JP2019161945A - 回転子、回転電機、及び車両 - Google Patents

回転子、回転電機、及び車両 Download PDF

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佳子 岡本
将也 萩原
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将也 萩原
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Shinya Sakurada
新哉 桜田
真琴 松下
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真琴 松下
則雄 高橋
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寿郎 長谷部
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Abstract

【課題】継続的に低速回転域でのモータ効率を維持しつつ、高速回転域でのモータ効率を向上させることができる回転子、回転電機、及び車両を提供することである。【解決手段】実施形態の回転子は、シャフトと、回転子鉄心と、永久磁石と、を持つ。シャフトは、回転軸線回りに回転する。回転子鉄心は、シャフトに固定される。永久磁石は、回転子鉄心に設けられる。また、永久磁石は、リコイル透磁率が1.1を超えるものである。回転子鉄心のd軸インダクタンスをLdとし、回転子鉄心のq軸インダクタンスをLqとしたとき、Lq<Ldを満たす。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、回転子、回転電機、及び車両に関する。
例えば、回転電機として車両(例えば、自動車や鉄道車両)に搭載された車両駆動用モータが挙げられる。車両駆動用モータとしては、永久磁石同期モータ(PMSM;permanent Magnet Synchronous Motor)がある。永久磁石同期モータは、電機子巻線が巻装された固定子と、この固定子に対し回転自在に設けられ、回転子鉄心に永久磁石が埋め込まれている回転子と、を備えている。また、永久磁石同期モータを回転させるためには、インバータ等の補機が設けられている。この補機によって、所望の電機子巻線に所望の電圧を印加すると、電機子巻線に磁場が発生する。この磁場と永久磁石との間で生じる磁気的な吸引力や反発力によって、回転子が回転する。
ここで、回転子が回転することによる磁気変化によって、電機子巻線に逆起電圧が生じてしまう。とりわけ回転子が高速回転すると、電機子巻線に大きな逆起電圧が生じ、電機子巻線に電流を供給できずに、それ以上回転子を高速回転させることができなくなるという事象が発生する。また、補機が制御できる電圧(制御電圧)を超える逆起電圧が生じると、急激に回転トルクが減少したり補機が損傷したりする可能性があった。
このため、制御電流(弱め界磁電流)によって回転子の高速回転時の逆起電圧を低減させる技術が提案されている。しかしながら、制御電流は、永久磁石同期モータの出力に直接寄与しないので、この永久磁石同期モータの高速域でのモータ効率を低下させてしまう可能性があった。
ところで、永久磁石同期モータのモータ効率を高めるために、永久磁石として高性能希土類磁石が用いられる。高性能希土類磁石としては、高性能希土類磁石としてNd−Fe−B系磁石、Sm−Co系磁石等が広く知られている。これらの永久磁石は、多元素にて構成されている。Fe元素やCo元素は飽和磁化増大の役割を担っている。
NdやSm等の希土類元素は、それらの4f軌道にて大きな磁気異方性が誘起され、これにより大きな保磁力がもたらされる。このように、各構成元素のもつ特性が引き出され、高性能磁石が実現される。また、Sm−Co系磁石は、キュリー温度が高いため、耐熱性に優れた磁気特性をもつ。このため、変動が大きい温度環境での使用を伴うモータへの適用が可能である。従来のSm−Co系磁石では、高い耐熱性と耐減磁性から、高温域でのモータ特性の向上を促してきた。
ここで、永久磁石同期モータのモータ特性は、回転速度に対するトルク値にて効率、損失などの可変速特性などで表される。低速回転域でのトルクは、制御電流を印加する必要がないので、永久磁石の磁力が支配的になる。このため、Nd−Fe−B系磁石のように、高い磁化をもつ磁石材が適している。これに対し、高速回転域では、制御電流によって銅損が上昇するので、結果的にモータ特性が低下してしまう可能性があった。
そこで、外部からの磁場に応答して減磁する高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を使用することが考えられる。このような永久磁石を使用することにより、永久磁石同期モータの低速回転域でのモータ効率を維持しつつ、高速回転域でのモータ効率を向上させることが可能になる。
しかしながら、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石は、外部からの磁場に対する応答性が高い一方、減磁後の残留磁化が数%程度減少することが確認されている。つまり、回転電機を一旦高速回転させた後、無負荷時の誘起電圧や低速回転時のトルク測定を行うと、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石は、残留磁化が数%程度減少してしまう。このため、継続的に低速回転域でのモータ効率を維持しつつ、高速回転域でのモータ効率を向上させることが困難である可能性があった。
特開2017−22375号公報 特開2017−22977号公報
本発明が解決しようとする課題は、継続的に低速回転域でのモータ効率を維持しつつ、高速回転域でのモータ効率を向上させることができる回転子、回転電機、及び車両を提供することである。
実施形態の回転子は、シャフトと、回転子鉄心と、永久磁石と、を持つ。シャフトは、回転軸線回りに回転する。回転子鉄心は、シャフトに固定される。永久磁石は、回転子鉄心に設けられる。また、永久磁石は、リコイル透磁率が1.1を超えるものである。回転子鉄心のd軸インダクタンスをLdとし、回転子鉄心のq軸インダクタンスをLqとしたとき、Lq<Ldを満たす。
