JP2019137945A - 布帛および繊維構造物 - Google Patents

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将太 竹下
竹田 恵司
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Abstract

【課題】布帛の表面粗さを制御することにより、従来技術では得られなかった高いレベルの撥水性を有する布帛を提供することを課題とする。【解決手段】嵩高糸を含み、見かけの表面積に対する実際の表面積の比が1.70以上であることを特徴とする撥水剤が固着された布帛。嵩高糸が2種類のポリマーがサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維を含むことが好ましい。また、前記嵩高糸の単糸繊度が0.5dtex以下であって、捲縮率が30%以上であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、布帛および繊維構造物に関する。
撥水剤の成分に頼らない撥水性向上の手法として、表面粗さの増加による撥水性向上が知られており、その効果は一般的にWenzelの式で表される。
cosθ’=r・cosθ
ここでθ’は粗面での接触角、θは平滑面での接触角を表す。
またrは見かけの表面積に対する実際の表面積比であり、粗さにより増大した表面積を平滑な場合の表面積で割ることで求められる。
Wenzelの式より、布帛に粗さを付与し、rを大きくすることで撥水性の向上が期待される。
この原理を基に、フィルム等の基材に微粒子を付着させることで微細な凹凸を形成し、表面積を増大させた撥水材(特許文献1参照)が提案されている。
またフィルム等平滑な基材を変形させ、微細な溝を形成することで表面積を増大させた撥水材(特許文献2参照)が提案されている。また太繊度の糸と細繊度の糸を複合した混繊糸により布帛の表面粗さを増加させ、撥水性を向上させる手法(特許文献3、4参照)が提案されている。
特開2003−236955号公報 特開2003−147339号公報 特開2000−336545号公報 特開2012−122144号公報
しかしながら特許文献1に開示の基材に微粒子を付着させる方法はフィルム等を基材とするものであり、単に布帛に転用しても実用的な布帛は得られなかった。
また、特許文献2に開示の方法を単に転用しても実用的な布帛は得られなかった。さらに特許文献3、4に開示の方法によっても満足いく撥水性は得られていない。
そこで本発明は、布帛の表面粗さを制御することにより、従来技術では得られなかった高いレベルの撥水性を有する布帛を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)嵩高糸を含み、見かけの表面積に対する実際の表面積の比が1.70以上である撥水剤が固着された布帛。
(2)前記嵩高糸が2種類のポリマーがサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維を含むものである(1)に記載の布帛。
(3)前記2種類のポリマーのうち、一方がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、もう一方がポリエチレンテレフタレートである(1)または(2)に記載の布帛。
(4)前記嵩高糸の単糸繊度が0.5dtex以下であって、捲縮率が30%以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の布帛。
(5)前記撥水剤が、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤であり、3μLの水に対する接触角が140°以上であり、20μLの水に対する滑落角が20°以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の布帛。
(6)前記撥水剤がフッ素原子を含まない撥水剤であり、3μLの水に対する接触角が135°以上であり、20μLの水に対する滑落角が30°以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の布帛。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の布帛を用いてなる繊維製品。
本発明によれば、嵩高糸を含み、見かけの表面積に対する実際の表面積の比が特定範囲となるよう、布帛の表面粗さを制御することにより、従来技術では得られなかった高いレベルの撥水性を有する布帛を提供することができる。更に本発明の好ましい態様によれば、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤や、フッ素原子を含まない撥水剤で加工しても、従来の炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤で加工した場合と同程度の撥水性を有する布帛を提供することができる。
本発明の布帛は、嵩高糸を含み、見かけの表面積に対する実際の表面積の比が1.70以上であり、撥水剤が固着されている。
