以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態による防護柵システム1は、複数の可動防護柵2(図1参照)と、複数の固定装置3(図1参照)と、複数の接続装置4(図2参照)と、を備える。この防護柵システム1は、例えば、高速道路やその他の道路の中央分離帯上に設置され、その中央分離帯の両側の道路間を仕切って一方の道路から反対車線の道路への車両の進入を防止する。また、この防護柵システム1は、緊急時には、当該防護柵システム1を構成するいずれかの可動防護柵2を移動させることにより、車両が一方の道路から反対車線の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを確保できるように構成されている。以下、本実施形態の防護柵システム1の構成について詳しく説明する。
前記複数の可動防護柵2は、それぞれ特定の長手方向に延び、その長手方向について道路に沿うようにそれぞれ配置されるとともに道路に沿って並んで配置される。防護柵システム1が中央分離帯に設置される場合には、複数の可動防護柵2は、中央分離帯の両側の道路に沿って並んで配置され、一方の道路とその反対車線の道路との間を仕切る。各可動防護柵2は、地面G上を移動可能である。各可動防護柵2は、複数の基部6と、2つの第1ガードレール10と、2つの第2ガードレール12(図3及び図5参照)と、内側配置部材13(図3参照)とを備える。
複数の基部6は、可動防護柵2のベースとなる部分であり、それぞれ、地面G上を移動可能に構成されている。本実施形態では、各可動防護柵2は、2つの基部6を有する。各基部6は、図5に示すように、ベースプレート20と、複数の転動体22とを有する。
ベースプレート20は、略水平に配置された平板である。このベースプレート20は、当該ベースプレート20を上下方向(当該ベースプレート20の板厚方向)に貫通する貫通孔を有する。
複数の転動体22は、地面Gに沿って当該地面G上を転動可能に構成されており、基部6が地面G上を移動できるようにするためのものである。この複数の転動体22は、それぞれベースプレート20に取り付けられている。当該転動体22は、いわゆるキャスタである。本実施形態では、各基部6は、4つの転動体22を有する。4つの転動体22は、ベースプレート20の貫通孔の両側に分かれて2つずつ配置されている。この4つの転動体22は、ベースプレート20から下向きに突出しており、地面Gに接触してベースプレート20を下から支える。この4つの転動体22のそれぞれは、地面Gに接してその地面G上を転動する車輪等の転動部材22aと、ベースプレート20に取り付けられていて前記転動部材22aが任意の方向に回転可能となるように当該転動部材22aを保持する保持部22bとを有する。
前記保持部22bは、ベースプレート20に固定された部分と、前記転動部材22aを保持する部分とを有する。この転動部材22aを保持する部分は、ベースプレート20に固定された部分に対して垂直軸回りに旋回可能に結合されている。この転動部材22aを保持する部分が垂直軸回りに旋回することにより、前記転動部材22aが向きを変えて地面G上を任意の方向へ転動することが可能となっている。そして、このような転動体22の機能により、可動防護柵2は、地面G上において垂直軸回りに回転することが可能であるとともに、地面Gに沿って当該地面G上を任意の方向へ自在に移動することが可能となっている。
第1ガードレール10と第2ガードレール12は、図2及び図3に示すように、可動防護柵2の長手方向に延びるように配置され、かつ、可動防護柵2の長手方向と直交する当該可動防護柵2の幅方向について互いに間隔をおいて配置されている。この第1ガードレール10と第2ガードレール12との間に後述のように内側配置部材13が配置されている。
2つの第1ガードレール10は、それぞれ、縦方向の断面が波形をなす薄板からなり、可動防護柵2の長手方向に沿って延びている。この2つの第1ガードレール10は、図5に示すように上下に並んで配置されている。各第1ガードレール10は、防護柵システム1を挟んでその両側に位置する道路のうちの一方の道路に面している。以下、この第1ガードレール10が面する一方の道路を第1道路と称する。各第1ガードレール10は、可動防護柵2の第1道路側の外面を構成している。
可動防護柵2の長手方向における各第1ガードレール10の両端部は、図3に示すように、内側配置部材13よりも前記長手方向の前側に突出する第1前側突出部24と、内側配置部材13よりも前記長手方向の後側に突出する第1後側突出部25とをそれぞれ構成する。なお、前記前側は可動防護柵2の長手方向における一方側に相当し、前記後側は可動防護柵2の長手方向における前記一方側と反対側に相当する。以下の説明においても、このことは同様である。
第1前側突出部24は、内側配置部材13のうちで最も前側に位置する部材、具体的には後述の前外側梁型連結部材42、前上側ガードレール側部材46及び前下側ガードレール側部材48よりもさらに前側に突出する部分であり、それらの部材から前側へ所定の突出寸法Lf1で突出している。また、第1後側突出部25は、内側配置部材13のうちで最も後側に位置する部材、具体的には後述の後外側梁型連結部材44、後上側ガードレール側部材49及び後下側ガードレール側部材50よりもさらに後側に突出する部分であり、それらの部材から後側へ所定の突出寸法Lr1で突出している。
2つの第2ガードレール12は、前記2つの第1ガードレール10と同様のものであり、可動防護柵2の長手方向に沿って延びている。この2つの第2ガードレール12は、上下に並んで配置されている。各第2ガードレール12は、防護柵システム1を挟んで前記第1道路と反対側に位置する道路、すなわち第1ガードレール10が面する第1道路の反対車線の道路に面している。以下、この第2ガードレール12が面する道路を第2道路と称する。各第2ガードレール12は、可動防護柵2の第2道路側の外面を構成している。
可動防護柵2の長手方向における各第2ガードレール12の両端部は、内側配置部材13よりも前記長手方向の前側に突出する第2前側突出部26と、内側配置部材13よりも前記長手方向の後側に突出する第2後側突出部27とをそれぞれ構成する。
第2前側突出部26は、内側配置部材13のうちで最も前側に位置する部材、具体的には後述の前外側梁型連結部材42、前上側ガードレール側部材46及び前下側ガードレール側部材48よりもさらに前側に突出する部分であり、それらの部材から前側へ所定の突出寸法Lf2で突出している。また、第2後側突出部27は、内側配置部材13のうちで最も後側に位置する部材、具体的には後述の後外側梁型連結部材44、後上側ガードレール側部材49及び後下側ガードレール側部材50よりもさらに後側に突出する部分であり、それらの部材から後側へ所定の突出寸法Lr2で突出している。
前記第1前側突出部24の突出寸法Lf1、前記第1後側突出部25の突出寸法Lr1、前記第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び前記第2後側突出部27の突出寸法Lr2は、以下の条件(1)及び(2)の両方を満たすように設定されている。
