JP2019134540A - 振動発電装置および非線形振動子 - Google Patents
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Abstract
【課題】発電能力が高く且つ小型の振動発電装置および非線形振動子を提供する。【解決手段】振動発電装置1は、非線形振動子50と、振動源100から非線形振動子50に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する発電機Gと、発電機Gから入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路18と、を備える。非線形振動子50は、筒体56と、筒体56内にその筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石14と、筒体56における可動磁石14が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石51、52と、を有する。可動磁石14の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石14の一方側に位置する固定磁石51、52の可動磁石14側の磁極とが異なり、可動磁石14と固定磁石51、52との間に磁気ばねが形成されている。【選択図】図3
Description
本発明は、振動発電装置および非線形振動子に関する。
IoT等で使用される環境発電の一つである共振型の振動発電装置では、電気機械変換器を組み込んだ振動子を機器、装置などの振動源からの振動によって共振させることで振動源の運動エネルギの一部を電気エネルギに変換する。このような振動発電装置としては、電気機械変換器として、電磁型変換器を用いたもの、圧電素子を用いたもの、磁歪素子を用いたものなどが考案され、また、振動子として、板バネ、コイルばね、振り子等をばね要素として用いた線形振動子を有するものが考案されている。
また、永久磁石による吸引力や斥力を復元力として用いる磁気ばねを用いた振動発電装置も提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。磁気ばねは強い非線形性を有するばねであるが、これらの従来技術はその非線形性を積極的に使うものではなく、小型軽量で高信頼性のばね機構としての位置付けに留まっている。
特許文献1、2に記載された振動発電装置では、振動源の振動周波数を振動子の固有振動周波数と一致させて振動子を共振させることにより、振動子の応答振動振幅を大きくして発電電力を増加させる。さらに、発電性能を向上させるためには、振動子の機械損失を低くする、即ち、振動子の機械的Q値(以降、単にQ値という)を高く設計することが好ましい。但し、Q値が高くなると、その分、振動子の固有振動数をピークとした発電電力の周波数特性を示すプロファイルが鋭くなる。そのため、振動源の振動周波数が振動子の固有振動数から少し変動しただけで発電性能が大幅に低下してしまう。実際、振動源の多くは、振動周波数が一定ではないため、特許文献1、2に記載された振動発電装置では、Q値を高くすることのみによる発電電力の増加には限界があった。
これに対して、制御回路によって振動源の特性変動に振動子および出力回路の応答を追従させることを特徴とする振動発電装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。この振動発電装置は、電磁型変換器を用い、振動源の振幅変動に応じて電磁型変換器の変換特性を調節する。ところが、この振動発電機は、振動源の周波数の変動に応じて変換特性を調節することができない。また、振動源の振動周波数、振幅、位相の変化に対応して最適な発電を可能とする振動発電装置が提案されている(例えば特許文献4参照)。この振動発電装置は、共振周波数の異なる複数の共振型可変容量を備えており、振動源の振動周波数が変動した場合、電気エネルギが最も大きくなる共振型可変容量を選択することにより振動周波数の変動に追従する。但し、振動源の振動周波数が、選択できる共振型可変容量の共振周波数から外れている場合、十分な電気エネルギを得ることができない虞がある。
また、能動制御によって任意の振動源に対して共振状態を実現する振動発電装置が提案されている(例えば特許文献5参照)。ところが、この振動発電装置の場合、振動源の運動を検出するためのセンサを別途設ける必要がある。従って、振動発電装置の構成が複雑になったり大型化したりする虞がある。
