JP2019150960A - インクジェット用記録媒体 - Google Patents

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康弘 仁藤
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Abstract

【課題】 優れた色再現性、インク吸収性、及びインク受容層の強度を有するインクジェット用記録媒体を提供する。【解決手段】 本発明のインクジェット用記録媒体は、基材と、第一のインク受容層と、第二のインク受容層とをこの順に有するインクジェット用記録媒体であって、前記第一のインク受容層は、平均粒子径が0.5μm以上のシリカ及び平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタンを含有し、前記第一のインク受容層中における前記シリカと前記酸化チタンの質量比(シリカの含有量:酸化チタンの含有量)が90:10〜50:50であり、前記第二のインク受容層は、シリカを含有し、前記第二のインク受容層中における前記シリカの含有量が、前記第二のインク受容層中における無機粒子の全質量を基準として、80質量%以上100質量%以下であることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明はインクジェット用記録媒体に関する。
インクジェット用記録媒体(以下、単に記録媒体とも称する)には、高精細な画像を得るために、色再現性やインク吸収性といった様々な性能が求められている。例えば、色再現性において、特に明部の色再現性を高めるためには、記録媒体の明度を高める必要がある。特許文献1では、支持体とインク受容層との間に、明度の高い酸化チタンを含有した下塗り層を設けることによって、記録媒体の明度を高めることが開示されている。
特開2006−248121号公報
近年、写真家やグラフィックデザイナー等のプロフェッショナルユーザー向けのファインアート紙の需要が高まっている。プロフェッショナルユーザー向けのファインアート紙に求められる特性のうち、色再現性、インク吸収性、及びインク受容層の強度の3つの要素が特に重要である。
色再現性については、明暗の階調性に優れること、すなわちダイナミックレンジが広いことが求められる。そのため、色再現性を高める一つの方法として、記録媒体のL値を高めることが考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1に記載のように、酸化チタンを含有する下塗り層を有する記録媒体であっても、プロフェッショナルユーザーから要求されるような色再現性は十分得られない場合があることが分かった。
また、インクを打ち込んだ際にインクが付与された位置におけるL値を低くするには、多量のインクを打ち込む必要がある。この多量のインクを吸収できるように、記録媒体のインク吸収性が高いことが要求される。
さらに、これに加えて耐久性も高いものが求められ、特にインク受容層の強度が優れるという点も重視される。
このように、プロフェッショナルユーザーから要求されるような色再現性、インク吸収性、及びインク受容層の強度の3点すべてを満足するためには、更なる改善が必要であることがわかった。
したがって、本発明の目的は、優れた色再現性、インク吸収性、及びインク受容層の強度を有するインクジェット用記録媒体を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
本発明にかかるインクジェット用記録媒体は、基材と、第一のインク受容層と、第二のインク受容層とをこの順に有するインクジェット用記録媒体であって、前記第一のインク受容層は、平均粒子径が0.5μm以上のシリカ及び平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタンを含有し、前記第一のインク受容層中における前記シリカと前記酸化チタンの質量比(シリカの含有量:酸化チタンの含有量)が90:10〜50:50であり、前記第二のインク受容層は、バインダー及びシリカを含有し、前記第二のインク受容層中における前記シリカの含有量が、前記第二のインク受容層中における無機粒子の全質量を基準として、80質量%以上100質量%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、優れた色再現性、インク吸収性、及びインク受容層の強度を有するインクジェット用記録媒体を提供することができる。
第一のインク受容層に平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタン及びバインダーを含有する記録媒体の断面の模式図である。 第一のインク受容層に平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタン、平均粒子径が0.5以上のシリカ、及びバインダーを含有する記録媒体の断面の模式図である。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、記録媒体の色再現性を高めるために、記録媒体の基材側にある第一のインク受容層と、記録媒体の表面側にある第二のインク受容層との光の透過及び散乱に着目した。
まず、第一のインク受容層では、記録媒体の明度(L値)とインク受容層の屈折率との関係に着目して検討を行った。その結果、明度が高い(L*値が大きい)記録媒体を得るには、屈折率の高い材料と、低い材料及び/または粒子間の空隙に存在する空気との屈折率の差が重要であることを見出し、本発明に至った。
この記録媒体の明度とインク受容層の屈折率との関係について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、第一のインク受容層に平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタン及びバインダーを含有する記録媒体の断面の模式図を示している。酸化チタンは、平均粒子径が0.5μm未満と小さいため、図1に示すように、第一のインク受容層に含有される粒子として酸化チタンのみを用いた場合、酸化チタン粒子が密に詰まりやすい。そのため、第一のインク受容層中での粒子と空気との間の屈折率の差による光の多重散乱が起こりにくく、結果として、高いL値が得にくくなっているものと本発明者らは推測した。
そして、本発明者らは、第一のインク受容層で屈折率の高い酸化チタンと屈折率の低い空気との間でその界面における光の散乱現象を効率的に起こすためには、粒子間に空気からなる空隙をうまく作ることがL値を高めるために必要であると考えた。
