が大気圧となった時点で、装置の加熱を開始し、融液となるまで、12時間かけて加熱する。<100>方位に切り出したFeGa単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液の近くまで降下させる。種結晶を5ppmで回転させながら徐々に降下させて、種結晶の先端を融液に接触させる。温度を徐々に降下させながら、その後、引き上げ速度1.0mm/hrの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行う。その結果、直径10mm、直胴部の長さ80mmの単結晶合金が得られる。ワイヤー放電加工によって、得られた単結晶合金を以下に述べる測定用の各試料形状に切り出す。
<機械的強度(引張強度(MPa)および伸び(%))の測定>
機械的強度の測定は、引張試験機を用いて室温環境下(25℃)で行う。測定のための試料は、ダンベル形状の試験片とし、固定部を直径6mm×長さ20mmとし、くびれ部を直径3mm×長さ20mmとする。試験機のつかみ具間距離を20mmに設定し、試験片を固定後、破断するまで軸方向に荷重を加える。伸び(%)は、試験前のつかみ具間距離20mmに対する、破断時のつかみ具間距離の増加分の割合とする。例えば、試験片破断時のつかみ具間距離が40mmの場合、伸びは(40−20)/20×100=100(%)となる。
機械的強度の測定は、引張試験機を用いて室温環境下(25℃)で行う。測定のための試料は、ダンベル形状の試験片とし、固定部を直径6mm×長さ20mmとし、くびれ部を直径3mm×長さ20mmとする。試験機のつかみ具間距離を20mmに設定し、試験片を固定後、破断するまで軸方向に荷重を加える。伸び(%)は、試験前のつかみ具間距離20mmに対する、破断時のつかみ具間距離の増加分の割合とする。例えば、試験片破断時のつかみ具間距離が40mmの場合、伸びは(40−20)/20×100=100(%)となる。
<磁歪量(ppm)の測定>
磁歪量測定は、一般的に用いられている歪みゲージ法によって室温環境下(25℃)で行う。磁場発生装置には振動材料型磁力計を用いる。磁場の強さは5000Oeとする。測定のための試料は、前述の単結晶合金(直径10mm×直胴部の長さ80mm)を、直径10mm×厚み1mmの形状に切り出したものを使用する。この際、結晶の磁化容易軸である<100>方位が、試料の厚み方向になるように切り出す。即ち、直径10mmである試料の上面及び底面方向、並びに1mmの厚み方向が、FeGaC合金の<100>方位に対して、0°となるようにする。歪みゲージは直径10mmの試料の上面に、貼り付ける。この際、歪みゲージをFeGaC合金の<100>方位に対して平行となるように貼付する。即ち、試料の磁歪量の特性は、磁歪エネルギーの取り出し方向に対しても、最大歪み方向と平行となる(0°の傾斜角度をなす)ように測定される。歪みゲージのゲージ軸に対して平行に磁場を印加した際の試料の歪み(λ//)と、歪みゲージのゲージ軸に対して垂直に磁場を印加した際の試料の歪み(λ⊥)とをデータロガーで記録する。記録された数値から、磁歪量λ(ppm)を、λ(ppm)=λ//−λ⊥として算出し、評価する。
磁歪量測定は、一般的に用いられている歪みゲージ法によって室温環境下(25℃)で行う。磁場発生装置には振動材料型磁力計を用いる。磁場の強さは5000Oeとする。測定のための試料は、前述の単結晶合金(直径10mm×直胴部の長さ80mm)を、直径10mm×厚み1mmの形状に切り出したものを使用する。この際、結晶の磁化容易軸である<100>方位が、試料の厚み方向になるように切り出す。即ち、直径10mmである試料の上面及び底面方向、並びに1mmの厚み方向が、FeGaC合金の<100>方位に対して、0°となるようにする。歪みゲージは直径10mmの試料の上面に、貼り付ける。この際、歪みゲージをFeGaC合金の<100>方位に対して平行となるように貼付する。即ち、試料の磁歪量の特性は、磁歪エネルギーの取り出し方向に対しても、最大歪み方向と平行となる(0°の傾斜角度をなす)ように測定される。歪みゲージのゲージ軸に対して平行に磁場を印加した際の試料の歪み(λ//)と、歪みゲージのゲージ軸に対して垂直に磁場を印加した際の試料の歪み(λ⊥)とをデータロガーで記録する。記録された数値から、磁歪量λ(ppm)を、λ(ppm)=λ//−λ⊥として算出し、評価する。
以下の表1に、実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3のFeGaC合金の各試料の合金組成と併せて、機械的強度(引張強度および伸び)ならびに磁歪量の測定の結果を示す。
