JP2019153769A - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents

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和海 犬伏
Kazumi Inubushi
和海 犬伏
勝之 中田
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勝之 中田
哲也 植村
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哲也 植村
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【課題】磁気抵抗層の強磁性層としてMnを含むホイスラー合金を用いた磁気抵抗効果素子であって、磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子を提供する。【解決手段】本発明に係る磁気抵抗効果素子は、磁化自由層として機能する第一の強磁性層と、磁化固定層として機能する第二の強磁性層と、第一の強磁性層と第二の強磁性層との間に設けられた非磁性スペーサ層と、を備え、第一の強磁性層及び第二の強磁性層の少なくとも一つは、式(1)で表されるホイスラー合金を含む、磁気抵抗効果素子。X2MnαZβ…(1)式中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2である。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子に関する。
磁気抵抗効果素子は、磁気センサーといった磁気デバイスへの適用が期待されている。非特許文献1に記載の磁気抵抗効果素子は、第1のハーフメタル強磁性体層、第2のハーフメタル強磁性体層、及び第1のハーフメタル強磁性体層と第2のハーフメタル強磁性体層との間に挟まれた非磁性金属体層(非磁性スペーサ層)を有する。これらの3つの層が、磁気抵抗層を構成する。
非特許文献1に記載の磁気抵抗効果素子においては、第1のハーフメタル強磁性体層及び第2のハーフメタル強磁性体層のうち少なくとも一方が、ホイスラー合金(CoMnSi)からなっており、非磁性スペーサ層は、Agからなっている。また、ホイスラー合金に含まれるCo、Mn及びSiは、化学量論相当(Co:Mn:Si=50.4:25.0:24.6(=2:0.99:0.98))の組成を有している。磁気抵抗効果素子の作製時には、ホイスラー合金の結晶を規則化するための熱処理(アニール処理)が行われるので、ホイスラー合金のMnが非磁性スペーサ層に拡散することがある。非磁性スペーサ層にMnが拡散すると、磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果が低減するという問題が生じる。ホイスラー合金に含まれるMnの非磁性スペーサ層への拡散を抑制することが望まれる。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、磁気抵抗層の強磁性層としてMnを含むホイスラー合金を用いた磁気抵抗効果素子であって、磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子は、磁化自由層として機能する第一の強磁性層と、磁化固定層として機能する第二の強磁性層と、第一の強磁性層と第二の強磁性層との間に設けられた非磁性スペーサ層と、を備え、第一の強磁性層及び第二の強磁性層の少なくとも一つは、式(1)で表されるホイスラー合金を含む。
Mnαβ …(1)
式(1)中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2である。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金XMnαβにおいて、α+β<2であり、XMnαβに占めるMnとZとの合計の割合が1/2より小さくなっているので、ホイスラー合金XMnαβは、余剰なMnを有し難い。従って、Mnが正しくMnサイトに入り易い一方で、Mnが余剰に含まれ難いので、XがMnサイトに入ってXMnアンチサイトを形成し易く、Mnが非磁性スペーサ層に拡散することが抑制される。また、ホイスラー合金XMnαβにおいて、2/3<α+βであり、ホイスラー合金XMnαβに占めるMnとZとの合計の割合が1/4より大きくなっている。そのため、ホイスラー合金XMnαβの組成が化学量論相当の組成から大きくずれていないので、スピン分極率が増加し易くなる。磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子が提供される。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(1)において、更に、β<(2+α)/3であってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金XMnαβに占めるZの割合が1/4より小さいので、Mnが、Zサイトに入ってMnアンチサイトを形成し易い。Mnの移動がホイスラー合金XMnαβ層の結晶構造内に更に留まり易いので、Mnがホイスラー合金層以外に拡散することが更に抑制される。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(1)において、更に、β>αであってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、β>αが満たされており、MnがZよりも少ないので、Mnの非磁性スペーサ層への移動が更に抑制される。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(1)において、ZはSiであってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金がSiを含むときにはキュリー温度が高くなるので、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、磁化自由層としての第三の強磁性層及び磁化固定層としての第四の強磁性層の少なくとも一つを更に備え、第三の強磁性層及び第四の強磁性層は、式(2)で表されるホイスラー合金を含み、第一の強磁性層は、第三の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられ、第二の強磁性層は、第四の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられてもよい。
Mnδθ …(2)
式(2)中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2<δ+θ<2.6である。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金DMnδθにおいて、2<δ+θ<2.6であるときには、DMnアンチサイト及びDアンチサイトといったアンチサイトの形成に伴うスピン分極率への影響が減少して、第三の強磁性層及び第四の強磁性層がハーフメタル特性を維持し易くなる。そのため、第三の強磁性層は、第一の強磁性層と共に磁化自由層として機能し、磁化自由層のスピン分極率が増大する。また、第四の強磁性層は、第二の強磁性層と共に磁化固定層として機能し、磁化固定層のスピン分極率が増大する。一方、ホイスラー合金DMnδθにおいて、2<δ+θ<2.6なので、第三の強磁性層及び第四の強磁性層は、余剰なMnを有する。この磁気抵抗効果素子では、第三の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられた第一の強磁性層が、第三の強磁性層から非磁性スペーサ層へのMnの移動を抑制できる。また、第四の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられた第二の強磁性層が、第四の強磁性層から非磁性スペーサ層へのMnの移動を抑制できる。
本発明の他の一態様に係る磁気抵抗効果素子は、磁化自由層として機能する第一の強磁性層と、磁化固定層として機能する第二の強磁性層と、第一の強磁性層と第二の強磁性層との間に設けられた非磁性スペーサ層と、を備え、第一の強磁性層及び第二の強磁性層の少なくとも一つは、式(3)で表されるホイスラー合金を含む。
(Mnεηαβ …(3)
