JP2019138770A - 心房梗塞の判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、被検哺乳動物における心房梗塞の有無又はその重症度の高低を判定する方法や、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのキットや、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー等を提供することを目的とする。【解決手段】被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定した後、「哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されること」、又は、「前記血液試料中における前記ミオシン結合タンパク質H様の濃度」を、心房梗塞の診断の指標とする。【選択図】なし

Description

本発明は、被検哺乳動物における心房梗塞の有無又はその重症度の高低を判定する方法や、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのキットや、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー等に関する。
哺乳動物の心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室からなる4つの部屋に分かれている。ヒトの主な死因に挙げられる「心筋梗塞」は、臨床においては通常、心室梗塞を意味している。これに対し、特に「心房」に梗塞を生じた状態は「心房梗塞」と呼ばれる。心房梗塞が引き起こし得る症状等としては、以下の(i)〜(vi)が挙げられる。
(i)心房収縮(Atrial kick)の減少による、心機能(心拍出量など)の低下:
(ii)心房細動などの上室性不整脈の惹起:
(iii)血栓形成の促進。及び、その血栓が体内の別の箇所(脳など)に移動することによる、塞栓症(脳梗塞など)の惹起。
(iv)心房破裂。
(v)心タンポナーデ。
(vi)心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide: ANP)の分泌障害による、体液量維持機構の破綻。
このように、心房梗塞は、臨床上重要な側面を有していると考えられている。しかし、心房梗塞は心筋梗塞(心室梗塞)と比べて重篤度が低いこと、及び、臨床で患者が心房梗塞であるかを明確に診断できる診断方法がまだ確立していないことなどから、心房梗塞についての研究はほとんど行われていない。
心房梗塞の診断法のうち、唯一明確な診断が可能なものは、剖検(病理解剖)による診断法である。この診断法は、患者が何らかの疾患で死亡した後、病理解剖を行って、心房組織における梗塞の存在を直接確認する方法である。そのため、この診断法は、死亡後の患者にしか適用することができず、臨床応用は当然不可能である。臨床での心房梗塞の診断法として、心電図による診断法(非特許文献1、2)、冠動脈造影による診断法(非特許文献3)、ラジオアイソトープを用いた診断法(非特許文献4)などが挙げられる。
前述の心電図による診断法は、簡便で非侵襲的な方法であり、複数の基準(非特許文献1、2)が提唱されているものの、いずれの基準でも、診断の感度や特異性が低く、学会等のコンセンサスは得られていない。そのため、心電図による診断法は、実際の臨床現場では使用されていない。また、心電図に関する技術はすでに成熟しており、今後の発展も望めない。
前述の冠動脈造影による診断法(非特許文献3)は、冠動脈心房枝の狭窄や閉塞を直接観察する方法である。しかし、個人によって変化の多い心房枝の評価が困難であることや、狭窄や閉塞が必ずしも梗塞を意味するものではないことから、心房梗塞の診断法というよりは、心房梗塞の診断を補助する方法に過ぎない。
前述のラジオアイソトープを用いた診断法(非特許文献4)は、非侵襲的な方法ではあるが、多くの時間と費用が必要となるため、実用性が低く、特に急性期の心房梗塞の診断には向かない。また、この診断法は、少数の報告例しかなく、学会等のコンセンサスは得られていない。
以上のように、臨床応用可能であって、実用的な心房梗塞の診断法は、これまで知られていなかった。なお、ミオシン結合タンパク質H様(Myosin Binding Protein H-like: MybpHL)は、ミオシン結合タンパクHに類似したタンパク質である。MybpHLが心房梗塞のマーカーとして利用できることを報告した例はこれまでにない。
ところで、心房梗塞ではなく、心筋梗塞(心室梗塞)については、迅速、簡便に診断できる診断法がすでに開発されている。例えば、特許文献1には、血液中のトロポニンTの濃度上昇を、抗トロポニンT抗体を用いて検出することにより、心筋梗塞の判定を行う方法が開示されている。この判定法は、正常時には心筋細胞に含まれているトロポニンTが、心筋梗塞発症時の心筋細胞の細胞死(壊死)によって、その心筋細胞から血液中に逸脱、遊出し、血液中のトロポニンT濃度が上昇するという現象に着目した方法である。心筋梗塞のマーカーとしては、トロポニンTのほか、トロポニンI、クレアチンキナーゼなどいくつか知られているが、中でも、トロポニンTは心筋梗塞マーカーとしての感度及び特異性が高いため、心筋梗塞の優れたマーカーとして知られている。そのため、抗トロポニンTモノクローナル抗体を利用したトロポニンT測定キットが市販されている(例えば、ロシュ・ダイアグノスティックス社製の「カーディアック試薬 トロポニンT」)。
特開平07−198718号公報
C.K. Liu et, al. Atrial infarction of the heart. Circulation 1961;23:331 Sivertssen E, et al. Electrocardiographic atrial complex and acute atrial myocardial infarction. Am J Cardiol 1973;31:450-6 N. Soderstrom, et al. Myocardial infarction and mral thrombosis in the atria of the heart. Acta Med. Scand. Suppl. 1948;217:1 S. Gordon, et al. Atrial infarction complicating an acute inferior myocardial infarction. Arch. Intern. Med. 1984;144:193
本発明の課題は、被検哺乳動物における心房梗塞の有無又はその重症度の高低を判定する方法や、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのキットや、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー等を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ね、以下の各知見を得た。
本発明者らは、ラットの新生仔の心臓から、心房組織と心室組織を剖出し、それぞれの組織から心筋細胞の精製を行った。心房の心筋細胞、心室の心筋細胞からそれぞれmRNAを抽出し、かかるmRNAを鋳型とする逆転写反応により得られたcDNAサンプルをDNAマイクロアレイ法に供して、30,000種類の遺伝子の発現解析を行った。各遺伝子について、心室の心筋細胞における発現量に対する、心房の心筋細胞における発現量の比率を分析し、その比率が高い遺伝子を探索した。その結果、本発明者らは、心房特異性の高い遺伝子として既に知られているSarcolipin遺伝子やNppa遺伝子のほかに、ミオシン結合タンパク質H様(MybpHL)遺伝子を見いだした。
さらに、本発明者らは、ラット成獣の各種臓器からmRNAを抽出し、かかるmRNAを鋳型とする逆転写反応により得られたcDNAサンプルを定量PCRに供して、MybpHL遺伝子の発現解析を行った。また、前述のmRNAをRT−PCRに供して、MybpHL遺伝子の発現解析を行った。これらの結果、心房特異性の高い既知の他の遺伝子(Sarcolipin遺伝子、Nppa遺伝子、Mlc−2a遺伝子、GLP−1R遺伝子)は、心房以外のいずれか1種又は2種以上の臓器でも、やや高い発現が認められたのに対し、MybpHL遺伝子は、心房以外のいずれの臓器でも発現が低く、心房特異性が特に高いことを見いだした。
また、本発明者らは、レポーター遺伝子としてLacZ遺伝子を含むインサーションによって、MybpHL遺伝子がノックアウトされたマウスES細胞から、生体マウス(ノックアウトマウス)を発生させた。このノックアウトマウスでは、通常のマウスにおいてMybpHL遺伝子を発現する部位の組織でLacZ遺伝子を発現することを利用して、その部位を染色することができる。本発明者らは、かかるノックアウトマウスを観察したところ、MybpHL遺伝子はin vivoにおいても、高い心房特異性を示すことを見いだした。
さらに、本発明者らは、ヒトの心房、心室及び骨格筋由来のmRNAをRT−PCRに供して、MybpHL遺伝子の発現解析を行った。また、本発明者らは、ヒトの左心房、左心室及び骨格筋由来のタンパク質をウエスタンブロット解析に供して、MybpHLタンパク質の発現解析を行った。これらの結果、本発明者らは、ヒトにおいても、MybpHL遺伝子の発現は高い心房特異性を示すこと、及び、MybpHLの発現はタンパク質レベルでも高い心房特異性を示すことを見いだした。
本発明者らは、以上の知見などを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断キットであって、
ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片を含み、
前記被検哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されること、又は、前記血液試料中における前記ミオシン結合タンパク質H様の濃度が、被検哺乳動物における心房梗塞の診断の指標となる、
前記診断キット;
(2)ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体が、ミオシン結合タンパク質H様に特異的に結合するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である、上記(1)に記載の診断キット;
