JP2019155004A - 光音響装置および被検体情報取得方法 - Google Patents

光音響装置および被検体情報取得方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光音響画像に重畳されるアーチファクトを低減する。【解決手段】被検体に光を照射する光照射手段と、前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得手段と、前記光音響信号に基づいて画像の再構成を行う再構成手段と、前記被検体表層の光学特性に関する情報を取得する特性取得手段と、前記被検体表層の光学特性に関する情報に基づいて、前記光の照射範囲および前記再構成の範囲を決定する制御手段と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、被検体情報を取得する装置に関する。
被検体内の構造情報や、生理的情報、すなわち機能情報をイメージングするための技術として、光音響トモグラフィ(PAT:PhotoAcoustic Tomography)が知られている。
レーザ光などの光を被検体である生体に照射すると、光が被検体内の生体組織で吸収される際に音響波(典型的には超音波)が発生する。この現象を光音響効果と呼び、光音響効果により発生した音響波を光音響波と呼ぶ。被検体を構成する組織によって、光エネルギーの吸収率がそれぞれ異なるため、発生する光音響波の音圧も組織によって異なったものとなる。PATでは、発生した光音響波を探触子で受信し、受信信号を数学的に解析することにより、被検体内の特性情報を取得することができる。
光音響トモグラフィでは、光の吸収係数の高いヘモグロビンなどを含む血管を画像化することができる。しかし、腫瘍を形成する比較的細い血管から発生する信号は弱いため、ノイズやアーチファクト(虚像)を適切に除去しなければ所望の画像を得られない場合がある。アーチファクトを除去するため、特許文献1に記載されている装置では、受信信号を同時刻において加算し、さらに最大振幅を基準として規格化したのち、受信信号から減算をしている。これにより、界面音響波の過渡応答とその多重反射に起因するアーチファクトの除去を行うことができる。
特許第5441781号公報
特許文献1に記載の装置を用いることで、被検体の表面で発生した音響波に起因するアーチファクトを除去することができる。このアーチファクトは、数ミリの厚い保持部材での多重反射が深い位置の音響波に重畳されて受信されることで発生するものである。したがって、100ミクロン程度の薄い保持部材を用いることによってもこのアーチファクトを低減することができる。
ところで、本発明者の検討の結果、バックプロジェクション法による画像再構成に起因して生じるアーチファクトが得られる画像の画質を低下させる一因になることが分かった。すなわち、被検体の表面近傍の皮膚領域の強い吸収体による信号をバックプロジェクション法により円弧上に投影すると、別の領域に数学的に信号が重畳されることによるものである。特に、皮膚領域に起因するアーチファクトは、被検者の肌の色によってその現れ方が異なるので、効果的に除去する方法が存在しなかった。
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、光音響画像に重畳されるアーチファクトを低減することを目的とする。
上記課題を解決するための、本発明に係る光音響装置は、
被検体に光を照射する光照射手段と、前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得手段と、前記光音響信号に基づいて画像の再
構成を行う再構成手段と、前記被検体表層の光学特性に関する情報を取得する特性取得手段と、前記被検体表層の光学特性に関する情報に基づいて、前記光の照射範囲および前記再構成の範囲を決定する制御手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る被検体情報取得方法は、
被検体に光を照射する光照射手段を有する光音響装置が行う被検体情報取得方法であって、前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得ステップと、前記光音響信号に基づいて画像の再構成を行う再構成ステップと、前記被検体表層の光学特性に関する情報を取得する特性取得ステップと、前記被検体表層の光学特性に関する情報に基づいて、前記光の照射範囲および前記再構成の範囲を決定する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、光音響画像に重畳されるアーチファクトを低減することができる。
第一の実施形態に係る光音響装置の概要図。 第一の実施形態に係る光音響装置の概要図。 被検体に照射される光の照射範囲を示した図。 明視野画像および暗視野画像の生成方法を説明する図。 第一の実施形態に係る光音響装置の処理フローチャート。 光の照射範囲と画像の再構成範囲を説明する図。 第二の実施形態に係る光音響装置の概要図。 第三の実施形態におけるファントムの測定を説明する図。
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。よって、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明は、被検体から伝搬する音響波を検出し、被検体内部の特性情報を生成し、取得する技術に関する。よって本発明は、光音響装置またはその制御方法として捉えられる。本発明はまた、これらの方法をCPUやメモリ等のハードウェア資源を備える装置に実行させるプログラムや、そのプログラムを格納した、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記憶媒体としても捉えられる。
実施形態に係る光音響装置は、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体の特性情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置である。この場合、特性情報とは、光音響波を受信することにより得られる受信信号を用いて生成される、被検体内の複数位置のそれぞれに対応する特性値の情報である。