それを実現するために、図2に示すように、第一のインク受容層に、平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタンと共に、平均粒子径が0.5μm以上のシリカを含有させた。そして、このシリカと酸化チタンの質量比(シリカの含有量:チタンの含有量)が90:10〜50:50となるように含有させることで、粒子間の空隙をうまく作りだすことができることを本発明者らは見出した。
また、シリカの屈折率は約1.45と無機粒子の中では比較的低いため、屈折率の高い酸化チタン(屈折率:2.50〜2.72)とシリカの粒子間でも、その屈折率の差によって光の多重散乱が起こりやすいことも好ましい点である。
更に、シリカはその粒子の持つ電荷が弱酸性領域(pH3〜6程度)で、アニオン性となり、酸化チタンはその粒子の持つ電荷が弱酸性領域(pH3〜6程度)で、カチオン性となる。このシリカと酸化チタンの電気的特性の違いによって、両粒子は引きつけ合い、シリカ粒子と酸化チタン粒子からなる凝集体をインク受容層中で形成しやすい。これにより、酸化チタン粒子とシリカ粒子がインク受容層中でうまく界面を形成するようになり、この点も効率的な光散乱に寄与しているものと本発明者らは推測している。
一方で、インクを打ち込んだ際にL値を低くするには、多量のインクを打ち込む必要があり、インク吸収性が高いことが要求される。この点に関しても、第一のインク受容層に平均粒子径が0.5μm以上のシリカを含有することによって形成された粒子間の空隙によって、高いインク吸収性を得ることができる。
さらに、シリカと酸化チタンが効率的に凝集構造を形成することにより、酸化チタン単独、シリカ単独でそれぞれインク受容層を形成するよりも、インク受容層の強度を向上することができるという新たな効果が得られることも見出した。
また、第二のインク受容層は、シリカを含有し、前記第二のインク受容層中における前記シリカの含有量が、第二のインク受容層中における無機粒子の全質量を基準として、80質量%以上100質量%以下とすることが色再現性を向上させるために重要である。これは、第二のインク受容層が屈折率の低いシリカを多く含有することによって、第二のインク受容層中の粒子と空気との屈折率の差による光散乱を抑制し、記録媒体に付与されたインクに含まれる色材の発色性の低下を抑制することができるためである。そして、その結果、色再現性を高めることができる。
このようにインク受容層における材料種、及び、材料比率によって、所望の層が形成され、各々の材料が相乗的に効果を及ぼし合い、その結果、上記の課題を解決できることを本発明者らは見出した。
[記録媒体]
以下、本発明の記録媒体を構成する各成分について、それぞれ説明する。
<基材>
基材としては、紙基材などの基材のみから構成される透気性基材や、基材と樹脂層を有するもの、即ち、基材が樹脂で被覆されているものが挙げられる。その中でも、本発明にでは、基材として透気性基材を用いることが好ましい。基材が紙基材やコットン基材といった透気性基材であることで、インクを印字した際のインクの浸透性をさらに向上させることができる。基材が透気性であるとインクの溶剤成分が浸透しやすく、本発明のインク受容層と組み合わせた際にさらに高い色再現性が得られる。
基材は、例えば、木材パルプを主原料とし、必要に応じてポリプロピレンなどの合成パルプや、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維を加えて抄紙される。木材パルプとしては広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹溶解パルプ(LDP)、針葉樹溶解パルプ(NDP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)などが挙げられる。これらは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。木材パルプの中でも短繊維成分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPを用いることが好ましい。パルプとしては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましい。また、漂白処理を行って明度を向上させたパルプも好ましい。紙基材中には、サイズ剤、白色顔料、紙力増強剤、蛍光増白剤、水分保持剤、分散剤、柔軟化剤などを適宜添加してもよい。
また、プロ写真家やグラフィックデザイナー用の高級ファインアート紙としては、自然な風合いや凹凸を表現するために、コットン原料を使用することが好ましい。「コットン紙」は、繊維原料として、綿(コットン)を10重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは100重量%含有するシート状物をいう。該コットン紙には、綿以外の繊維原料として、上記の木材パルプ等の通常の紙に含有される繊維原料を含有させてもよい。ここで、「綿」とは、ゼニアオイ科ワタ属Gossipiumの植物とその種子に生えている繊維をいい、具体的には、シーアイランド綿、エジプト綿、アップランド綿、アジア綿等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。また、該綿は、長繊維でも短繊維(リンター)でもよく、記録媒体に要求される風合い等に応じて適宜選択される。該綿は、通常、木材パルプと同様に蒸解処理や漂白処理がされてから繊維原料として用いられるが、該綿中に含まれるリグニン等のセルロース以外の成分の含有量が少ない。そのため、綿の蒸解処理や漂白処理の程度は、通常の木材パルプに対して行われるものと比べて温和な条件でよい。具体的には、例えば、該綿は、約5%アルカリ中で蒸解処理された後、次亜塩素酸等を用いた一段程度の漂白処理をされてから用いられる。
本発明において、基材の厚さは、100μm以上800μm以下であることが好ましく、更には、200μm以上600μm以下であることがより好ましい。
尚、本発明において、基材の厚さは、以下の方法で算出することができる。まず、記録媒体の断面をマイクロトームで切り出し、その断面を走査型電子顕微鏡で観察する。そして、基材の任意の5点以上の厚さを測定し、その平均値を基材の厚さとする。尚、本発明におけるその他の層の厚さも同様の方法で算出するものとする。
本発明において、基材の坪量は、150g/m以上600g/m以下が好ましく、更には200g/m以上350g/m以下であることがより好ましい。
本発明において、基材のJIS P 8118で規定される紙密度は、自然な風合いや凹凸感を表現するという観点から、内部に隙間が多い、即ち密度が小さいものが好ましく、1.0g/cm以下であることが好ましい。更には、0.5g/cm以上0.9g/cm以下であることがより好ましい。0.6g/cm以上0.8g/cm以下であることが特に好ましい。
