JP2019154290A - インクジェット印刷方法、インクジェット印刷装置 - Google Patents

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悠太 塩川
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Abstract

【課題】可食フィルムへの印刷方法、および印刷装置の提供を目的とする。【解決手段】食品の表面に貼り付けられることで食品を加飾する可食フィルムへの印刷方法であって、可食フィルムの表面にインクジェット印刷により可食インクを印刷するインクジェット印刷はマルチパス方式を用いるとともに、可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されることを特徴とする印刷方法。【選択図】図1

Description

本発明は、食品に加飾する加飾フィルムへ印刷を施すインクジェット印刷方法、インクジェット印刷装置に関する。
従来、食品に修飾を施す加飾方法として、食品の表面に対して直接印刷する方法が用いられている。印刷の方法としては、可食インクを用いたスクリーン印刷、静電スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷などが知られている(特許文献1参照)。
また澱粉や寒天等で製造された可食シート等を用意して、可食インクで印刷をおこなった上で、水やクリームなどで可食シートを食品の表面に定着させる手法もおこなわれている。
特許第3938137号公報
しかしこれらの手法のうち、スクリーン印刷は、接触型の印刷方法であるため、加飾される面が平面であることが必要であり、凹凸のある食品には適さない。また静電スクリーン印刷とインクジェット印刷は非接触の印刷方法ではあるが、加飾可能な面の凹凸は数mmが限界である。またパッド印刷はシリコーンゴムの版を用いた転写印刷であるため、緩やかな曲面の印刷は可能だが、例えば棒状の食品への加飾は難しい。
食品に直接印刷をして加飾をする場合、例えばクッキーのように多孔質の食材については、個々のクッキーで出来にばらつきがあるため、インクの浸み方にも差が出て印刷結果にもばらつきが生じてしまうという欠点がある。
また印刷が施された可食シートを水で、完成した食品表面に貼り付ける手法は、シートと食品が一体になり難いので、食品表面が乾燥すると、可食シートが食品表面から剥がれ易くなるという課題がある。クリームなどの可食性の定着剤を使用する場合には、加飾をしない場所にも定着剤が塗布されてしまい、見栄えが悪くなる。また定着剤自体の厚みが100μm以上になるため、食品本来の食感を変化させてしまい易いという問題点もある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、表面に凹凸のある立体的形状を持つ食品に対しても加飾可能で脱離しにくい可食フィルムへの印刷方法、および印刷装置の提供を目的とする。
本発明では、可食フィルムに対して色滲みや破れ、歪みのない印刷をおこなうためのインクジェット印刷について、マルチパス方式の印刷を用いるとともに、単位面積あたりのインク総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量を決定する。そして調理中の食品表面に、上記の方法によるインクジェット印刷を施した可食フィルムを貼り付けて、焼成、冷却等の温度変化を加えることで可食フィルムと食品の接着と一体化を促し、食品への加飾を確実におこなう。
なお本明細書では、可食シートのうち、厚みが100μm以下のものを可食フィルムと呼ぶことにする。
(1)本発明は、食品の表面に貼り付けられることで前記食品を加飾する可食フィルムへのインクジェット印刷方法であって、前記可食フィルムの表面に可食インクを印刷する前記インクジェット印刷は、マルチパス方式を用いるとともに、前記可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されることを特徴とするインクジェット印刷方法を提供する。
通常の印刷媒体についての印刷においては、インクが一旦乾燥すれば重ねて印刷する際に問題が生じることはない。また一般的には印刷コントラストを向上させるためには、単位面積当たりの総塗布量が大きい方が好ましい。しかし食品に加飾を行う際に用いられる可食フィルムの場合、形状の歪みを生じないで含みうるインク量に限界があるため、単位面積あたりの総塗布量に上限がある。また解像度を上げようとすると、単位時間あたりの吐出量は減少するが、ドット間の距離が近接するようになるため色滲みと印刷媒体の破れの問題が生じる。