実施形態の回転電機を示す回転軸線に直交する断面図。 実施形態の高いリコイル透磁率をもつ永久磁石と通常のNd磁石との磁束密度の変化を示すグラフ。 実施形態の第1変形例における回転子鉄心を示し、回転軸線に直交する断面図。 第1比較例の回転子鉄心を示す回転軸線に直交する断面図。 第2比較例の回転子鉄心を示す回転軸線に直交する断面図。 第3比較例の回転子鉄心を示す回転軸線に直交する断面図。 実施形態、第1変形例、第1比較例〜第3比較例の磁束密度と、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqを、電磁界解析により算出した結果を示す表。 実施形態、第1変形例、第1比較例〜第3比較例の無負荷時における誘起電圧を比較した表。 実施形態、第1変形例と、第1比較例〜第5比較例との回転子の低速回転時と高速回転時のトルクについて、電磁界解析を行った結果を示す表。 実施形態の第2変形例における回転子鉄心を示し、回転軸線に直交する断面図。 実施形態の回転電機が搭載された発電機の概略構成図。 実施形態の回転電機が搭載された鉄道車両の概略構成図。 実施形態の回転電機が搭載された自動車の概略構成図。
以下、実施形態の回転子、回転電機、及び車両を、図面を参照して説明する。
図1は、回転電機1を示し、回転軸線Pに直交する断面図である。なお、回転電機1の回転子2は8極であり、図1では、1極分、つまり、1/8周の周角度領域分のみを示している。
回転電機1は、略円筒状の固定子20と、固定子20よりも径方向内側に設けられ、固定子20に対して回転自在に設けられた回転子2と、を備えている。なお、固定子20及び回転子2は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配置されている。以下、共通軸を回転軸線Pと称し、回転軸線P回りに周回する方向を周方向と称し、回転軸線P方向及び周方向に直交する方向を径方向と称する。
固定子20は、略円筒状の固定子鉄心21を有している。固定子鉄心21は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。固定子鉄心21の内周面には、回転軸線Pに向かって突出し、周方向に等間隔で配列された複数(例えば、本実施形態では48個)のティース22が一体成形されている。ティース22は、断面略長方形状に形成されている。そして、隣接する各ティース22間には、それぞれスロット23が形成されている。これらスロット23を介し、各ティース22に電機子巻線24が巻回されている。この電機子巻線24に電流を供給することにより、固定子20(ティース22)に所定の鎖交磁束が形成される。
回転子2は、回転軸線Pに沿って延び、この回転軸線P回りに回転するシャフト3と、シャフト3に外嵌固定された略円柱状の回転子鉄心4と、を備えている。回転子鉄心4の径方向中央には、シャフト3を挿入、又は圧入可能な貫通孔5が形成されている。
ここで、本実施形態の回転子鉄心4において、固定子20によって形成される鎖交磁束の流れ易い方向をq軸と称する。また、q軸に対して電気的、磁気的に直交する径方向に沿った方向をd軸と称する。すなわち、回転子鉄心4の外周面4aの任意の周角度位置に正の磁位(例えば磁石のN極を近づける)、これに対して1極分(本実施形態の場合は機械角で45度)ずれた他の任意の周角度位置に負の磁位(例えば磁石のS極を近づける)を与え、任意の位置を周方向へずらしていった場合に最も多くの磁束が流れる時の回転軸線Pから任意の位置に向かう方向をq軸と定義する。そして、このq軸に対して電気的、磁気的に直交する径方向に沿った方向をd軸と定義する。
つまり、回転子鉄心4の1極分とは、q軸間の領域(1/8周の周角度領域)をいう。このため、回転子鉄心4は、8極に構成されている。また、本実施形態の回転子鉄心4では、1極のうちの周方向中央がd軸となる。
なお、以下の説明では、d軸を極中心E1と称し、q軸(1/8周の周角度領域の周方向両端)を極端E2と称して説明する。
回転子鉄心4は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。回転子鉄心4は、透磁率が10以上であることが望ましい。
回転子鉄心4には、1極毎に、1つの永久磁石7が設けられている。すなわち、1つの永久磁石7は、回転子鉄心4の形状に対応するように形成された1つの収納孔6を埋めるように配置されている。そして、収納孔6に、例えば接着剤等により永久磁石7が固定されている。永久磁石7は、回転軸線P方向からみて周方向に長い板状に形成されている。
なお、以下の説明では、回転軸線P方向からみた永久磁石7の長手方向を単に長手方向と称する。永久磁石7の厚さ方向とは、回転軸線P方向からみて永久磁石7の短手方向をいう。
永久磁石7は、長手方向中央が極中心E1に位置するように配置されている。永久磁石7の長手方向両端には、内側ブリッジ部40を介してフラックスバリア10が形成されている。フラックスバリア10は、回転子鉄心4を軸方向に貫通する空洞部である。フラックスバリア10は、径方向外側に向かうに従い周方向の幅が広がるように、略扇状に形成されている。また、フラックスバリア10は、回転子鉄心4の外周面4a寄りに配置されている。これにより、フラックスバリア10と回転子鉄心4の外周面4aとの間に、外側ブリッジ部41が形成される。このように形成されたフラックスバリア10はq軸上に位置し、固定子20によって形成される鎖交磁束(q軸磁束)の流れを阻害する。
次に、永久磁石7の組成について説明する。
永久磁石7は、いわゆる高いリコイル透磁率をもつ永久磁石である。
永久磁石7としては、例えば、Sm−Co系永久磁石が用いられる。Sm−Co系永久磁石としては、例えば、組成式:RFeCuCo100(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはTi(チタン),Zr(ジルコニウム)及びHf(ハフニウム)から選ばれる少なくとも1種の元素であり、及びはそれぞれ原子%で、10.8≦p≦11.6、25≦q≦40、0.88≦r≦4.5、0.88≦t≦13.5を満たす)で表されるものが挙げられる。上記組成式の原子比は、R、Fe、M,Cu、及びCoの合計を100原子%としたときの原子比であり、焼結体は微量酸素、及び炭素を含む。
上記組成式におけるRは、磁石材料の磁気異方性を高める元素である。元素Rの例として、Y(イットリウム)を含む希土類から選ばれる1つ、又は複数の元素などを用いることができる。例えば、Sm,Ce(セリウム),Nd(ネオジム),Pr(プラセオジム)等を用いることができ、特に、Smを用いることが好ましい。
また、例えば、元素RとしてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度を元素Rとして適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能を高めることができる。なお、元素Rとして適用可能な元素の70原子%以上、さらには90原子%以上をSmとすると、より好ましい。
