JP2019147987A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、特許文献1に記載の方法では、圧延と加速冷却制御によるオンラインプロセスにより鋼板が製造されている。そのため、特に、板厚が25mm以下である薄物長尺材では、熱間圧延時および加速冷却時において、鋼板先尾端での温度偏差が生じやすくなり、全長に亘って安定的な機械特性を得ることができない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に板厚が25mm以下と薄い場合であっても、全長に亘って優れた耐衝撃性を有する鋼板およびその製造方法について提供することを目的とする。
(1)熱間圧延が終了し冷却された後の鋼板には、冷却偏差に起因する組織のばらつきが存在するが、この組織のばらつきは、2相域に再加熱することによって解消できる。
(2)板厚が薄い場合であっても、2相域での再加熱処理後の冷却パターンを制御することにより、板厚方向での粒径分布を制御でき、全長に亘って高い一様伸びを確保し耐衝撃性を担保できる。
1.質量%で、
C:0.05〜0.16%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.80〜1.60%、
P:0.05%以下および
S:0.02%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、
鋼板の表面から板厚方向に200μmまでの表層部におけるミクロ組織は、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
前記表層部以外の中間部のミクロ組織は、面積率で80%未満のフェライト相を含み、残部がベイナイト相およびパーライト相の一方または両方からなり、
前記表層部における平均結晶粒径SD(μm)と、前記中間部における平均結晶粒径CD(μm)が、下記(1)式を満足する鋼板。
記
2.0≦SD/CD・・・(1)
Cu:1.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下、
Ti:0.1%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.005%以下および
W:0.05%以下
の群より選択される1種または2種以上を含有する前記1に記載の鋼板。
[成分組成]
本発明の鋼板、および前記鋼板の製造に用いる鋼素材は、上述した成分組成を有する必要がある。該成分組成における各成分量の限定理由を以下に説明する。なお、以下の説明における「%」は、特に断らない限り「質量%」を表すものとする。
C:0.05〜0.16%
Cは、基地相(マトリクス)の硬さを増加させ、強度を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るためには、C含有量を0.05%以上とすることが必要である。一方、C含有量が0.16%を超えると、基地相の硬度が過度に上昇し、伸びが劣化する。このため、C含有量は0.16%以下とする。好ましくは、0.07〜0.15%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して固溶強化により基地相の硬さを増加させる元素である。前記効果を得るためには、Si含有量を0.10%以上とする必要がある。一方、Si含有量が0.50%を超えると、基地相の硬度が過度に上昇し、延性、靭性が低下するとともに、局所変形に伴うボイドの発生起点となる介在物量が増加する。このため、Si含有量は0.50%以下とする。好ましくは、0.20〜0.40%である。
Mnは、基地相の硬さを増加させ、強度を向上させる効果を有する元素である。前記効果を得るためには、Mn含有量を0.80%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が1.60%を超えると、溶接性が低下することに加えて、基地相の硬度が過度に上昇する。このため、Mn含有量は、1.60%以下とする。好ましくは、1.00〜1.50%である。
