JP2019158921A - 光学素子 - Google Patents

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知裕 玉谷
Tomohiro Tamaya
知裕 玉谷
富永 淳二
Junji Tominaga
淳二 富永
中野 隆志
Takashi Nakano
隆志 中野
史郎 川畑
Shiro Kawabata
史郎 川畑
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Abstract

【課題】簡易な構成で光軸方向の集光位置が異なる高次高調波を出力することができる光学素子を提供する。【解決手段】本発明の光学素子では、レンズの表面上に2次元層状物質からなる薄膜を設けて、その薄膜上から入射させた光を高次高調波の回折光として出力する。高次高調波の回折光は、入射光の波長の整数分の一の波長を有し、波長が短くなる程焦点距離が短くなる。薄膜上から入射した平行光を複数の高次高調波の回折光として多点集光することができる。光学素子の薄膜は、グラフェン、カルコゲン化合物、遷移金属カルコゲン、シリセン、ゲルマネン、黒リン、及び窒化ボロンの中から選択された物質の原子層または分子層を含むことができ、2層以上積層された原子層または分子層を含むことができる。【選択図】図2

Description

本発明は、光学素子に関し、より具体的には、入射光を高次高調波に変換して出力することができる光学素子に関する。
光学顕微鏡の分解能Dは、D=aλ/NA(a:定数、NA:開口数、λ:光の波長)で表すことができるように、光の波長λに比例し開口数NAに反比例する。ここで開口数NAは、NA=nsinθ(n:物体側空間の媒質の屈折率、θ:開口角の1/2)で定義されることから、解像限界を上げるためには波長を短くするかNAを大きくする必用がある。波長とレンズの選択をした(制限を受けた)後で、より大きなNAを得るには屈折率nを大きくする必要がある。従来の技術では、光学顕微鏡の対物レンズと試料の間を液体で侵す液侵対物レンズを用いることでより解像度を増すことができる。この点、ステッパー等の半導体用の露光装置の投影レンズにおいても同様である。
従来技術では、この液侵対物レンズを用いることで光学顕微鏡の分解能を向上させるという手法を採用している。しかしながらこの方法には限界があり、例えば液侵オイルを用いた際、屈折率はn=1.51程度にしかできず、大きな解像度を得るには不十分である。そのため、光学顕微鏡の分解能を上げるための新たな方法が模索されている。
一方、他の従来技術として、例えば標本の光軸方向の異なる面のスライス画像を得るために、光を光軸方向の異なる複数の集光位置に集光させる多焦点技術がある。例えば、特許文献1は、照明検出ユニットと集光レンズの光軸方向の距離を変えることで集光位置を変える共焦点顕微鏡を開示する。また、特許文献2は、集光レンズと反射部材との間隔を変更する集光位置変更手段を備える走査型共焦点レーザ顕微鏡を開示する。しかし、これらの文献開示の多焦点技術は、いずれも集光レンズ等の光学部品の位置を可変制御して集光(焦点)位置を変えるもので、比較的大がかりな光学装置が必要となる。したがって、より簡易な構成で光を光軸方向の異なる複数の集光位置に集光させることができれば好ましい。
比較的大がかりな光学装置を用いることなく異なる焦点距離の回折光を得ることができる従来技術として、特許文献3は、レンズ表面を機械加工して得られた回折構造を有する視力矯正用レンズを開示する。しかし、この文献開示のレンズは、人の目の視力矯正用レンズであり、光学顕微鏡や露光装置で用いることを想定しているものではない。
高次高調波発生は、ガリウムヒ素を初めとする半導体に光を照射することで、入射光の波長のn分の1の光が放出される現象を指す。この高次高調波の発生を光学顕微鏡等に用いると、光源自体は変えずに短波長化が実現でき、光学顕微鏡の解像限界を向上させることができる。しかし、この高次高調波発生には、これまで主に3次元結晶からなる光学素子が必要であり、結晶の製造自体(サイズ、形状)の難しさに加え、光学系への配置も細かな調整が必要で難しく、既存システムに簡単に組み込むことはできない。
