以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.印刷システムの構成>
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る印刷システム1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概略構成を示す模式図である。なお、本明細書で参照する各図面は、鋼帯90の幅方向をX方向とし、鋼帯90の長手方向(つまり搬送方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向をZ方向として示されている。
印刷システム1は、高速で搬送される鋼帯90に対してインクを射出することによって、鋼帯90にインクを付着させることにより印刷を行うシステムである。鋼帯90は、例えば図示しない駆動ローラによって、長手方向Yに高速で搬送されている。鋼帯90は、本発明に係る平面形状の被印刷物の一例に相当する。なお、本明細書において、「高速」は、例えば、50〜200m/minの範囲内の速度を意味する。
図1に示すように、印刷システム1は、第1印刷装置10と、第2印刷装置20a,20b,20cと、超音波装置40と、制御装置50とを備える。なお、以下では、第2印刷装置20a,20b,20cの各々を特に区別しない場合には、単に第2印刷装置20と総称する。
第1印刷装置10は、後述する本実施形態に係る印刷方法の第1印刷工程において用いられる。第1印刷装置10は、鋼帯90に対して第1インクを射出する装置であり、鋼帯90の対象領域の周縁部を縁取るように第1インクを対象領域の周縁部上に付着させるために設けられる。対象領域は、鋼帯90におけるインク(具体的には、後述する第2印刷装置20により射出される第2インク)により塗り潰される対象となる領域である。
第1印刷装置10は、第2印刷装置20に対して搬送方向と逆側に配置され、第2印刷装置20による対象領域への第2インクの射出より前に当該対象領域に第1インクを射出する。後述するように、第2印刷装置20による第2インクの射出によって、対象領域内に第2インクが付着する。第1印刷装置10と第2印刷装置20との位置関係は、具体的には、第2印刷装置20による第2インクの射出の開始時に、少なくとも鋼帯90における第2インクが付着する部分の周囲に付着している第1インクが乾燥し終えているように設定される。例えば、第1印刷装置10と第2印刷装置20との間の長手方向Yの距離は、鋼帯90の搬送速度及び第1インクの物性値等に基づいて設定される。
第1印刷装置10により射出される第1インクとしては、例えば、比較的乾燥しやすいインクが用いられる。それにより、鋼帯90の対象領域の周縁部上に付着した第1インクが、乾燥し終える前において、第2印刷装置20により射出され当該対象領域内に付着した第2インクと接触することを抑制することができる。ゆえに、双方のインクが混ざり合うことを抑制することができる。
例えば、第1印刷装置10は、複数の連続型インクジェット印刷装置100を備える。第1印刷装置10において、複数の連続型インクジェット印刷装置100は幅方向Xに沿って並設されており、各連続型インクジェット印刷装置100は設置位置において鋼帯90の印刷を行うことができる。鋼帯90に対して各連続型インクジェット印刷装置100により印刷可能な範囲は、幅方向Xに幅を有している。それにより、第1印刷装置10は、鋼帯90の幅方向Xの一側から他側に亘って連続した範囲について印刷可能である。
なお、第1印刷装置10において設けられる連続型インクジェット印刷装置100の個数及び配置は特に限定されない。例えば、第1印刷装置10において設けられる連続型インクジェット印刷装置100の個数は1つでもよい。また、第1印刷装置10において各連続型インクジェット印刷装置100の長手方向Yの位置は、互いに異なっていてもよい。
連続型インクジェット印刷装置100は、被印刷物に対してインクを液滴状に射出し、インクの液滴の飛翔方向を被印刷物の搬送方向と交差する方向へ偏向させることにより、被印刷物への印刷を行う印刷装置である。印刷システム1では、連続型インクジェット印刷装置100は、鋼帯90に対して第1インクを液滴状に射出し、第1インクの液滴の飛翔方向を鋼帯90の搬送方向である長手方向Yと直交する幅方向Xへ偏向させることにより、鋼帯90への印刷を行う。以下、図2を参照して、連続型インクジェット印刷装置100の構成について説明する。図2は、連続型インクジェット印刷装置100の概略構成を示す模式図である。
図2に示すように、連続型インクジェット印刷装置100は、例えば、ヘッド110と、タンク120と、ポンプ130とを備える。タンク120には第1インクが貯留されており、ポンプ130によって第1インクがタンク120からヘッド110へ供給される。ヘッド110へ供給された第1インクは、ヘッド110の先端から液滴となって射出される。ヘッド110は先端が鋼帯90と対向する姿勢で設けられる。図2では、ヘッド110の先端から液滴となって射出されている第1インク71が示されている。なお、ヘッド110の先端から液滴となって射出される第1インク71の粒径は、例えば、100μm程度である。
ヘッド110は、例えば、インク射出装置111と、帯電装置112と、一対の偏向板113,113と、ガター114とを備える。