光音響測定により取得される特性情報は、光エネルギーの吸収率を反映した値である。例えば、光照射によって生じた音響波の発生源、被検体内の初期音圧、あるいは初期音圧から導かれる光エネルギー吸収密度や吸収係数、組織を構成する物質の濃度を含む。
また、異なる複数波長の光によって発生する光音響波に基づいて、被検体を構成する物質の濃度といった情報が得られる。この情報は、酸素飽和度、酸素飽和度に吸収係数等の強度を重み付けした値、トータルヘモグロビン濃度、オキシヘモグロビン濃度、またはデオキシヘモグロビン濃度であってもよい。また、グルコース濃度、コラーゲン濃度、メラ
ニン濃度、または脂肪や水の体積分率であってもよい。
以下に説明する実施形態では、ヘモグロビンを吸収体として想定した波長の光を被検体に照射することで、被検体内の血管の分布・形状のデータと、その血管における酸素飽和度分布のデータを取得し、画像化する光音響イメージング装置を想定する。
被検体内の各位置の特性情報に基づいて、二次元または三次元の特性情報分布が得られる。分布データは画像データとして生成され得る。特性情報は、数値データとしてではなく、被検体内の各位置の分布情報として求めてもよい。すなわち、初期音圧分布、エネルギー吸収密度分布、吸収係数分布や酸素飽和度分布などの分布情報である。
本明細書における音響波とは、典型的には超音波であり、音波、光音響波と呼ばれる弾性波を含む。探触子等により音響波から変換された電気信号を音響信号とも呼ぶ。ただし、本明細書における超音波または音響波という記載には、それらの弾性波の波長を限定する意図はない。光音響効果により発生した音響波は、光音響波または光超音波と呼ばれる。光音響波に由来する電気信号を光音響信号とも呼ぶ。なお、本明細書において、光音響信号とは、アナログ信号とデジタル信号の双方を含む概念である。分布データは、光音響画像データや再構成画像データとも呼ばれる。
本実施形態に係る光音響装置は、被検体にパルス光を照射し、被検体内において発生した光音響波を受信することで、被検体内の光学特性に関連した情報を生成する装置である。
なお、以下の説明において、体表とは、被検体の表層(皮膚領域)を含むものとする。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る光音響装置の構成を説明する図である。本実施形態に係る光音響装置は、探触子ユニット120、保持部材107、信号処理部108、データ処理部109、表示装置110を有して構成される。また、探触子ユニット120は、探触子支持体101、複数の音響波探触子102、光学系104、被検体観察部106、光学部材111を有して構成される。
図1は、探触子ユニット120の断面を表す図であり、図2は、探触子ユニット120を上面(Z軸方向)から見た図である。
探触子ユニット120は、被検体に対して光を照射し、被検体から発生した音響波を受信するユニットである。探触子ユニット120は、半球状の探触子支持体101の内面に、複数(例えば512個)の音響波探触子102をスパイラル状に配置することで構成される。さらに、探触子支持体101の底部には、後述する光源103から発せられた光が通過する開口部105が設けられている。また、探触子支持体101の底部付近には、被検体の表面を観察するための被検体観察部106が設けられている。
探触子支持体101は、複数の音響波探触子102を支持する、略半球形状の容器である。本実施形態では、半球の内側面に複数の音響波探触子102が設置され、半球の底部(極)に光を通過させるための開口部105が設けられている。なお、半球の内側には、音響整合材(例えば水)が貯留されてもよい。探触子支持体101は、これらの部材を支持するため、機械的強度が高い金属材料などを用いて構成することが好ましい。
音響波探触子102は、被検部の内部から到来する音響波を受信して、電気信号に変換する手段である。音響波探触子は、探触子、音響波検出素子、音響波検出器、音響波受信器、トランスデューサとも呼ばれる。
生体から発生する音響波は、100KHzから100MHzの超音波であるため、音響波探触子には、上記の周波数帯を受信できる素子を用いる。具体的には、圧電現象を用い
たトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなどを用いることができる。
また、音響波探触子は、感度が高く、周波数帯域が広いものを用いることが望ましい。具体的にはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いた圧電素子、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの高分子圧電膜材料、CMUT(容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ)、ファブリペロー干渉計を用いたものなどが挙げられる。ただし、ここに挙げたものだけに限定されず、探触子としての機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
本実施形態では、音響波探触子102として、3mmの開口を持ち、帯域が0.5〜4MHzである単素子のCMUTを利用する。かかる構成の場合、装置の分解能は0.5mmとなる。このように、低周波数帯域を含んだ音響波探触子を利用することによって、比較的太い血管の中が抜けて筒状に見えるような状況が発生しづらくなる。サンプリング周波数は40MHzで、2048サンプリングを行う。また、取得するデータは符号付きの12ビットとする。
複数の音響波探触子102は、素子の受信方向が半球の曲率中心に向かうように、半球面上にアレイ状に配置されている。複数の音響波探触子102をこのように配置することで、半球の曲率中心において高い分解能を得ることができる。
なお、探触子ユニット120は、不図示の走査機構によって、三次元方向に移動させることができる。これにより、光の照射位置と音響波の受信位置を被検体に対して相対的に移動させることができる。走査機構は、例えば、ガイド機構、駆動機構、走査位置センサをX,Y,Z軸の三方向それぞれに有していてもよい。
光源103は、被写体に照射するパルス光を発生させる装置である。光源103は、大出力を得るためにレーザ光源であることが望ましいが、レーザの代わりに発光ダイオードやフラッシュランプを用いることもできる。光源としてレーザを用いる場合、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザなど様々なものが使用できる。