表1に示すように、FeGa合金にCを添加した実施例1−1〜実施例1−3は、引張強度400MPa以上かつ伸び1%以上と優れた機械的特性を維持しつつ、磁歪量が400ppm以上となっている。この結果は、Cを添加していない比較例1−1〜比較例1−3よりも改善されている。これは、Cの添加によりFe格子内に正方晶ひずみを誘起させることで磁歪量が向上するためと考えられる。従って、機械的特性を維持しつつ磁歪量を向上させるためにはCの添加が有効であることが分かる。
(実施例2)
実施例2では、FeGaC合金においてC含有率(at%)を変化させた様々な試料を作製して、磁歪量を測定し、Cの添加が有効となるC含有率(at%)の範囲を明確化する。
実施例2では、FeGaC合金においてC含有率(at%)を変化させた様々な試料を作製して、磁歪量を測定し、Cの添加が有効となるC含有率(at%)の範囲を明確化する。
<FeGaC合金の測定用試料の作製>
測定用試料としては、後の表2に示すGa含有率(at%)およびC含有率(at%)と、残部のFe(表2に数値は示さず)とで構成される複数のFeGaC合金の試料(実施例2−1〜実施例2−13および比較例2−1〜比較例2−7)を準備する。FeGaC単結晶合金の測定用試料の作製方法および測定用試料の切り出し方法(ワイヤー放電加工)は、前述した実施例1と同様である。
測定用試料としては、後の表2に示すGa含有率(at%)およびC含有率(at%)と、残部のFe(表2に数値は示さず)とで構成される複数のFeGaC合金の試料(実施例2−1〜実施例2−13および比較例2−1〜比較例2−7)を準備する。FeGaC単結晶合金の測定用試料の作製方法および測定用試料の切り出し方法(ワイヤー放電加工)は、前述した実施例1と同様である。
<磁歪量(ppm)の測定および判定>
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状および測定方法は前述した実施例1の方法と同様である。磁歪材料を振動発電デバイスに使用する場合、磁歪量が400ppm未満であると、発電密度が0.3mW/cm3未満となる。そのため、磁歪量(ppm)の有効性は、400ppm以上を〇とし、400ppm未満を×として判定する。さらに、磁歪材料をトルクセンサーに使用する場合、磁歪量が480ppm以上であれば1V/Nm以上の出力感度が得られ、電動アシスト自転車等に使用することができる。そのため、磁歪量が480ppm以上である試料を、◎と判定する。
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状および測定方法は前述した実施例1の方法と同様である。磁歪材料を振動発電デバイスに使用する場合、磁歪量が400ppm未満であると、発電密度が0.3mW/cm3未満となる。そのため、磁歪量(ppm)の有効性は、400ppm以上を〇とし、400ppm未満を×として判定する。さらに、磁歪材料をトルクセンサーに使用する場合、磁歪量が480ppm以上であれば1V/Nm以上の出力感度が得られ、電動アシスト自転車等に使用することができる。そのため、磁歪量が480ppm以上である試料を、◎と判定する。
表2に示すように、実施例2−1〜実施例2−13の磁歪量は400ppm以上となり、判定は全て◎または〇となる。これはFeGa合金にCを添加したことにより、Fe格子内に正方晶ひずみを誘起させることができるためと考えられる。
比較例2−1および比較例2−2においてC含有率が0.4at%の場合、磁歪量は400ppm未満となり、判定は×となる。これは、C含有量が少ないため、Fe格子内に正方晶ひずみを誘起させるCの添加の効果を発現させることができないためと考えられる。
比較例2−3においてGa含有率が16.4at%、C含有率が0.5at%の場合、磁歪量が400ppm未満となり、判定は×となる。これは、Ga含有量がFe含有量に対して少ないため、αFe相が主体となり磁歪量が低下するため、Cの添加の効果が得られなくなるものと考えられる。
比較例2−4においてGa含有率が19.6at%、C含有率が0.5at%の場合、または比較例2−6においてGa含有率が19at%、C含有率が1.1at%の場合、磁歪量が400ppm未満となり、判定は×となる。これは、GaとCの合計含有率が20at%を上回ることで、FeGa合金の結晶構造である体心立方構造が崩れ、面心立方構造の規則格子のFe3Ga等の化合物が析出するため磁歪量が低下するものと考えられる。
比較例2−5においてGa含有率が17.5at%、C含有率が1.1at%の場合、磁歪量が400ppm未満となり、判定は×となる。これは、Ga含有率に対してC含有率が多いとき、CがFe格子内に侵入することができないため磁歪量が低下するものと考えられる。