インク射出装置111は、供給される第1インクをポンプ130の圧力で液柱として射出する。射出された液柱は、表面張力により射出直後に空中で液滴に分割する。このように生成された第1インクの液滴には、帯電装置112により電荷が付加される。そして、帯電された液滴は、一対の偏向板113,113により発生する電場によって偏向される。一対の偏向板113,113は、互いに対向して配置され、一方がマイナス電極となり、他方がプラス電極となっている。第1インクの液滴の飛翔方向の偏向量は、帯電装置112により付加される電荷及び偏向板113,113により発生する電場の大きさに依存する。当該電荷及び当該電場の大きさが制御されることによって、第1インクの液滴の飛翔方向の偏向量が制御される。
図2に示すように、連続型インクジェット印刷装置100のヘッド110から液滴となって射出された第1インク71が鋼帯90に付着して乾燥することによって、鋼帯90上にドット81が形成される。この際、鋼帯90上には、例えば、複数のドット81が互いに間隔を空けて形成される。具体的には、飛翔方向を幅方向Xへ偏向させつつ第1インクの液滴を射出することによって、幅方向Xに沿ったドット81の列が形成される。このようなドット81の列を長手方向Yに沿って順次形成することによって、鋼帯90への印刷が行われる。このように、鋼帯90における各ドット81の形成位置は、第1インクの液滴の飛翔方向の偏向量及び第1インクの液滴を射出するタイミングが制御されることによって、制御され得る。
ガター114は、インク射出装置111により射出されたものの印刷に用いられない第1インクの液滴を回収する。ガター114は図示しないチューブ等によってタンク120と接続されており、ガター114により回収された第1インクはタンク120へ送られて貯留される。また、インク射出装置111は図示しないチューブ等によってポンプ130と接続されており、ポンプ130によりインク射出装置111へ第1インクが供給される。
第2印刷装置20は、後述する本実施形態に係る印刷方法の第2印刷工程において用いられる。第2印刷装置20は、鋼帯90に対して第2インクを射出する装置であり、第2インクを鋼帯90の対象領域内に付着させるために設けられる。
第2印刷装置20により射出される第2インクは、具体的には、第1印刷装置10により射出される第1インクによって縁取られた鋼帯90の対象領域の周縁部より内側に付着する。そして、鋼帯90の対象領域内に付着した第2インクが対象領域において濡れ広がることによって、対象領域が第2インクによって塗り潰される。
第2印刷装置20a,20b,20cは、互いに異なる色の第2インクを射出する。例えば、第2印刷装置20a,20b,20cは、それぞれ赤、緑、青の第2インクを射出する。第2印刷装置20a,20b,20cは、例えば、長手方向Yに沿って並設される。各対象領域には予め色が設定されており、各対象領域について設定されている色に対応する第2印刷装置20から第2インクが射出されることによって、各対象領域は設定されている色の第2インクで塗り潰される。なお、1つの対象領域に対して互いに異なる色と対応する複数の第2印刷装置から第2インクが射出されてもよい。それにより、複数の色を混ぜ合わせることにより得られる色のインクで対象領域を塗り潰すことができる。また、対象領域を塗り潰すインクの色の調整は、シアン、マゼンダ及びイエローを用いる等、通常のカラー印刷において使用される他の色の組み合わせを用いることによって行われてもよい。
第2印刷装置20により射出される第2インクとしては、例えば、比較的乾燥しにくい性質及び比較的低い粘度の少なくとも一方を有するインクが用いられる。それにより、第2印刷装置20により射出された第2インクが対象領域内に付着した後に十分に濡れ広がるより前に乾燥し終えてしまうことを抑制することができる。
例えば、第2印刷装置20は、複数のスプレー型印刷装置200を備える。具体的には、第2印刷装置20a,20b,20cはそれぞれ複数のスプレー型印刷装置200a,200b,200cを備え、スプレー型印刷装置200a,200b,200cの間で射出可能な第2インクの色は互いに異なる。第2印刷装置20において、複数のスプレー型印刷装置200は幅方向Xに沿って並設されており、各スプレー型印刷装置200は設置位置において鋼帯90の印刷を行うことができる。鋼帯90に対して各スプレー型印刷装置200により印刷可能な範囲は、幅方向Xに幅を有している。それにより、第2印刷装置20は、鋼帯90の幅方向Xの一側から他側に亘って連続した範囲について印刷可能である。
なお、第2印刷装置20において設けられるスプレー型印刷装置200の個数及び配置は特に限定されない。例えば、第2印刷装置20において設けられるスプレー型印刷装置200の個数は1つでもよい。また、第2印刷装置20において各スプレー型印刷装置200の長手方向Yの位置は、互いに異なっていてもよい。
スプレー型印刷装置200は、被印刷物に対してインクを霧状に射出(換言すると、噴霧)することにより、被印刷物への印刷を行う印刷装置である。印刷システム1では、スプレー型印刷装置200は、鋼帯90に対して第2インクを噴霧することにより、鋼帯90への印刷を行う。以下、図3を参照して、スプレー型印刷装置200の構成について説明する。図3は、スプレー型印刷装置200の概略構成を示す模式図である。