元素Rとして適用可能な元素の濃度を、例えば10.8原子%以上、12.5原子%以下とすることにより、保磁力を大きくすることが可能となる。元素Rとして適用可能な元素濃度が、10.8原子%未満の場合、多量のα−Feが析出するため、十分な保磁力を得られなくなり、12.5原子%より多い場合は飽和磁化の低下がみられる。元素Rとして適用可能な元素の濃度は、11.0原子%以上11.2原子%以下であることがより好ましい。
上記組成式におけるMは、Feの濃度が高い場合の組成にて、大きな保磁力を発現させるために必要な元素である。元素Mには、例えば、Ti,Zr、及びHfから成る群より選ばれる1つないし複数の元素が用いられる。元素Mの含有量が、4.5原子%より大きい場合、元素Mを過剰に含有する異相が生成しやすくなり、磁気特性の低下を引き起こす。また、元素Mの含有量が0.88原子%未満であると、Fe濃度を高め、磁化を向上させる効果が得られにくくなる。よって、元素Mの含有量rは、1.15原子%以上3.57原子%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.49原子%よりも大きく2.24原子%以下であること、さらには1.55原子%以上2.23原子%以下であることがもっとも好ましい。
元素Mは、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることにより、永久磁石の保磁力を高めることが可能となる。一方、元素Mの中で、Hfは高価なため、Hf使用量は可能な限り少ないことが好ましい。例えば、Hfの含有量は、元素Mの20原子%未満であることが好ましい。
Cu(銅)は、磁石材料において高い保磁力の発現機構に欠かせない元素である。Cuの含有量は、例えば3.5原子%以上13.5原子%以下であることが好ましい。これよりも含有量が多いと、磁化の低下を著しく起こしてしまう。また、これよりも少量であると、良好な磁気特性を得ることが困難となる。Cuの含有量tは、3.9原子%以上9.0原子%以下であることがより好ましく、さらに4.4原子%以上5.7原子%以下であることがより好ましい。
Feは、主として磁化を担う元素である。Feを多量に配合することにより、磁石材料の飽和磁化を高めることができるが、過剰に配合するとα−Feの析出や、相分離により所望の結晶相が得られにくくなり、よって保磁力低下を招くおそれもある。Feの含有量qは、25原子%以上40原子%以下であることが好ましい。Feの含有量qは、28原子%以上36原子%以下であることがより好ましく、もっとも好ましいのは30原子%以上33原子%以下である。
Coは、磁化発現を担うとともに、高い保磁力を発現させる元素である。また、Coを多く配合することで、高いキュリー温度が得られ、耐熱性を高めることができる。Coの配合量が少ないと、先述の効果が低くなるが、過剰に添加すると、相対的にFeの割合が減少し、磁化低下を招くおそれがある。また、Coの20原子%以下を、Ni(ニッケル),V(バナジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Al(アルミニウム),Si(ケイ素),Ga(ガリウム),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),W(タングステン)から成る群より選ばれる1つないし複数の元素で置換することにより、磁石特性である保磁力を高めることが可能となる。
また、永久磁石7は、六方晶系Th2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)を有する主相と、主相と主相の境界となる粒界相からなる2次元金属組織を有する。さらに、主相は、2−17型結晶相を有するセル相と、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)を有するCuリッチ相から成る。Cuリッチ相は、ひとつのセル相を包括する形態をとっていることが好ましい。上記構造をセル構造ともいう。また、Cuリッチ相には、セル相を分断するセル壁相も含まれている。
Cuリッチ相は、Cu濃度が周囲と比較し高い相をいう。例えば、Cuリッチ相のCu濃度は、Th2Zn17型結晶相のCu濃度の1.2倍以上であることが好ましい。Cuリッチ相は、例えばTh2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、線状又は板状に存在する。Cuリッチ相の構造定義は特になさないが、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)等が一例としてあげられる。また、永久磁石は、相の異なる複数のCuリッチ相を有していてもよい。
Cuリッチ相の磁壁エネルギーは、Th2Zn17型結晶相の磁壁エネルギーよりも高く、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動の障壁となる。よって、Cuリッチ相がピニングサイトとして機能することにより、複数のセル相間での磁壁移動の抑制となる。これをピニング効果とも称する。これより、セル相を囲むようにCuリッチ相が形成されることがより好ましくなる。
25原子%以上のFeを含むSm−Co系磁石において、Cuリッチ相のCu濃度は、10原子%以上60原子%以下であることが好ましい。Cuリッチ相でのCu濃度を高くすることで、より良好な磁気特性を得ることが可能となる。Fe濃度が高い組成域では、Cuリッチ相のCu濃度にばらつきが生じてしまう。このため、ピニング効果が得られにくくなり、磁気特性を良好なものに保てなくなる。
ピニングサイトを外れた磁壁の移動にともない磁化反転が生じ、磁化が低下してしまう。外部磁場を印加した際、その磁石の保磁力より低い磁場にて磁壁移動が生じてしまうと、磁化が低下し、磁石特性がおちてしまう。ゆえに、セル構造領域を増やすことにより、磁化の低下抑制を促す。
Th2Zn17型結晶相やCuリッチ相からなるセル構造の観察及びセルの組成分析には、STEM(走査透過型電子顕微鏡:Scanning Transmission Electron Microscope)、STEM−EDX(走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:STEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscop)にて観察を行う。
