JP2019147815A - バース症候群の予防または治療のための方法及び組成物 - Google Patents

バース症候群の予防または治療のための方法及び組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】バース症候群(Barth Syndrome)を予防又は治療するための組成物及び方法、バース症候群に関連する危険因子を減少させるための組成物及び方法、並びに/又はバース症候群の重症度を減少させるための組成物及び方法の提供。【解決手段】バース症候群の治療又は予防を必要とする対象における、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はその薬学的に許容される塩を含む組成物。前記対象が、正常対照対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を示す、前記組成物。【選択図】図1

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年3月1日出願の米国仮特許出願第61/771,534号、2013年3月1日出願の同第61/771,642号、及び2013年6月26日出願の同第61/839,753号の優先権を主張するものであり、これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
(技術分野)
本技術は、概して、バース症候群(Barth Syndrome)を予防または治療するための組成物及び方法、バース症候群に関連する危険因子を減少させるための組成物及び方法、ならびに/またはバース症候群の重症度を減少させるための組成物及び方法に関する。具体的には、本技術は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを対象に投与してTAZ1の発現レベルを正規化することに関する。
次の説明は、読者の理解の助けとなるように提供される。提供される情報または引用される参考文献のどれもが、本発明に対する先行技術であると認められない。
バース症候群は、拡張型心筋症(DCM)、骨格ミオパチー、好中球減少症、成長遅延、及び有機酸性尿を特徴とするリン脂質代謝の遺伝性障害である。バース症候群の有病率は、地理的位置に応じて1/400,000〜1/140,000の範囲に及ぶ推定発生率で、1/454,000出生数と推定される。バース症候群は、X連鎖性障害であり、したがって不均衡に男性患者に影響する。
バース症候群は、ミトコンドリアの内膜に局在化するリン脂質であるカルジオリピンの代謝に関与するアシル転移酵素であるTAZ1をコードする、TAZ遺伝子(タファジン;Xq28)の変異によって生じる。欠陥TAZ1機能は、カルジオリピンの異常リモデリングをもたらし、ミトコンドリア構造及び呼吸鎖機能を損なう。
一態様では、本開示は、バース症候群の治療または予防を必要とする対象におけるバース症候群を治療または予防するための方法を提供し、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩をその対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、対象は、正常対照対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を示す。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6週間以上にわたって毎日投与される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、12週間以上にわたって毎日投与される。
いくつかの実施形態では、対象は、バース症候群を有すると診断されている。いくつかの実施形態では、バース症候群は、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される。
いくつかの実施形態では、方法は、心血管薬剤を対象に個別に、連続して、または同時に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、心血管薬剤は、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体(cardioglycoside)、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む。
一態様では、本開示は、TAZ1の発現の上昇を必要とする哺乳類対象におけるTAZ1の発現を上昇させるための方法を提供し、その方法は、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩をその対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、対象におけるTAZ1の発現は、正常対照対象におけるTAZ1発現のレベルより約2〜5倍少ない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、6週間以上にわたって毎日投与される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、12週間以上にわたって毎日投与される。
いくつかの実施形態では、対象は、バース症候群を有すると診断されているか、バース症候群を有する疑いがあるか、またはバース症候群を有する危険性がある。いくつかの実施形態では、バース症候群は、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される。
いくつかの実施形態では、方法は、心血管薬剤を対象に個別に、連続して、または同時に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、心血管薬剤は、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体(cardioglycoside)、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む。
一態様では、本開示は、正常対照対象と比較して減少したTAZ1の発現を有する哺乳類対象におけるバース症候群の危険性を低下させるための方法を提供し、その方法は、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
一態様では、本開示は、バース症候群を有するか、またはバース症候群を有する疑いのある哺乳類対象におけるカルジオリピンリモデリングを安定化するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、哺乳類対象は、正常対照対象と比較して減少したTAZ1の発現を有する。いくつかの実施形態では、カルジオリピンは、18:2のカルジオリピン種である。
心不全のイヌモデルにおけるカルジオリピン種18:2−18:2−18:2−18:2のレベルでのD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を示すチャートである。 心不全のイヌモデルにおけるTAZ1発現のレベルでのD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を示すチャートである。 バース症候群患者のミトコンドリアの電子顕微鏡による画像である。 心疾患のミトコンドリアの超微細構造の電子顕微鏡による画像である。 D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2で治療した心疾患のミトコンドリアの超微細構造の電子顕微鏡による画像である。 心疾患のミトコンドリアの組織の電子顕微鏡による画像である。 D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2で治療した心疾患のミトコンドリアの組織の電子顕微鏡による画像である。
本発明の特定の態様、様式、実施形態、多様性、及び特徴が、本発明の実質的理解を提供するために様々なレベルの詳細で以下に説明されることを理解されたい。本明細書に使用されるときの特定の用語の定義が、以下に提供される。別段に定義されない限り、本明細書に使用される全ての専門用語及び科学用語は、一般に、本発明が属する当業者によって通常理解されている意味と同一の意味を有する。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記(the)」は、別途明示的に示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組み合わせ等を含む。
本明細書で使用されるとき、対象への薬剤、薬物、またはペプチドの「投与」は、対象に化合物を導入または送達してその意図する機能を実施する、任意の経路を含む。投与は、経口的、鼻腔内、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所的を含む任意の好適な経路によって実行することができる。投与は、自己投与及び別のものによる投与を含む。
本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸ミメティックを含む。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびに例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリン等、後に修飾されるこれらのアミノ酸である。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)と結合するα−炭素と同様の塩基性化学構造を有する化合物を指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸のような同じ塩基性化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。アミノ酸は、それらの公知の3文字記号のいずれかによって、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号によって、本明細書に参照され得る。
本明細書で使用されるとき、「有効量」という用語は、所望の治療効果及び/または予防効果を達成するのに十分な量を指し、例えば、TAZ1の発現レベル(例えば、TAZ1の発現レベル)の上昇を必要とする対象においてTAZ1の発現レベルの上昇(例えば、正規化)をもたらす量である。治療的または予防的用途の状況では、いくつかの実施形態では、対象に投与される組成物の量は、疾患の種類及び重症度、及び健康全般、年齢、性別、体重及び薬物耐性等の個々の特性に依存するであろう。いくつかの実施形態では、それはまた、疾患の程度、重症度、及び種類に依存するであろう。当業者であれば、これら及び他の要素に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。組成物はまた、1つ以上の更なる治療化合物との組み合わせで投与することができる。本明細書に説明される方法では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩は、例えば、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または肺炎等の頻繁な細菌感染症等のバース症候群の1つ以上の徴候、症状、または危険因子を有する対象に投与され得る。例えば、芳香族カチオン性ペプチドの「治療有効量」は、対象のTAZ1発現のレベルが投与後に上昇するときの濃度、及び/またはバース症候群の1つ以上の徴候、症状、または危険因子の存在、頻度、または重症度が減少または排除されるときの濃度を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は、バース症候群の生理的影響、及び/またはバース症候群の危険因子、及び/またはバース症候群にかかる可能性を低下または改善する。
本明細書で使用されるとき、「バース症候群」という用語は、TAZ1アシル転移酵素の欠損によって生じるリン脂質代謝の遺伝性障害を指す。バース症候群の徴候及び症状としては、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または肺炎等の頻繁な細菌感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「TAZ1」または「タファジン」という用語は、TAZ遺伝子によってコードされるヒトX染色体アシル転移酵素を指す。TAZ1イソ型の実例となるシーケンスは、例えば、GenBank受託番号NM_000116.3、NM_181311.2、NM_181312.2、及びNM_181313.2によって所与される。
本明細書で使用されるとき、「単離した」または「精製した」ポリペプチドまたはペプチドは、細胞材料または薬剤が由来する細胞または組織供給源からの他の混入ポリペプチドを実質的に含まない、または化学前駆体または化学的に合成された場合他の化学物質を実質的に含まない、ポリペプチドまたはペプチドを指す。例えば、単離芳香族カチオン性ペプチドは、薬剤の診断用または治療用使用と干渉するであろう材料を含まないであろう。このような干渉材料としては、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性及び非タンパク質性溶質が挙げられ得る。
本明細書で使用されるとき、対象のTAZ1発現のレベルを「正規化する」ことは、「正常」または野生型発現レベルの方向で対象のTAZ1発現のレベルを変化させることを指す。例えば、正常な対象と比較して低下したTAZ1発現を持つ対象のTAZ1発現レベルを正規化することは、TAZ1発現のレベルを上昇させることを指す。いくつかの実施形態では、対象においてTAZ1発現を正規化することは、例えば、未治療の対照対象と比較して低下したTAZ1発現の程度を減弱させることまたは低下させることを指す。