本発明において、基材の浸透性は、ISO535に記載のコッブ法(Cob60)で、5g/m以上30g/m以下であることが、好ましい。基材の浸透性が5g/m以上であると、インクの浸透性が特に良好となる。基材の浸透性が30g/m以下であると、インクをインク受容層の表面側に定着させやすくなり、高い発色性が得られ、色再現性が向上する。
基材の浸透性は、更には、5g/m以上20g/mであることがより好ましい。
本発明にかかる基材表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、記録媒体の表面の凹凸の質感の点から、1.0μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましい。Raが高い、即ち基材表面が粗れている方が、基材上に形成されるインク受容層の強度が弱くなる傾向にある。そのため、基材表面のRaの大きい記録媒体において、本発明の効果がより発揮できる。
<インク受容層>
本発明において、インク受容層は、基材上に、少なくとも2層以上のインク受容層を有する。インク受容層全体の厚さは、インク受容層の強度の点から、40μm以下であることが好ましく、36μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。また、インク受容層全体の厚さは、インクの色再現性とインク吸収性の観点から12μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、18μm以上であることがさらに好ましい。
また、インク受容層全体の塗工量としては、インク受容層の強度の点から、20g/m以下であることが好ましい。また、インクの色再現性とインク吸収性の観点から10g/m以上であることが好ましい。
また、本発明にかかる記録媒体は、基材と、第一のインク受容層と、第二のインク受容層とをこの順に有する。
以下に、基材と、前記基材上の第一のインク受容層と、第一のインク受容層上の第二のインク受容層と、を有する記録媒体の場合におけるそれぞれのインク受容層の厚さ及び塗工量について、以下に説明する。
本発明にかかる第一のインク受容層の厚さは、明度の点から4μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。16μm以上であるとさらに好ましい。また、第一のインク受容層の厚さは、色再現性の点から、30μm以下であることが好ましく、28μm以下であることがより好ましい。26μm以下であるとさらに好ましい。また、第一のインク受容層の塗工量は、明度の点から、2g/m以上14g/m以下であることが好ましく、5g/m以上13g/m以下であることがより好ましい。また、第一のインク受容層における無機粒子の含有量は、第一のインク受容層の全質量を基準として、第一のインク受容層の全質量を基準として50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
本発明にかかる第二のインク受容層の厚さは、明度、インク吸収性の点から、2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。また、第二のインク受容層の厚さは、インク受容層の強度の点から、26μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。また、第二のインク受容層の塗工量は、明度、インク吸収性の点から、1g/m以上13g/m以下であることが好ましく、2g/m以上10g/m以下であることがより好ましい。また、第二のインク受容層における無機粒子の含有量は、第二のインク受容層の全質量を基準として50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
第二のインク受容層の厚さ(L)に対する第一のインク受容層の厚さ(L)の割合(L/L)が、0.1以上であるとインク受容層の強度の点で好ましい。また、L/Lは、0.2以上であることがより好ましい。また、L/Lは6.5以下であることがインク吸収性の点で好ましく、2.0以下であることより好ましく、0.2以上0.9以下であることが特に好ましい。
本発明にかかる記録媒体の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、記録媒体の表面の凹凸の質感の点から、1.0μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましい。よりRaが高い、即ち記録媒体の粗れている方が、インク受容層の強度をより高める必要があり、本発明の効果がより発揮される。
(シリカ)
本発明において、第一の層のインク受容層及び第二の層のインク受容層はそれぞれ、無機粒子として、平均粒子径が0.5μm以上であるシリカ粒子を含有する。
また、シリカとしては、気相法シリカや湿式シリカなどが挙げられる。その中でも、湿式シリカが好ましい。
湿式シリカとは、乾燥質量で、SiO:93%以上、Al:約5%以下、NaO:約5%以下を含む粒子であり、所謂ホワイトカーボン、シリカゲルや多孔性湿式シリカなどがある。シリカの製造方法は、乾式法と湿式法に大別され、乾式法には燃焼法と加熱法がある。また、湿式法には沈澱法とゲル法と言われる製造方法がある。乾式燃焼法は一般に、気化させた四塩化ケイ素と水素を混合したものを1,600〜2,000℃の空気中で燃焼させる方法で気相法とも呼ばれる。湿式沈澱法は通常、ケイ酸ソーダと硫酸等を水溶液中で反応させて、SiOを沈澱させる方法で、反応温度や酸の添加速度等の条件によりシリカの比表面積や一次粒子径等を調整することができる。また、乾燥や粉砕条件で二次粒子径やシリカ物性が微妙に変化する。湿式ゲル法は一般にケイ酸ソーダと硫酸の同時添加等で反応させて製造されるもので、シリカ粒子同士の場合、たとえばシラノール基の脱水縮合が進んで三次元的なヒドロゲル構造になったものである。その特徴は、一次粒子が比較的小さいヒドロゲル構造であるため、比表面積の大きな二次粒子ができることであり、その一次粒子径の大きさを反応条件等を変えることにより調整し、吸油量の異なる二次粒子径を製造できる。本発明に好適に用いられる湿式シリカは、東ソー・シリカ株式会社製AY−603(10μm)、BY−001(16μm)、GRACE社製SYLOID C807(7μm)、ED5(8μm)、C809(9μm)、CP510−10025(11μm)、CP4−9117(11μm)、C812(12μm)、PQコーポレーション製 GasilHP39(10μm)、GasilHP395(14μm)、水澤化学製P78D(12μm)、などが挙げられる。また、これらをビーズミルなどによってさらに微粒化して使用しても良い。