(3)固相担体、標準物質、二次抗体、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様の標準品、希釈液、緩衝液、抗原抗体複合体の検出反応のための基質、及び、その検出反応の停止溶液からなる群から選択される1種、2種又は3種以上をさらに含む、上記(1)又は(2)に記載の診断キット;
に関する。
また、本発明は、
(4)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程(a)を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する方法;
(5)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度を、コントロールと比較する工程(b)をさらに含む、上記(4)に記載の方法;
(6)以下の(i−1)〜(i−3)のうち、1つ又は2つ以上の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を含む、上記(4)又は(5)に記載の方法;
(i−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
(i−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性の高さを示す;
(i−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性の高さを示す;
(7)以下の(ii−1)〜(ii−3)のうち、1つ又は2つ以上の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を含む、上記(4)又は(5)に記載の方法;
(ii−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
(ii−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いことを示す;
(ii−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いことを示す;
(8)血液試料が血清試料である、上記(4)〜(7)のいずれかに記載の方法;
に関する。
さらに、本発明は、
(9)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様又はその濃度を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー;
に関する。
本発明によれば、被検哺乳動物における心房梗塞の有無又はその重症度の高低を判定する方法や、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのキットや、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー等を提供することができる。また、本発明によれば、従来法と比較して、より迅速、簡便かつ高精度に心房梗塞を診断することが可能となる。
後述の試験1において、ラット新生仔の心筋細胞における遺伝子発現についてマイクロアレイ解析を行った結果を表す図である。横軸は、心室の心筋細胞(Ventricular cardiomyocytes)における遺伝子の発現強度を常用対数で表し、縦軸は、心房の心筋細胞(Atrial cardiomyocytes)における遺伝子の発現強度を常用対数で表す。 後述の試験2において、ラットの各種臓器におけるMybpHL遺伝子又はサルコリピン遺伝子の発現量を、定量PCRにより解析した結果を表す図である。横軸は、各サンプルが由来する臓器の種類を表し、縦軸は、各サンプルにおけるMybpHL遺伝子又はサルコリピン遺伝子の発現量の相対値を表す。図中、MybpHL遺伝子の結果は、灰色の棒グラフで示し、サルコリピン遺伝子の結果は、黒色の棒グラフで示す。なお、縦軸の数値は、各サンプルにおけるmRNAの発現量(mRNA level)を、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)を参照遺伝子として標準化した後に、心房(Atrium)におけるサルコリピン遺伝子の発現量を基準(1.0)とした相対値である。横軸は左側から順に、Brain(脳)、Lung(肺)、Thymus(胸腺)、Atrium(心房)、LV(左心室:left Ventricle)、Septum(隔膜)、LV(右心室:right Ventricle)、Sk.M(骨格筋:skeletal muscle)、Esophagus(食道)、Stomach(胃)、Intestine(腸)、Pancreas(膵臓)、Liver(肝臓)、Spleen(脾臓)、kidney(腎臓)、Bladder(膀胱)を表す。 後述の試験3において、マウスの各種臓器におけるMybpHL遺伝子等の発現量を、RT−PCRにより解析した結果を表す図である。横軸は、各サンプルが由来する臓器の種類を表し、縦軸は、各サンプルで発現量を解析した遺伝子の種類を表す。横軸は左側から順に、Brain(脳)、Lung(肺)、Atrium(心房)、Ventricle(心室)、Skeltal M.(骨格筋)、Esophagus(食道)、Stomach(胃)、Intestine(腸)、Liver(肝臓)、kidney(腎臓)、Bladder(膀胱)、Uterus(子宮)を表す。縦軸は上から順に、MybpHL遺伝子、Sarcolipin(サルコリピン)遺伝子、Mlc−2a遺伝子、Nppa遺伝子、GLP−1R遺伝子の結果を表す。 後述の試験4において用いたMybpHL遺伝子ノックアウトマウスにおけるMybpHL遺伝子の構造を示す図である。 後述の試験4で、MybpHL遺伝子ノックアウトマウスにおいて、MybpHL遺伝子の発現部位を染色した結果を示す図である。図5A:8週齢のMybpHL遺伝子ノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示す図である。図5B:産後1日のMybpHL遺伝子ノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示す図である。図5C:左パネルは、胎生14日目のノックアウトマウスの全身を観察した結果を示す図であり、右パネルは、胎生14日目のノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示す。 後述の試験5において、ヒトの心房、心室、骨格筋におけるMybpHL遺伝子の発現量を、定量PCRにより解析した結果を表す図である。縦軸は、各サンプルにおけるMybpHL遺伝子の発現量の相対値を表す。縦軸の数値は、各サンプルにおけるmRNAの発現量(mRNA level)を、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)を参照遺伝子として標準化した後に、左心房(LA)におけるMybpHL遺伝子の発現量を基準(1.0)とした相対値である。横軸は各サンプルが由来する組織の種類を表し、左側から順に、RA(右心房)、RV(右心室)、LA(左心房)、LV(左心室)、Skeletal M.(骨格筋)を表す。 後述の試験5において、ヒトの左心房、左心室、骨格筋におけるMybpHL遺伝子の発現量を、ウエスタンブロット法にて解析した結果を表す図である。横軸は各サンプルが由来する組織の種類を表し、左側から順に、RA(右心房)、RV(右心室)、LA(左心房)、LV(左心室)、Skeletal M.(骨格筋)を表す。上パネルはMybpHL遺伝子の発現を表し、下パネルはハウスキーピング遺伝子であるGAPDH遺伝子の発現を表す。
<用語の説明>
「被検哺乳動物」とは、任意の哺乳動物を含み、ヒト、実験動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ミニブタ、サル等)、家畜用動物、ペット用動物、動物園用動物、又はスポーツ用動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギなどを含む。被検哺乳動物は、好ましくはヒトである。また、以下の実施形態に係る診断キット、判定方法等を被検哺乳動物に適用する場合、かかる被検哺乳動物は、心房梗塞に罹患していることが疑われる哺乳動物であってもよい。
「心房梗塞」とは、心房のいずれかの領域に1箇所又は2箇所以上の梗塞が存在する状態を意味する。かかる「心房梗塞」には、終動脈又は終静脈が閉塞して、心房のいずれかの領域に虚血状態が生じ、かかる領域の細胞組織の少なくとも一部が壊死している状態が含まれる。
「診断マーカー」とは、診断に用いるためのバイオマーカーを意味する。「バイオマーカー」とは、NIHのバイオマーカーについての定義である「通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性」を含む概念である。
本発明に用いる「血液試料」としては、血液や、血液から調製された血清又は血漿を挙げることができ、血清が好ましい。また、ミオシン結合タンパク質H様をより高感度で検出等する観点から、血液試料としては、タンパク質が濃縮処理された血液、血清、血漿(すなわち、血液タンパク濃縮物、血清タンパク濃縮物、血漿タンパク濃縮物)等を好ましく挙げることができ、中でも、血清タンパク濃縮物をより好ましく挙げることができる。血液等のタンパク質を濃縮処理する方法としては特に制限されず、例えば市販のタンパク質濃縮用キット(例えばSeppro(登録商標)アフィニティーカラム: Sigma Aldrich社製)を用いることができる。なお、かかる血液は、被検哺乳動物の生体のいずれの箇所から採取されたものであってもよく、動脈血、静脈血又はその混合物のいずれであってもよい。