また、パルス光の波長は、被検体を構成する成分のうち特定の成分に吸収される特定の波長であって、被検体内部まで光が伝搬する波長であることが望ましい。具体的には、700nm以上1100nm以下であることが望ましい。この領域の光は、比較的生体深部まで到達することができるため、被検体深部の情報を得ることができる。
また、光音響波を効果的に発生させるためには、被検体の熱特性に応じて十分短い時間に光を照射させなければならない。本実施形態に示すように被検体が生体である場合は、光源から発生するパルス光のパルス幅は10〜50ナノ秒程度が好適である。
なお、光照射のタイミング、波形、強度等は、後述するデータ処理部109によって制御される。
本実施形態では、光源として、固体レーザであるチタンサファイアレーザー(波長800nm)を用いる。なお、複数波長の光を照射可能な光源を用いることで、波長ごとの吸収係数の違いが算出できるようになるため、酸素飽和度の算出が可能となる。光源103は、10Hzの周期で2波長の光を交互に照射することができる。
光学系104は、光源から発せられたパルス光を伝送する部材である。光源から出射された光は、レンズやミラーなどの光学部品により、所定の光分布形状に加工されながら被検体に導かれ、照射される。なお、光ファイバなどの光導波路などを用いて光を伝搬させることも可能である。
光学系104は、例えば、レンズ、ミラー、プリズム、光ファイバ、拡散板、シャッタ
ー、フィルタなどの光学機器を含んでいてもよい。光源から発せられた光を被検体に所望の形状で照射できれば、光学系には、どのような光学部品を用いてもよい。なお、光はレンズで集光させるより、ある程度の面積に広げる方が、生体への安全性ならびに診断領域を広げられるという観点で好ましい。
本実施形態では、複数の光学部材111が、光学系104における光の伝送経路上に選択的に挿入可能な構成となっている。
光学部材111は、被検体に照射される光の照射範囲を変更するための光学部材である。図3は、被検体に照射される光の照射範囲を示した図である。図3(A)は、光学部材111を挿入しない場合における光の照射範囲を示したものである。また、図3(B)は、光を拡散させる光学部材111(拡散板等)を挿入した場合の例である。このように、入射した光を拡散させることで、被検体上のより広い範囲に光を照射することができる。なお、この場合、光の照射密度は図3(A)の場合よりも低くなる。
図3(C)は、被検体に照射される光をリング状に加工した場合の例である。このような照射方法は、光の伝送経路上に、光学部材111としてコニカルレンズ等を挿入することで実現することができる。
なお、ここでは三種類の形態を例示したが、利用可能な光学部材111は例示したもの以外であってもよい。
被検体観察部106(本発明における特性取得手段)は、被検体の表面を光学的に観察する手段であり、典型的にはCCDカメラやCMOSカメラを含む。被検体観察部106は、取得した画像に基づいて、被検者の肌の色を取得する。
被検体観察部106は、例えば、256諧調の画素値(RGB値)によって被検者の肌の色を取得する。例えば、被検者が欧米系である場合、肌が明るい色であるため、RGBの値がそれぞれ高くなる。一方、アフリカ系である場合、肌が暗い色であるため、RGBの値がそれぞれ低くなる。また、アジア系である場合は、RGBの値が上記の中間となる。
なお、被検体観察部106は、肌の色を取得してもよいし、肌の明度を取得してもよい。明度のみを取得する場合、取得する画像はグレースケール画像であってもよい。
被検者の肌に含まれるメラニン色素の濃さと、体表における吸収係数との間には一定の相関がある。具体的には、被検体観察部106が取得した画像に含まれる画素(肌に対応する画素)の明度が低いほど、体表における光の吸収係数が高くなる。すなわち、アーチファクトが発生しやすくなる。本発明に係る光音響装置は、当該特性を利用し、被検体観察部106が取得した画像に含まれる画素値に基づいて、光の照射条件および画像再構成の条件を決定する。具体的な制御方法については後述する。
なお、本例では被検体観察部106としてカメラを例示したが、分光器を用いて体表における反射光を分析することで、体表における吸収係数を測定してもよい。ただし、カメラを利用すると、取得した画像を関心領域の指定にも利用できるため好適である。なお、カメラが取得した画像は、肌の色の判定以外に用いてもよい。例えば、画像に基づいて得られた外観情報を利用して、被検体内の光量分布を算出してもよい。
保持部材107は、被検体を保持する部材である。本実施形態では、被検体が図中Z軸正方向から挿入され、保持部材107に当接した状態で保持される。保持部材107は、ポリエチレンテレフタラートのように、被検体を支える強度と、光と音響波を透過させる特性を有する材質であることが好ましい。また、保持部材107は保持部材の中での多重反射を避けるため100ミクロン程度の厚みであることが好ましい。なお、必要に応じて、保持部材107の内側に音響整合材を貯留してもよい。
信号処理部108は、音響波探触子102が取得した電気信号を増幅してデジタル信号に変換する手段である。音響波探触子102および信号処理部108が、本発明における信号取得手段に相当する。
信号処理部108は、受信信号を増幅する増幅器、アナログの受信信号をデジタル変換するA/D変換器、受信信号を記憶するFIFO等のメモリと、FPGAチップ等の演算回路を用いて構成されてもよい。また、信号処理部108は、複数のプロセッサや演算回路から構成されていてもよい。
データ処理部109は、光音響装置が有する各構成要素の制御を行う手段である。例えば、被検体に対する光照射の制御、音響波や光音響信号の受信制御、探触子ユニットの移動制御など、装置全体の制御に関する指令を行う。
また、データ処理部109は、デジタル変換された信号(光音響信号)に基づいて、再構成処理を行うことで、被検体の内部の光吸収係数や酸素飽和度等といった被検体情報を取得する手段である。具体的には、収集された電気信号から三次元の被検体内における初期音圧分布を生成する。