特開2009−198980号公報 特開2014−006308号公報 特表2008−511019号公報
本発明の目的は、簡易な構成で光軸方向の集光位置が異なる高次高調波を出力することができる光学素子を提供することである。
本発明の一態様の光学素子では、レンズの表面上に2次元層状物質からなる薄膜を設けて、その薄膜上から入射させた光を高次高調波の回折光として出力する。
本発明の一態様の光学素子では、高次高調波の回折光は、入射光の波長の整数分の一の波長を有し、波長が短くなる程焦点距離が短くなる。本発明の一態様の光学素子では、薄膜上から入射した平行光を複数の高次高調波の回折光として多点集光することができる。本発明の一態様の光学素子の薄膜は、グラフェン、カルコゲン化合物、遷移金属カルコゲン、シリセン、ゲルマネン、黒リン、及び窒化ボロンの中から選択された物質の原子層または分子層を含むことができる。本発明の一態様の光学素子の薄膜は、2層以上積層された原子層または分子層を含むことができる。
本発明の一態様の光学素子の薄膜は、分割された複数の領域を含み、各領域は偏光面の角度が異なるように原子層または分子層が設けられている。
本発明の光学素子を光学顕微鏡の対物レンズとして用いることにより光学顕微鏡の解像度を向上させることが可能となる。本発明の光学素子を露光装置の投影レンズとして用いることにより露光装置の分解能を向上させることが可能となる。本発明の光学素子を光学記憶装置のピックアップレンズとして用いることにより光学記憶装置の記憶/読取り密度を向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態の光学素子の構成を示す断面図である。 本発明の一実施形態の光学素子の光の入出力の様子を示す断面図である。 本発明の一実施形態の光学素子の光の入出力の様子を示す構成図である。 本発明の一実施形態の光学素子の光の入出力の様子を示す構成図である。 本発明の一実施形態の光学素子の光の入出力の様子を示す構成図である。
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態の光学素子の構成を示す断面図である。光学素子は、レンズ1とその表面に設けられた2次元層状物質からなる薄膜(以下、2次元薄膜、あるいは単に薄膜とも呼ぶ)2を含む。図1では、レンズ1として光入射側が球面の片側球面レンズを記載しているが、レンズの種類は球面レンズに限定されず、非球面レンズ等の他種類の透明なレンズであってもよい。また、レンズ1の材料(材質)は、フッ化カルシウムや石英等の光学ガラス材料を用いることができる。レンズ1は、その材質固有の屈折率n(透過光の波長依存あり)を有する。
2次元薄膜2は、光が入射する側のレンズ1の表面または少なくともその近傍に設けられていればよい。2次元薄膜2は、グラフェン、カルコゲン化合物、遷移金属カルコゲン、シリセン、ゲルマネン、黒リン、及び窒化ボロンの中から選択された物質の原子層または分子層を含むことができる。2次元薄膜2を構成する原子層または分子層は、選択した物質固有の形成方法でレンズ1の表面上に設けることができる。例えば、グラフェンの分子層は、1層単位でセロハンテープを用いてレンズ1の表面に張り付けて形成することができる。2次元薄膜2は、単層または2層以上の積層を含むことができる。2層以上の積層とするのは、レンズ1から出力する高次高調波の回折光は、高次(高周波、短波長)になるほど発光効率(光出力)が低下することを改善するためである。
図1において、波長λの光3がレンズ1の2次元薄膜の位置Pに入射したとする。この時、入射角θと屈折角Φは、空気の屈折率1、レンズ1の屈折率nλとして、スネルの法則により下記の式(1)で表される関係を有する。