本明細書における「ミオシン結合タンパク質H様」(以下、「本発明のミオシン結合タンパク質H様」とも表示する。)には、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様(狭義の「哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様」、すなわち、「被検哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様」)のほか、被検哺乳動物における心房梗塞の判定又は診断に用いることができる限り、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の多型変異体(polymorphic variant)、スプライシング変異体(splicing variant)などの、ミオシン結合タンパク質H様の変異体;哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様のポリペプチド断片、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の変異体のポリペプチド断片などの、ミオシン結合タンパク質H様の断片;なども便宜上含まれる。
<被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する方法>
被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する方法(以下、「本発明の判定方法」とも表示する。)としては、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程(a)を含んでいる限り特に制限されない。なお、本発明の判定方法は、医師による心房梗塞の診断を補助する方法であって、医師による診断行為を含まない。
(工程(a))
上記工程(a)としては、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程である限り特に制限されない。血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する方法としては、ミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定できる方法であればどのような方法であってもよく、当業者が適宜選択することができる。かかる方法として、好適には、ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片(以下、「本発明における抗体又はその抗原結合性断片」、あるいは、「本発明における抗体等」とも表示する。)を用いた免疫学的測定法(Immunoassay)が挙げられ、中でも、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、免疫沈降法(IPP法)、イムノブロット法(IB法)(好ましくはウエスタンブロット法(WB)法)、ラテックス凝集法、免疫クロマトグラフィー法など、公知の方法を挙げることができる。これらの方法の中でも、定量性が高く、高感度であり、また、多くの血液試料を処理することができる点で、ELISA法を好ましく挙げることができる。ELISA法には、直接吸着法、サンドイッチ法、競合法などが含まれ、中でも、サンドイッチ法を好ましく挙げることができる。
(工程(b))
本発明の判定方法は、以下の工程(b)をさらに含んでいなくてもよいが、さらに含んでいることが好ましい。
被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度を、コントロールと比較する工程(b):
工程(b)としては、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度を、コントロールと比較する工程である限り特に制限されない。かかる工程(b)におけるミオシン結合タンパク質H様の濃度は、上記工程(a)による測定により得ることができる。
本明細書における「血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度」は、絶対値であっても相対値であってもよいが、絶対値が好ましく挙げられる。
本明細書における「コントロール」は、目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、健常な哺乳動物(好ましくは、被検哺乳動物と同種の健常な哺乳動物)から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が好ましく挙げられる。コントロールである濃度は、絶対値であっても相対値であってもよいが、測定濃度と比較するという目的を考慮すると、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度とコントロールの濃度は、単位が同種の値か、又は無単位で同種の値であることが好ましい。
(判定の指標)
工程(a)を含む、又は、工程(a)及び(b)を含む本発明の判定方法は、例えば以下の(i−1)〜(i−3)のうち、1つ又は2つ以上(好ましくは3つ)の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を有していることが好ましい。
(i−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
(i−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性の高さを示す;
(i−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性の高さを示す;
工程(a)及び(b)を含む本発明の判定方法は、例えば以下の(ii−1)〜(ii−3)のうち、1つ又は2つ以上(好ましくは3つ)の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を有していることが好ましい。
(ii−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
(ii−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いことを示す;
(ii−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いことを示す;
本明細書における心房梗塞の重症度とは、心房梗塞の症状の重さの度合を意味し、例えば、心房梗塞によって心房で心筋が壊死を起こしている領域の広さや、体積が挙げられる。
ミオシン結合タンパク質H様は、正常時には心房の心筋細胞に含まれているものの、心房梗塞により心房の心筋細胞が細胞死(壊死)することによって、その心筋細胞から血液中に逸脱、遊出することが考えられる。健常な哺乳動物の血液試料中からは、通常、ミオシン結合タンパク質H様はほとんど検出されないため、被検哺乳動物の血液試料中からミオシン結合タンパク質H様が検出された場合は、その被検哺乳動物は心房梗塞に罹患している可能性が高いと判定することができ、ミオシン結合タンパク質H様が検出されなかった場合は、その被検哺乳動物は心房梗塞を有している可能性が低いと判定することができる。また、心房梗塞の重症度が高いほど、より広範囲の心房の心筋細胞が壊死しているため、心房の心筋細胞から血液中に逸脱、遊出するミオシン結合タンパク質H様が増加すると考えられる。したがって、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、より高いほど、その被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いと判定することができ、より具体的には、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロール(例えば、健常な哺乳動物(好ましくは、被検哺乳動物と同種の健常な哺乳動物)から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度)と比較してより高いほど、その被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いと判定することができる。また、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、より高いほど、その被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いと判定することができ、より具体的には、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロール(例えば、健常な哺乳動物(好ましくは、被検哺乳動物と同種の健常な哺乳動物)から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度)と比較してより高いほど、その被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いと判定することができる。
また、心房梗塞の罹患可能性又はその重症度の判定、あるいは、後述の心房梗塞の診断に際して、血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度に関して予め設定した閾値(カットオフ値)を利用して、心房梗塞に罹患している具体的な可能性(例えば70%以上など)やその重症度の具体的な程度(例えば心房梗塞の範囲の広さ)を判定又は診断してもよい。かかる閾値は、健常な哺乳動物群の血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度データと、心房梗塞を罹患している哺乳動物群の血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度データとを比較し、統計解析ソフトウェアを用いたROC(Receiver Operating Characteristic)曲線等を利用し、算出することができる。
<ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片>
本発明における抗体又はその抗原結合性断片としては、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合する(好ましくは特異的に結合する)抗体又は抗原結合性断片である限り特に制限されない。
本明細書において「抗体」とは、免疫反応において、抗原の刺激によって生体内でつくられ、抗原と特異的に結合したり反応したりするタンパク質またはそれらと同じ配列を有するものを化学合成等で生産したものを総称していう。実体は免疫グロブリンであり、Abとも称する。本発明における抗体としては、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に特異的に結合するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体が好ましく、中でも、感度の点などから、モノクローナル抗体が好ましい。