図3に示すように、スプレー型印刷装置200は、例えば、ヘッド210と、タンク220とを備える。タンク220には第2インクが貯留されており、当該インクは加圧用のガスである加圧ガス(例えば、空気)によって加圧されてヘッド210へ供給される。ヘッド210へ供給された第2インクは、ヘッド210の先端から噴霧される。ヘッド210は先端が鋼帯90と対向する姿勢で設けられる。図3では、ヘッド210の先端から霧状に射出されている第2インク72が示されている。なお、ヘッド210の先端から霧状に射出される第2インク72は、第1インク71の液滴と比較して大きな粒径を有するインクの塊の集合に相当する。また、スプレー型印刷装置200から単位時間あたりに射出される第2インク72の量は、例えば、鋼帯90が1mm移動する間に対象領域の面積に約0.5〜10μmの厚さを乗じて得られる量を射出可能となるように設定される。
ヘッド210は、例えば、インク収容空間211と、射出口212と、バルブ213とを備える。
インク収容空間211は、ヘッド210の内部に形成され、タンク220から供給される加圧された第2インクを収容する空間である。射出口212は、ヘッド210の先端に形成され、インク収容空間211と外部とを連通する。射出口212は、インク収容空間211に収容される第2インクを外部へ霧状に射出する機能を有する。それにより、インク収容空間211から射出口212を通過した第2インクは、霧状になって外部へ射出される。なお、射出口212により噴霧されるインクの形態としてフルコーン、ホローコーン、フラット又はソリッド(直進)等の種類が存在する。どの形態に対応する射出口212を使用しても問題は無いが、鋼帯90の対象領域の塗り潰しを目的とする観点では、フルコーン又はソリッドの形態で第2インクを噴霧させることがより好ましい。
バルブ213は、射出口212をインク収容空間211側から塞ぐ弁である。バルブ213は、例えばヘッド210の内部において摺動することによって、開閉可能である。バルブ213を開閉することによって、射出口212が塞がれた状態と、射出口212によってインク収容空間211と外部とが連通された状態とを切り替えることができる。バルブ213が閉塞されることにより射出口212が塞がれ、射出口212からの第2インクの射出は停止する。一方、バルブ213が開放されることにより射出口212によってインク収容空間211と外部とが連通され、射出口212から第2インク72が射出される。バルブ213の動作が制御されることによって、射出口212からの第2インクの射出が制御される。なお、バルブ213の構造は、特に図3に示した例に限定されるものではなく、電磁弁等、液体の流路制御が可能なものであればよい。
図3に示すように、スプレー型印刷装置200のヘッド210から霧状に射出された第2インク72が鋼帯90に付着して周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、鋼帯90上に第2インク72により塗り潰された領域である塗り潰し領域82が形成される。鋼帯90における塗り潰し領域82の長手方向Yの形成位置及び形成範囲は、第2インクを射出するタイミングが制御されることによって、制御され得る。
超音波装置40は、鋼帯90に超音波を付与する装置である。具体的には、超音波装置40は、鋼帯90における第2印刷装置20により射出される第2インクが付着する部分に超音波を付与可能となっている。
例えば、超音波装置40は、超音波を発生する超音波素子を有しており、電力を用いて超音波素子を発振させることによって超音波を照射することができる。超音波装置40は、例えば、鋼帯90の近傍に配置され、超音波を鋼帯90に対して照射することによって、鋼帯90に超音波を付与することができる。また、超音波装置40は、例えば、長手方向Yについて第2印刷装置20と対応する位置に配置されている。それにより、超音波装置40から照射される超音波は、鋼帯90における第2印刷装置20により射出される第2インクが付着する部分に付与され得る。
制御装置50は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)装置等のデータ格納用記憶装置等で構成される。
制御装置50は、印刷システム1の各装置へ動作指令を出力することによって、各装置の動作を制御する。なお、制御装置50が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は互いに通信可能に接続されてもよい。
例えば、制御装置50は、第1印刷装置10の動作を制御することによって、第1印刷装置10による第1インクの射出を制御する。具体的には、制御装置50は、連続型インクジェット印刷装置100の各々のインク射出装置111、帯電装置112及びポンプ130の動作を制御することによって、各連続型インクジェット印刷装置100による第1インクの射出を制御する。
また、例えば、制御装置50は、第2印刷装置20の動作を制御することによって、第2印刷装置20による第2インクの射出を制御する。具体的には、制御装置50は、第2印刷装置20a,20b,20cの各々について、スプレー型印刷装置200の各々のバルブ213の動作を制御することによって、各スプレー型印刷装置200による第2インクの射出を制御する。
本実施形態では、制御装置50は、第1印刷装置10によって鋼帯90の対象領域の周縁部を縁取るように第1インクを対象領域の周縁部上に付着させた後に、第2印刷装置20によって第2インクを鋼帯90の当該対象領域内に付着させる。
また、例えば、制御装置50は、超音波装置40の動作を制御することによって、超音波装置40による鋼帯90への超音波の付与を制御する。具体的には、制御装置50は、超音波装置40の超音波素子による発振を制御することによって、超音波装置40による超音波の照射を制御する。