尚、本発明における平均粒子径とは、レーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所SALD−2300)で測定した際に、算出される体積平均粒子径を意味する。
シリカは、一次粒子が会合して形成された二次粒子として存在するため、上記「平均粒子径」は、「体積平均二次粒子径」を意味する。
第一のインク受容層に用いるシリカの平均粒子径は、酸化チタンとの併用によって、効率的に空隙を形成し、高いL値を発現する点から、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好しい。また、同様に高いL値を発現する点から、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましく、7.0μm以下であることが更に好ましい。
また、インク吸収性の観点から、シリカの細孔容積は、1.3ml/g以上であることが好ましく、1.6ml/g以上であることがより好ましい。また、シリカの比表面積は、200m/g以上400m/g以下であることが好ましい。
第二のインク受容層に含有されるシリカの平均粒子径は、L値を高める点から、7.0μm以上であることが好ましく、8.0μm以上であることがより好ましい。また、インク受容層の強度の点から、第二のインク受容層に含有されるシリカの平均粒子径は、15.0μm以下であることが好ましく、12.0μm以下であることがより好ましい。
(酸化チタン)
第一のインク受容層は、シリカ以外の無機粒子として、酸化チタンを含有する。酸化チタンの屈折率は、2.50〜2.72と高く、白色顔料として好適に用いられている。中でもより高いL値を発現することから、酸化チタンはルチル型の結晶構造を有することが好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、同様にL値を高める点から、0.2μm以上、0.5μm未満が好ましく、0.2μm以上、0.3μm以下であることがより好ましい。
また、酸化チタンは、記録媒体製造時の良好な分散性を得る観点から、表面処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面処理としては、特に限定されず、有機物での表面処理や無機物での表面処理のいずれの処理が施されていてもよい。例えばシリカ、アルミナ、またはジルコニアで表面処理された酸化チタンがより好ましい。
なお、酸化チタンの平均粒子径は、透過電子顕微鏡を用いて測定することができ、具体的には透過電子顕微鏡を用いて、画像解析で500個の酸化チタン一次粒子を抽出してその粒子径を測定し、その平均を算出した数平均粒子径で表される。また、酸化チタンに長径と短径がある場合は、長径を用いて算出する。
酸化チタンとしては、テイカ株式会社のJR−301(ルチル型、平均粒子径0.30μm、Al表面処理)、JR−405(ルチル型、平均粒子径0.21μm、Al表面処理)、JR−603(ルチル型、0.28μm、Al・Zr表面処理)やTRONOX社のCR−826(ルチル型、平均粒子径0.20μm)、CR−828(ルチル型、平均粒子径0.19μm)などが好適に用いられる。
(その他無機粒子)
第一のインク受容層、及び、第二のインク受容層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ、酸化チタン以外の別の無機粒子を含有してもよい。別の無機粒子としては、例えばアルミナ水和物が挙げられる。
アルミナ水和物としては、下記式(X)により表されるものが好ましい。
Al3−n(OH)2n・mHO・・・・(X)
(上記式(X)中、nは0、1、2または3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水を表すものであるため、mは整数または整数でない値をとることができる。また、加熱するとmは0の値に達することがある。)
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらのうち、何れの結晶構造のものも使用可能である。これらの中でも好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物である。具体的には、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。このアルミナ水和物は、インク受容層形成時のインク受容層全体の平均細孔半径が7.0nm以上10.0nm以下となるものを用いることが好ましい。また、8.0nm以上となるものを用いることがより好ましい。インク受容層全体の平均細孔半径が、7.0nm以上10.0nm以下であることによって、優れたインク吸収性及び色再現性を発揮することができる。インク受容層全体の平均細孔半径が7.0nmよりも小さいと、インク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調整したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、インク受容層全体の平均細孔半径が10.0nmよりも大きくなると、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な色再現性が得られない場合がある。さらに、インク受容層には細孔半径が25.0nm以上の細孔が存在しないことが好ましい。25.0nm以上の細孔が存在する場合には、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な色再現性が得られない場合がある。
第二のインク受容層にアルミナ水和物を含有する場合、第二のインク受容層における無機粒子の全質量を基準として、20%未満であることが好ましい。
(バインダー)
本発明において、バインダーとは、シリカ、酸化チタン等の無機粒子を結着し、インク受容層を形成することができる材料を意味する。本発明において、第一のインク受容層及び第二のインク受容層はそれぞれバインダーを含有することが好ましい。
本発明において、第一のインク受容層における、シリカの含有量に対するバインダーの含有量は、インク受容層の強度の点から20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、第一のインク受容層における、シリカの含有量に対するバインダーの含有量は、高いL値を得るための空隙の形成しやすくする点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