また、データ処理部109は、被検体に照射される光量に関する情報に基づいて、被検体内における三次元の光強度分布を生成する。三次元の光強度分布は、二次元の光強度分布に関する情報から光拡散方程式を解くことで取得できる。また、光音響信号から生成された被検体内の初期音圧分布と、三次元の光強度分布とを用いて、被検体内の吸収係数分布を得ることができる。また、複数の波長における吸収係数分布を演算することで、被検体内の酸素飽和度分布を得ることができる。
なお、データ処理部109は、光量分布の計算や背景の光学係数取得に必要な情報処理、信号補正など、所望の処理を実施する機能を有していてもよい。
また、データ処理部109は、後述する表示装置や入力インタフェースを介して、測定パラメータの変更、測定の開始・終了、画像の処理方法の選択、患者情報や画像の保存、データの解析などに関する指示を取得してもよい。
データ処理部109は、CPUとRAM、不揮発メモリ、制御ポートを有するコンピュータで構成してもよい。不揮発メモリに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより制御が行われる。データ処理部109は、汎用コンピュータや、専用に設計されたワークステーションによって実現されてもよい。また、データ処理部109の演算機能を担うユニットは、CPUやGPU等のプロセッサ、FPGAチップ等の演算回路で構成されていてもよい。これらのユニットは、単一のプロセッサや演算回路から構成されるだけでなく、複数のプロセッサや演算回路から構成されていてもよい。
また、データ処理部109の記憶機能を担うユニットは、ROM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの非一時記憶媒体や、RAMなどの揮発性の媒体であってもよい。なお、プログラムが格納される記憶媒体は、非一時記憶媒体である。なお、これらのユニットは、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。データ処理部109の制御機能を担うユニットは、CPUなどの演算素子で構成される。
表示装置110は、データ処理部109が取得した情報およびその加工情報を表示する手段であり、典型的にはディスプレイ装置である。表示装置110は、複数の装置であってもよいし、単一の装置に複数の表示部を備え、並列表示が可能な装置であってもよい。なお、表示装置110には、高解像度でカラー表示が可能な30型以上、コントラスト比1000:1以上の装置を用いることが望ましい。
次に、本実施形態に係る光音響装置が、被検体である生体を測定する方法について説明する。
まず、光源103から発せられたパルス光が、光学系104を介して被検体に照射される。被検体の内部を伝搬した光のエネルギーの一部が血液などの光吸収体に吸収されると、熱膨張により当該光吸収体から音響波が発生する。生体内にがんが存在する場合は、がんの新生血管において他の正常部の血液と同様に光が特異的に吸収され、音響波が発生する。生体内で発生した光音響波は、音響波探触子102によって受信される。
本実施形態では、探触子支持体101と被検体の相対的な位置関係を、走査機構によって変更しながら、光の照射および音響波の取得を行うことができる。すなわち、被検体上の異なる位置に光を複数回照射しながら光音響信号を取得することができる。
音響波探触子102が受信した信号は、信号処理部108で変換されたのち、データ処理部109で解析される。解析結果は、生体内の特性情報(例えば、初期音圧分布や吸収係数分布)を表すボリュームデータとなり、二次元の画像に変換されたのちに表示装置110を介して出力される。
次に、本実施形態に係る光音響装置に係る処理の説明を交えながら、低減しようとするアーチファクトの概要について説明する。
データ処理部109は、光音響信号を用いて画像再構成処理を実行する。画像再構成は、ユニバーサルバックプロジェクション法や整相加算法など既知の再構成手法を用いることができる。ここでは、ユニバーサルバックプロジェクション法を用いる場合を説明する。まず、光音響測定で発生する初期音圧分布P(r)は式(1)で表わされる。
Figure 2019155004
このとき投影データに相当する項b(r0,t)を、式(2)に示す。ここで、p
,t)は音響波探触子102で検出される光音響信号、rは各音響波探触子102
の位置、tは時間、Ω0は音響波探触子102の立体角である。信号処理部108が取得
したデータを式(1)に基づいて処理をすることにより、初期音圧分布P(r)を得ることができる。
Figure 2019155004
上述のように光音響信号は時系列信号であり、取得時間と音速から各探触子と光吸収体との距離を求めることができる。この距離の情報を用いて、当該光音響信号を出力した探触子の受信位置を中心とする円弧上に受信信号を投影することにより、吸収体が結像することになる。この際、有限の数の探触子を用いるため、円弧上に受信信号を投影する結果、吸収体が実際には存在しない位置に再構成アーチファクトが発生する。被検体の体表表面に吸収体が存在すると、その吸収体に由来する円弧が被検体の深部にも描かれることになる。被検体の深部は、初期音圧が小さいため、被検体の表面付近の強い吸収体に由来するアーチファクトが重畳されると、深部の本来のデータがアーチファクトにより埋没してしまう恐れが生じる。
次に、吸収係数分布は、初期音圧分布P(r)から算出できる。すなわち、吸収体に光が照射された時に発生する音圧P(r)は、式(3)で表される。
P(r)=Γ・μ(r)・Φ(r) ・・・式(3)
Γは弾性特性値であるグリューナイセン(Gruneisen)係数であり、体積膨張係数(β)と音速(c)の二乗の積を比熱(Cp)で割ったものである。μは吸収体における吸収係数である。また、Φ(r)は局所的な領域で吸収体に照射された光量である。式(3)を吸収係数について解くことによって、吸収係数分布μ(r)を得ることができる。なお、背景の光学係数は、吸収体の吸収係数より十分小さいため吸収係数分布には表れない。
光量分布Φ(r)は、深さ方向に一様に減衰するような場合、例えば式(4)のように、変数zを用いて表すことができる。
Φ=Φexp(−μeffz) ・・・式(4)
Φは、表面での計測光の光量である。μeffは、被検体内での平均的な等価減衰係数で、被検体内の背景の散乱係数μbsや吸収係数μbaを反映したものであり、例えば式(5)のように表わされる。
μeff=√(3μbaμbs) ・・・式(5)