(1)第1前側突出部24の突出寸法Lf1、第1後側突出部25の突出寸法Lr1、第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び第2後側突出部27の突出寸法Lr2は、任意の可動防護柵2の第1前側突出部24及び第2前側突出部26がそれぞれ当該任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25及び第2後側突出部27と前記長手方向にオーバーラップしかつその第1後側突出部25及び第2前側突出部26の前記幅方向の外側にそれぞれ第1前側突出部24と第2後側突出部27が位置するように配置されることを可能にする寸法である。
(2)第1前側突出部24の突出寸法Lf1、第1後側突出部25の突出寸法Lr1、第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び第2後側突出部27の突出寸法Lr2は、当該任意の可動防護柵2の第1前側突出部24がその前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25から前記幅方向の外側に離れる向きに当該任意の可動防護柵2が垂直軸回りに回転することにより当該任意の可動防護柵2がその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱することを可能にする寸法である。
前記第1前側突出部24の突出寸法Lf1、前記第1後側突出部25の突出寸法Lr1、前記第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び前記第2後側突出部27の突出寸法Lr2が前記条件(1)を満たすように設定されていることにより、図4に示すように、互いに隣り合う可動防護柵2のうちの前寄りに位置する一方の可動防護柵2の第1後側突出部25の前記幅方向の外側(第1道路側)にその後側に隣接する他方の可動防護柵2の第1前側突出部24が重なるとともに、その他方の可動防護柵2の第2前側突出部26の前記幅方向の外側(第2道路側)に前記一方の可動防護柵2の第2後側突出部27が重なっている。
また、前記条件(2)は、換言すれば、第1前側突出部24の突出寸法Lf1、第1後側突出部25の突出寸法Lr1、第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び第2後側突出部27の突出寸法Lr2は、任意の可動防護柵2が前記の向きに垂直軸回りに回転することにより、当該任意の可動防護柵2の第2前側突出部26がその可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25との干渉を回避しつつその第1後側突出部25よりも第1道路側へ離脱すること、及び、当該任意の可動防護柵2の第1後側突出部25がその可動防護柵2の後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26との干渉を回避しつつその第2前側突出部26よりも第2道路側へ離脱することの少なくとも一方を可能にする寸法に設定されているということである。
なお、前記条件(2)における任意の可動防護柵2の垂直軸回りの回転形態は、垂直軸の位置を一定の位置に維持したままでその垂直軸回りに当該任意の可動防護柵2を回転させる回転形態のみならず、垂直軸の位置を前側又は後側へ移動させながら、また、垂直軸の位置を可動防護柵2の幅方向に移動させながらその垂直軸回りに当該任意の可動防護柵2を回転させるような回転形態や、当該任意の可動防護柵2全体を前側又は後側に移動させながら、また、当該任意の可動防護柵2全体をその幅方向に移動させながら垂直軸回りに回転させるような回転形態も含む。
また、前記条件(2)における任意の可動防護柵2が垂直軸回りに回転することにより当該任意の可動防護柵2がその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱することを可能にするという概念は、当該任意の可動防護柵2の垂直軸回りの回転を少なくとも一部に含む当該任意の可動防護柵2の動きにより当該任意の可動防護柵2がその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱することを可能にするということを意味する。このため、前記概念には、任意の可動防護柵2を前側又は後側へ移動させた後、垂直軸回りに回転させることで前後両側に位置する可動防護柵2から離脱させることが可能な形態や、任意の可動防護柵2を垂直軸回りに僅かに回転させた後、当該任意の可動防護柵2を前側又は後側へ僅かに移動させ、その後、さらに当該任意の可動防護柵2を垂直軸回りに回転させることで前後両側に位置する可動防護柵2から離脱させることが可能な形態や、当該任意の可動防護柵2の前側又は後側への移動と垂直軸回りの回転とを交互に繰り返し行うことにより当該任意の可動防護柵2をその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱させることが可能な形態なども含まれる。
また、本実施形態では、第1前側突出部24の突出寸法Lf1は第2前側突出部26の突出寸法Lf2よりも大きく、かつ、第2後側突出部27の突出寸法Lr2は第1後側突出部25の突出寸法Lr1よりも大きい。さらに、第1前側突出部24の突出寸法Lf1と第2後側突出部27の突出寸法Lr2は同等であり、かつ、第2前側突出部26の突出寸法Lf2と第1後側突出部25の突出寸法Lr1は同等である。このため、第2前側突出部26の突出寸法Lf2は第2後側突出部27の突出寸法Lr2よりも小さく、かつ、第1後側突出部25の突出寸法Lr1は第1前側突出部24の突出寸法Lf1よりも小さい。そして、この第2前側突出部26の突出寸法Lf2と第2後側突出部27の突出寸法Lr2との差は、第1後側突出部25の突出寸法Lr1と第1前側突出部24の突出寸法Lf1との差と同等であり、後述の固定装置3による固定が解除された任意の可動防護柵2は前記の突出寸法の差の範囲内において前後両側に隣接する可動防護柵2の間で前側又は後側へ移動させることが可能である。
内側配置部材13は、上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12との間に配置されており、2つの支柱32と、4つの前内側梁型連結部材34と、4つの後内側梁型連結部材36と、2つの前外側梁型連結部材42と、2つの後外側梁型連結部材44と、4つの前上側ガードレール側部材46と、4つの前下側ガードレール側部材48と、4つの後上側ガードレール側部材49と、4つの後下側ガードレール側部材50と、を含む。