本明細書で使用されるとき、対象のTAZ1発現レベルを「上昇させる」ことは、器官または組織において対象のTAZ1のレベル(例えば、RNA及び/またはタンパク質レベル等の対象のTAZ1発現レベル)を上昇させることを意味する。いくつかの実施形態では、TAZ1発現レベルを上昇させることは、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上の上昇である。あるいは、または加えて、いくつかの実施形態では、TAZ1発現レベルを上昇させることは、TAZ1発現が対象において減少する範囲内での減弱または低下として測定される。いくつかの実施形態では、TAZ1低下は、約0.25倍〜約0.5倍、約0.5倍〜約0.75倍、約0.75倍〜約1.0倍、または約1.0倍〜約1.5倍、減少される。
本明細書で使用されるとき、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書に互換的に使用されて、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわち、ペプチドイソスターによって互いに結合する2つ以上のアミノ酸を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、ペプチド、グリコペプチド、またはオリゴマーとして通常言及される短鎖、及びタンパク質として一般に言及されるより長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20の遺伝子コードしたアミノ酸よりもアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセス等の自然プロセスによって、または当該技術分野において周知である化学修飾技術によって、のいずれかで修飾されるアミノ酸配列を含有する。
本明細書で使用されるとき、「同時」治療用の使用という用語は、同じ経路による、かつ同時または実質的に同時に少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
本明細書で使用されるとき、「別個」の治療用の使用という用語は、同時または実質的に同時に異なる経路による少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
本明細書で使用されるとき、「連続」の治療用の使用という用語は、同一または異なる投与経路での、異なる時期での少なくとも2つの活性成分の投与を指す。より具体的には、連続使用とは、他のものの投与または他のものが開始する前の活性成分のうちの1つのものの全投与を指す。したがって、他の活性成分または複数の活性成分を投与する前に、数分、数時間、または数日にわたって活性成分のうちの1つを投与することが、可能である。この場合には、同時治療は、存在しない。
本明細書で使用されるとき、「治療する」または「治療」または「軽減」という用語は、治療用の治療を指し、その目的は、標的とする病理的状態または疾患を、予防、低下、軽減、または遅らせる(緩和させる)ことである。対象は、成功裡に、本明細書に説明される方法に従って、該当する場合、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の治療量を受け取った後に、バース症候群が成功裡に「治療」されるが、対象は、例えば、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または肺炎等の頻繁な細菌感染症等のバース症候群の1つ以上の徴候及び症状における観察可能な及び/または可測低下またはそれらの観察可能な及び/または可測なものが存在しないことを示す。説明されるような医療状態の治療または予防の種々の様式が、「実質的な」ものであることを意味するように意図され、それは、総合的な治療または予防だけではなく総合的な治療または予防未満のものも含み、いくつかの生物学的または医学的に関連した結果が達成されることもまた理解されたい。本明細書で使用されるとき、バース症候群を治療することはまた、その症候群の低下したTAZ1発現レベル特性を治療し、それにより治療前の対象のTAZ1発現のレベルと比較してTAZ1発現の上昇を引き起こすことを指す。
本明細書で使用されるとき、障害または状態の「予防」またはそれらを「予防する」ことは、統計資料において、未治療の対照試料と比較して治療された試料における障害または状態の症状の発生を低下させる、または未治療の対照試料と比較して障害または状態の1つ以上の症状のオンセットを遅延させるかまたは重症度を軽減させる、化合物を指す。本明細書で使用されるとき、バース症候群を予防することは、バース症候群の開始を予防することまた遅延させること、バース症候群の進行または増進を予防すること、遅延させること、または遅らせること、及び/またはバース症候群の進行を逆行させること、を含む。本明細書で使用されるとき、バース症候群の予防は、バース症候群の1つ以上の徴候または症状の再発を予防することも含む。
芳香族カチオン性ペプチド
本技術は、バース症候群を予防または治療する必要がある対象においてバース症候群を予防または治療するための方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、対象におけるバース症候群の1つ以上の徴候または症状を予防する。いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、対象におけるTAZ1発現のレベルを上昇させる。いくつかの実施形態では、本方法及び組成物は、バース症候群の危険因子を持つ対象がバース症候群の1つ以上の徴候または症状を生じる可能性を低下させる。
芳香族カチオン性ペプチドは、水溶性及び高度に極性である。これらの特性にもかかわらず、ペプチドは、細胞膜に容易に浸透できる。芳香族カチオン性ペプチドは、典型的に、ペプチド結合によって共有結合的に結合される最低3つのアミノ酸または最低4つのアミノ酸を含む。芳香族カチオン性ペプチドに存在するアミノ酸の最大数は、ペプチド結合によって共有結合的に結合される約20のアミノ酸である。好適には、アミノ酸の最大数は、約12、より好ましくは約9、及びもっとも好ましくは約6である。
芳香族カチオン性ペプチドのアミノ酸は、任意のアミノ酸であり得る。本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのアミノ基及び少なくとも1つのカルボキシル基を含有する任意の有機分子を指すように使用される。典型的には、少なくとも1つのアミノ基は、カルボキシル基に対する位置である。アミノ酸は、天然に存在するものであり得る。天然に存在するアミノ酸は、例えば、哺乳類のタンパク質中に通常見出される20のもっとも一般的な左旋性(L)アミノ酸、すなわち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン、(Trp)、チロシン(Tyr)、及びバリン(Val)を含む。他の天然に存在するアミノ酸は、例えば、タンパク質合成と関連付けられない代謝プロセスにおいて合成されるアミノ酸を含む。例えば、アミノ酸オルニチン及びシトルリンは、尿素の生成中、哺乳類の代謝において合成される。天然に存在するアミノ酸の別の例は、ヒドロキシプロリン(Hyp)を含む。
ペプチドは、任意に、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含有する。最適には、ペプチドは、天然に存在するアミノ酸を有しない。天然に存在しないアミノ酸は、左旋性(L−)、右旋性(D−)、またはこれらの混合物であってもよい。天然に存在しないアミノ酸は、生物の正常な代謝プロセスにおいて典型的に合成されないそれらのアミノ酸であり、タンパク質中で自然発生しない。加えて、天然に存在しないアミノ酸はまた、好適に、共通プロテアーゼによって認識されない。天然に存在しないアミノ酸は、ペプチド中の任意の位置に存在できる。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、N−終端、C−終端に、またはN−終端とC−終端との間の任意の位置に存在できる。
非天然アミノ酸は、例えば、天然アミノ酸中に見出されないアルキル基、アリール基、またはアルキルアリール基を含み得る。非天然アルキルアミノ酸のいくつかの例としては、−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、δ−アミノ吉草酸、及びε−アミノカプロン酸が挙げられる。非天然アリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト−、メタ、及びパラ−アミノ安息香酸が挙げられる。非天然アルキルアリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト−、メタ−、及びパラ−アミノフェニル酢酸、及びγ−フェニル−β−アミノ酪酸が挙げられる。天然に存在しないアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸の誘導体を含む。天然に存在するアミノ酸の誘導体は、例えば、天然に存在するアミノ酸への1つ以上の化学基の添加を含み得る。
例えば、1つ以上の化学基は、フェニルアラニンまたはチロシン残基の芳香族環の2’、3’、4’、5’、または6’位置、またはトリプトファン残基のベンゾ環の4’、5’、6’、または7’のうちの1つ以上に添加され得る。本基は、芳香族環に添加され得る任意の化学基であり得る。このような基のいくつかの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、またはt−ブチル、C1〜C4アルキルオキシ(すなわち、アルコキシ)、アミノ、C1〜C4アルキルアミノ及びC1〜C4ジアルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)等の分岐鎖または非分岐鎖C1〜C4アルキルが挙げられる。天然に存在するアミノ酸の天然に存在しない誘導体いくつかの具体的な例としては、ノルバリン(Nva)及びノルロイシン(Nle)が挙げられる。
ペプチド中のアミノ酸の修飾の別の例は、アスパラギン酸のカルボキシル基またはペプチドのグルタミン酸残基の誘導体化である。誘導体化の1つの例は、アンモニアを伴うまたはメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、またはジエチルアミン等の1級または2級アミンを伴うアミド化である。誘導体化の別の例としては、例えば、メチル、またはエチルアルコールを伴うエステル化が挙げられる。別のこのような修飾としては、リジン、アルギニン、またはヒスチジン残基のアミノ基の誘導体化が挙げられる。例えば、このようなアミノ基は、アシル化され得る。いくつかの好適なアシル基としては、例えば、ベンゾイル基またはアセチルまたはプロピオニル基等の上述のC1−C4アルキル基のうちの任意のものを含むアルカノイル基が挙げられる。
天然に存在しないアミノ酸は、好適に、共通プロテアーゼに対して耐性であるかまたは非感受性である。プロテアーゼに対して耐性であるかまたは非感受性である天然に存在しないアミノ酸の例としては、上述の天然に存在するL−アミノ酸、ならびにL−及び/またはD−天然に存在しないアミノ酸のうちの任意のものの右旋性(D−)形態が挙げられる。D−アミノ酸は、通常、タンパク質中に存在しないが、それらは、細胞の正常なリボソームタンパク質合成機構以外の方法によって合成される特定のペプチド抗生物質において見出される。本明細書で使用されるとき、D−アミノ酸は、天然に存在しないアミノ酸であると考慮される。
アミノ酸が天然に存在するかまたは天然に存在しないかに関係なく、プロテアーゼ感受性を最小限に抑えるために、ペプチドは、5未満、好ましくは4未満、より好ましくは3未満、及びもっとも好ましくは2未満の共通プロテアーゼによって認識される近接するL−アミノ酸を有すべきである。最適には、ペプチドは、D−アミノ酸、及び非L−アミノ酸のみを有する。ペプチドがアミノ酸のプロテアーゼ感受性配列を含む場合、アミノ酸のうちの少なくとも1つは、好ましくは、天然に存在しないD−アミノ酸であり、よって、プロテアーゼ耐性を与える。プロテアーゼ感受性配列の例としては、エンドペプチダーゼ及びトリプシン等の共通プロテアーゼによって容易に開裂される2つ以上の近接する塩基性アミノ酸が挙げられる。塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられる。
芳香族カチオン性ペプチドは、ペプチド中のアミノ酸残基の合計数と比較して生理的pHの最小数の正味正電荷を有するべきである。生理的pHの最小数の正味正電荷は、以下(pm)として参照されるであろう。ペプチド中のアミノ酸残基の合計数は、以下(r)として参照されるであろう。以下に考察される最小数の正味正電荷は、全て、生理的pHである。本明細書で使用されるとき、「生理的pH」という用語は、哺乳類の身体の組織及び器官の細胞における正常pHを指す。例えば、ヒトの生理的pHは、通常、約7.4であるが、哺乳類の正常な生理的pHは、約7.0〜約7.8の任意のpHであり得る。
本明細書で使用されるとき、「正味電荷」は、ペプチド中に存在するアミノ酸によって担持される正電荷の数及び負電荷の数のバランスを指す。本出願では、正味電荷は、生理的pHで測定されることが理解される。生理的pHで正荷電された天然に存在するアミノ酸としては、L−リジン、L−アルギニン、及びL−ヒスチジンが挙げられる。生理的pHで負電荷された天然に存在するアミノ酸としては、L−アスパラギン酸及びL−グルタミン酸が挙げられる。
