図1を参照すると、本発明の実施の形態による発電セル20は、磁場を利用して機械的な運動を電気エネルギーに変換する電磁誘導式発電セルである。機械的な運動は、例えば、直線運動であってもよいし、振動運動であってもよい。振動運動は、例えば、一時的な衝撃力及びバネ(図示せず)を使用して繰り返してもよいし、振動装置(図示せず)を使用して繰り返してもよい。
図1及び図2を参照すると、発電セル20は、磁性構造体30と、コイル部材40とを備えている。磁性構造体30及びコイル部材40は、所定方向(Z方向:上下方向)において互いに相対的に移動可能である。例えば、コイル部材40を保持具(図示せず)によって保持した状態で、磁性構造体30を、コイル部材40に対して相対的に上下(+Z方向及び−Z方向)に振動させることができる。また、磁性構造体30を保持具(図示せず)によって保持した状態で、コイル部材40を、磁性構造体30に対して相対的に上下に振動させることができる。
以下、本実施の形態による磁性構造体30及びコイル部材40の夫々の構造について説明する。
図3及び図4を参照すると、磁性構造体30は、軟磁性体からなる心棒32と、軟磁性体からなる2つのフランジ34と、2つのフランジ34に夫々対応する2つの磁石部材36とを備えている。本実施の形態の磁性構造体30は、Z方向(所定方向)と平行な中心軸AXを中心として任意の角度で回転対称な形状を有してる。但し、本発明はこれに限られず、磁性構造体30の構造は、後述するように様々に変形可能である。
心棒32は、Z方向(中心軸AX)に沿って延びており、主部322と、2つの突出部328とを有している。主部322は、中心軸AXに沿って延びており、中心軸AXを中心とする円柱形状を有している。特に、本実施の形態の主部322は、Z方向と直交する直交平面(水平面:XY平面)において、円形の断面を有している。但し、主部322は、これと異なる円柱形状を有していてもよい。例えば、XY平面における主部322の断面は、楕円状に多少扁平していてもよい。また、主部322の断面の形状やサイズは、Z方向における位置に係らず一定であってもよいし、Z方向における位置によって多少異なっていてもよい。
2つの突出部328は、互いに同じ形状及びサイズを有している。より具体的には、突出部328の夫々は、中心軸AXを中心とする円柱形状を有している。XY平面において、突出部328のサイズは、主部322のサイズよりも小さい。2つの突出部328は、主部322のZ方向における両端面からZ方向外側に向かって夫々突出している。
2つのフランジ34は、互いに同じ材料から形成されており、互いに同じ形状及びサイズを有している。フランジ34の夫々は、対向面342と、反対面344とを有している。対向面342及び反対面344の夫々は、XY平面と平行な平面であり、XY平面において円形の外周を有している。対向面342と反対面344とは、Z方向において互いに反対側に位置している。
フランジ34の夫々は、位置決め溝346と、受容部348とを有している。位置決め溝346は、対向面342の外周近傍に形成された凹部である。位置決め溝346は、対向面342からZ方向外側に凹んでおり、対向面342の外周に沿って切れ目なく延びている。即ち、位置決め溝346は、中心軸AXを中心とするリング形状の空間である。受容部348は、フランジ34のXY平面における中心部をZ方向に貫通する空間であり、XY平面において円形状を有している。即ち、受容部348は、中心軸AXを中心とする円柱形状の空間である。
図2及び図3を参照すると、2つのフランジ34の受容部348は、心棒32の2つの突出部328に夫々対応して設けられている。受容部348の夫々のXY平面におけるサイズは、対応する突出部328のXY平面におけるサイズと略同じである。
図3及び図4を参照すると、以上のように形成されたフランジ34の夫々は、中心軸AXを中心とする円板形状を有している。本実施の形態によるフランジ34の夫々は、上述のように凹部及び孔(位置決め溝346及び受容部348)を有しており、完全な円板ではない。但し、本発明は、これに限られない。例えば、フランジ34の夫々のXY平面における断面は、Z方向における位置に係らず一定サイズの円形であってもよい。一方、フランジ34の夫々のXY平面における断面は、例えば、楕円状に多少扁平していてもよいし、Z方向における位置によって多少異なっていてもよい。フランジ34の夫々において、対向面342及び反対面344の夫々は、多少凹凸のある面であってもよいし、中心軸AXに対して多少傾いていてもよい。
図2から図4までを参照すると、2つの磁石部材36は、互いに同じ材料から形成されており、互いに同じ形状及びサイズを有している。磁石部材36の夫々には、磁石部材36をZ方向に貫通する中心孔368が形成されている。中心孔368は、中心軸AXを中心とする円柱形状の空間である。即ち、磁石部材36の夫々は、中心軸AXを中心とするリング形状を有している。中心軸AXを中心とする径方向において、磁石部材36の夫々のサイズ(厚さ)は、対応するフランジ34の位置決め溝346のサイズ(幅)と略同じである。磁石部材36の夫々は、Z方向において互いに反対の磁極を有するように着磁されている。即ち、磁石部材36の夫々において、Z方向における一方の側はN極36Nに着磁されており、Z方向における他方の側はS極36Sに着磁されている。
図2及び図3を参照すると、コイル部材40は、コイル42と、樹脂等の絶縁体からなるボビン44とを備えている。ボビン44は、全体として円筒形状を有している。コイル42は、1本の被覆導線を、ボビン44のXY平面における外周に複数ターンだけ巻回させて形成されている。換言すれば、コイル42は、ボビン44の外周を夫々1周する複数の巻線の集合体である。コイル42は、中心軸AXを中心として、ボビン44を一定方向(時計方向又は反時計方向)に巻回している。
図1及び図3を参照すると、コイル部材40は、2つの端子46を備えている。本実施の形態において、端子46は、ボビン44に巻回された1本の被覆導線の両端部である。即ち、コイル42及び端子46は、互いに一体の部材である。但し、本発明は、これに限らない。例えば、端子46は、半田付け等によってコイル42の両端に夫々接続してもよい。また、ボビン44は、必要に応じて設ければよい。
図2及び図3を参照すると、コイル部材40には、通過孔48を有している。通過孔48は、ボビン44をZ方向に貫通する円柱形状の空間である。コイル部材40の通過孔48のXY平面におけるサイズは、心棒32の主部322のXY平面におけるサイズよりも大きい。また、端子46を除くコイル部材40のXY平面におけるサイズは、磁石部材36の夫々の中心孔368のXY平面におけるサイズよりも小さい。
以下、本実施の形態による発電セル20の組立方法の一例について説明する。
図2から図4までを参照すると、まず、磁石部材36の夫々を、対応するフランジ34の対向面342に取り付けて固定する。図2及び図3を参照すると、本実施の形態において、磁石部材36の夫々におけるS極36Sに着磁された部位は、対応するフランジ34の位置決め溝346に嵌入されており、これにより、磁石部材36の夫々は、対応するフランジ34に対して相対的に移動しないように固定されている。このように固定された磁石部材36の夫々は、対応するフランジ34と面接触している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁石部材36の夫々は、対応するフランジ34から僅かに離れるようにして対応するフランジ34に取り付けてもよい。
