JP2021158265A - 磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】大きい磁歪量を示し、かつ機械的強度に優れた磁歪材料を提供する。【解決手段】磁歪材料は、下記式(1):Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、4つの不等式:y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)で表されるFeGaEr合金から成る。【選択図】図5
Description
本発明は、FeGa系合金から成る磁歪材料、特にFeGaEr系合金磁歪材料に関する。更に、本発明は、そのような磁歪材料を用いてその磁歪効果を利用した磁歪式デバイスに関する。磁歪材料は、例えば磁歪式振動発電デバイスに使用できる。
近年、自律的に通信する機能を持ったモノ同士が情報交換を行い、自動的に制御を行う世界、モノのインターネットIoT(Internet of Things)世界の到来への期待が高まっている。IoTが社会に浸透すると、通信機能を持ったIoTデバイスが大量に出回ることになる。センサーのようなIoTデバイスを動作させるためには電源が必要である。しかし、デバイスの数が膨大になると、配線やメンテナンスの時間およびコストの面で電源確保が困難となる。そのため、IoTの実現にはIoTデバイスに適した電力供給技術が求められる。こうした背景に基づくと、我々の身の回りのどこにでもある微小エネルギーを電力に変換して活用する技術である「エネルギーハーベスティング」が重要と考えられる。エネルギー源の1つである振動は、自動車、鉄道、機械、または人等が動く度に必ず発生するため、発生箇所が多くあり、気象、天候に左右されないエネルギー源である。そのため、これら移動体の動きと連動したアプリケーションの電源供給を振動発電でまかなうシステムの構築が、IoTの実現の糸口になり得ると考えられる。
振動発電の発電方式は、磁歪式、圧電式、静電誘導式、および電磁誘導式の4種に分類される。磁歪式は、応力を加えることで磁歪材料内部の磁場の変化に伴って外部へ漏れた磁束を、巻き付けたコイルを通じて電気に変換する方式である。他の方式よりも内部抵抗が小さいため、発電量が大きい。また、磁歪材料として金属合金を使用するため耐久性に優れているという特徴を有する。そのため、磁歪式は振動発電デバイスの課題のひとつである耐久性の向上が可能な方式として期待されている。
しかしながら、現状の磁歪式振動発電デバイスでは発電密度(体積当たりの発電量)が小さく、小型化を実現できておらず実用化に至っていない。実用化には、発電密度と比例関係にある磁歪材料の磁歪量を向上させることにより、デバイスの発電密度を向上させて小型化を実現することが必須となっている。例えば、タイヤ空気圧監視システムや工場内センサーネットワークに磁歪式振動発電デバイスを適用する場合、約0.3mW/cm3の消費電力密度が求められ、磁歪量としては400ppm以上が必要となる。
磁歪式振動発電デバイスに使用される磁歪材料としては、例えば特許文献1に記載されているBを1at%以上2at%以下、Alを4at%以上7at%以下、Gaを12at%以上14at%以下含み、残部がFeである合金がある。この合金は、機械的強度を向上させるため、一般的に広く知られているFeGa合金(ガルフェノール)にAl、ホウ素等を添加した磁歪材料であり、薄膜状、薄帯状、バルク状態等でも使用することができ、センサー、アクチュエーター等に用いる材料としても期待されている。
しかしながら、特許文献1に記載されている磁歪材料は、機械的強度に優れるものの、磁歪量は約50ppmと小さく、振動発電デバイスの小型化を実現できない。
本発明は、上述の従来の課題の磁歪材料と比較して、磁歪量を向上させる、例えば400ppm以上の磁歪量をもたらしながらも、同等の機械的強度を有する磁歪材料を提供することを課題とする。
本発明の1つの要旨によれば、次式(1):
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、4つの不等式:y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)