Pは、不可避的不純物として鋼に含まれる元素である。Pは、粒界に偏析し、母材および溶接部の靱性を低下させるなど、悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが好ましいが、0.05%以下の含有は許容できる。このため、P含有量は0.05%以下とする。一方、P含有量の下限は限定されないが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、不可避的不純物として鋼に含まれる元素である。Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、破壊の発生起点となるなど、悪影響を及ぼす元素であるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.02%以下の含有は許容できる。このため、S含有量は0.02%以下とする。S含有量は0.01%以下とすることが好ましい。一方、S含有量の下限は限定されないが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、S含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
なお、不可避的不純物としてO(酸素)およびNが含有される場合は、O含有量を0.0050%以下に、またN含有量を0.0050%以下に抑制することが好ましい。すなわち、Oの含有量が0.0050%を超えると、鋼板表面での介在物の存在割合が大きくなるため、介在物を起点としたき裂が発生しやすくなり、伸びが低下する虞れがある。同様に、不可Nの含有量が0.0050%を超えると、鋼板表面での介在物の存在割合が大きくなるため、介在物を起点としたき裂が発生しやすくなる虞れがある。
Cuは、基地相の硬さを増加させるとともに、鋼板の耐候性を向上させる効果を有する元素であり、所望の特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Cu含有量が1.0%を超えると溶接性が損なわれ、鋼材製造時に疵が生じやすくなる。従って、Cuを添加する場合は、1.0%以下とする。より好ましくは、0.01〜0.8%である。
Niは、低温靭性や耐候性を向上させ、またCuを添加した場合の熱間脆性を改善する効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Ni含有量が2.0%を超えると溶接性が損なわれ、また、鋼材コストが上昇する。従って、Niを添加する場合は、2.0%以下とする。より好ましくは、0.01〜1.5%である。
Crは、基地相の硬さを増加させ、また耐候性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Cr含有量が1.0%を超えると溶接性と靭性が損なわれる。従って、Crを添加する場合は、1.0%以下とする。より好ましくは、0.01〜0.8%である。
Moは、基地相の硬さを増加させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると溶接性と靭性が損なわれる。従って、Moを添加する場合は、1.0%以下とする。より好ましくは、0.001〜0.8%である。
Nbは、熱間圧延時におけるオーステナイトの再結晶を抑制して細粒化するとともに、熱間圧延後の空冷過程において析出することで強度を上昇させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Nb含有量が0.1%を超えるとNbCが多量に析出し、靭性が損なわれる。従って、Nbを添加する場合は、0.1%以下とする。より好ましくは、0.001〜0.08%である。
Vは、Nbと同様、熱間圧延時におけるオーステナイトの再結晶を抑制して細粒化するとともに、熱間圧延後の空冷過程において析出することで強度を上昇させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、V含有量が0.1%を超えるとVCが多量に析出し、靭性が損なわれる。従って、Vを添加する場合は、0.1%以下とする。より好ましくは、0.001〜0.08%である。
Tiは、窒化物形成傾向が強く、Nを固定して固溶Nを低減するため、母材および溶接部の靭性を向上させる効果を有する。また、Bを添加する場合には、Tiを合わせて添加することにより、TiがNを固定し、BがBNとして析出してしまうことを抑制できる。その結果、Bの焼入れ性向上効果を助長して、強度をさらに向上させることができる。そのため、所望する特性に応じて任意に添加することができる。しかし、Ti含有量が0.1%を超えるとTiCが多量に析出し、靭性が損なわれる。従って、Tiを添加する場合は、0.1%以下とする。より好ましくは、0.001〜0.08%である。
Bは、微量の添加でも焼入れ性を著しく向上させ、強度を上昇させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて添加することができる。しかし、B含有量が0.005%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、溶接性を低下させる。従って、Bを添加する場合は、0.005%以下とする。より好ましくは、0.0001〜0.004%である。