なお、上記では、第1印刷装置10として連続型インクジェット印刷装置100が用いられ、第2印刷装置20としてスプレー型印刷装置200が用いられる例について説明したが、第1印刷装置10として用いられる印刷装置及び第2印刷装置20として用いられる印刷装置は、他の種類の印刷装置であってもよい。例えば、第1印刷装置10又は第2印刷装置20としてバルブジェット型インクジェット印刷装置300が用いられてもよい。なお、第1印刷装置10及び第2印刷装置20の双方について、バルブジェット型インクジェット印刷装置300が用いられてもよい。
バルブジェット型インクジェット印刷装置300は、射出口を閉鎖するバルブを開閉させることにより被印刷物に対してインクを基本的に液滴状に射出し、被印刷物への印刷を行う印刷装置である。印刷システム1にバルブジェット型インクジェット印刷装置300を適用した場合、バルブジェット型インクジェット印刷装置300は、鋼帯90に対してインクを基本的に液滴状に射出し、鋼帯90への印刷を行う。以下、図4を参照して、バルブジェット型インクジェット印刷装置300の構成について説明する。図4は、バルブジェット型インクジェット印刷装置300の概略構成を示す模式図である。
図4に示すように、バルブジェット型インクジェット印刷装置300は、例えば、ヘッド310と、タンク320とを備える。タンク320にはインクが貯留されており、インクは加圧用のガスである加圧ガス(例えば、空気)によって加圧されてヘッド310へ供給される。ヘッド310へ供給されたインクは、ヘッド310の先端から液滴となって射出される。ヘッド310は先端が鋼帯90と対向する姿勢で設けられる。図4では、ヘッド310の先端から液滴となって射出されているインク73が示されている。なお、ヘッド310の先端から液滴となって射出されるインク73の粒径は、例えば、150〜400μm程度である。
ヘッド310は、例えば、インク収容空間311と、複数の射出口312と、複数のバルブ313とを備える。
インク収容空間311は、ヘッド310の内部に形成され、タンク320から供給される加圧されたインクを収容する空間である。複数の射出口312は、ヘッド310の先端に幅方向Xに沿って並んで形成され、インク収容空間311と外部とを連通する。射出口312は、インク収容空間311に収容されるインクを外部へ液滴状に射出する機能を有する。それにより、インク収容空間311から各射出口312を通過したインクは、液滴となって外部へ射出される。
バルブ313は、射出口312をインク収容空間311側から塞ぐ弁である。複数のバルブ313はヘッド310の内部において幅方向Xに沿って並設され、各バルブ313は複数の射出口312のうち対応する射出口312を塞ぐ。バルブ313は、例えばヘッド310の内部において摺動することによって、開閉可能である。バルブ313を開閉することによって、射出口312が塞がれた状態と、射出口312によってインク収容空間311と外部とが連通された状態とを切り替えることができる。バルブ313が閉塞されることにより対応する射出口312が塞がれ、当該射出口312からのインクの射出は停止する。一方、バルブ313が開放されることにより対応する射出口312によってインク収容空間311と外部とが連通され、当該射出口312からインクが射出される。各バルブ313の動作が制御されることによって、各射出口312からのインクの射出が制御される。
バルブジェット型インクジェット印刷装置300が第1印刷装置10として用いられる場合、バルブジェット型インクジェット印刷装置300から射出されるインクとして第1インクが用いられる。その場合、図4に示すようにバルブジェット型インクジェット印刷装置300のヘッド310から液滴となって射出されたインク73が鋼帯90に付着して乾燥することによって、鋼帯90上にドット83が形成される。この際、鋼帯90上には、例えば、複数のドット83が互いに間隔を空けて形成される。鋼帯90におけるドット83の幅方向Xの形成位置は、複数の射出口312のうちインクを射出させる射出口312が選択されることによって、制御され得る。また、鋼帯90におけるドット81の長手方向Yの形成位置は、インクを射出するタイミングが制御されることによって、制御され得る。
ここで、鋼帯90に対してバルブジェット型インクジェット印刷装置300により印刷可能な幅方向Xの幅は、連続型インクジェット印刷装置100と比較して長い。ゆえに、バルブジェット型インクジェット印刷装置300を第1印刷装置10として用いた場合、第1印刷装置10により印刷可能な幅方向Xの幅を同程度に確保するために幅方向Xに並設するインクジェット印刷装置の必要数を低減することができる。また、バルブジェット型インクジェット印刷装置300では、幅方向Xに沿って並設される複数の射出口312から同時にインクを射出することができるので、鋼帯90の搬送速度によらず、幅方向Xに対して平行に複数のドットからなるドット列を形成しやすい。一方、連続型インクジェット印刷装置100を第1印刷装置10として用いた場合、単位時間あたりの第1インクの液滴の射出数を多くすることができるので、鋼帯90上に形成されるドットの密度を高めることができる。