本明細書において抗体の「抗原結合性断片」とは、ある抗体について、その抗体の抗原と同じ抗原に対して結合性を有するポリペプチドであって、その抗体よりも、含んでいるアミノ酸数が少ないポリペプチドをいう。すなわち、本発明における抗原結合性断片とは、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合性を有するポリペプチドであって、本発明におけるいずれかの抗体よりも、含んでいるアミノ酸数が少ないポリペプチドをいう。
本明細書における「抗体又はその抗原結合性断片」としては、B細胞またはハイブリドーマにより産生されるような抗体、キメラ抗体、相補性決定領域(CDR)移植抗体(好ましくはヒト化抗体)、又は、それらの抗体から選択される抗体の任意の断片、例えばF(ab’)2、Fab断片、一本鎖抗体等が含まれる。上記の「一本鎖抗体」とは、抗体の重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを、10〜30アミノ酸、好ましくは15〜25アミノ酸からなるペプチドリンカーにより結合させた抗原結合性断片である。上記の「キメラ抗体」とは、(i)重鎖若しくは軽鎖又はその両方の定常領域がヒト等の特定動物の由来である一方、重鎖および軽鎖の両方の可変領域はその特定動物以外の種類の動物(例えば、マウス等の非ヒト)の由来である抗体、あるいは、(ii)その特定動物(例えば、ヒト)由来であるが、その特定動物(例えば、ヒト)の別の個体の抗体から誘導される抗体を意味する。上記の「CDR移植抗体」とは、CDRが、特定動物(例えばヒト)以外の種類の動物(例えば、特定動物がヒトの場合、マウス)の抗体や、その特定動物(例えば、ヒト)の別の個体の抗体等のドナー抗体に由来する一方、免疫グロブリンの他の部分すべて又は実質的にすべて、例えば定常領域および可変領域の高保存部分、すなわち、フレームワーク領域が、アクセプター抗体、例えば特定動物(例えば、ヒト)由来の抗体に由来する抗体を意味する。なお、CDR移植抗体には、フレームワーク領域中、例えば超可変領域に隣接するフレームワーク領域の一部にドナー配列の数アミノ酸を含む。上記の「ヒト化抗体」とは、重鎖及び軽鎖の両方の定常及び可変領域がすべてヒト由来であるか実質的にヒト由来配列と同一であり、必ずしも同一抗体由来である必要はなく、そしてマウス免疫グロブリン可変部分および定常部分の遺伝子がヒト対応物(counterpart)、例えば欧州特許0546073B1、米国特許5545806等において一般の用語で記載されるようなものにより置き換えられるマウス産生抗体が含まれる抗体を意味する。
本発明における抗体等の好ましい態様としては、例えば、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がヒト、マウス又はラット由来である抗体又はその抗原結合性断片が挙げられる。また、本発明における抗体等には、「ミオシン結合タンパク質H様に結合する、ある特定の抗体又はその抗原結合性断片の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域」(以下の記載において、「参照重鎖可変領域又は参照軽鎖可変領域」とも表示する。)の改変体を有する抗体又はその抗原結合性断片であって、そのミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片も、好適に挙げることができる。かかる参照重鎖(又は参照軽鎖)可変領域の改変体としては、
(a)基準となる参照重鎖(又は参照軽鎖)可変領域のアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖(又は軽鎖)可変領域であって、ミオシン結合タンパク質H様に対する結合性を保持する重鎖(又は軽鎖)可変領域:や、
(b)基準となる参照重鎖(又は参照軽鎖)可変領域のアミノ酸配列と同一性80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなる重鎖(又は軽鎖)可変領域であって、ミオシン結合タンパク質H様に対する結合性を保持する重鎖(又は軽鎖)可変領域:
が挙げられる。なお、上記の基準となる参照重鎖(又は参照軽鎖)可変領域としては、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合性を有する、任意の抗体又はその結合性断片における重鎖(又は軽鎖)可変領域が挙げられる。また、本明細書において、「ミオシン結合タンパク質H様」に対する結合性を保持する領域は、「ミオシン結合タンパク質H様」に対して何らかの結合性を有している限り、基準となる参照領域と比較して、「ミオシン結合タンパク質H様」に対する結合性が増加又は低下していてもよいが、基準となる参照領域の「ミオシン結合タンパク質H様」に対する結合性を100としたときに、その結合性が50以上、好ましくは70以上、さらに好ましくは80以上、より好ましくは90以上であることが好ましい。
上記定常領域はまた、好ましくは、適当なヒト定常領域、例えば、Kabat E.A.et al.,US Department of Health and Human Services,Public Health Service,National Institute of Healthに記載されているものが含まれる。可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベース(「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)にあてはめて、相同性を調べることによりCDRの領域を特定することができる。
上記CDRのアミノ酸配列としては、そのCDRを有する抗体又はその抗原結合性断片が、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合性を有している限り特に制限されないが、ミオシン結合タンパク質H様に結合する、ある特定の抗体又はその抗原結合性断片におけるCDR又はその改変体が挙げられる。かかるCDR改変体としては、ミオシン結合タンパク質H様に結合する、ある特定の抗体又はその抗原結合性断片におけるCDR(基準となる参照CDR)の改変体を有する抗体又はその抗原結合性断片であって、そのミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片も、好適に挙げることができる。かかるCDRの改変体としては、
(a)基準となる参照CDRのアミノ酸配列において、1または2個以上(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなるCDRであって、ミオシン結合タンパク質H様に対する結合性を保持するCDR:や、
(b)基準となる参照CDRのアミノ酸配列と同一性80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなるCDRであって、ミオシン結合タンパク質H様に対する結合性を保持するCDR:
が挙げられる。なお、上記の基準となる参照CDRとしては、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合性を有する、任意の抗体又はその結合性断片におけるCDRが挙げられる。
本発明における抗体等(ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体等)は、いずれかのミオシン結合タンパク質H様に結合性を有している限り、その結合性の強さは特に制限されないが、かかる結合性の強さとして例えば、本発明における抗体等と、いずれかのミオシン結合タンパク質H様との間の解離定数(Kd)が、10−4M以下、好ましくは10−5M以下、より好ましくは10−6M以下、さらに好ましくは10−7M以下、より好ましくは10−8M以下であることが挙げられる。解離定数(Kd)の測定方法は、当該分野の当業者にとって周知であり、例えば、センサーチップを用いても求めることができる。
本明細書におけるフレームワーク領域としては、任意の種類のフレームワーク領域が挙げられるが、好ましくはヒト由来のフレームワーク領域が挙げられる。適当なフレームワーク領域は、前述のKabat E.A.らの文献を参照すれば選択できる。好ましい重鎖フレームワーク領域としては、ヒト重鎖フレームワーク領域が挙げられる。フレームワーク領域の位置及びアミノ酸配列は、ある抗体の可変領域のアミノ酸配列から、上記Kabat E.A.らの文献を参照して決定することができる。フレームワーク領域は、FR1、FR2、FR3、FR4を含んでいる。通常の抗体の可変領域では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で、N末端側からC末端側にかけて配列されている。
本発明における抗体等がヒト重鎖の定常領域を含んでいる場合、そのヒト重鎖の定常領域としては、γ、γ、γ、γ、μ、α、α、δまたはεタイプ、好ましくはγタイプ、より好ましくはγタイプが挙げられ、一方、ヒト軽鎖の定常領域としては、κまたはλタイプ(λ、λおよびλサブタイプを含む)が挙げられ、好ましくはκタイプが挙げられる。これらすべての定常領域のアミノ酸配列は、前述のKabat E.A.らの文献を参照することができる。
本発明における抗体や抗原結合性断片のアミノ酸数としては、特に制限されない。かかる抗原結合性断片の基準となる本発明における抗体のアミノ酸数がn個(nは2以上の整数)である場合のかかる抗原結合性断片のアミノ酸数として、1個〜n−1個が挙げられる。本発明における抗原結合性断片のより具体的なアミノ酸数としては、下限値として、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個等が挙げられ、上限値として、1800個、1500個、1350個、1200個、1000個、800個、600個、400個、300個、200個、100個、80個、60個等が挙げられる。