第二のインク受容層における、シリカの含有量に対するバインダーの含有量は、インクの浸透性を高めることによる色再現性の向上の観点から100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。また、インク受容層の強度の点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
バインダーの種類としては例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、及びポリビニルアルコール、並びに、それらの誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体などのアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス;上記の重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;カチオン基を用いて上記重合体をカチオン化したもの;カチオン性界面活性剤を用いて上記重合体の表面をカチオン化したもの;カチオン性ポリビニルアルコール下で上記重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの;カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの;メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂などの水性バインダー;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
上記したバインダーの中でも、ポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体を用いることが好ましい。ポリビニルアルコール誘導体としては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基または第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールが好ましい。
第二のインク受容層には、インク受容層の強度を高める目的から、特にシラノール変性ポリビニルアルコールとケン化度98mol%以上のケン化度の高いポリビニルアルコールの2種類を併用するのが好ましい。第二のインク受容層における、シラノール変性ポリビニルアルコールとケン化度98mol%以上のポリビニルアルコールの比率(シラノール変性ポリビニルアルコール/ケン化度98mol%以上のポリビニルアルコール)は質量比で、20/80〜80/20が好ましい。この比率が上記の範囲内であることで、インク受容層の強度及び浸透性をさらに向上させることができる。
なお、インクジェット用記録媒体のインク受容層に用いられるバインダーの屈折率は、シリカと同程度(屈折率:1.45〜1.60)である。例えば、ポリビニルアルコールの屈折率は約1.52である。
(カチオン性ポリマー)
第一のインク受容層、第二のインク受容層においては、カチオン性ポリマーを含有していることが好ましい。カチオン性ポリマーの主な機能はアニオン性無機粒子の分散液中における分散剤であり、かつインク受容層の強度を高める機能を有する。
第一のインク受容層と第二のインク受容層においては、インク受容層中のバインダ(特に、ポリビニルアルコール)との相乗効果により、また、第一のインク受容層においては、更に基材との密着性が向上し、インク受容層の強度が向上する。
第一のインク受容層のカチオン性ポリマーの含有量は、インク受容層の強度及び色再現性の点から、シリカの含有量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
第一のインク受容層のカチオン性ポリマーの含有量は、シリカの含有量に対して、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であるとより好ましい。また、上記含有量は、30質量%以下であることが色再現性の点で好ましい。20質量%以下であると更に好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピリジン塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルイミダゾール、ポリビグアニド、ポリグアニド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミド−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミン−ジシアンジアミドアンモニウム縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、エピクロロヒドリン−ジアルキルアミンの付加ポリマー、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化イオウのコポリマー、ならびにこれらの誘導体などを挙げることができる。中でもポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミンが、色再現性とインク受容層の強度の点で好ましい。また、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
本発明において、カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、2,000以上100,000以下であることが好ましく、5,000以上100,000以下であることが色再現性とインク受容層の強度の点でより好ましい。更には10,000以上100,000以下がより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明において、第一のインク受容層及び第二のインク受容層のインク受容層は、これまで述べてきたもの以外のその他の添加剤を含有してもよい。具体的には、多価金属塩、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料などが挙げられる。
<バックコート層>
本発明においては、基材のインク受容層が設けられる面とは反対側の面に、ハンドリング性、搬送適性、多数枚積載での連続印字時の耐搬送擦過性を向上する目的でバックコート層を設けてもよい。バックコート層は、白色顔料やバインダーなどを含有することが好ましい。バックコート層の厚さは、乾燥塗工量が、0.2g/m以上2g/m以下となるようにすることが好ましい。
<インクの打ち込み量(付与量)>
記録媒体に付与されるインクの種類については特に制限はないが、顔料インクの場合に本発明の効果をより顕著に発現することができるため、好ましい。
