以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における連続鋳造装置の構成を示す図である。図2は、前記連続鋳造装置におけるロール付近の一部拡大斜視図である。図3は、前記連続鋳造装置に備えられる鋳片内部状態判定装置の構成を示す図である。図4は、前記鋳片内部状態判定装置に備えられる電磁超音波センサの構成を示す図である。図4Aは、前記電磁超音波センサの全体斜視図であり、図4Bは、電磁超音波センサのコイルの構成を示す図である。図5は、前記鋳片内部状態判定装置に記憶される係数情報テーブルを示す図である。図6は、凝固状態の鋳片における受信超音波の最大振幅(最大強度)を説明するための図である。図6の横軸は、距離(鋳片の厚さ)であり、その縦軸は、受信用電磁超音波センサで受信された受信信号の電圧(すなわち、受信超音波の強度(振幅))である。
実施形態における鋳片内部状態判定装置は、連続鋳造装置で製造される鋳片の内部状態を判定する装置であり、前記連続鋳造装置に備えられている。すなわち、実施形態における連続鋳造装置CCは、溶鋼を鋳型に注ぎ込み、側面が凝固した溶鋼を前記鋳型から引き抜いて長尺な鋳片(スラブ、ブルーム、ビレット)を製造する装置であり、例えば、図1ないし図3に示すように、連続鋳造本体CBと、鋳片内部状態判定装置SDとを備える。
連続鋳造本体CBは、取鍋11と、タンディッシュ12と、鋳型13と、複数組のロール14とを備え、この順で上流側から下流側へ配設されている。
取鍋11は、成分を微調整された二次精錬後の溶鋼が注がれ、前記溶鋼を貯留する装置である。取鍋11は、連続鋳造本体CBの最上部に配設される。
タンディッシュ12は、取鍋11から前記溶鋼が流れ込み、前記溶鋼から所定の介在物を除去する装置である。前記介在物は、浮上して分離することで除去される。なお、取鍋11でも、介在物の一部が浮上分離で除去される。タンディッシュ12は、取鍋11の次段に配設される。
鋳型13は、タンディッシュ12から前記溶鋼が流れ込み、前記溶鋼を冷やして所定の形の鋳片Obを形成する装置である。鋳型13は、水冷されており、鋳型13に接触した溶鋼は、その外側から凝固されて相対的に薄肉の凝固シェルを形成し、前記所定の形の鋳片Obに形成される。鋳型13は、タンディッシュ12の次段に配設される。
ロール(ローラ)14は、鋳型13から鋳片Obを所定の速度で引き抜きつつ、前記鋳片Obを支持する装置である。ロール14は、鋳片Obの両面それぞれに接するように配設された2個1組で、鋳型13の次段に、上流側から下流側へ沿って所定の間隔を空けて複数配設される。前記所定の間隔は、等間隔であって良く、あるいは、上流側より下流側の方が広い間隔であって良い。複数組のロール14は、鋳造方向(引き抜き方向)が垂直方向から水平方向へ向くように、配設される。複数組のロール14は、1または複数の駆動ロールと複数の従動ロールとを備えて構成される。
鋳片内部状態判定装置SDは、連続鋳造本体CBにおける複数組のロール14で支持された鋳片Obの内部状態を判定する装置であり、例えば、送信部SSと、受信部RSと、温度センサ25と、鋳片内部状態判定本体PCとを備える。
送信部SSは、例えば、図1ないし図3に示すように、送信用電磁超音波センサ21aと、第1昇降機23とを備え、複数組のロール14のうち、鋳造方向に沿って互いに隣接する2組のロール間において、鋳片Obの一方主面側に配置される。受信部RSは、例えば、図1ないし図3に示すように、受信用電磁超音波センサ22aと、第2昇降機24とを備え、前記送信部SSが配設されたロール間において、鋳片Obの他方主面側に配置される。
送信用電磁超音波センサ21aは、鋳片内部状態判定本体PCに接続され、鋳片内部状態判定本体PCの制御に従って鋳片Obの内部に横波超音波を送信する装置である。第1昇降機23は、鋳片内部状態判定本体PCに接続され、鋳片Obの一方主面から、所定の間隔を空けて送信用電磁超音波センサ21aを配置するように、鋳片Obの一方主面に対して離接する離接方向に沿って送信用電磁超音波センサ21aを、鋳片内部状態判定本体PCの制御に従って移動する機構である。
受信用電磁超音波センサ22aは、鋳片内部状態判定本体PCに接続され、鋳片内部状態判定本体PCの制御に従って、送信用電磁超音波センサ21aで送信され鋳片Obの内部を伝播した横波超音波を受信する装置である。受信用電磁超音波センサ22aは、横波超音波の受信によって得られた超音波の受信信号を鋳片内部状態判定本体PCへ出力する。第2昇降機24は、鋳片内部状態判定本体PCに接続され、鋳片Obの他方主面から、所定の間隔を空けて受信用電磁超音波センサ22aを配置するように、鋳片Obの他方主面に対して離接する離接方向に沿って受信用電磁超音波センサ22aを、鋳片内部状態判定本体PCの制御に従って移動する機構である。
このような送信用電磁超音波センサ21aと受信用電磁超音波センサ22aとには、同構成の電磁超音波センサが利用でき、その一例が図4に示されている。なお、図4には、主に送信用電磁超音波センサ21aの構成が示され、受信用電磁超音波センサ22aの構成は、当該構成に付せられた参照符号を括弧書きで図示することで図4に示されている。
これら送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aそれぞれに利用される電磁超音波センサ21a(22a)は、例えばローレンツ力型であり、図4Aに示すように、静磁場を生成するための1組の磁石212(222)と、前記1組の磁石212(222)における一方端部に接続され、前記一方端部同士を磁気的に連結するためのヨーク211(221)と、前記1組の磁石212(222)における他方端部に接続され、送信では渦電流を生成するためであって、受信では誘導起電力を生じさせるためのコイル213a(223a)とを備える。なお、前記1組の磁石212(222)における磁石の配列は、図4Aに示す配列に限らず、例えばハルバッハ配列等の他の配列であっても良い。コイル213a(223a)は、図4Bに示すように、渦巻き状の長尺な導体部材を基板上に配設したいわゆるレーストラック型コイルである。このレーストラック型コイル213a(223a)は、コイル面の法線方向に沿って鋳片Obの内部に伝播する超音波を送受信する。このため、本実施形態では、送信用電磁超音波センサ21aは、そのコイル面が鋳片Obの一方主面と略平行となるように、配設され、受信用電磁超音波センサ22aは、そのコイル面が鋳片Obの他方主面と略平行となるように、配設される。このような電磁超音波センサ21aにおける送信では、鋳片Obに対して静磁場と高周波振動の渦電流とが付与され、これによって渦電流の高周波振動に従った周期的なローレンツ力が鋳片Obに生じて超音波が鋳片Obに生じる。前記電磁超音波センサ22aにおける受信では、鋳片Obの表面における超音波と静磁場とによりコイル223aに超音波の受信信号として電磁誘導で起電力が誘起される。
温度センサ25は、送信用電磁超音波センサ21aと受信用電磁超音波センサ22aとで超音波が送受信される箇所における、鋳片Obの表面温度を測定するセンサである。温度センサ25は、鋳片内部状態判定本体PCに接続され、鋳片内部状態判定本体PCの制御に従って、前記表面温度を測定する。温度センサ25は、この測定された表面温度を鋳片内部状態判定本体PCへ出力する。温度センサ25は、例えば、熱電対を備えて構成されたセンサであって良く、あるいは、放射温度計であっても良い。