1・sinθ=nλ・sinΦ (1)

レンズ1の下面の位置P´から出る波長λの出射光4の屈折角Φ´と出射角θ´は、

Φ´=θ−Φ (2)

と表されることから、同様に下記の式(3)で表される関係を有する。また、焦点距離(レンズ下面から焦点までの距離)zは、中心0(光軸)から位置P1までの距離xを用いて、下記の式(4)で表される。

λ・sinΦ´=1・sinθ´ (3)
z=x/tanθ´ (4)
図1では、光の入射角度等や焦点距離についての関係を明らかにするために、波長λの入射光の波長が変化せず波長λのまま出力する場合のみを示している。本発明の一実施形態の光学素子では、例えば図2に例示するように、レンズ1と2次元薄膜2の組み合わせにより、複数の高次高調波の回折光を得ることができる。図2では、波長λの平行な入射光5に対して、出力される1次〜3次までの3つの高調波の回折光6、7、8を示している。1次高調波は波長変化が無く、図1の場合と同様に波長λの光6が出力する。2次高調波は波長が二分の一(λ/2)となった回折光7が出力する。3次高調波は波長が三分の一(λ/3)となった回折光8が出力する。以下、同様に入力波長λに対して、4次、5次、....と次数分の一波長(λ/4、λ/5、...)の回折光が出力する。
その際に、図2に示すように、回折される高調波の次数が増えるにつれて、言い換えれば波長が短くなるにつれて、焦点距離zも短くなっていく。すなわち波長の異なる回折光が多点集光していく。同時に、高次(短波長)になるほど発光効率(光出力)が低下するが、上述したように2次元薄膜2を多層化することによりこの低下を改善させることができる。
下記の表1に図2の実施形態における光の波長、レンズの屈折率n、角度θ等の各パラメータの詳細(例)を示す。θ等の各角度の意味は、図1を用いて説明した通りである。表1では、波長1064nmの光が入射した場合の各パラメータの値を示している。焦点距離(レンズ下面から焦点までの距離)zの項のx、x´、x´´は、レンズ1からの回折光6、7、8の各々の出射位置までの中心0(光軸)からの距離を意味する。
Figure 2019158921
表2の例から、本発明の一実施形態の光学素子に1064nmの赤外光を入射させた場合、例えば3次高調波として355nmの紫外光を出力させることができる。このことは、通常比較的容易に入手可能な赤外線レーザ等を光源として用いて、高価でかつ比較的容易には入手が困難な短波長な紫外光を得ることができることを意味する。その際に、より高出力な赤外線レーザ等を光源として用いることにより光学素子からの回折光の発光強度(光出力)の低下を改善することができる。その結果、発明の効果の項でも述べたように、本発明の光学素子を、光学顕微鏡の対物レンズとして用いることにより光学顕微鏡の解像度を向上させることが可能となり、露光装置の投影レンズとして用いることにより露光装置の分解能を向上させることが可能となり、あるいはピックアップレンズとして用いることにより光学記憶装置の記憶/読取り密度を向上させることが可能となる。
次に、図3〜図5を参照しながら、本発明の他の実施形態の光学素子及びその応用例について説明する。図3〜図5では、いずれも光学素子として2次元薄膜を形成する領域を4分割し各領域において入射光の偏光角度が変化するように2次元薄膜を形成する例を示している。2次元薄膜の偏光角度は、その薄膜の結晶方位を領域毎に変えることにより得ることができる。例えば、2次元薄膜としてグラフェンを用いる場合は、グラフェンの結晶方位が変わるように領域毎にグラフェン層を貼り付ける方向を変えることにより得ることができる。
図3は、波長λの入射光から直線偏光の1次から3次までの3つの高調波(λ、λ/2、λ/3)を得る場合の例である。図3の構成は、直線偏光板11と、2次元薄膜13とレンズ18からなる光学素子と、直線偏光板11とを含む。2次元薄膜13は実際にはレンズ18の光の入射面側に密着している。2次元薄膜13は図に示すように4領域に分割され、各領域では矢印14で示される方向(いわばアジマス偏光方向)に結晶方位を持つように2次元薄膜が形成されている。波長λの入射光10は直線偏光板11によってy軸方向の直線偏光の光12となって光学素子(2次元薄膜13+レンズ18)に入射する。2次元薄膜13の領域毎の結晶方向14の違いにより、1次高調波は直線偏光(λ)の光12のまま、2次高調波(λ/2)は偏光角が回転して直線偏光からアジマス偏光の光15となり、3次高調波(λ/3)は偏光角が回転して直線偏光からラジアル偏光の光16となってそれぞれレンズから回折光して出力する。3つの高調波は直線偏光板19によってy軸方向の直線偏光(λ、λ/2、λ/3)に変換されて出力する。
図4は、波長λの入射光から2次高調波(λ/2)のz軸方向の直線偏光を得る場合の例である。図4の構成は、直線偏光板11と、(1/2)波長板20と、2次元薄膜22とレンズ18からなる光学素子と、直線偏光板26とを含む。(1/2)波長板20は、光学素子の下側半分を覆うサイズを有し、光学素子の下側半分の入射光に位相差πを与えて直線偏光の向きを反転させるために用いている。2次元薄膜22は実際にはレンズ18の光の入射面側に密着している。2次元薄膜22は図に示すように4領域に分割され、各領域では矢印25で示される方向(いわばラジアル偏光方向)に結晶方位を持つように2次元薄膜が形成されている。