これに対して、非線形ばねとして磁気ばねを用いた磁気ばね振動子と、磁気ばね振動子に与えられた力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える振動発電装置が提案されている(例えば特許文献6、非特許文献1参照)。非線形ばねは、その等価剛性が変形量に依存して変化する性質を有する。例えば、非線形ばねである漸硬ばねは、その変形量とそれに伴う復元力との関係を表す曲線の傾きがその変形量の増加に伴い増加する。この漸硬ばねは、その等価剛性が変形量の増加とともに増大し、そのばね定数により決まる等価的な固有振動数も変形量の増加に対して単調増加する、いわゆるハードニング特性を示す。このため、漸硬ばねを有する非線形振動子の周波数応答特性は、共振峰が高周波数側に折れ曲がった形状を示し、その分、共振周波数帯域の幅が広がっている。即ち、非線形振動子は、線形振動子に比べて広い共振周波数帯域を有する。これにより、非線形振動子を備える振動発電装置は、線形振動子を備える振動発電装置に比べて、出力電力が比較的高い振動周波数帯域の幅が広いという特徴を有する。
特許文献6に記載された振動発電装置は、円筒状の筒体内にその筒軸方向へ移動自在に配置された可動磁石と、筒体の筒軸方向における両端部それぞれにおいて可動磁石に対して同極が対向するように配置された2つの固定磁石と、を有する非線形振動子である磁気ばね振動子を備える。この磁気ばね振動子では、筒体内において、可動磁石に2つの固定磁石から磁力による斥力が作用することにより、可動磁石と2つの固定磁石それぞれとの間に磁気ばねが形成されている。そして、可動磁石と2つの固定磁石それぞれとの間に作用する斥力の大きさは、可動磁石と2つの固定磁石それぞれとの間の距離の2乗に反比例して増大する。即ち、可動磁石と2つの固定磁石それぞれとの間に形成される磁気ばねは、2つの固定磁石それぞれから可動磁石に作用する斥力が釣り合う平衡点からの可動磁石の変位量が大きいほどばね定数が大きくなるいわゆるハードニング特性を示す。
ところで、角周波数ωLで共振する磁気ばね振動子の最大変位振幅Xについて、下記式(1)の関係式が成立する。
ここで、aは振動源の加速度振幅、ζmは機械的減衰比、ζeは電気的減衰比を示す。
式(1)の右辺の最大変位振幅の上限値は、振動源の加速度振幅aと機械減衰比ζm(概ね0.01程度)とで決まる。そして、磁気ばね振動子の共振周波数帯域を広げるためには、磁気ばね振動子の磁気ばねの変形量が少なくとも式(1)の右辺で表される最大変位振幅の上限値に相当する変形量に至るまでの間に、磁気ばねのばね定数が大きく変動するように、磁気ばねを設計する必要がある。
M. A. Karami, D. J. Inman, Nonlinear Hybrid Energy Harvesting Utilizing a Piezo-Magneto-Elastic Spring, Proceedings of SPIE, Vol. 7643, 76430U (2010) pp. 1-11.
しかしながら、特許文献6に記載された磁気ばね振動子では、可動磁石の変位量に対する可動磁石と固定磁石との間に形成される磁気ばねのばね定数の変化量を十分大きくするには、2つの固定磁石の間の距離をある程度大きくする必要がある。従って、その分、筒体の筒軸方向の長さを長くする必要があるため、磁気ばね振動子を含む振動発電装置全体が大型化してしまう。さらに、2つの固定磁石の間で可動磁石を十分大きく変位させる必要があるため、前述の最大変位振幅の上限値を大きくする条件、すなわち、より大きな加速度振幅を持つ、あるいは、より低い振動数を持つ振動源でないと効果が発揮できない虞があった。
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、発電能力が高く且つ小型の振動発電装置および非線形振動子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る振動発電装置は、
筒体と、前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石と、前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える。
筒体と、前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石と、前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える。
他の観点から見た本発明に係る振動発電装置は、
筒体と、複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える。
筒体と、複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える。
他の観点から見た本発明に係る非線形振動子は、
筒体と、
前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石と、
前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている。
筒体と、
前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石と、