典型的には、ペプチドは、正荷電されたN−末端アミノ基及び負電荷されたC−末端カルボキシル基を有する。電荷は、生理的pHで互いに相殺する。正味電荷を計算する例としては、ペプチドTyr−Arg−Phe−Lys−Glu−His−Trp−D−Argは、1つの負電荷されたアミノ酸(すなわち、Glu)及び4つの正荷電されたアミノ酸(すなわち、2つのArg残基、1つのLys、及び1つのHis)を有する。よって、上のペプチドは、3つの正味正電荷を有する。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、生理的pHの正味正電荷の最小数(pm)と3pmがr+1以下である最大数であるアミノ酸残基の合計数(r)との間に関係性を有する。この実施形態では、正味正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の合計数(r)との間の関係性は次の通りである:
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、正味正電荷の最小数(pm)と2pmがr+1以下である最大数であるアミノ酸残基の合計数(r)との間に関係性を有する。この実施形態では、正味正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の合計数(r)との間の関係性は次の通りである:
一実施形態では、正味正電荷の最小数(pm)及びアミノ酸残基の合計数(r)は、等しい。別の実施形態では、ペプチドは、3つまたは4つのアミノ酸残基、及び最低1つの正味正電荷、好適には、最低2つの正味正電荷、及びもっとも好ましくは最低3つの正味正電荷を有する。
芳香族カチオン性ペプチドが、正味正電荷の合計数(pt)と比較して最小数の芳香族基を有することもまた重要である。最小数の芳香族基は、以下(a)として参照されるであろう。芳香族基を有する天然に存在するアミノ酸としては、アミノ酸ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニンが挙げられる。例えば、ヘキサペプチドLys−Gln−Tyr−D−Arg−Phe−Trpは、2つの正味正電荷(リジン及びアルギニン残基によって寄与される)及び3つの芳香族基(チロシン、フェニルアラニン、及びトリプトファン残基によって寄与される)を有する。
芳香族カチオン性ペプチドは、ptが1であり、aがまた1であり得ることを除いて、芳香族基の最小数(a)と、3aがpt+1以下である生理的pH(pt)の正味正電荷の合計数との間にもまた関係性を有するべきである。この実施形態では、芳香族基(a)の最小数と正味正電荷の合計数(pt)との間の関係性は、次の通りである:
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、芳香族基の最小数(a)と、2aがpt+1以下である生理的pH(pt)の正味正電荷の合計数との間に関係性を有するべきである。この実施形態では、芳香族アミノ酸残基の最小数(a)と正味正電荷の合計数(pt)との間の関係性は、次の通りである:
別の実施形態では、芳香族基の数(a)及び正味正電荷の合計数(pt)は、等しい。
カルボキシル基、特に、C−末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、好適に、C−末端アミドを形成するために、例えば、アンモニアと一緒にアミド化される。あるいは、C−末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、任意の1級または2級アミンと一緒にアミド化され得る。1級または2級アミンは、例えば、アルキル、特に、分岐鎖または非分岐鎖C1−C4アルキル、またはアリールアミンであり得る。したがって、ペプチドのC−終端のアミノ酸は、アミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N,N−ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド、N−フェニルアミド、またはN−フェニル−N−エチルアミド基に変換され得る。芳香族カチオン性ペプチドのC−終端に存在しないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸残基の遊離カルボキシレート基はまた、それらがペプチド内に存在する場合はいつでも、アミド化され得る。これらの内部位置でのアミド化は、アンモニアかまたは上述の1級または2級アミンのうちの任意のものと一緒であり得る。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2つの正味正電荷及び少なくとも1つの芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。1つの具体的な実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2つの正味正電荷及び2つの芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
芳香族カチオン性ペプチドとしては、次のペプチド例が挙げられるが、これらに限定されない:

一実施形態では、ペプチドは、ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有する(すなわち、それらは、ミュー−オピオイド受容体を活性化させる)。ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、典型的に、N−終端(すなわち、第1のアミノ酸位置)でチロシン残基またはチロシン誘導体を有する、それらのペプチドである。チロシンの好適な誘導体としては、2’−メチルチロシン(Mmt);2’,6’−ジメチルチロシン(2’6’−Dmt);3’,5’−ジメチルチロシン(3’5’Dmt);N,2’,6’−トリメチルチロシン(Tmt);及び2’−ヒドロキシ−6’−メチルチロシン(Hmt)が挙げられる。
一実施形態では、ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、式Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2は、アミノ酸チロシン、アルギニン、及びリジンによって寄与される3つの正味正電荷を有し、アミノ酸フェニルアラニン及びチロシンによって寄与される2つの芳香族基を有する。Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2のチロシンは、式2’,6’−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する化合物を生成するために2’,6’−ジメチルチロシン等のチロシンの修飾誘導体であり得る。2’,6’−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2は、640の分子量を有し、生理的pHの正味の3つの正電荷を担持する。2’,6’−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2は、エネルギー独立様式でいくつかの哺乳類の細胞型の形質膜に容易に浸透する(Zhao,et al.,J.Pharmacol Exp Ther.,304:425−432,2003)。
あるいは、他の事例では、芳香族カチオン性ペプチドは、ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有しない。例えば、慢性疾患状況または状態等の長期治療中には、ミュー−オピオイド受容体を活性化させる芳香族カチオン性ペプチドの使用は、禁忌であり得る。これらの事例では、芳香族カチオン性ペプチドの潜在的に有害かまたは依存性効果は、ヒト患者または他の哺乳類の治療計画においてミュー−オピオイド受容体を活性化させる芳香族カチオン性ペプチドの使用を妨げ得る。潜在的に有害な効果は、鎮静作用、便秘症、及び呼吸抑制作用を含み得る。このような事例では、ミュー−オピオイド受容体を活性化しない芳香族カチオン性ペプチドは、適切な治療であり得る。ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有しないペプチドは、一般に、N−終端(すなわち、アミノ酸位置1)でチロシン残基またはチロシンの誘導体を有しない。N−終端のアミノ酸は、チロシン以外の任意の天然に存在するかまたは天然に存在しないアミノ酸であり得る。一実施形態では、N−終端のアミノ酸は、フェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの例示的な誘導体は、2’−メチルフェニルアラニン(Mmp)、2’,6’−ジメチルフェニルアラニン(2’,6’−Dmp)、N,2’,6’−トリメチルフェニルアラニン(Tmp)、及び2’−ヒドロキシ−6’−メチルフェニルアラニン(Hmp)を含む。
ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有しないこのような芳香族カチオン性ペプチドの例は、式Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。あるいは、N−末端フェニルアラニンは、2’,6’−ジメチルフェニルアラニン(2’6’−Dmp)等のフェニルアラニンの誘導体であり得る。アミノ酸位置1の2’,6’−ジメチルフェニルアラニンを含有するTyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2は、式2’,6’−Dmp−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する。一実施形態では、2’,6’−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2のアミノ酸配列は、DmtがN−終端のところではないように、再配列される。ミュー−オピオイド受容体アゴニスト活性を有しないこのような芳香族カチオン性ペプチドの例は、式D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を有する。
本明細書に列挙されるペプチドの好適な置換変異体は、保存的アミノ酸置換を含む。アミノ酸は、それらの物理化学的特性に従って次の通りにグループ化される。
(a)非極性アミノ酸:Ala(A)Ser(S)Thr(T)Pro(P)Gly(G)Cys(C);
(b)酸性アミノ酸:Asn(N)Asp(D)Glu(E)Gln(Q);
(c)塩基性アミノ酸:His(H)Arg(R)Lys(K);
(d)疎水性アミノ酸:Met(M)Leu(L)Ile(I)Val(V);及び
(e)芳香族アミノ酸:Phe(F)Tyr(Y)Trp(W)His(H)。
同じ基中の別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、保存的置換として参照され、元のペプチドの物理化学的特性を保存し得る。対照的に、異なる基中の別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、一般に、元のペプチドの特性を変化させる可能性がより高い。
ミュー−オピオイド受容体を活性化させるペプチドの例としては、表6に示される芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。



Dab=ジアミノ酪
Dap=ジアミノプロピオン酸
Dmt=ジメチルチロシン
Mmt=2’−メチルチロシン
Tmt=N,2’,6’−トリメチルチロシン
Hmt=2’−ヒドロキシ,6’−メチルチロシン
dnsDap=β−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
atnDap=β−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
Bio=ビオチン
ミュー−オピオイド受容体を活性化させないペプチドの例としては、表7に示される芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
Cha=シクロヘキシルアラニン
表5〜7に示されるペプチドのアミノ酸は、L−またはD−構成のいずれかであり得る。
ペプチドは、当該技術分野において周知の方法のうちの任意のものによって合成され得る。タンパク質を化学的に合成するための好適な方法としては、例えば、Stuart及びYoungによってSolid Phase Peptide Synthesis,Second Edition,Pierce Chemical Company(1984)及びMethods Enzymol.,289,Academic Press,Inc.,New York(1997)に説明されるものが挙げられる。
カルジオリピンリモデリング
カルジオリピン(カルジオリピン)は、ミトコンドリアの内膜の重要な成分であり、それは、総脂質組成の約20%を占める。哺乳類の細胞では、カルジオリピンは、ミトコンドリアの代謝に関与する酵素の最適な機能に関して不可欠であるミトコンドリアの内膜においてほぼ例外なく見出される。
カルジオリピンは、二量体構造を形成するようにグリセロール主鎖と結合する2つのホスファチジルグリセロールを含むジホスファチジルグリセロール脂質の種である。これは、4つのアルキル基を有し、潜在的に2つの負電荷を担持する。カルジオリピン中に4つの別個のアルキル鎖が存在するため、分子は、多大な複雑性の可能性を有する。しかしながら、大部分の動物性組織では、カルジオリピンは、それらのうちの各々において2つの不飽和結合を有する18−炭素脂肪アルキル鎖(18:2)を含有する。18:2の構成が、哺乳類のミトコンドリア内の内膜タンパク質へのカルジオリピンの高親和性のための重要な構造要件であることが提案されている。しかしながら、単離酵素調製に関する研究は、その重要度が調べられるタンパク質に応じて変化し得ることを示す。