STEM観察用サンプルの前処理として、まず収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を用いて、粒界相が視野に入るよう加工を施す。なお、上記サンプルは未着磁であることが好ましい。STEM−EDXにて元素濃度測定を行うサンプルの前処理として、サンプルの表面から1mm以上内部を切り出し、測定用サンプルとする。また、磁化容易軸(c軸)に平行な面に対し、倍率100,000倍にて観察を行う。また、Cuと元素Mのマッピング像を同視野にてとる。
Cuマッピング像と元素Mマッピング像を重ねた際、Cu濃度が高い領域がCuリッチ相に相当する。また、Cu濃度及び元素M濃度の両方が高い領域をCuリッチ異相という。
上記セル構造は、保磁力の大きさを決定する主要因であり、かつリコイル透磁率を決める要因のひとつでもある。リコイル透磁率は、減磁曲線の平均的な傾きで、次式にて定義される。
リコイル透磁率μ=残留磁束密度Br/保磁力HcB・・・(1)
ここで、リコイル透磁率が高いとは、印加される外部磁場に応答して磁化が容易に変化することをいう。外部磁場に対して磁化が可逆的に応答する条件として、減磁曲線の変曲点(クニック)を動作点が超えない範囲である事があげられる。動作点とは、磁束密度Bと磁場Hの関数で表され、ある外部磁場に対して磁性材料が応答した際の磁気特性をさす。外部磁場により動作点がクニックを超えた場合、磁化は不可逆的となる。すなわち減磁し、これまでとは異なる減磁曲線をもつことになり、その上を動作点が動くことになる。したがって、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石とは、具体的には、以下の通りである。
図2は、縦軸を磁束密度[T]とし、横軸を磁場[kA/m]としたときの磁束密度の変化を示すグラフであり、通常のNd磁石と、高いリコイル透磁率をもつ永久磁石(高μ磁石)とを比較している。
図2に示すように、高いリコイル透磁率をもつ磁石とは、上記クニックが第2象限に現れないような高い保磁力をもち、かつ外部磁場に対する磁化応答性が優れているものが好ましい。すなわち、残留磁化Brが1.16T以上、保磁力Hcjが1500kA/m以上、リコイル透磁率が1.2以上である。さらに、残留磁化Brが1.16T以上、保磁力Hcjが1500kA/m以上、保磁力HcBが700kA/m以上、リコイル透磁率が1.1を超え1.8以下である。なお、リコイル透磁率の設定値についての理由の詳細については後述するが、永久磁石7のリコイル透磁率の上限値が1.8以下であるのは、永久磁石を製造するにあたっての上限に起因するところが大きい。したがって、永久磁石7のリコイル透磁率は1.8以下でなくてもよい。
そして、このように保磁力を維持したまま磁化に応答性をもたせた磁性材が必要となる。保磁力発生には、セル構造の存在が必至であるが、角型のよいままでは、外部磁場にたいする磁化の応答性が損なわれる。そこで、角型をおとすため、粒内異相の存在が重要となる。異相は元素MとCuから成り、そのCu濃度は粒界のこれまで粒界に多く分布していたCuリッチ相が、粒内にある濃度内で分布することで、保磁力を維持したまま角型をおさえる、すなわち磁化の応答性を上げることが可能となる。
粒内異相には、Cuリッチ相、Cu及び元素Mからなる相があげられる。ここでいう粒内異相とは、粒界相に重ならない、又は粒界相端部に接することのない異相をいう。粒内異相の有無確認及び濃度と分布状態は、焼結体のSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)の観察、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:SEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscop)での測定によって調べる。
粒内異相の存在をSEMで確認できた場合、その濃度を面積比にて定量化する。例えば1視野におけるSEM像全面に対する異相面積の占有率にて表す。例えば、倍率3000倍のSEM像にて、磁化1.20T、保磁力1800kA/m、リコイル透磁率1.08の焼結体では、異相の面積占有率は0.1%であるのに対し、磁化1.18T、保磁力1700kA/m、リコイル透磁率1.28の焼結体では異相の面積占有率は0.8%であった。また、異なる熱処理条件を施した結果、保磁力が100kA/m以下となった焼結体の異相の面積占有率は、3.0%と非常に大きい。このように磁気特性と異相濃度には相関があり、保磁力や磁化を保ちつつ高いリコイル透磁率を必須特性として加えるためには、粒内異相の存在が重要といえる。
次に、永久磁石7の製造方法について説明する。
永久磁石7は、上記磁気特性を有する合金粉末を加圧成形して成る焼結体により形成されている。
合金粉末は、例えばアーク溶解法や高周波溶解法による溶湯を鋳造し、固まった母合金を粉砕することで調整することができる。合金粉末は、組成が異なる複数の粉末を混ぜ合わせ、組成調整してもよい。また、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、置換拡散法などを用いて合金粉末を調整してもよい。ストリップキャスト法を用いた合金薄帯作製では、フレーク状の合金薄帯を作製、その後合金薄帯を粉砕することで合金粉末を調整する。
例えば、周速0.1m/秒以上20m/秒以下で回転する銅製冷却ロールに合金溶湯を傾注、ロール表面から剥離することにより、厚さ1mm以下の薄帯を作製することができる。周速が0.1m/秒未満の場合、薄帯において組成のばらつきが大きくなる。また、周速20m/秒を超える場合、結晶粒が微細化過ぎてしまい、磁気特性が低下する場合がある。このため、冷却ロールの周速は0.3m/秒以上15m/秒以下、さらに好ましくは0.5m/秒以上12m/秒以下である。合金粉末の平均粒径は2μm以上5μm以下であることが好ましく、また粒径が2μm以上10μm以下の粒子が体積割合にて80%以上であることが好ましい。
このような合金粉末又は粉砕前の合金に対して、必要であれば均質化を目的とした熱処理をしてもよい。粉砕にはジェットミルやボールミル等を用い実施される。粉砕は合金の酸化防止のため、乾式では不活性ガス雰囲気下、湿式では有機溶媒中にて行うことが好ましい。
次に上記粉砕粉を、電磁石の中に設置した金型へ合金粉末を充填し、磁場中にて加圧成形する。磁場を印加することにより、結晶軸を配向させた圧粉体を製造する。製造した圧粉体の焼結を行うことにより、焼結体を形成する。
焼結は、例えばArガスなどの不活性ガス雰囲気や真空下で行われる。不活性ガス雰囲気中で焼結した場合、蒸気圧が高いSm等の元素Rの蒸発抑制を促すことができる。これによって、組成のずれが生じにくくなる効果がある。しかしながら、不活性ガス雰囲気中では、異相生成や圧粉体中に存在する空孔へ不活性ガスが残存し、焼きしまらず密度をあげることができない可能性がでてくる。一方、真空下で焼結した場合、異相生成の抑制や焼結体の高密度化はかなうが、蒸気圧の高い元素Rの蒸散量が多くなり、組成ずれが生じ、永久磁石として適切な合金組成制御が困難となる。