見かけの表面積に対する実際の表面積比は1.70以上であるが、好ましくは1.80以上である。表面積比が1.70未満では撥水性の向上が不十分であり、満足のいく撥水性が得られない。上限としては、水が着滴した場合に嵩高糸の変形もなく、粗さによる撥水性向上効果が特に良好である点から3.00未満であることが好ましい。
嵩高糸の作製方法としては、布帛にした場合に見かけの表面積に対する実際の表面積比が1.70以上になるものであれば用いることができる。例えば原糸にウーリー加工、ブレリア加工、イタリー加工、ニットデニット加工、押込加工、複合仮撚加工、タスラン加工、交絡加工を行う方法や、2種のポリマーをサイドバイサイド型に複合した複合繊維を用いる方法が挙げられるが、上記表面積比を大きくするためにはより細かでたくさんの捲縮を付与した嵩高糸とするのがよい。上記のなかでもサイドバイサイド型に複合した複合繊維を用いる場合、高い捲縮率を有し、さらには単糸繊度を小さくしても、より細かで高い捲縮率を維持できるので、布帛にしたとき粗さ(みかけの表面積に対する実際の表面積の比)をいっそう大きく向上できるため、好ましい。特に潜在捲縮性を有するサイドバイサイド型の複合繊維であると、製織後の後処理で捲縮が発現するが、繊度に応じた細かな捲縮を有する嵩高糸とすることができ、みかけの表面積に対する実際の表面積の比を増大させ得る点で特に好ましい。
繊度の細いサイドバイサイド型の複合繊維が得られることから、サイドバイサイド型の複合島部と易溶出成分で構成された海部を有する海島複合繊維を用い、布帛とした後に海成分を溶出してサイドバイサイド型複合繊維とすることが好ましい。
上記複合繊維を構成する成分は、細かい捲縮を出すため、ポリエステルが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート(、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル等が挙げられる。またこれらのポリエステルは、ジオール成分および酸成分の一部が各々、
全てのジオール成分および酸成分の量を100モル%としたときに20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができ、これらは艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していても構わない。
該複合繊維を構成するポリエステルの組み合わせとしては、粘度の異なる同種のポリエステルの組み合わせ、異種のポリエステルの組み合わせのいずれでもよいが、ポリマーAがポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、もう一方のポリマーBがポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。ポリマーAとポリマーBの重量複合比は3:7から7:3が好ましく、より好ましくは4:6から6:4、更に好ましくは5:5である。
該複合繊維の単繊維断面形状は特に限定されず、丸、三角、四角、扁平、多葉など何れでもよい。また該複合繊維にウーリー加工、ブレリア加工、イタリー加工、ニットデニット、押込加工、複合仮撚加工、タスラン加工、交絡加工がされていてもよい。
該嵩高糸の単糸繊度としては0.5dtex以下であることが好ましい。単糸繊度としては、0.3dtex以下がより好ましく、0.2dtex以下がさらに好ましい。下限としては制限はないが、工業的生産性の観点から0.001dtex以上であることが好ましい。
捲縮率が30%以上であることが好ましい。捲縮率としては、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。上限としては工業的生産性の点から100%以下であることが好ましい。
該嵩高糸の単糸繊度としては0.5dtex以下で、捲縮率が30%以上であることが好ましい。単糸繊度が小さく、捲縮率が大きいほど見かけの表面積が大きくなり、撥水性が向上する。なかでも該嵩高糸の単糸繊度としては0.3dtex以下で、捲縮率が40%以上であることが好ましい。
該嵩高糸以外に含まれる繊維としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルのジカルボン酸成分あるいは、ジオール成分として、例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸等の共重合、ジエチレングリコール等のジオール成分を用いた共重合体からなる繊維、ポリエチレングリコールなどをブレンドした芳香族ポリエステル系繊維、L−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、麻、絹などの天然繊維などが挙げられる。
本発明における布帛形態は特に限定されず、織、編、不織布等が挙げられるが、防水性の観点から織が好ましい。