本発明の抗体等の検出を容易にするために、本発明の抗体は標識物質で予め標識しておくことが好ましい。かかる標識物質としては、32P、131I、35S、45Ca、3H、14C等の放射性同位体;Cy3、Cy5、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ユーロピウム、ナフチルアミン等の蛍光物質;ルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)オキザレート等の発光物質;フェノール、ナフトール、アントラセン等の紫外線吸収物質;アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等の酵素;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−p−トリルオキシル等のスピンラベル化剤;金コロイド、銀コロイド、白金コロイド等の金属コロイド;などが挙げられる。
本発明における抗体等の製造方法は特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
例えばポリクローナル抗体は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなど)に、検出等する対象である本発明におけるミオシン結合タンパク質H様を感作抗原として免疫し、抗血清を回収し、精製する、通常の方法により製造することができる。精製は、一般的な生化学的方法、例えば塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより行うことができる。
モノクローナル抗体は、例えば以下に記載されるような公知のハイブリドーマ法により製造することができる。まず、抗体産生ハイブリドーマを作製する。本発明におけるミオシン結合タンパク質H様、又は、該ミオシン結合タンパク質H様を発現している細胞(例えば、強制発現細胞など)を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法に従って哺乳動物を免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をクローニングする。感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定はされないが、細胞融合に使用する親細胞(ミエローマ細胞)との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスターなどが使用されることが多い。感作抗原で哺乳動物を免疫する方法としては、公知の方法を用いることができる。上記免疫細胞と融合されるミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株が使用可能である。免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は公知の方法、例えば、ミルスタインらの方法(Methods Enzymol. 73: 3-46 (1981))などに準じて行うことができる。得られた融合細胞は、通常の選択培地、例えば、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択することができる。このHAT培地での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するまで、通常数日から数週間継続される。次に、通常の限界希釈法を実施し、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。このようにして得られたハイブリドーマの培養上清を精製することによって、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様に結合するモノクローナル抗体を取得することができる。精製は、一般的な生化学的方法、例えば塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより行うことができる。
モノクローナル抗体はまた、遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主により産生することもできる。本発明におけるミオシン結合タンパク質H様、又は、該ミオシン結合タンパク質H様を発現している細胞(例えば、強制発現細胞など)を感作抗原として免疫した哺乳動物の脾細胞;リンパ球;又は、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを取得し、これを鋳型としてcDNAライブラリーを作製することができる。感作抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養上清から一般的な生化学的方法、例えば塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより目的とするモノクローナル抗体を精製することができる。また、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、又はそれらの抗原結合性断片は、例えば、上記モノクローナル抗体の可変領域や超可変領域を用いて遺伝子工学的手法により作製することができる(例えば、Method in Enzymology 203: 99-121(1991))。
<本発明におけるミオシン結合タンパク質H様>
本明細書において、「ミオシン結合タンパク質H様」(Myosin Binding Protein H-like: MybpHL)は、特に記載がない限り、ポリペプチドであるミオシン結合タンパク質H様を意味する。前述したように、本明細書における「ミオシン結合タンパク質H様」には、被検哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様のほか、被検哺乳動物における心房梗塞の判定又は診断に用いることができる限り、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の多型変異体(polymorphic variant)、スプライシング変異体(splicing variant)などの、ミオシン結合タンパク質H様の変異体;哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様のポリペプチド断片、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の変異体のポリペプチド断片などの、ミオシン結合タンパク質H様の断片;なども含まれる。
上記の「ミオシン結合タンパク質H様の変異体」として、具体的には、いずれかの種類の哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様ポリペプチドと、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有し、かつ、その哺乳動物における心房梗塞の判定又は診断に用いることができるポリペプチドが挙げられる。
本明細書では、2つのアミノ酸配列間の同一性は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出することができる。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は、通常、上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値を意味する。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。
様々な哺乳動物において、MybpHL遺伝子のヌクレオチド配列や、MybpHLのアミノ酸配列は既に知られている。以下に、各種の哺乳動物のMybpHL遺伝子のヌクレオチド配列や、MybpHLのアミノ酸配列に関する、GenBankのアクセッション番号を挙げる。
上記表1に挙げられた種類以外の哺乳動物のMybpHL遺伝子やMybpHLタンパク質は、上記1に挙げた哺乳動物のMybpHL遺伝子のヌクレオチド配列や、MybpHLのアミノ酸配列に基づいて、PCR法や組換えDNA技術などの、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。
本明細書において「哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様のポリペプチド断片」とは、いずれかの哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様の一部であるポリペプチド断片をいう。また、本明細書において「哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の変異体のポリペプチド断片」とは、いずれかの哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の変異体の一部であるポリペプチド断片をいう。哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様のポリペプチド断片に対応する野生型のミオシン結合タンパク質H様のアミノ酸数がm個(mは例えば150〜400の範囲内の整数)である場合のかかるポリペプチド断片のアミノ酸数として、1個〜m−1個が挙げられる。また、哺乳動物のミオシン結合タンパク質H様の変異体のポリペプチド断片に対応するミオシン結合タンパク質H様の変異体のアミノ酸数がk個(kは例えば150〜400の範囲内の整数)である場合のかかるポリペプチド断片のアミノ酸数として、1個〜k−1個が挙げられる。これらの本発明におけるポリペプチド断片のより具体的なアミノ酸数としては、下限値として、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個等が挙げられ、上限値として、350個、330個、300個、270個、240個、210個、180個、150個、120個、90個、70個、50個、40個等が挙げられる。