で表されるFeGaEr合金から成る磁歪材料が提供される。
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、4つの不等式:y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)
で表されるFeGaEr合金から成る磁歪材料が提供される。
即ち、本発明の磁歪材料において、合金を構成するGa、ErおよびFeの原子数を基準として、Gaの含有率(at%または原子%)がx%であり、また、Erの含有率(at%または原子%)がy%であり、Feの含有率(at%または原子%)は、(100−x−y)%となる。従って、x−y直交座標系において、点(x,y)は、4つの直線:y=−1.5x+31.0、y=1.0、y=4.0、およびx=17.0を満足する線上またはこれらの直線によって囲まれる領域内に存在する。このような組成を有する磁歪材料は、従来の磁歪材料と比較して、向上した磁歪量、例えば400ppm以上の磁歪量を達成できる。
尚、本発明の磁歪材料は、本発明の磁歪材料を得るに際して用いる原料に不可避的に含まれる他の元素を含んでもよい。具体的には、本発明の磁歪材料は、微量元素として例えば酸素を0.005at%未満の量で含んでいてもよい。別の態様では、磁歪量が例えば400ppm以上であり、かつ、従来の磁歪材料と同等の引張強度(例えば350MPa以上の引張強度)を有する限り、本発明の磁歪材料は、必要に応じて他の元素を含むことを排除するものではない。
本発明の磁歪材料の好ましい1つの態様では、Gaの含有率x(at%)およびErの含有率y(at%)が、18≦x≦19および1.0≦y≦1.5を満足し、より大きい磁歪量、例えば490ppm以上の磁歪量を達成できる。
本発明の別の要旨によれば、上述の磁歪材料から形成される、所定の構造を有する磁歪素子が提供される。この磁歪素子は、振動発電デバイスのような磁歪式デバイスにて用いられ、磁歪効果または逆磁歪効果によって意図するデバイスの機能を発現できるように適切に選択された構造(例えば形状、寸法等)を有する。
本発明の更に別の要旨によれば、上述の本発明の磁歪材料を磁歪素子として有する磁歪式デバイスが提供される。このデバイスにおいて、磁歪材料の磁歪効果による寸法変化を予定している方向(「寸法変化予定方向」とも呼ぶ)に対する、磁歪材料が最大限に歪むことができる方向(「最大歪み可能方向」と呼ぶ)の角度的なずれ(即ち、これらの方向の角度差)が0°〜10°となるように磁歪素子が配置されている。
本発明によれば、既知の磁歪材料との比較において、磁歪量が向上し、例えば少なくとも400ppmであり、かつ、機械的強度が同等に優れ、好ましくは向上した磁歪材料を提供することができる。
以下、本発明の実施形態における磁歪材料およびその製造方法、磁歪素子ならびに磁歪式デバイスについて説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
本実施形態における磁歪材料は、次式(1):
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式中、添字100−x−y、xおよびyはそれぞれ対応する元素の原子%(at%)であり、Ga含有率x(at%)をx軸とし、Er含有率y(at%)をy軸とするx−y直交座標系において、点(x,y)は4本の直線:y=−1.5x+31、y=1.0、y=4.0、およびx=17.0によって囲まれた領域内(但し、この領域を囲む線上を含む)に位置する)
で表されるFeGaEr合金から実質的に成る。
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式中、添字100−x−y、xおよびyはそれぞれ対応する元素の原子%(at%)であり、Ga含有率x(at%)をx軸とし、Er含有率y(at%)をy軸とするx−y直交座標系において、点(x,y)は4本の直線:y=−1.5x+31、y=1.0、y=4.0、およびx=17.0によって囲まれた領域内(但し、この領域を囲む線上を含む)に位置する)