また、焼結炉内の水分量や、圧粉体又は合金粉末に付着、混入している水分によって、熱処理にて分解され、酸素分子及び水素分子が生じる。酸素分子は元素Rと結合し、元素Rの酸化物を生成される。元素Rの酸化物は、磁石特性全般を低下させる要因となる。一方、水素分子は、微量混入した炭素と結合し、炭化水素を生成する。この炭化水素が、元素Mと反応し、元素Mの炭化物が生成される。よって、炉内水分量、及び合金粉末や圧粉体に付着、又は含有している水分は可能な限り制御することが重要である。
以上の点に対し、真空下で前処理工程(仮焼結工程)を実施後、Arガス等の不活性ガス雰囲気中で焼結工程(本焼結工程)を行うことが有効である。このような真空下での前処理工程と不活性ガス雰囲気中での本焼結工程とを有する焼結工程を手教することによって、圧粉体に付着、又は含有している水分を減らし、酸化物及び炭化物の生成を低減する。また、蒸気圧の高いSm等の元素Rの蒸発を抑制することができる。また、所圧粉体内に存在する空孔を低減させ焼きしまった高い密度をもつ焼結体がえられる。
25原子%以上のFe濃度を有する磁性粉末(合金粉末)を焼結する場合には、本焼結工程温度に至るまでは、真空下にて維持することが好ましい。本焼結温度に達すると同時に不活性ガス雰囲気へ切り替えることで、焼結中のSm等の元素Rの蒸散を極力抑えることが可能となる。
また、真空下から不活性ガスへ切り替える温度を温度TV−Gとし、本焼結工程の保持温度を温度Tとしたとき、TV−G>T−61℃を満たすことが好ましい。T−61℃以下では、異相が焼結体中に残存し、磁石特性低下を引き起こす。さらに十分焼きしめることができず、高密度化が困難となる。また、TV−G>T−50℃、さらにはTV−G≧T−40℃、さらにはTV−G≧T−30℃を満たすことが好ましい。
真空下での焼結(仮焼結工程)時の真空度は、9×10−2Pa以下であることが好ましい。9×10−2Paを超える場合、元素Rの酸化物が過剰に形成し、磁気特性劣化の要因となる。また、元素Mの炭化物相が過剰に生成されやすくなる。仮焼結工程の真空度は、5×10−2Pa以下とすることがより好ましく、1×10−2Pa以下ではより好ましい。
本焼結工程における保持温度は、1230℃以下であることが好ましい。これは、Fe濃度が高くなると、融点降下が起こるため、焼結時の元素Rの蒸散を最小限にするためである。より好ましくは、1215℃以下、さらに1205℃以下、さらには1195℃以下が好ましい。本焼結工程における保持時間を、30分以上15時間以下とすることにより、高密度な焼結体を得ることが可能となる。保持時間が30分未満の場合、十分に焼きしまらず、焼結体の密度が十分でなくなる。また、保持時間が15時間以上の場合、Smが著しく蒸発してしまうため、良好な磁気特性を得るのが困難となる。保持時間は、1時間以上10時間以下であり、さらには1時間以上4時間以下であることがより好ましい。
次に溶体化処理を行う。溶体化処理は、相分離組織の前駆体となるTbCu7型結晶相(1−7型結晶相)を形成する熱処理である。溶体化処理では、1100℃以上1190℃以下の温度で、30分以上24時間以下の保持時間を要する。溶体化処理の際、保持温度は1100℃未満の場合、及び1190℃以上の場合、溶体化処理後の焼結体のTbCu7型結晶相の割合が小さく、磁気特性が低下する可能性が高くなる。保持温度は、1120℃以上1180℃以下は好ましく、さらには1120℃以上1170℃以下がより好ましい。
また、溶体化処理の保持時間が30分未満の場合、構成相の不均一化が起こり、保磁力が低下する。また、溶体化処理の保持時間が24時間を超える場合、焼結体中の元素Rの蒸発量が多くなり、良好な磁気特性を得ることが困難となる。このため、溶体化処理の保持時間は、1時間以降12時間以下が好ましく、さらには1時間以上8時間以下が好ましい。なお、真空下やArガス等の不活性ガス雰囲気中での溶体化処理を行うことも、粉末中の元素Rの酸化抑制を促すことになる。
先述した焼結工程と溶体化処理との間に、両熱処理の保持温度の中間温度程度にて、一定時間保持する熱処理を行ってもよい。この工程を高質化処理、又は中間熱処理という。高質化処理は、金属組織、特にマクロ組織を制御することを目的とした処理である。高質化処理では、例えば本焼結工程における保持温度より10℃以上の低温、かつ溶体化処理における保持温度より10℃以上の高温で、2時間以上12時間以下の保持時間を有することが好ましい。元素の拡散速度の観点から、溶体化処理だけでは、焼結中に生成した異相を完全に除去するのは不可能である。また、粒成長を確実に十分なものとするには溶体化処理だけでは不十分な可能性がある。そこで、高質化処理をほどこし、異相の除去及び粒成長をより助長することができる。
高質化処理時の保持温度は、例えば1140℃以上1190℃以下であることが好ましい。1140℃未満の場合、及び1190℃を超える場合は、磁気特性が低下する可能性がある。また、高質化処理の保持時間が2時間未満の場合、元素拡散が不十分となり、異相の除去が十分になされず、磁気特性の改善への効果が小さくなる。また、保持時間が12時間を超える場合、元素Rの蒸発量が多くなり、良好な磁気特性を得ることが困難となる。なお、高質化処理における熱処理時間は4時間以上10時間以下であることが好ましく、さらには6時間以上8時間以下であることがより好ましい。また、高質化処理は酸化防止のため、真空下又はArガス等の不活性ガス雰囲気中での処理がより好ましい。
次に焼結体の時効処理を行う。時効処理は、金属組織の制御を行い、磁石の保磁力を高めることを目的に行う処理である。よって、時効処理によって、磁石の金属組織を複数相へ相分離させる。保磁力向上を目的とした場合の時効処理温度は、700℃以上900℃以下まで昇温させ、保持温度にて30分以降80時間以下処理を行う。その後、降温速度を0.2℃/分以上2.0℃/分以下で冷却を行い、400℃以上650℃以下の温度まで徐冷し、到達温度にて30分以上8時間以下で保持する。
高い保磁力を維持し、かつ高いリコイル透磁率を有する金属組織を形成させるためには、上記時効処理温度と異なる熱処理条件を必要とする。例えば、第1保持にて保持温度を900℃以上にし、これまで懸念していた異相の存在を適度に促す。例えば、910℃にて40時間保持すると、これまで粒内にみられなかった異相が生じる。この異相の存在により、角型が低下、高いリコイル透磁率を有する磁石がえられる。930℃以上の保持温度では、保磁力が急激に減少し、良好な磁気特性を有する高いリコイル透磁率磁石の作製は望めない。時効処理の保持温度は900℃以上930℃未満であることが好ましい。また、保持時間は、30分以上80時間以下が好ましい。保持温度が900℃未満では、角型比が高くなり、リコイル透磁率が小さくなってしまう。一方、保持温度が930℃を超えると、保磁力が急激に低減してしまう。
