JP2019157158A - めっき層を有する成形品の製造方法 - Google Patents
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なお、ここでいう複合材とは、母材中に機械的な強度を付与するための強化材料を含めたものをいい、代表的なものとして繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)が知られている。この複合材も母材が樹脂であることから、本願において樹脂材料というときは、母材が樹脂材料からなる複合材を含むものとする。また、本願において、単にめっきというときは、金属めっきを意味するものとする。
プライマーインク層は凹凸構造を有しているために、無電解めっき工程において、めっき液がプライマーインクの凹凸構造に浸透して、プライマーインク層中の触媒粒子によってめっき反応が起こり、アンカー効果によってめっき層がプライマーインク層に密着する。
そこで本発明は、めっき層とプライマーインク層の間のアンカー効果による密着強度を確保しつつ、プライマーインク層と非導電性基材との密着強度を確保できるめっき層を有する成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の製造方法は、工程(a)において、非導電性基材に接する、触媒粒子を含まない第一プライマ前駆層を形成し、次いで、第一プライマ層に接する、触媒粒子を含む第二プライマ前駆層を形成する、ことを特徴とする。
一つ目の形態は、工程(a)において、未乾燥状態の第一塗料組成物を非導電性基材の表面に塗布して第一プライマ前駆層を形成し、次いで、触媒粒子を含む未乾燥状態の第二塗料組成物を、半乾燥状態の第一塗料組成物の上に塗布して第二プライマ前駆層を形成してから、第一塗料組成物と第二塗料組成物を乾燥させることで、触媒粒子を含まない第一プライマ層と触媒粒子を含む第二プライマ層を形成する。その後に、めっき層を形成する工程である工程(b)を行う。
一つ目の形態において、第一塗料組成物と第二塗料組成物の樹脂成分が同じ材質であることが好ましい。
なお、非導電性基材の表面に塗布される段階で塗料組成物は触媒粒子を含まない。
以下説明する実施形態は、第1実施形態と第2実施形態の二つの形態を含んでいる。
第1実施形態は、第一プライマ層20Aを形成するための第一塗料組成物20aを塗布した後に、第一プライマ層20Aの上に第二プライマ層30Aを形成するための第二塗料組成物30aを塗布する。第1実施形態は、未乾燥状態の樹脂材料が個別に二回に分けて塗布される。
第2実施形態は、第一プライマ層20Aを形成するための第一塗料組成物20aを塗布した後に、めっきを生じさせる触媒粒子CPを第一塗料組成物20aの表層に供給する。この供給は、好ましくは、第一塗料組成物20aの乾燥がある程度進んだ段階で行うことで、触媒粒子CPが第一塗料組成物20aの上方に留まるように行われる。第2実施形態は、未乾燥状態の樹脂材料の塗布は一回で足りる。
以下、第1実施形態、第2実施形態の順に説明する。
第1実施形態に係る樹脂成形品1Aは、図1に示すように、非導電性基材10Aと、非導電性基材10Aの表面に形成、支持される第一プライマ層20Aと、第一プライマ層20Aの表面に形成される第二プライマ層30Aと、第二プライマ層30Aの表面に形成されるめっき層40Aと、を備えている。
第一プライマ層20Aと第二プライマ層30Aは、いずれも樹脂材料から構成され、第二プライマ層30Aが触媒粒子CPを含むのに対して、第一プライマ層20Aは触媒粒子CPを含まない。そうすることにより、第二プライマ層30Aはめっき層40Aとの接合強度を確保し、第一プライマ層20Aは非導電性基材10Aと第二プライマ層30Aの両者との接合強度を確保する。
以下、非導電性基材10A〜めっき層40Aの各要素について順に説明する。
非導電性基材10Aは、めっき層40Aを形成する対象物である。
非導電性基材10Aは、典型的には樹脂材料が適用される。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があるが、いずれも非導電性基材10Aに適用できる。また、樹脂中に炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維を含有させた繊維強化樹脂も適用できる。