波長λの入射光10は直線偏光板11によってy軸方向の直線偏光の光12となって光学素子(2次元薄膜22+レンズ18)に入射する。この時、直線偏光の光12の下側半分の光は(1/2)波長板20を通過する際に偏光方向が反転した直線偏光21として光学素子に入射する。2次元薄膜22の領域毎の結晶方向25の違いにより、1次高調波(λ)は光学素子の上側と下側で直線偏光12と21の向きが逆であることから干渉により相殺され、2次高調波(λ/2)は偏光角が回転して直線偏光からラジアル偏光の光23となり、3次高調波(λ/3)は偏光角が回転して直線偏光からアジマス偏光の光24となるが光学素子の上側と下側で偏光の向きが互いに逆向きであることから干渉により相殺される。その結果、2次高調波(λ/2)であるラジアル偏光の光23のみがレンズから回折光して出力する。2次高調波23は、直線偏光板26によってz軸方向の直線偏光(λ/2)に変換されて出力する。
図5は、波長λの入射光から2次高調波(λ/2)のアジマス偏光の光を得る場合の例である。図4の構成は、直線偏光板11と、(1/2)波長板27と、2次元薄膜29とレンズ18からなる光学素子と、アジマス偏光板34とを含む。(1/2)波長板27は、光学素子の左側半分を覆うサイズを有し、光学素子の左側半分の入射光に位相差πを与えて直線偏光の向きを反転させるために用いている。2次元薄膜29は実際にはレンズ18の光の入射面側に密着している。2次元薄膜29は図に示すように4領域に分割され、各領域では矢印30で示される方向(いわばアジマス偏光方向)に結晶方位を持つように2次元薄膜が形成されている。
波長λの入射光10は直線偏光板11によってy軸方向の直線偏光の光12となって光学素子(2次元薄膜29+レンズ18)に入射する。この時、直線偏光の光12の左側半分の光は(1/2)波長板27を通過する際に偏光方向が反転した直線偏光28として光学素子に入射する。2次元薄膜29の領域毎の結晶方向30の違いにより、1次高調波(λ)は光学素子の右側と左側で直線偏光12と28の向きが逆であることから干渉により相殺され、2次高調波(λ/2)は偏光角が回転して直線偏光からアジマス偏光の光31となり、3次高調波(λ/3)は偏光角が回転して直線偏光からラジアル偏光の光32となるが光学素子の右側と左側で偏光の向きが互いに逆向きであることから干渉により相殺される。その結果、2次高調波(λ/2)であるアジマス偏光の光31のみがレンズから回折光して出力する。2次高調波31は、さらにアジマス偏光板34を介してアジマス偏光の光として出力する。
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明をした。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。さらに、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できるものである。
本発明の光学素子は、光学顕微鏡の対物レンズとして、露光装置の投影レンズとして、あるいは光学記憶装置のピックアップレンズとして用いることを含め、光学装置において利用することができる。
1、18:レンズ
2、13、22、29:2次元層状物質からなる薄膜(2次元薄膜)
3、5、10:入射光
6、12、28:1次高調波(直線偏光、λ)
7、15、23、31:2次高調波(アジマス偏光、ラジアル偏光、λ/2)
8、16、24、32:3次高調波(アジマス偏光、ラジアル偏光、λ/3)
11、19、23:直線偏光板
14、25、30:2次元薄膜の結晶方位
20、27:(1/2)波長板
34:アジマス偏光板

Claims (9)

  1. レンズの表面上に2次元層状物質からなる薄膜を設けて、当該薄膜上から入射させた光を高次高調波の回折光として出力する光学素子。
  2. 前記高次高調波の回折光は、入射光の波長の整数分の一の波長を有し、波長が短くなる程焦点距離が短くなる、請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記薄膜上から入射した平行光を複数の前記高次高調波の回折光として多点集光することができる、請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記薄膜は、グラフェン、カルコゲン化合物、遷移金属カルコゲン、シリセン、ゲルマネン、黒リン、及び窒化ボロンの中から選択された物質の原子層または分子層を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子。
  5. 2層以上積層された前記原子層または分子層を含む、請求項4に記載の光学素子。
  6. 前記薄膜は、分割された複数の領域を含み、各領域は偏光面の角度が異なるように前記原子層または分子層が設けられている、請求項4に記載の光学素子。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子を対物レンズとして用いる光学顕微鏡。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子を投影レンズとして用いる露光装置。
  9. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子をピックアップレンズとして用いる光学記憶装置。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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