2つの支柱32は、図1に示すように、可動防護柵2の長手方向に並ぶ複数の位置で複数の基部6のそれぞれから立直するようにそれらの基部6に固定されている。2つの支柱32のうち前寄りに配置された一方の支柱32(以下、前側の支柱32と称する)は、4つの前内側梁型連結部材34を介して上下2つの第1ガードレール10及び上下2つの第2ガードレール12を支持している(図5及び図6参照)。また、2つの支柱32のうち後寄りに配置された他方の支柱32(以下、後側の支柱32と称する)は、4つの後内側梁型連結部材36を介して上下2つの第1ガードレール10及び上下2つの第2ガードレール12を支持している。各支柱32は、円筒状であり、各基部6のベースプレート20(図5参照)の貫通孔に挿入されてベースプレート20を貫通するとともにそのベースプレート20から上方へ延びる姿勢で当該ベースプレート20に固定されている。
4つの前内側梁型連結部材34は、上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するとともにそれらのガードレール10,12を前側の支柱32に連結するものである。4つの前内側梁型連結部材34のうちの2つの前内側梁型連結部材34は、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在し、前側の支柱32の上半部を可動防護柵2の長手方向における両側から挟み込むように配置されている。また、残り2つの前内側梁型連結部材34は、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在し、前側の支柱32の下半部を可動防護柵2の長手方向における両側から挟み込むように配置されている。以下、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在する前内側梁型連結部材34を上側の前内側梁型連結部材34と称し、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在する前内側梁型連結部材34を下側の前内側梁型連結部材34と称する。
上側の前内側梁型連結部材34は、可動防護柵2の幅方向に延び、その長手方向の一端部は上側の第1ガードレール10に締結されて固定され、他端部は上側の第2ガードレール12に締結されて固定され、その一端部と他端部との間に位置する当該上側の前内側梁型連結部材34の中間部分は支柱32の上半部の外周面に溶接されて固定されている。このように上側の前内側梁型連結部材34の各部分が上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12と支柱32に固定されることによって、それらのガードレール10,12と支柱32が当該上側の前内側梁型連結部材34を介して連結されている。
下側の前内側梁型連結部材34は、上側の前内側梁型連結部材34の下方に配置されてその上側の前内側梁型連結部材34と平行に延びている。この下側の前内側梁型連結部材34の長手方向の一端部は下側の第1ガードレール10に締結されて固定され、他端部は下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側の前内側梁型連結部材34の長手方向の中間部分の下部は、基部6のベースプレート20に締結されて固定されている。すなわち、この下側の前内側梁型連結部材34は、基部6を介して支柱32に固定されている。なお、この下側の前内側梁型連結部材34は、溶接によってベースプレート20に固定されてもよい。下側の前内側梁型連結部材34の各部分が前記のように下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12と支柱32に固定されることによって、それらのガードレール10,12と支柱32が当該下側の前内側梁型連結部材34を介して連結されている。
4つの後内側梁型連結部材36は、上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するとともにそれらのガードレール10,12を後側の支柱32に連結するものである。この4つの後内側梁型連結部材36は、前側の支柱32に対する前記4つの前内側梁型連結部材34の配置と同様の配置で後側の支柱32に対して配置されているとともに、前側の支柱32、上下2つの第1ガードレール10及び上下2つの第2ガードレール12に対する前記4つの前内側梁型連結部材34の固定方法と同様の方法で後側の支柱32、上下2つの第1ガードレール10及び上下2つの第2ガードレール12に対して固定されている。
2つの前外側梁型連結部材42(図3及び図6参照)は、可動防護柵2の長手方向において前記4つの前内側梁型連結部材34の外側の位置、すなわちその4つの前内側梁型連結部材34よりも前側の位置で上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するものである。2つの前外側梁型連結部材42のうちの一方の前外側梁型連結部材42は、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在し、他方の前外側梁型連結部材42は、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在している。以下、上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12との間に介在する前外側梁型連結部材42を上側の前外側梁型連結部材42と称し、下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12との間に介在する前外側梁型連結部材42を下側の前内側梁型連結部材42と称する。
上側の前外側梁型連結部材42は、可動防護柵2の幅方向に延び、その長手方向の一端部が上側の第1ガードレール10に締結されて固定され、他端部が上側の第2ガードレール12に締結されて固定されている(図7参照)。このように上側の前外側梁型連結部材42の一端部と他端部が上側の第1ガードレール10と上側の第2ガードレール12に固定されることによって、それらの上側の第1及び第2ガードレール10,12が当該上側の前外側梁型連結部材42を介して連結されている。
上側の前外側梁型連結部材42は、その上面を構成する上板部54とその下面を構成する下板部56とを有する。また、この上側の前外側梁型連結部材42は、上板部54に設けられた2つの挿入孔61及び下板部56に設けられた2つの挿入孔62を有する(図7参照)。上板部54の2つの挿入孔61は、当該上板部54の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられ、下板部56の2つの挿入孔62は、当該下板部56の第1道路側の端部近傍と第2道路側の端部近傍とにそれぞれ設けられている。これらの挿入孔61,62は、それぞれ、上下方向に延びかつ上下両向きに開放された貫通孔である。上板部54の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と下板部56の第1道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は、上下方向から見て互いに重なるように配置されている。また、上板部54の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔61と下板部56の第2道路側の端部近傍に設けられた挿入孔62は、上下方向から見て互いに重なるように配置されている。