プロフェッショナルユーザーがファインアートの分野で好適に利用する顔料インクを具備するインクジェットプリンターには、優れた色再現性を得るために非常に高い発色性が求められる。そのため、記録媒体へのインクの打ち込み量が単位面積当たりの最大打ち込み量で25g/m以上40g/m以下と非常に多い。本発明にかかる記録媒体は、そのようなインクの付与量が多いインクジェットプリンターを用いた場合においても、優れた色再現性及びインク吸収性が両立でき、かつ優れたインク受容層の強度を有することができる。
[記録媒体の製造方法]
本発明において、記録媒体を製造する方法は、特に限定されないが、インク受容層用の塗工液を調製する工程、及び、インク受容層用塗工液を基材に塗工する工程を有する記録媒体の製造方法であることが好ましい。以下、記録媒体の製造方法について詳細に説明する。
<基材の作製方法>
本発明において、基材の作製方法としては、一般的に用いられている抄紙方法を適用することができる。抄紙装置としては、例えば長網抄紙機、丸網抄紙機、円胴、ツインワイヤーなどが挙げられる。基材の表面平滑性を高めるために、抄紙工程中又は抄紙工程後に、熱及び圧力を加えて表面処理してもよい。具体的な表面処理方法としては、マシンカレンダーやスーパーカレンダーといったカレンダー処理が挙げられる。
<インク受容層の形成方法>
本発明の記録媒体において、基材にインク受容層を形成する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。まず、インク受容層用塗工液を調製する。次に、基材に上記インク受容層用塗工液を塗工する。その後、基材に塗工されたインク受容層用塗工液を乾燥することで、本発明の記録媒体を得ることができる。塗工液の塗工方法としては、カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター、エアナイフ、バーコーターなどを用いることができる。尚、塗工時に、塗工液を加温してもよい。また、塗工後の乾燥方法としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機や、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波などを利用した乾燥機を使用する方法などが挙げられる。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[記録媒体の作製]
<基材1の作製>
カナダ標準濾水度が450mLCSFのLBKP80部、カナダ標準濾水度が480mLCSFのNBKP20部、カチオン化澱粉0.60部、重質炭酸カルシウム10部、軽質炭酸カルシウム15部、アルキルケテンダイマー0.20部、カチオン性ポリアクリルアミド0.05部を混合し、固形分の含有量が3.0質量%となるように水を加えて、紙料を得た。次いで、紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で乾燥後の固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸、乾燥させ、更に、マシンカレンダー仕上げをして、紙基材である基材1を作製した。得られた基材1の物性は、坪量:320g/m、コッブサイズ度:15秒(Cob60)、透気度:50秒、ベック平滑度:1秒、ガーレー剛度:11.0mN、厚さ:230μm、紙密度:1.05であった。また、基材1の表面粗さをJISB0601−2001における算術平均粗さRa(カットオフ0.8mm)を測定したところ、1.5μmであった。
<基材2の作製>
コットンリンターパルプをダブルディスクリファイナーで叩解し、カナダ標準濾水度で330mlのパルプを得た。この叩解パルプ100部に、カチオン化澱粉0.60部、重質炭酸カルシウム10部、軽質炭酸カルシウム15部、アルキルケテンダイマー0.20部、カチオン性ポリアクリルアミド0.05部を混合し、固形分の含有量が3.0質量%となるように水を加えて、紙料を得た。次いで、紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で乾燥後の固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸、乾燥させ、更に、マシンカレンダー仕上げをして、紙基材である基材2を作製した。得られた基材2の物性は、坪量:320g/m、コッブサイズ度:15秒(Cob60)、透気度:50秒、ベック平滑度:0.5秒、ガーレー剛度:15.0mN、厚さ:400μm、紙密度:0.85であった。基材2の表面粗さをJISB0601−2001における算術平均粗さRa(カットオフ0.8mm)を測定したところ、1.5μmであった。
<記録媒体1の作製>
(第一のインク受容層塗工液)
純水中に、固形分換算で、湿式シリカGasilHP39(PQ Cooperation社製、平均粒子径10μm)75部、酸化チタンJR−405(テイカ製、0.21μm)25部、カチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(BASF製、CatioFastBP、重量平均分子量80000)5部を添加した。その後、水を加え、ミキサーで30分間撹拌し、分散液を調製した。分散液の平均粒子径をレーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所SALD−2300)で測定したところ、10.0μmであった。この分散液にバインダーとして、PVA235(クラレ株式会社製、重合度3500、ケン化度98モル%)を、固形分換算で、湿式シリカ100部に対して30部になるように加えた。この状態で、ミキサーで30分間撹拌し、記録媒体1の第一のインク受容層に用いる塗工液(第一のインク受容層塗工液)を調製した。
(インク受容層の作製)
上述の第一のインク受容層用塗工液を、上記で作製した基材1の基材の表面側にエアナイフで塗工した。このとき第一のインク受容層の厚さLが30μmとなるように塗工条件を調整した。続いて100℃で乾燥し、記録媒体1を得た。インク受容層の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRa(カットオフ値0.8mm)は、1.5μmであった。
<記録媒体2の作製>
(第一のインク受容層用塗工液)