主要な熱可塑性樹脂は汎用プラスチックとも称され、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよびスチレン系樹脂(汎用ポリスチレン)、アクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS)が代表的な汎用プラスチックである。これらは非導電性基材10Aに適用できる熱可塑性樹脂の一例である。以下に具体例を示す樹脂も同様である。
また、汎用プラスチックよりも強度と耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチック、さらにエンジニアリングプラスチックわりも耐熱性、その他の特性が優れるスーパーエンジニアリングプラスチックを非導電性基材10Aに適用できる。
代表的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、いずれも非導電性基材10Aに適用できる。
次に、第一プライマ層20Aについて説明する。
第一プライマ層20Aは、非導電性基材10Aと第二プライマ層30Aの間に設けられ、めっきが非導電性基材10Aに到達するのを防止することを主目的に形成される。したがって、次に説明する第二プライマ層30Aとは異なり、めっきを実現するための触媒粒子CPを含まない。
第一プライマ層20Aは、触媒粒子CPを含まないことを除けば、好ましくは、第二プライマ層30Aの母相と同じ材質の樹脂材料から構成される。よって、第一プライマ層20Aを構成する樹脂材料の説明は、第二プライマ層30Aの説明に任せる。
第一プライマ層20Aは、樹脂材料から構成される非導電性基材10Aと化学的に結合されている。
次に、第二プライマ層30Aについて説明する。
第二プライマ層30Aは、樹脂からなる母相MXと母相MXに保持される触媒粒子CPからなる。第二プライマ層30Aの母相MXと第一プライマ層20Aは、化学的に結合されており、物理的な境界は存在しない。
母相MXは、具体的な樹脂としては、非導電性基材10Aの欄で説明した樹脂材料から選択されるが、好ましくは、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂から選択される。
触媒粒子CPは、特に限定されないが、0.1〜30nmの平均粒径を有するのが好ましく、0.5〜20nmの平均粒径を有するのがより好ましく、2〜10nmの平均粒径を有するのがさらに好ましい。
次に、めっき層40Aについて説明する。
めっき層40Aは、無電解めっきにより形成される。無電解めっきは、金属イオンと還元剤との化学反応によって金属イオンをめっき対象物上に金属として還元析出させる方法である。
本実施形態による第二プライマ層30Aは無電解めっきの反応性がよく、得られるめっき層40Aはむらがなく、密着性及び外観性に優れる。
次に、樹脂成形品1Aを製造する工程を、図2を参照して説明する。
<第一プライマ層20Aの形成>
はじめに、図2(a)に示すように、非導電性基材10Aに第一プライマ層20Aを形成するための第一塗料組成物20aを塗布する。この塗料組成物は、第一プライマ層20Aを構成する樹脂と溶媒を含んでおり、本発明における第一プライマ前駆層に該当する。
非導電性基材10Aに第一塗料組成物20aを塗布する方法は任意であるが、例えばグラビア印刷機(グラビアオフセット)、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、リバースコーター、スクリーン印刷機を用いて、印刷またはコーティングすることができる。また、人手によって塗布することができる。
次に、図2(b)に示すように、第二プライマ層30Aを形成するための第二塗料組成物30aを、第一塗料組成物20aの上に塗布する。このとき、第一塗料組成物20aの溶媒のほとんどは乾燥されておらず残っている。また、塗布された第二塗料組成物30aは、本発明における第一プライマ前駆層に該当する。