前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている。
他の観点から見た本発明に係る非線形振動子は、
筒体と、
複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、
前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている。
筒体と、
複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、
前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている。
本発明によれば、筒体における可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石を有し、可動磁石の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石の一方側に位置する固定磁石の可動磁石側の磁極とが異なる非線形振動子を備える。また、本発明によれば、筒体における可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石を有し、複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、複数の可動磁石の個数が奇数の場合、可動磁石複合体の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石複合体の一方側に位置する固定磁石の可動磁石複合体側の磁極とが異なり、複数の可動磁石の個数が偶数の場合、可動磁石複合体の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石複合体の一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一である非線形振動子を備える。これにより、可動磁石の変位量に対する可動磁石と固定磁石との間に形成される磁気ばねのばね定数の変化量を大きくすることができるので、非線形振動子の共振周波数帯域を広げながらも筒体の筒軸方向の長さを短縮することができる。従って、従来の非線形振動子と比較して、同じ入力加速度レベルに対してより広い振動周波数帯域における発電能力を高めつつ、非線形振動子を含む振動発電装置全体を小型化することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る振動発電装置について図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係る振動発電装置は、振動源の振動を質量要素と非線形ばね要素とを有する非線形振動子へ伝達することにより非線形振動子を機械的に共振させ、このとき非線形振動子に与えられた力学的エネルギを電気機械変換器により電気エネルギに変換して出力するものである。非線形ばね要素は、漸硬特性または漸軟特性を有するものである。この振動発電装置では、振動源に取り付けられた非線形振動子を振動源と共振させることにより質量要素に振動源に対する相対的な運動エネルギを発生させ、発生した運動エネルギを電気機械変換器によって電気エネルギに変換する。そして、出力回路が、電気機械変換器により得られる電気エネルギを外部負荷または蓄電装置へ出力する。即ち、振動源から非線形振動子に与えられる力学的エネルギが、電気機械変換器により電気エネルギに変換され、出力回路を介して外部負荷または蓄電装置へ出力されるパワーフローを形成するものである。
図1に示すように、本実施の形態に係る振動発電装置1は、非線形振動子50と発電機(電気機械変換器)Gと出力回路18と出力レベル検出回路24と負性インピーダンス変換回路26とを備える。そして、出力回路18は、外部負荷20または蓄電装置22へ電気エネルギを出力する。非線形振動子50は、図2に示すように、質量要素mと非線形ばね要素Sとを有する。なお、図2においてuは振動源100の変位の方向を表し、xは質量要素mの変位の方向を表す。非線形ばね要素Sは、漸硬特性または漸軟特性を有する。この非線形振動子50は、振動源100に取り付けられる。振動源100としては、例えば動作する機械や動く構造体、人等振動するものが挙げられる。発電機Gは、振動源100から非線形振動子50に与えられた力学(機械)的エネルギを電気エネルギに変換する。つまり、発電機Gは、振動源100から非線形振動子50へ振動を伝達することにより非線形振動子50が共振振動する際の運動エネルギを電気エネルギに変換してインピーダンス要素R18へ出力する。インピーダンス要素R18は、出力回路18、外部負荷20および蓄電装置22を含む。これにより、振動源100から発電機Gを介して出力回路18へ至るパワーフローが形成される。ここで、非線形振動子50が共振する振動周波数の帯域は、振動源100の主要な振動周波数の帯域が含まれるように設定されている。