純水中に、固形分換算で、湿式シリカGasilHP39(PQ Cooperation社製、平均粒子径10μm)90部、酸化チタンJR−405(テイカ製、0.21μm)10部、カチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(BASF製、CatioFastBP、重量平均分子量80000)5部を添加した。その後、水を加え、ミキサーで30分間撹拌し、分散液を調製した。分散液の平均粒子径をレーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所SALD−2300)で測定したところ、10.0μmであった。この分散液にバインダーとして、PVA235(クラレ株式会社製、重合度3500、ケン化度98モル%)を、固形分換算で、湿式シリカ100部に対して30部になるように加えた。この状態で、ミキサーで30分間撹拌し、記録媒体2の第一のインク受容層に用いる塗工液(第一のインク受容層用塗工液)を調製した。
(第二のインク受容層用塗工液)
純水中に、固形分換算で、湿式シリカGasilHP39(PQ Cooperation社製、平均粒子径10μm)100部、カチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(BASF製、CatioFastBP、重量平均分子量80000)5部を添加した。その後、水を加え、ミキサーで30分間撹拌し、分散液を調製した。分散液の平均粒子径をレーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所SALD−2300)で測定したところ、9.0μmであった。この分散液にバインダーとして、PVA235(クラレ株式会社製、重合度3500、ケン化度88モル%)を、固形分換算で、湿式シリカ100部に対して80部になるように加えた。そして、このバインダーが添加された分散液を、ミキサーで30分間撹拌し、記録媒体2の第二のインク受容層に用いる塗工液(第二のインク受容層用塗工液)を調製した。
(インク受容層の作製)
上述の第一のインク受容層用塗工液を、上記で作製した基材1の基材の表面側にエアナイフで塗工し、さらに、第一のインク受容層用塗工液が付与された面に、第二のインク受容層用塗工液を塗工する、という逐次塗工を行った。このとき、第一のインク受容層の厚さLが20μm、該第一のインク受容層の直上の第二のインク受容層の厚さLが10μmとなるように塗工条件を調整した。
続いて100℃で乾燥し、記録媒体2を得た。インク受容層の最表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRa(カットオフ値0.8mm)は、1.5μmであった。
<記録媒体3〜14の作製>
表1〜3に示す通りの配合で、記録媒体2と同様の方法により、記録媒体3〜14を作製した。インク受容層の塗工量(g/m)、インク受容層の厚さ(μm)、L/L比についても表1〜3に示す。
<記録媒体15の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP395(PQ Cooperation社製、平均粒子径15μm)75部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体15を作製した。
<記録媒体16の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP260(PQ Cooperation社製、平均粒子径7μm)75部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体16を作製した。
<記録媒体17の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP255(PQ Cooperation社製、平均粒子径5μm)75部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体17を作製した。
<記録媒体18の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP33(PQ Cooperation社製、平均粒子径3μm)75部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体18を作製した。
<記録媒体19の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP33(PQ Cooperation社製、平均粒子径1μm)を用い、ビーズミルにてさらに粉砕し、平均粒子径1μmの湿式シリカを作製した。この湿式シリカ75部を用いた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体19を作製した。
<記録媒体20の作製>
第一のインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP33(PQ Cooperation社製、平均粒子径1μm)を用い、ビーズミルにてさらに粉砕し、平均粒子径0.5μmの湿式シリカを作製した。この湿式シリカ75部を用いた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体20を作製した。
<記録媒体21の作製>
第ニのインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP260(PQ Cooperation社製、平均粒子径7μm)100部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体21を作製した。
<記録媒体22の作製>
第ニのインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP220(PQ Cooperation社製、平均粒子径8μm)100部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体22を作製した。
<記録媒体23の作製>
第ニのインク受容層の湿式シリカを湿式シリカP78D(水澤化学製、平均粒子径12μm)100部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体23を作製した。
<記録媒体24の作製>
第ニのインク受容層の湿式シリカを湿式シリカGasilHP395(PQ Cooperation社製、平均粒子径15μm)100部に変えた以外は記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体24を作製した。
<記録媒体25の作製>
第一のインク受容層の酸化チタンをJR−805(テイカ株式会社製、ルチル型、平均粒子径0.29μm)に変えた以外は、記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体25を作製した。
<記録媒体26の作製>