図3を参照すると、次に、コイル部材40を、XY平面において心棒32を囲むように配置する。図2から図4までを参照すると、次に、2つのフランジ34に夫々取り付けた2つの磁石部材36を、Z方向において同極が互いに向い合い且つ異極が互いに反対側を向くように配置する。この結果、2つのフランジ34は、XY平面について鏡対称に位置する。本実施の形態によれば、2つの磁石部材36は、Z方向においてN極36Nが互いに向い合うように配置されている。但し、本発明はこれに限られず、2つの磁石部材36は、Z方向においてS極36Sが互いに向い合うように配置されていてもよい。
次に、フランジ34の夫々を、対応する磁石部材36と共に、心棒32に取り付けて固定する。本実施の形態によれば、心棒32の2つの突出部328は、2つのフランジ34の受容部348に夫々嵌入され、これにより、フランジ34の夫々は、心棒32に対して相対的に移動しないように固定される。但し、本発明は、これに限られない。例えば、フランジ34の一方は、心棒32と一体の部材であってもよい。この場合、フランジ34の他方のみを、対応する磁石部材36と共に、心棒32に取り付ければよい。
図1、図2及び図4を参照すると、上述のように組み立てられた発電セル20において、2つのフランジ34は、対向面342がZ方向において距離をあけて互いに向い合うようにして、心棒32に取り付けられ固定されている。このように固定された2つのフランジ34は、心棒32の主部322のZ方向における両端に夫々繋がっている。2つのフランジ34の対向面342は、主部322のZ方向における両端面と夫々面接触している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、対向面342の夫々は、主部322のZ方向における端面から僅かに離れていてもよい。
上述のように組み立てられた発電セル20において、磁石部材36の夫々は、XY平面において心棒32を囲んでいる。特に、本実施の形態によれば、磁石部材36の夫々は、XY平面において心棒32の主部322を切れ目なく囲んでいる。
本実施の形態において、心棒32及び2つのフランジ34は、突出部328及び受容部348によって互いに固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、心棒32は、主部322のみを有していてもよい。この場合、例えば、フランジ34の夫々に受容部348を設けず、主部322のZ方向における両端面を、2つのフランジ34の対向面342に夫々接着してもよい。
図2及び図3を参照すると、本実施の形態において、磁石部材36の夫々は、位置決め溝346によって対応するフランジ34に固定されている。この結果、心棒32、2つのフランジ34及び2つの磁石部材36は、互いに固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、フランジ34の夫々に位置決め溝346を設けず、対応する磁石部材36を、フランジ34の対向面342に接着してもよい。
図1及び図2を参照すると、上述のように組み立てられた発電セル20において、コイル42は、XY平面において心棒32を囲むようにして一定方向に巻回されている。コイル部材40のコイル42及びボビン44は、XY平面において、磁性構造体30の心棒32を距離をあけて囲んでいる。即ち、コイル部材40及び心棒32をZ方向に沿って見たとき、心棒32は、通過孔48(図3参照)の内側に位置している。また、磁性構造体30の磁石部材36の夫々は、XY平面において、コイル部材40のコイル42及びボビン44を距離をあけて囲んでいる。即ち、コイル部材40及び磁石部材36をZ方向に沿って見たとき、コイル42及びボビン44は、中心孔368の内側に位置している。上述のように配置されたコイル部材40は、磁性構造体30の2つの磁石部材36の中心孔368を通過しつつ、Z方向に沿って移動可能である。
以下、発電セル20の機能について説明する。
図5を参照すると、軟磁性体からなる2つのフランジ34は、Z方向において互いに距離をあけて、軟磁性体からなる心棒32に取り付けられている。加えて、磁石部材36の夫々は、対応するフランジ34のZ方向における内側に位置しており、且つ、XY平面において心棒32を囲んでいる。
図5及び図6を参照すると、上述の構造によれば、磁石部材36の夫々に生じた磁力線は、対応するフランジ34によって心棒32の内部を通過するように誘導される。この結果、心棒32の内部には、Z方向(即ち、中心軸AX)に沿って急激に強度を変える磁場(急峻な傾斜磁場)が形成される。この傾斜磁場は、心棒32のZ方向における中間部において極めて弱く、Z方向における両端部に向かって急激かつ線形に強度を上げる。この傾斜磁場を巻回するようにコイル42(図2参照)を配置し、磁性構造体30及びコイル42をZ方向に沿って互いに相対的に移動することで、コイル42に大きな電気エネルギーが生じ、コイル42の2つの端子46(図1参照)の間に高い出力電圧が生じる。換言すれば、発電セル20は、急峻な傾斜磁場を利用して効率よく発電する。
例えば、コイル42(図2参照)を保持しつつ心棒32を含む磁性構造体30をZ方向に振動させると、磁性構造体30の運動エネルギーは、心棒32の内部の急峻な傾斜磁場によって効率的にコイル42の電気エネルギーに変換される。更に、心棒32から漏れ出す磁力線は、XY平面に沿ってコイル42を横切るため、コイル42の発電効率を劣化させない。詳しくは、心棒32から漏れ出してコイル42と交差する磁力線(漏れ磁力線)は、コイル42の中心軸AXに対して略垂直方向に延びている。従って、漏れ磁力線は、磁性構造体30に対するコイル42の中心軸AXに沿った相対的な移動に伴う逆起電力を発生させず、発電セル20の発電効率を低下させない。
図7を図5と比較すると、仮に磁性構造体30がフランジ34を備えていない場合、磁力線の一部は、心棒32を通らず、磁石部材36のS極36Sから磁性構造体30の外部に漏れ出る(図7の磁力線FL参照)。一方、本実施の形態によれば、磁力線は、フランジ34によって心棒32に誘導され、図7の磁力線FLのような漏れ磁力線の発生が抑制される。即ち、本実施の形態によれば、心棒32の内部の磁束密度を高めて心棒32の内部に急峻な傾斜磁場を形成でき、これにより発電効率を向上できる。
以上のように、本実施の形態によれば、磁場を利用して発電する発電セルであって発電効率を向上可能な新たな構造を有する発電セル20を提供できる。
図1及び図2を参照すると、本実施の形態においてコイル42に生じる出力電圧の最大値は、下記のように求めることができる。
磁性構造体30がZ方向(中心軸AX)に沿ってコイル42に対して相対的に速度vで移動するとき、コイル42の2つの端子46の間には、V=dΦ/dtの式によって表される出力電圧Vが生じる。この式において、tは時間であり、Φはコイル42を中心軸AXに沿って貫く磁束である。心棒32のうちコイル42の各巻線が巻回する部位における中心軸AXと直交する断面積をコイル42の全ての巻線について合計した面積S(以下、単に「面積S」という。)、及び、心棒32における磁束密度Bを使用すると、Φ=B・Sである。従って、V=dΦ/dt=S・(dB/dt)=S・(dB/dz)・(dz/dt)である。この式において、dB/dzは、磁束密度Bの中心軸AXに沿った傾斜(磁場傾斜D)であり、dz/dt=vである。従って、V=S・D・vである。