Caは、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制して、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性向上に寄与するため、所望する特性に応じて添加することができる。しかし、Ca含有量が0.005%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、鋼の清浄度が低下し、表面疵が多発し表面性状が低下する。従って、Caを添加する場合は、0.005%以下とする。より好ましくは、0.0001〜0.004%である。
Wは、基地相の硬さを増加させ、また耐候性を向上させるので、所望する特性に応じて添加することができる。しかし、W含有量が0.05%を超えると溶接性の劣化、あるいは合金コストの上昇を招く。従って、Wを添加する場合は、0.05%以下とする。より好ましくは、0.0001〜0.03%である。
次に、鋼板のミクロ組織を上記のように限定する理由について説明する。なお、ミクロ組織の説明における「%」は、特に断らない限り面積率を指すものとする。また、以下の説明における鋼板の「先端」とは、鋼板の圧延方向先端より尾端側へ500mm入った位置と定義する。同様に、鋼板の「尾端」とは、該鋼板の圧延方向尾端より先端側へ500mm入った位置と定義する。
鋼板の表面から板厚方向に200μmまでの表層部(以下、単に表層部という)におけるミクロ組織は、面積率で80%以上のフェライト相を含むものとする。すなわち、表層部に80%以上のフェライトを生成させて鋼板の表層を軟化させることにより、鋼板の厚み方向の全域における伸び特性(以下、全厚での伸び特性という)を顕著に向上させることができる。なぜなら、表層部におけるフェライト相の面積率が80%未満であると、ベイナイト相、パーライト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる硬質な残部組織が多く存在することになる。その結果、表層部の硬度が増大し、所望とする全厚での伸び特性を得ることができない。また、引張強さが過大となる場合があり、やはり所望とする全厚での機械特性を得ることができない。
鋼板の表面から板厚方向に200μmの位置と板厚の1/2の位置との間の中間部、すなわち前記表層部以外の部分である中間部(以下、単に「中間部」という)におけるミクロ組織を、面積率で80%未満のフェライト相を含み、残部がベイナイト相、パーライト相、またはベイナイト相とパーライト相との混合層とする。板厚中央部のミクロ組織が前記条件を満たさない場合、所望の強度及び一様伸びを得ることができない。
本発明の鋼板は、上記成分組成およびミクロ組織を有することに加えて、表層部における平均結晶粒径SD(μm)と、中間部における平均結晶粒径CD(μm)とが、下記(1)式を満足することが肝要である。
2.0≦SD/CD・・・(1)
上記(1)式の条件を満足することにより、特に、全厚での伸び特性に優れることが求められる薄物において、伸び特性が向上する。すなわち、SD/CDが2.0未満であると、次のような問題がある。例えば、板厚中央部の結晶粒が粗大である結果、SD/CDが2.0未満となる場合、結晶粒が大きい板厚中央部では局所的に脆性が低い領域が発生するため、脆性き裂あるいは延性破壊起点となるボイドが発生しやすくなる。また、表層部の結晶粒が微細である結果、SD/CDが2.0未満となる場合、表層部の結晶粒が微細化により硬化するため、全厚引張試験における伸びが低下すると共に、引張強さが所望よりも過大となる。そのため、SD/CDを2.0以上とする。好ましくは、2.2以上である。
同様に、中間部における平均結晶粒径CDは、5〜50μmであることが好ましい。
中間部における平均結晶粒径CDが5μm未満である場合には、細粒化に伴う降伏応力の上昇により引張強さが所望よりも過大となる。また、SDが50μmを超える場合には、局所的に脆性が低い領域が発生するため、脆性き裂あるいは延性破壊起点となるボイドが発生しやすくなる。