鋳片内部状態判定本体PCは、例えば、制御処理部26と、入力部27と、出力部28と、インターフェース部(IF部)29と、記憶部30とを備える。
入力部27は、例えば、判定開始等を指示するコマンドや鋳片Obの属性情報等のデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。出力部28は、入力部27で受け付けたコマンドやデータおよび判定結果等を出力するための装置であり、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。これら入力部27および出力部28それぞれは、制御処理部26に接続される。
なお、入力部27および出力部28からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部27は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部28は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として鋳片内部状態判定本体PCに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い鋳片内部状態判定装置SDが提供される。
IF部29は、制御処理部26に接続され、制御処理部26の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS−232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部29は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であっても良い。
記憶部30は、制御処理部26に接続され、制御処理部26の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。
前記各種の所定のプログラムには、制御プログラム、温度演算プログラム、および、内部状態判定プログラム等が含まれる。前記制御プログラムは、鋳片内部状態判定装置SDの各部21a〜25、27〜30を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するプログラムである。前記温度演算プログラムは、温度センサ25で測定した鋳片Obの表面温度から所定のモデルを用いて前記鋳片Obの内部温度分布を求めるプログラムである。前記内部状態判定プログラムは、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の有無、前記受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度、および、前記温度演算プログラムで求められた最大内部温度に基づいて、前記鋳片Obの内部状態を判定するプログラムである。前記各種の所定のデータには、例えば鋳片Obの属性情報や後述の係数情報等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。
記憶部30は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部30は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部26のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。記憶部30は、比較的大容量のデータを記憶できるハードディスク装置を備えても良い。そして、記憶部30は、係数情報を記憶するために、係数情報記憶部301を機能的に備える。鋳片Obの内部温度分布は、後述するように、温度センサ25で測定した鋳片Obの表面温度から所定のモデルを用いて求められるが、前記係数情報は、前記所定のモデルで用いられる係数を表す情報である。この係数情報および係数情報記憶部301について、より詳しく後述する。
制御処理部26は、鋳片内部状態判定装置SDの各部を当該機能に応じて制御し、鋳片Obの内部状態を求めるための回路である。より具体的には、制御処理部26は、本実施形態では、前記所定のプログラムが実行されることによって、制御部261と、温度演算部262と、内部状態判定部263とを機能的に備える。
制御部261は、鋳片内部状態判定装置SDの各部21a〜25、27〜30を当該機能に応じて制御し、鋳片内部状態判定装置SDの全体制御を司るものである。
温度演算部262は、温度センサ25で測定した鋳片Obの表面温度から所定のモデルを用いて前記鋳片Obの内部温度分布を求めるものである。より具体的には、温度演算部262は、前記鋳片の厚さ方向における横波超音波の伝播時間(すなわち、鋳片Obの内部平均温度)に基づいて補正しつつ、温度センサ25で測定した前記鋳片Obの表面温度から所定のモデルを用いて前記鋳片の内部温度分布を求める。前記所定のモデルには、予め設定された適宜な数式モデルが用いられる。前記数式モデルは、例えば、第1ないし第3係数をA、B、Cとし、鋳片Obの厚さ方向に沿った前記一方主面の表面からの距離(深さ)をxとし、距離xにおける内部温度をT(x)とした場合に、次式1である。
式1;T(x)=Aexp(Bx)+C
第3係数Cは、温度センサ25で測定された鋳片Obの表面温度から決定される。第1および第2係数A、Bは、基本的に、鋳片Obの材種に応じた比熱や熱伝達係数等から決定される。しかしながら、連続鋳造装置CCでは、複数組のロール14で支持された鋳片Obは、鋳造方向に移動する間に、エアーやミストを吹き付けられることで冷却され、このエアーやミストの吹き付け方(冷却態様)で、鋳型13から引き抜かれた後の経過時間が同一でも鋳片Obの温度は、必ずしも同一とならずに変化してしまう。このため、鋳片Obの材種に応じた比熱や熱伝達係数等から決定された第1および第2係数A、Bでは、内部温度分布T(x)が所望の精度で求められない場合がある。そこで、本実施形態では、鋳片Obの実際の内部平均温度Taveに応じて第1および第2係数A、Bが補正され、鋳片Obの実際の内部平均温度Taveに応じてその内部温度分布T(x)が求められる。
この内部平均温度Taveは、次のように、超音波の伝播時間tから求められる。すなわち、鋳片Obを伝播する超音波の伝播速度V(T)は、温度Tの関数であり、温度分布が1次元である場合、第4および第5係数をD、Eとする場合に、次式2で表され、鋳片Obの厚さをLとした場合に、鋳片Obの厚さ方向に沿って伝播する超音波の伝播時間tは、次式3で表される。
式2;V(T)=−DT+E
式3;t=2∫1/V(T)dx、積分範囲は、0からLまでである(すなわち、前記一方主面の表面から前記他方主面の表面までである)。
式3で積分することにより、式2および式3の温度Tは、内部平均温度Taveとみなすことができる。これにより、超音波の伝播時間tを送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aを用いて実測することにより、鋳片Obの実際の内部平均温度Taveが求められる。