磁性構造体30がZ方向(中心軸AX)に沿って周波数fで単振動する場合、磁性構造体30の移動量zは、磁性構造体30の最大移動量をzMAXとすると、z=zMAX・sin(2πft)である。この場合、磁性構造体30の移動速度v=dz/dt=2πfzMAX・cos(2πft)であり、磁性構造体30の加速度a=d2z/d2t=−(2πf)2zMAX・sin(2πft)である。例えば、f=50Hz、加速度aの最大値GMAX=98m/s2の場合、zMAX=GMAX/(2πf)2=98/(100π)2=0.99mmであり、移動速度vの最大値vMAXは、vMAX=312mm/sである。
上述のS、D、vMAX及びGMAXを使用すると、磁性構造体30がコイル42に対して相対的にZ方向(中心軸AX)に沿って周波数fで単振動する場合、コイル42の2つの端子46の間に生じる出力電圧の最大値(最大電圧)VMAXは、以下の最大電圧式によって表される。
(最大電圧式)VMAX=S・D・vMAX=S・D・(GMAX/2πf)
上述の最大電圧式から理解されるように、本実施の形態による発電セル20の最大電圧は、磁性構造体30及びコイル42の相対運動に対応して面積S及び磁場傾斜Dを調整することで大きくでき、これにより発電セル20の発電効率を向上できる。より具体的には、以下に説明するように、高い周波数による小さな振幅の振動から低い周波数による大きな振幅の振動に亘って高い発電効率の発電セル20を提供できる。
例えば、磁性構造体30及びコイル42の相対運動が小さな振幅の振動である場合、2つのフランジ34の間のZ方向における距離を小さくすることで、2つの磁石部材36を互いに近づけてもよい。この構造によれば、心棒32の内部に、より急峻な傾斜磁場を形成できる。即ち、上述した最大電圧式における磁場傾斜Dを大きくすることで、小さな振幅の振動における発電効率を向上できる。
図8を図2と併せて参照すると、本実施の形態によれば、磁石部材36の夫々のZ方向外側に軟磁性体からなるフランジ34が配置されているため、2つの磁石部材36を、対向する同極による反発力を生じさせることなく、例えば数mmの距離まで近づけることができる。即ち、本実施の形態によれば、2つの磁石部材36の間の距離d0(図2参照)について、吸引力と反発力との間の転換点が存在する。図8に示した例において、転換点に対応する距離d0は、3〜4mmである。
2つの磁石部材36を互いに近づける場合、2つの磁石部材36の間の吸引力と反発力とを考慮して、2つの磁石部材36の間の距離を設定すればよい。例えば、2つの磁石部材36を、転換点に対応する距離d0だけ互いに離せばよい。この配置により、不要な磁気的応力の発生を防止できる。加えて、強い反発力が生じないため、発電セル20を容易に組み立てられる。
図1及び図2を参照すると、例えば、磁性構造体30及びコイル42の相対運動が大きな振幅の振動である場合、2つのフランジ34の間のZ方向における距離を大きくして、2つの磁石部材36を互いに大きく離す必要がある。この構造によれば、磁場傾斜Dは、小さくなる。一方、2つのフランジ34の間の空間を利用して、コイル42のターン(巻回数)を大きくし、これにより発電効率を向上できる。即ち、上述した最大電圧式における面積Sを大きくすることで、大きな振幅の振動における発電効率を向上できる。
図5及び図6を参照すると、本実施の形態によれば、心棒32の各部位における傾斜磁場は、Z方向における心棒32の中間部に対する当該部位の位置に応じて、概ね直線的に変化する。このため、2つの磁石部材36の間の距離を大きくした場合でも、発電セル20の出力電圧の波形は、殆ど歪まない。また、図2を参照すると、コイル42は、一方の磁石部材36のZ方向における中間部と他方の磁石部材36のZ方向における中間部との間の領域(発電領域)において、特に効率的に発電する。本実施の形態のコイル42は、この発電領域に配置されている。この配置により、コイル42全体が効果的に発電するため、大きな振幅の振動に対応して磁場傾斜Dが小さくなっても高い発電効率が得られる。
コイル42をより効果的に発電させるという観点から、発電領域全体に亘ってコイル42を巻回することが好ましい。この場合、コイル42のZ方向における両端部は、本実施の形態と同様に、2つの磁石部材36によって夫々囲まれる。即ち、コイル42の両端部は、XY平面において、2つの磁石部材36の中心孔368の内部に夫々位置する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コイル42を、Z方向において2つの磁石部材36の間に配置して、且つ、コイル42のXY平面における外周を、中心孔368のXY平面における外部に位置させてもよい。この場合、コイル42は、Z方向において2つの磁石部材36の間のみを移動可能である。即ち、磁性構造体30及びコイル部材40の相対的な移動範囲は、発電領域の一部に限定される。但し、この配置によれば、コイル42の巻回数を特に制限なく大きくでき、これにより発電効率を向上できる。
図1を参照すると、本実施の形態によれば、上述したように、磁性構造体30及びコイル42の様々な相対運動に対応して発電セル20の構造を調整でき、これにより発電効率を向上できる。本実施の形態によれば、心棒32、フランジ34及び磁石部材36の夫々のサイズ、2つの磁石部材36の間の距離、コイル42のサイズ、コイル42の巻回数、コイル42の各巻線の太さ(線径)等を特に限定なく自由に設計できる。但し、用途を考慮しつつ高い発電効率を有する発電セル20を得るためには、例えば、以下のような設計アルゴリズムによって発電セル20の構造を設計すればよい。
まず、ステップ1として、心棒32及びフランジ34の材料として使用する軟磁性体のBH曲線を実測する。次に、ステップ2として、必要な出力電圧及び出力電力等の発電要求仕様を明確にする。次に、ステップ3として、発電要求仕様を満たすために必要な磁場構造を設計する。例えば、面積Sの値や磁場傾斜Dの値を設定する。また、2つの磁石部材36の間の反発力及び吸引力を考慮しつつ、2つの磁石部材36の間の距離を設定する。次に、ステップ4として、ステップ1のBH曲線から得た透磁率および飽和磁束密度Bs、ステップ2で明確にした発電要求仕様、及び、ステップ3で設計した磁場構造に基づき、コイル42の巻線密度、コイル42の直流抵抗値(以下、単に「抵抗値」という。)等の磁場構造の細部をシミュレーションによって調整しつつ、磁場構造を最適化する。
以下、発電セル20の構造を設計する際に考慮すべき各部材の好ましい材料及び構造について、より具体的に説明する。
図3を参照すると、心棒32及びフランジ34の材料は、軟磁性体である限り、特に限定されない。但し、飽和磁束密度Bsの大きな軟磁性体を使用することで、磁場傾斜Dを大きくでき、これにより発電効率をより向上できる。飽和磁束密度Bsを大きくするという観点から、ニッケルやフェライトに比べて、パーマロイ(Fe−Ni)、パーメンジュール(Fe−Co)、珪素鋼板(Fe−Si)等の鉄系又はコバルト系の材料を使用することが好ましい。但し、S45CやSS400等の安価で入手し易い構造用鉄鋼材を使用した場合でも、磁場傾斜D(発電効率)は殆ど低下しない。従って、製造コストを低減するという観点から、パーメンジュール等の高価な材料に代えて、上述の構造用鉄鋼材を使用してもよい。