健常な哺乳動物の血液試料中からは、通常、ミオシン結合タンパク質H様はほとんど検出されないため、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様のうち、被検哺乳動物の野生型のミオシン結合タンパク質H様に限らず、ミオシン結合タンパク質H様の変異体や、ミオシン結合タンパク質H様の断片についても、被検哺乳動物における心房梗塞の判定又は診断に用いることができると考えられる。あるミオシン結合タンパク質H様の変異体や、あるミオシン結合タンパク質H様の断片が、被検哺乳動物における心房梗塞の判定又は診断に用いることができるか否かは、例えば、かかる変異体や断片に結合する抗体又はその抗原結合性断片を作製し、心房梗塞に罹患した哺乳動物の血液試料中に、前記抗体又はその結合性断片が結合するポリペプチドが存在するか否かを確かめること等によって確認することができる。
本発明におけるミオシン結合タンパク質H様をコードするポリヌクレオチドは、上記のMybpHL遺伝子の配列情報(表1参照)などに基づいて、PCR法、部位特異的変異誘発法、ハイブリダイゼーション法、化学的合成法などを利用して得ることができる。かかるポリヌクレオチドを、例えば哺乳動物細胞発現ベクターに挿入した後、該発現ベクターで哺乳動物細胞を形質転換し、得られた形質転換細胞をインビトロ等で培養して、所望のミオシン結合タンパク質H様を製造することができる。
なお、本発明の判定方法等において、血液試料中で検出又は測定の対象とするミオシン結合タンパク質H様と、かかる検出又は測定に用いる本発明の抗体等の作製時の感作抗原に用いるミオシン結合タンパク質H様とは、その本発明の抗体等が、検出等の対象とするミオシン結合タンパク質H様に結合することができる限り、同じタンパク質(ポリペプチド)であってもよいし、異なるタンパク質(ポリペプチド)であってもよいが、同じタンパク質(ポリペプチド)であることが好ましい。
<被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断キット>
被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断キット(以下、「本発明の診断キット」とも表示する。)としては、
ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片を含み、
前記被検哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されること、又は、前記血液試料中における前記ミオシン結合タンパク質H様の濃度が、心房梗塞の診断の指標となる、
前記診断キットである限り、特に制限されない。
(診断の指標)
被検哺乳動物における心房梗塞を診断する態様としては、被検哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されること、又は、前記血液試料中における前記ミオシン結合タンパク質H様の濃度を、心房梗塞の診断の指標とする態様である限り特に制限されないが、より具体的には、被検哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されることを、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことの指標とし、及び/又は、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さを、前記被検哺乳動物が心房梗塞を有している可能性の高さ、若しくは、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性の高さの指標とすることが好ましく挙げられる。
ミオシン結合タンパク質H様は、正常時には心房の心筋細胞に含まれているものの、心房梗塞により心房の心筋細胞が細胞死(壊死)することによって、その心筋細胞から血液中に逸脱、遊出することが考えられる。健常な哺乳動物の血液試料中からは、通常、ミオシン結合タンパク質H様はほとんど検出されないため、被検哺乳動物の血液試料中からミオシン結合タンパク質H様が検出された場合は、その被検哺乳動物は心房梗塞に罹患している可能性が高いと診断することができ、ミオシン結合タンパク質H様が検出されなかった場合は、その被検哺乳動物は心房梗塞を有している可能性が低いと診断することができる。また、心房梗塞の重症度が高いほど、より広範囲の心房の心筋細胞が壊死しているため、心房の心筋細胞から血液中に逸脱、遊出するミオシン結合タンパク質H様が増加すると考えられる。したがって、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、より高いほど、その被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いと診断することができ、より具体的には、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロール(例えば、健常な哺乳動物(好ましくは、被検哺乳動物と同種の健常な哺乳動物)から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度)と比較してより高いほど、その被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いと診断することができる。また、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、より高いほど、その被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いと診断することができ、より具体的には、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロール(例えば、健常な哺乳動物(好ましくは、被検哺乳動物と同種の健常な哺乳動物)から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度)と比較してより高いほど、その被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いと診断することができる。
(本発明の抗体等以外の構成)
本発明の診断キットは、本発明の抗体等(一次抗体等)のみを含んでいてもよいが、他の構成をさらに含んでいてもよい。本発明の診断キットは、かかる他の構成として、固相担体、標準物質、二次抗体、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様の標準品、希釈液、緩衝液、抗原抗体複合体の検出反応のための基質、及び、その検出反応の停止溶液からなる群から選択される1種、2種又は3種以上を含んでいてもよい。
上記の固相担体としては、例えば、ガラス、プラスチック、天然もしくは修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、マグネタイト、または当業者によく知られているその他適した材料からなるものが挙げられ、該固相担体の形状としては、例えば、プレート、ウェル、スライド、ビーズ、粒子、チューブ、ファイバー、メンブレンが挙げられる。
上記の標準物質としては、免疫学的方法において使用可能な物質であれば使用することができ、例えば、酵素、蛍光物質、発光物質等が挙げられる。一次抗体である本発明の抗体等は、固相担体に固定されていてもよい。
上記の二次抗体としては、本発明の抗体等に結合する抗体、若しくは、その抗原(一次抗体)結合性断片;又は、本発明の抗体等とは異なるエピトープを認識する、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様に対する抗体、若しくは、その抗原結合性断片であってもよい。かかる二次抗体は、本発明の抗体等が標識されていてもよい前述の標識物質で標識されていてもよい。かかる標識物質としては、前述の放射性同位体;前述の蛍光物質;前述の発光物質;前述の紫外線吸収物質;前述の酵素;前述のスピンラベル化剤;前述の金属コロイド;などが挙げられる。
<被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー>
被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー(以下、「本発明における診断マーカー」とも表示する。)としては、被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様又はその濃度を含んでいる限り特に制限されない。本発明における診断マーカーは、「被検哺乳動物における心房梗塞を診断するため」という用途に限定された診断マーカー(診断に用いるためのバイオマーカー)である。本発明における診断マーカーは、通常、被検哺乳動物から得られた血液試料中に存在するミオシン結合タンパク質H様や、かかるミオシン結合タンパク質H様の濃度を検出対象又は測定対象とする。本発明の診断マーカーは、被検哺乳動物における心房梗塞の診断の指標とすることができる。かかる診断の指標としては、例えば、本発明の診断キットにおける診断の指標を用いることができる。
<本発明のその他の態様>
本発明は、その他の態様として、
被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程(a)を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのデータを収集する方法(以下、本発明の収集方法)とも表示する。);
も含んでいる。本発明の収集方法における工程(a)は、上記の本発明の判定方法における工程(a)と同様である。また、本発明の収集方法は、上記工程(b)をさらに含んでいなくてもよいが、さらに含んでいることが好ましい。かかる工程(b)は、上記の本発明の判定方法における工程(b)と同様である。本発明の収集方法における工程(a)や工程(b)により得られるデータは、被検哺乳動物における心房梗塞の診断に用いることができる。かかる診断の指標としては、例えば、上記の本発明の診断キットにおける診断の指標を用いることができる。
本発明は、その他の態様として、
被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程(a)を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞の診断方法(以下、「本発明の診断方法」とも表示する。);
も含んでいる。本発明の診断方法における工程(a)は、上記の本発明の判定方法における工程(a)と同様である。また、本発明の診断方法は、上記工程(b)をさらに含んでいなくてもよいが、さらに含んでいることが好ましい。かかる工程(b)は、上記の本発明の判定方法における工程(b)と同様である。本発明の診断方法における診断の指標としては、例えば、上記の本発明の診断キットにおける診断の指標を用いることができる。