本発明者らの研究によると、被検体表層における光の吸収係数は、被検者の皮膚の色素の濃さと大きな相関があることがわかった。
そこで、本実施形態に係る光音響装置では、光音響信号を取得する前に、被検体観察部106によって被検者の皮膚の色の濃さに関する情報を取得し、当該情報に基づいて、光を照射する領域と、再構成を行う領域の位置をそれぞれ設定する。
ここで、明視野領域と暗視野領域について説明する。
本実施形態では、被検体に光を照射した際に、所定値を上回る強度で光が照射された被検体上の領域を明視野領域と称し、当該所定値を下回る強度で光が照射された被検体上の領域を暗視野領域と称する。明視野領域には、照射光の光軸が含まれ、暗視野領域には含まれない。本明細書において、光の照射範囲とは、明視野領域に対応する範囲を指す。
図4(A)は、光の照射範囲と画像再構成範囲を一致させた場合の例である。領域401は光の照射範囲であり、かつ、再構成範囲である。すなわち、明視野領域を再構成の対象とした例である。画像の再構成範囲を明視野領域と一致させることで、S/N比の高い画像を得ることができる。この形態を、明視野再構成と呼ぶ。ここでは、領域402に対応する画像を再構成するために、5回の光照射、すなわち5か所の異なる位置に光を照射して得られた5枚の画像を使用している。
一方、図4(B)は、光の照射範囲と画像再構成範囲をそれぞれ異なる範囲に設定した場合の例である。領域403は光の照射範囲であり、領域404が再構成範囲である。すなわち、暗視野領域を再構成の対象とした例である。この形態を、暗視野再構成と呼ぶ。ここでは、領域405に対応する画像を再構成するために、4回の光照射、すなわち4か所の異なる位置に光を照射して得られた4枚の画像を使用している。
所望の範囲の再構成画像は、光照射ごとに得られた再構成画像を加算し、各ボクセルにおける加算回数で除算することによって得ることができる。また、再構成画像を加算することによって、画像のS/N比を向上させることができる。
図4(A)のように、明視野領域から発生した音響波に対応する光音響信号を用いて再構成された画像(明視野画像)は、目的とする信号のレベルが強い画像であるが、アーチファクト等の妨害信号(ノイズ)のレベルも高くなる。一方、図4(B)のように、暗視野領域から発生した音響波に対応する光音響信号を用いて再構成された画像(暗視野画像)は、明視野画像と比較すると信号のレベルは低くなるが、それ以上に妨害信号(ノイズ
)のレベルが低くなる。
本実施形態に係る光音響装置は、かかる特徴に注目したものであり、被検体の体表付近における吸収係数に基づいて、明視野再構成を行うか、暗視野再構成を行うかを切り替えることを特徴とする。体表付近における吸収係数が高い被検者とは、皮膚領域に起因する再構成アーチファクトが発生しやすい被検者であり、例えば皮膚の色が暗い被検者である。また、体表付近における吸収係数が低い被検者とは、皮膚領域に起因する再構成アーチファクトが発生しにくい被検者であり、例えば皮膚の色が明るい被検者である。
具体的な処理について、図5を参照しながら説明する。
まず、ステップS1で、測定開始の準備を行う。この状態では、被検体が、保持部材107に接触するように挿入される。なお、音響波の伝播経路から空気を排除するため、被検体は保持部材107に密着させることが好ましい。また、保持部材107の内部に音響整合材(例えば水)を充填してもよい。
次に、ステップS2で、被検体観察部106が有するCCDカメラを用いて、被検者の皮膚の色を取得する。例えば、取得した画像に含まれる画素の明度に基づいて皮膚の色を取得する。このため、例えば、画素値と皮膚の色との関係を表したテーブルや数式を予め記憶させておいてもよい。
なお、本実施形態では画像に基づいて皮膚の色を取得したが、皮膚の色を特定するための情報を操作者が入力ないし選択するようにしてもよい。
次に、ステップS3で、撮影条件を設定する。本実施形態における撮影条件とは、被検体に対する光の照射範囲と、再構成を行う範囲の組み合わせを表す情報である。
図6は、被検体に対する光の照射範囲と再構成範囲の組み合わせを例示した図である。上段が光の照射範囲を表し、下段が再構成範囲を表したものである。
図6(A)は、被検者の皮膚の色が白に近い場合に好適なモード(モード1)である。本モードでは、光の照射範囲602と、再構成範囲605が一致する。モード1は、明視野再構成を行うモードである。照射範囲602は、例えばφ40mmとすることができる。被検者の体表における吸収係数が比較的小さい場合、皮膚表面付近の吸収体(具体的にはメラニン等)に起因する再構成アーチファクトが少ないため、画像のS/N比を優先するべく明視野再構成を採用することが好適であると考えられる。
図6(B)は、被検者の皮膚の色が白色と黒色の中間に近い場合に好適なモード(モード2)である。本モードでも、光の照射範囲603と、再構成範囲606が一致する。モード2は、明視野再構成を行うモードであるが、光の照射範囲と再構成範囲がモード1よりも広いことを特徴とする。照射範囲603は、例えばφ60mmとすることができる。すなわち、単位面積当たりの光の光量がモード1より低くなる。これは、体表付近の吸収体に起因する再構成アーチファクトを低減するためである。被検者の皮膚の色が中間的な色の場合、表面近傍の吸収体に起因する再構成アーチファクトは、白色の場合よりも大きくなる。よって、モード2では、光の照射範囲と再構成範囲を広くすることで、体表に起因して発生するアーチファクトを低減する。なお、単位面積当たりの光の光量はモード1よりも低下するが、加算平均を行うことで、S/N比を良好に保つことができる。
図6(C)は、被検者の体表が中間的な色よりもさらに暗い色である場合に好適なモード(モード3)である。本モードでは、光の照射範囲604と再構成範囲607がそれぞれ別の領域に設定される。すなわち、モード3は暗視野再構成を行うモードである。例えば、光の照射範囲604は、φ40−60mmのリング状の領域とすることができる。また、再構成範囲607はφ40mmとすることができる。モード3では、暗視野再構成を
採用することで、体表付近の吸収体に起因して発生する再構成アーチファクトの影響を低減することができる。