また、時効処理での保持温度へ到達させる際の昇温速度は、5.0℃/分以上15℃/分以下で行う。これは金属組織中の異相濃度、及び分布形態を制御し、磁気特性のばらつきを低減させることで、十分な保磁力とリコイル透磁率を兼ねた磁石を、再現性高く作製するためである。保持温度への昇温速度を15℃/分以上35℃/分以下であることが好ましい。昇温速度は、元素の拡散速度と拡散度に作用するため、形成相の分布へ影響を及ぼす。例えば、昇温速度30℃/分では、ばらつきがほぼなく一様な特性を持った磁石を作製できる。
最初の保持温度から次の保持温度までの徐冷時、冷却速度は0.2℃/分未満の場合、セル壁相の厚さが増し、磁化が減少しやすくなる。また、2.0℃/分を超える場合、セル相とセル壁相とのCu濃度勾配が十分につかず、保磁力の低下が著しくなる。徐冷時の冷却速度は、例えば0.4℃/分以上1.5℃/分以下、さらには0.5℃/分以上1.3℃/分以下であることがより好ましい。また、400℃未満まで冷却する場合、異相が形成されやすくなる。650℃を超える温度まで徐冷する場合、Cuリッチ相でのCu濃度が適当でなくなり、十分な保磁力が得られないことがある。また、第2保持での保持時間が、30分未満、又は8時間を超える場合、異相濃度が過剰となり、十分な磁気特性が得られなくなる可能性がある。
以上の工程により永久磁石を製造することができる。上記製造法では、適度な保磁力を維持したまま、高いリコイル透磁率もかね、外部磁場に対する応答性の高い永久磁石を製造することができる。
次に、回転電機1の動作について説明する。
固定子20の電機子巻線24に電流を供給すると、鎖交磁束(q軸磁束)が形成される。この鎖交磁束と回転子2の永久磁石7による磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、回転子2が回転する。
また、回転子2には、永久磁石7の長手方向に沿ってq軸磁路が形成され、このq軸磁路に鎖交磁束が流れる。一方、d軸は、永久磁石7により、磁路が形成されにくい。このため、回転子鉄心4に固定子20の鎖交磁束が流れやすい方向と流れにくい方向とが形成される。そして、これにより発生するリラクタンストルクが、回転子2の回転に寄与される。このように、回転子2は、永久磁石7による磁束と、リラクタンストルクにより回転する。
ここで、上述したように、d軸は、永久磁石7により、磁路が形成されにくいものの、永久磁石7が高いリコイル透磁率をもつ磁石であり、かつq軸には、フラックスバリア10が形成されているため、固定子20の鎖交磁束が流れにくい。このため、永久磁石7を通過するためのインダクタンス(d軸インダクタンス)をLdとし、q軸上のインダクタンス(q軸インダクタンス)Lqとしたとき、回転子鉄心4は、
Lq<Ld ・・・(2)
を満たす構造となる。換言すれば、Lq/Ld<1であり、回転子鉄心4は、いわゆる順突極構造となる。
したがって、上述の実施形態によれば、電機子巻線24に供給する電流の値を小さくして永久磁石7の増磁が可能となり、回転子鉄心4の有効磁束量を増大させることができる。換言すれば、このため、所望の高速回転時の回転電機1のモータトルクを維持しつつ、一旦高速回転させた後に回転電機1を低速回転で使用する場合であっても、この低速回転時の回転電機1のモータトルクを向上できる。
以下、実施形態の第1変形例を示した後、実施形態と第1変形例の効果について、より具体的に説明する。
図3は、実施形態の第1変形例における回転子鉄心204を示し、回転軸線Pに直交する断面図である。なお、図3は、前述の図1に対応している。また、前述の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の第2変形例についても同様)。
図3に示すように、第1変形例の回転子鉄心204には、実施形態のフラックスバリア10に代わって凹部11が形成されている。凹部11は、回転子鉄心204の外周面204aにおける永久磁石7の長手方向両端の近傍から極端E2に至る間に形成されている。また、凹部11は、回転子鉄心204の外周面204aの軸方向全体に渡って形成されている。このように、凹部11は、回転子鉄心4のq軸上に位置している。
回転子鉄心204の凹部11が形成されている箇所は、回転子鉄心204と固定子20との間のエアギャップAG1が、回転子鉄心204の極中心E1の近傍の外周面204aと固定子20との間のエアギャップAG2よりも大きくなる。このように、凹部11が形成されている箇所は、エアギャップAG1が大きくなる分、回転子鉄心204側に固定子20の鎖交磁束が流れにくくなる。
したがって、上述の第1変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、上述の実施形態、及び第1変形例の具体的な効果について、比較例を参照しながら説明する。
まず、比較例として、3つの形態について説明する。
図4は、第1比較例の回転子鉄心4を示す回転軸線Pに直交する断面図であり、前述の図1に対応している。
図4に示すように、第1比較例では、回転子鉄心4にフラックスバリア10、及び凹部11のいずれも設けていない。
図5は、第2比較例の回転子鉄心4を示す回転軸線Pに直交する断面図であり、前述の図1に対応している。
図5に示すように、第2比較例では、回転子鉄心4の永久磁石7よりも外周面4a寄りに、フラックスバリア110を設けた。フラックスバリア110は、永久磁石7の長手方向全体に渡って、かつ回転子鉄心4の軸方向全体に渡って形成されている。また、フラックスバリア110は、回転軸線P方向からみて周方向に長い長方形状に形成されている。フラックスバリア110によって、d軸インダクタンスLd(図1参照)が、前述の実施形態と比較して小さくなる。
図6は、第3比較例の回転子鉄心4を示す回転軸線Pに直交する断面図であり、前述の図1に対応している。
図6に示すように、第3比較例では、回転子鉄心4の外周面4aにおける永久磁石7の径方向外側に、凹部111が形成されている。凹部111は、永久磁石7の長手方向全体に渡って、かつ回転子鉄心4の軸方向全体に渡って形成されている。このように、凹部111は、回転子鉄心4のd軸上に位置している。凹部111によって、d軸インダクタンスLd(図1参照)が、前述の実施形態と比較して小さくなる。