上記(1)に記載の発明によれば、インクジェット印刷でマルチパス方式を用いることにより、高い解像度の場合でも単位時間あたりの吐出量を減少させることが可能になるため、色滲みと印刷媒体の破れが生じ難い。また可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されるので、可食フィルムへの印刷において形状の歪みを生じ難いという優れた効果を奏する。
なお本明細書において、単位面積当たりの総塗布量というのは、あくまでも印字されている部分の面積だけを対象にした単位面積当たりの総塗布量を意味し、印字されていない部分の面積は計算対象に入れない。
(2)本発明は、前記上限値が、前記可食フィルムの種類ごとに予め設定されていることを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット印刷方法を提供する。
可食フィルムは、その材料や厚みにより単位面積あたりの総塗布量の上限値が異なる。上記(2)に記載の発明によれば、可食フィルムの種類ごとに、単位面積あたりのインク総塗布量の上限値が、予め設定されているので、印刷に際して色滲み、破れ、可食フィルム自体の形状の歪みが生じにくいという優れた効果を奏する。
(3)本発明は、前記可食フィルムは、水溶性であることを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載のインクジェット印刷方法を提供する。
上記(3)に記載の発明によれば、可食フィルムが水溶性なので調理途上の食品の表面に存在する水分と反応して溶けることで定着し、その後に温度変化を加えることでフィルムと食品が接着し一体化し易いという優れた効果を奏する。
(4)本発明は、前記可食インクは、水性インクであることを特徴とする上記()乃至上記(3)のうちのいずれかに記載のインクジェット印刷方法を提供する。
可食フィルムは、澱粉、寒天など水溶性の材料を用いることが多い。したがって可食インクとして水性のインクを使用すると、溶解によって歪みや破れの問題が生じてしまう可能性が高い。これを防止するためには水溶性の可食フィルムに対しては油性の可食インクを使用することが好ましいように考えられる。しかし水溶性の可食フィルムには油性の可食インクを使用して印刷をおこなうと、鮮明な印刷結果が得られない場合があり得る。上記(4)に記載の発明によれば、加飾のための印刷用インクが水性の可食インクなので、可食フィルムに浸透し易くすることで鮮明な印刷が可能になるという優れた効果を奏する。
(5)本発明は、食品の表面に貼り付けられることで前記食品を加飾する可食フィルムへ可食インクによって印刷を施すインクジェット印刷装置であって、前記可食フィルムが歪まないように、前記可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値が予め設定されていることを特徴とするインクジェット印刷装置を提供する。
食品に加飾を行う際に用いられる可食フィルムの場合、形状の歪みを生じないで含みうるインク量に限界があるため、単位面積あたりの総塗布量に上限がある。上記(5)に記載の発明によれば、可食インクについての単位時間あたりの総塗布量の上限が決定されるので、可食フィルムへの印刷において形状の歪みを生じ難いという優れた効果を奏する。
(6)本発明は、前記上限値が、前記可食フィルムの種類ごとに設定されていることを特徴とする上記(5)に記載のインクジェット印刷装置を提供する。
可食フィルムは、その材料や厚みにより単位面積あたりの総塗布量の上限値が異なる。
上記(6)に記載の発明によれば、前記可食フィルムの種類ごとに、単位面積あたりのインク総塗布量の上限値が、予め設定されているので、印刷に際して色滲み、破れ、可食フィルム自体の形状の歪みが生じにくいという優れた効果を奏する。
なお上記(1)〜(4)のインクジェット印刷方法の発明は、印刷物の製造方法の発明と考えることもできる。
本発明の請求項1〜6記載のインクジェット印刷方法、及び、インクジェット印刷装置によれば、可食フィルムへの印刷において、インクジェット印刷でマルチパス方式を用いることにより、高い解像度の場合でも単位時間あたりの吐出量は減少させることが可能になるため、色滲みと印刷媒体の破れが生じ難い。また単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定することで、可食フィルムへのインクジェット印刷において形状の歪みを生じ難いという優れた効果を奏する。