式(3)中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表し、GがFeを含むとき、XはFeを含まず、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2であり、0<ε<1及び0<η<1である。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金X(Mnεηαβにおいて、α+β<2、及び0<ε<1であり、X(Mnεηαβに占めるMnとZとの合計の割合が1/2より小さくなっているので、ホイスラー合金X(Mnεηαβは、余剰なMnを有し難い。従って、Mnが正しくMnサイトに入り易い一方で、Mnが余剰に含まれ難いので、XがMnサイトに入ってXMnアンチサイトを形成し易く、Mnが非磁性スペーサ層に拡散することが抑制される。また、ホイスラー合金X(Mnεηαβにおいて、2/3<α+βであり、ホイスラー合金X(Mnεηαβに占めるMn及びGとZとの合計の割合が1/4より大きくなることができる。そのため、ホイスラー合金X(Mnεηαβの組成が化学量論相当の組成から大きくずれなくなるようにできるので、スピン分極率が増加し易くなる。磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子が提供される。
本発明の他の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(3)において、更に、β<(2+α)/3であってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金X(Mnεηαβに占めるZの割合が1/4より小さいので、Mnが、Zサイトに入ってMnアンチサイトを形成し易い。Mnの移動がホイスラー合金X(Mnεηαβ層の結晶構造内に更に留まり易いので、Mnがホイスラー合金層以外に拡散することが更に抑制される。
本発明の他の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(3)において、更に、β>αであってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、β>α、及び0<ε<1が満たされており、MnがZよりも少ないので、Mnの非磁性スペーサ層への移動が更に抑制される。
本発明の他の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、式(3)において、ZはSiであってもよい。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金がSiを含むときにはキュリー温度が高くなるので、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。
本発明の他の一態様に係る磁気抵抗効果素子では、磁化自由層としての第三の強磁性層及び磁化固定層としての第四の強磁性層の少なくとも一つを更に備え、第三の強磁性層及び第四の強磁性層は、式(4)で表されるホイスラー合金を含み、第一の強磁性層は、第三の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられ、第二の強磁性層は、第四の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられてもよい。
(Mnεηδθ …(4)
式(4)中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表し、GがFeを含むとき、DはFeを含まず、Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2<δ+θ<2.6であり、0<ε<1及び0<η<1である。
この磁気抵抗効果素子によれば、ホイスラー合金D(Mnεηδθにおいて、2<δ+θ<2.6であるときには、DMnアンチサイト及びDアンチサイトといったアンチサイトの形成に伴うスピン分極率への影響が減少して、第三の強磁性層及び第四の強磁性層がハーフメタル特性を維持し易くなる。そのため、第三の強磁性層は、第一の強磁性層と共に磁化自由層として機能し、磁化自由層のスピン分極率が増大する。また、第四の強磁性層は、第二の強磁性層と共に磁化固定層として機能し、磁化固定層のスピン分極率が増大する。一方、ホイスラー合金D(Mnεηδθにおいて、2<δ+θ<2.6なので、第三の強磁性層及び第四の強磁性層は、余剰なMnを有することができる。この磁気抵抗効果素子では、第三の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられた第一の強磁性層が、第三の強磁性層から非磁性スペーサ層へのMnの移動を抑制できる。また、第四の強磁性層と非磁性スペーサ層との間に設けられた第二の強磁性層が、第四の強磁性層から非磁性スペーサ層へのMnの移動を抑制できる。
本発明に係る磁気抵抗効果素子では、非磁性スペーサ層は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含んでもよい。
Agγ1−γ …(A)
式(A)中、Lは、Al、Cu、Ga、Ge、As、Y、La、Sm、Yb、及びPtからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、0<γ≦1である。
この磁気抵抗効果素子によれば、非磁性スペーサ層は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含み、Ag又はAg含有金属の格子定数は、元素のL及び/又はγの値を変更することによって調整することができる。この格子定数の調整によって、非磁性スペーサ層と、第一の強磁性層及び/又は第二の強磁性層との間の格子不整合を減少させることができる。格子不整合の減少によって、第一の強磁性層及び/又は第二の強磁性層と、非磁性スペーサ層との結晶性が向上するので、更に大きな磁気抵抗効果を発揮する。
本発明によれば、磁気抵抗層の強磁性層としてMnを含むホイスラー合金を用いた磁気抵抗効果素子であって、磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子を提供することができる。
図1は、実施形態に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。 図2の(a)部は、ホイスラー合金CoMnαSiβにおいて、α及びβの値と、領域I〜領域Vとの関係を模式的に示した図である。図2の(b)部は、ホイスラー合金CoMnαSiβにおいて、α及びβの値と、領域I〜領域VIとの関係を模式的に示した図である。 図3は、実施形態の変形例に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。 図4は、他の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。 図5は、他の実施形態の変形例に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。 図6は、実施例に係る磁気抵抗効果素子のMR比を評価可能な磁気抵抗デバイスを示す図である。 図7の(a)部は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。図7の(b)部は、実施例3に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。図7の(c)部は、実施例5に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。 図8は、実施例6に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
図1は、実施形態に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。磁気抵抗効果素子1は、例えば、基板10、下地層20、磁気抵抗層30、及びキャップ層40をこの順に備える。
基板10は、例えば、金属酸化物単結晶、シリコン単結晶、熱酸化膜付シリコン単結晶、サファイア単結晶、セラミック、石英、及びガラスを含む。基板10に含まれる材料は、適度な機械的強度を有し、且つ熱処理や微細加工に適した材料であれば、特に限定されない。金属酸化物単結晶としては、例えば、MgO単結晶が挙げられ、MgO単結晶を含む基板によれば、例えば、スパッタ法を用いて容易にエピタキシャル成長膜が形成される。このエピタキシャル成長膜は、大きな磁気抵抗特性を示すことができる。