で表されるFeGaEr合金から実質的に成る。
本開示において「磁歪材料」とは、磁界が印加されることによって寸法変化を生じ得る材料を意味し、その製造には、本発明のFeGaEr合金から成る磁歪材料を得ることができる限り、いずれの適切な既知の製造方法を用いてもよい。
得られた本発明の磁歪材料を既知の適切な方法(例えばワイヤー放電加工)によって加工して、本発明の磁歪素子を得ることができる。磁歪素子は、任意の適切な構造(例えば形状および寸法等)を有してよい。例えば、バルク状(または塊状)、例えば円柱形状、立方体形状、直方体形状またはその他の立体形状を有してよく、あるいはシート状、例えば円形、楕円形、矩形またはその他の平面形状(または表面)を有するシート(あるいは薄膜状、薄帯状等)であってよい。更に、これらの形状の種々の組み合わせであってもよい。
本開示において、元素の「含有率」とは、FeGaEr合金の総原子数に対する各元素の原子数の割合であり、at%(原子パーセント)の単位を用いて表される。本開示において、「含有率」は、合金を得るに際して仕込む原料に含まれる元素の割合と同等であると考えてよい。FeGaEr合金を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析することにより、各元素の含有率を測定してもよい。
本発明の磁歪材料において、Er含有率が上述の領域内にあることによって、FeやGaよりも原子半径の大きいEr添加により誘起される局所的なひずみ、およびErのもつ4f電子の四重極モーメントに起因する結晶磁気異方性への影響により、特許文献1に記載されたFeGaAl系合金と比較して、同等の機械的強度を保持しつつ磁歪量の向上を実現することができる。
尚、本開示において、「磁歪量」は、磁歪材料における磁歪効果による寸法変化の割合をいう。より詳細には、磁歪量(ppm)は、歪みゲージのゲージ軸に対して平行に磁場を印加した際の試料の歪みから、歪みゲージのゲージ軸に対して垂直に磁場を印加した際に測定される歪みを差し引いた値で表される。
本発明の磁性材料は、特に好ましい実施態様では、上記式(1)中、Gaの含有率x(at%)およびErの含有率y(at%)が、18.0≦x≦19.0および1.0≦y≦1.5を満足し、それによって、より大きい磁歪量、例えば490ppm以上の磁歪量を実現できる。
本発明の磁歪材料において、FeGaEr合金はいずれの適切な結晶構造を有してもよく、例えば、磁歪材料は単結晶または多結晶であってよい。磁歪材料を構成するFeGaEr合金は、単結晶であるのが特に好ましく、一般的には大きい磁歪量を実現できる。
本発明によれば、上述のような磁歪材料を含む磁歪式デバイスも提供される。本開示において「磁歪式デバイス」とは、本発明の磁歪材料を磁歪素子として含むものを意味する。このデバイスの1つの態様では、本発明の磁歪式デバイスは、そのような磁歪材料を、デバイスの構成要素である磁歪素子として含み、それを利用してエネルギー(例えば発電エネルギー)を取り出し得る構造となっている。例えば、磁歪式振動発電デバイス、磁歪式センサーまたは磁歪式アクチュエーター等の種々の磁歪式デバイスを本発明の磁歪式デバイスとして挙げることができる。これらのデバイスには、本発明の磁歪材料が各々のデバイスに適した所定の構造(例えば形状および/または寸法等)を有する磁歪素子としてその一部に含まれる。
一般的に、磁歪式デバイスは、それに含まれる磁歪素子としての磁歪材料が予定方向に沿って寸法変化する時に、磁歪効果が最大限に生じて最も効果的に機能するように設計される。そのためには、寸法変化を予定している方向(「寸法変化予定方向」)と、磁歪材料が最大限に歪むことができる方向(「最大歪み可能方向」)とが可及的に一致する(または平行になる)ことが望ましい。一致しない場合、即ち、一方の方向が他方の方向に対して傾斜している場合、これらの方向の角度的なずれ(または一方の方向に対する他方の方向の角度差)は可及的に0°に近いのが好ましい。