比較例2−7においてC含有率が1.6at%の場合、磁歪量が400ppm未満となり、判定は×となる。これは、FeGa合金への固溶限界に到達するためFeC化合物が析出し、磁歪量が低下するものと考えられる。
図3は、本発明の実施例2における磁歪量400ppm以上となるGa含有率とC含有率との関係を表す図である。縦軸はC含有率(at%)であり、横軸はGa含有率(at%)である。黒丸部は、実施例2−1〜実施例2−13における磁歪量が400ppm以上である箇所を表している。白丸部は、比較例2−1〜比較例2−7における磁歪量が400ppm未満である箇所を表している。図3に示されるように、C含有率とGa含有率との関係において、磁歪量が400ppm以上となる境界が存在する。この境界に沿った近似線を求めると、それぞれy=0.5x−7.75、y=−x+20、y=0.5であることが分かる。つまり、C含有率とGa含有率が、図3において斜線部で示すこれらの近似線で囲まれた線上を含む領域内部に存在すれば、磁歪量が400ppm以上となる。即ち、式(1):Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)で表されるFeGaC合金であれば、磁歪量が400ppm以上となる。
さらに、図4は、本発明の実施例2における磁歪量480ppm以上となるGa含有率とC含有率との関係を表す図である。具体的には、図4は、磁歪量が400ppm以上である黒丸部のうち、特に、磁歪量が480ppm以上である箇所を二重丸部で表した図である。図4に示されるように、C含有率とGa含有率との関係において、磁歪量が480ppm以上となる境界が存在する。この境界に沿った近似線を求めると、それぞれy=0.5x−8、y=0.5x−8.75、y=−x+19、y=−x+19.75であることが分かる。つまり、C含有率とGa含有率が、図4において斜線部内のこれらの近似線で囲まれた破線上を含む領域内部に存在すれば、磁歪量が480ppm以上となる。即ち、式(1):Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−8、y≧0.5x−8.75、y≧−x+19かつy≦−x+19.75を満たす)で表されるFeGaC合金であれば、磁歪量が480ppm以上となる。
(実施例3)
実施例3では、FeGaC単結晶合金の測定用の試料を切り出す際に、<100>方位に対する傾斜角度を変化させた様々な試料を作製して、磁歪量を測定し、合金の<100>方位に対する傾斜角度が磁歪量に及ぼす影響を調べる。
実施例3では、FeGaC単結晶合金の測定用の試料を切り出す際に、<100>方位に対する傾斜角度を変化させた様々な試料を作製して、磁歪量を測定し、合金の<100>方位に対する傾斜角度が磁歪量に及ぼす影響を調べる。
<FeGaC合金の測定用試料の作製>
測定用試料としては、後の表3に示すように、Ga含有率17.5at%およびC含有率1at%と、残部のFeとで構成されるFeGaC合金の試料(実施例3−1〜実施例3−6および比較例3−1〜比較例3−2)を準備する。FeGaC単結晶合金の測定用試料の作製方法および測定用試料の切り出し方法(ワイヤー放電加工)は前述した実施例1と同様である。
測定用試料としては、後の表3に示すように、Ga含有率17.5at%およびC含有率1at%と、残部のFeとで構成されるFeGaC合金の試料(実施例3−1〜実施例3−6および比較例3−1〜比較例3−2)を準備する。FeGaC単結晶合金の測定用試料の作製方法および測定用試料の切り出し方法(ワイヤー放電加工)は前述した実施例1と同様である。
<磁歪量(ppm)の測定および判定>
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状は、直径10mm×厚み1mmの形状であり、実施例1と同様である。しかし、試料毎において、直径10mmの試料の上面および底面(試料の厚み方向に直交する面と平行な面)が、FeGaC合金の単結晶の<100>方位に対して、以下の表3に示すように異なる傾斜角度をなすように切り出す。各試料の磁歪量(ppm)の測定方法は前述した実施例1の方法と同様であるが、傾斜角度を付して切り出される本実施例3に係る試料の場合であっても、歪みゲージは直径10mmの試料の上面において同様に貼り付けられる。従って、試料の磁歪量の特性は、磁歪エネルギーの取り出し方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向が以下の表3と同様の傾斜角度をなすように測定されることになる。磁歪量(ppm)の有効性は、400ppm以上を〇とし、400ppm未満を×として判定する。