カルジオリピン中の2つのリン酸のうちの各々が、1つのプロトンを捕獲できる。これは対称構造を有するが、1つのリン酸のうちのイオン化は、pK1=3及びpK2>7.5で両方をイオン化することよりも異なるレベルの酸性度で生じる。したがって、正常な生理学的状態下で(約7.0のpH)、分子は、1つの負電荷のみを担持し得る。リン酸におけるヒドロキシル基(-OH及び-O−)は、安定した分子内水素結合を形成して、二環式共鳴構造を形成する。この構造は、酸化的リン酸化を促す1つのプロトンを捕捉する。
錯体IVによって触媒される酸化的リン酸化プロセス中、大量のプロトンが、膜の一方の側から別の側に転移されて、大pH変化を引き起こす。理論によって縛られることを望まないが、ミトコンドリアの膜内のプロトン捕捉としてのカルジオリピンの機能が、プロトンプールを厳密に局在化させること、及びミトコンドリアの膜間腔のpHを最小限に抑えることが提案されている。この機能は、上述の通り、負電荷を担持しつつ二環式構造内でプロトンを捕捉できるカルジオリピンの独特の構造が原因と考えられる。したがって、カルジオリピンは、プロトンを遊離または吸収してミトコンドリアの膜の付近でpHを維持するように、電子緩衝プールとして機能することができる。
加えて、カルジオリピンは、アポトーシスに関与することが示されている。アポトーシスカスケードにおける早期現象は、カルジオリピンを含む。以下により詳細に考察されるように、カルジオリピン固有のオキシゲナーゼは、脂質に立体構造変化を受けさせるカルジオリピン−ヒドロペルオキシドを生成する。次いで、酸化カルジオリピンは、チトクロムcがサイトゾル中に遊離されるその孔を形成すると考えられるミトコンドリアの外膜にミトコンドリアの内膜から移動する。チトクロムcは、カルシウム遊離を刺激するIP3受容体に結合でき、それは、チトクロムcの遊離を更に促進する。細胞質内カルシウム濃度が毒性レベルに達すると、細胞は、死滅する。加えて、余分なミトコンドリアのチトクロムcは、アポトーシス性活性因子と相互作用して、アポトソームの(apoptosomal)錯体の形成及びタンパク質分解カスパーゼカスケードの活性化を引き起こす。
カルジオリピンに関して提唱される他の役割は、次のものである:1)例えば、膜流動性及び浸透圧安定性等の膜の物理的特性の安定化への関与(Schlame,et al.,2000;Koshkin and Greenberg,2002;Ma,et al.,2004)、及び2)膜タンパク質との直接相互作用を介するタンパク質機能への関与(Schlame,et al.,2000;Palsdottir and Hunte,2004)。カルジオリピンは、チトクロムbc1錯体(錯体III)等の内膜タンパク質錯体との密接な関連において見出されている。同様に、これは、二量体チトクロムcオキシダーゼの接触部位に局在化されており、カルジオリピン結合部位はまた、ADP/ATP担体中に見出されている(AAC;概説としては、Palsdottir and Hunte,2004を参照されたい)。最近の研究はまた、呼吸鎖超錯体(レスピラソーム(respirasomes))の形成におけるカルジオリピンの関与を提唱する。
主要テトラ−アシル分子種は、カルジオリピン分子の4つの脂肪アシル位置の各々において18:2である(18:2−18:2−18:2−18:2カルジオリピン種として参照される)。カルジオリピンシンターゼがシチジン−5’−ジリン酸−1,2−ジアシル−sn−グリセロールに対して分子種基質特異性を有しないため、カルジオリピンのリモデリングは、リノール酸を有するカルジオリピンのこの濃縮を得るために不可欠である。加えて、カルジオリピン前駆体の種パターンは、カルジオリピン合成経路の酵素が分子種選択性ではないことを暗示するのに十分に同様である。カルジオリピンの分子組成物における変化は、種々の疾患状況と関連する。
カルジオリピンのリモデリングは、少なくとも3つの酵素を介して生じる。ミトコンドリアのカルジオリピンは、新たに合成されたカルジオリピンが急速にモノリゾカルジオリピン(MLCL)に脱アシル化されて、次いでカルジオリピンに再アシル化し戻された脱アシル化−再アシル化サイクルによってリモデリングされる。MLCL AT1は、脱アシル化の原因となり、ALCAT1は、再アシル化の原因となる。これらのミトコンドリア及びミクロソームアシル転移酵素活性化に加えて、ミトコンドリアのカルジオリピンは、ミトコンドリアのカルジオリピンアシル基転移酵素によってリモデリングされ得る。タファジン(TAZ1)は、ミトコンドリアのカルジオリピンを、リノール酸を使って特異的にリモデリングするカルジオリピンアシル基転移酵素である。
バース症候群
バース症候群は、拡張型心筋症(DCM)、骨格ミオパチー、好中球減少症、成長遅延、及び有機酸性尿を特徴とするリン脂質代謝の遺伝性障害である。バース症候群の有病率は、地理的位置に応じて1/400,000〜1/140,000の範囲に及ぶ推定発生率で、1/454,000出生数と推定される。バース症候群は、X連鎖性障害であり、したがって不均衡に男性患者に影響する。
バース症候群は、ミトコンドリアの内膜に局在化するリン脂質であるカルジオリピンの代謝に関与するアシル転移酵素であるTAZ1をコードする、TAZ遺伝子(タファジン;Xq28)の変異によって生じる。欠陥TAZ1機能は、カルジオリピンの異常リモデリングをもたらし、ミトコンドリア構造及び呼吸鎖機能を損なう。TAZ1は、心臓及び骨格筋において高いレベルで発現し、ミトコンドリアの内膜の維持に関与する。TAZ1は、カルジオリピンのレベルを維持することに関与するが、それは、ミトコンドリアにおけるエネルギー生成に不可欠である。
バース症候群の臨床症状は、高度に可変である。大部分の対象は、寿命の最初の10年の間、及び典型的には寿命の最初の1年の間にDCMを発生するが、心内膜線維弾性症(EFE)及び/または左心室非圧縮(LVNC)を伴うことによってであり得る。バース症候群の徴候は、子宮内で始まり、妊娠の三半期の第2期/第3期中に心不全、胎児水腫、及び流産または死産を引き起こし得る。特に、青年期の心室性不整脈は、突然の心臓死を引き起こし得る。卒中の重大な危険性が存在する。(主に近位の)骨格ミオパチーは、運動機能の重要な段階の遅延、筋緊張低下、重篤な嗜眠または運動不耐性を引き起こす。新生児期中の低血糖の傾向がここに存在する。患者の90パーセントが、敗血症、重篤な細菌性敗血症、口腔内潰瘍、及び有痛性歯肉の危険性を伴う中度から重篤な間欠性または遷延性好中球減少症を示す。乳酸アシドーシス及び中度の貧血が、起こり得る。発症した男児は、実質的な急成長がしばしば起こると、通常、10代後半または20代前半まで観察される遅延思春期及び成長遅延を示す。患者はまた、十分な食物の摂取に重大な困難を呈し得る。突発性下痢症が共通している。多くの患者は、ぽちゃぽちゃした頬、窪んだ目、及び突出した耳を持つ同様の顔付きを有する。
いくつかの実施形態では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩を使った治療は、バース症候群を患っているまたはバース症候群を患う危険性がある哺乳類対象の組織または器官におけるTAZ1の発現を上昇させる。一例としては、いくつかの実施形態では、心筋におけるTAZ1発現のレベルが上昇することを必要とする対象のTAZ1発現のレベルを上昇させることが挙げられるが、限定するものではない。
いくつかの実施形態では、TAZ1発現レベルを上昇させることは、TAZ1発現が対象において減少する程度において減弱または低下として測定される。いくつかの実施形態では、TAZ1低下は、約0.25倍〜約0.5倍、約0.5倍〜約0.75倍、約0.75倍〜約1.0倍、または約1.0倍〜約1.5倍、減少される。
治療方法
次の考察は、例としてのみ提示され、限定することを意図しない。
TAZ1の発現レベル(例えば、RNA及び/またはタンパク質レベル)を上昇させることを必要とする患者においてTAZ1の発現レベルを上昇させることが、いくつもの負の身体的効果の危険性、重症度、提示/オンセットを低下させるであろうことが理解される。本技術の一態様は、減少したTAZ1発現レベルを有すると診断されているか、低下したTAZ1発現レベルを有する疑いがあるか、または減少したTAZ1発現レベルを有する危険性がある対象において、低下したTAZ1発現を治療する方法を含む。本技術の一態様は、バース症候群を有すると診断されているか、バース症候群を有する疑いがあるか、またはバース症候群を有する危険性がある対象において、バース症候群を治療する方法を含む。治療用途では、組成物または薬物は、例えば、減少したTAZ1発現レベルまたはバース症候群等のそのような疾患を患う疑いのある、またはそのような疾患をすでに患っている対象に、その疾患の発生におけるその合併症及び中間病理学的表現型を含むその疾患の症状を治癒させるかまたは少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で、投与される。
減少したTAZ1発現レベルまたはバース症候群を患っている対象は、当該技術分野において知られている診断用または予後アッセイのうちの任意のものまたは組み合わせによって特定され得る。例えば、バース症候群の典型的な症状としては、例えば、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または肺炎等の頻繁な細菌感染症が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、正常な対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を呈し得るが、それは、当該技術分野において知られている技術を用いて測定可能である。いくつかの実施形態では、対象は、バース症候群に関連するTAZ遺伝子において1つ以上の変異を呈し得るが、それは、当該技術分野において知られている技術を用いて検出可能である。
予防方法
一態様では、本技術は、正常な対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を有する危険性のある対象において、バース症候群のオンセットまたはバース症候群の症状を予防または遅延させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、バース症候群に関連するTAZ遺伝子において1つ以上の変異を呈し得るが、それは、当該技術分野において知られている技術を用いて検出可能である。低下したTAZ1発現レベルまたはバース症候群の危険性がある対象は、例えば、当該技術分野において知られている診断用または予後アッセイのうちの任意のものまたは組み合わせによって特定され得る。予防用途では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の薬学的組成物または薬物は、例えば、バース症候群等の疾患または状態に対して感受性であるか、または別様にその危険性のある対象に、その疾患の生化学的、組織学的、及び/または行動学的症状、その疾患の発生中のその合併症及び中間病理学的表現型を含むその疾患の危険性を排除または低下させるか、その疾患の重症度を緩和させるか、またはその疾患の発生を遅延させるのに十分な量で、投与される。予防芳香族カチオン性の投与は、疾患または障害の症状が予防される、あるいは、その進行において遅延されるように、疾患または障害の症状特性の徴候の前に行うことができる。
低下したTAZ1発現レベルまたはバース症候群の対象またはその危険のある対象は、次の非限定的な危険因子のうちの1つ以上を呈し得る:心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または肺炎等の頻繁な細菌感染症。
芳香族カチオン性ペプチドベースの治療の生物学的効果の決定
種々の実施形態では、好適なインビトロまたはインビボアッセイは、固有の芳香族カチオン性ペプチドベースの治療の効果及びその投与が治療を示すかどうかを決定するように、実施される。種々の実施形態では、インビトロアッセイは、所与の芳香族カチオン性ペプチドベースの治療がTAZ1発現を上昇させること、及びバース症候群を予防または治療することの所望の効果を発揮するかどうかを決定するために、代表的な動物モデルを使って実施することができる。治療において使用するための化合物は、ヒト対象において試験する前に、これらに限定されないがラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、及びウサギ等を含む好適な動物モデル系において試験することができる。同様に、インビボ試験については、当該技術分野において知られている動物モデル系のうちの任意のものが、ヒト対象への投与の前に使用できる。いくつかの実施形態では、インビトロまたはインビボ試験は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の生物学的機能に関する。
心不全は、容量過負荷、圧力過負荷、高速ペーシング、心筋虚血、心毒性薬物、または遺伝子組換えモデルを伴う異なる種において誘発されている。高血圧は、心不全の発生に関して危険性を増加させることに関連する。1つのマウスモデルでは、アンギオテンシンII(AngII)は、血圧を上昇させ、心筋細胞肥大、増加した心臓線維症、及び障害性心筋細胞弛緩を誘発する。ミニ浸透圧ポンプによるマウスへのアンギオテンシンの注入は、収縮期性及び拡張期血圧を上昇させ、心臓重量及び左心室の厚さ(LVMI)、及び障害性心筋性能指標(MPI)を増加させる。TAZ1発現レベルを、心不全誘導前、中、及び後に種々の時点で監視する。
第2の例示的なマウスモデルでは、Gαqの持続性高レベル発現は、有標の筋細胞アポトーシスを引き起こすことができ、16週の年齢で心臓肥大及び心不全を得ることができる(D’Angelo,et al.,1998)。β−アドレナリン受容体(βAR)は、アデニリルシクラーゼ活性を刺激するように、ヘテロ三量体Gタンパク質、Gsに一次的に結合する。この会合は、細胞内cAMP及びタンパク質キナーゼA活性化を生成し、それらは、心臓収縮力及び心拍数を調節する。Gαqの過剰発現は、β−アドレナリンアゴニストに対する減少した応答性を引き起こし、心不全をもたらす。TAZ1発現レベルを、心不全誘導前、中、及び後に種々の時点で監視する。