本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法のフローチャートである。 (A)可食フィルムを加飾に適用したクッキーの全体像である。(B)クッキーにおける加飾部分の拡大図である。 (A)可食フィルムを加飾に適用した春巻きの全体像である。(B)春巻きにおける加飾部分の拡大図である。 300x300dpiで印刷した場合における可食フィルムの態様のインク塗布量依存性を示す実験結果である。 600x600dpiで印刷した場合における可食フィルムの態様のインク塗布量依存性を示す実験結果である。 可食フィルム(オブラート)の破れ、歪み、滲みについての単位時間あたりの吐出量依存性を示す実験結果である。 (A)可食フィルムの非印刷部分を切り離すためのカット線の説明図である。(B)破線状のカット線を作成するための回転刃の説明図である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図7は発明を実施する形態の一例である。
インクジェット印刷方法において用いられる印刷装置は、水性の可食インクを吐出可能なインクジェット印刷装置が望ましい。まず食品加工者は、水溶性の可食フィルムに対してインクジェット印刷装置により可食インクを吐出して、加飾データを印刷する。次に印刷された可食フィルムを食品の表面に載置する。そしてその後、食品に温度変化を施して、食品と可食フィルムを接着、一体化する。以上の工程を経て、印刷された可食フィルムは、食品の表面に定着される。
なお食品に温度変化を施すとは、具体的には食品の調理中に、食品を加熱または冷却することをいう。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法のフローチャートである。まず形状に歪み(波うち、コックリング)が生じ難い、インクについての単位面積あたりの最大総塗布量を設定する(ステップS1)。次にパス数等を設定する(ステップS2)。そして色滲みや破れが生じない、単位時間あたりの吐出量を設定する(ステップS3)。なお以上のステップS1〜ステップS3は、その順序を変えても良く、またそれぞれの設定値については、予めインクジェット印刷装置の記憶部等に記憶され、各印刷の際に適用されても良い。
具体的にインクジェット印刷方法は、食品の表面に貼り付けられることで食品を加飾する可食フィルムへの印刷方法であって、マルチパス方式を用いるとともに、可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されることを特徴とする。そして単位面積あたりの総塗布量の上限値は、可食フィルムの種類ごとに予め設定されている。
可食フィルムの材質としては澱粉(オブラート)、寒天など様々な種類が考えられ、それぞれについて単位面積あたりの総塗布量の上限値等の条件が異なるからである。
なお可食フィルムは水溶性であることが好ましい。可食フィルムの平均厚みは、例えば10〜100μm、好ましくは25〜50μm程度である。
また可食インクは水性インクであることが好ましい。
可食フィルムへの印刷は、インクジェット印刷以外の印刷方法、たとえばスクリーン印刷であってもよい。しかし、後述するように水溶性の可食フィルムに対して、水性の可食インクで印刷をする場合には、インクでフィルムが溶解してしまう可能性が高い。そのため単位面積あたりのインク塗布量を精密に調節しやすいインクジェット印刷が好ましい。
またインクジェット印刷装置であれば、フルカラーの印刷も可能であり、クリアインクを用いて金粉などで食品の加飾をすることもできるという長所を有する。
図2(A)は、可食フィルムを加飾に適用したクッキーの全体像である。可食フィルムは平均厚みが80μm以下、具体的には平均厚みが25μmのオブラートを使用した。また印刷装置としては、例えば株式会社ミマキエンジニアリング社製インクジェット印刷装置JV400Lx−130を用い、水性可食インクとしては、食用色素を可食溶剤と水からなる溶媒に溶かして調整したものを使用する。インクジェット印刷装置の構成は従来公知技術なので詳細な説明を省略する。