磁石部材36の材料は、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石等の所謂「磁石」である限り、特に限定されない。但し、発電効率を向上させるという観点から、磁力がより強い磁石が好ましい。
コイル42の材料は、巻線の導電体の間が絶縁被覆によって絶縁されている限り、特に限定されない。但し、コイル42の抵抗値を小さくするという観点から、コイル42の導電体は、抵抗率の小さな材料、例えば銅や銀であることが好ましい。また、コイル42における導電体の密度を高くして発電効率を向上させるという観点から、絶縁被覆は、薄い方が好ましい。例えば、絶縁被覆を可能な限り薄くしてコイル42を可能な限り密に巻回させる場合、コイル42を形成する1本の被覆導線の断面積とコイル42の巻回数との組み合わせを変えても、発電効率は変わらない一方、コイル42の抵抗値の変化によって出力電圧と出力電流との間の比率は変わる。従って、発電セル20の用途に応じて、被覆導線の断面積と巻回数との組み合わせを調整すればよい。
図3を参照すると、本実施の形態において、心棒32、フランジ34、磁石部材36及びコイル42等の各部材は、XY平面において中心軸AXを中心とする円形状を有している。また、フランジ34及び磁石部材36の夫々は、心棒32(中心軸AX)に対して直交するように配置されている。XY平面における磁束分布の偏りを抑制して発電効率を向上させるという観点から、本実施の形態が好ましい。但し、本発明は、これに限られない。例えば、各部材は、XY平面において多角形形状を有していてもよい。また、フランジ34及び磁石部材36の夫々は、心棒32に対して多少傾いていてもよい。また、2つのフランジ34は、多少異なる形状やサイズを有していてもよい。同様に、2つの磁石部材36は、多少異なる形状やサイズを有していてもよい。
図2を参照すると、発電効率を向上させるという観点から、フランジ34及び磁石部材36をZ方向に沿って見たとき、磁石部材36の中心孔368は、フランジ34の内側に位置していることが好ましく、フランジ34と磁石部材36とは、殆ど重なっていることが更に好ましい。
特に、フランジ34及び磁石部材36の夫々がXY平面において円形状を有している場合、フランジ34の中心軸AXを中心とする直径φxは、対応する磁石部材36の中心孔368の中心軸AXを中心とする直径φmi(即ち、磁石部材36の内径φmi)よりも大きいことが好ましく、且つ、対応する磁石部材36の中心軸AXを中心とする直径φmo(即ち、磁石部材36の外径φmo)と略同じであることが好ましい。また、磁石部材36を対応するフランジ34に対して容易に取り付けるという観点から、φxは、φmoよりも多少大きいことが好ましい。
上述したφx、φmo、φmiを含む発電セル20のサイズは、磁性構造体30(又は、コイル部材40)を振動させる振動源の振動特性に合わせて、数mmから数十mまでの広い寸法範囲において設計可能である。
例えば、振動源は、数Hz〜数十Hzの周波数で振動する機械的な共振梁(図示せず)であってもよい。磁性構造体30を共振梁と同じ周波数(数Hz〜数十Hzの周波数)で振動させる場合、振幅は1mm程度になる。この場合、φx及びφmoを10〜30mm程度とし、φmiを5〜20mm程度とし、心棒32の主部322の長さLc(2つのフランジ34の間の距離)を数mm〜20mm程度とすればよい。また、磁性構造体30を共振梁の逓倍周波数で振動させる場合、周波数が高くなり振幅が小さくなるため、これらの値を小さくすればよい。
振動源は、発電セル20の用途に応じて、海面に生ずる波、歩行等の運動、運動体が設置された床等の非機械装置であってもよい。例えば、磁性構造体30を、波(1〜3m程度の大きな振幅による振動)によって振動させる場合、φx及びφmoを2m程度とし、φmiを1m程度とし、Lcを2m程度としてもよい。一方、磁性構造体30を、床面の微小振動(1mm未満の微小な振幅による振動)によって振動させる場合、φx及びφmoを2mm程度とし、φmiを1mm程度とし、Lcを2mm程度としてもよい。
フランジ34の厚さTfは、磁石部材36の夫々に生じた磁力線を誘導できる程度に厚い限り、特に限定されない。即ち、Tfの上限値は、特に限定されない。一方、できるだけTfを薄くしたい場合、Tfの下限値は、磁力線が発電セル20の外側に漏れず、且つ、フランジ34内部の磁束分布が一定であるという所定条件下における計算式によって求めることができる。この所定条件によれば、心棒32のXY平面における外周部分において、磁束密度が最大になる。また、この所定条件下において、Tfの下限値={(φmo+φmi)(φmo−φmi)・Bm}/(4・φc・Bf)(但し、Bmは、磁石部材36の表面磁束密度であり、φcは、心棒32の直径であり、Bfは、フランジ34の飽和磁束密度Bs)である。
磁性構造体30は、コイル部材40に対して相対的にZ方向のみに沿って移動することが好ましい。従って、磁性構造体30がスムーズに移動できる限り、XY平面におけるコイル部材40と心棒32との間の隙間は小さいことが好ましい。同様に、磁性構造体30がスムーズに移動できる限り、XY平面におけるコイル部材40と磁石部材36の夫々との間の隙間は小さいことが好ましい。また、磁性構造体30の移動に伴うコイル42の破損を防止するため、XY平面におけるコイル42の外周を絶縁体によって保護してもよい。
図3を参照すると、本実施の形態の磁石部材36の夫々は、切れ目のないリング形状を有する永久磁石(切れ目のないリング磁石)である。磁力線を心棒32の内部に誘導して発電効率を向上させるという観点から、磁石部材36の夫々は、このようなリング磁石であることが好ましい。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁石部材36の夫々は、部分的に切れ目を有するリング磁石であってもよい。また、図9を参照すると、発電セル20(図3参照)は、磁石部材36と異なる2つの磁石部材36Bを備えていてもよい。磁石部材36Bの夫々は、永久磁石からなる複数の磁石362と、絶縁体等の非磁性材料からなる複数の非磁性部材364とから形成されていてもよい。この場合、磁石362と非磁性部材364とは、リング状に交互に並べればよい。また、磁石362は、Z方向において互いに同じ磁化方向を有するように着磁すればよい。
本実施の形態による発電セル20は、既に説明した変形例に加えて、以下に説明するように、更に様々に変形可能である。
図10を図2と比較すると、変形例による発電セル20Bは、発電セル20の磁性構造体30と異なる磁性構造体30Bと、発電セル20と同じコイル部材40とを備えている。磁性構造体30Bは、軟磁性体からなる心棒32Bと、軟磁性体からなる2つのフランジ34Bと、磁性構造体30と同じ2つの磁石部材36とを備えている。