鋼板の引張強さ(TS)は、特に限定されないが、440MPa以上であることが好ましい。また、TSの上限も特に限定されないが、例えば、JISにおける490MPa(50kgf/mm2)級とする場合には、TSを610MPa以下とすればよい。また、JISにおける570MPa(60kgf/mm2)級とする場合には、TSの上下限をそれぞれ570MPaおよび720MPaとすればよい。本発明においては、鋼板の圧延方向における先端、中央および尾端の3カ所すべてにおいて、上記TSの条件を満たすことが好ましい。すなわち、鋼板の先端、中央および尾端の3カ所が前記条件を満たしていれば、鋼板の圧延方向全長に渡って前記条件を満たしている。なお、前記TSは、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明における「鋼板」とは、本技術分野における通常の定義に従い、厚さ6mm以上の鋼板を指すものとする。一方、本発明における鋼板の板厚の上限は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、先に述べたように鋼板の先尾端での温度偏差が大きくなりやすく、また全厚での伸び特性に優れることが求められる薄物において、本発明の効果は特に顕著となる。そのため、鋼板の板厚は、25mm以下とすることが好ましく、20mm以下とすることがより好ましい。
本発明の一実施形態においては、上述した成分組成を有する鋼素材に対し、下記の処理を順次施すことによって鋼板とする。
(1)加熱
(2)熱間圧延
(3)冷却
(4)再加熱
(5)冷却
(6)焼入れ
上記鋼素材としては、上記成分組成を有し、熱間圧延が可能なものであれば任意のものを用いることができるが、通常は鋼スラブとすればよい。例えば、前記成分組成を有する溶鋼を、転炉等の手段により溶製し、連続鋳造法等の鋳造方法で、スラブ等の鋼素材とすることができる。また、造塊−分解圧延法によりスラブ等の鋼素材とすることもできる。
上記成分組成を有する鋼素材を、900〜1200℃に加熱する。加熱温度が900℃未満であると、次の熱間圧延工程における鋼素材の変形抵抗が高くなり、熱間圧延機への負荷が増大し、熱間圧延が困難になる。そのため、加熱温度は900℃以上とする。前記加熱温度は950℃以上とすることが好ましい。一方、前記加熱温度が1200℃を超えると、鋼板の中間部の結晶粒が粗大化して靱性が低下するだけでなく、スラブ表面の酸化が著しくなり、地鉄−スケール界面の凹凸が鋭くなるため、製品後も表面の凹凸が残りやすくなる。このような表面の凹凸は、応力集中により延性破壊の発生起点となる虞がある。そのため、前記加熱温度は1200℃以下とする。好ましくは、1150℃以下とする。
次いで、加熱された前記鋼素材を熱間圧延して鋼板とする。その際、製品鋼板の基本性能である靭性を確保するため、鋼板の中間部において、オーステナイト粒の微細化を通じてフェライト粒を微細化する必要がある。そこで、熱間圧延における累積圧下率を50%以上とする。すなわち、累積圧下率が50%未満の場合は、鋼板の中間部のフェライト粒が微細化せず、局所的に脆性が低い領域が発生し、脆性き裂が発生しやすくなる。熱間圧延工程に関する他の条件は特に限定されない。
次に、熱間圧延終了後の鋼板を冷却する(第1の冷却工程)。前記冷却工程では、室温まで冷却することが好ましい。なお、前記冷却は、任意の方法、例えば、空冷または加速冷却により行うことができる。
次いで、冷却された前記鋼板を、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度(再加熱温度)に再加熱する。このようにフェライトとオーステナイトとの2相域に加熱することにより、加熱前の熱延板組織を損なうことなく、熱間圧延において鋼板全長にわたって導入された冷却偏差に起因する機械的特性のばらつきを解消することができる。再加熱温度がAc3点以上であると、熱延板組織のうち中間部のオーステナイトが成長して粗大化する結果、局所的に靭性が低い領域が発生し、脆性き裂あるいは延性破壊起点となるボイドが発生しやすくなる。一方、再加熱温度がAc1点未満であると、熱延板組織の表層が適度に粗大化せず、表層部の軟質化による全厚伸びの向上効果が得られない。
Ac1(℃)=723+22×Si−14×Mn−14.4×Ni+23.3×Cr…(2)
また、Ac3変態点は、下記(3)式により求めることができる。
Ac3(℃)=912.0−230.5×C+31.6×Si−20.4×Mn−39.8×Cu−18.1×Ni−14.8×Cr+16.8×Mo…(3)
ここで、上記(2)、(3)式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
上記再加熱工程で再加熱された鋼板を、400℃〜600℃の冷却停止温度まで冷却する(第2の冷却工程)。その際、平均冷却速度を3〜20℃/sとする。すなわち、前記平均冷却速度が3℃/s未満であると、パーライトがバンド状に生成し、バンド組織に沿った延性き裂が生じやすくなるため、伸びが低下する。また、前記平均冷却速度が3℃/s未満であると、鋼板の中間部においてフェライトが過剰に生成し鋼板全体が軟質化し所望の機械特性を得ることが出来ない。一方、前記平均冷却速度が20℃/sを超える場合、鋼板の表層部の結晶粒が微細化し硬化するため、全厚引張試験における伸びが低下する。また、冷却停止温度が400℃未満の場合は、板厚中央部においてフェライトが過剰に生成するため鋼板全体が軟質化し、所望の機械特性を得ることが出来ない。一方、冷却停止温度が600℃を超える場合、その後の焼入れ工程にて鋼板表層の結晶粒が微細化し硬化する、あるいは硬質なベイナイトやマルテンサイトが過剰に生成するため、全厚引張試験における伸びが低下する。