下側の前外側梁型連結部材42は、前記上側の前外側梁型連結部材42の下方でその上側の前外側梁型連結部材42と平行に延びている。この下型の前外側梁型連結部材42は、前記上側の前外側梁型連結部材42と同様にして下側の第1ガードレール10と下側の第2ガードレール12に固定され、それによって、それらの下側の第1及び第2ガードレール10,12が当該下側の前外側梁型連結部材42を介して連結されている。また、下側の前外側梁型連結部材42は、上側の前外側梁型連結部材42と同様に構成され、前記上板部54及び前記下板部56と同様の上板部54及び下板部56を有するとともに、前記上板部54に設けられた前記2つの挿入孔61と同様の2つの挿入孔61と、前記下板部56に設けられた前記2つの挿入孔62と同様の2つの挿入孔62とを有する。
2つの後外側梁型連結部材44(図6参照)は、可動防護柵2の長手方向において前記4つの後内側梁型連結部材36の外側の位置、すなわちその4つの後内側梁型連結部材36よりも後側の位置で上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12とを可動防護柵2の幅方向に連結するものである。2つの後外側梁型連結部材44は、前記2つの前外側梁型連結部材42と同様の構成を有するものであり、前記2つの前外側梁型連結部材42を前後反転させた姿勢に相当する姿勢で前記4つの後内側梁型連結部材36よりも後側の位置において上下2つの第1ガードレール10と上下2つの第2ガードレール12に固定されている。この第1及び第2ガードレール10,12に対する後外側梁型連結部材44の固定方法は、前記前外側梁型連結部材42の固定方法と同様である。
後外側梁型連結部材44は、前記前外側梁型連結部材42の前記上板部54及び前記下板部56と同様の上板部及び下板部を有するとともに、前記上板部54に設けられた前記2つの挿入孔61と同様の2つの挿入孔と、前記下板部56に設けられた前記2つの挿入孔62と同様の2つの挿入孔とを有する。
4つの前上側ガードレール側部材46(図7参照)は、それぞれ、上側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方と、下側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方とに配置されている。上側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部の上方に配置された前上側ガードレール側部材46は、上側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、上側の前外側梁型連結部材42の第2道路側の端部の上方に配置された前上側ガードレール側部材46は、上側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部の上方に配置された前上側ガードレール側部材46は、下側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、下側の前外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の上方に配置された前上側ガードレール側部材46は、下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。
4つの前上側ガードレール側部材46のそれぞれは、その下方に位置する前外側梁型連結部材42の上板部54に沿って延びる平板状の部分を有し、上下方向から見てこの平板状の部分の前記挿入孔61と重なる位置に設けられた挿入孔46cを有する。この挿入孔46cは、上下方向に延びかつ上下両向きに開放された貫通孔である。
4つの前下側ガードレール側部材48(図7参照)は、それぞれ、上側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方と、下側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方とに配置されている。上側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部の下方に配置された前下側ガードレール側部材48は、上側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、上側の前外側梁型連結部材42の第2道路側の端部の下方に配置された前下側ガードレール側部材48は、上側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側の前外側梁型連結部材42の第1道路側の端部の下方に配置された前下側ガードレール側部材48は、下側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、下側の前外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の下方に配置された前下側ガードレール側部材48は、下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。
4つの前下側ガードレール側部材48のそれぞれは、前記前上側ガードレール側部材46と同様の構成を有する。この4つの前下側ガードレール側部材48は、前記4つの前上側ガードレール側部材46と上下対称となる姿勢で配置されている。また、この4つの前下側ガードレール側部材48のそれぞれは、その上方に位置する前外側梁型連結部材42の下板部56に沿って延びる平板状の部分を有し、上下方向から見てこの平板状の部分の前記挿入孔62と重なる位置に設けられた挿入孔48cを有する。この挿入孔48cは、前記前上側ガードレール側部材46の挿入孔46cと同様の貫通孔である。