フランジ34Bの夫々は、フランジ34と同様な円板形状を有している。但し、フランジ34Bの直径は、フランジ34の直径よりも小さい。また、フランジ34Bの夫々は、位置決め溝346を有していない。心棒32Bは、心棒32と同じ主部322と、2つの突出部328Bとを有している。突出部328Bの夫々は、心棒32の突出部328と同様な円柱形状を有している。但し、突出部328BのZ方向におけるサイズは、突出部328のZ方向におけるサイズよりも大きい。突出部328Bの夫々は、対応するフランジ34Bの受容部348を通過してZ方向外側に突出している。
図10を参照すると、磁性構造体30Bは、磁性構造体30B及びコイル部材40に加えて、軟磁性体からなり磁石部材36と夫々対応する2つの位置決め部材22と、弾性体からなり位置決め部材22と夫々対応する2つの弾性部材24とを備えている。位置決め部材22及び弾性部材24の夫々は、中心軸AXを中心とする円板形状を有しており、且つ、中心軸AXを中心とする孔部を有している。位置決め部材22及び弾性部材24の夫々の直径は、磁石部材36の中心孔368の直径と略同じであり、位置決め部材22及び弾性部材24の夫々の孔部の直径は、心棒32Bの主部322の直径と略同じである。
本変形例において、位置決め部材22は、心棒32Bの主部322のZ方向における両端に夫々取り付けられて固定されている。また、磁石部材36の夫々は、対応する位置決め部材22によって位置決めしつつ、対応するフランジ34Bの対向面342に取り付けられて固定されている。但し、発電セル20(図2参照)及び発電セル20Bにおける各部材の取り付け方法は、前述した実施の形態や本変形例に限られない。例えば、発電セル20や発電セル20Bにおいて、各部材は、圧接力のみによって互いに取り付けられて固定されていてもよいし、圧接力に加えて又は圧接力に代えて接着剤によって固定されていてもよい。
本変形例において、位置決め部材22の夫々は、心棒32Bと同じ材料からなる一方、心棒32Bと別体の部材である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、位置決め部材22の夫々は、絶縁体から形成してもよい。また、位置決め部材22の一方は、心棒32Bと一体の部材であってもよいし、2つの位置決め部材22は、心棒32Bと一体の部材であってもよい。但し、コイル部材40を心棒32Bに容易に取り付けるという観点から、位置決め部材22の一方は、心棒32Bと別体に形成して、コイル部材40を心棒32Bに取り付けた後に心棒32Bに固定することが好ましい。
本変形例において、弾性部材24の夫々は、対応する位置決め部材22のZ方向内側の面に取り付けられて固定されている。弾性部材24が設けられているため、磁性構造体30Bを振動した際に、コイル部材40が位置決め部材22やフランジ34Bに衝突することによる発電セル20Bの破損及び意図しない振動が防止される。但し、発電セル20Bの破損及び意図しない振動を防止する方法は、本変形例に限られない。例えば、2つの弾性部材24に代えて2つのコイルばね(図示せず)を設けてもよい。この場合、コイル部材40を2つのコイルばねによって上下に引っ張ればよい。
本変形例において、突出部328Bの夫々のZ方向における端面は、対応するフランジ34Bの反対面344と面一になっていない。この構造によっても、発電セル20(図2参照)と同様に発電効率を向上できる。突出部328Bの夫々のZ方向における端面が対応するフランジ34Bの反対面344に比べてZ方向内側に多少凹んでいる場合にも、発電セル20と同様に発電効率を向上できる。但し、突出部328の夫々の端面のZ方向における位置は、発電セル20と同様に、対応するフランジ34Bの反対面344と面一になっていることが好ましい。
図11を参照すると、別の変形例による発電セル20Cは、コイル部材40(図3参照)と異なるコイル部材40Cを備えていることを除き、発電セル20(図2参照)又は発電セル20B(図10参照)と同じ構造を有している。
コイル部材40Cは、コイル部材40(図3参照)のコイル42(図3参照)と異なるコイル42Cと、コイル部材40と同じボビン44とを備えている。コイル42Cは、2つのコイル部422,424を有している。コイル部422,424の夫々は、1本の被覆導線を、ボビン44のXY平面における外周に複数ターンだけ巻回させて形成している。2つのコイル部422,424は、Z方向に並んでいる。コイル部422,424の夫々の両端は、2つの端子46に夫々接続されている。即ち、コイル部材40Cは、4つの端子46を備えている。本変形例によれば、コイル部422,424の夫々における2つの端子46を整流回路(図示せず)に接続し、2つの整流回路の出力を合成することで、コイル部材40と同様な出力電力を得ることができる。
本変形例によれば、コイル42Cは、2つに分割されている。但し、本発明は、これに限られず、コイル42Cは、3つ以上に分割されていてもよい。また、2つのコイル部422,424は、互いに同じ向きに巻回されていてもよく、互いに逆向きに巻回されていてもよい。但し、いずれの場合も、2つのコイル部422,424は、Z方向において近接しており、これにより前述の発電領域全体に亘ってボビン44を巻回していることが好ましい。
以下、上述した発電セルを使用した発電装置について説明する。
図12を参照すると、発電装置10は、発電セル20Cを備えると共に、支持部材12と、コイル保持部16と、伝達部材132と、コイルばね134とを備えている。発電セル20Cの心棒32及びフランジ34の夫々は、FeCoやガルフェノール(FeGa)等の軟磁性磁歪材料からなる。支持部材12は、支持孔124が形成された上板122と、バネ支持部128が設けられた底板126とを備えている。コイル保持部16は、コイル部材40Cを、支持部材12に対して相対的に移動しないように保持している。コイルばね134は、下端(−Z側の端)においてバネ支持部128に支持されており、上端(+Z側の端)において磁性構造体30を支持している。伝達部材132は、磁性構造体30の上端に固定されており、支持孔124を通過して上方(+Z方向)に延びている。
上述のように配置された磁性構造体30は、Z方向に沿ってコイル部材40Cに対して相対的に振動可能である。例えば、伝達部材132に対して下方(−Z方向)に向かう衝撃力を加えると、磁性構造体30は、コイルばね134に支持されて上下に振動し、これにより、コイル42Cのコイル部422,424の夫々に交流波形的な電圧が生じる。加えて、伝達部材132に加えられた衝撃力は、心棒32及びフランジ34に伝達され、心棒32及びフランジ34の夫々は、瞬間的に弾性変形する。この結果、コイル42Cを貫く磁束は、逆磁歪効果によって変化し、コイル部422,424の夫々は、瞬間的に大きな電圧を生じる。即ち、発電装置10は、振動による発電機能(振動発電機能)に加えて、衝撃力による付加的発電機能(衝撃発電機能)を有している。
衝撃発電機能によってコイル部422,424に生じる電圧の位相は、互いに逆である。このため、コイル部材40(図3参照)に代えてコイル部材40Cを使用する必要がある。また、磁性構造体30が静止した状態において、コイル部材40CのZ方向における中間部は、心棒32のZ方向における中間部に位置していることが好ましい。加えて、コイル部422,424は、コイル部材40CのZ方向における中間部の上下に分割されており、且つ、互いに同じ巻回数だけ巻回されていることが好ましい。