外科的縮窄術による大動脈の実験的収縮はまた、心不全のモデルとして広く使用されている。大動脈縮窄術(TAC)は、左心室(LV)質量の増加を伴う圧力過負荷が誘発する心不全をもたらす。TACを、Tamavski Oら(2004)によって説明される通りに実施して7−0シルク二重結び縫合術を用いて上行大動脈を縮窄する。TAC後、マウスは、4週の期間以内に心不全を発生する。TAZ1発現レベルを、心不全誘導前、中、及び後に種々の時点で監視する。
投与の様式及び有効投与量
細胞、器官、または組織を、本技術のD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩と接触させるために当業者には知られている任意の方法が、用いられてもよい。好適な方法としては、インビトロ、エキソビボ、またはインビボ方法が挙げられる。インビボ方法は、典型的に、上述のもののような芳香族カチオン性ペプチドの、哺乳類、好適に、ヒトへの投与を含む。治療のためにインビボで使用された場合、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩は、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量及び投与計画は、対象における感染症の程度、等の使用される特定の芳香族カチオン性ペプチドの特性(例えば、その治療指標)、対象、及び対象の病歴に依存するであろう。
有効量は、内科医及び臨床医によく知られている方法によって前臨床治験及び臨床治験中に決定され得る。方法において有用なペプチドの有効量を、薬学的化合物を投与するための多数の周知の方法のうちの任意のものによって、有効量を必要とする哺乳類に投与することができる。ペプチドは、全身的にまたは局所的に投与され得る。
ペプチドは、薬学的に許容される塩として配合されてもよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳類等の患者に投与するために許容される塩基または酸から調製される塩(例えば、所与の投与計画に対して許容される哺乳類の安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、塩が、患者への投与を意図しない中間体の化合物の塩等の薬学的に許容される塩である必要がないことが理解される。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基に由来し得るかまたは薬学的に許容される無機または有機酸に由来し得る。加えて、ペプチドがアミン、ピリジン、またはイミダゾール等の塩基性部分及びカルボン酸またはテトラゾール等の酸性部分の両方を含有する場合、双性イオンは、形成され、本明細書で使用されるとき、「塩」という用語内に含まれる。薬学的に許容される無機塩基由来の塩としては、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、マンガン(manganous)、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛の塩等が挙げられる。薬学的に許容される有機塩基由来の塩としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、及びトロメタミン等の置換アミン、環式アミン、及び天然に存在するアミン等を含む1級、2級、及び3級アミンの塩が挙げられる。薬学的に許容される無機酸由来の塩としては、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸、及び硫酸の塩を含む。薬学的に許容される有機酸由来の塩としては、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、及び酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、及びトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチジン酸、馬尿酸、及びトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、及び3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、及びコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロト酸、パモ酸(pamoic)、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンホスルホン酸(camphosulfonic)、エジシル酸(edisylic)、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸)、及びキシナホイ(xinafoic)酸等の塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、塩は、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩である。
D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の本明細書に説明される芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩は、本明細書に説明される障害の治療または予防のために対象に、単独で、または組み合わせて、投与するための薬学的組成物中に組み込まれ得る。このような組成物は、典型的に、活性剤及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と対応している、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、及び等張及び吸収遅延剤等を含む。補充性活性化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。
薬学的組成物は、典型的に、その投与の意図する経路と対応するように配合される。投与の経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン注入での、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:注射のための水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン(glycerine)、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒等の無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン3酢酸等のキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝剤、及び塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の等張の調整のための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口調製は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスまたはプラスチックで作製された複数の用量バイアルに包含され得る。患者または治療する内科医の便宜のため、投与配合物は、治療コース(例えば、7日間の治療)のための全ての必要な装備(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジ及びニードル)を含有するキットに提供され得る。
注射用使用に好適な薬学的組成物は、無菌注射用溶液または分散液の即座の調製のための無菌水溶液(水溶性である)または分散液及び無菌粉末を含むことができる。静脈内投与については、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、非経口投与のための組成物は、無菌でなければならず、容易なシリンジとしての性能が存在する程度にまで流動性であるべきである。これは、製造及び貯蔵の状態下で安定しているべきであり、細菌及び真菌等の微生物の混入作用に備えて保存されなければならない。
芳香族カチオン性ペプチド組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びその好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る、担体を含むことができる。適切な流動度は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持できる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチオメラソール(thiomerasol)等の種々の抗菌及び抗真菌剤によって達成することができる。グルタチオン及び他の酸化防止剤を、酸化を防ぐように含むことができる。多くの場合、組成物中に例えば、糖、マンニトール等のポリアルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが好ましいであろう。注射用組成物の遷延性吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン等の吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含むことによってもたらされ得る。
無菌注射用溶液は、上に列挙された成分のうちの1つまたは組み合わせを伴う適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて濾過滅菌法が後に続くことによって調製され得る。一般に、分散液は、塩基分散媒及び上に列挙されたもの由来の必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクル中に組み込むことによって調製され得る。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の典型的な方法は、真空乾燥及び凍結乾燥を含み、これらは、活性成分、更には任意の追加の所望の成分の粉末を、前に無菌濾過されたその溶液から産生できる。
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食性担体を含む。経口治療投与の目的のため、活性化合物は、賦形剤と一緒に組み込むことができ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤、の形態で使用することができる。経口組成物はまた、口腔洗浄薬として使用するために流体担体を用いても調製することができる。薬学的に適合する結合剤、及び/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含むことができる。錠剤、ピル、カプセル剤、及びトローチ剤等は、次の成分のうちのいずれか、または似た性質のものの化合物を含むことができる:結晶セルロース、ガムトラガント、またはゼラチン等の結合剤;スターチまたはラクトース等の賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ等の分解剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤(glidant);ショ糖またはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味等の香味料。
吸入による投与については、化合物は、好適な噴霧剤、例えば二酸化炭素等のガス、を含有する圧縮容器またはディスペンサ、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。このような方法は、米国特許第6,468,798号に説明されるものを含む。
本明細書に説明されるとき治療化合物の全身的投与は、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与については、バリアを透過させるのに適切な浸透性を、配合物において使用する。このような浸透性は、当該技術分野において一般に知られており、経粘膜投与については、例えば、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、経鼻スプレーの使用を介して達成することができる。経皮投与については、活性化合物は、当該技術分野において一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに配合される。一実施形態では、経皮投与はイオントフォレシスによって実施され得る。
治療タンパク質またはペプチドは、担体系において配合できる。担体は、コロイド系であり得る。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。一実施形態では、治療ペプチドは、ペプチド完全性を維持しつつリポソーム中にカプセル化される。当業者であれば、リポソームを調製するための様々な方法が存在することを理解するであろう。(Lichtenberg,et al.,Methods Biochem.Anal.,33:337−462(1988);Anselem,et al.,Liposome Technology,CRC Press(1993)を参照されたい)。リポソームの配合物は、排除を遅らせて細胞性取り込みを増加させることができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照されたい)。活性剤を、これらに限定されないが、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生分解性または胃保持性ポリマーまたはリポソームを含む薬学的に許容される成分から調製される粒子中に充填することもできる。このような粒子としては、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、マイクロ粒子、生分解性マイクロ粒子、ナノ球体、生分解性ナノ球体、マイクロ球体、生分解性マイクロ球体、カプセル剤、エマルション、リポソーム、ミセル、及びウイルスベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。