そして、鋳片Obの実際の内部平均温度Taveから、補正後の第1および第2係数A、Bそれぞれが求められる。鋳片Obの実際の内部平均温度Taveに対する各関数式A(Tave)、B(Tave)を、例えば複数のサンプルから予め求めておくことによって、前記補正後の第1および第2係数A、Bそれぞれは、前記各関数式A(Tave)、B(Tave)から求められて良いが、本実施形態では、内部平均温度Tave(すなわち、超音波の伝播時間t)と第1および第2係数A、Bとの対応関係が、例えば複数のサンプルから予め求められ、前記係数情報としてテーブル形式で係数情報記憶部301に記憶され、前記補正後の第1および第2係数A、Bそれぞれは、この係数情報を用いて求められる。
この係数情報を登録する係数情報テーブルCTは、例えば、図5に示すように、超音波の伝播時間t(内部平均温度Tave)を登録する伝播時間フィールド(内部平均温度フィールド)3011と、伝播時間フィールド3011に登録された超音波の伝播時間tに対応する補正後の第1および第2係数A、Bそれぞれを登録する第1および第2係数フィールド3012、3013とを備え、超音波の伝播時間tごとにレコードを持つ。図5に示す例では、伝播時間フィールド3011には、適宜に区切られた所定の範囲で超音波の伝播時間t(内部平均温度Tave)が登録される。例えば、実測された超音波の伝播時間がt1以上であってt2未満である場合には、補正後の第1および第2係数A、Bそれぞれは、a1およびb1で与えられる。このように係数情報記憶部301には、係数情報テーブルCTが前記係数情報として記憶される。
したがって、内部温度分布T(x)を求める際に、まず、温度演算部262は、送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aを用いて得られる、鋳片Obを厚さ方向に沿って伝播する伝播時間t、に対応する、補正後の第1および第2係数A、Bを、係数情報記憶部301に記憶された係数情報テーブルCTから選定(検索)する。なお、前記伝播時間tは、内部状態を判定するために、鋳片Obに対し送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aで横波超音波を送受信する際に併せて求められる。すなわち、送信用電磁超音波センサ21aで横波超音波を送信した時刻から、鋳片Obを介して受信用電磁超音波センサ22aで横波超音波を受信する時刻までの時間が前記伝播時間tとして測定される。次に、温度演算部262は、温度センサ25で実測された鋳片Obの表面温度から第3係数Cを決定し、この決定した第3係数C、ならびに、上述のように求められた補正後の第1および第2係数A、Bを用いることで、内部温度分布T(x)を表す数式モデルの式1を決定する。このように温度演算部262は、前記鋳片Obの厚さ方向における横波超音波の伝播時間t(すなわち、鋳片Obの内部平均温度Tave)に基づいて補正しつつ、温度センサ25で測定した前記鋳片Obの表面温度から所定の数式モデルを用いた前記鋳片Obの内部温度分布T(x)を求める。
内部状態判定部263は、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の有無、前記受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度、ならびに、温度センサ25および温度演算部262で測定された最大内部温度に基づいて、鋳片Obの内部状態を判定するものである。
前記内部状態は、本実施形態では、鋳片Obの厚さ方向に沿った前記鋳片Obの内部に未凝固部分が存在する未凝固状態、鋳片Obの厚さ方向に沿った前記鋳片Obの内部に未凝固部分が存在しない凝固状態、および、前記未凝固状態と判定されず、かつ、前記凝固状態とも判定されない不完全凝固状態である。現実の鋳片Obでは、凝固状態での横波超音波の強度より小さい強度で横波超音波が受信される場合がある。従前のように、横波超音波の受信の有無から、内部状態が未凝固状態および凝固状態の二分類で判定されてしまうと、このような場合も内部状態が凝固状態と判定されてしまい、クレータエンドの位置に誤差が含まれてしまう。そこで、本実施形態では、前記内部状態の一態様として不完全凝固状態が導入され、前記内部状態を、未凝固状態、不完全凝固状態および凝固状態の三分類で判定することで、鋳片Obの内部状態が、実際(現実)に則してより精度良く判定できる。この三分類で内部状態を判定するために、特に、不完全凝固状態と凝固状態とを判別するために、不完全凝固状態では、その最高内部温度が凝固温度を超えていると考えられ、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度が、鋳片Obが凝固状態である場合に受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度より小さいと考えられることから、本実施形態では、横波超音波の受信の有無だけでなく、横波超音波が受信された場合に、この受信された横波超音波の強度および鋳片Obの最高内部温度が内部状態の判定に参酌される。
より具体的には、表1に示すように、内部状態判定部263は、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波が無い場合、前記内部状態として、未凝固状態であると判定する。内部状態判定部263は、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波が有る場合であって、温度センサ25および温度演算部262で測定された最大内部温度が予め設定された所定の第1閾値Th1以上であって、かつ、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度が予め設定された所定の第2閾値Th2未満である場合に、前記内部状態として、不完全凝固状態であると判定する。内部状態判定部263は、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波が有る場合であって、温度センサ25および温度演算部262で測定された最大内部温度が前記第1閾値Th1未満であって、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度が前記第2閾値Th2以上である場合に、前記内部状態として、凝固状態であると判定する。前記最大内部温度は、温度演算部262で上述のように第1ないし第3係数A、B、Cを決定することで求められた内部温度分布T(x)から、0から鋳片Obの厚さLまでの範囲x(0≦x≦L)において取り得る最大値として求められる。前記第1閾値Th1は、例えば鋳片Obの材種に応じた凝固温度に基づき、複数のサンプルから適宜に設定される。前記第2閾値Th2は、例えば図6に示すように、凝固状態での鋳片Obにおける最大強度(最大振幅、受信用電磁超音波センサ22aで受信される受信信号の最大電圧)Yに基づき、複数のサンプルから適宜に設定される。例えば、前記第2閾値Th2は、0.5Y、0.6Yおよび0.7Y等の、0.5Y以上1Y未満の範囲で適宜に設定される。
このような鋳片内部状態判定本体PCは、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。