下地層20は、磁気抵抗層30の結晶性の向上に設けられ、また、磁気抵抗特性を測定するための電極となることができる。下地層20は、例えば、Ag、Au、Cu、Cr、V、Al、W、及びPtの少なくとも一つの金属元素を含み、これらの金属元素の合金、又はこれら金属元素の2種類以上からなる材料の積層体を含んでもよい。金属元素の合金には、例えば、立方晶系のAgZn合金、AgMg合金及びNiAl合金が含まれる。必要に応じて、下地層20と基板10との間に、上部の層の結晶配向を制御するための結晶配向層が設けられてもよい。結晶配向層は、例えば、MgO、TiN及びNiTa合金の少なくとも一種類を含む。
磁気抵抗層30は、磁化自由層としての第一の強磁性層31と、磁化固定層としての第二の強磁性層32と、第一の強磁性層31と第二の強磁性層32との間に設けられた非磁性スペーサ層36とを備える。第二の強磁性層32は、例えば、非磁性スペーサ層36の上に設けられる。
磁化自由層として機能する第一の強磁性層31は、軟磁性材料で構成され、磁化方向が実質的に固定されていない。そのため、測定対象に外部磁界が印加されると、その方向に磁化方向が容易に変化する。磁化固定層として機能する第二の強磁性層32の磁化方向は、外部磁界に対して第一の強磁性層31の磁化方向よりも変化し難い。好ましくは、第二の強磁性層32の磁化方向は、測定対象の外部磁界に対して実質的に固定されており、測定対象の外部磁界に対して実質的に変化しない。磁気抵抗層30に外部磁場が印加され、第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32の相対的な磁化方向が変化することによって、磁気抵抗層30の抵抗値が変化して磁気抵抗効果を発揮する。
第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32の少なくとも一つは、式(1)で表されるホイスラー合金を含む。
Mnαβ …(1)
式(1)中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2である。
本実施形態では、式(1)において、XはCoであることができる。ホイスラー合金において、XがCoであるときには、キュリー温度が室温よりも十分に高いため、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。また、式(1)において、ZはSiであることができる。ホイスラー合金がSiを含むときにはキュリー温度が高くなるので、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。
図2の(a)部は、式(1)で表されるホイスラー合金の一種であるCoMnαSiβにおいて、α及びβの値と、領域I〜領域Vとの関係を模式的に示した図である。図2の(a)部では、横軸のαは、0<α<2の範囲で変化し、縦軸のβは、0<β<2の範囲で変化している。
ホイスラー合金CoMnαSiβは、α+β=2を示す境界線B1、β=(2+α)/3を示す境界線B2、及び、α+β=2/3を示す境界線B3を有することができる。境界線B1は、CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/2である組成に対応している。境界線B2は、CoMnαSiβに占めるSiの割合が1/4である組成に対応している。境界線B3は、CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/4である組成に対応している。これらの境界線B1〜境界線B3によって、ホイスラー合金CoMnαSiβは、領域I〜領域Vに区別される。
領域I及び領域IIは、境界線B1によって規定されており、共に、2<α+βを満たす領域である。領域Iは、境界線B2によって領域IIと区別されることができて、領域Iは、2<α+β、かつ、β>(2+α)/3を満たす領域である。領域IIは、2<α+β、かつ、β<(2+α)/3を満たす領域である。領域I及び領域IIにおいては、共に、CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/2より大きくなっており、ホイスラー合金CoMnαSiβは、余剰なMnを有し易い。Mnが余剰に含まれるので、Mnは、Mnサイトに入るほか、Mnサイト以外に移動し易くなる。例えば、MnがSiサイトに入るMnSiアンチサイトの形成、及び/又は、MnがCoサイトに入るMnCoアンチサイトの形成が行われる。更には、余剰なMnが、例えば非磁性スペーサ層36に拡散し易くなる。
領域IIIは、境界線B3によって規定されており、α+β<2/3を満たす領域である。領域IIIにおけるα+β<2/3の範囲においては、ホイスラー合金CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/4より小さくなっている。従って、領域IIIでは、ホイスラー合金CoMnαSiβの組成が化学量論相当の組成から大きくずれるので、スピン分極率を増加させることが難しい。
領域IV及び領域Vは、境界線B1及び境界線B3によって規定されており、共に、2/3<α+β<2を満たす領域である。領域IVは、境界線B2によって領域Vと区別されて、領域IVは、2/3<α+β<2、かつ、β>(2+α)/3を満たす。領域Vは、2/3<α+β<2、かつ、β<(2+α)/3を満たす。領域IV及び領域Vでは、共に、α+β<2であり、CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/2より小さくなっているので、ホイスラー合金CoMnαSiβは、余剰なMnを有し難い。領域IV及び領域Vでは、Mnが正しくMnサイトに入り易い一方で、Mnが余剰に含まれ難いので、CoがMnサイトに入ってCoMnアンチサイトを形成し易く、Mnが非磁性スペーサ層36に拡散することが抑制される。また、領域IV及び領域Vでは、共に、ホイスラー合金CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/4より大きくなっている。そのため、ホイスラー合金CoMnαSiβの組成が化学量論相当の組成から大きくずれていないので、スピン分極率が増加し易くなる。磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子1が提供される。
領域IVでは、領域Vと比べて、CoMnαSiβに占めるSiの割合が異なる。領域IVでは、β>(2+α)/3が満たされて、CoMnαSiβに占めるSiの割合が1/4より大きい。領域Vでは、β<(2+α)/3が満たされて、CoMnαSiβに占めるSiの割合が1/4より小さい。
領域IVでは、CoMnαSiβに占めるSiの割合が1/4より大きいので、Siが、Mnに入ってSiMnアンチサイトを形成し易い。領域Vでは、CoMnαSiβに占めるSiの割合が1/4より小さいので、Mnが、Siサイトに入ってMnSiアンチサイトを形成し易い。領域Vでは、Mnの移動がホイスラー合金CoMnαSiβ層の結晶構造内に更に留まり易いので、Mnがホイスラー合金層以外に拡散することが更に抑制される。
図2の(b)部は、ホイスラー合金CoMnαSiβにおいて、α及びβの値と、領域I〜領域VIとの関係を模式的に示した図であり、図2の(a)部に対して、β=αの境界線B4と、領域VIとを加えた図である。図2の(b)部に示されるように、ホイスラー合金CoMnαSiβは、β=αの境界線B4によって、領域V内に領域VIを更に有する。領域VIは、2/3<α+β<2、かつ、β<(2+α)/3を満たし、更に、β>αを満たす領域である。領域VIでは、β>αが満たされており、MnがSiよりも少ないので、Mnの非磁性スペーサ層36への移動が更に抑制されるので、磁気抵抗効果が更に増大する。
本実施形態では、第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32において、ホイスラー合金の結晶構造は、A2構造、B2構造、又はL2構造を有することができる。B2構造のホイスラー合金は、A2構造のホイスラー合金よりも高いスピン分極率を有するので好ましく、L2構造のホイスラー合金は、B2構造のホイスラー合金よりも高いスピン分極率を有するので更に好ましい。
ホイスラー合金のうち、B2構造及びL2構造のホイスラー合金は、特に規則化した結晶構造を有するので、磁気抵抗効果素子1の作製時には、ホイスラー合金の結晶を規則化するための熱処理(アニール処理)が行われる。熱処理を行う際には、ホイスラー合金のMnが非磁性スペーサ層36に拡散し易いが、本実施形態では、式(1)で表されるホイスラー合金XMnαβを含んでいる。そのため、上述のようにホイスラー合金のMnが非磁性スペーサ層36に拡散することが抑制されて、熱処理後の磁気抵抗効果素子1は、大きな磁気抵抗効果を示す。