担体はまた、ポリマー、例えば、生分解性、生体適合性ポリマー基質.であり得る。一実施形態では、治療ペプチドを、タンパク質完全性を維持しつつ、ポリマー基質中に包埋することができる。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質、または多糖体等の天然か、またはポリα−ヒドロキシ酸等の合成であってもよい。例としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖体、フィブリン、ゼラチン、及びこれらの組み合わせから作製させる担体が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ−乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマー基質は、マイクロ球体及びナノ球体を含む様々な形態及び大きさで調製及び単離することができる。ポリマー配合物は、治療効果の遷延性持続期間をもたらすことができる。(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)のためのポリマー配合物は、臨床治験において使用されている。(Kozarich and Rich,Chemical Biology,2:548−552(1998)を参照されたい)。
ポリマーマイクロ球体徐放配合物の例は、PCT公開国際公開第99/15154号(Tracy、et al.)、米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号(共にZale、et al.に属する)、PCT公開国際公開第96/40073号(Zale、et al.)、及びPCT公開国際公開第00/38651号(Shah、et al.)に記載されている。米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号、及びPCT公開国際公開第96/40073号は、塩との集合に対して安定化されたエリスロポエチンのポリマー基質を説明する。
いくつかの実施形態では、治療化合物を、移植片及びマイクロカプセル化された送達系を含む制御された遊離配合物等の本体からの急速な脱離に対して治療化合物を保護するであろう担体を使って調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような配合物は、既知の技術を用いて調製できる。材料はまた、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に得ることもできる。リポソームの懸濁液(細胞固有の抗原に対する単クローン抗体を有する固有の細胞を標的とするリポソームを含む)は、薬学的に許容される担体としても使用することができる。これらのものは、例えば、米国特許第4,522,811号に説明されるように、当業者には既知の方法に従って調整することができる。
治療化合物はまた、細胞内送達を向上させるために配合することができる。例えば、リポソームの送達系は、当該技術分野において知られており、例えば、Chonn and Cullis、「Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems」、Current Opinion in Biotechnology6:698−708(1995);Weiner、「Liposomes for Protein Delivery:Selecting Manufacture and Development Processes」、Immunomethods,4(3):201−9(1994);及びGregoriadis、「Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems」、Trends Biotechnol.,13(12):527−37(1995)を参照されたい。Mizguchi,et al.,Cancer Lett.,100:63−69(1996)には、インビボ及びインビトロ両方の細胞にタンパク質を送達するための融合性リポソームの使用が説明されている。
治療剤の投与量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%致死量)及びED50(集団の50%治療有効量)を決定するために、細胞培養または実験用動物における標準薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、LD50/ED50比として表すことができる。高治療指標を呈する化合物が、好ましい。毒性の副作用を呈する化合物を使用できるが、非感染性細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、それにより副作用を軽減させるために、発症した組織の部位に対してこのような化合物を標的とする送達系を設計するケアが行われるべきである。
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを使用して、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲を配合することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、少しの毒性または毒性を持たないED50を含む循環濃度の範囲内に属する。投与量は、この範囲内で、用いられる剤形及び利用される投与の経路に応じて変化し得る。本方法において使用される任意の化合物については、治療有効量は、細胞培養アッセイから初期に推定することができる。用量は、細胞培養において決定されるように、IC50(すなわち、最大半量の症状の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環形質濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて配合することができる。このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量を正確に決定することができる。形質におけるレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分な芳香族カチオン性ペプチドの有効量は、1日当たり約0.000001mg/キログラム体重〜1日当たり約10,000mg/キログラム体重の範囲である。好適には、投与量範囲は、1日当たり約0.0001mg/キログラム体重〜1日当たり約100mg/キログラム体重の範囲である。例えば、投与量は、1mg/kg体重または毎日、隔日ごと、または3日ごとに10mg/kg体重、または毎週、隔週ごと、または3週間ごとに1〜10mg/kgの範囲内、であり得る。一実施形態では、ペプチドの単一投与量は、0.001〜10,000マイクログラム/キログラム体重の範囲である。一実施形態では、担体中の芳香族カチオン性ペプチド濃度は、送達されたミリリットル当たり0.2〜2000マイクログラムの範囲である。例示的な治療計画は、1日当たり1回または1週間に1回の投与を必要とする。治療用途では、比較的短い間隔での比較的高い投与量は、時折、疾患の進行が低下するかまたは終了するまで、好ましくは、対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで必要とされる。したがって、患者は、予防計画を投与することができる。
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドの治療有効量は、10-12〜10-6モル、例えば、約10-7モルの標的とする組織でペプチドの濃度として定義され得る。この濃度は、0.001〜100mg/kgの全身的用量か、または体表面積による等量用量によって送達することができる。用量のスケジュールは、もっとも好ましくは、単一の毎日または毎週の投与によって標的とする組織で治療濃度を維持するように最適化されるであろうが、連続的投与(例えば、非経口注入または経皮適用)も含むであろう。
当業者であれば、これらに限定されないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の健康全般及び/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むある特定の要素が、対象を効率的に治療するために必要とされる投与量及びタイミングに影響し得ることを理解するであろう。更には、本明細書に説明される治療組成物の治療有効量を用いる対象の治療は、単一の治療または一連の治療を含むことができる。
本発明の方法に従って治療される対象は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマ等の家畜;イヌ及びネコ等のペット用動物;ラット、マウス、及びウサギなどの実験用動物を含む任意の哺乳類または動物であり得る。好ましい実施形態では、哺乳類は、ヒトである。
芳香族カチオン性ペプチド及び他の治療剤を用いる組み合わせ治療
いくつかの実施形態では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩は、低下したTAZ1発現レベルまたはバース症候群の予防または治療のための1つ以上の更なる薬剤と組み合わせてもよい。低下したTAZ1発現レベルまたはバース症候群のための薬物治療は、典型的に、これらに限定されないが例えば、利尿剤、ACE阻害剤、ジゴキシン(ジギタリス)、カルシウムチャネル遮断薬、及びベータ−遮断薬を含む、抗生物質、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、及び心臓状態を制御するための薬剤を含む。軽症例では、25〜50mg/日のヒドロクロロチアジド、または250〜500mg/日のクロロチアジド等のチアジド利尿剤が、有用である。しかしながら、慢性利尿が低カリウム血性アルカローシス(hypokalemis alkalosis)を引き起こすため、追加の塩化カリウムが、必要であり得る。更には、通常チアジド利尿剤は、バース症候群の進行症状を有する患者において有効ではない。ACE阻害剤の典型的な用量は、25〜50mg/日のカプトプリル及び10mg/日のキナプリルを含む。
一実施形態では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、アドレナリンベータ−2アゴニストと組み合わされる。「アドレナリンベータ−2アゴニスト」は、アドレナリンベータ−2アゴニスト及びその類似体及び誘導体を指し、例えば、アドレナリンベータ−2アゴニスト生物学的活性を有する天然または合成機能性変異体、ならびにアドレナリンベータ−2アゴニスト生物学的活性を有するアドレナリンベータ−2アゴニストの断片を含む。「アドレナリンベータ−2アゴニスト生物学的活性」という用語は、患者のアドレナリン及びノルアドレナリン効果を模倣する活性を指し、それは、バース症候群を有する患者において心筋収縮力を改善する。公知のアドレナリンベータ−2アゴニストとしては、クレンブテロール、アルブテロール、ホルメオテロール(formeoterol)、レブアルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルメテロール、及びテルブタリンが挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、アドレナリンベータ−1拮抗薬と組み合わされる。アドレナリンベータ−1拮抗薬及びアドレナリンベータ−1遮断薬は、アドレナリンベータ−1拮抗薬及びその類似体及び誘導体を指し、例えば、アドレナリンベータ−1拮抗薬生物学的作用を有する天然または合成機能性変異体、ならびにアドレナリンベータ−1拮抗薬生物学的作用を有するアドレナリンベータ−1拮抗薬の断片を含む。アドレナリンベータ−1拮抗薬生物学的作用は、ベータ受容体のアドレナリンの効果を遮断する活性を指す。公知のアドレナリンベータ−1拮抗薬としては、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、及びメトプロロールが挙げられるが、これらに限定されない。
クレンブテロールは、例えば、Spiropent(登録商標)(Boehinger Ingelheim)、Broncodil(登録商標)(Von Boch I)、Broncoterol(登録商標)(Quimedical PT)、Cesbron(登録商標)(Fidelis PT)、及びClenbuter(登録商標)(Biomedica Foscama)を含む多数の商品名の下、入手可能である。同様に、メトプロロール及びその類似体及び誘導体等のアドレナリンベータ−1拮抗薬を調製する方法は、当該技術分野において周知である。具体的には、メトプロロールは、Novartis Pharmaceuticals Corporation, One Health Plaza, East Hanover,N.J.07936−1080、によって製造される商品名Lopressor(登録商標)(メトプロロールタルテート(metoprolol tartate))の下、市販されている。Lopressor(登録商標)のジェネリック版はまた、Mylan Laboratories Inc.,1500 Corporate Drive,Suite400,Canonsburg,Pa.15317;及びWatson Pharmaceuticals,Inc.,360Mt.Kemble Ave.Morristown,N.J.07962から入手可能である。メトプロロールはまた、Astra Zeneca,LPによって製造される商品名Toprol XL(登録商標)の下、市販されている。