次に、本実施形態の動作について説明する。図7は、前記連続鋳造装置に備えられる鋳片内部状態判定装置における内部状態判定に関する動作を示すフローチャートである。
このような鋳片内部状態判定装置SDを備えた連続鋳造装置CCでは、鋳片内部状態判定装置SDは、電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始め、前記所定のプログラムの実行によって、制御処理部26には、制御部261、温度演算部262および内部状態判定部263が機能的に構成される。
そして、内部状態の判定開始の指示が入力部27から受け付けられると、図7において、鋳片内部状態判定装置SDは、予め設定された所定のサンプリング間隔で、送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aで横波超音波を送受信する(S11−1)。これによって鋳片Obの厚さ方向に沿って伝播した超音波の伝播時間t、鋳片Obを厚さ方向に沿って透過して受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の有無、鋳片Obを厚さ方向に沿って透過して受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度が取得される。一方、これと同期して温度センサ25から鋳片Obの表面温度が取得される(S11−2)。
これらが取得されると、温度演算部262は、実測された超音波の伝播時間tに対応する補正後の第1および第2係数A、Bを、係数情報記憶部301に記憶された係数情報テーブルCTから選定し、温度センサ25で実測された鋳片Obの表面温度から第3係数Cを決定し、これによって式1の内部温度分布T(x)を求める(S12)。
内部温度分布T(x)が求められると、内部状態判定部263は、鋳片Obを厚さ方向に沿って透過して受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の有無、鋳片Obを厚さ方向に沿って透過して受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の強度、ならびに、前記求められた内部温度分布T(x)で与えられる最大内部温度に基づいて、鋳片Obの内部状態を判定する(S13)。
鋳片Obの内部状態が判定されると、制御処理部26は、この判定結果を出力部28で出力する(S14)。なお、制御処理部26は、必要に応じて前記判定結果をIF部29から出力しても良い。
このように動作することで、連続鋳造本体CBで連続鋳造されている鋳片Obにおける内部状態が送信部SSおよび受信部RSの配置位置において前記サンプリング間隔で順次に判定され、出力される。
以上説明したように、本実施形態における連続鋳造装置CC、これに備えられた鋳片内部状態判定装置SDおよびこれに実装された鋳片内部状態判定方法は、受信用電磁超音波センサ22aで受信される横波超音波の有無だけなく、前記横波超音波の強度および最大内部温度にも基づいて、鋳片Obの内部状態を判定するので、連続鋳造される鋳片Obの内部状態を、より精度良く判定できる。この結果、クレータエンドの位置もより精度良く判定できる。
上記連続鋳造装置CC、鋳片内部状態判定装置SDおよび鋳片内部状態判定方法は、内部状態を未凝固状態および凝固状態の二分類で判定するのではなく、前記未凝固状態と判定されず、かつ、前記凝固状態とも判定されない不完全凝固状態を含む三分類で判定するので、連続鋳造される鋳片Obの内部状態を、実際(現実)に則してより精度良く判定できる。この結果、クレータエンドの位置もより精度良く判定できる。
なお、上述の実施形態における連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、鋳造方向に沿って互いに隣接する2組のロール間に配置された、1組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aを備え、内部状態判定部263は、前記1組について、内部状態を判定したが、これに限定されるものではなく、例えば、以下に説明する、第1ないし第3変形形態の送信用電磁超音波センサ21a〜21cおよび受信用電磁超音波センサ22a〜22cを備えても良い。
図8は、第1変形形態の鋳片内部状態判定装置における送信用電磁超音波センサおよび受信用電磁超音波センサの構成を示す図である。
第1変形形態では、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、送信用電磁超音波センサ21aと受信用電磁超音波センサ22aとを1組として、連続鋳造装置CCにおける複数のロール間それぞれに配置された複数の組を備え、内部状態判定部263は、前記複数の組それぞれについて、各内部状態を判定する。一例では、図8に示すように、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、連続鋳造装置CCにおける3個のロール間それぞれに配置された3個の組を備え、内部状態判定部263は、これら3個の各組それぞれについて、各内部状態を判定する。より具体的には、図8において、上流側の1組のロール(第1の1組のロール)14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第2の1組のロール)14とのロール間に第1の1組の送信用電磁超音波センサ21a−1と受信用電磁超音波センサ22a−1とが配置され、前記第2の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第3の1組のロール)14とのロール間に第2の1組の送信用電磁超音波センサ21a−2と受信用電磁超音波センサ22a−2とが配置され、前記第3の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第4の1組のロール)14とのロール間に第3の1組の送信用電磁超音波センサ21a−3と受信用電磁超音波センサ22a−3とが配置される。そして、内部状態判定部263は、これら第1ないし第3の各組の送信用電磁超音波センサ21a−1〜21a−3および受信用電磁超音波センサ22a−1〜22a−3それぞれについて、各内部状態を判定する。これによれば、連続鋳造中に鋳造方向に沿った各位置で、各内部状態を判定できる。この結果、例えば引き抜き速度の変更や冷却態様の変更や調整成分の変更等に応じて、クレータエンドの位置がシフトした場合でも、クレータエンドの位置もより精度良く判定できる。例えば、第1の1組の送信用電磁超音波センサ21a−1および受信用電磁超音波センサ22a−1における送受信結果から、内部状態が未凝固状態と判定され、第2の1組の送信用電磁超音波センサ21a−2および受信用電磁超音波センサ22a−2における送受信結果から、内部状態が不完全凝固状態と判定され、第3の1組の送信用電磁超音波センサ21a−3および受信用電磁超音波センサ22a−3における送受信結果から、内部状態が凝固状態と判定される。このような場合、第2の1組の送信用電磁超音波センサ21a−2および受信用電磁超音波センサ22a−2の配置位置から、第3の1組の送信用電磁超音波センサ21a−3および受信用電磁超音波センサ22a−3の配置位置までの間に、クレータエンドが存在するとさらに判定できる。