なお、上述したように、バルブジェット型インクジェット印刷装置300は第2印刷装置20としても用いられ得る。その場合、バルブジェット型インクジェット印刷装置300から射出されるインクとして第2インクが用いられる。また、その場合、上記のようにバルブジェット型インクジェット印刷装置300のヘッド310から液滴となって射出されたインク73が鋼帯90に付着して周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、鋼帯90上にインクにより塗り潰された領域である塗り潰し領域が形成される。鋼帯90における塗り潰し領域の長手方向Yの形成位置及び形成範囲は、複数の射出口312のうちインクを射出させる射出口312が選択され、インクを射出するタイミングが制御されることによって、制御され得る。
ここで、バルブジェット型インクジェット印刷装置300から単位時間あたりに射出されるインクの量は、スプレー型印刷装置200と比較して少ない。ゆえに、バルブジェット型インクジェット印刷装置300を第2印刷装置20として用いた場合、鋼帯90の対象領域内に第2インクを過剰に付着させることを抑制することができる。一方、スプレー型印刷装置200を第2印刷装置20として用いた場合、鋼帯90の対象領域内により広範囲に第2インクを付着させることができる。
また、上記では、バルブジェット型インクジェット印刷装置300によってインクを液滴状に射出する例を説明したが、バルブジェット型インクジェット印刷装置300によってインクを途切れさせずに連続的に射出してもよい。例えば、バルブジェット型インクジェット印刷装置300のバルブ313を比較的長い時間開放させることにより射出口312からインクを途切れさせずに連続的に射出することが実現され得る。
<2.印刷方法>
続いて、図5〜図8を参照して、本発明の実施形態に係る印刷方法について説明する。
本実施形態に係る印刷方法は、高速で搬送される鋼帯90に対してインクを射出することによって印刷を行う印刷方法であって、第1印刷工程と、第2印刷工程とを含む。例えば、本実施形態に係る印刷方法は、上述した印刷システム1を用いて実施される。
第1印刷工程は、鋼帯90の対象領域の周縁部を縁取るように第1インクを対象領域の周縁部上に付着させる工程である。例えば、第1印刷工程では、上述した第1印刷装置10を用いて鋼帯90に対して第1インクが射出される。第2印刷工程は、第1印刷工程の後に、第2インクを鋼帯90の対象領域内に付着させる工程である。例えば、第2印刷工程では、上述した第2印刷装置20を用いて鋼帯90に対して第2インクが射出される。
なお、以下では、第1印刷工程によって第1インクを対象領域の周縁部上に全周に亘って付着させた後に当該対象領域について第2印刷工程が開始される例を主に説明するが、第2印刷工程は第1印刷工程の開始後に開始されればよい。換言すると、第1印刷工程によって第1インクを対象領域の周縁部上に全周に亘って付着させ終わる前に当該対象領域について第2印刷工程が開始されてもよい。例えば、長手方向に比較的長い対象領域についてインクによる塗り潰しを行う場合、第1印刷工程によって、対象領域における搬送方向の下流側の周縁部についてのみ第1インクを付着させ終わった時点で第2印刷工程が開始されてもよい。そのような場合においても、対象領域における第2インクが付着する部分の周囲の周縁部には第1インクを付着させ終わっているので、当該周縁部は第1インクによって形成された複数のドットによって縁取られている。ゆえに、後述するように、第2インクが対象領域の周縁部を超えて外側へはみ出ることが抑制される。
一方、以下で本実施形態に係る印刷方法と比較する参考例に係る印刷方法は、第1印刷工程に相当する工程を行わずに、第2印刷工程に相当する工程を行う印刷方法である。例えば、参考例に係る印刷方法は、上述した印刷システム1の構成から第1印刷装置10を省略した構成を有する印刷システムを用いて実施される。
まず、図5及び図6を参照して、鋼帯90の単独の対象領域61を第2インク72cにより塗り潰す場合について説明する。図5は、本実施形態に係る印刷方法によって単独の対象領域61が第2インク72cにより塗り潰される様子を示す模式図である。図6は、参考例に係る印刷方法によって単独の対象領域61が第2インク72cにより塗り潰される様子を示す模式図である。なお、図5及び図6では、対象領域61に設定されている色が第2インク72cの色である例が示されている。
本実施形態では、単独の対象領域61を第2インク72cにより塗り潰す場合、まず、第1印刷工程において、第1印刷装置10の連続型インクジェット印刷装置100から第1インクを射出し、鋼帯90の対象領域61の周縁部を縁取るように当該周縁部上に付着させる。この際、例えば、液滴状の第1インクが対象領域61の周縁部上に全周に亘って互いに間隔を空けて付着する。そして、付着した第1インクが乾燥することによって、図5に示すように、対象領域61の周縁部上に、複数のドット81が互いに間隔を空けて全周に亘って形成される。それにより、対象領域61の周縁部が複数のドット81によって縁取られる。
なお、第1印刷工程において、鋼帯90の対象領域61の周縁部上に間隔を空けずに連続的に複数のドット81を形成させてもよい。ここで、鋼帯90に対して連続型インクジェット印刷装置100により印刷可能な幅方向Xの幅は、ドット81の間隔が広いほど長くなる。ゆえに、第1印刷装置10により印刷可能な幅方向Xの幅を同程度に確保するためには、対象領域61の周縁部上に互いに間隔を空けて複数のドット81を形成させる場合、周縁部上に間隔を空けずに連続的に複数のドット81を形成させる場合と比較して、連続型インクジェット印刷装置100の必要数を低減することができる。よって、第1印刷工程において、鋼帯90の対象領域61の周縁部上に互いに間隔を空けて第1インクの複数のドット81を形成させることが好ましい。なお、複数のドット81の間隔は、後述するように、200μm以下であることがより好ましい。