再び、図1を参照しながら、磁気抵抗効果素子1について説明する。磁気抵抗層30は、第一の強磁性層31と第二の強磁性層32との間に非磁性スペーサ層36を備え、非磁性スペーサ層36は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含むことができる。
Agγ1−γ …(A)
この式(A)において、Xは、Al、Cu、Ga、Ge、As、Y、La、Sm、Yb、及びPtからなる群より選択される少なくとも一の元素であり、0<γ≦1である。
非磁性スペーサ層36は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含み、Ag又はAg含有金属は、元素のL及び/又はγの値を変更することによって、格子定数を調整することができる。この格子定数の調整によって、非磁性スペーサ層36と、第一の強磁性層31及び/又は第二の強磁性層32との間の格子不整合を減少させることができる。格子不整合の減少によって、第一の強磁性層31及び/又は第二の強磁性層32と、非磁性スペーサ層36との結晶性が向上するので、更に大きな磁気抵抗効果を発揮する。
また、非磁性スペーサ層36のAg又はAg含有金属は、面心立方格子構造(fcc構造)を取りやすい。そのため、非磁性スペーサ層36と、第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32とを高い結晶品質で積層することができる。この効果は、第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32もfcc構造を取る場合に、特に顕著となる。
非磁性スペーサ層36は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属の他、Cr、Au、V、W、NiAl、AgZn、AgMg、又は非磁性ホイスラー合金といった金属を含むことができる。
磁気抵抗層30において、非磁性スペーサ層36の厚さは、例えば、1nm以上、10nm以下である。第一の強磁性層31の厚さは、例えば、1nm以上、20nm以下である。第二の強磁性層32の厚さは、例えば、1nm以上、20nm以下である。
磁気抵抗層30は、必要に応じて、反強磁性体層35を有し、反強磁性体層35は、例えば、第二の強磁性層32の非磁性スペーサ層36側とは反対側の面上に設けられる。反強磁性体層35は、第二の強磁性層32と交換結合し、第二の強磁性層32に一方向異方性を付与することによって、第二の強磁性層32の磁化の方向を実施的に固定させるために使用される。反強磁性体層35の材料としては、例えば、FeMn合金、PtMn合金、PtCrMn合金、NiMn合金、IrMn合金、NiO、Feが挙げられる。反強磁性体層35の厚さは、例えば、5nm〜15nmである。
第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32について、例えば、それらの層の厚さを変えるなどの手法によって、第二の強磁性層32の保磁力が、第一の強磁性層31の保磁力より大きく、かつ、第二の強磁性層32の磁化方向が測定対象の外部磁場に対して実質的に固定される程度の大きさを有するときは、必ずしも反強磁性体層35は設けられなくてもよい。
磁気抵抗層30では、第一の強磁性層31及び第二の強磁性層32の一方が磁化自由層であり、他方が磁化固定層であればよいため、第一の強磁性層31が磁化固定層であり、第二の強磁性層32が、磁化自由層であってもよい。この場合、反強磁性体層35は、第一の強磁性層31の非磁性スペーサ層36側とは反対側の面上に設けられる。
キャップ層40は、磁気抵抗層30を保護するために設けられる。キャップ層40は、例えば、Ru、Ag、Al、Cu、Au、Cr、Mo、Pt、W、Ta、Pd、及びIrの一以上の金属元素、これら金属元素の合金、又は、これら金属元素の2種類以上からなる材料の積層体を含んでよい。キャップ層40上には、磁気抵抗効果素子1に積層方向に沿って電流を流すための上部電極を設けてもよい。
磁気抵抗効果素子1は、例えば、スパッタ法及び電子ビーム蒸着法といった製造方法によって基板10上に下地層20からキャップ層40までの各層を形成することにより作製される。各層の形成時には、必要に応じて熱処理を行っても良いし、また、さらに必要に応じて、一方向異方性を付与するための磁場印加処理を行っても良い。磁場印加処理の際には適宜熱処理を同時に行っても良い。また、磁気抵抗効果素子1は、電子線等を用いたリソグラフィーおよびArイオン等を用いたドライエッチングにより、磁気抵抗特性を評価可能な形状に微細加工されてもよい。磁気抵抗効果素子1は、積層方向(各層の膜面に垂直な方向)に沿って検出用電流が流されるCPP(Current Perpendicular to Plane)構造の磁気抵抗効果素子である。
図3は、実施形態の変形例に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。磁気抵抗効果素子1pは、例えば、基板10p、下地層20p、磁気抵抗層30p、及びキャップ層40pを備える。基板10pは、磁気抵抗効果素子1の基板10と同様であることができ、下地層20pは、磁気抵抗効果素子1の下地層20と同様であることができる。また、キャップ層40pは、磁気抵抗効果素子1のキャップ層40と同様であることができる。
磁気抵抗層30pは、磁化自由層としての第一の強磁性層31p、磁化固定層としての第二の強磁性層32p、及び第一の強磁性層31pと第二の強磁性層32pとの間に設けられた非磁性スペーサ層36pを有する。第二の強磁性層32pは、例えば、非磁性スペーサ層36pの上に設けられる。第一の強磁性層31p及び第二の強磁性層32pの少なくとも一つは、式(1)で表されるホイスラー合金を含む。非磁性スペーサ層36pは、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含むことができる。
本変形例では、磁気抵抗層30pは、第三の強磁性層33p及び第四の強磁性層34pの少なくとも一つを更に備えることができる。第三の強磁性層33pは、第一の強磁性層31pと共に磁化自由層として機能し、第四の強磁性層34pは、第二の強磁性層32pと共に磁化固定層として機能する。磁気抵抗効果素子1pにおいて、第一の強磁性層31pは、例えば、第三の強磁性層33pと非磁性スペーサ層36pとの間に設けられる。第二の強磁性層32pは、例えば、第四の強磁性層34pと非磁性スペーサ層36pとの間に設けられる。
磁気抵抗層30pにおいて、第三の強磁性層33p及び第四の強磁性層34pは、式(2)で表されるホイスラー合金を含むことができる。
Mnδθ …(2)
式(2)中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表す。また、式(2)中のδ及びθは、2<δ+θ<2.6であることができる。本実施形態では、式(2)において、XはCoであり、また、ZはSiであることができる。
式(2)で表されるホイスラー合金CoMnδSiθでは、CoがMnサイトに入るCoMnアンチサイトの形成がなされると、スピン分極率が低下する。その一方で、MnがCoサイトに入ってMnCoアンチサイトを形成する場合、及び、SiがCoサイトに入ってSiCoアンチサイトを形成する場合は、スピン分極率への影響は少ないことが理論的に示されている。
ホイスラー合金CoMnδSiθにおいて、δ+θ≦2であるときには、CoMnαSiβに占めるCoの割合が1/2より大きくなっており、CoMnアンチサイトが形成される。そのため、δ+θ≦2であるときには、スピン分極率が低下する。一方、2<δ+θであるときには、MnがCoサイトに入るMnCoアンチサイト、及び/又は、SiがCoサイトに入るSiCoアンチサイトが形成されるので、スピン分極率への影響が減少する。ホイスラー合金CoMnδSiθでは、2.6≦δ+θとなると、ホイスラー合金の磁化量が低下する。
従って、ホイスラー合金CoMnδSiθでは、2<δ+θ<2.6であるときには、アンチサイトの形成に伴うスピン分極率への影響が減少して、第三の強磁性層33p及び第四の強磁性層34pがハーフメタル特性を維持し易くなる。そのため、第三の強磁性層33pは、第一の強磁性層31pと共に磁化自由層として機能し、磁化自由層のスピン分極率が増大する。また、第四の強磁性層34pは、第二の強磁性層32pと共に磁化固定層として機能し、磁化固定層のスピン分極率が増大する。磁気抵抗効果素子1pは、大きな磁気抵抗効果を発揮し得る。