第一のインク受容層の酸化チタンをJA−1(テイカ株式会社製、アナターゼ型、平均粒子径0.18μm)に変えた以外は、記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体26を作製した。
<記録媒体27の作製>
基材として基材2のコットン基材を用いた以外は、記録媒体18と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体27を作製した。
<記録媒体28の作製>
第ニのインク受容層の無機粒子を湿式シリカGasilHP39(PQ Cooperation社製、平均粒子径10μm)80部、アルミナ水和物HP14(サソールケミカルズジャパン株式会社、平均粒子径0.15μm)に変えた以外は、記録媒体4と同様の配合で記録媒体2と同様の方法で、記録媒体28を作製した。
(実施例1〜25及び比較例1〜3)
上記記録媒体1〜28を用いて、以下の評価を行った。
[評価]
以下に、色再現性、インク吸収性、インク受容層の強度に関する評価方法を示す。下記の各評価において、記録媒体に画像を記録する際は、インクジェット記録装置はImagePROGRAF Pro−1000(キヤノン製)を用い、ファインアート高濃度、色補正無しの印字モードで印刷を実施した。また、上記インクジェット記録装置は顔料インクによって画像を記録する装置である。
尚、上記インクジェット記録装置では、解像度1200dpi×1200dpiで1/1200インチ×1/1200インチの単位領域に約4ngのインクを1滴付与する条件で記録された画像を、記録デューティが100%であると定義するものである。それぞれの評価結果は表4に示す。本発明においては、下記の各評価項目の評価基準のAA〜Bを好ましいレベルとし、C及びDを許容できないレベルとした。
<色再現性(色域体積)の評価>
上記記録媒体1〜28のそれぞれに対して、CIE−LAB空間における代表的な729色の色(729パッチ)を印字した。729パッチの中には記録媒体の白色部(非印字部)も含まれるこれらのL*値、a*値、b*値を蛍光分光濃度計(商品名:FD−7、コニカミノルタジャパン製)を用いてそれぞれ測定した。得られた729色のL*、a*、b*の値からなる色立体の体積値を算出し、評価を行った。評価基準が以下の通りである。
AA:色域体積が500k以上であった。
A:色域体積が480k以上500k未満であった。
B:色域体積が460k以上480k未満であった。
C:色域体積が440k以上460k未満であった。
D:色域体積が440k未満であった。
<インク吸収性の評価>
上記記録媒体1〜28のそれぞれに対して、温度:30℃、相対湿度:80%の環境で、ブリード評価用パターンの画像を形成した。ブリード評価用パターンは、ブラックのベタの領域内に、Cyan、Magenta、Yellow、Red、Green、Blueの5本の各細線(幅10μm)が存在する画像である。各色のインク打ち込み量を200%Dutyから350%Dutyまで10%Dutyずつ変化させた画像を作製した。このブリード評価用パターンの画像を各記録媒体に印字し、下記の評価基準に基づいて評価した。なお、ここでいう100%Dutyの定義は、1200dpi×1200dpiあたりに4ngのインク滴を1発打つこと定義する。
AA:Duty300%以上350%以下の範囲であってもブリードが生じなかった。
A:Duty280%以上300%未満の範囲でブリードが生じた。
B:Duty260%以上280%未満の範囲でブリードが生じた。
C:Dutyが240%以上260%未満の範囲でブリードが生じた。
D:Dutyが200%以上240%未満の範囲でブリードが生じた。
<インク受容層の強度の評価>
上記記録媒体1〜28のそれぞれに対して、ブラックのベタ印字を温度:24℃、相対湿度:50%の環境で行った。1日放置後、摩擦摩耗解析装置(協和界面化学株式会社、自動摩擦摩耗解析装置、TRIBOSTER TS501)を用い、先端に直径0.25mmΦのアタッチメントを取り付け、インク受容層の強度を測定した。
ブラックのベタ印字に対してかかる荷重を100g、125g、150g、200gと変更し、各記録媒体のインク受容層の強度を測定した。
AA:200g荷重でも、インク受容層は削れなかった。
A:200g荷重で、部分的にインク受容層が削れたが、150g荷重では削れなかった。
B:150g荷重で、部分的にインク受容層が削れたが、125g荷重では削れなかった。
C:125g荷重で、部分的にインク受容層が削れたが、100g荷重では全く削れなかった。
D:100g荷重で、インク受容層が削れた。
1 バインダー
2 酸化チタン
3 第一のインク受容層
4 シリカ
5 空隙

Claims (7)

  1. 基材と、第一のインク受容層と、第二のインク受容層とをこの順に有するインクジェット用記録媒体であって、
    前記第一のインク受容層は、平均粒子径が0.5μm以上のシリカ及び平均粒子径が0.5μm未満の酸化チタンを含有し、前記第一のインク受容層中における前記シリカと前記酸化チタンの質量比(シリカの含有量:酸化チタンの含有量)が90:10〜50:50であり、
    前記第二のインク受容層は、シリカを含有し、前記第二のインク受容層中における前記シリカの含有量が、前記第二のインク受容層中における無機粒子の全質量を基準として、80質量%以上100質量%以下であることを特徴とするインクジェット用記録媒体。
  2. 前記第一のインク受容層に含有される前記シリカの平均粒子径が0.5μm以上、10.0μm以下である請求項1に記載のインクジェット用記録媒体。
  3. 前記第一のインク受容層に含有される前記酸化チタンが、ルチル型の結晶構造を有する請求項1または2に記載のインクジェット用記録媒体。
  4. 前記前記第一のインク受容層に含有される前記酸化チタンの平均粒子径が、0.2μm以上、0.3μm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェット用記録媒体。
  5. 前記第二のインク受容層に含有される前記シリカの平均粒子径が、7.0μm以上、15.0μm以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェット用記録媒体。
  6. 前記第一のインク受容層は、バインダーを含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェット用記録媒体。
  7. 前記第二のインク受容層は、バインダーを含有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインクジェット用記録媒体。
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