次に、第2印刷工程において、図5に示すように、第2印刷装置20cのスプレー型印刷装置200cから第2インク72cを射出し、鋼帯90の対象領域61内に付着させる。その後、図5に示すように、対象領域61内に付着した第2インク72cが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、第2インク72cの色の塗り潰し領域82cが形成される。
ここで、本実施形態では、第1印刷工程が事前に行われることによって、第2印刷工程において、対象領域61の周縁部が複数のドット81によって縁取られている状態で、対象領域61内に第2インク72cを付着させることができる。ゆえに、第2印刷工程において対象領域61内に付着した第2インク72cは、周囲に濡れ広がる過程において、対象領域61の周縁部上に形成された複数のドット81によってせき止められる。
具体的には、対象領域61内に付着して濡れ広がる第2インク72cのうちドット81との接触部の近傍の部分には、当該ドット81により引っ張られる力が作用する。それにより、第2インク72cが対象領域61の周縁部を超えて外側へはみ出ることが抑制される。
より具体的には、上記のように、各ドット81間に間隔が設けられる場合であっても、対象領域61内に付着して濡れ広がる第2インク72cのうち隣り合うドット81の間に位置する部分には、当該隣り合うドット81の各々により引っ張られる力が作用する。ゆえに、第2インク72cが隣り合うドット81の間から外側へはみ出ることが抑制される。
さらに、本実施形態では、第2インク72cが対象領域61の周縁部を超えて外側へはみ出ることが抑制されることによって、対象領域61内に第2インク72cを十分に行き渡らせることができるので、対象領域61の一部が第2インク72cにより塗り潰されずに塗り残されることを抑制することができる。
なお、第2印刷工程において、鋼帯90に超音波を付与した状態で、第2インク72cを鋼帯90の対象領域61内に付着させることが好ましい。鋼帯90への超音波の付与は、例えば、印刷システム1の超音波装置40を用いることによって実現され得る。鋼帯90に超音波が付与される場合、鋼帯90に超音波が付与されない場合と比較して、鋼帯90の表面張力を低下させることができる。それにより、鋼帯90上において第2インク72cが濡れ広がりやすくなる。ゆえに、第2インク72cが十分に濡れ広がりきらないことに起因して対象領域61の一部が第2インク72cにより塗り潰されずに塗り残されることを抑制することができる。さらに、対象領域61内により均一に第2インク72cを濡れ広がらせることができる。
一方、参考例では、単独の対象領域61を第2インク72cにより塗り潰す場合、図6に示すように、対象領域61の周縁部を縁取るように当該周縁部上に第1インクを付着させることを行わずに、スプレー型印刷装置200cから第2インク72cを射出し、鋼帯90の対象領域61内に付着させる。その後、図6に示すように、対象領域61内に付着した第2インク72cが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、塗り潰し領域82c’が形成される。
ここで、参考例では、本実施形態の第1印刷工程に相当する工程が行われないので、対象領域61の周縁部が複数のドットによって縁取られていない状態で、対象領域61内に第2インク72cが付着する。ゆえに、図6に示されるように、対象領域61内に付着して濡れ広がる第2インク72cが対象領域61の周縁部を超えて外側へはみ出やすくなる。さらに、図6に示すように、濡れ広がる第2インク72cが対象領域61の周縁部を超えて外側へはみ出ることに起因して、対象領域61内に第2インク72cを十分に行き渡らせることが困難となるので、対象領域61の一部が第2インク72cにより塗り潰されずに塗り残されやすくなる。
次に、図7及び図8を参照して、鋼帯90の互いに隣接する対象領域61,62を第2インク72c,72bにより塗り潰す場合について説明する。図7は、本実施形態に係る印刷方法によって互いに隣接する対象領域61,62が第2インク72c,72bにより塗り潰される様子を示す模式図である。図8は、参考例に係る印刷方法によって互いに隣接する対象領域61,62が第2インク72c,72bにより塗り潰される様子を示す模式図である。なお、図7及び図8では、対象領域61,62に設定されている色がそれぞれ第2インク72c,72bの色である例が示されている。
本実施形態では、互いに隣接する対象領域61,62をインクにより塗り潰す場合、まず、第1印刷工程において、第1印刷装置10の連続型インクジェット印刷装置100から第1インクを射出し、鋼帯90の対象領域61,62の周縁部をそれぞれ縁取るように当該周縁部上に付着させる。そして、図7に示すように、対象領域61,62の周縁部上に複数のドット81が互いに間隔を空けて全周に亘って形成される。それにより、対象領域61,62の周縁部が複数のドット81によってそれぞれ縁取られる。