本開示において、磁歪材料の「寸法変化予定方向」とは、デバイスに含まれる磁歪素子の寸法が変化すべき方向であり、磁歪式デバイスの用途(または機能)に応じて発現すべき磁歪効果に基づいて所定の方向が選択される。通常、デバイスの用途に応じて、寸法変化予定方向に加えて、素子としての磁歪材料の構造(形状、寸法等)が決まる。
「寸法変化予定方向」とは、例えば磁歪式デバイスからエネルギーを取り出すために、磁歪式デバイスにおいて磁歪材料が寸法変化することが予定または所望される方向であって、磁歪式デバイスにおける磁歪材料への磁場の印加方向ならびに磁歪式デバイスの形状、構造および/または用途等に応じて定められ得る方向である。本開示において、磁歪式デバイスの寸法変化予定方向に対する、磁歪材料の最大歪み可能方向の角度的なずれは、磁歪材料が磁歪式デバイスに組み込まれた状態を想定して決定される。
本開示において、磁歪材料の「最大歪み可能方向」とは、磁歪材料に対して磁場を印加した場合に、磁歪材料の歪み(寸法変化割合)が最大となる方向を意味する。磁歪材料が単結晶である場合、<100>方位が容易磁化方向であり、この方向が磁歪材料の「最大歪み可能方向」となる。磁歪材料の結晶構造が不明な場合、例えば多結晶である場合には、磁歪材料の「最大歪み可能方向」は、例えば、磁場の印加方向を適宜調整しながら磁歪材料の任意方向における歪みを測定して試行錯誤的に「磁歪材料の最大歪み方向」を決定できる。
従って、本発明の磁歪式デバイスにおいて、それに含まれる磁歪材料の「寸法変化予定方向」に対する、磁歪材料の「最大歪み可能方向」の角度的なずれは、好ましくは0°〜10°の範囲内、より好ましくは0°〜8°の範囲内、更により好ましくは0°〜6の範囲内°、最も好ましくは0°〜4°の範囲内、特に最も好ましくは実質的に0°である。この角度的なずれを10°以下の範囲として可及的に小さくすると、(角度的なずれが10°を超える場合と比較して)より効率的に磁歪特性を得ることができる。例えば、1つの態様では。同じ磁場印加でより大きい磁歪量が得られ、あるいは、より小さい磁場印加で同等の磁歪量が得られると考えられる。
磁歪式デバイスの具体的な例について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態における磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、磁歪素子としての磁歪材料の最大歪み方向が0°の傾斜角度をなすように構成されている1例を上方から見た概略図である。図1に示すように、磁歪式デバイス1は、その寸法変化予定方向α1に対して、上述のように決定される磁歪材料2の最大歪み可能方向β1は平行となっており、即ち、0°の角度的なずれとなっている。
図2は、実施形態における磁歪式デバイスの寸法変化の予定方向に対して、磁歪材料の最大歪み方向がθの傾斜角度をなすように構成されている1例を上方から見た概略図である。図2に示すように、磁歪式デバイス2は、その寸法変化予定方向α2に対して、前述の手法により決定される磁歪材料4の最大歪み可能方向β2はθの角度的なずれをなしている。この場合、θは、前述したように、0°以上10°以下の角度的なずれをなし得る。このような傾斜角度で構成され得ることによって、より効率的に磁歪材料による磁歪特性を得ることができる。
本実施形態にかかる磁歪材料の製造方法は、所定の組成を有するFeGaEr合金の磁歪材料が得られる方法であれば、任意の適切な合金製造方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、チョクラルスキー法(CZ法)、ブリッジマン法、または急冷凝固法等が挙げられる。CZ法により製造すると、大型の結晶において、化学組成および結晶方位を精度良く製造することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、FeGa合金にErを添加したFeGaEr合金の試料を作製して、機械的強度および磁歪量の測定を行い、Erが含まれていることの有効性を確認する。
実施例1では、FeGa合金にErを添加したFeGaEr合金の試料を作製して、機械的強度および磁歪量の測定を行い、Erが含まれていることの有効性を確認する。
<FeGaEr合金の測定用試料の作製>