このように、ステップS3では、光の照射範囲および再構成範囲の組み合わせを、被検者の皮膚の色に基づいて決定する。なお、本実施形態に係る光音響装置は、当該決定を行うためのデータを保持していてもよい。例えば、皮膚の色ごとに、光の照射範囲および再構成範囲の組み合わせを定義したテーブルを参照するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、被検者の皮膚の色に基づいて撮影条件を決定したが、被検者の体表における色素の濃さに基づいて撮影条件を決定することができれば、必ずしも皮膚の色を取得する必要はない。
また、被検体の表層付近における吸収係数が取得できる場合、当該吸収係数から撮影条件を決定するようにしてもよい。
なお、本実施形態では三種類のモードを例示したが、光の照射範囲および再構成範囲の組み合わせは自由に設定してもよい。また、光の照射方法、光量、画像再構成の方法についても、自由に選択可能としてよい。例えば、光の照射範囲を包含する範囲に画像再構成範囲を設定することで、明視野再構成と暗視野再構成の両方の効果を得ることができる。
なお、再構成に係るパラメータは、光の照射に係るパラメータを決定したのちに決定することが好ましい。また、再構成に係るパラメータは、データ取得後に変更してもよい。
図5に戻って説明を続ける。
ステップS4では、ステップS3で設定した撮影条件に応じて、光学系の設定を行う。本ステップでは、例えば、光の照射範囲を制御するために使用する光学部材111を選択し、光路上に配置する。例えば、「光学部材111を抜去する」、「光を拡散させる光学部材111を配置する」、「光をリング状に照射する光学部材111を配置する」といった制御を行う。なお、光の照射範囲を適切に設定することができれば、光学部材111にはどのようなものを用いてもよい。
次に、ステップS5で、光音響測定を行う。本ステップでは、装置のユーザが、データ処理部109に対して、走査範囲、走査の中心位置、照射する波長などのパラメータを入力し、測定の指示を出す。
測定が開始されると、探触子ユニット120に接続された走査機構が、入力されたパラメータに従って探触子支持体101を所定の位置に移動させる。そして、光源103から光を照射し、これと同期して音響波探触子102が光音響波を受信する。
光の照射および音響波の受信は、被検体に対して探触子支持体101をスパイラル状に移動させながら複数の位置(例えば1024か所)で行われる。これにより取得された光音響信号は、信号処理部108が備えるメモリに一時的に格納される。
なお、二波長の光を出力できる光源を用いる場合、探触子ユニットを移動させながら、被検体への照射ごとに交互に波長を異ならせて照射するようにしてもよい。
次に、ステップS6で、光音響画像の再構成を行う。
データ処理部109によって再構成された画像は、表示装置110に表示される。表示される画像は、初期音圧画像、吸収係数画像、酸素飽和度画像などである。表示する断面の方向は、アキシャル、サジタル、コロナル方向の断面またはこれらの3断面とすることができる。また、複数の断層画像から最大値投影画像(MIP)を生成して表示してもよい。MIP画像により、血管や腫瘍へのつながりが分かりやすくなる。例えば、一枚の画像(厚さ0.125μm)では血管の一部しか視認できないが、MIPの厚みを深さ方向に20mmに設定することで、乳房の表面から20mm程度の範囲の血管を視認することができる。このため血管のネットワークを確認するのに便利である。なお、20mmでは多くの血管が入るが、MIPの厚みを深さ方向に3mm程度に設定すると、一本の血管の
走行を確認できるため便利である。
以上説明したように、本実施形態に係る光音響装置によると、被検者の皮膚の色に基づいて、光の照射範囲と再構成範囲を設定する。これにより、被検者ごとに、アーチファクトの発生を抑えた最適な条件で光音響画像を取得することができるようになる。
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係る光音響装置は、体表から比較的浅い範囲を観察するためのハンドヘルドタイプの光音響装置である。
図7(A)は、第二の実施形態に係る光音響装置の構成を説明する図である。本実施形態に係る光音響装置は、探触子ユニット701、信号処理部712、光源713、データ処理部714、表示装置715を有して構成される。
探触子ユニット701は、筐体に収納されたハンドヘルドタイプのユニットである。探触子ユニット701には、被検体への光の照射と音響波の受信を行うための光学部材703および音響波探触子702が収納されている。光学部材703および音響波探触子702は、探触子ユニット701に収納された走査機構704によって一体的に移動可能に構成される。
音響波探触子702は、音響フォーカス型の探触子であるという点において音響波探触子102と相違する。音響波探触子702は、音響レンズを有しており、所定の焦点(典型的には被検体の表層付近)から発生した音響波を効率よく受信することができる。音響波探触子702は、例えば、直径6mmで、中心周波数が50MHzとすることができる。探触子の先端には石英ガラスによる音響レンズが組みつけられ、その開口数は0.6である。
光学部材703は、光源から発生した光を被検体に照射するための部材であり、例えば光ファイバ等である。光学部材703は、音響波探触子702を中心にリング状に配置してもよい。
また、探触子ユニット701には、被検体観察部705が収納されている。被検体観察部705は、被検体観察部106と同様の、被検体の表面を光学的に観察する手段である。被検体観察部705は、図7(B)に示したように、音響波探触子702を走査機構704により退避させることによって、観察可能となる。探触子ユニット701と被検体は、保持部材706を介して接触する。保持部材706は、例えば可撓性を有する薄膜(メンブレン)である。保持部材706と音響波探触子702との間には、水などの音響整合材が貯留されていてもよい。
第二の実施形態では、音響波探触子702と光学部材703を、被検体に対して二次元に走査することで、三次元の光音響画像を取得する。撮影範囲は、例えば、平面内において10×10mmとすることができる。
光源713は、光源103と同様のパルス光を発生させる手段である。本実施形態では、光源713として、532nmと1064nmの波長を切り替えることができるYAGレーザを使用する。532nmは、血管を描出するのに好適な波長である。532nmは、生体における吸収が大きい波長であるが、本実施形態における光音響装置は、被検体表面から5mm程度までを測定の対象とするため、当該波長が利用できる。なお、1064nmの波長を用いることによって、血管とメラニンを識別することもできる。本実施形態では、パルス光を照射する周波数を200Hzとする。なお、不図示の角度調整機構によって光学部材703の角度を変更することで、光の照射範囲を変えることができる。例えば、音響波探触子702となす角度を小さくすれば、リング状の照明となり、中心部は暗