次に、第2印刷工程において、図7に示すように、第2印刷装置20cのスプレー型印刷装置200cから第2インク72cを射出し、鋼帯90の対象領域61内に付着させる。また、第2印刷装置20bのスプレー型印刷装置200bから第2インク72bを射出し、鋼帯90の対象領域62内に付着させる。その後、図7に示すように、対象領域61内に付着した第2インク72cが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、第2インク72cの色の塗り潰し領域82cが形成される。また、対象領域62内に付着した第2インク72bが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、第2インク72bの色の塗り潰し領域82bが形成される。
ここで、本実施形態では、第1印刷工程が事前に行われることによって、第2印刷工程において、対象領域61,62の各々の周縁部が複数のドット81によってそれぞれ縁取られている状態で、対象領域61,62内にそれぞれ第2インク72c,72bを付着させることができる。ゆえに、第2印刷工程において対象領域61,62内に付着した第2インク72c,72bが周囲に濡れ広がる際に、互いに隣接する対象領域61,62の境界は複数のドット81によって縁取られている。よって、対象領域61,62内に付着して濡れ広がる第2インク72c,72bが対象領域61,62の境界を越えて隣接する対象領域内へはみ出ることが抑制される。それにより、互いに隣接する対象領域61,62内に付着して濡れ広がる互いに異なる色の第2インク72c,72bが混ざり合うことが抑制される。
一方、参考例では、互いに隣接する対象領域61,62をインクにより塗り潰す場合、図8に示すように、対象領域61,62の周縁部を縁取るように当該周縁部上に第1インクを付着させることを行わずに、スプレー型印刷装置200c,200bから第2インク72c,72bを射出し、鋼帯90の対象領域61,62内にそれぞれ付着させる。その後、図8に示すように、対象領域61内に付着した第2インク72cが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、第2インク72cの色の塗り潰し領域82c’が形成される。また、対象領域62内に付着した第2インク72bが周囲に濡れ広がった後に乾燥することによって、第2インク72bの色の塗り潰し領域82b’が形成される。
ここで、参考例では、本実施形態の第1印刷工程に相当する工程が行われないので、対象領域61,62の各々の周縁部が複数のドット81によってそれぞれ縁取られていない状態で、対象領域61,62内にそれぞれ第2インク72c,72bが付着する。ゆえに、対象領域61,62内に付着して濡れ広がる第2インク72c,72bが対象領域61,62の境界を越えて隣接する対象領域内へはみ出やすくなる。例えば、図8に示すように、対象領域62内に付着した第2インク72bが対象領域61,62の境界を越えて隣接する対象領域61内へはみ出る。それにより、互いに隣接する対象領域61,62内に付着して濡れ広がる互いに異なる色の第2インク72c,72bが混ざり合うことによって、第2インク72cの色と第2インク72bの色とを混ぜ合わせることにより得られる色の塗り潰し領域82d’が形成されてしまう。
上記のように、本実施形態に係る印刷方法によれば、鋼帯90の対象領域内に付着して濡れ広がる第2インクが当該対象領域の周縁部を超えて外側へはみ出ることを抑制することができる。また、鋼帯90の対象領域の一部が第2インクにより塗り潰されずに塗り残されることを抑制することができる。さらに、互いに隣接する対象領域を第2インクにより塗り潰す場合において、互いに隣接する対象領域内に付着して濡れ広がる互いに異なる色の第2インクが混ざり合うことを抑制することができる。よって、本実施形態に係る印刷方法によれば、高速で搬送される平面形状の被印刷物である鋼帯90へのインクを用いた印刷において、鋼帯90における所望の領域をインクにより精度良く塗り潰すことができる。また、本実施形態に係る印刷方法によれば、部材の取り替えをすることなく印刷パターンを変更することができるので、印刷パターンを比較的高い頻度で容易に変更することができる。
本実施形態に係る印刷方法の第1印刷工程で鋼帯90上に形成されるドット81の間隔が第2印刷工程での対象領域の塗り潰しに与える影響を調査するために、上述した印刷システム1を用いて実機試験を行った。
実機試験では、印刷システム1を用いて第1印刷工程及び第2印刷工程を行うことによって、鋼帯90における矩形領域を第2インクにより塗り潰し、第2インクが当該矩形領域の周縁部を超えて外側へはみ出る程度、及び当該矩形領域の一部が第2インクにより塗り潰されずに塗り残される程度に基づいて塗り潰し精度を評価した。
図9は、実機試験において鋼帯90上に形成されたドット81及び塗り潰し領域82を示す模式図である。なお、図9では、塗り潰し領域82は、実線で囲まれハッチングが付された領域に該当する。本実機試験では、具体的には、図9に示すように、第1印刷工程において、第1印刷装置10の連続型インクジェット印刷装置100から第1インクを射出し、幅方向X及び長手方向Yに各辺を有する矩形領域60の周縁部を縁取るように当該周縁部上に付着させた。それにより、幅方向X及び長手方向Yの各辺に6個のドット81が配置されるように、鋼帯90上に複数のドット81を形成した。本実機試験における矩形領域60は、上述した対象領域に相当する。次に、第2印刷工程において、第2印刷装置20のスプレー型印刷装置200から第2インクを射出し、矩形領域60内に付着させることにより、塗り潰し領域82を形成した。