上記冷却停止温度まで冷却された前記鋼板に焼入れを施す。上記冷却停止から焼入れ開始までの間隔が開くと、フェライト相以外の第2相の硬度低下をまねくことから、冷却停止から焼入れ開始までの時間は60秒以内とすることが好ましい。より好ましくは、30秒以内とする。なお、焼入れは、特に限定されることなく、任意の条件で行うことができる。例えば、焼入れ温度は、400〜600℃の範囲とし、Mf点以下の温度、好ましくは200℃以下まで水冷する。
Mf(℃)=410.5−407.3×C−7.3×Si−37.8×Mn−20.5×Cu−19.5×Ni−19.8×Cr−4.5×Mo…(4)
ここで、上記(4)式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
表1に示す組成の溶鋼を溶製し、鋼素材(スラブ)とした。なお、表1に示したAc1点、Ac3点およびMf点の値は、それぞれ上述した(2)、(3)および(4)式に従って求めた値である。
なお、比較のため、一部の比較例(表2のNo.20)では再加熱後に本発明の条件を満たす冷却を行うこと無く、すぐに焼入れを行った。前記比較例における焼入れ条件は、平均冷却速度44.0℃/s、冷却停止温度110℃とした。
(1)引張試験
鋼板の幅中央部から板幅方向が引張方向と一致するように採取したJIS Z 2201 1B号の全厚試験片を用いて引張試験を実施し、引張強さ(TS)および全厚伸びを求めた。引張強さは440MPa以上を合格とした。伸び特性は20%以上を合格とした。
以下の手順でミクロ組織を観察し、表層部におけるフェライト相の面積率、中間部におけるフェライト相の面積率、および中間部におけるフェライト相以外の残部組織を評価した。
まず、得られた鋼板から、観察面が圧延方向に垂直な断面(板厚方向断面)となるように組織観察用試験片を採取し、鏡面となるまで研磨した後、腐食液(硝酸メタノール溶液)で腐食し、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、鋼板表面から板厚方向に板厚中央位置(1/2位置)まで観察し、画面が連続するように撮像した。得られた組織写真を用い、画像解析により相を同定し、フェライト相の面積率を算出した。前記フェライト相の面積率としては、鋼板の表層部におけるフェライト相の面積率の平均値と、中間部におけるフェライト相の面積率の平均値とを共に求めた。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.05〜0.16%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.80〜1.60%、
P:0.05%以下および
S:0.02%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、
鋼板の表面から板厚方向に200μmまでの表層部におけるミクロ組織は、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
前記表層部以外の中間部のミクロ組織は、面積率で80%未満のフェライト相を含み、残部がベイナイト相およびパーライト相の一方または両方からなり、
前記表層部における平均結晶粒径SD(μm)と、前記中間部における平均結晶粒径CD(μm)が、下記(1)式を満足する鋼板。
記
2.0≦SD/CD・・・(1) - 前記成分組成は、さらに質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:2.0%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下、
Ti:0.1%以下、
B:0.005%以下、
Ca:0.005%以下および
W:0.05%以下
の群より選択される1種または2種以上を含有する請求項1に記載の鋼板。 - 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を900〜1200℃に加熱し、次いで累積圧下率が50%以上の熱間圧延を施して鋼板とし、前記鋼板を冷却してからAc1変態点以上Ac3変態点未満の温度域に再加熱し、該再加熱された鋼板を3〜20℃/sの平均冷却速度で400℃〜600℃の冷却停止温度まで冷却した後、焼入れを施す鋼板の製造方法。
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