このようなクレータエンドの位置は、オペレータ(ユーザ)が出力部28に出力される各内部状態を参照することで判定されて良いが、図3に破線で示すように、制御処理部26に、内部状態判定部263で判定された前記複数の組(図8に示す例では3個の組)それぞれについての各内部状態に基づいてクレータエンドの位置を判定するクレータエンド位置判定部264を機能的にさらに備え、このクレータエンド位置判定部264によって自動的に判定されても良い。このクレータエンド位置判定部264は、鋳造方向に沿って互いに隣接する2個の組において、内部状態が未凝固状態と判定された送受信結果を与えた1組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aの配置位置から、内部状態が凝固状態と判定された送受信結果を与えた他の1組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aの配置位置までの間に、クレータエンドが存在すると判定し、そして、鋳造方向に沿って互いに隣接する2個の組において、内部状態が不完全凝固状態と判定された送受信結果を与えた1組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aの配置位置から、内部状態が凝固状態と判定された送受信結果を与えた他の1組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aの配置位置までの間に、クレータエンドが存在すると判定する。
図9は、第2変形形態の鋳片内部状態判定装置における送信用電磁超音波センサおよび受信用電磁超音波センサの構成を示す図である。図10は、前記第2変形形態の鋳片内部状態判定装置における電磁超音波センサのコイルの構成を示す図である。
また、これら上述では、1組の送信用電磁超音波センサ21aと受信用電磁超音波センサ22aとは、鋳片Obを介した送信用電磁超音波センサ21aの略直下に受信用電磁超音波センサ22aが位置するように、配置されたが、第2変形形態では、1組の送信用電磁超音波センサ21bと受信用電磁超音波センサ22bとは、連続鋳造装置CCのロール14を介して配置される。すなわち、1組の送信用電磁超音波センサ21bと受信用電磁超音波センサ22aとは、鋳片Obを介した送信用電磁超音波センサ21bの斜め下に受信用電磁超音波センサ22bが位置するように、配置されても良い。これによれば、ロール14下における鋳片Obの内部状態が判定できる。このようなコイル面の法線方向を基準に斜めに超音波を送受信する送信用電磁超音波センサ21bおよび受信用電磁超音波センサ22bそれぞれには、上述のレーストラック型コイルに代え、いわゆるメアンダ型コイルを備える電磁超音波センサ21b(22b)が利用される。この電磁超音波センサ21b(22b)は、図4Aに示すように、静磁場を生成するための1組の磁石212(222)と、前記1組の磁石212(222)における一方端部に接続され、前記一方端部同士を磁気的に連結するためのヨーク211(221)と、前記1組の磁石212(222)における他方端部に接続され、送信では渦電流を生成するためであって、受信では誘導起電力を生じさせるためのコイル213b(223b)とを備える。コイル213b(223b)は、図10に示すように、長尺な導体部材をつづら折りに折り返して基板上に配設した前記メアンダ型コイルである。このメアンダ型コイル213b(223b)は、駆動周波数をfとし、音速をVとし、折り返された導体部材の線間距離をwとし、コイル面の法線方向を基準に超音波の入射角をθとした場合に、次式4を満たす角度θの方向に沿って鋳片Obの内部に伝播する超音波を送受信する。
式4;f=V/(2wsinθ)
このようなはす向かいで配置される1組の送信用電磁超音波センサ21bと受信用電磁超音波センサ22bとは、上述の実施形態のように1個であって良いが、上述の第1変形形態のように、複数であって良い。すなわち、この場合では、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、送信用電磁超音波センサ21bと連続鋳造装置CCのロール14を介して配置される受信用電磁超音波センサ22bとを1組として複数の組を備え、内部状態判定部263は、前記複数の組それぞれについて、各内部状態を判定する。一例では、図9に示すように、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、2個の組を備え、内部状態判定部263は、これら2個の各組それぞれについて、各内部状態を判定する。より具体的には、図9において、鋳造方向に沿って上流側から下流側へ順次に隣接して配置される4個の第1ないし第4の1組のロール14に対し、まず、第1の1組の送信用電磁超音波センサ21b−1および連続鋳造装置CCのロール14を介して配置される受信用電磁超音波センサ22b−1のうち、一方の前記送信用電磁超音波センサ21b−1は、第1の1組のロール14と第2の1組のロール14とのロール間における鋳片の一方主面側に配置され、他方の前記受信用電磁超音波センサ22b−1は、第2の1組のロール14と第3の1組のロール14とのロール間における鋳片の他方主面側に配置される。第2の1組の送信用電磁超音波センサ21b−2および連続鋳造装置CCのロール14を介して配置される受信用電磁超音波センサ22b−2のうち、一方の前記送信用電磁超音波センサ21b−2は、第2の1組のロール14と第3の1組のロール14とのロール間における鋳片の一方主面側に配置され、他方の前記受信用電磁超音波センサ22b−2は、第3の1組のロール14と第4の1組のロール14とのロール間における鋳片の他方主面側に配置される。そして、内部状態判定部263は、これら第1および第2の各組の送信用電磁超音波センサ21b−1、21b−2および受信用電磁超音波センサ22b−1、22b−2それぞれについて、各内部状態を判定する。例えば、第1の1組の送信用電磁超音波センサ21b−1および受信用電磁超音波センサ22b−1における送受信結果から、内部状態が不完全凝固状態と判定され、第2の1組の送信用電磁超音波センサ21b−2および受信用電磁超音波センサ22b−2における送受信結果から、内部状態が凝固状態と判定される。このような場合、第2の1組のロール14と第3の1組のロール14とのロール間に、クレータエンドが存在するとさらに判定できる。このようなクレータエンドの位置は、第1変形形態と同様に、オペレータ(ユーザ)によって判定されて良く、あるいは、制御処理部26にクレータエンド位置判定部264を機能的にさらに備え、このクレータエンド位置判定部264によって判定されても良い。
また、これら上述の第1および第2変形形態が組み合わされても良い。すなわち、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、1または複数の組の送信用電磁超音波センサ21aおよび受信用電磁超音波センサ22aと、1または複数の組の送信用電磁超音波センサ21bおよび受信用電磁超音波センサ22bとを備え、内部状態判定部263は、前記複数の組それぞれについて、各内部状態を判定する。そして、このような場合に、制御処理部26にクレータエンド位置判定部264が機能的にさらに備えられても良い。