4つの後上側ガードレール側部材49は、それぞれ、上側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方と、下側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の上方とに配置されている。上側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部の上方に配置された後上側ガードレール側部材49は、上側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、上側の後外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の上方に配置された後上側ガードレール側部材49は、上側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部の上方に配置された後上側ガードレール側部材49は、下側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、下側の後外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の上方に配置された後上側ガードレール側部材49は、下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。
4つの後上側ガードレール側部材49は、前記4つの前上側ガードレール側部材46と同様に構成されている。この4つの後上側ガードレール側部材49のそれぞれは、その下方に位置する後外側梁型連結部材44の上板部に沿って延びる平板状の部分を有し、上下方向から見てこの平板状の部分のうち後外側梁型連結部材44の挿入孔と重なる位置に設けられた挿入孔を有する。この挿入孔は、前上側ガードレール側部材46の挿入孔46cと同様の貫通孔である。
4つの後下側ガードレール側部材50は、それぞれ、上側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方と、下側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部と第2道路側の端部の各々の下方とに配置されている。上側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部の下方に配置された後下側ガードレール側部材50は、上側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、上側の後外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の下方に配置された後下側ガードレール側部材50は、上側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。また、下側の後外側梁型連結部材44の第1道路側の端部の下方に配置された後下側ガードレール側部材50は、下側の第1ガードレール10に締結されて固定されている。また、下側の後外側梁型連結部材44の第2道路側の端部の下方に配置された後下側ガードレール側部材50は、下側の第2ガードレール12に締結されて固定されている。
4つの後下側ガードレール側部材50のそれぞれは、前記後上側ガードレール側部材49と同様の構成を有する。この4つの後下側ガードレール側部材50は、前記4つの後上側ガードレール側部材49と上下対称となる姿勢で配置されている。また、この4つの後下側ガードレール側部材50のそれぞれは、その上方に位置する後外側梁型連結部材44の下板部に沿って延びる平板状の部分を有し、上下方向から見てこの平板状の部分のうち後外側梁型連結部材44の挿入孔と重なる位置に設けられた挿入孔を有する。この挿入孔は、前上側ガードレール側部材46の挿入孔46cと同様の貫通孔である。
複数の固定装置3(図1参照)は、各可動防護柵2が設置位置に配置されたときにその設置位置で当該可動防護柵2を固定するためのものである。この複数の固定装置3は、複数の可動防護柵2のそれぞれに対応して設けられている。そして、この複数の固定装置3は、それぞれ、対応する可動防護柵2をその設置位置で地面Gに固定する固定状態と当該固定を解除してその可動防護柵2の地面G上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能に構成されている。具体的には、複数の固定装置3は、それぞれ、前記固定状態では対応する可動防護柵2の対応する基部6をその設置位置で地面Gに固定し、前記固定解除状態では対応する基部6の固定を解除してその基部6の地面G上での移動を許容する。
複数の固定装置3は、防護柵システム1の設置場所において間隔をあけて並ぶように設置されている。この複数の固定装置3の隣り合うもの同士の間の間隔は、複数の可動防護柵2が並んで設置された状態でそれらの可動防護柵2の支柱32間の間隔に対応するように設定されている。各固定装置3は、図5に示すように、固定管52と、挿入管54とを有する。
固定管52は、対応する基部6の設置位置において、その基部6に固定された支柱32が配置される位置の真下の位置で地面Gに埋め込まれて固定されながら当該固定管52の内側に挿入管54を挿入可能な空間を確保している。この固定管52は、中空円筒状であり、上下方向に延びる姿勢で設置され、当該固定管52の上端の位置が地面Gの位置と略一致するように配置されている。当該固定管52の上端は、開口している。
挿入管54は、図5に示すように、固定装置3の前記固定状態において支柱32内の空間と固定管52内の空間とに跨るようにそれらの空間に挿入されて支柱32と固定管52とを相互に連結し、それによって支柱32及び当該支柱32に固定された基部6を地面Gに固定するものである。この挿入管54は、固定装置3の前記固定解除状態では、固定管52内の空間及び支柱32内の空間から上方へ引き抜かれて基部6の地面Gに対する固定を解除し、その基部6の地面G上での移動を許容する。
挿入管54は、支柱32内の空間及び固定管52内の空間に挿入される円筒状の挿入管本体54aと、その挿入管本体54aの上端からその径方向外側へ突出するようにその上端に取り付けられた鍔部54bと、挿入管本体54aの上端に取り付けられた把手54cとを有する。前記鍔部54bは、支柱32の外径よりも大きい外径を有しており、前記固定状態において支柱32の上端に当接し、それによって挿入管54を当該挿入管54が支柱32と固定管52とを相互に連結する高さ位置(図5参照)で保持する。また、前記把手54cは、支柱32内の空間及び固定管52内の空間に挿入管54を挿脱する作業の際に作業者によって把持される部分である。
複数の接続装置4(図2及び図4参照)は、それぞれ、並んで設置された多数の可動防護柵2の互いに隣り合うもの同士を接続するものである。接続装置4は、互いに隣り合う可動防護柵2同士の接続箇所にそれぞれ配置されてそれらの可動防護柵2を相互に接続する複数の接続具60を含む。
この接続具60は、互いに隣り合う可動防護柵2の内側配置部材13同士を接続する。より具体的には、各接続具60は、互いに隣り合う可動防護柵2のうち後寄りに位置する一方の可動防護柵2の上下2つの前外側梁型連結部材42、前上側ガードレール側部材46及び前下側ガードレール側部材48と、前寄りに位置する他方の可動防護柵2の上下2つの後外側梁型連結部材44、後上側ガードレール側部材49及び後下側ガードレール側部材50とを相互に接続する(図6参照)。