まず水溶性の可食フィルムであるオブラートに印刷を施し、印字部分のみを切り離した。次にクッキーの生地の表面に印字されたオブラートを貼り付けた。そして、生地表面の水分等がオブラートになじんだところで、内部の温度を180℃に調整したオーブンで7分間焼成して、可食フィルムとクッキーを接着し一体化させた。非印刷部分も含めて不自然なテカリなどがなく、鮮明に加飾データが再現されていることがわかる
図2(B)は、クッキーにおける加飾部分の拡大図である。印字部分Sからわかるように、焼成されたクッキーに対して直接可食インクで印刷した場合と比較すると、文字が鮮明になり発色も良くなった。作成後5日間常温で保存しても、可食フィルムがクッキーから剥離することはなかった。
図3(A)は、可食フィルムを加飾に適用した春巻きの全体像である。春巻きは全体として筒状であり、表面には凹凸が存在する。図2のクッキーへの加飾時と同様に、まずオブラートに加飾データを印刷し、印字された部分を切り離す。次に揚げる前の生地の段階の春巻きの皮表面にオブラートを載置した。そして生地表面の水分等がオブラートになじんだところで、150〜160℃に熱した油の中に春巻きを投入して、春巻きの皮が少し茶色に変色する程度まで揚げた。
図3(B)は、春巻きにおける加飾部分の拡大図である。凹凸のある立体形状をもつ春巻きの表面にも鮮明に加飾されていることがわかる。このような加飾は直接食品に印刷をする方法、例えばスクリーン印刷等では困難である。
図4は、300x300dpiで印刷した場合における可食フィルムの態様のインク塗布量依存性を示す実験結果である。印刷方向は双方向であり4Passの印刷、すなわち1箇所につき4回に分けて印字をおこなった。左欄は、BK(Black)、C(Cyan)、Y(Yellow),M(Magenta)の一次色のインクを印字濃度10%から100%まで変化させた実験結果である。右欄は二次色、すなわち左から緑色(YとCを混色させる)、赤色(MとYを混色させる)、青色(CとMを混色させる)と、3次色(C、Y、Mを混色させる)の実験結果である。すなわち単位面積あたりのインクの塗布量としては、二次色10では一次色の2倍となり、インクの印字濃度は20%から200%まで変化させたことになる。三次色20でも同様に、単位面積あたりのインクの塗布量としては、一次色の3倍となり、インクの印字濃度は30%から300%まで変化させたことになる。
300x300dpiで印刷したときは、いずれの場合もインクの裏写り、色滲み、歪みはなく、オブラートが溶解して印刷台に固着して破れるという事象も生じなかった。したがって300x300dpiという条件では、印字濃度の最大値は300%以上であることがわかった。ここで吐出量やインクの比重などから、平均厚み25μmのオブラートが色滲み、歪み、溶解無く印刷できる最大のインクの吐出量は、9.3〜9.7mL/mと計算された。
図5は、600x600dpiと高細密で印刷した場合における可食フィルムの態様のインク塗布量依存性を示す実験結果である。印刷方向は双方向である。左欄は、BK(Black)、C(Cyan)、Y(Yellow),M(Magenta)の一次色のインクを印字濃度10%から100%まで変化させた実験結果である。右欄左4列は二次色30、すなわち左から緑色(YとCを混色させる)、赤色(MとYを混色させる)、青色(CとMを混色させる)と、3次色40(C、Y、Mを混色させる)の実験結果である。右欄右4列は、参考のため8パス印刷結果50、すなわち1箇所につき8回に分けて印字をおこなった。4列のうち左3列が二次色、一番右の列が三次色の結果である。8パスの印刷は4Passに比べて、インク塗布量は同じでも多数回に分けて印字をおこなうため、インクを乾燥させる時間が多く取れるが、印刷時間がその分だけ余計にかかるという欠点をもつ。
600x600dpiで4パスの印刷した場合には、印字濃度80%で裏写りがおこり、印字濃度120%以上で色滲み、歪みが生じる。また印字濃度160%以上ではオブラートが溶解して印刷台に固着して破れるという事象が生じている。したがって600x600dpiという条件では、印字濃度の最大値は80%であることがわかった。ここで吐出量やインクの比重などから、平均厚み25μmのオブラートに対して色滲み、歪み、溶解無く印刷できる最大のインクの吐出量は、10.0〜10.3mL/mと計算された。
したがって実験結果から、可食フィルムであるオブラートの平均厚みが25μmの場合、インクジェット印刷において、可食インクの塗布量が10mL/m以下になるように印刷を行うことが好ましいことがわかった。