発電装置10は、上述した構造に限られず、様々に変形可能である。例えば、心棒32を磁歪特性を有する軟磁性体から形成する一方、フランジ34の夫々を磁歪特性を有さない軟磁性体から形成してもよい。また、本発明による付加的発電機能は、衝撃発電機能に限られず、様々に変形可能である。
図13を参照すると、発電装置10Kは、発電セル20に加えて、支持台12Kと、支持柱(支持部材)14Kと、コイル保持部16Kと、付加的発電機構50Kとを備えている。支持台12Kは、XY平面と平行な上面(+Z側の面)を有している。支持部材14K及びコイル保持部16Kの夫々は、支持台12Kに固定されており、支持台12Kの上面から上方に延びている。支持部材14Kは、前後方向(X方向)においてコイル保持部16Kの前方(+X側)に位置している。発電セル20のコイル部材40は、コイル保持部16Kによって保持されており、支持台12K及びコイル保持部16Kに対して相対的に移動しないように固定されている。付加的発電機構50Kは、支持部材14Kによって支持されている。
付加的発電機構50Kは、軟磁性磁歪材料からなる2つの支持梁522K,524Kと、錘(応力負荷機構)54Kと、永久磁石からなる2つの付加的磁石562K,564Kと、付加的コイル58Kとを備えている。支持梁522Kは、支持部材14Kから後方(−X方向)に延びており、支持梁524Kは、支持梁522Kから更に後方に延びている。詳しくは、支持梁522Kの前端(+X側の端)は、支持部材14Kに固定された固定端526Kであり、支持台12K及び支持部材14Kに対して相対的に移動しない。支持梁524Kの前端は、支持梁522Kの後端(−X側の端)に連結されている。支持梁524Kの後端は、支持台12K及び支持部材14Kに対して相対的にZ方向に移動可能な自由端528Kである。
上述したように、2つの支持梁522K,524Kは互いに連結されており、これにより1つの支持梁52Kとして機能する。支持梁52Kは、支持部材14Kに固定された固定端526Kと、Z方向に沿って固定端526Kに対して相対的に移動可能な自由端528Kとを有している。但し、本発明はこれに限られず、付加的発電機構50Kは、X方向沿って延びる1つの支持梁52Kのみを備えていてもよい。
発電セル20の磁性構造体30は、支持梁52Kによって片持ち梁状に支持されている。詳しくは、磁性構造体30は、支持梁52Kの自由端528Kに固定されており、自由端528Kの移動に応じて、Z方向においてコイル部材40に対して相対的に移動する。磁性構造体30の相対移動によって、コイル部材40は発電する。上述したように、発電セル20において、磁性構造体30が支持梁52Kに支持されている。但し、本発明は、これに限られず、発電セル20における磁性構造体30及びコイル部材40のうちの一方が支持梁52Kに支持されており、且つ、自由端528Kの移動に伴って移動可能であればよい。
図13に示されるように、付加的コイル58Kは、支持梁52Kの固定端526K近傍の部位に巻回されている。即ち、付加的コイル58Kが巻回する中心軸(巻回軸)は、X方向と平行に延びている。また、付加的コイル58Kは、発電セル20のコイル42と直列に接続されている。このように接続されたコイル42及び付加的コイル58Kは、2つの端子46を有している。付加的磁石562Kは、支持部材14Kの上部(+Z側の部位)に固定されており、付加的磁石564Kは、X方向における支持梁52Kの中間部に固定されている。この配置により、付加的磁石562K及び付加的磁石564Kから生じる磁力線は、付加的コイル58Kの巻回軸に沿って付加的コイル58Kを貫いている。
発電装置10Kの上述の部材は、エネルギー回収を行う振動源(図示せず)の上に設置されている。振動源は、支持梁52Kを所定周波数で振動させる。支持梁52Kは、この所定周波数に共振するように設計されている。支持梁52Kは、振動源によって共振すると弾性変形し、これにより、自由端528Kは上下に振動する。この結果、発電セル20が発電すると共に、支持梁52Kが歪む。支持梁52Kは、固定端526K近傍において最も大きく歪む。固定端526K近傍の歪に起因する逆磁歪効果により、付加的コイル58Kを貫く磁束が変化し、付加的コイル58Kに電圧が生じる。即ち、付加的コイル58Kは、自由端528KのZ方向における移動に伴って支持梁52Kに生じる歪に応じて発電する。
上述したように、発電装置10Kは、振動発電機能に加えて、歪の周期的な変化による付加的発電機能(磁歪発電機能)を有している。2つの端子46の間には、振動発電機能による発電セル20の出力電圧と磁歪発電機能による付加的コイル58Kの出力電圧とを併せた出力電圧が生じる。特に、支持梁52Kの共振周波数を振動源(図示せず)の振動周波数に合わせているため、磁歪発電機能による出力電圧を大きくできる。
発電装置10Kにおいて、錘54Kは、支持梁52Kの自由端528Kに固定されており、支持梁52Kの自由端528Kに対してZ方向に沿った応力を印加している。自由端528Kには、錘54Kの質量による応力に加えて、支持梁52Kの自重による応力や発電セル20の磁性構造体30の質量による応力が印加されている。以下の説明において、錘54Kが自由端528Kに印加する応力は、これらの応力の全てを含んでいる。錘54Kは、自由端528Kに対して応力を印加する応力負荷機構の一例である。即ち、付加的発電機構50Kは、応力負荷機構54Kを備えており、応力負荷機構54Kは、支持梁52Kの自由端528Kに対してZ方向に沿った応力を印加している。応力負荷機構は、錘54Kに限られず、様々な部材や機器によって構成できる。
図14を図13と併せて参照すると、仮に、応力負荷機構54Kが設けられていない場合、自由端528Kに対して応力が全く加わらず、支持梁52Kは、全く歪んでいない。この場合、自由端528Kの移動量は0であり、自由端528Kは平衡位置にある。このとき、支持梁52Kの固定端526Kの断面平均透磁率(支持梁52KのYZ平面と平行な断面全体の平均透磁率)は、自由端528KのZ方向における移動量に応じて変化する。詳しくは、固定端526Kの断面平均透磁率は、自由端528Kの下方への移動量に対して略比例して変化し(図14において移動量がマイナスである範囲参照)、且つ、自由端528Kの上方への移動量に対して同様に比例して変化する(図14において移動量がプラスである範囲参照)。即ち、固定端526Kの断面平均透磁率は、自由端528Kの移動量の絶対値に比例して変化する。
一方、図15を図13と併せて参照すると、自由端528Kが応力負荷機構54Kの応力のみによって移動した状態において、自由端528Kの移動量は0であり、自由端528Kは平衡位置にある。このように自由端528Kに応力負荷機構54Kの応力が加わっている場合、固定端526Kの断面平均透磁率は、自由端528Kが平衡位置にあるときではなく、自由端528Kが平衡位置よりも上方に移動して所定の限界点(図15において移動量1mmの点)に位置しているときに最小になる。自由端528Kが限界点を越えない範囲において平衡位置を中心として上下に移動するようにして、支持梁52Kを単振動させると、固定端526Kの断面平均透磁率は、単調変化し、振動の上死点において最小になる。