接続具60は、並んで配置された多数の可動防護柵2のうち互いに隣り合う可動防護柵2同士の接続箇所にそれぞれ2つずつ配置される。その各接続箇所に配置された2つの接続具60のうちの一方の接続具60は、可動防護柵2の幅方向において第1ガードレール10の内側でその第1ガードレール10に近接した位置に配置され、他方の接続具60は、可動防護柵2の幅方向において第2ガードレール12の内側でその第2ガードレール12に近接した位置に配置される。
各接続具60は、第1挿入部64と、第2挿入部66と、相互連結部68と、を有する。第1挿入部64と第2挿入部66は、それぞれ、直線的に延びる棒状のピンであり、互いに間隔をあけて互いに平行に配置されている。第2挿入部66の長さは、第1挿入部64の長さよりも小さい。相互連結部68は、細長い板材からなり、第1及び第2挿入部64,66に対して垂直に配置されてそれらの第1挿入部64と第2挿入部66を相互に連結している。
第1ガードレール10に近接した位置に配置される接続具60の第1挿入部64は、互いに隣り合う可動防護柵2のうち後寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの前外側梁型連結部材42、第1道路側の2つの前上側ガードレール側部材46及び第1道路側の2つの前下側ガードレール側部材48に装着される。具体的には、この接続具60の第1挿入部64は、後寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの前外側梁型連結部材42の第1道路側の挿入孔61,62、第1道路側の2つの前上側ガードレール側部材46の挿入孔46c及び第1道路側の2つの前下側ガードレール側部材48の挿入孔48cに上方から挿入される。
また、第1ガードレール10に近接した位置に配置される接続具60の第2挿入部66は、互いに隣り合う可動防護柵2のうち前寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの後外側梁型連結部材44、第1道路側の2つの後上側ガードレール側部材49及び第1道路側の上側の後下側ガードレール側部材50に装着される。具体的には、この接続具60の第2挿入部66は、前寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの後外側梁型連結部材44の第1道路側の挿入孔、第1道路側の2つの後上側ガードレール側部材49の挿入孔及び第1道路側の2つの後下側ガードレール側部材50の挿入孔に上方から挿入される。
また、第2ガードレール12に近接した位置に配置される接続具60の第1挿入部64は、互いに隣り合う可動防護柵2のうち前寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの後外側梁型連結部材44、第2道路側の2つの後上側ガードレール側部材49及び第2道路側の2つの後下側ガードレール側部材50に装着される。具体的には、この接続具60の第1挿入部64は、前寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの後外側梁型連結部材44の第2道路側の挿入孔、第2道路側の2つの後上側ガードレール側部材49の挿入孔及び第2道路側の2つの後下側ガードレール側部材50の挿入孔に上方から挿入される。
また、第2ガードレール12に近接した位置に配置される接続具60の第2挿入部66は、互いに隣り合う可動防護柵2のうち後寄りに位置する可動防護柵2の上下2つの前外側梁型連結部材42、第2道路側の2つの前上側ガードレール側部材46及び第2道路側の2つの前下側ガードレール側部材48に装着される。具体的には、この接続具60の第2挿入部66は、後寄りに位置する可動防護柵2の上側の前外側梁型連結部材42の第2道路側の挿入孔61,62、下側の前外側梁型連結部材42の第2道路側の挿入孔61、第2道路側の2つの前上側ガードレール側部材46の挿入孔46c及び第2道路側の上側の前下側ガードレール側部材48の挿入孔48cに上方から挿入される。
次に、本実施形態による防護柵システム1の取扱方法、具体的には防護柵システム1をその設置場所である中央分離帯上に設置するときの当該防護柵システム1の取扱方法及びその設置した防護柵システム1から特定の可動防護柵1を離脱させるときの当該防護柵システム1の取扱方法について説明する。
(A)防護柵システム1の設置について
本実施形態による防護柵システム1を中央分離帯上に設置するときには、当該防護柵システム1を構成する全ての可動防護柵2のそれぞれがその長手方向について中央分離帯の両側の第1及び第2道路に沿うとともにそれらの可動防護柵2が第1及び第2道路に沿って並ぶようにこれらの可動防護柵2を中央分離帯上に配置する。このとき、各可動防護柵2の第1ガードレール10が第1道路に面するとともに第2ガードレール12が第2道路に面し、かつ、各可動防護柵2の第1前側突出部24が第1道路の車両進行方向の前側を向くとともに各可動防護柵2の第2後側突出部27が第2道路の車両進行方向の前側を向くように各可動防護柵2を第1及び第2道路に沿って配置する。
また、任意の可動防護柵2の第1前側突出部24及び第2前側突出部26がそれぞれ当該任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25及び第2後側突出部27とそれらの可動防護柵2の長手方向にオーバーラップし、かつ、前記第1後側突出部25及び前記第2前側突出部26に対して可動防護柵2の幅方向の外側にそれぞれ前記第1前側突出部24及び第2後側突出部27が位置するように、防護柵システム1を構成する全ての可動防護柵2を第1及び第2道路に沿って配置する。
そして、それぞれの可動防護柵2の各支柱32に対応する固定装置3を固定状態にする。具体的には、それぞれの可動防護柵2の各支柱32内の空間に上方から対応する挿入管54をそれぞれ挿入するとともに、それらの挿入管54を対応する固定管52内の空間に挿入する。これにより、各挿入管54を支柱32内の空間と地面Gに埋め込まれた固定管52内の空間とに跨るように配置し、それによって各可動防護柵2をその設置位置に固定する。
その後、並んで配置された多数の可動防護柵2の互いに隣り合うもの同士を複数の接続具60によってそれぞれ接続する。具体的には、互いに隣り合う可動防護柵2の接続箇所において、2つの接続具60のそれぞれの第1挿入部64と第2挿入部66を前記のように一方の可動防護柵2の各挿入孔と他方の可動防護柵2の各挿入孔にそれぞれ挿入することにより、その互いに隣り合う可動防護柵2同士を当該2つの接続具60によって接続する。
以上のように本実施形態による防護柵システム1では、当該防護柵システム1に含まれる複数の可動防護柵2のそれぞれに対応する各固定装置3を固定解除状態にした状態でそれらの可動防護柵2を所定の設置場所まで移動させ、その設置場所で各固定装置3を固定状態に切り換えることにより、当該複数の可動防護柵2を当該設置場所に固定することができる。