図3の表1に示す、Ga含有率(at%)およびEr含有率(at%)と、残部のFe含有率(at%)とで構成される複数のFeGaEr合金の試料(実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3)を準備する。
図3の表1に示す、Ga含有率(at%)およびEr含有率(at%)と、残部のFe含有率(at%)とで構成される複数のFeGaEr合金の試料(実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3)を準備する。
各合金試料を作製するため、まず、電子天秤を用いて鉄(純度99.999%)、ガリウム(純度99.999%)およびエルビウム(純度99.9%)をそれぞれ秤量する。尚、表1中の各元素の含有率(at%)はこの秤量する量に基づく。
各合金試料は、高周波誘導加熱型CZ炉を用いて育成する。内径φ50mmのグラファイトルツボの内側に、外径φ45mmの緻密質アルミナ製ルツボを配置し、秤量した合金試料400gを投入する。炉内を真空にした後、アルゴンガスを導入する。その後、炉内が大気圧となった時点で、装置の加熱を開始し、融液となるまで、12時間かけて加熱する。<100>方位に切り出したFeGa単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液の近くまで降下させる。種結晶を5rpmで回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら、引上速度1.0mm/hrの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行う。その結果、直径10mm、直胴部の長さ80mmの単結晶合金が得られる。ワイヤー放電加工によって、得られる単結晶合金を以下に述べる測定用の各試料形状に切り出す。
<機械的強度(引張強度(MPa)および伸び(%))の測定>
機械的強度の測定は、引張試験機を用いて室温環境下(25℃)で行う。測定のための試料は、ダンベル形状の試験片とし、固定部を直径6mm×長さ20mmとし、くびれ部を直径3mm×長さ20mmとする。試験機のつかみ具間距離を20mmに設定し、試験片を固定後、破断するまで軸方向に荷重を加える。伸び(%)は、試験前のつかみ具間距離20mmに対する、破断時のつかみ具間距離の増加分の割合とする。例えば、試験片破断時のつかみ具間距離が40mmの場合、伸びは(40−20)/20×100=100(%)となる。
機械的強度の測定は、引張試験機を用いて室温環境下(25℃)で行う。測定のための試料は、ダンベル形状の試験片とし、固定部を直径6mm×長さ20mmとし、くびれ部を直径3mm×長さ20mmとする。試験機のつかみ具間距離を20mmに設定し、試験片を固定後、破断するまで軸方向に荷重を加える。伸び(%)は、試験前のつかみ具間距離20mmに対する、破断時のつかみ具間距離の増加分の割合とする。例えば、試験片破断時のつかみ具間距離が40mmの場合、伸びは(40−20)/20×100=100(%)となる。
<磁歪量(ppm)の測定>
磁歪量測定は、一般的に用いられている歪みゲージ法によって室温環境下(25℃)で行う。磁場発生装置には振動材料型磁力計を用いる。磁場の強さは5000Oeとする。測定のための試料は、上述の単結晶合金(直径10mm×直胴部の長さ80mm)から直径10mm×厚み1mmのシート形状に切り出したもの使用する。尚、厚み方向は、FeGaEr合金の磁化容易軸である<100>方位との角度的なずれが0°となるように切り出す。
磁歪量測定は、一般的に用いられている歪みゲージ法によって室温環境下(25℃)で行う。磁場発生装置には振動材料型磁力計を用いる。磁場の強さは5000Oeとする。測定のための試料は、上述の単結晶合金(直径10mm×直胴部の長さ80mm)から直径10mm×厚み1mmのシート形状に切り出したもの使用する。尚、厚み方向は、FeGaEr合金の磁化容易軸である<100>方位との角度的なずれが0°となるように切り出す。