図7は、上述の実施形態、第1変形例、第1比較例〜第3比較例の磁束密度(平均値)と、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqを、電磁界解析により算出した結果を示す表である。なお、上述の実施形態、第1変形例、第1比較例〜第3比較例では、永久磁石7として、いずれも高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を用いている。また、解析では、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqを下記の式(3)、式(4)によって算出した。
Ld=la+3/2(La−Las) ・・・(3)
Lq=la+3/2(La+Las) ・・・(4)
ここで、laは一相あたりの漏れインダクタンス、Laは一相あたりの有効インダクタンスの平均値、Lasは一相あたりの有効インダクタンスの振幅を示している。いずれも最大トルクをとった電流位相角:20[deg]近傍での、インダクタンスを算出した。
図7に示すように、実施形態、及び第1変形例では、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqが上記式(2)を満たすことが確認できる。
図8は、上述の実施形態、第1変形例、第1比較例〜第3比較例の無負荷時における誘起電圧(無負荷時誘起電圧)[Vrms]を比較した表である。なお、無負荷時の回転子2の回転数は、4,500[rpm]とした。また、いずれの回転子鉄心4の形状においても、コギングトルク増加の防止、抑止のため、回転子鉄心4の外径は同一のものとしている。
図8に示すように、実施形態、及び第1変形例では、各比較例と比較して、誘起電圧が高いことが確認できる。すなわち、永久磁石7の磁束(d軸磁束)がq軸磁束と比較して優位に流れていることが確認できる。
図9は、上述の実施形態、第1変形例と、第1比較例〜第5比較例との回転子2の低速回転時と高速回転時のトルクについて、電磁界解析を行った結果を示す表である。なお、図9における低速回転時トルクとは、回転子2の回転数が1,000[rpm]のときのトルクをいい、高速回転時トルクとは、回転子2の回転数が6,000[rpm]のときのトルクをいう。また、図9における突極性とは、d軸インダクタンスLdの大きさとq軸インダクタンスLqの大きさとの大小関係をいうものであり、順突極とは上記式(2)を満たし、逆突極とは、回転子鉄心のd軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLqが、
Lq≧Ld ・・・(5)
を満たす構造をいう。
さらに、図9において、第1比較例〜第5比較例とは、以下の条件をいうものとする。すなわち、
第1比較例:回転子鉄心の構造が実施形態と同様、かつ永久磁石がNd磁石である。
第2比較例:回転子鉄心の構造が実施形態の第1変形例と同様、かつ永久磁石がNd磁石である。
第3比較例:回転子鉄心の構造が前述の図4に示す構造、かつ永久磁石が高リコイル透磁率をもつ磁石である。
第4比較例:回転子鉄心の構造が前述の図5に示す構造、かつ永久磁石が高リコイル透磁率をもつ磁石である。
第5比較例:回転子鉄心の構造が前述の図6に示す構造、かつ永久磁石が高リコイル透磁率をもつ磁石である。
図9に示すように、本実施形態、及び第1変形例では、所望の高速回転時トルクを維持しつつ、低速回転時トルクが向上されていることが確認できる。
このように、上述の実施形態、及び第1変形例では、回転子鉄心4,204は、上記式(2)を満たす構造である。このため、所望の高速回転時トルクを維持しつつ、低速回転時トルクも逆突極の場合と比較して向上できる。
また、上記式(2)を満たすべく、回転子鉄心4,204に、固定子20の鎖交磁束(q軸磁束)を流れにくくする磁束阻害部を設けた。具体的に、磁束阻害部としては、実施形態において、回転子鉄心4の永久磁石7の長手方向両端に、内側ブリッジ部40を介してフラックスバリア10を形成した。また、第1変形例において、回転子鉄心204の外周面204aにおける永久磁石7の長手方向両端の近傍から極端E2に至る間に凹部11を形成した。このように、簡素な構造でq軸磁束を阻害できるので、回転子鉄心4,204の製造コストを抑えることができる。
また、永久磁石7として、リコイル透磁率が1.1を超える高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を用いている。このような永久磁石7に、十分な磁束量を得ることができるというとりわけ顕著な効果を奏する。さらに、従来と比較して、低速回転時及び高速回転時のいずれの場合も回転電機1の回転トルクを向上できる。
なお、上述の実施形態のフラックスバリア10内に、磁束の流れにくい素材、例えば、樹脂を充填してもよい。このように構成することで、回転子鉄心4の機械的強度を高めることができる。
また、上述の実施形態では、回転子鉄心4の軸方向全体に渡ってフラックスバリア10を形成した場合について説明した。また、上述の第1変形例では、回転子鉄心204の軸方向全体に渡って凹部11を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フラックスバリア10や凹部11は、回転子鉄心4,204の軸方向全体に渡って形成されていなくてもよい。回転子鉄心4,204に、フラックスバリア10や凹部11を、軸方向に断続的に形成されていてもよい。
また、上述の実施形態や第1変形例では、回転子鉄心4,204に、q軸磁束が流れにくくなる磁束阻害部(実施形態におけるフラックスバリア10、第1変形例における凹部11)を形成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、d軸インダクタンスLdをq軸インダクタンスLqよりも大きくするように構成してもよい。より具体的に、以下に説明する。
図10は、実施形態の第2変形例における回転子鉄心304を示し、回転軸線Pに直交する断面図である。なお、図10は、前述の図1に対応している。
図10に示すように、第2変形例の回転子鉄心304には、外周面304aに突極12が径方向外側に向かって突出形成されている。また、突極12は、周方向の長さが永久磁石7の長手方向の長さよりも若干小さい程度に形成されている。このように、突極12は、d軸上に位置している。このように構成することで、d軸インダクタンスLdをq軸インダクタンスLqよりも大きくでき、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上述の第2変形例において、突極12の周方向両端に、回転軸線P方向からみて径方向内側に向かって末広がりとなるように傾斜部13を形成してもよい。このように構成することで、固定子20に対する回転子2の急激な磁束の変化を抑制でき、コギングトルクの増大を防止できる。このことは、前述の第1変形例にも同様のことがいえる。すなわち、図3に示す凹部11の周方向側に、傾斜部13を形成してもよい。