具体的には、任意の可動防護柵2の第1前側突出部24及び第2前側突出部26がそれぞれ当該任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25及び第2後側突出部27と可動防護柵2の長手方向にオーバーラップするように前記複数の可動防護柵2を配置することにより、それぞれの可動防護柵2の第1ガードレール10を隙間なく連続させることができるとともに第2ガードレール12を隙間なく連続させることができる。
しかも、第1ガードレール10が第1道路に面するとともに第2ガードレール12が第2道路に面し、かつ、第1前側突出部24が第1道路の車両進行方向の前側を向くとともに第2後側突出部27が第2道路の車両進行方向の前側を向くように各可動防護柵2を設置するとともに、各可動防護柵2の第1後側突出部25に対してその可動防護柵2の幅方向の外側に当該可動防護柵2の後側に隣接する可動防護柵2の第1前側突出部24を配置し、かつ、各可動防護柵2の第2前側突出部26に対してその可動防護柵2の幅方向の外側に当該可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第2後側突出部27を配置することにより、第1道路上を走行する車両がその走行方向と逆向きに突出する第1後側突出部25に突き当たるのを防ぐことができるとともに、第2道路上を走行する車両がその走行方向と逆向きに突出する第2前側突出部26に突き当たるのを防ぐことができる。
(B)防護柵システム1からの特定の可動防護柵2の離脱について
本実施形態による防護柵システム1は、前記のように中央分離帯上に設置され、その中央分離帯の両側の第1道路上の空間と第2道路上の空間との間を仕切るが、緊急事態が発生したとき等には、緊急車両やその他の車両が第1及び第2道路のうちの一方の道路から反対車線である他方の道路へUターンもしくは進入するためのスペースを確保する必要があるため、前記多数の可動防護柵2の中から選ばれる特定の可動防護柵2をその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱させる。
この際には、まず、当該特定の可動防護柵2とその前後両側に位置する可動防護柵2との接続を解除する。具体的には、当該特定の可動防護柵2とその前側に隣接する可動防護柵2とを接続している2つの接続具60をそれらの可動防護柵2から取り外すとともに、当該特定の可動防護柵2とその後側に隣接する可動防護柵2とを接続している2つの接続具60をそれらの可動防護柵2から取り外す。
次に、その特定の可動防護柵2に対応する固定装置3を固定解除状態にする。具体的には、当該特定の可動防護柵2をその設置位置で固定するために当該特定の可動防護柵2の2つの支柱32内の空間とそれに対応する2つの固定管52内の空間とに跨って配置されている2つの挿入管54を支柱32及び固定管52内の空間から上方へ引き抜く。これにより当該特定の可動防護柵2の固定が解除される。
そして、当該特定の可動防護柵2を地面G上で第1前側突出部24が当該特定の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25からその可動防護柵2の幅方向の外側に離れる向きに垂直軸回りに回転させることにより、当該特定の可動防護柵2をその前後両側に位置する可動防護柵2から離脱させる。このとき、当該特定の可動防護柵2の第2前側突出部26が当該特定の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25と第2後側突出部27との間の領域から第1後側突出部25よりも第1道路側の位置へ離脱するように当該特定の可動防護柵2を回転させた後、その可動防護柵2を第1道路側へ斜めに移動させるか、もしくは、当該特定の可動防護柵2の第1後側突出部25が当該特定の可動防護柵2の後側に隣接する可動防護柵2の第1前側突出部24と第2前側突出部26との間の領域から第2前側突出部26よりも第2道路側の位置へ離脱するように当該特定の可動防護柵2を回転させた後、その可動防護柵2を第2道路側へ斜めに移動させる。
また、当該特定の可動防護柵2を回転させるときに、当該特定の可動防護柵2の第2前側突出部26が当該特定の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25に干渉しそうであるか、もしくは、当該特定の可動防護柵2の第1後側突出部25が当該特定の可動防護柵2の後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26に干渉しそうな場合には、当該特定の可動防護柵2を前後いずれかに僅かに移動させて当該特定の可動防護柵2の第2前側突出部26と前記前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25との間もしくは当該特定の可動防護柵2の第1後側突出部25と前記後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26との間に干渉を回避するためのスペースを確保し、その後、さらに当該特定の可動防護柵2を回転させて干渉を回避しつつ当該特定の可動防護柵2を離脱させればよい。
図8〜図11には、特定の可動防護柵2を第2道路側へ離脱させるために当該特定の可動防護柵2を回転させるときに当該特定の可動防護柵2の第1後側突出部25が当該特定の可動防護柵2の後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26に干渉する可能性がある場合の当該特定の可動防護柵2の動かし方が示されている。
具体的には、まず、特定の可動防護柵2として図8の中央の可動防護柵2を当該図8に示すように僅かに回転させた後、図9に示すように前側へ僅かに移動させ、それによって当該中央の可動防護柵2の第1後側突出部25とその後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26との間にそれらの突出部同士の干渉を回避するためのスペースを確保する。その後、当該中央の可動防護柵2をさらに回転させることにより、図10に示すように第1後側突出部25と第2前側突出部26との干渉を回避しつつ、当該中央の可動防護柵2の第1後側突出部25をその後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26よりも第2道路側へ離脱させることができる。その後、当該中央の可動防護柵2を第2道路側へ向かうとともにその第2道路の車両進行方向の前側へ向かうように斜めに移動させることによって、図11に示すように当該中央の可動防護柵2をその前後の可動防護柵2の間から離脱させることができる。
以上のように、前記中央の可動防護柵2、すなわち特定の可動防護柵2に対応する固定装置3を固定解除状態に切り換えるとともに、当該特定の可動防護柵2の第1前側突出部24がその前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25から可動防護柵2の幅方向の外側に離れる向きに当該特定の可動防護柵2を垂直軸回りに回転させることにより、当該特定の可動防護柵2の前後にそれぞれ隣接する可動防護柵2を動かすことなく当該特定の可動防護柵2のみを離脱させて別の場所に移動させることが可能である。