第三の強磁性層33p及び第四の強磁性層34pでは、ホイスラー合金CoMnδSiθにおいて、2<δ+θ<2.6なので、CoMnαSiβに占めるMnとSiとの合計の割合が1/2より大きくなっている。このため、第三の強磁性層33p及び第四の強磁性層34pのホイスラー合金CoMnδSiθは、余剰なMnを有する。本変形例では、第三の強磁性層33pと非磁性スペーサ層36pとの間に設けられた第一の強磁性層31pが、第三の強磁性層33pから非磁性スペーサ層36pへのMnの移動を抑制できる。また、第四の強磁性層34pと非磁性スペーサ層36pとの間に設けられた第二の強磁性層32pが、第四の強磁性層34pから非磁性スペーサ層36pへのMnの移動を抑制できる。
第一の強磁性層31pの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第二の強磁性層32pの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第三の強磁性層33pの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第四の強磁性層34pの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。非磁性スペーサ層36pの厚さは、例えば、1nm以上、10nm以下である。
図4は、他の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。磁気抵抗効果素子1qは、例えば、基板10q、下地層20q、磁気抵抗層30q、及びキャップ層40qをこの順に備える。
磁気抵抗層30qは、磁化自由層としての第一の強磁性層31qと、磁化固定層としての第二の強磁性層32qと、第一の強磁性層31qと第二の強磁性層32qとの間に設けられた非磁性スペーサ層36qとを備える。第二の強磁性層32qは、例えば、非磁性スペーサ層36qの上に設けられる。
第一の強磁性層31q及び第二の強磁性層32qの少なくとも一つは、式(3)で表されるホイスラー合金を含む。
(Mnεηαβ …(3)
式(3)中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表す。ただし、GがFeを含むとき、XはFeを含まない。すなわち、Xは、Co、Ni、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表す。Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2であり、0<ε<1及び0<η<1である。
磁気抵抗効果素子1qにおいて、基板10q、下地層20q、磁気抵抗層30q、及びキャップ層40qは、それぞれ、磁気抵抗効果素子1の基板10、下地層20、磁気抵抗層30、及びキャップ層40と同様であることができる。
磁気抵抗層30qでは、第一の強磁性層31q及び第二の強磁性層32qの一方が磁化自由層であり、他方が磁化固定層であればよいため、第一の強磁性層31qが磁化固定層であり、第二の強磁性層32qが、磁化自由層であってもよい。この場合、反強磁性体層35qは、第一の強磁性層31qの非磁性スペーサ層36q側とは反対側の面上に設けられる。第一の強磁性層31q及び第二の強磁性層32qは、CoMnSi合金ターゲットと、Feターゲットとの同時スパッタ法によって形成されることができる。第一の強磁性層31q及び第二の強磁性層32qにおけるFeの組成比率は、例えば、成膜時のスパッタ出力によって制御される。
本実施形態では、式(3)において、XはCoであることができる。ホイスラー合金において、XがCoであるときには、キュリー温度が室温よりも十分に高いため、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。また、式(3)において、ZはSiであることができる。ホイスラー合金がSiを含むときにはキュリー温度が高くなるので、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。
磁気抵抗効果素子1qのホイスラー合金X(Mnεηαβでは、磁気抵抗効果素子1のホイスラー合金CoMnαSiβにおけるα及びβの値と、磁気抵抗効果の大きさとの関係を適用することができる。すなわち、磁気抵抗効果素子1qのホイスラー合金X(Mnεηαβに対して、図2の(a)部及び(b)部におけるα及びβの値と、領域I〜領域Vとの関係を適用することができる。
従って、この磁気抵抗効果素子1qによれば、ホイスラー合金X(Mnεηαβにおいて、α+β<2、及び0<ε<1であり、X(Mnεηαβに占めるMnとZとの合計の割合が1/2より小さくなっているので、ホイスラー合金X(Mnεηαβは、余剰なMnを有し難い。従って、Mnが正しくMnサイトに入り易い一方で、Mnが余剰に含まれ難いので、XがMnサイトに入ってXMnアンチサイトを形成し易く、Mnが非磁性スペーサ層に拡散することが抑制される。また、ホイスラー合金X(Mnεηαβにおいて、2/3<α+βであり、ホイスラー合金X(Mnεηαβに占めるMn及びGとZとの合計の割合が1/4より大きくなることができる。そのため、ホイスラー合金X(Mnεηαβの組成が化学量論相当の組成から大きくずれなくなるようにできるので、スピン分極率が増加し易くなる。磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子が提供される。
本変形例に係る磁気抵抗効果素子1qでは、式(3)において、更に、β<(2+α)/3であってもよい。この磁気抵抗効果素子1qによれば、ホイスラー合金X(Mnεηαβに占めるZの割合が1/4より小さいので、Mnが、Zサイトに入ってMnアンチサイトを形成し易い。Mnの移動がホイスラー合金X(Mnεηαβ層の結晶構造内に更に留まり易いので、Mnがホイスラー合金層以外に拡散することが更に抑制される。
本変形例に係る磁気抵抗効果素子1qでは、式(3)において、更に、β>αであってもよい。この磁気抵抗効果素子1qによれば、β>α、及び0<ε<1が満たされており、MnがZよりも少ないので、Mnの非磁性スペーサ層への移動が更に抑制される。
本変形例に係る磁気抵抗効果素子1qでは、式(3)において、ZはSiであってもよい。この磁気抵抗効果素子1qによれば、ホイスラー合金がSiを含むときにはキュリー温度が高くなるので、室温においても高い磁気抵抗効果が得られる。
図5は、他の実施形態の変形例に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。磁気抵抗効果素子1rは、例えば、基板10r、下地層20r、磁気抵抗層30r、及びキャップ層40rを備える。磁気抵抗効果素子1rにおいて、基板10r、下地層20r、磁気抵抗層30r、及びキャップ層40rは、それぞれ、磁気抵抗効果素子1の基板10、下地層20、磁気抵抗層30、及びキャップ層40と同様であることができる。
磁気抵抗層30rは、磁化自由層としての第一の強磁性層31r、磁化固定層としての第二の強磁性層32r、及び第一の強磁性層31rと第二の強磁性層32rとの間に設けられた非磁性スペーサ層36rを有する。第二の強磁性層32rは、例えば、非磁性スペーサ層36rの上に設けられる。第一の強磁性層31r及び第二の強磁性層32rの少なくとも一つは、式(3)で表されるホイスラー合金を含む。非磁性スペーサ層36rは、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含むことができる。
本変形例では、磁気抵抗層30rは、第三の強磁性層33r及び第四の強磁性層34rの少なくとも一つを更に備えることができる。第三の強磁性層33rは、第一の強磁性層31rと共に磁化自由層として機能し、第四の強磁性層34rは、第二の強磁性層32rと共に磁化固定層として機能する。磁気抵抗効果素子1rにおいて、第一の強磁性層31rは、例えば、第三の強磁性層33rと非磁性スペーサ層36rとの間に設けられる。第二の強磁性層32rは、例えば、第四の強磁性層34rと非磁性スペーサ層36rとの間に設けられる。
磁気抵抗層30rにおいて、第三の強磁性層33r及び第四の強磁性層34rは、式(4)で表されるホイスラー合金を含むことができる。
(Mnεηδθ …(4)
式(4)中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表し、GがFeを含むとき、DはFeを含まない。すなわち、Dは、Co、Ni、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表す。Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2<δ+θ<2.6であり、0<ε<1及び0<η<1である。本変形例では、式(4)において、XはCoであり、また、ZはSiであることができる。