第二塗料組成物30aを塗布した後に、図2(c)に示すように、溶媒の乾燥処理を行う。この処理によって、無電解めっきを行う際に不必要な溶媒を除去するとともに、第一プライマ層20Aと非導電性基材10Aの間、第一プライマ層20Aと第二プライマ層30Aの間の密着性を向上させることができる。また、この乾燥処理により、第一プライマ層20Aと第二プライマ層30Aの強度を向上できる。
硬化処理により、第一プライマ層20Aおよび第二プライマ層30Aに含まれるバインダ樹脂が硬化される。また、非導電性基材10Aが樹脂材料の場合には、非導電性基材10Aの表面に存在する水酸基やカルボキシル器等の官能基とバインダ樹脂を化学的に結合させる。
硬化処理の温度は第一プライマ層20A、第二プライマ層30Aに含まれるバインダの種類に合わせて調整することができる。硬化処理の温度は40〜400℃程度が好ましい。ただし、非導電性基材10Aとして樹脂材料を用いる場合には、樹脂材料の軟化温度を考慮し、硬化処理の温度を40〜200℃程度に設定することが好ましい。
硬化処理のタイミングはめっき層40Aの形成前に限らず、めっき層40Aの形成後に行ってもよい。バインダ樹脂を完全に硬化させてしまうと、後のめっき層40Aの形成時にめっき液が第二プライマ層30Aに浸透しにくくなることがあるからである。
次に、図2(d)に示すように、めっき層40Aを第二プライマ層30Aの上に無電解めっきにより形成する。無電解めっきによるめっき層40Aは、第二プライマ層30Aが形成された領域だけに形成される。
次に、第1実施形態に係る樹脂成形品1Aが奏する効果について説明する。
樹脂成形品1Aは、触媒粒子CPを含まない第一プライマ層20Aが、めっきが非導電性基材10Aに到達するのが防止される。これにより、樹脂成形品1Aによれば、第二プライマ層30Aに対するめっき層40Aの浸透を深くしても、めっき金属が非導電性基材10Aと第一プライマ層20Aの接合強度を低下させることがない。したがって、第一プライマ層20Aおよび第二プライマ層30Aを介して、めっき層40Aを強固に非導電性基材10Aに接合できる。
以上に対して、樹脂成形品1Aは、めっきの非導電性基材10Aへの到達を防止する第一プライマ層20Aが触媒粒子CPを含まないので、低価格な樹脂成形品1Aにおいて、第一プライマ層20Aおよび第二プライマ層30Aを介して、めっき層40Aを強固に非導電性基材10Aに接合できる。
次に、本発明による第2実施形態に係る樹脂成形品1Bを説明する。
図3に示すように、樹脂成形品1Bは、樹脂成形品1Aと同様に、第一プライマ層20B、第二プライマ層30Bおよびめっき層40Bがこの順で非導電性基材10Bの上に積層されている。ただし、樹脂成形品1Bは、第一プライマ層20Bと第二プライマ層30Bを構成する樹脂部分が、未乾燥状態の樹脂材料を一度だけ塗布することで作製される。以下、図4及び図5を参照しながら樹脂成形品1Bを製造する工程を説明する。
はじめに、図4(a)に示すように、非導電性基材10Bの表面に未乾燥状態の塗料組成物20bを塗布する。この塗料組成物20bは、第1実施形態において第一プライマ層20Aを形成するために用いた第一塗料組成物20aと同様に、触媒粒子CPを含まない。また、この塗料組成物20bは、本発明における第一プライマ前駆層に該当するが、触媒粒子CPが供給され塗料組成物20bの表層に分散されると、当該領域が本発明における第二プライマ前駆層に置き換わる。
塗料組成物20bを塗布した後に、図4(b)に示すように、乾燥する。ただし、ここでは全ての溶媒を取り除いて乾燥を完了させるのではなく、いくらかの溶媒を残すいわば半乾燥に留める。
次に、図4(c)に示すように、触媒粒子CPを半乾燥の塗料組成物20bの表面にスプレー塗布により供給する。より具体的には、塗料組成物20bに含まれているのと同じ溶媒と触媒粒子CPからなるスプレー組成物SPをノズルNから吐出して塗料組成物20bに塗布する。
塗布されたスプレー組成物SPは、半乾燥の塗料組成物20bの表層の部分と混合される。その結果、図5(a)に示すように、触媒粒子CPは塗料組成物20bの表層の部分に分散して存在するが、そこよりも非導電性基材10Bに近い側には存在しない。しかも、スプレー組成物がスプレー塗布された結果として、塗料組成物20bの表層には凹凸が形成される。