歪みゲージは測定用試料の上面に、貼り付ける。この際、歪みゲージをFeGaEr合金の<100>方位に対して平行となるように貼付する。歪みゲージのゲージ軸に対して平行に磁場を印加した際の試料の歪み(λ//)と、歪みゲージのゲージ軸に対して垂直に磁場を印加した際の試料の歪み(λ⊥)とをデータロガーで記録する。記録された数値から、磁歪量λ(ppm)を、λ(ppm)=λ//−λ⊥として算出し、評価する。ここで示す磁歪量は5000Oeにおける磁歪量のことである。
図3の表1に、実施例1−1〜実施例1−3および比較例1−1〜比較例1−3のFeGaEr合金の各試料の合金組成と併せて、機械的強度(引張強度および伸び)ならびに磁歪量の測定の結果を示す。
表1に示すように、FeGa合金にErを添加した実施例1−1〜実施例1−3は、Erを添加していない比較例1−1〜比較例1−3と比較して、同等の機械的強度(引張強度350MPa程度、例えば400MPa以上、伸び1%程度)を保持しつつ、磁歪量が400ppm以上であり、大きく向上していることが分かる。これは、Erの添加に起因する局所的なひずみおよび4f電子の四重極モーメントに起因する結晶磁気異方性への影響のために、磁歪量が向上するものと考えられる。従って、機械的特性を保持しつつ磁歪量を向上させるためにはErの添加が有効であることが分かる。
(実施例2)
実施例2では、FeGaEr合金においてEr含有率(at%)を種々変化させた試料を作製して、磁歪量を測定し、Erの添加が有効となるEr含有率(at%)の範囲を明確化する。即ち、Erの存在が実質的に有効となるEr含有率の範囲を明確にするため、図2の表2に示すように、種々の元素割合の合金試料を準備して実施例2−1〜2−12および比較例2−1〜2−8に示す磁歪材料を作製し、磁歪量測定を行う。
実施例2では、FeGaEr合金においてEr含有率(at%)を種々変化させた試料を作製して、磁歪量を測定し、Erの添加が有効となるEr含有率(at%)の範囲を明確化する。即ち、Erの存在が実質的に有効となるEr含有率の範囲を明確にするため、図2の表2に示すように、種々の元素割合の合金試料を準備して実施例2−1〜2−12および比較例2−1〜2−8に示す磁歪材料を作製し、磁歪量測定を行う。
(実施例2−1)
磁歪材料には、Gaの含有率が17.0at%、Erの含有率が1.0at%であり残部がFeである合金を準備する。上述の実施例1と同様に、高周波誘導加熱型CZ炉を用いて作製し、得られるFeGaRe合金から測定用試料を切り出し、磁歪量を測定する。
磁歪材料には、Gaの含有率が17.0at%、Erの含有率が1.0at%であり残部がFeである合金を準備する。上述の実施例1と同様に、高周波誘導加熱型CZ炉を用いて作製し、得られるFeGaRe合金から測定用試料を切り出し、磁歪量を測定する。
(実施例2−2〜12)
表2に示す元素含有率とする以外は実施例2−1を繰り返し、磁歪量を測定する。
表2に示す元素含有率とする以外は実施例2−1を繰り返し、磁歪量を測定する。
(比較例2−1〜8)
表2に示す元素含有率とする以外は実施例2−1を繰り返し、磁歪量を測定する。
表2に示す元素含有率とする以外は実施例2−1を繰り返し、磁歪量を測定する。
<磁歪量(ppm)の測定および判定>
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状および測定方法は上述の実施例1の方法と同様である。磁歪材料を振動発電デバイスに使用する場合、磁歪量が400ppm未満であると、発電密度が0.3mW/cm3未満となる。そのため、磁歪量(ppm)の有効性に関して、400ppm以上を「〇」とし、400ppm未満を「×」として判定する。更に、磁歪材料をトルクセンサーに使用する場合、磁歪量が490ppm以上であれば1V/Nm以上の出力感度が得られ、例えば電動アシスト自転車等に使用することができるため好都合である。そこで、磁歪量が490ppm以上である試料を「◎」と判定する。