式(4)で表されるホイスラー合金Co(MnεηδSiθでは、ホイスラー合金CoMnδSiθと同様に、2<δ+θ<2.6であるときには、アンチサイトの形成に伴うスピン分極率への影響が減少して、第三の強磁性層33r及び第四の強磁性層34rがハーフメタル特性を維持し易くなる。そのため、第三の強磁性層33rは、第一の強磁性層31rと共に磁化自由層として機能し、磁化自由層のスピン分極率が増大する。また、第四の強磁性層34rは、第二の強磁性層32rと共に磁化固定層として機能し、磁化固定層のスピン分極率が増大する。磁気抵抗効果素子1rは、大きな磁気抵抗効果を発揮し得る。
第三の強磁性層33r及び第四の強磁性層34rでは、ホイスラー合金CoMnδSiθにおいて、2<δ+θ<2.6なので、Co(MnεηαSiβに占めるMn及びGとSiとの合計の割合が1/2より大きくなっている。このため、第三の強磁性層33r及び第四の強磁性層34rのホイスラー合金Co(MnεηδSiθは、余剰なMnを有することができる。本実施形態では、第三の強磁性層33rと非磁性スペーサ層36rとの間に設けられた第一の強磁性層31rが、第三の強磁性層33rから非磁性スペーサ層36rへのMnの移動を抑制できる。また、第四の強磁性層34rと非磁性スペーサ層36rとの間に設けられた第二の強磁性層32rが、第四の強磁性層34rから非磁性スペーサ層36rへのMnの移動を抑制できる。
第一の強磁性層31rの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第二の強磁性層32rの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第三の強磁性層33rの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。第四の強磁性層34rの厚さは、例えば、1nm〜20nmである。非磁性スペーサ層36rの厚さは、例えば、1nm以上、10nm以下である。
本変形例に係る磁気抵抗効果素子1rでは、非磁性スペーサ層は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含んでもよい。
Agγ1−γ …(A)
式(A)中、Lは、Al、Cu、Ga、Ge、As、Y、La、Sm、Yb、及びPtからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、0<γ≦1である。
この磁気抵抗効果素子1rによれば、非磁性スペーサ層36rは、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含み、Ag又はAg含有金属の格子定数は、元素のL及び/又はγの値を変更することによって調整することができる。この格子定数の調整によって、非磁性スペーサ層36rと、第一の強磁性層31r及び/又は第二の強磁性層32rとの間の格子不整合を減少させることができる。格子不整合の減少によって、第一の強磁性層31r及び/又は第二の強磁性層32rと、非磁性スペーサ層36rとの結晶性が向上するので、更に大きな磁気抵抗効果を発揮する。
以下、本発明の実施例および比較例により、さらに磁気抵抗効果素子について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
表1は、後述のように作製した実施例1及び実施例2、並びに、比較例1及び比較例2に係る磁気抵抗効果素子におけるα、β、α+β、(2+α)/3の値、及び磁気抵抗比(MR比)(%)をまとめて示す表である。
磁気抵抗効果素子におけるMR比は、測定された磁気抵抗の大きさから見積もった。MR比は、百分率で示され、下記の式(5)によって求めた。
MR比(%)=((RAP−R)/R)×100(%) …(5)
この式(5)において、RAPは、第一の強磁性層の磁化の向きと第二の強磁性層の磁化の向きとが反平行であるときの磁気抵抗効果素子の抵抗の大きさである。また、Rは、第一の強磁性層の磁化の向きと第二の強磁性層の磁化の向きとが平行であるときの磁気抵抗効果素子の抵抗の大きさである。
図6は、磁気抵抗効果素子のMR比を評価可能な磁気抵抗デバイスを示す図である。磁気抵抗デバイス50は、第1電極層51と、当該第1電極層51と共に磁気抵抗効果素子1を挟む第2電極層52とを備える。磁気抵抗効果素子1は、磁気抵抗特性の測定に適する形状に微細加工されている。第1電極層51が磁気抵抗効果素子1の基板10上の下地層20に接続され、第2電極層52が磁気抵抗効果素子1のキャップ層40に接続されている。磁気抵抗デバイスは、電源53と電圧計54とを更に備え、電源53及び電圧計54が、共に、第1電極層51及び第2電極層52に接続されている。電源53によって磁気抵抗効果素子1に積層方向に電流を印加し、この際の磁気抵抗効果素子1への印加電圧を電圧計54によってモニターすることができる。磁気抵抗効果素子1に積層方向に一定電流を流した状態で、外部から磁気抵抗効果素子1に磁場を掃引しながら磁気抵抗効果素子1への印加電圧を電圧計54によってモニターすることにより、磁気抵抗効果素子1の抵抗変化を測定することができる。そして、この抵抗変化の測定結果から、磁気抵抗効果素子1のMR比を算出することができる。
[実施例1]
図7の(a)部は、実施例1に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。実施例1では、以下のような手順によって磁気抵抗効果素子1aを作製した。すなわち、初めに、MgO基板60a上に、下地層70aを形成した。具体的には、MgO基板60a上に、電子ビーム蒸着法によって、MgOバッファ層71a(厚さ10nm)を形成した。MgOバッファ層71aの形成時の温度は、600℃とした。MgOバッファ層71aの形成後に、熱処理(温度600℃)を行った。続いて、MgOバッファ層71a上に、スパッタ法によって、CoFeシード層72a(厚さ10nm)を形成した。CoFeシード層72aの形成時の温度は、室温とした。CoFeシード層72aを形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、CoFeシード層72a上に、Agバッファ層73a(厚さ100nm)を形成した。Agバッファ層73aの形成時の温度は、室温とした。Agバッファ層73aの形成後に、熱処理(温度300℃)を行った。続いて、Agバッファ層73a上に、CoFeバッファ層74a(厚さ10nm)を形成した。CoFeバッファ層74aの形成時の温度は、室温とした。CoFeバッファ層74aを形成した後の熱処理は行わなかった。
続いて、スパッタ法によって、下地層70a上に、磁気抵抗層80aを形成した。具体的には、下地層70aのCoFeバッファ層74a上に、第一の強磁性層81a(厚さ10nm)、及び非磁性スペーサ層82aとしてのAg層(厚さ5nm)をこの順に形成した。これら2層の形成時の温度は、室温とした。これら2層を形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、非磁性スペーサ層82a上に、第二の強磁性層83a(厚さ3nm)を形成した。第二の強磁性層83aの形成時の温度は、室温とした。第二の強磁性層83aの形成後に、熱処理(温度550℃)を行った。第一の強磁性層81a及び第二の強磁性層83aは、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表1に示す通りとした。
続いて、電子ビーム蒸着法によって、磁気抵抗層80a上に、キャップ層90aを形成した。具体的には、磁気抵抗層80aの第二の強磁性層83a上に、キャップ層90aとしてのRu層(厚さ5nm)を形成した。キャップ層90aの形成時の温度は、室温とした。キャップ層90aを形成した後の熱処理は行わなかった。
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。実施例2における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表1に示す通りとした。
[比較例1、2]
比較例1及び比較例2では、実施例1と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。比較例1及び2における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表1に示す通りとした。
Figure 2019153769