図6は、可食フィルム、具体的にはオブラートの破れ、歪み、滲みについての単位時間あたりの吐出量依存性を示す実験結果である。縦軸が単位面積あたりのインクの総吐出量(塗布量)、横軸は単位時間あたりの(単位面積への)吐出量である。斜線部は、良好な印刷結果が得られた条件を示す。
具体的には単位時間あたりの吐出量を固定して、単位面積あたりの総吐出量を増加させていったときに、破れ、歪み、滲みといった印刷上の不具合が生じない、単位面積あたりの最大総吐出量を示したものである。破れ、滲みという現象については、単位時間あたりの吐出量が多くなると、許容される最大の単位面積あたりの総吐出量が減少する傾向にある。逆に言えば、総吐出量が大きい場合に、破れ、滲みだけを回避するためには、単位時間あたりの吐出量を下げれば良い、具体的には、パス数を大きくすれば良い。
しかし歪み、すなわち、印刷部分に皺が生じて波うってしまう現象を生じさせないためには、単位面積あたりの吐出量が所定の量、この場合には10mL/mを上限とすることが必要であることがわかる。具体的には、オブラートのような水溶性フィルムに、水性の可食インクで印刷する場合には、良い印刷状態を実現するためには、単位面積毎のインクの総塗布量が所定量以下であることが必要ということである。
言い換えれば、水溶性の可食フィルムに水性インクで印刷する場合には、パス数を増やして、単位時間あたりの吐出量を減らし、合間の乾燥時間を取ったとしても、印刷結果が必ずしもすべて良くなるわけではないということである。この点が、印刷媒体を紙とする通常の印刷と大きく異なる点である。これは過度の乾燥状態になるとオブラートの強度が落ちてしまうことに起因すると考えられる。
通常の印刷媒体についての印刷においては、インクが一旦乾燥すれば重ねて印刷する際に問題が生じることはない。また一般的には印刷コントラストを向上させるためには、単位面積当たりの総塗布量が大きい方が好ましい。しかし食品に加飾を行う際に用いられる可食フィルムの場合、形状の歪みを生じないで含みうるインク量に限界があるため、単位面積あたりの総塗布量に上限がある。また解像度を上げようとすると、単位時間あたりの吐出量は減少するが、ドット間の距離が近接するようになるため色滲みと印刷媒体の破れの問題が生じる。
本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法によれば、インクジェット印刷でマルチパス方式を用いることにより、高い解像度の場合でも単位時間あたりの吐出量を減少させることが可能になるため、色滲みと印刷媒体の破れが生じ難い。また可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されるので、可食フィルムへの印刷において形状の歪みを生じ難いという優れた効果を奏する。
可食フィルムは、その材料や厚みにより単位面積あたりの総塗布量の上限値が異なる。
本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法によれば、可食フィルムの種類ごとに、単位面積あたりのインク総塗布量の上限値が、予め設定されているので、印刷に際して色滲み、破れ、可食フィルム自体の形状の歪みが生じにくいという優れた効果を奏する。
本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法によれば、可食フィルムが水溶性なので調理途上の食品の表面に存在する水分と反応して溶けることで定着し、その後に温度変化を加えることでフィルムと食品が接着し一体化し易いという優れた効果を奏する。
可食フィルムは、澱粉、寒天など水溶性の材料を用いることが多い。したがって可食インクとして水性のインクを使用すると、溶解によって歪みや破れの問題が生じてしまう可能性が高い。これを防止するためには水溶性の可食フィルムに対しては油性の可食インクを使用することが好ましいように考えられる。しかし水溶性の可食フィルムには油性の可食インクを使用して印刷をおこなうと、鮮明な印刷結果が得られない場合があり得る。本発明の実施形態に係るインクジェット印刷方法によれば、加飾のための印刷用インクが水性の可食インクなので、可食フィルムに浸透し易くすることで鮮明な印刷が可能になるという優れた効果を奏する。
図7(A)は、可食フィルムの非印刷部分を切り離すためのカット線Cの説明図である。具体的には、可食フィルムにおける非印刷部分を切り離すためのカット線Cが破線である。カッティングプロッタにより印刷を行った画像の外周に沿って破線状にカット線を形成する。