図11は、第3変形形態の鋳片内部状態判定装置における送信用電磁超音波センサおよび受信用電磁超音波センサの構成を示す図である。図12は、前記第3変形形態の鋳片内部状態判定装置における第1態様の送信用電磁超音波センサの構成を示す図である。図12Aは、斜視図であり、図12Bは、図12Aに示す断面線I−Iにおける断面図である。図13は、前記第3変形形態の鋳片内部状態判定装置における第2態様の送信用電磁超音波センサの構成を示す図である。図13Aは、斜視図であり、図13Bは、図13Aに示す断面線II−IIにおける断面図である。図14は、前記第3変形形態の鋳片内部状態判定装置における第3態様の送信用電磁超音波センサの構成を示す図である。図14Aは、斜視図であり、図14Bは、図14Aに示す断面線III−IIIにおける、送信用電磁超音波センサの一部断面図である。図15は、前記第3変形形態の鋳片内部状態判定装置において、第3態様の送信用電磁超音波センサにおけるコイルの構成を示す図である。図15Aは、平面図であり、図15Bは、分解斜視図である。
また、これら上述では、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、1対1で対応する、1個の送信用電磁超音波センサ21(21a、21b)および1個の受信用電磁超音波センサ22(22a、22b)を、1組または複数組、備えたが、第3変形形では、1対多で対応する、1個の送信用電磁超音波センサ21cおよび複数の受信用電磁超音波センサ22cを備える。より具体的には、この第3変形形態では、送信用電磁超音波センサ21cは、前記横波超音波の伝播方向を変更可能であり、受信用電磁超音波センサ22cは、送信用電磁超音波センサ21cに対し互いに異なる複数の角度で対抗する互いに異なる複数の位置それぞれに配置された複数であり、内部状態判定部263は、これら複数の受信用電磁超音波センサ22cそれぞれについて、各内部状態を判定する。一例では、図11に示すように、送信用電磁超音波センサ21cは、鋳片Obの一方主面側に配置され、複数の受信用電磁超音波センサ22c、この例では5個の受信用電磁超音波センサ22c−1〜22c−5は、鋳片Obの他方主面側であって、鋳造方向(引き抜き方向)に沿って互いに異なる複数の位置それぞれに配置される。図11に示す例では、1個の送信用電磁超音波センサ21cおよび5個の第1ないし第5受信用電磁超音波センサ22c−1〜22c−5は、送信用電磁超音波センサ21cと第3受信用電磁超音波センサ22c−3とが鋳片Obを介して互いに対向(正対)するように、連続鋳造装置CCにおける5個のロール間それぞれに配置される。より詳しくは、上流側の1組のロール(第1の1組のロール)14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第2の1組のロール)14とのロール間における鋳片Obの他方主面側に第1受信用電磁超音波センサ22c−1が配置され、前記第2の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第3の1組のロール)14とのロール間における鋳片Obの他方主面側に第2受信用電磁超音波センサ22c−1が配置され、前記第3の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第4の1組のロール)14とのロール間において、鋳片Obの一方主面側に送信用電磁超音波センサ21cが配置され、鋳片Obの他方主面側に第3受信用電磁超音波センサ22c−3が配置され、前記第4の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第5の1組のロール)14とのロール間における鋳片Obの他方主面側に第4受信用電磁超音波センサ22c−4が配置され、前記第5の1組のロール14と、これに鋳造方向に沿って下流側で隣接する1組のロール(第6の1組のロール)14とのロール間における鋳片Obの他方主面側に第5受信用電磁超音波センサ22c−5が配置される。そして、内部状態判定部263は、これら第1ないし第5受信用電磁超音波センサ22c−1〜22c−5それぞれについて、各内部状態を判定する。送信用電磁超音波センサ21cは、その送信面の法線方向と、順次に並置された複数の受信用電磁超音波センサ22cにおける並置方向、図11に示す例では鋳造方向に沿う線分とを含む平面内で、前記法線方向を基準に、前記横波超音波の伝播方向を変更する。図11に示す例では、この送信用電磁超音波センサ21cに対し、第1ないし第5受信用電磁超音波センサ22c−1〜22c−5それぞれは、θ1度、θ2度、0度、θ4(=−θ2)度およびθ5(=−θ1)度の各方向に配置される。なお、図11に示す例では、複数の受信用電磁超音波センサ22cは、送信用電磁超音波センサ21cに対し対称に配置されたが、非対称に配置されても良い。例えば、第2受信用電磁超音波センサ22c-2が送信用電磁超音波センサ21cに対向するように、第1ないし第5受信用電磁超音波センサ22c−1〜22c−5は、配置されても良い。
このような送信用電磁超音波センサ21cは、例えば、アレイ状に配置され、鋳片Obに横波超音波を素横波超音波として発生させる複数の電磁超音波発生素子と、前記複数の電磁超音波発生素子それぞれによって発生させられた複数の素横波超音波を相互に干渉させることで所定の伝播方向に前記横波超音波を送信するように、前記複数の電磁超音波発生素子を制御する素子制御部とを備える。前記電磁超音波素子は、例えば、鋳片Obの内部に静磁場を生成する磁石と、前記鋳片Obの内部に渦電流を生成するコイルとを備え、前記静磁場および前記渦電流に基づく電磁超音波を前記素横波超音波として発生させる。このように前記複数の電磁超音波素子における各磁石は、個別であって良いが、一体であっても良い。すなわち、前記複数の電磁超音波素子は、例えば、鋳片Obの内部に静磁場を生成する1個の磁石と、アレイ状に配置され、前記鋳片Obの内部に複数の渦電流を生成する複数のコイルとを備え、前記磁石で生成された静磁場および前記複数のコイルそれぞれによって生成された複数の渦電流に基づく複数の電磁超音波を前記複数の素横波超音波として発生させる。
このような第3変形形態で用いられる送信用電磁超音波センサ21cとして、例えば、以下に説明する、第1ないし第3態様の電磁超音波センサ21ca〜21ccが挙げられる。
第1態様における電磁超音波センサ21caは、例えばローレンツ力型であり、図12に示すように、鋳片Obの内部に静磁場を生成する1個の磁石212caと、アレイ状に配置され、前記鋳片Obの内部に複数の渦電流を生成する複数のコイル213ca、図12に示す例では3個の第1ないし第3コイル213ca−1〜213ca−3とを備える。磁石212caは、例えば永久磁石または電磁石を備えて構成され、磁極の一方(例えばS極)を鋳片Obの一方主面と対向(正対)し、磁束線が鋳片Obの前記一方主面の法線方向に沿って磁石212caから鋳片Obの一方主面へ入り込むように、配置される。複数のコイル213ca(213ca−1〜213ca)は、それぞれ、磁石212caをコイルボビンとして、212caの外周面に、絶縁被覆した長尺な導体線を、順次に並置された複数の受信用電磁超音波センサ22cにおける並置方向、図11および図12に示す例では鋳造方向に沿う線分を軸として軸回りに、巻回すことによって形成される。そして、これら複数のコイル213ca(213ca−1〜213ca)は、前記並置方向(前記鋳造方向)に沿って所定の間隔を空けて順次に配置される。