表1に示されるように、実施例1及び実施例2に係る磁気抵抗効果素子は、比較例1及び比較例2に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。また、実施例1に係る磁気抵抗効果素子は、実施例2に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。実施例1及び実施例2は、2/3<α+β<2を満たしており、また、β<(2+α)/3を満たしている。実施例1は、β>αを更に満たしている。
表2は、後述のように作製した実施例3及び実施例4、並びに、比較例3に係る磁気抵抗効果素子におけるα、β、α+β、(2+α)/3の値、及びMR比(%)をまとめて示す表である。
[実施例3]
図7の(b)部は、実施例3に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。実施例3では、以下のような手順によって磁気抵抗効果素子1bを作製した。すなわち、初めに、MgO基板60b上に、下地層70bを形成した。具体的には、MgO基板60b上に、電子ビーム蒸着法によって、MgOバッファ層71b(厚さ10nm)を形成した。MgOバッファ層71bの形成時の温度は、400℃とした。MgOバッファ層71bを形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、MgOバッファ層71b上に、スパッタ法によって、CoFeバッファ層72b(厚さ30nm)を形成した。CoFeバッファ層72bの形成時の温度は、室温とした。CoFeバッファ層72bの形成後に、熱処理(温度500℃)を行った。
続いて、スパッタ法によって、下地層70b上に、磁気抵抗層80bを形成した。具体的には、下地層70bのCoFeバッファ層72b上に、第一の強磁性層81b(厚さ3nm)を形成した。第一の強磁性層81bの形成時の温度は、室温とした。第一の強磁性層81bの形成後に、熱処理(温度500℃)を行った。続いて、第一の強磁性層81b上に、非磁性スペーサ層82bとしてのAg層(厚さ5nm)を形成した。非磁性スペーサ層82bの形成時の温度は、室温とした。非磁性スペーサ層82bを形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、非磁性スペーサ層82b上に、第二の強磁性層83b(厚さ3nm)を形成した。第二の強磁性層83bの形成時の温度は、室温とした。第二の強磁性層83bの形成後に、熱処理(温度500℃)を行った。続いて、スパッタ法によって、第二の強磁性層83b上に、CoFeバッファ層84b(厚さ1.1nm)、反強磁性体層85bとしてのIrMn層(厚さ10nm)をこの順に形成した。これら2層の形成時の温度は、室温とした。これら2層を形成した後の熱処理は行わなかった。第一の強磁性層81b及び第二の強磁性層83bは、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表2に示す通りとした。
続いて、スパッタ法によって、磁気抵抗層80b上に、キャップ層90bを形成した。具体的には、磁気抵抗層80bの反強磁性体層85b上に、キャップ層90bとしてのRu層(厚さ5nm)を形成した。キャップ層90bの形成時の温度は、室温とした。キャップ層90bを形成した後の熱処理は行わなかった。
実施例3では、磁気抵抗効果素子1bの形成後に、磁場中熱処理を行い、第二の強磁性層に対して一方向異方性を付与した。この磁場中熱処理における熱処理温度を325℃とし、印加磁場の強度を5kOe(399kA/m)とした。
[実施例4]
実施例4では、実施例3と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。実施例4における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表2に示す通りとした。
[比較例3]
比較例3では、実施例3と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。比較例3における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、CoMnαSiβ層とし、α及びβの値は、表2に示す通りとした。
Figure 2019153769
表2に示されるように、実施例3及び実施例4に係る磁気抵抗効果素子は、比較例3に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。また、実施例3に係る磁気抵抗効果素子は、実施例4に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。実施例3及び実施例4は、2/3<α+β<2を満たしており、また、β<(2+α)/3を満たしている。実施例3は、β>αを更に満たしている。
[実施例5]
図7の(c)部は、実施例5に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。実施例5では、以下のような手順によって磁気抵抗効果素子1cを作製した。すなわち、初めに、実施例1と同様の手順によって、MgO基板60c上に、下地層70cを形成した。続いて、スパッタ法によって、下地層70c上に、磁気抵抗層80cを形成した。具体的には、下地層70cのCoFeバッファ層74c上に、第三の強磁性層81c(厚さ10nm)、第一の強磁性層82c(厚さ1.1nm)、非磁性スペーサ層83cとしてのAg層(厚さ5nm)、及び第二の強磁性層84c(厚さ1.1nm)をこの順に形成した。これら4層の形成時の温度は、室温とした。これら4層を形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、第二の強磁性層84c上に、第四の強磁性層85c(厚さ3nm)を形成した。第四の強磁性層85cの形成時の温度は、室温とした。第四の強磁性層85cの形成後に、熱処理(温度550℃)を行った。第一の強磁性層82c及び第二の強磁性層84cは、共に、CoMnαSiβ層とし、αの値は0.68とし、βの値は0.82とした。また、第三の強磁性層81c及び第四の強磁性層85cは、共に、CoMnδSiθ層とした。第三の強磁性層81c及び第四の強磁性層85cにおいて、共に、δの値は1.4とし、θの値は0.82とした。
続いて、電子ビーム蒸着法によって、磁気抵抗層80c上に、キャップ層90cを形成した。具体的には、磁気抵抗層80cの第四の強磁性層85c上に、キャップ層90cとしてのRu層(厚さ5nm)を形成した。キャップ層90cの形成時の温度は、室温とした。キャップ層90cを形成した後の熱処理は行わなかった。
[実施例6]
図8は、実施例6に係る磁気抵抗効果素子の断面を示す図である。実施例6では、以下のような手順によって磁気抵抗効果素子1dを作製した。すなわち、初めに、MgO基板60d上に、下地層70dを形成した。具体的には、MgO基板60d上に、電子ビーム蒸着法によって、MgOバッファ層71d(厚さ10nm)を形成した。MgOバッファ層71dの形成時の温度は、600℃とした。MgOバッファ層71dの形成後に、熱処理(温度600℃)を行った。続いて、MgOバッファ層71d上に、スパッタ法によって、CoFeシード層72d(厚さ10nm)を形成した。CoFeシード層72dの形成時の温度は、室温とした。CoFeシード層72dを形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、CoFeシード層72d上に、Agバッファ層73d(厚さ100nm)を形成した。Agバッファ層73dの形成時の温度は、室温とした。Agバッファ層73dの形成後に、熱処理(温度300℃)を行った。続いて、Agバッファ層73d上に、CoFeバッファ層74d(厚さ10nm)を形成した。CoFeバッファ層74dの形成時の温度は、室温とした。CoFeバッファ層74dを形成した後の熱処理は行わなかった。
続いて、スパッタ法によって、下地層70d上に、磁気抵抗層80dを形成した。具体的には、下地層70dのCoFeバッファ層74d上に、第一の強磁性層81d(厚さ10nm)、及び非磁性スペーサ層82dとしてのAg層(厚さ5nm)をこの順に形成した。第一の強磁性層81dは、CoMnSi合金ターゲットと、Feターゲットとの同時スパッタ法によって形成した。第一の強磁性層81d及び非磁性スペーサ層82dの2層の形成時の温度は、室温とし、これら2層を形成した後の熱処理は行わなかった。続いて、非磁性スペーサ層82d上に、第二の強磁性層83d(厚さ3nm)を形成した。第二の強磁性層83dは、CoMnSi合金ターゲットと、Feターゲットとの同時スパッタ法によって形成した。第一の強磁性層81d及び第二の強磁性層83dにおけるFeの組成比率は、成膜時のスパッタ出力によって制御した。第二の強磁性層83dの形成時の温度は、室温とした。第二の強磁性層83dの形成後に、熱処理(温度550℃)を行った。第一の強磁性層81d及び第二の強磁性層83dは、共に、Co(MnεFeηαSiβ層とし、ε、η、α及びβの値は、表3に示す通りとした。