一実施形態では、相乗治療効果が生成されるように、追加の治療剤を、芳香族カチオン性ペプチドと組み合わせて対象に投与する。よって、治療剤のうちの1つのまたは両方のより低い用量は、バース症候群を治療する際に使用することができ、増加した治療有効性及び減少した副作用をもたらす。
いずれの場合にも、複数の治療剤は、任意の順序または更に同時に投与されてもよい。同時の場合、複数の治療剤は、単一、統一形態、または複数の形態で(例としてのみであるが、1つの単一のピルとしてまたは2つの別個のピルとしてのいずれか)提供されてもよい。治療剤のうちの1つが、複数用量で所与され得るか、またはいずれもが、複数用量として所与され得る。同時でない場合は、複数用量の間のタイミングは、ゼロ週を超えて4週未満と変化し得る。加えて、組成物及び配合物の組み合わせ方法は、2つの薬剤のみの使用に限定されない。
本発明は、以下の実施例によって更に示されるが、いかなる方法によっても限定されるように解釈されない。
実施例1-心不全のイヌモデルの心臓ミトコンドリアのカルジオリピンにおける芳香族カチオン性ペプチドの効果
この実施例は、冠動脈微小塞栓で心不全を誘発したイヌの心臓ミトコンドリアのカルジオリピンのレベルにおける芳香族カチオン性ペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を示す。具体的には、18:2−18:2−18:2−18:2カルジオリピン種のレベルにおけるD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を評価する。
方法
心不全を、Sabbah,et al.,Am J Physiol.(1991)260:H1379−84に記載の通りに複数の連続冠内微小塞栓を介してイヌに誘発したが、当該文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。続いて、半分のイヌを、ミトコンドリアのペプチドを用いて治療して、他の残り半分を、薬物ビヒクルを用いて治療して対照として機能させた。ペプチド治療を、約30%の左心室駆出分画率として定義した心不全(HF)の誘発時に開始した。ペプチドの毎日の用量は、0.5mg/kg/日であり、静脈内に投与した。治療期の終了時に(12週)、ビヒクル及び治療グループの両方のイヌを屠殺し、左心室からの心臓の筋肉の試料を取り出し、生理食塩水で洗浄し、直後に冷凍して−80℃で貯蔵した。カルジオリピン分析については、脂質を、心臓組織試料からクロロホルム/メタノール溶液で抽出した(Bligh Dyer抽出)。個々の脂質抽出物を、自動ナノスプレー装置を装備した三連四重極型質量分析計を用いてエレクトロスプレーイオン化質量分析法を介して分析する前に、クロロホルム:メタノール(1:1)で再構成して、N2で流し、次いで−20℃で貯蔵した。カルジオリピンに関しては、向上した多次元質量分析ベースのショットガンリピドーム(shotgun lipidomics)を、Han,et al.,「Shotgun lipidomics of cardiolipin molecular species in lipid extracts of biological samples」、J Lipid Res47(4)864−879(2006)に記載される通りに実施した。
結果
正常な対象からの心臓組織と比較して(正常)、18:2のカルジオリピン種を、未治療の心不全のイヌにおいて著しく低下させた(心不全、対照)(p<0.05)。図1。しかしながら、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2で治療した心不全のイヌ(心不全、ペプチド)は、正常な対象と同様であり、心不全対照対象よりも大きい(p<0.05)、18:2カルジオリピンのレベルを有した。図1。
結論
18:2のカルジオリピン種は、心不全の対象において低下する。18:2のカルジオリピンの低下は、不十分な酸化的リン酸化及び後続のLV機能不全をもたらす。D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2での慢性的治療は、18:2カルジオリピンを正規化したが、それは、改善したLV機能及びミトコンドリアのATP合成の速度をもたらす。
これらの結果は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の本発明の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、異常カルジオリピンレベルに関連する疾患または状態の予防及び治療において有用であることを示す。具体的には、これらの結果が、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の本発明の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、カルジオリピンレベル及びリモデリングの正規化を必要とする対象へのペプチドの投与を含む方法において有用であることを示す。
実施例2-心不全のイヌモデルにおけるTAZ1発現に関する芳香族カチオン性ペプチドの効果
この実施例は、冠動脈微小塞栓で心不全を誘発したイヌのTAZ1発現のレベルにおける芳香族カチオン性ペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を示す。具体的には、TAZ1mRNAのレベルのD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の効果を評価する。
方法
12匹のイヌに、実施例1に上述の通りに冠動脈微小塞栓で心不全を誘発させた(LV駆出分画率約30%)。3ヶ月の治験のため、対象を、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2治療したグループ及び対照グループにランダム化した。対照は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2(1日1回0.5mg/kg、n=6)または生理食塩水(未治療HF対照、n=6)の皮下注射を受けた。RNAを、治療期の終了時に全ての対象のLV組織から、及び6つの正常な対象対照のLVから、調製した。TAZ1mRNAのレベルをリアルタイムPCRで決定した。mRNAレベルの変化を、CT法を用いて、グリセルアルデヒド1,3ジリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)内部対照への正規化で、倍の低下として表現した。
結果
TAZ1mRNAのレベルは、正常な対象と比較して、生理食塩水対照を受け取る心不全の対象において2.25に低下した。図2。D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2での治療は、正常な対象と比較して、TAZ1の減少を1.23にのみ減弱させた。図2。
結論
心不全は、カルジオリピンの病理的リモデリング及び構造的及び機能的ミトコンドリアの異常をもたらすことができるカルジオリピンリモデリング酵素の調節不全に関連する。D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2での慢性的治療は、これらの適応不全を部分的に逆転させ、したがって、カルジオリピンの生理学的生合成後のリモデリングの再開を可能にする。
これらの結果は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の本発明の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、低下したTAZ1発現レベルに関連する疾患または状態の予防及び治療において有用であることを示す。具体的には、これらの結果が、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の本発明の芳香族カチオン性ペプチドまたは酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、例えば、バース症候群を有する対象等のTAZ1発現レベルの正規化の必要な対象へのペプチドの投与を含む方法において有用であることを示す。
実施例3-ミトコンドリアの超微細構造及び組織における芳香族カチオン性ペプチドの効果
この実施例は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、バース症候群の治療において有用であることを示す。
バース症候群を有する対象からの組織試料及び心疾患を有する対象からの組織試料を、当該技術分野において知られている標準を用いてミトコンドリアの電子顕微鏡による撮像法のために調製した。バース症候群の対象からの組織試料を染色し、ミトコンドリアの超微細構造及び組織内の異常特徴または構造を示し(図3の矢印を参照)、そのうちのいくつかをボックスb〜dで強調する。図3。
ミトコンドリアの超微細構造の同様の混乱が、心疾患対象の組織試料において見られた。図4A。D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の有効量で心疾患対象を治療することは、ミトコンドリアの超微細構造の異常特徴を改善した。図4B。
更には、ミトコンドリアにおける心疾患の病理学的効果の改善が、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2で治療されなかった対象からの組織のミトコンドリアと比較して、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2で治療した心疾患対象からの組織のミトコンドリアの改善した組織において更に示された。図5A〜5B。
この結果は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチドが、異常ミトコンドリア超微細構造を有するミトコンドリアの数を減少させ、かつ/または異常ミトコンドリア超微細構造を改善し、かつ心疾患においてミトコンドリアの組織を維持するのに有用であることを示す。D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチドが、バース症候群を有する対象の異常ミトコンドリア超微細構造において同様の効果を有するであろうことが予期される。したがって、本開示の芳香族カチオン性ペプチドは、バース症候群の治療のための方法において有用である。
実施例4-バース症候群の治療における芳香族カチオン性ペプチドの使用
この実施例は、バース症候群の治療におけるD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の使用を示すであろう。
方法
バース症候群患者は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の治療有効量の1日1回の投与を受けるであろう。ペプチドを、当該技術分野において知られている方法に従って、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与し得る。対象を、これらに限定されないが、例えば、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、及び/または頻繁な細菌感染症を含むバース症候群に関連する徴候及び症状の存在及び/または重症度に関して毎週評価するであろう。治療を、バース症候群の症状が改善または排除されるような時期まで維持するであろう。
結果
D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩の治療有効量を受けるバース症候群対象が、バース症候群に関連する症状の重症度の減少または排除を示すであろうことが予期される。
これらの結果は、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2等の芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩等のその薬学的に許容される塩が、バース症候群の治療において有用であることを示すであろう。したがって、ペプチドは、バース症候群の治療のために、芳香族カチオン性ペプチドを、芳香族カチオン性ペプチドの投与を必要とする対象に投与することを含む方法において有用である。
均等論
本発明は、本出願に説明される特定の実施形態に関して限定されるわけではなく、本発明の個々の態様の単一の例示であることが意図される。当業者には明らかであるように、本発明の多くの修正及び変形が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。本明細書に列挙されるものに加えて、本明細書の範囲内の機能的に均等な方法及び装置は、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。このような修正及び変形は、特許請求の範囲内に属することを意図する。本発明は、特許請求の範囲の用語のみによって、このような特許請求の範囲が有している均等論の全ての範囲と共に限定される。本発明は、当然ながら変化し得る特定の方法、試薬、化合物組成物、または生命システムに限定されないことが理解される。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、限定することを意図しないこともまた理解される。