また織組織は本発明で規定する見かけの表面積に対する実際の表面積の比を満たせば特に限定されず、平織、ツイル、サテン等が挙げられるが、捲縮糸の膨らみを活かして、表面積を増加させやすいことから、ツイル、サテンが好ましい。平織等その他の織組織であっても織密度、製織時の張力を調整し、捲縮糸の細かな捲縮が損なわれないよう、かつ比較的高密度に製織するなどの配慮をするのがよい。
本発明の布帛には撥水剤が固着してなるが、固着とは、撥水剤が繊維と接し、付着または被膜している状態を表す。
撥水剤としては、炭素数が7以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤、(たとえばダイキン工業(株)製“ユニダイン”TG−5546、“ユニダイン”TG−5601、旭硝子(株)製“アサヒガード”AG−E061、“アサヒガード”AG−E081)、フッ素原子を含まない撥水剤などが挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。なかでも炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤、フッ素原子を含まない撥水剤が好ましい。なお近年パーフルオロオクタン酸及びパーフルオロオクタンスルホン酸は使用を避ける傾向にあることから、布帛中のパーフルオロオクタン酸及びパーフルオロオクタンスルホン酸の含有量として5ppm未満であることが望ましい。
撥水剤とともに架橋剤を併用することにより洗濯耐久性を付与することが出来る。このような架橋剤としては、DIC(株)製“アミディア”M−3(トリメチロールメラミン)が好ましい。
さらに架橋剤の反応促進のために触媒を用いることができる。このような触媒としては、DIC(株)製“キャタリスト”ACX(アミン系触媒)が好ましい。
またマルチフィラメントの内部まで薬剤を浸透させるために浸透剤を用いることができる。このような浸透剤としては、2−プロパノール、エタノール等が挙げられるが、中でも2−プロパノールが好ましい。
本発明において、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤を固着させた際、3μLの水に対する接触角が140°以上であり、20μLの水に対する滑落角が20°以下であることが好ましい。より好ましくは、3μLの水に対する接触角が145°以上であり、20μLの水に対する滑落角が10°以下である。上記好ましい接触角を有する布帛とするために好ましく用いられ得る炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤としては、ダイキン工業(株)製のTG−5546、旭硝子(株)製の“アサヒガード”AG−E061等が市販されている。
また、本発明において、フッ素原子を含まない撥水剤を固着させた際、3μLの水に対する接触角が135°以上であり、20μLの水に対する滑落角が30°以下であることが好ましい。より好ましくは、3μLの水に対する接触角が140°以上であり、20μLの水に対する滑落角が20°以下である。該かかる滑落角を達成するための撥水剤としては、日華化学(株)製のネオシードNR−158等が市販されている。
かくして得られる本発明の布帛を繊維構造物に用いた場合、撥水性に優れるため、紳士服、婦人服、礼服、学生服、作業衣、ジャケット、カジュアルウェア、レインコートおよびスポーツウェア等の一般衣料や、水着、傘、テントといった繊維製品に好ましく使用できる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。また、実施例中の品質評価は次の方法で実施した。
(捲縮率)
生地から嵩高糸を抜き取り、該嵩高糸に0.18mN×繊度(tex)の初荷重をかけたときの長さと、4.41mN×繊度(tex)の荷重をかけたときの長さから次式により計算し、20回の平均値を算出した。ただし該嵩高糸の保持部と荷重との距離は、荷重をかけない状態で20cmに保持した。
捲縮率(%)=[(b−a)/b]×100
ここで、
a:初荷重をかけたときの長さ(mm)
b:4.41mN×繊度(tex)の荷重をかけたときの長さとする。
(見かけの表面積に対する実際の表面積比)
見かけの表面積に対する実際の表面積比の測定は、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製VR−3000)で行った。測定条件としては、倍率160倍、測定モードはスーパーファインで布帛を撮影し、1辺1636μmの長さで区切られた正方形部分の表面積を測定し、該表面積を2676496μm(1636μm×1636μm)で割ることで算出した。これを布帛の任意の5箇所で測定し、その平均値をそれぞれの布帛の見かけの表面積に対する実際の表面積比とした。
(接触角)
接触角の測定は、固液界面解析装置(協和界面科学(株)製“DropMaster”700)で行った。測定条件としては、20℃の水を3μL布帛に乗せた場合の接触角を布帛上の任意の5箇所で測定し、その平均値をそれぞれの布帛の水に対する接触角とした。
接触角が高いほうが撥水性が高いことを示す。
(滑落角)