図16を図13と併せて参照すると、支持梁52Kを上述のように単振動させたとき、発電セル20のコイル42を貫く磁束は、磁性構造体30の移動速度に対して略比例して変化する。従って、振動発電機能によるコイル42の出力電圧は、交流波形的に変化し、移動速度が最大になる平衡位置において最大になる。また、磁歪発電機能による付加的コイル58Kの出力電圧も、移動速度が最大になる平衡位置において最大になる。従って、振動発電と磁歪発電との合成出力電圧は、平衡位置において最大になる。
発電装置10Kによれば、支持梁52Kに対して予め応力を印加することにより、振動発電機能による出力電圧の位相と磁歪発電機能による出力電圧の位相とを互いに一致させることができる。このため、発電装置10Kの複合発電によれば、2つの発電機構を電気的に直列接続することにより大きな出力電圧が得られ、簡易な回路構造且つ大きな出力電圧を有する発電装置10Kを低コストで作製できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コイル42及び付加的コイル58Kを、夫々整流回路(図示せず)に接続し、2つの整流回路の出力を合成してもよい。この場合、応力負荷機構54Kを設けなくてもよい。
以下、本発明による発電セルの構造及び機能について、本発明の実施例及び比較例を使用して、より具体的に説明する。
(実施例1及び比較例1)
図17から図20を参照すると、シミュレータを使用して、本発明の実施例1の磁性構造体30Uと、比較例1の磁性構造体30Vとを作製し、磁性構造体30Uによる磁場を、磁性構造体30Vによる磁場と比較した。
図17に示されるように、磁性構造体30Uは、磁性構造体30(図4参照)と同じ構造を有していた。詳しくは、磁性構造体30Uは、軟磁性体からなる心棒32Uと、軟磁性体からなる2つのフランジ34Uと、永久磁石からなる2つの磁石部材36Uとを備えていた。心棒32U及びフランジ34Uの夫々は、磁歪特性を有さないFeCoやS45C相当の機械構造用炭素鋼等の材料と同等の磁気特性を有していた。心棒32Uは、直径8mm及び長さ11.8mmの円柱形状を有していた。フランジ34Uの夫々は、直径30mm及び厚さ2mmの円板形状を有していた。磁石部材36Uの夫々は、外径30mm、内径14mm及び高さ4mmの閉じたリング形状を有していた。2つの磁石部材36Uの間の距離は、3.8mmだった。
図18を図17と比較すると、磁性構造体30Vは、実施例1の磁性構造体30Uと同じ2つのフランジ34Uを備える一方、実施例1の磁性構造体30Uと異なる心棒32V及び2つの磁石部材36Vを備えていた。心棒32Vは、心棒32Uと同じ軟磁性体からなり、直径8mm及び長さ3.8mmの円柱形状を有していた。磁石部材36Vの夫々は、磁石部材36Uと同じ永久磁石からなり、直径30mm及び高さ4mmの孔のない円板形状を有していた。心棒32VのZ方向における両端は、2つの磁石部材36Vに夫々繋がっていた。以上のように構成された磁性構造体30Vは、横方向(Y方向)に沿って見たとき、磁性構造体30Uと同じ形状及びサイズを有していた。
シミュレータにより、磁性構造体30U及び磁性構造体30Vの夫々によって生じる磁場の分布を得た。磁性構造体30Uにおける磁場の分布を図19に示し、磁性構造体30Vにおける磁場の分布を図20に示す。
図19及び図20を比較すると、円板形状の磁石部材36Vを備えた磁性構造体30Vにおいて、磁力線は、磁石部材36VのXY平面における外周部分に集中し、心棒32Vを殆ど通過しない。一方、リング形状の磁石部材36Uを備えた磁性構造体30Uにおいて、磁力線は、心棒32に効果的に集中する。図19及び図20から理解されるように、リング形状の磁石部材36Uは、心棒32Uに磁力線を集中させて急峻な傾斜磁場を形成するために効果的である。
(実施例2〜4及び比較例2〜4)
表1を参照すると、シミュレータを使用して、本発明の実施例2〜4の磁性構造体と、比較例2〜4の磁性構造体とを作製し、磁場傾斜Dを比較した。実施例2〜4の磁性構造体の夫々は、磁性構造体30U(図17参照)と同様な構造を有していた。実施例2〜4の磁性構造体の夫々における各部材は、磁性構造体30Uと同じ材料からなり、表1に示すサイズを有していた。比較例2〜4の磁性構造体の夫々は、磁性構造体30V(図18参照)と同様な構造を有していた。比較例2〜4の磁性構造体の夫々における各部材は、磁性構造体30Vと同じ材料からなり、表1に示すサイズを有していた。
シミュレータにより、実施例2〜4及び比較例2〜4の夫々におけるコイル部材の有効可動範囲(発電領域のZ方向におけるサイズ)での中心軸AX(図19及び図20参照)に沿った磁場傾斜Dを得た。実施例2〜4のコイル部材の有効可動範囲は、一方の磁石部材のZ方向における中心と他方の磁石部材のZ方向における中心との間のZ方向における距離である。一方、比較例2〜4のコイル部材の有効可動範囲は、Z方向における心棒の両端部の間の距離である。得られた値を表1に示す。表1から理解されるように、磁石部材のサイズや2つの磁石部材の間の距離に係らず、円板形状の磁石部材に代えてリング形状の磁石部材を備えることにより、コイル部材の有効可動範囲を大きくでき、且つ、磁場傾斜Dを顕著に大きくできる。
(実施例5)
図21に示されるように、シミュレータを使用して、本発明の実施例5の磁性構造体30Wを作製した。磁性構造体30Wは、磁性構造体30U(図17参照)と同じ材料から同様な構造を有するように形成した。詳しくは、磁性構造体30Wは、軟磁性体からなる心棒32Wと、軟磁性体からなる2つのフランジ34Wと、永久磁石からなる2つの磁石部材36Wとを備えていた。心棒32Wは、直径8mmの円柱形状を有していた。フランジ34Wの夫々は、厚さ2mmの円板形状を有していた。磁石部材36Wの夫々は、内径14mm及び高さ4mmの閉じたリング形状を有していた。
シミュレータにより、心棒32Wの長さ(即ち、2つの磁石部材36Wの間の距離d0)、磁石部材36Wの夫々の外径φmo、及び、フランジ34Wの直径φx(mm)を様々に変更して、心棒32Wの磁場傾斜Dを得た。図22から図24までに、直径φxと得られた磁場傾斜Dとの間の関係を示す。図22は、距離d0=10mm且つ外径φmo=19.5mmの場合の磁場傾斜Dを示している。図23は、距離d0=3.8mm且つ外径φmo=19.5mmの場合の磁場傾斜Dを示している。図24は、距離d0=3.8mm且つ外径φmo=30mmの場合の磁場傾斜Dを示している。
図22から図24を参照すると、フランジ34W(図21参照)の直径φx<磁石部材36W(図21参照)の内径φmiの場合、フランジ34Wと磁石部材36Wとの間に隙間が生じ、この隙間から磁束が漏れるため、磁場傾斜Dが小さい。一方、直径φx>内径φmiの条件が満たされているとき、磁場傾斜Dが大きく、発電効率が高い。直径φx>外径φmoの場合にも、フランジ34Wの外周部から外部に磁束が漏れるものの、直径φxの増大により磁路長が長くなるため、漏れ磁束は大きく増加しない。即ち、外径φmoに比べて直径φxを大きくしても、磁場傾斜Dは、それほど小さくならない。但し、直径φxを大きくすると発電セルのサイズが不必要に大きくなり好ましくない。従って、直径φxは、例えば、内径φmi+1mm<直径φx<外径φmo+4mmの条件を満たしていることが好ましい。
(実施例6)