続いて、電子ビーム蒸着法によって、磁気抵抗層80d上に、キャップ層90dを形成した。具体的には、磁気抵抗層80dの第二の強磁性層83d上に、キャップ層90dとしてのRu層(厚さ5nm)を形成した。キャップ層90dの形成時の温度は、室温とした。キャップ層90dを形成した後の熱処理は行わなかった。
[比較例4〜6]
比較例4〜比較例6では、実施例6と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。比較例4〜比較例6における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、Co(MnεFeηαSiβ層とし、ε、η、α及びβの値は、表3に示す通りとした。
Figure 2019153769
表3に示されるように、実施例6に係る磁気抵抗効果素子は、比較例4〜比較例6に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。実施例6は、2/3<α+β<2を満たしており、また、β<(2+α)/3を満たしている。
[実施例7]
実施例7では、第二の強磁性層83dの形成後に、熱処理を温度575℃において行った他は、実施例6と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。実施例7における第一の強磁性層及び第二の強磁性層は、共に、実施例6と同じCo(MnεFeηαSiβ層とした。第一の強磁性層及び第二の強磁性層におけるε、η、α及びβの値は、共に、表4に示す通りとした。
[比較例7]
比較例7では、実施例7と同様の作製及び見積もり手順によって、磁気抵抗効果素子の作製及びMR比の見積もりを行った。第一の強磁性層及び第二の強磁性層におけるε、η、α及びβの値は、共に、表4に示す通りとした。
Figure 2019153769
表4に示されるように、実施例7に係る磁気抵抗効果素子は、比較例7に係る磁気抵抗効果素子より大きなMR比を有している。実施例7は、2/3<α+β<2を満たしており、また、β<(2+α)/3を満たしている。
表3及び表4に示されるように、第二の強磁性層83dの形成後に行う熱処理の温度が、実施例6の550℃から実施例7の575℃に変更されても、実施例7のMR比は、実施例6のMR比と共に20%を超えている。
以上、実施形態、変形例及び実施例によって本発明を説明してきたが、本発明はこれらの実施形態、変形例及び実施例に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記実施形態の磁気抵抗効果素子1は、CPP構造ではなく、積層面方向に沿って検出用電流が流されるCIP(Current In Plane)構造を有することができる。
本実施形態によれば、磁気抵抗層の強磁性層としてMnを含むホイスラー合金を用いた磁気抵抗効果素子であって、磁気抵抗効果が大きな磁気抵抗効果素子が提供される。
1、1p、1q、1r…磁気抵抗効果素子、10、10p、10q、10r…基板、20、20p、20q、20r…下地層、30、30p、30q、30r…磁気抵抗層、31、31p、31q、31r…第一の強磁性層、32、32p、32q、32r…第二の強磁性層、33p、33r…第三の強磁性層、34p、34r…第四の強磁性層、36、36p、36q、36r…非磁性スペーサ層。

Claims (11)

  1. 磁化自由層として機能する第一の強磁性層と、
    磁化固定層として機能する第二の強磁性層と、
    前記第一の強磁性層と前記第二の強磁性層との間に設けられた非磁性スペーサ層と、
    を備え、
    前記第一の強磁性層及び前記第二の強磁性層の少なくとも一つは、式(1)で表されるホイスラー合金を含む、磁気抵抗効果素子。
    Mnαβ …(1)
    [式中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2である。]
  2. 前記式(1)において、β<(2+α)/3である、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記式(1)において、β>αである、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記式(1)において、ZはSiである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記第一の強磁性層と共に磁化自由層として機能する第三の強磁性層及び前記第二の強磁性層と共に磁化固定層として機能する第四の強磁性層の少なくとも一つを更に備え、
    前記第三の強磁性層及び前記第四の強磁性層は、式(2)で表される前記ホイスラー合金を含み、
    前記第一の強磁性層は、前記第三の強磁性層と前記非磁性スペーサ層との間に設けられ、
    前記第二の強磁性層は、前記第四の強磁性層と前記非磁性スペーサ層との間に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
    Mnδθ …(2)
    [式中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2<δ+θ<2.6である。]
  6. 磁化自由層として機能する第一の強磁性層と、
    磁化固定層として機能する第二の強磁性層と、
    前記第一の強磁性層と前記第二の強磁性層との間に設けられた非磁性スペーサ層と、
    を備え、
    前記第一の強磁性層及び前記第二の強磁性層の少なくとも一つは、式(3)で表されるホイスラー合金を含む、磁気抵抗効果素子。
    (Mnεηαβ …(3)
    [式中、Xは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表し、GがFeを含むとき、XはFeを含まず、Zは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2/3<α+β<2であり、0<ε<1及び0<η<1である。]
  7. 前記式(3)において、β<(2+α)/3である、請求項6に記載の磁気抵抗効果素子。
  8. 前記式(3)において、β>αである、請求項6又は7に記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 前記式(3)において、ZはSiである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
  10. 前記第一の強磁性層と共に磁化自由層として機能する第三の強磁性層及び前記第二の強磁性層と共に磁化固定層として機能する第四の強磁性層の少なくとも一つを更に備え、
    前記第三の強磁性層及び前記第四の強磁性層は、式(4)で表される前記ホイスラー合金を含み、
    前記第一の強磁性層は、前記第三の強磁性層と前記非磁性スペーサ層との間に設けられ、
    前記第二の強磁性層は、前記第四の強磁性層と前記非磁性スペーサ層との間に設けられる、請求項6〜9のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
    (Mnεηδθ …(4)
    [式中、Dは、Co、Ni、Fe、Ru、及びRhからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、Gは、Fe及びCrの少なくとも一の元素を表し、GがFeを含むとき、DはFeを含まず、Eは、Si、Al、Ga、Ge、Sb、及びSnからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、2<δ+θ<2.6であり、0<ε<1及び0<η<1である。]
  11. 前記非磁性スペーサ層は、式(A)で表わされるAg又はAg含有金属を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子。
    Agγ1−γ …(A)
    [式中、Lは、Al、Cu、Ga、Ge、As、Y、La、Sm、Yb、及びPtからなる群より選択される少なくとも一の元素を表し、0<γ≦1である。]
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