視野照明となる。一方、音響波探触子702となす角度を大きくすれば、中心部は明視野照明となる。
信号処理部712およびデータ処理部714は、信号処理部108およびデータ処理部109と同様であるため、詳細な説明は省略する。本実施形態では、音響波探触子702で取得した光音響信号が信号処理部712で増幅され、データ処理部714が有するデジタイザによって取得される。本実施形態における光音響装置の分解能は60μmである。
第二の実施形態においても、第一の実施形態と同様に、光音響測定を開始する前に、被検体観察部705によって被検者の皮膚の色を取得し、取得した色に基づいて、光の照射範囲と再構成範囲を設定する。例えば、明視野再構成を行うか、暗視野再構成を行うかを判断し、光の照射範囲と画像の再構成範囲をそれぞれ決定する。
このように、本発明は、ハンドヘルド型の探触子を有する光音響装置に適用することもできる。
(第三の実施形態)
第一ないし第二の実施形態では、被検者の皮膚の色に基づいて撮影条件を決定した。しかし、この決定を行うためには、皮膚の色に応じた撮影条件(すなわち、被検体表層における吸収係数に応じた条件)を事前に決定しておく必要がある。第三の実施形態は、このためのデータを、ファントムを用いて取得する実施形態である。第三の実施形態に係る光音響装置の構成は、第一または第二の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態では、ノイズを評価するファントムと、信号を評価するファントムの二種類を用いて光音響測定を行う。図8に、それぞれの評価系と、発生する光音響波の強度を示す。
図8(A)はノイズ評価系である。ノイズ評価系では、薄膜の吸収体801と音響波の散乱体802からなるファントムによって、体表に起因して発生するノイズを模擬する。薄膜の吸収体801は、アーチファクトを発生させるためのものである。薄膜の吸収体801で発生した光音響波は、音響波の散乱体802によって多重散乱し、深部におけるノイズとなる。
本実施形態では、薄膜の吸収体801としてシリコンゴムを使用する。シリコンゴムの厚みは、例えば、体表の厚みに相当する100−200μmとすることができる。吸収体としてカーボンブラックなどを使用する。吸収係数は、体表の吸収係数に合わせてカーボンブラックの濃度を変えることによって1〜8(1/mm)に調節する。この吸収係数は、分光器を用いて計測できる。なお、シリコンゴム内の音速は1480m/sとする。
一方、音響波の散乱体802として、ポリブタジェンポリオールを希釈し、これに硬化剤としてのジフェニルメタンジイソシアネートを反応させて得たウレタン樹脂を使用する。このウレタン樹脂に有機体フィラーを添加して、音響波の反射および散乱が均一になるようにする。なお、有機粉体フィラーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル、ビニルアルコール共重合体等の粉体を利用することができる。なお、音速は1450m/s、減衰率は0.5dB/cmMHzとする。
図8(B)は、Z軸に対するノイズレベルを示したグラフである。表面付近で信号が最大となり、後方に、アーチファクトや音響散乱によるノイズが形成される。
図8(C)は光音響信号の評価系である。信号評価系では、血管に相当するナイロンワ
イヤ804を光の散乱体805の中に配置したファントムを用いる。ナイロンワイヤ804は、色材によって吸収係数が血管相当となるよう調整されたものである。直径はφ50、100、300μmで、保持部材107から所望の深さに配置する。光の散乱体805として、例えば、水や静脈の栄養管理に用いる脂肪乳剤(ダイズ油を含有する液体)を薄めたものが利用できる。これにより、生体内における光の拡散を再現することができる。なお、音速は1500m/sとする。
図3(D)は、Z軸における光音響波の信号強度である。ナイロンワイヤ804の存在する近傍にのみ信号が存在する。
第三の実施形態では、これらの評価系を用いて、信号とノイズの比が最大になるように、吸収係数ごとの光の照射範囲および再構成範囲の組み合わせを決定する。すなわち、薄膜の吸収体801の種類ごとに、光の照射範囲および再構成範囲を変更しながら測定を行い、最も良好なS/N比が得られるパターンを特定する。これにより、体表の吸収係数(皮膚の色)に応じた最適な撮影条件を得ることができる。
光音響装置の製造過程において、上述したようなファントムを用いて、被検体の表面近傍の光吸収係数に対して好適な光の照射範囲および再構成範囲の組み合わせを設定することができる。この組み合わせを反映したデータを光音響装置の持つ記憶部に格納しておくことで、被検体の測定を行う際に、記憶部に保存されたデータを参照し、その被検体に適した光照射範囲及び再構成範囲の組み合わせをデータ処理部109が採用することができる。記憶部に保存されるデータは、被検体の外観の色情報と撮影条件の対応を示すテーブルであってもよいし、先述の撮影モードとの対応を示すテーブルであってもよい。また、記憶部は、データ処理部109の一部を構成するメモリとして実現されてもよい。このメモリは、光音響装置の出荷後は変更されないROMとして実現されてもよいし、出荷後もデータを更新可能な種類の記録媒体として実現されてもよい。
(変形例)
なお、実施形態の説明は本発明を説明する上での例示であり、本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更または組み合わせて実施することができる。
例えば、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む光音響装置として実施することもできる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む被検体情報取得方法として実施することもできる。上記処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