図25から図30を参照すると、実施例6の発電セル20Xを実際に作製し、発電セル20Xの発電効率を検証した。図25及び図26を参照すると、発電セル20Xは、磁性構造体30(図4参照)と同じ構造の磁性構造体30Xと、コイル部材40(図3参照)と同じ構造のコイル部材40Xとを備えていた。
磁性構造体30Xは、磁歪特性を有するFeCoからなる心棒32Xと、心棒32Xと同じ材料からなる2つのフランジ34Xと、ネオジム磁石からなる2つの磁石部材36Xとを備えていた。心棒32Xは、フランジ34Xに夫々圧入した2つの突出部328Xを除き、直径8mm及び長さ16mmの円柱形状を有していた。磁石部材36Xの夫々は、外径19.5mm、内径14mm及び高さ4mmの閉じたリング形状を有していた。フランジ34Xの夫々は、直径20mm及び厚さ2mmの円板形状を有していた。図26を参照すると、コイル部材40Xは、コイル42Xを備えていた。コイル42Xは、線径0.2mmのホルマル線を275ターン巻回して形成した。コイル42Xの抵抗値は、5.8Ωだった。
図27を図25と併せて参照すると、心棒32X及びフランジ34Xの材料であるFeCoのBH曲線をBHトレーサーで測定した。図28を図26と併せて参照すると、実測したBH曲線に基づいて透磁率および飽和磁束密度Bsを求め、求めた透磁率および飽和磁束密度Bsと同等なシミュレーションパラメータを使用して磁場分布の解析を行った。詳しくは、実測に基づき比透磁率1,420、飽和磁束密度2.16Tという値を求め、ANSYS社のMaxwell 3Dシミュレータにおいて、これと同等なシミュレーションパラメータを設定して磁場解析を行った。磁場解析の結果、中心軸AX上の中心点CPを基準とする心棒32Xの各位置における磁束密度Bを得た。図28の実線は、得られた磁束密度Bを示している。図28に示されるように、心棒32Xにおける磁束密度Bは、−6mm〜6mmの位置範囲において線形に変化していた。この位置範囲における磁束密度Bの変化の傾斜(磁場傾斜D)は、1点鎖線で示すように、155T/mだった。
図26を参照すると、コイル42Xの端子46を、抵抗RLの両端に夫々接続した。保持具(図示せず)を使用してコイル部材40Xを保持した状態で、磁性構造体30Xをコイル部材40Xに対して相対的に振動させた。詳しくは、磁性構造体30Xを、50Hzの振動周波数及び100m/s2(約10G)の加速度により、中心軸AXに沿って単振動させた。この単振動によって抵抗RLの両端に生じる出力電圧の最大値(最大電圧)を得た。このとき、前述した最大電圧式によって最大電圧の理論値を算定すると共に、最大電圧を測定した。最大電圧の理論値は、682mVであり、最大電圧の測定値は、671mVだった。
発電セル20X(図25及び図26参照)の磁性構造体30X(図25参照)を様々な振動周波数で振動させた。このとき、様々な振動周波数における加速度は、互いに異なっていた。例えば、50Hzの振動周波数における加速度は24.6m/s2だった。各振動周波数において、最大電圧の理論値を算定すると共に、最大電圧を測定した。図29に磁場傾斜D=155T/mの場合の理論値及び測定値を示す。また、図30に磁場傾斜D=166T/mの場合の理論値及び測定値を示す。図29及び図30を参照すると、いずれの振動周波数においても、測定値は理論値と殆ど一致しており、前述した発電セルの設計アルゴリズムが有効であることが理解できる。
(実施例6及び比較例5、6)
図26及び図31から図39までを参照すると、比較例5の発電セル20Y及び比較例6の発電セル20Zを実際に作製し、発電セル20Xの発電効率を、発電セル20Yの発電効率及び発電セル20Zの発電効率と対比した。
図31を図26と比較すると、発電セル20Yは、発電セル20Xの磁性構造体30Xと異なる磁性構造体30Yと、発電セル20Xのコイル部材40Xと同様なコイル部材40Yとを備えていた。磁性構造体30Yは、直径15mm、高さ10mmの円柱形状の磁石部材36Yのみからなる単一部材だった。磁石部材36は、ネオジム磁石からなり、上端にS極を有し、下端にN極を有していた。コイル部材40Yのコイル42Yは、コイル42Xと同じ内径及び高さを有していた。但し、コイル42Yは、線径0.2mmのホルマル線をコイル42Xの約1.7倍の462ターン巻回して形成した。
図32を図31と比較すると、発電セル20Zは、発電セル20Yの磁性構造体30Yと異なる磁性構造体30Zと、発電セル20Yと同じコイル部材40Yとを備えていた。磁性構造体30Zは、磁石部材36Yと、心棒32Zとを備えていた。心棒32Zは、飽和磁束密度2.16TのFeCoからなり、直径8mm及び長さ16mmの円柱形状を有していた。心棒32Zは、磁石部材36Yの下面(−Z側の面)から下方に延びており、心棒32Zの下端は、コイル42Yに囲まれていた。この構造により、磁石部材36Yから生じる磁力線は、心棒32Zによってコイル42Y内部に誘導された。
磁性構造体30X(図26参照)に対して図33に示す振動を加えて、出力電圧を測定した。このとき、50Hzの振動周波数及び100m/s2(約10G)の最大加速度によって磁性構造体30Xを単振動した。抵抗RLの抵抗値を10kΩとしたときの出力電圧を図34に示し、抵抗RLの抵抗値を10Ωとしたときの出力電圧を図35に示す。図34を参照すると、磁性構造体30Xの片振幅は、約1mmであり、最大電圧は、671mVだった。図35を参照すると、最大電圧は、422mVであり、出力電力は、12.5mWだった。
コイル部材40Y(図31参照)に対して図36に示す振動(図31の矢印参照)を加えて、出力電圧を測定した。このとき、コイル部材40Yを磁性構造体30Y(図31参照)の下に配置し、50Hzの振動周波数及び100m/s2(約10G)の最大加速度によってコイル部材40Yを単振動した。抵抗RLの抵抗値を10kΩとしたときの出力電圧を図37に示す。図37を参照すると、最大電圧は、170mVだった。
コイル部材40Z(図32参照)に対して図38に示す振動(図32の矢印参照)を加えて、出力電圧を測定した。このとき、心棒32Z(図32参照)の下端をコイル部材40Zによって囲んだ状態で、50Hzの振動周波数及び100m/s2(約10G)の最大加速度によってコイル部材40Zを単振動した。抵抗RLの抵抗値を10kΩとしたときの出力電圧を図39に示す。図39を参照すると、最大電圧は、420mVだった。
図34を参照すると、コイル42X(図26参照)の巻回数は275ターンであり、コイル42Y(図31及び図32参照)に比べて少ないにも関わらず、0.6V程度の出力電圧が得られている。図35を参照すると、コイル42Xの抵抗値が小さいため、抵抗RLの抵抗値(出力抵抗)を10Ωに下げた場合でも、出力電圧は0.4V程度であり、出力抵抗が10kΩの場合に比べた電圧減少は、3割程度に留まっている。
一方、図37を参照すると、比較例5のコイル42Y(図31参照)の巻回数は、コイル42X(図26参照)の巻回数の1.7倍であるにも係らず、出力電圧は、コイル42Xの約1/4であり、出力電力は、コイル42Xの約1/8である。同様に、図39を参照すると、比較例6のコイル42Yの巻回数は、コイル42Xの巻回数の1.7倍であるにも係らず、出力電圧は、コイル42Xの約63%であり、出力電力は、コイル42Xの約37%である。これらの比較から、本発明による発電セルは、高い発電性能を有していることが分かる。