また、本実施形態による防護柵システム1では、各可動防護柵2において、第1前側突出部24の突出寸法Lf1が第2前側突出部26の突出寸法Lf2よりも大きく、かつ、第2後側突出部27の突出寸法Lr2が第1後側突出部25の突出寸法Lr1よりも大きい。このため、任意の可動防護柵2の第1及び第2前側突出部24,26とその任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1及び第2後側突出部25,27との長手方向のオーバーラップ量を大きくしながら、当該任意の可動防護柵2がその垂直軸回りの回転によって前後の可動防護柵2から離脱できるようになっている。
具体的には、第1前側突出部24の突出寸法Lf1が第2前側突出部26の突出寸法Lf2よりも大きく、かつ、第2後側突出部27の突出寸法Lr2が第1後側突出部25の突出寸法Lr1よりも大きいことにより、第2前側突出部26の突出寸法Lf2及び第1後側突出部25の突出寸法Lr1は共に比較的小さくなる。このため、任意の可動防護柵2をその第1前側突出部24が当該任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25から前記幅方向の外側に離れる向きに垂直軸回りに回転させるときに、当該任意の可動防護柵2の第2前側突出部26が前記前側に隣接する可動防護柵2の第1後側突出部25に干渉するのを回避してその第1後側突出部25よりも第1道路側の位置へ当該任意の可動防護柵2の第2前側突出部26を離脱させること、及び、当該任意の可動防護柵2の第1後側突出部25がその後側に隣接する可動防護柵2の第2前側突出部26に干渉するのを回避してその第2前側突出部26よりも第2道路側の位置へ当該任意の可動防護柵2の第1後側突出部25を離脱させることの少なくとも一方が可能となる。その結果、当該任意の可動防護柵2をその前後に隣接する可動防護柵2から離脱させることができる。
さらに、第1前側突出部24の突出寸法Lf1が第2前側突出部26の突出寸法Lf2よりも大きく、かつ、第2後側突出部27の突出寸法Lr2が第1後側突出部25の突出寸法Lr1よりも大きいことにより、突出寸法が比較的小さい第1後側突出部25に対して第1前側突出部24が大きなオーバーラップ量を確保できるとともに、突出寸法が比較的小さい第2前側突出部26に対して第2後側突出部27が大きなオーバーラップ量を確保できる。従って、任意の可動防護柵2の第1及び第2前側突出部24,26とその任意の可動防護柵2の前側に隣接する可動防護柵2の第1及び第2後側突出部25,27との長手方向のオーバーラップ量を大きくすることができる。
また、本実施形態による防護柵システム1では、各可動防護柵2において、第1前側突出部24の突出寸法Lf1と第2後側突出部27の突出寸法Lr2が同等であり、かつ、第2前側突出部26の突出寸法Lf2と第1後側突出部25の突出寸法Lr1が同等である。このため、各可動防護柵2をその前後の向きにかかわらず設置することが可能である。
本発明による防護柵システムは、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による防護柵システムに以下のような構成を採用可能である。
本発明による防護柵システムは、必ずしも、第1前側突出部の突出寸法が第2前側突出部の突出寸法よりも大きいこと及び第2後側突出部の突出寸法が第1後側突出部の突出寸法よりも大きいことの両方に該当していなくてもよい。すなわち、第1前側突出部の突出寸法は第2前側突出部の突出寸法よりも大きいが、第2後側突出部の突出寸法は第1後側突出部の突出寸法以下であってもよく、また逆に第2後側突出部の突出寸法は第1後側突出部の突出寸法よりも大きいが、第1前側突出部の突出寸法は第2前側突出部の突出寸法以下であってもよい。
また、第1前側突出部の突出寸法と第2後側突出部の突出寸法は互いに異なっていてもよい。また、第2前側突出部の突出寸法と第1後側突出部の突出寸法は互いに異なっていてもよい。
また、前記実施形態では、可動防護柵が上下に並んだ2つの第1ガードレール及び上下に並んだ2つの第2ガードレールを有しているが、可動防護柵は単一の第1ガードレール及び単一の第2ガードレールのみを有するものでもよい。
また、本発明における可動防護柵の「可動」及びその可動防護柵の基部が地面上を移動可能であることは、その移動形態や移動手段については問わず、何らかの方法で移動可能であればよいことを意味する。従って、可動防護柵は、基部が前記実施形態で示した転動体により地面上を移動可能であることによって移動可能に構成された防護柵に必ずしも限定されない。例えば、本発明における可動防護柵は、転動体を備えておらず、設置場所の地面上に載置されることによって設置されるようなものであってもよく、また、地面に沿って引きずったり押したり、また、地面から持ち上げて当該地面上をその地面に沿って移させたりすることが可能な防護柵であってもよい。このような可動防護柵であっても、本発明の構成によれば、当該可動防護柵を垂直軸回りに前記実施形態の可動防護柵と同様の向きに回転させることによりその前後両側の可動防護柵から離脱させることができる。
また、固定装置は、その挿入管が固定管内の空間及び支柱内の空間から上方へ抜脱されることによって固定解除状態となるようなものに限らず、挿入管が固定管内に落とし込まれて支柱内の空間から下方に離脱することによって固定解除状態になるものであってもよい。あるいは、固定装置は、挿入管及び固定管からなるものでなくてもよく、可動防護柵をその設置位置で地面に固定する固定状態とその固定を解除して可動防護柵の地面上での移動を許容する固定解除状態とに切り換えられることが可能なものであればどのようなものでもよい。
例えば、可動防護柵が持ち上げられて設置位置の地面上に載置されることによって設置され、また、その設置位置から持ち上げられて移動されるものである場合に、固定装置は、設置位置の地面から上方へ突出するように設置された突出部材と、可動防護柵に設けられて前記突出部材に上方から外嵌可能な嵌合部材とを有するものであってもよい。このような固定装置は、前記嵌合部材が前記突出部材に外嵌することによって可動防護柵を固定する固定状態となる一方、前記嵌合部材が前記突出部材から上方へ離脱することによって固定解除状態となる。すなわち、可動防護柵を設置位置の地面上に設置するときには、持ち上げた可動防護柵を前記嵌合部材が前記突出部材に上方から外嵌するように降ろすことにより固定装置を固定状態にして当該可動防護柵をその設置位置で固定する。一方、前記嵌合部材が前記突出部材から上方へ離脱するように可動防護柵を設置位置の地面上から持ち上げることにより固定装置を固定解除状態にして当該可動防護柵をその設置位置から移動可能とする。