また、上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例における回転電機1は、例えば、以下の発電機100に搭載されていてもよい。
図11は、発電機100の概略構成図である。
すなわち、図11に示すように、発電機100は、回転電機1を備えている。回転子2は、発電機100の一端に設けられたタービン101とシャフト102とを介して接続されている。このシャフト102が、回転子2のシャフト3に接続されている。タービン101は、例えば外部から供給される流体により回転する。
なお、流体により回転するタービン101に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト102を回転させることも可能である。
また、シャフト102は、回転子2に対してタービン101とは反対側に配置された整流子(不図示)と接触している。そして、回転子2の回転により発生した起電力が発電機100の出力として相分離母線、及び主変圧器(不図示)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。
発電機100は、通常の発電機、及び可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、回転子2には、タービン101からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機100は、回転子2の帯電を放電させるためのブラシ103を備えている。
また、上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例における回転電機1は、例えば、以下の鉄道車両(車両の一例)200に搭載されていてもよい。
図12は、鉄道交通に利用される鉄道車両200の概略構成図である。
図12に示すように、鉄道車両200には、回転電機1が搭載されている。回転電機1は、例えば、架線から供給される電力や、鉄道車両200に搭載された二次電池から供給される電力を利用することによって駆動力を出力する電動機(モータ)として利用されてもよい。また、回転電機1は、例えば、運動エネルギーを電力に変換して、鉄道車両200内の各種負荷に電力を供給する発電機(ジェネレータ)として利用されてもよい。このように、高効率な回転電機1を利用することにより、省エネルギーで鉄道車両を走行させることができる。
また、上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例における回転電機1は、例えば、以下の自動車(車両の他の例)300に搭載されていてもよい。
図13は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車300の概略構成図である。
図13に示すように、自動車300に回転電機1が搭載された場合、回転電機1は、自動車300の駆動力を出力する電動機、又は自動車300の走行時の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても利用されてよい。
また、上述の実施形態、第1変形例、及び第2変形例における回転電機1は、例えば、産業機器(産業用モータ)、空調機器(エアコンディショナ・給湯器コンプレッサモータ)、風力発電機、又はエレベータ(巻上機)に搭載されていてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、回転子鉄心4,204,304を、上記式(2)を満たす構造とした。このため、所望の高速回転時トルクを維持しつつ、低速回転時トルクも逆突極の場合と比較して向上できる。
また、永久磁石7として、リコイル透磁率が1.1を超える高いリコイル透磁率をもつ永久磁石を用いている。このような永久磁石7に、十分な磁束量を得ることができるというとりわけ顕著な効果を奏する。さらに、従来と比較して、低速回転時及び高速回転時のいずれの場合も回転電機1の回転トルクを向上できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…回転電機、2…回転子、3…シャフト、4,204,304…回転子鉄心、7…永久磁石、10…フラックスバリア(空洞部)、11…凹部、12…突極、20…固定子、24…電機子巻線、100…発電機、200…鉄道車両(車両)、300…自動車(車両)、P…回転軸線

Claims (8)

  1. 回転軸線回りに回転するシャフトと、
    前記シャフトに固定される回転子鉄心と、
    前記回転子鉄心に設けられた永久磁石と、
    を備え、
    前記永久磁石は、リコイル透磁率が1.1を超えるものであり、
    前記回転子鉄心のd軸インダクタンスをLdとし、前記回転子鉄心のq軸インダクタンスをLqとしたとき、
    Lq<Ld
    を満たす
    回転子。
  2. 前記回転子鉄心に、q軸磁束を流れにくくする磁束阻害部を設けた
    請求項1に記載の回転子。
  3. 前記磁束阻害部は、前記回転子鉄心のq軸磁路上に形成されている空洞部である
    請求項2に記載の回転子。
  4. 前記磁束阻害部は、前記回転子鉄心の外周面で、かつq軸磁路上に形成されている凹部である
    請求項2に記載の回転子。
  5. 前記回転子鉄心の極毎に、1つの前記永久磁石が前記回転軸線方向からみて周方向に長くなるように配置されており、
    前記回転軸線方向からみて前記永久磁石の長手方向両端に対応する位置に、前記磁束阻害部が設けられている
    請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の回転子。
  6. 前記回転子鉄心の外周面に、前記d軸インダクタンスを前記q軸インダクタンスよりも大きくするための突極を設けた
    請求項1に記載の回転子。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の回転子と、
    電機子巻線が巻回され、前記回転子に回転力を付与する固定子と、
    を備えた回転電機。
  8. 請求項7に記載の回転電機を備えた
    車両。
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