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループに関して説明される場合、当業者であれば、本開示が、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもそれによって説明されることを理解するであろう。
当業者によって理解されるように、いかなる目的及び全ての目的に対しても、具体的には、書面による説明を提供することに関して、本明細書に開示される全ての範囲は、ありとあらゆる可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、少なくとも同等の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分解されている同様の範囲を十分に説明し実施可能にすると容易に認識され得る。非限定的な実施例として、本明細書で考察される各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、上位3分の1、等に容易に分解され得る。当業者によってまた理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「〜を超える」、「未満」等の全ての言語は、引用する数字を含み、上述の通りその後に部分範囲に分解され得る範囲を指す。最終的には、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々の構成員を含む。したがって、例えば、1〜3の細胞を有する基は、1、2、または3の細胞を有する基を指す。同様に、1〜5の細胞を有する基は、1、2、3、4、または5の細胞等を有する基を指す。
本明細書に言及されるまたは引用される全ての特許、特許出願、仮特許出願、及び公開は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない程度で、その全体が、全ての図面及び表を含んで参照により本明細書に組み込まれる。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に説明される。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕バース症候群の治療または予防を必要とする対象におけるバース症候群を治療または予防するための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔2〕前記対象が、正常対照対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を示す、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記ペプチドが、6週間以上にわたって毎日投与される、前記〔1〕〜〔2〕のいずれか一項に記載の方法。
〔4〕前記ペプチドが、12週間以上にわたって毎日投与される、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕前記対象が、バース症候群を有すると診断されている、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕前記バース症候群が、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕前記対象がヒトである、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕前記ペプチドが、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の方法。
〔9〕前記対象に心血管薬剤を、個別に、連続して、または同時に投与する工程を更に含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕前記心血管薬剤が、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体(cardioglycoside)、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記薬学的に許容される塩が、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕TAZ1の発現の上昇を必要とする哺乳類対象における前記TAZ1の発現を上昇させるための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔13〕前記対象における前記TAZ1の発現が、正常対照対象における前記TAZ1発現のレベルより約2〜5倍少ない、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記ペプチドが、6週間以上にわたって毎日投与される、前記〔12〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕前記ペプチドが、12週間以上にわたって毎日投与される、前記〔12〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の方法。
〔16〕前記対象が、バース症候群を有すると診断されているか、バース症候群を有する疑いがあるか、またはバース症候群を有する危険性がある、前記〔12〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の方法。
〔17〕前記バース症候群が、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記対象がヒトである、前記〔12〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の方法。
〔19〕前記ペプチドが、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される、前記〔12〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の方法。
〔20〕前記対象に心血管薬剤を、個別に、連続して、または同時に投与する工程を更に含む、前記〔12〕〜〔19〕のいずれか一項に記載の方法。
〔21〕前記心血管薬剤が、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記薬学的に許容される塩が、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む、前記〔12〕〜〔22〕のいずれか一項に記載の方法。
〔23〕正常対照対象と比較して低下したTAZ1の発現を有する哺乳類対象におけるバース症候群の危険性を減少させるための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔24〕バース症候群を有するか、またはバース症候群を有する疑いのある哺乳類対象におけるカルジオリピンリモデリングを安定化するための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH 2 またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
〔25〕前記哺乳類対象が、正常対照対象と比較して減少したTAZ1の発現を有する、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記カルジオリピンが、18:2のカルジオリピン種である、前記〔24〕に記載の方法。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に説明される。

Claims (26)

  1. バース症候群の治療または予防を必要とする対象におけるバース症候群を治療または予防するための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
  2. 前記対象が、正常対照対象と比較して低下したレベルのTAZ1発現を示す、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ペプチドが、6週間以上にわたって毎日投与される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
  4. 前記ペプチドが、12週間以上にわたって毎日投与される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記対象が、バース症候群を有すると診断されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記バース症候群が、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記対象がヒトである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記ペプチドが、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記対象に心血管薬剤を、個別に、連続して、または同時に投与する工程を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記心血管薬剤が、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体(cardioglycoside)、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記薬学的に許容される塩が、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. TAZ1の発現の上昇を必要とする哺乳類対象における前記TAZ1の発現を上昇させるための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
  13. 前記対象における前記TAZ1の発現が、正常対照対象における前記TAZ1発現のレベルより約2〜5倍少ない、請求項12に記載の方法。
  14. 前記ペプチドが、6週間以上にわたって毎日投与される、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記ペプチドが、12週間以上にわたって毎日投与される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記対象が、バース症候群を有すると診断されているか、バース症候群を有する疑いがあるか、またはバース症候群を有する危険性がある、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記バース症候群が、心筋症、骨格筋異常、好中球減少症、発育の遅れ、虚弱筋緊張、尿及び血液中の有機酸の濃度上昇、ならびに頻繁な細菌感染症のうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記対象がヒトである、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記ペプチドが、経口的に、局所的に、全身的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、または筋肉内に投与される、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記対象に心血管薬剤を、個別に、連続して、または同時に投与する工程を更に含む、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記心血管薬剤が、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、副腎皮質ステロイド剤、心臓配糖体、利尿剤、鎮静剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII拮抗薬、血栓溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、トロボキサン(throboxane)受容体拮抗薬、ラジカルスカベンジャー、抗血小板薬、β−アドレナリン受容体遮断薬、α−受容体遮断薬、交感神経阻害剤、ジギタリス製剤、変力物質、及び抗高脂質血症薬からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記薬学的に許容される塩が、酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む、請求項12〜22のいずれか一項に記載の方法。
  23. 正常対照対象と比較して低下したTAZ1の発現を有する哺乳類対象におけるバース症候群の危険性を減少させるための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
  24. バース症候群を有するか、またはバース症候群を有する疑いのある哺乳類対象におけるカルジオリピンリモデリングを安定化するための方法であって、治療有効量のペプチドD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2またはその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与する工程を含むことを特徴とする、方法。
  25. 前記哺乳類対象が、正常対照対象と比較して減少したTAZ1の発現を有する、請求項24に記載の方法。
  26. 前記カルジオリピンが、18:2のカルジオリピン種である、請求項24に記載の方法。
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