滑落角の測定は、固液界面解析装置(協和界面科学(株)製“DropMaster”700)で行った。測定条件としては、水平の台上に布帛を固定し20℃の水を20μL布帛に乗せ、断続条件で布帛が置かれた台を徐々に傾け、液滴が滑落した時点の傾斜角を、布帛上の任意の5箇所で測定し、その平均値をそれぞれの布帛の水に対する滑落角とした。
滑落角が低いほうが撥水性高いことを示す。
(撥水度)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(2009年)に規定される方法でスプレー法により評価を行い級判定を行った。
(水のはじき感)
スプレー法による撥水度測定中の水のはじき方を目視で判定した。5級:流水中、水が生地に当たると跳ね、全く生地にへばりつかない。4級:流水中、水が生地に当たると跳ねるが、わずかに生地にへばりつく。3級:流水中、水の3割が生地にへばりつく。2級:流水中、水の5割が生地にへばりつく。1級:流水中、水の8割以上が生地にへばりつく。
生地に当たって跳ねる水の割合が多いほど、水のはじき感が良いことを示す。
(実施例1)
2種類のポリマーA、Bがサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維を布帛を構成する嵩高糸に用いた。具体的には、ポリマーAがポリトリメチレンテレフタレートであり、もう一方のポリマーBがポリエチレンテレフタレートであり、AとBの重量複合比が5:5となるように複合島部を形成し、ポリ−L−PLAが海部を島:海の複合重量比80:20となるように形成した海島複合繊維(単繊維中の丸断面複合島数24)から成る70dtex、12フィラメントのマルチフィラメント(海島複合繊維)をヨコ糸に、ポリエチレンテレフタレートからなる56dtex、18フィラメントのマルチフィラメントをタテ糸に使用して平織物を製織した後、該織物を95℃の温度で、連続式精練機で常法に従い精練、湯水洗し、160℃でピンテンターセットした。次いで1wt%、90℃の水酸化ナトリウム水溶液で海成分を除去し、湯水洗後、160℃でピンテンターセットし、56dtex、288フィラメントのマルチフィラメント(嵩高糸)をヨコ糸、56dtex、18フィラメントのマルチフィラメントをタテ糸とし、タテ密度が113本/2.54cm、ヨコ密度が120本/2.54cmの織物を得た。得られた織物を、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤である(A)“ユニダイン”TG−5546(ダイキン工業(株)製)50g/Lと、架橋剤である(D)“アミディア”M−3(DIC(株)製)3.0g/L、架橋剤用の触媒として(E)“キャタリスト”ACX(DIC(株)製)1.0g/L、浸透剤である(F)2−イソプロパノール(ナカライテスク(株)製)10g/L、残部を水とした処理液を調整し、これに上記で製造された布帛を浸漬してマングルを用いて絞り率60%となるよう絞り、130℃の温度で乾燥し、その後、170℃の温度で加熱処理をした。得られた布帛の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.85、3μLの水に対する接触角が147.7°、20μLの水に対する滑落角が9.0°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、撥水剤として“ユニダイン”TG−5546に代えて、フッ素原子を含まない撥水剤である(B)“ネオシード”NR−158(日華化学(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして撥水性織物を得た。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.85、3μLの水に対する接触角が143.8°、20μLの水に対する滑落角が19.0°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。
(実施例3)
2種類のポリマーA、Bがサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維を布帛を構成する嵩高糸に用いた。具体的にはポリマーAがポリトリメチレンテレフタレートであり、もう一方のポリマーBがポリエチレンテレフタレートであり、AとBの重量複合比が5:5となるようにサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維(マルチフィラメント)を構成する嵩高糸に用いた。具体的には56dtex、48フィラメントの前記複合繊維をヨコ糸に、ポリエチレンテレフタレートからなる56dtex、18フィラメントのマルチフィラメントをタテ糸に使用して平織物を製織した後、該織物を95℃の温度で連続式精練機で常法に従い精練、湯水洗し、160℃でピンテンターセットし、タテ密度が113本/2.54cm、ヨコ密度が140本/2.54cmの織物を得た。得られた織物を実施例1と同様の撥水加工で撥水処理した。