本発明は、その他の態様として、
被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断キットの製造における本発明の抗体等の使用(以下、「本発明の使用」とも表示する。);
も含んでいる。
本発明は、その他の態様として、
被検哺乳動物における心房梗塞の診断における使用のための本発明の抗体等又は本発明の診断キット;
も含んでいる。
本発明の抗体等や本発明の診断キットを、心房梗塞の診断にどのような方法で使用するかは、上記の本発明の診断方法に関する記載を参照することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
試験1[ラット新生仔の心筋細胞における遺伝子発現のマイクロアレイ解析]
心房梗塞の診断マーカーとなり得る候補遺伝子、候補タンパク質を探索するために、本発明者らは、以下のマイクロアレイ解析により、心室の心筋細胞における遺伝子発現と、心房の心筋細胞における遺伝子発現の比較を試みた。具体的には、以下のような方法を用いた。
生後1〜3日目の新生仔ラットの心臓から、心房組織と心室組織を剖出し、ミトコンドリア法(Fumiyuki Hattori, et al. Nongenetic method for purifying stem cell-derived cardiomyocytes. Nature Method.2010; 7:61-66.)で、それぞれの組織から心筋細胞の精製を行った。得られた心房の心筋細胞、心室の心筋細胞から、Isogen(ニッポンジーン社製)を用いて、それぞれtotalRNAを抽出した。次いで、Agilentラベル化キット(登録商標)(Agilent社製)を用いて、前述のtotalRNAから、心房筋をCy3、心室筋をCy5にそれぞれ蛍光標識したcDNAを合成した。蛍光標識したcDNAをAgilent Gene Expression DNA microarray Rat 12K(Agilent社製)にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは、Agilentハイブリダイゼーションキット(Agilent社製)を用いて65℃にて17時間の条件下で行った。蛍光シグナルのスキャニングは、Agilentスキャナ(Agilent社製)を用いて行い、取得した蛍光シグナルの画像解析は、Feature Extraction(Agilent社製)を用いて行った。さらにGene Spring(トミーデジタルバイオロジー社)を用いて数値の高度解析を行った。このような方法で、心房の心筋細胞と、心室の心筋細胞について、30,000種類の遺伝子の発現量の比較解析を行った。
各遺伝子について、心房の心筋細胞での発現強度と、心室の心筋細胞での発現強度をプロットした図を、図1に示す。図1において、上方側にプロットされている遺伝子は、心室の心筋細胞での発現強度に対して、心房の心筋細胞での発現強度が高い遺伝子を表している。心房特異的遺伝子として既に知られているサルコリピン(Sarcolipin)遺伝子や、Nppa遺伝子は、その既知の性質のとおり、心室での発現強度と比較して、心房での発現強度が特に高かった。また、本発明者らは、心室での発現強度と比較して、心房での発現強度が特に高い遺伝子として、ミオシン結合タンパク質H様(Myosin Binding Protein H-like:MybpHL)遺伝子を見いだした。
試験2[ラットの各種臓器におけるMybpHL遺伝子の発現解析]
試験1において、MybpHL遺伝子の発現は、心臓の心筋細胞の中でも、心房の心筋細胞に高い特異性を有していることが示された。そこで、MybpHL遺伝子の発現が、全身の中でも心房に高い特異性を有しているかを確認するために、ラットの各種臓器におけるMybpHL遺伝子の発現解析を試みた。また、比較対照として、既知の心房特異的遺伝子であるサルコリピン遺伝子についても発現解析を試みた。具体的には、以下のような方法を用いた。
Wistarラットの成獣(8週齢)から各種臓器を取り出して、それぞれの臓器から、Quickprep(登録商標)micro mrna purification kit(Ge Healthcare社製)を用いて、それぞれmRNAを抽出した。次いで、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(TaKaRa Bio社製)を用いて、前述のmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAをサンプルとして、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(TaKaRa Bio社製)を用いて、前述の各mRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAをサンプルとして、Gene Expression assays (Applied Biosystems社)ABI Prism 7500(Applied Biosystems社)を用いて定量PCRを行った。なお、ラットのMybpHL遺伝子用のプライマーとしては、Assay ID: Rn01521976_m1(Applied Biosystems社)を用い、ラットのサルコリピン遺伝子用のプライマーとしては、Assay ID: Rn02769377_s1(Applied Biosystems社)を用いた。
かかる定量PCRの結果を図2に示す。図2において、縦軸の数値は、各サンプルにおけるmRNAの発現量(mRNA level)を、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)を参照遺伝子として標準化した後に、心房(Atrium)におけるサルコリピン遺伝子の発現量を基準(1.0)とした相対値である。
図2の結果から分かるように、サルコリピン遺伝子の発現は、心房(Atrium)以外に、食道(Esophagus)で高く、胃(Stomach)でもいくらか高かったのに対し、MybpHL遺伝子の発現は、心房以外の臓器ではほとんど認められなかった。すなわち、サルコリピン遺伝子の発現は、全身の中では心房における特異性は低かったのに対し、MybpHL遺伝子の発現は、全身の中でも心房に高い特異性を有していることが示された。
試験3[マウスの各種臓器におけるMybpHL遺伝子等の発現解析]
試験2では、ラットにおいて、MybpHL遺伝子の発現が、全身の中でも心房に高い特異性を有していることが示された。そこで、ラットではなく、マウスにおいても、MybpHL遺伝子の発現が、全身の中で心房に高い特異性を有しているかを確認するために、マウスの各種臓器におけるMybpHL遺伝子等の発現解析を試みた。また、比較対照として、既知の心房特異的遺伝子であるサルコリピン遺伝子、Mlc−2a遺伝子、Nppa遺伝子、GLP−1R遺伝子についても発現解析を試みた。具体的には、以下のような方法を用いた。
C57B/6Nマウスの成獣(8週齢)から各種臓器を取り出して、それぞれの臓器から、Quickprep(登録商標)micro mrna purification kit(Ge Healthcare社製)を用いて、それぞれmRNAを抽出した。次いで、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(TaKaRa Bio社製)を用いて、前述のmRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAをサンプルとして、T3 thermocycler(Biometra社製)を用いてPCRを行った。得られたPCR産物をアガロースゲルで電気泳動して、目的とするPCR産物を確認した結果を図3に示す。なお、マウスのMybpHL遺伝子用のプライマーとしては、配列番号1のヌクレオチド配列からなるプライマー(m MyBPHL F)と、配列番号2のヌクレオチド配列からなるプライマー(m MyBPHL R)を用い、マウスのサルコリピン遺伝子用のプライマーとしては、配列番号3のヌクレオチド配列からなるプライマーと(m Sarcolipin F)、配列番号4のヌクレオチド配列からなるプライマー(m Sarcolipin R)を用い、マウスのMlc−2a遺伝子用のプライマーとしては、配列番号5のヌクレオチド配列からなるプライマー(rMlc2a F(102 28))と、配列番号6のヌクレオチド配列からなるプライマー(rMlc2a R(557 30))を用い、マウスのNppa遺伝子用のプライマーとしては、配列番号7のヌクレオチド配列からなるプライマー(m Nppa F)と、配列番号8のヌクレオチド配列からなるプライマー(m Nppa R)を用い、マウスのGLP−1R遺伝子用のプライマーとしては、配列番号9のヌクレオチド配列からなるプライマー(m GLP1R F)と、配列番号10のヌクレオチド配列からなるプライマー(m GLP1R R)を用いた。
図3の結果から分かるように、マウスにおいて、MybpHL遺伝子の発現は、サルコリピン遺伝子、Mlc−2a遺伝子、Nppa遺伝子及びGLP−1R遺伝子の発現と比較して、心臓の中でも、全身の中でも、心房に高い特異性を有していることが示された。このことから、ラットだけでなく、マウスにおいても、MybpHL遺伝子の発現が、全身の中で心房に高い特異性を有していることが示された。
試験4[インビボにおけるMybpHL遺伝子の発現解析]
MybpHL遺伝子の発現が、インビボにおいても、全身の中で心房に高い特異性を有しているかを確認するために、MybpHL遺伝子座にLacZをレポーター遺伝子として挿入したノックアウトマウスを作出して、かかるノックアウトマウスを用いたin vivo レポーターアッセイを試みた。具体的には、以下のような方法を用いた。