また、実施形態の説明では、画像を表示する手段として表示装置110を例示したが、操作用のインタフェースを提供する表示装置と、光音響画像を提供する表示装置が分かれていてもよい。
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した各実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、FPGAやASIC)によっても実現可能である。
103:光源、106:被検体観察部、108:信号処理部、109:データ処理部

Claims (14)

  1. 被検体に光を照射する光照射手段と、
    前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得手段と、
    前記光音響信号に基づいて画像の再構成を行う再構成手段と、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報を取得する特性取得手段と、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報に基づいて、前記光の照射範囲および前記再構成の範囲を決定する制御手段と、を有する
    ことを特徴とする、光音響装置。
  2. 前記被検体は生体であり、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報は、前記被検体の肌の色に関する情報である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の光音響装置。
  3. 前記制御手段は、前記被検体表層の光学特性に関する情報が第一の条件を満たす場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲が重ならないよう制御を行う
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光音響装置。
  4. 前記制御手段は、前記被検体表層の光学特性に関する情報が第一の条件を満たす場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲が重ならないよう制御を行い、かつ、当該情報が第一の条件を満たさない場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲の少なくとも一部が重なるよう制御を行う
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光音響装置。
  5. 前記制御手段は、前記被検体表層における光吸収係数が所定の値よりも大きい場合に、前記被検体表層の光学特性に関する情報が前記第一の条件を満たすと判断する、
    ことを特徴とする、請求項3または4に記載の光音響装置。
  6. 前記被検体は生体であり、
    前記制御手段は、前記被検体表面における明度が所定の値よりも低い場合に、前記被検体表層の光学特性に関する情報が前記第一の条件を満たすと判断する、
    ことを特徴とする、請求項3または4に記載の光音響装置。
  7. 被検体に光を照射する光照射手段を有する光音響装置が行う被検体情報取得方法であって、
    前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得ステップと、
    前記光音響信号に基づいて画像の再構成を行う再構成ステップと、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報を取得する特性取得ステップと、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報に基づいて、前記光の照射範囲および前記再構成の範囲を決定する制御ステップと、を含む
    ことを特徴とする、被検体情報取得方法。
  8. 前記被検体は生体であり、
    前記被検体表層の光学特性に関する情報は、前記被検体の肌の色に関する情報である
    ことを特徴とする、請求項7に記載の被検体情報取得方法。
  9. 前記制御ステップでは、前記被検体表層の光学特性に関する情報が第一の条件を満たす場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲が重ならないよう制御を行う
    ことを特徴とする、請求項7または8に記載の被検体情報取得方法。
  10. 前記制御ステップでは、前記被検体表層の光学特性に関する情報が第一の条件を満たす場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲が重ならないよう制御を行い、かつ、当該情報が第一の条件を満たさない場合に、前記光の照射範囲と前記再構成の範囲の少なくとも一部が重なるよう制御を行う
    ことを特徴とする、請求項7または8に記載の被検体情報取得方法。
  11. 前記制御ステップでは、前記被検体表層における光吸収係数が所定の値よりも大きい場合に、前記被検体表層の光学特性に関する情報が前記第一の条件を満たすと判断する、
    ことを特徴とする、請求項9または10に記載の被検体情報取得方法。
  12. 前記被検体は生体であり、
    前記制御ステップでは、前記被検体表面における明度が所定の値よりも低い場合に、前記被検体表層の光学特性に関する情報が前記第一の条件を満たすと判断する、
    ことを特徴とする、請求項9または10に記載の被検体情報取得方法。
  13. 生体である被検体に光を照射する光照射手段と、
    前記光が照射された前記被検体から発生した音響波に基づいた光音響信号を取得する信号取得手段と、
    前記光音響信号に基づいて画像の再構成を行う再構成手段と、を有し、
    前記光の照射条件および前記再構成の条件を、前記被検体の体表の色に基づいて決定する
    ことを特徴とする、光音響装置。
  14. 前記光の照射条件および前記再構成の条件が記憶された記憶部をさらに有し、
    前記記憶部を参照することで、前記光の照射条件および前記再構成の条件を決定する
    ことを特徴とする、請求項13に記載の光音響装置。
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