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.72、3μLの水に対する接触角が144.3°、20μLの水に対する滑落角が11.0°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において、撥水剤として“ユニダイン”TG−5546に代えて、非フッ素系撥水剤である(B)“ネオシード”NR−158(日華化学(株)製)を使用した以外は実施例3と同様にして撥水性織物を得た。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.72、3μLの水に対する接触角が142.5°、20μLの水に対する滑落角が20.9°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートからなる84dtex、36フィラメントのマルチフィラメントをヨコ糸、タテ糸に使用して平織物を製織した後、該織物を95℃の温度で連続式精練機で常法に従い精練、湯水洗し、160℃でピンテンターセットし、タテ密度が120本/2.54cm、ヨコ密度が90本/2.54cmの織物を得た。得られた織物を実施例1と同様の撥水加工で撥水処理した。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.22、3μLの水に対する接触角が135.3°、20μLの水に対する滑落角が62.2°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。実施例1、3と比較して、使用している撥水剤が同様にもかかわらず、接触角、滑落角が大きく悪化するとともに水のはじき感が著しく悪化し、撥水性の低下が確認された。
(比較例2)
比較例1において、撥水剤として“ユニダイン”TG−5546に代えて、フッ素原子を含まない撥水剤である(B)“ネオシード”NR−158(日華化学(株)製)を使用した以外は比較例1と同様にして撥水性織物を得た。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.22、3μLの水に対する接触角が126.7°、20μLの水に対する滑落角が83.0°、撥水度が4級となった。結果を表1に示す。実施例2、4と比較して使用している撥水剤が同様にもかかわらず、接触角、滑落角が大きく悪化するとともに水のはじき感が著しく悪化し、撥水性の低下が確認された。
(比較例3)
比較例1において、撥水剤として“ユニダイン”TG−5546に代えて、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤である(C)“ユニダイン”TG−581(ダイキン工業(株)製)を使用した以外は比較例1と同様にして撥水性織物を得た。得られた織物の見かけの表面積に対する実際の表面積の比は1.22、3μLの水に対する接触角が138.6°、20μLの水に対する滑落角が44.2°、撥水度が5級となった。結果を表1に示す。炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤や、フッ素原子を含まない撥水剤を使用した実施例1から4と比較して、接触角、滑落角が大きく悪化するとともに水のはじき感が著しく悪化し、撥水性の低下が確認された。
Figure 2019137945
本発明の布帛を繊維構造物に用いた場合、撥水性に優れるため、紳士服、婦人服、礼服、学生服、作業衣、ジャケット、カジュアルウェア、レインコートおよびスポーツウェア等の一般衣料や、水着、傘、テントといった繊維製品に好ましく使用できる。

Claims (7)

  1. 嵩高糸を含み、見かけの表面積に対する実際の表面積の比が1.70以上である撥水剤が固着された布帛。
  2. 前記嵩高糸が2種類のポリマーがサイドバイサイド型に複合されて形成した複合繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の布帛。
  3. 前記2種類のポリマーのうち、一方がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、もう一方がポリエチレンテレフタレートである請求項1または2に記載の布帛。
  4. 前記嵩高糸の単糸繊度が0.5dtex以下であって、捲縮率が30%以上である請求項1から3のいずれかに記載の布帛。
  5. 前記撥水剤が、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤であり、3μLの水に対する接触角が140°以上であり、20μLの水に対する滑落角が20°以下である請求項1から4のいずれかに記載の布帛。
  6. 前記撥水剤がフッ素原子を含まない撥水剤であり、3μLの水に対する接触角が135°以上であり、20μLの水に対する滑落角が30°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の布帛。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の布帛を用いてなる繊維製品。
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