次に、塗料組成物20bを乾燥して含まれていた溶媒を取り除く。そうすると、図5(a)に示すように、触媒粒子CPを含まない第一プライマ層20Bと触媒粒子CPを含む第二プライマ層30Bが形成される。なお、第1実施形態と同様に、第一プライマ層20Bと第二プライマ層30Bの境界は存在しない。
以後は、第1実施形態と同様にして、めっき層40Bを形成することで、図5(b)に示される樹脂成形品1Bが得られる。
第2実施形態に係る樹脂成形品1Bは、第1実施形態に係る樹脂成形品1Aと同じ効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。
第2実施形態は、触媒粒子CPを塗料組成物20bの表層に存在させることができる。これは、めっきの触媒として必要な表層領域だけに選択的に触媒粒子CPを供給できることを意味しており、換言すれば、触媒に寄与しないであろう触媒粒子CPをむだに消費するのを避けることができる。これにより、第2実施形態は触媒粒子CPの使用量の削減を通じてコストを低減できる。
例えば、第1実施形態において、第一プライマ層20Aと第二プライマ層30Aを同じ樹脂材料から構成する例を説明したが、第一プライマ層20Aと第二プライマ層30Aの接合強度が得られるのであれば、異なる樹脂材料を用いることができる。
また、第2実施形態において、触媒粒子CPを塗料組成物20bの表層に供給するのにスプレー塗布の例を説明したが、適切に供給できる限り触媒粒子CPの供給手法は限定されない。
20A,20B 第一プライマ層
30A,30B 第二プライマ層
20a 第一塗料組成物
20b 塗料組成物
30a 第二塗料組成物
40A,40B めっき層
CP 触媒粒子
MX 母相
Claims (6)
- 非導電性基材に支持される、樹脂材料と樹脂材料に支持されるめっきに対する触媒粒子を含むプライマ層を形成する工程(a)と、
工程(a)により形成された前記プライマ層の表面にめっき層を形成する工程(b)と、を備え、
工程(a)において、
前記非導電性基材に接する、前記触媒粒子を含まない第一プライマ前駆層を形成し、次いで、
前記第一プライマ前駆層に接する、前記触媒粒子を含む第二プライマ前駆層を形成する、
ことを特徴とする成形品の製造方法。 - 前記工程(a)において、
未乾燥状態の第一塗料組成物を前記非導電性基材の表面に塗布して前記第一プライマ前駆層を形成し、
次いで、前記触媒粒子を含む未乾燥状態の第二塗料組成物を、半乾燥状態の前記第一塗料組成物の上に塗布して前記第二プライマ前駆層を形成し、
前記第一塗料組成物と前記第二塗料組成物を乾燥させることで、前記触媒粒子を含まない第一プライマ層と前記触媒粒子を含む第二プライマ層を形成し、その後に工程(b)を行う、
請求項1に記載の成形品の製造方法。 - 前記第一塗料組成物と前記第二塗料組成物の樹脂成分が同じ材質である、
請求項2に記載の成形品の製造方法。 - 前記工程(a)において、
未乾燥状態の塗料組成物を前記非導電性基材の表面に塗布して前記第一プライマ前駆層を形成し、
未乾燥状態の前記塗料組成物の表層に前記触媒粒子を供給して、前記第二プライマ前駆層を形成し、
前記塗料組成物を乾燥させることで、前記触媒粒子を含まない第一プライマ層と前記触媒粒子を含む第二プライマ層を形成し、その後に前記工程(b)を行う、
請求項1に記載の成形品の製造方法。 - 前記工程(a)の前記第二プライマ前駆層の形成において、
前記触媒粒子は、前記塗料組成物に含まれる溶媒とともにスプレーすることにより、前記塗料組成物の表層に供給される、
請求項4に記載の成形品の製造方法。 - 前記非導電性基材は、樹脂材料からなり、
前記非導電性基材と前記第一プライマ層が化学結合しており、かつ、
前記第一プライマ層と前記第二プライマ層が化学結合している、
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
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WO2022097487A1 (ja) * | 2020-11-05 | 2022-05-12 | Dic株式会社 | 金属皮膜形成方法 |
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