このような第1態様における電磁超音波センサ21caでは、磁石212caと第1コイル213ca−1とが1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212caによる静磁場および第1コイル213ca−1による渦電流に基づき、電磁超音波が1つの素横波超音波として発生する。磁石212caと第2コイル213ca−2とが他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212caによる静磁場および第2コイル213ca−1による渦電流に基づき、電磁超音波が他の1つの素横波超音波として発生する。磁石212caと第3コイル213ca−3とがさらに他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212caによる静磁場および第3コイル213ca−3による渦電流に基づき、電磁超音波がさらに他の1つの素横波超音波として発生する。
第2態様における電磁超音波センサ21cbは、例えばローレンツ力型であり、図13に示すように、鋳片Obの内部に静磁場を生成する1個の磁石212cbと、アレイ状に配置され、前記鋳片Obの内部に複数の渦電流を生成する複数のコイル213cb、図13に示す例では3個の第1ないし第3コイル213cb−1〜213cb−3とを備える。磁石212cbは、例えば永久磁石または電磁石を備えて構成され、磁極の一方(例えばS極)を、複数のコイル213cb(213cb−1〜213cb−3)を介して、鋳片Obの一方主面と対向(正対)し、磁束線が鋳片Obの前記一方主面の法線方向に沿って磁石212cbから鋳片Obの一方主面へ入り込むように、配置される。複数のコイル213cb(213cb−1〜213cb)は、それぞれ、コイルボビンCBの外周面に、絶縁被覆した長尺な導体線を、順次に並置された複数の受信用電磁超音波センサ22cにおける並置方向、図11および図13に示す例では鋳造方向に沿う線分を軸として、軸回りに巻回すことによって形成される。コイルボビンCBは、例えば、被磁性材料で形成された板状の部材である。そして、これら複数のコイル213cb(213cb−1〜213cb)は、前記並置方向(前記鋳造方向)に沿って所定の間隔を空けて順次に配置される。
このような第2態様における電磁超音波センサ21cbでは、磁石212cbと第1コイル213cb−1とが1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212cbによる静磁場および第1コイル213cb−1による渦電流に基づき、電磁超音波が1つの素横波超音波として発生する。磁石212cbと第2コイル213cb−2とが他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212cbによる静磁場および第2コイル213cb−1による渦電流に基づき、電磁超音波が他の1つの素横波超音波として発生する。磁石212cbと第3コイル213cb−3とがさらに他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212cbによる静磁場および第3コイル213cb−3による渦電流に基づき、電磁超音波がさらに他の1つの素横波超音波として発生する。
第3態様における電磁超音波センサ21ccは、例えばローレンツ力型であり、図14および図15に示すように、鋳片Obの内部に静磁場を生成する1個の磁石212ccと、アレイ状に配置され、前記鋳片Obの内部に複数の渦電流を生成する複数のコイル213cc、図14および図15に示す例では3個の第1ないし第3コイル213cc−1〜213cc−3とを備える。磁石212ccは、例えば永久磁石または電磁石を備えて構成され、磁極の一方(例えばS極)を、複数のコイル213cc(213cc−1〜213cc−3)の各一部分を介して、鋳片Obの一方主面と対向(正対)し、磁束線が鋳片Obの前記一方主面の法線方向に沿って磁石212ccから鋳片Obの一方主面へ入り込むように、配置される。複数のコイル213cc(213cc−1〜213cc)は、それぞれ、略同形状であって、上述の電磁超音波センサ21aのコイル213aと同様に、渦巻き状の長尺な導体部材を、巻位置を所定の間隔で順次にずらしながら、基板SB上に配設したいわゆるレーストラック型コイルである。より詳しくは、第1コイル213cc−1は、板状の非磁性材料で形成された基板SB上に配設される。第2コイル213cc−2は、図略の絶縁層(絶縁膜)を介して第1コイル213cc−1上に積層されることで、基板SB上に配設される。この際に、レーストラック型の第2コイル213cc−2における一方の直線状の導体部材2131cc−2が、レーストラック型の第1コイル213cc−1における一方の直線状の導体部材2131cc−1に、順次に並置された複数の受信用電磁超音波センサ22cにおける並置方向、図11、図14および図15に示す例では鋳造方向で隣接するように、第2コイル213cc−2は、第1コイル213cc−1に対して前記並置方向(鋳造方向)にずらして配設される。第3コイル213cc−3は、図略の絶縁層(絶縁膜)を介して第2コイル213cc−2上に積層されることで、基板SB上に配設される。この際に、レーストラック型の第3コイル213cc−3における一方の直線状の導体部材2131cc−3が、レーストラック型の第2コイル213cc−2における一方の直線状の導体部材2131cc−2に、前記並置方向で隣接するように、第3コイル213cc−3は、第2コイル213cc−2に対して前記並置方向にずらして配設される。そして、磁石212ccは、これら第1ないし第3コイル213cc−1〜213cc−3における各直線状の各導体部材2131cc−1〜213cc−3上に位置するように、配置される。
このような第3態様における電磁超音波センサ21ccでは、磁石212ccと第1コイル213cc−1とが1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212ccによる静磁場および第1コイル213cc−1による渦電流に基づき、電磁超音波が1つの素横波超音波として発生する。磁石212ccと第2コイル213cc−2とが他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212ccによる静磁場および第2コイル213cc−1による渦電流に基づき、電磁超音波が他の1つの素横波超音波として発生する。磁石212ccと第3コイル213cc−3とがさらに他の1つの電磁超音波発生素子を構成し、磁石212ccによる静磁場および第3コイル213cc−3による渦電流に基づき、電磁超音波がさらに他の1つの素横波超音波として発生する。
なお、これら第1ないし第3態様における電磁超音波センサ21ca〜21ccにおいて、複数のコイル213ca、213cb、213ccは、3個に限定されず、任意の個数であって良く、個数が多いほど、角度分解能が向上して好ましい。