そして、第2インクが矩形領域60の周縁部を超えて外側へはみ出る程度を評価する指標として、はみ出し率を算出した。具体的には、はみ出し率は、塗り潰し領域82のうち矩形領域60からはみ出ている部分であるはみ出し部の面積の合計の矩形領域60の面積に対する割合である。例えば、図9の例では、塗り潰し領域82のうち矩形領域60の長手方向Yの辺を超えてはみ出している部分823、及び矩形領域60の幅方向Xの辺を超えてはみ出している部分824等の部分が、はみ出し部に相当する。
また、矩形領域60の一部が第2インクにより塗り潰されずに塗り残される程度を評価する指標として、塗り残し率を算出した。具体的には、塗り残し率は、矩形領域60のうち第2インクにより塗り潰されずに塗り残されている部分である塗り残し部の面積の合計の矩形領域60の面積に対する割合である。例えば、図9の例では、矩形領域60のうち矩形領域60の長手方向Yの辺と塗り潰し領域82の周縁部によって囲まれている部分821、及び矩形領域60の幅方向Xの辺と塗り潰し領域82の周縁部によって囲まれている部分822等の部分が、塗り残し部に相当する。
本実機試験における試験条件として、第1印刷工程におけるドット81の直径を330μmと500μmの2通りに設定した。また、第1印刷工程におけるドット81の幅方向Xの間隔(ドット間隔d1)及び長手方向Yの間隔(ドット間隔d2)をそれぞれ0〜800μmの間で様々に変更した。また、第2印刷工程におけるスプレー型印刷装置200から射出する第2インクの総体積を、対象領域の面積に1μmを乗じて得られる体積と略一致する体積に設定した。その他の試験条件としては、鋼帯90の材質を軟鋼とし、鋼帯90の厚みを0.8mmとし、鋼帯90の幅を1200mmとし、搬送速度を100m/minとし、連続型インクジェット印刷装置100のヘッド110の先端と鋼帯90との距離を10mmとし、スプレー型印刷装置200のヘッド210の先端と鋼帯90との距離を10mmとした。
本実機試験の結果を表1及び表2に示す。表1では、ドット81の直径を330μmとした試験条件についての塗り潰し精度の評価結果が示されている。表2では、ドット81の直径を500μmとした試験条件についての塗り潰し精度の評価結果が示されている。表1及び表2では、塗り潰し精度の評価結果について、はみ出し率及び塗り残し率の双方が5%以下である場合には「◎」を、はみ出し率及び塗り残し率の少なくとも一方が5%より高いものの双方が10%以下である場合には「○」を、はみ出し率及び塗り残し率の少なくとも一方が10%より高い場合には「△」を付すことにより表現している。このように、塗り潰し精度の評価結果を示すこれらの印は、「△」、「○」、「◎」の順に塗り潰し精度が高くなることを意味する。
表1及び表2を参照すると、ドット81の直径によらず、幅方向Xのドット間隔d1及び長手方向Yのドット間隔d2の双方が400μm以下である場合、塗り潰し精度の評価結果が少なくとも「○」となることが確認された。さらに、幅方向Xのドット間隔d1及び長手方向Yのドット間隔d2の双方が200μm以下である場合には、塗り潰し精度の評価結果が「◎」となることが確認された。
上記の結果から、第1印刷工程において、鋼帯90上に形成されるドット81の間隔を200μm以下にすることによって、第2インクが対象領域の周縁部を超えて外側へはみ出る程度、及び対象領域の一部が第2インクにより塗り潰されずに塗り残される程度を効果的に抑制することができるので、塗り潰し精度を効果的に向上させることができることが確認された。
ここで、対象領域の周縁部上に形成されるドット81の間隔は、上述したように、連続型インクジェット印刷装置100の必要数に影響を与える。具体的には、対象領域の周縁部上に形成されるドット81の間隔が広いほど、連続型インクジェット印刷装置100の必要数は少なくなる。ゆえに、第1印刷工程において、鋼帯90上に形成されるドット81の間隔を200μm以下にすることによって、塗り潰し精度を効果的に向上させつつ、連続型インクジェット印刷装置100の必要数を低減することができることが確認された。
<3.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る印刷方法は、被印刷物の対象領域の周縁部を縁取るように第1インクを対象領域の周縁部上に付着させる第1印刷工程と、第1印刷工程の後に、第2インクを被印刷物の対象領域内に付着させる第2印刷工程とを含む。それにより、被印刷物の対象領域内に付着して濡れ広がる第2インクが当該対象領域の周縁部を超えて外側へはみ出ること、及び被印刷物の対象領域の一部が第2インクにより塗り潰されずに塗り残されることを抑制することができる。さらに、互いに隣接する対象領域を第2インクにより塗り潰す場合において、互いに隣接する対象領域内に付着して濡れ広がる互いに異なる色の第2インクが混ざり合うことを抑制することができる。よって、本実施形態に係る印刷方法によれば、高速で搬送される平面形状の被印刷物へのインクを用いた印刷において、被印刷物における所望の領域をインクにより精度良く塗り潰すことができる。また、本実施形態に係る印刷方法によれば、部材の取り替えをすることなく印刷パターンを変更することができるので、印刷パターンを比較的高い頻度で容易に変更することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。