各試料の磁歪量(ppm)の測定用試料の形状および測定方法は上述の実施例1の方法と同様である。磁歪材料を振動発電デバイスに使用する場合、磁歪量が400ppm未満であると、発電密度が0.3mW/cm3未満となる。そのため、磁歪量(ppm)の有効性に関して、400ppm以上を「〇」とし、400ppm未満を「×」として判定する。更に、磁歪材料をトルクセンサーに使用する場合、磁歪量が490ppm以上であれば1V/Nm以上の出力感度が得られ、例えば電動アシスト自転車等に使用することができるため好都合である。そこで、磁歪量が490ppm以上である試料を「◎」と判定する。
表2には、実施例2−1〜実施例2−12および比較例2−1〜比較例2−8のFeGaEr合金の各試料の元素含有率の他、磁歪量および判定の結果を示す。
表2から分かるように、実施例2−1〜2−12の磁歪量は400ppm以上となり、判定は全て「〇」または「◎」となっている。これは、FeおよびGaより原子半径の大きいErを添加することによって誘起される局所的な歪みおよびErのもつ4f電子の四重極モーメントに起因する結晶磁気異方性の影響により、磁歪量を向上させることができるためだと考えられる。
比較例2−1〜2−4では、磁歪量が400ppm未満となり、判定は「×」である。これは、Er含有量が少なく、十分な磁歪量向上効果を発現できないためであると考えられる。
比較例2−6では、磁歪量が400ppm未満となり、判定は「×」である。これは、固溶限界を超えてErを添加しているため、第2相が出現することによって磁歪量が低下すると考えられる。
比較例2−7では、磁歪量が400ppm未満となり、判定は「×」である。これは、GaとErの合計含有率が22.5at%と高く、不規則bcc相から規則相(D03、L12)へと結晶構造が変化することによって磁歪量が低下すると考えられる。
また、比較例2−5の結果を実施例2−9の結果と比較すると、同じEr含有率であっても、Ga含有率が低いと磁歪量は400ppm未満である。これは、FeGa合金(但し、Ga含有率20at%以下)において、Ga含有率が低下するにつれて磁歪量が低下することに起因していると考えられる。
図5は、実施例2における磁歪量400ppm以上となるGa含有率とEr含有率との関係を表す図である。縦軸はEr含有率(at%)であり、横軸はGa含有率(at%)である。黒丸部(●)は、実施例2−1〜実施例2−12における磁歪量が400ppm以上である箇所を表している。白丸部(〇)は、比較例2−1〜比較例2−8における磁歪量が400ppm未満である箇所を表している。図5に示すように、Er含有率とGa含有率との関係において、磁歪量が400ppm以上となる領域が存在すると判断できる。この領域の最外部に沿った近似線を4本の直線(図3の一点鎖線)として求めると、それぞれ、y=−1.5x+31.0、y=1.0、y=4.0、およびx=17.0となる。
容易に理解できるように、磁歪材料のEr含有率y(at%)とGa含有率x(at%)で表される点(x,y)が、図3において一点鎖線で示すこれらの近似線で囲まれた領域の内部(但し、線上を含む)に存在すれば、磁歪材料の磁歪量が400ppm以上となる。即ち、磁歪材料が、式(1):
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)
で表されるFeGaEr合金から成る場合、磁歪量が400ppm以上となる。
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)
で表されるFeGaEr合金から成る場合、磁歪量が400ppm以上となる。
更に、磁歪量が400ppm以上であった黒丸部のうち、特に磁歪量490ppm以上となるGa含有率xとEr含有率yとの関係を図6に示す。具体的には、図6は、磁歪量が400ppm以上である黒丸部(●)のうち、特に、磁歪量が490ppm以上である箇所を二重丸部(「◎」)で表した図である。
図6から分かるように、図5の一点鎖線によって囲まれた領域の内側に、磁歪量が490ppm以上となる領域が存在し、その領域の境界を規定する直線は、それぞれ、x=18.0、x=19.0、y=1.0およびy=1.5であることが分かる。従って、本発明の磁歪材料が図6の斜線で示される領域に含まれる組成を有する場合、xおよびyは、18.0≦x≦19.0かつ1.0≦y≦1.5を満たし、その時の磁歪量は490ppm以上となる。