図7(B)は、破線状のカット線を作成するための回転刃60の説明図である。印刷部分の外周に沿って回転刃60を回転させれば、破線状のカット線が形成される。
もちろん、通常の刃を上下させることで破線状のカット線を形成しても良い。
厚みの薄い加飾フィルムは、印刷後に印刷部分だけをハサミなどで切り離すことは手間がかかる。また最初から切り離して保存しておくと、湿気を吸って丸まってしまうなど取り扱いが難しい。本発明の実施形態に係る食品加飾方法によれば、非印刷部分を容易に切り離せるように破線のカット線が予め設けられているので、保存しやすく、切り離しも容易であるという優れた効果を奏する。
尚、本発明に係る印刷方法で印刷された可食フィルムによる食品加飾方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えばチョコレートの表面に加飾をしたい場合に、熱を加えて溶解させたチョコレートの表面に、加飾データを印刷した可食フィルムを載置した後、温度変化、具体的には冷却して可食フィルムとチョコレートを接着し一体化させることも考えられる。
他の変形実施例としては、水溶性可食フィルムを食品の表面に載置する直前に、霧吹き等で食品表面を水等で湿らせることが考えられる。水溶性可食フィルムが食品に接着しやすくなり、接着工程でより強く接着し得る。
なお上記では、インクジェット印刷をおこなった可食フィルムを食品表面に載置する載置工程の後、可食フィルムが載置された食品を温度変化させることで、可食フィルムと食品を接着する接着工程をおこなうが、工程の順番はこれに限らない。すなわち食品の温度変化をさせた後に、載置工程を設け、さらに温度変化を施す方法もあり得る。例えば鶏モモ肉を油で揚げて唐揚げを作る場合に、最初低温、例えば160℃で揚げた後に一旦取り出し、少し冷ました後で食品表面に可食フィルムを載置し、再度高温の油,例えば190℃で揚げるという二度揚げをおこなうことも考えられる。このような工程にすることで、載置工程の前に食品の表面に水分と油分が浮き出し、接着工程において可食フィルムがより強く接着し得る。
10 二次色
20 三次色
30 二次色
40 三次色
50 8パス印字結果
60 回転刃
S 印刷部分

Claims (7)

  1. 食品の表面に貼り付けられることで前記食品を加飾する可食フィルムへの印刷方法であって、
    前記可食フィルムの表面にインクジェット印刷により可食インクを印刷する前記インクジェット印刷は、マルチパス方式を用いるとともに、前記可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の上限値と、パス数とを考慮して、単位時間あたりの吐出量が決定されることを特徴とする印刷方法。
  2. 前記可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の前記上限値は、前記可食フィルムが歪まないように予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
  3. 前記上限値が、前記可食フィルムの種類ごとに予め設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷方法。
  4. 前記可食フィルムは、水溶性であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の印刷方法。
  5. 前記可食インクは、水性インクであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の印刷方法。
  6. 食品の表面に貼り付けられることで前記食品を加飾する可食フィルムへ可食インクによって印刷を施すインクジェット印刷装置であって、
    前記可食フィルムが歪まないように、前記可食インクについての単位面積あたりの総塗布量の前記上限値が予め設定されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
  7. 前記上限値が、前記可食フィルムの種類ごとに設定されていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
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