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状は、直径10mm×厚み1mmの形状であり、実施例1と同様である。しかし、試料毎において、直径10mmの試料の上面および底面(試料の厚み方向に直交する面と平行な面)が、FeGaC合金の単結晶の<100>方位に対して、以下の表3に示すように異なる傾斜角度をなすように切り出す。各試料の磁歪量(ppm)の測定方法は前述した実施例1の方法と同様であるが、傾斜角度を付して切り出される本実施例3に係る試料の場合であっても、歪みゲージは直径10mmの試料の上面において同様に貼り付けられる。従って、試料の磁歪量の特性は、磁歪エネルギーの取り出し方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向が以下の表3と同様の傾斜角度をなすように測定されることになる。磁歪量(ppm)の有効性は、400ppm以上を〇とし、400ppm未満を×として判定する。
表3に示すように、Ga含有率を17.5at%とし、C含有率を1at%とした場合には、傾斜角度を0°以上10°以下とした実施例3−1〜実施例3−6において、磁歪量が400ppm以上となり、同様の合金組成を有する比較例3−1〜比較例3−2と比較して、良好な結果が得られる。これは、FeGaC合金の磁化容易軸が<100>方位であるためと考えられる。従って、より効率的に磁歪特性を得るためには、実用的には例えば磁歪式デバイスのエネルギーを取り出すための寸法変化を所望等する方向と、磁歪材料の最大歪み方向とが、0°以上10°以下の傾斜角度をなすように構成することがより有益であることが分かる。
本発明の磁歪材料は、大きい磁歪量を示し、かつ機械的強度に優れているため、IoTの実現の糸口になり得る磁歪式振動発電デバイス、磁歪式センサー、または磁歪式アクチュエータ等に適用することができる。
1、3 磁歪式デバイス
2、4 磁歪材料
2、4 磁歪材料
Claims (4)
- 下記式(1)
Fe(100−x−y)GaxCy・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびC含有率(at%)であり、y≦0.5x−7.75、y≦−x+20かつy≧0.5を満たす)
で表されるFeGaC合金からなる、
磁歪材料。 - 前記式(1)中、xおよびyは、y≦0.5x−8、y≧0.5x−8.75、y≧−x+19かつy≦−x+19.75を満たす、請求項1に記載の磁歪材料。
- 前記磁歪材料の最大歪み方向に対する、前記FeGaC合金の<100>方位の方位差が、0°以上10°以下の範囲にある、請求項1または2に記載の磁歪材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁歪材料を含む磁歪式デバイスであって、
前記磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、前記磁歪材料の最大歪み方向が0°以上10°以下の傾斜角度をなすように構成されている、
磁歪式デバイス。
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-
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- 2018-03-26 JP JP2018058312A patent/JP2019169671A/ja active Pending
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2019
- 2019-02-07 US US16/270,533 patent/US20190296219A1/en not_active Abandoned
- 2019-02-19 CN CN201910125627.2A patent/CN110364618A/zh active Pending
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Title |
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MIANLIANG HUANG: "JOURNAL OF APPLIED PHYSICS", EFFECT OF CARBON ADDITION ON THE SINGLE CRYSTALLINE MAGNETOSTRICTION OF FE-X (X=AL AND GA) ALLOYS, vol. 107, JPN7021003431, 2010, pages 053520 - 1, ISSN: 0004582383 * |
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