即ち、本発明の磁歪材料において、xおよびyで表される点(x,y)が図6にて破線で示す近似直線で囲まれた領域の内側(線上を含む)に存在すれば、換言すれば、xおよびyが18.0≦x≦19.0および1.0≦y≦1.5を満足する場合、磁歪量が490ppm以上の磁歪材料となることが明らかである。
これより、磁歪量400ppm以上の磁歪材料を得るには、組成式:Fe(100−x−y)GaxEryで表される磁歪材料において、Ga含有率をx%、Er含有率をy%とした場合、4直線:y=−1.5x+31.0、y=1.0、y=4.0、x=17.0で囲まれた領域内部(線上を含む)である必要があり、好ましくは18.0≦x≦19.0かつ1.0≦y≦1.5であろ。その場合には490ppmの磁歪量を達成できる。
(実施例3)
FeGaEr単結晶合金から磁歪量測定用の磁歪材料を切り出す際の、寸法変化予定方向としての試料の長手方向軸と単結晶合金の<100>方位との角度的なずれが、磁歪量に及ぼす影響を調べるため、図7の表3に示すように実施例3−1〜3−6および比較例3−1〜3−2に示す磁歪材料を作成し、磁歪量測定を実施する。尚、実施例3は、角度的なずれを種々変えることを除いて実施例1と同様に実施する。
FeGaEr単結晶合金から磁歪量測定用の磁歪材料を切り出す際の、寸法変化予定方向としての試料の長手方向軸と単結晶合金の<100>方位との角度的なずれが、磁歪量に及ぼす影響を調べるため、図7の表3に示すように実施例3−1〜3−6および比較例3−1〜3−2に示す磁歪材料を作成し、磁歪量測定を実施する。尚、実施例3は、角度的なずれを種々変えることを除いて実施例1と同様に実施する。
角度的なずれを10°以下とした実施例3−1〜3−6においては、磁歪量が400ppm以上となり、同様の合金組成を有する比較例3−1および比較例3−2と比較して、良好な結果が得られる。これは、作製したFeGaEr合金の磁化容易軸が<100>方位であり、その方位に沿って最大限に歪むことができるためである。従って、良好な磁歪特性を得るためには、寸法変化予定方向である試料軸と磁歪材料の<100>方位との角度的なずれを10°以下に抑えることが有効であることが分かる。従って、より効率的に磁歪特性を得るためには、角度的なずれが0°以上10°以下となるように磁歪材料を切り出すことが有用であることが分かる。
本発明の磁歪材料は、磁歪量が高く、機械的強度に優れた材料であるため、磁歪式振動発電デバイスや磁歪式センサー、アクチュエーターに適用することができる。
1,3…磁歪式デバイス
2,4…磁歪材料
2,4…磁歪材料
Claims (5)
- 下記次式(1):
Fe(100−x−y)GaxEry・・・(1)
(式(1)中、xおよびyは、それぞれGa含有率(at%)およびEr含有率(at%)であり、4つの不等式:y≦−1.5x+31.0、y≧1.0、y≦4.0およびx≧17.0を満たす)
で表されるFeGaEr合金から成る磁歪材料。 - 前記式(1)において、xおよびyが、18.0≦x≦19.0および1.0≦y≦1.5を満たす、請求項1に記載の磁歪材料。
- 請求項1または2に記載の磁歪材料により形成される、所定の構造を有する磁歪素子。
- 請求項3に記載の磁歪素子を有する磁歪式デバイス。
- 磁歪素子としての磁歪材料の磁歪効果による寸法変化を予定している方向に対する、磁歪材料が最大限に歪むことができる方向の角度的なずれが0°〜10°となるように磁歪素子が配置されている請求項4に記載の磁歪式デバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020058405A JP2021158265A (ja) | 2020-03-27 | 2020-03-27 | 磁歪材料およびそれを用いた磁歪式デバイス |
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- 2020-03-27 JP JP2020058405A patent/JP2021158265A/ja active Pending
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