これら第1ないし第3態様における電磁超音波センサ21ca〜21ccにおいて、図3に示すように、前記複数の電磁超音波発生素子それぞれによって発生させられた複数の素横波超音波を相互に干渉させることで所定の伝播方向に前記横波超音波を送信するように、前記複数の電磁超音波発生素子を制御する素子制御部265が制御処理部26に機能的に構成される。より具体的には、一例として、第1態様の電磁超音波センサ21caの場合では、素子制御部265は、第1ないし第3コイル213ca−1〜213ca−3それぞれにパルス状の電流を通電する。これに応じて鋳片Obには、渦電流が生じ、磁石212caの静磁場との相互作用で鋳片Obにローレンツ力が生じ、これによってパルス状に横波超音波が素横波超音波として鋳片Obに発生する。この際に、素子制御部265は、これら第1ないし第3コイル213ca−1〜213ca−3それぞれに対する通電タイミングを所定の時間だけずらすことで、各素横波超音波を各通電タイミングで発生させる。これら各通電タイミングで発生した各素横波超音波は、相互に干渉し、これら各素横波超音波の干渉によって、前記所定の時間に応じた角度を持つ波面を形成した横波超音波が形成される。このように第1態様の電磁超音波センサ21caは、前記所定の時間に応じた角度の伝播方向に横波超音波を送信する。前記所定の時間を調整(制御)することで、横波超音波の伝播方向が変更(制御)できる。第2および第3態様における電磁超音波センサ21cb、21ccも、素子制御部265が同様に各コイル213cb、213ccを制御することで、所定の伝播方向に横波超音波を送信する。
複数の受信用電磁超音波センサ22cは、それぞれ、受信角度に応じて設計された第2変形形態で説明した上述の受信用電磁超音波センサ22bを利用できる。送信用電磁超音波センサ21cと対向する受信用電磁超音波センサ22c、図11に示す例では、第3受信用電磁超音波センサ22c−3には、実施形態で説明した上述の受信用電磁超音波センサ22aが利用されても良い。あるいは、複数の受信用電磁超音波センサ22cには、それぞれ、受信角度に応じた受信タイミングで超音波を受信する点を除き、上述した第1ないし第3態様の電磁超音波センサ21ca、21cb、21ccと同様の電磁超音波センサが利用されても良い。
このような連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、伝播方向を変更することによって互いに異なる複数の各位置で、各内部状態を判定できる。この結果、例えば引き抜き速度の変更や冷却態様の変更や調整成分の変更等に応じて、クレータエンドの位置がシフトした場合でも、クレータエンドの位置もより精度良く判定できる。
また、これら上述では、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、1個のロール間に1組の送信用電磁超音波センサ21(21a、21b)および受信用電磁超音波センサ22(22a、22b)を備えたが、送信用電磁超音波センサ21と受信用電磁超音波センサ22とを1組として、連続鋳造装置CCにおける1個のロール間に配置された複数の組を備え、内部状態判定部263は、前記複数の組それぞれについて、各内部状態を判定しても良い。このような場合において、前記複数の組は、鋳造方向(引き抜き方向)に沿って配置されて良い。これによれば、より高い空間分解能で鋳片Obの内部状態を判定でき、また、ロール間が比較的広い(ロール間隔が比較的長い)場合にも対応できる。あるいは、前記場合において、前記複数の組は、鋳造方向に直交する幅方向に沿って配置されて良い。これによれば、幅方向における鋳片Obの内部状態を判定できる。また、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、連続鋳造装置CCにおける1個のロール間において、鋳片Obの一方主面側に、横波超音波の伝播方向を変更できる1個の送信用電磁超音波センサと、前記鋳片Obの他方主面側に複数の受信用電磁超音波センサ22とを備え、内部状態判定部263は、前記複数の受信用電磁超音波センサ22それぞれについて、各内部状態を判定しても良い。これによっても、より高い空間分解能で鋳片Obの内部状態を判定でき、また、ロール間が比較的広い(ロール間隔が比較的長い)場合にも対応できる。あるいは、前記場合において、前記複数の受信用電磁超音波センサ22は、鋳造方向に直交する幅方向に沿って配置されて良い。これによっても、幅方向における鋳片Obの内部状態を判定できる。そして、これらそれぞれにおいて、制御処理部26にクレータエンド位置判定部264が機能的にさらに備えられても良い。
あるいは、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、送信用電磁超音波センサ21と受信用電磁超音波センサ22とを1組として、前記1組を、連続鋳造装置CCのロール間において鋳造方向に沿って移動する第1移動機構をさらに備え、内部状態判定部263は、前記第1移動機構で前記組を複数の位置に移動させて前記複数の位置それぞれについて、各内部状態を判定しても良い。前記第1移動機構は、例えば、両先端それぞれに送信用電磁超音波センサ21および受信用電磁超音波センサ22それぞれを取り付けたコ字状(C字状)のフレームと、前記フレームを支持し、前記フレームを鋳造方向に沿って移動するアームと、前記アームを駆動する駆動部とを備えて構成される。これによっても、より高い空間分解能で鋳片Obの内部状態を判定できる。あるいは、連続鋳造装置CCおよびこれに備えられた鋳片内部状態判定装置SDは、送信用電磁超音波センサ21と受信用電磁超音波センサ22とを1組として、前記1組を、連続鋳造装置CCのロール間において鋳造方向に直交する幅方向に沿って移動する第2移動機構をさらに備え、内部状態判定部263は、前記第2移動機構で前記組を複数の位置に移動させて前記複数の位置それぞれについて、各内部状態を判定しても良い。前記第2移動機構は、例えば、両先端それぞれに送信用電磁超音波センサ21および受信用電磁超音波センサ22それぞれを取り付けたコ字状(C字状)のフレームと、前記フレームを支持し、前記フレームを幅方向に沿って移動するアームと、前記アームを駆動する駆動部とを備えて構成される。これによっても、幅方向における鋳片Obの内部状態を判定できる。そして、これらそれぞれにおいて、制御処理部26にクレータエンド位置判定部264が機能的にさらに備えられても良い。
また、これら上述では、鋳片Obの内部温度分布T(x)は、温度センサ25で実測した表面温度から数式モデルを用いて求められたが、これに限定されるものではない。例えば熱伝導の基本方程式をx方向のみに一次元化したモデルを表す次式5より、内部温度分布T(x)を推定することもできる。
式5;ρc(∂T/∂t)=∂/∂x(K∂T/∂x)+H
ここで、ρは、鋳片の密度であり、cは、鋳片の比熱であり、Kは、鋳片の熱伝導率であり、Hは、発熱量であり、具体的な操業条件から境界条件等を適宜設定すればT(x)を推定することができる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。