ノックアウトマウスは、米国NIHが主体となって実施したKnockout mouse project (KOMP) (http://commonfund.nih.gov/KOMP2/)が提供する、遺伝子がノックアウトされたマウスES細胞株を購入し、これをTransgenic社(神戸市)に依頼し、成体マウスへと発生させたものを用いた。このノックアウトマウスにおける改変されたMybpHL遺伝子の構造を図4に示す。図4に示されるように、MybpHL遺伝子の第一イントロンに、En2(homeobox transcription factor, ENGRAILED 2)遺伝子のSA(スプライシングアクセプター)配列、IRES(internal ribosome entry sites)配列、lacZ配列、pA(polyA)配列からなるL1L2_Bact_P.カセットを挿入した。スプライシングアクセプター配列により、MybpHL遺伝子のmRNAは、第1エクソンのみからなる短縮形となり、MybpHL遺伝子はノックアウトされる。
このように作製したノックアウトマウスにおいては、MybpHL遺伝子の発現箇所でLacZレポーター遺伝子が発現し、β−ガラクトシダーゼが発現する。かかるノックアウトマウスにおけるβ-ガラクトシダーゼ活性を、X−galを基質とするβ-Galactosidase Staining Kit(タカラバイオ社製)を用いて検出した。図5Aには、8週齢のノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示し、図5Bには、産後1日のノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示す。また、図5Cの左パネルには、胎生14日目のノックアウトマウスの全身を観察した結果を示し、図5Cの右パネルには、胎生14日目のノックアウトマウスの心臓を観察した結果を示す。図5A〜Cの各組織において色が濃い部分は、X−galがβ−ガラクトシダーゼによって分解されて染色された箇所であり、すなわち、かかる部分がMybpHL遺伝子の発現箇所を表す。
図5A〜Cから分かるように、マウスの胎仔、新生仔、成獣のいずれにおいても、MybpHL遺伝子の発現は心房に高い特異性を有していることが分かった。これにより、MybpHL遺伝子の発現は、in vivoにおいても、心房に高い特異性を有していることが示された。
試験5[ヒトにおけるMybpHL遺伝子等の発現解析]
ラットやマウスだけでなく、ヒトにおいても、MybpHL遺伝子の発現は心房に高い特異性を有しているかを確認するために、ヒトの心房、心室及び骨格筋におけるMybpHL遺伝子の発現解析を試みた。具体的には、以下のような方法を用いた。
成人であるヒトの以下の組織から採取したトータルmRNAサンプルを、BioChain社から購入した。
PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(TaKaRa Bio社製)を用いて、前述の各mRNAからcDNAを合成した。これらのcDNAをサンプルとして、Gene Expression assays (Applied Biosystems社)ABI Prism 7500(Applied Biosystems社)を用いて定量PCRを行った。なお、ヒトのMybpHL遺伝子用のプライマーとしては、Assay ID: Hs00192226_m1(Applied Biosystems社)を用いた。
かかる定量PCRの結果を図6に示す。図6において、縦軸の数値は、各サンプルにおけるmRNAの発現量(mRNA level)を、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)を参照遺伝子として標準化した後に、左心房(LA)におけるMybpHL遺伝子の発現量を基準(1.0)とした相対値である。
図6の結果から分かるように、MybpHL遺伝子の発現は、ヒトにおいても、左心房(LA)や右心房(RA)等の心房で高く、左心室(LV)や右心室(RV)等の心室で非常に低く、骨格筋(Skeletal M.)でほとんど検出されなかった。すなわち、ヒトにおいても、MybpHL遺伝子の発現は心房に高い特異性を有していることが示された。
また、MybpHL遺伝子が、タンパクレベルでも心房に高い特異性を有しているかを確認するために、ヒトの左心房、左心室及び骨格筋におけるMybpHLタンパク質の発現量をウエスタンブロット解析により調べた。具体的には、以下のような方法を用いた。
成人であるヒトの以下の組織から採取したタンパク質サンプルを、BioChain社から購入した。
また、抗MybpHLタンパク質抗体は、MybpHLタンパク質の一部(SPSLQLLPSIEEHPKIWLPR)をウサギに投与し、かかるウサギから血液を採取して、抗MybpHLタンパク質抗体を得た。
前述のタンパク質サンプルをSDS−PAGEで泳動した後、ニトロセルロース膜(Amersham Protran Premium NC、GE health care)に転写した。かかる膜を、Immunoblock, DSファーマ・バイオメディカル溶液で1晩ブロッキングした。かかる膜をPBST(sigma aldrich社製)で洗浄した後、抗MybpHLタンパク質抗体(マウス抗体)を含む溶液を膜に接触させた。次いで、かかるマウス抗体に特異的に結合する、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識2次抗体を使用し、化学発光剤(SuperSignal(登録商標) West Pico Chemiluminescent Substrate; thermo fisher scientific社製)とChemiDoc XRS(Bio-Rad社製)を用いてMybpHLタンパク質のバンドを可視化し定量化した。
かかるウエスタンブロット解析の結果を図7に示す。図7から分かるように、MybpHLタンパク質は、左心房には多く発現しているが、左心室や骨格筋では、ほとんど発現していなかった。この結果から、ヒトにおいて、MybpHLタンパク質は心房に高い特異性を有していることが示された。
実施例で用いたプライマーの情報を以下の表4に示す。
また、実施例で用いてはいないが、ヒト遺伝子の発現解析に用いることができるプライマーの情報を以下の表5に示す。
本発明によれば、被検哺乳動物における心房梗塞の有無又はその重症度の高低を判定する方法や、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するためのキットや、被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー等を提供することができる。また、本発明によれば、従来法と比較して、より迅速、簡便かつ高精度に心房梗塞を診断することが可能となる。

Claims (9)

  1. 被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断キットであって、
    ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体又はその抗原結合性断片を含み、
    前記被検哺乳動物から得られた血液試料中に前記ミオシン結合タンパク質H様が検出されること、又は、前記血液試料中における前記ミオシン結合タンパク質H様の濃度が、被検哺乳動物における心房梗塞の診断の指標となる、
    前記診断キット。
  2. ミオシン結合タンパク質H様に結合する抗体が、ミオシン結合タンパク質H様に特異的に結合するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である、請求項1に記載の診断キット。
  3. 固相担体、標準物質、二次抗体、本発明におけるミオシン結合タンパク質H様の標準品、希釈液、緩衝液、抗原抗体複合体の検出反応のための基質、及び、その検出反応の停止溶液からなる群から選択される1種、2種又は3種以上をさらに含む、請求項1又は2に記載の診断キット。
  4. 被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様を検出又は測定する工程(a)を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する方法。
  5. 被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度を、コントロールと比較する工程(b)をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  6. 以下の(i−1)〜(i−3)のうち、1つ又は2つ以上の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を含む、請求項4又は5に記載の方法。
    (i−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
    (i−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性の高さを示す;
    (i−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度の高さが、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性の高さを示す;
  7. 以下の(ii−1)〜(ii−3)のうち、1つ又は2つ以上の指標をもとに被検哺乳動物における心房梗塞の罹患可能性又はその重症度を判定する工程を含む、請求項4又は5に記載の方法。
    (ii−1)被検哺乳動物から得られた血液試料中にミオシン結合タンパク質H様が検出されることが、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性が高いことを示す;
    (ii−2)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物が心房梗塞に罹患している可能性がより高いことを示す;
    (ii−3)被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様の濃度が、コントロールと比較してより高いほど、前記被検哺乳動物の心房梗塞がより高い重症度である可能性が高いことを示す;
  8. 血液試料が血清試料である、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 被検哺乳動物から得られた血液試料中のミオシン結合タンパク質H様又はその濃度を含む、前記被検哺乳動物における心房梗塞を診断するための診断マーカー。
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