図1に戻って、出力回路18は、発電機Gから入力される電気エネルギを、外部負荷20および/または蓄電装置22へ出力する。出力レベル検出回路24は、出力回路18の出力レベルを検出する、負性インピーダンス変換回路26は、出力レベル検出回路24の出力に応じて、発電機Gから見た出力側のインピーダンスを負にする。これにより、出力回路18から発電機Gを介して非線形振動子50へエネルギが還流し、非線形ばね要素Sが励振される。なお、出力レベル検出回路24は出力回路18の出力レベルのかわりに非線形振動子50の変位や速度を検出するセンサ出力を用いて出力レベルを判定する構成をとることもできる。
ここで、本実施の形態に係る振動発電装置1は、具体的には例えば図3に示すような構成を有する。なお、図2にも示したように、図3においてuは振動源100の振動変位の方向を表し、xは可動磁石14の変位の方向を表す。
非線形振動子50は、筒体56と、筒体56の筒軸方向の両端部で、筒体56の外側に配置された一対の固定磁石51、52と、筒体56内に配置された可動磁石14と、を有し、振動源100に機械的に取り付けられている。筒体56は、例えば図4(A)に示すような円筒形状を有する。固定磁石51、52は、円環状の形状を有し、筒体56の筒軸方向における両端部を囲繞するように配置されている。可動磁石14は、筒体56内に筒軸方向にできる限り摩擦が小さくなるように移動自在に配置されている。本実施の形態での固定磁石51、52と可動磁石14とは、いずれも永久磁石である。固定磁石51、52は、図4(B)に示すように、筒体56における可動磁石14が移動する、もしくは移動範囲を筒軸に延長した部分を含む体積範囲の外側の位置、言い換えると、可動磁石14の筒軸J1方向への投影領域A1の外側の位置に配置されている。即ち、固定磁石51、52は、筒軸J1方向において可動磁石14を挟む両側の2箇所における、可動磁石14の筒軸J1方向への投影領域A1の外側の位置それぞれに円周状に配置されている。図3に示すように、可動磁石14の筒軸J1方向における上方の磁極(N極)と可動磁石14の上側に位置する固定磁石52の可動磁石14側の磁極(S極)とが異なっており、可動磁石14が固定磁石52に近づき始めると吸引力が働き、両者の位置が重なっていくと斥力が働く。つまり、可動磁石14と固定磁石52との間に磁気ばねが形成されている。また、可動磁石14の筒軸J1方向における下方の磁極(S極)と可動磁石14の下側に位置する固定磁石51の可動磁石14側の磁極(N極)とが異なっており、可動磁石14と固定磁石51との間にも同様に磁気ばねが形成されている。ここで、可動磁石14は、図2における質量要素mに相当し、可動磁石14と固定磁石51、52それぞれとの間に形成された磁気ばねは、図2における非線形ばね要素Sに相当する。
非線形振動子50は、図5(A)に示すように、横軸に示す変位xの絶対値が小さい時は縦軸に示す復元力F(x)の傾きが小さいが、変位xの絶対値が大きくなるに従って次第に縦軸に示す復元力F(x)の傾きが大きくなるいわゆるハードニング特性を有する磁気ばね構造により質量要素である可動磁石14が支持された構成を有する。図5(B)では、横軸に振動周波数を示し、縦軸に非線形振動子50の振動振幅a0を示している。非線形振動子50の振動振幅a0の振動周波数依存性は、図5(B)の曲線S2に示すようになる。ここで、図5(B)は、正弦波加振に対する非線形振動子50の振動振幅a0を示しており、線形振動子の振動振幅a0の振動周波数依存性は、曲線S1に示すように、共振周波数(ωE)で最大となり共振周波数の両側で急に低下している。これに対して、非線形振動子50の振動振幅a0の振動周波数依存性は、共振峰が高周波側に折れ曲がったような曲線S2で示される。非線形振動子50は、この共振峰の折れ曲がりにより、振動振幅a0が規定の振幅(例えば最大振幅の1/√2に相当する振幅)以上になる振動周波数の帯域(以下、「共振周波数帯域」と称する。)BW2は、線形振動子の共振周波数帯域BW1よりも広くなる。これにより、本実施の形態に係る振動発電装置1は、線形振動子を用いた振動発電装置に比べて、広い共振周波数帯域で高い発電能力を実現できる。
また、図5(B)に示すように、非線形振動子50の振動周波数が周波数帯域BW3(以下、「複数動作点共存帯域」と称する。)に含まれる場合、非線形振動子50は、比較的安定な大振幅振動動作点(図5(B)中のM1参照)および小振幅振動動作点(図5(B)中のM2参照)を含む複数の動作点をとりうる。つまり、非線形振動子50の振動周波数が複数動作点共存帯域BW3に含まれる場合、非線形振動子50は、振動源100の振動の初期条件に応じて大振幅振動動作点M1と小振幅振動動作点M2とのいずれかに収束する。また、振動源100の振動状態により、非線形振動子50のとりうる動作点が大振幅振動動作点M1と小振幅振動動作点M2との間で移り変わるいわゆるジャンプ現象が発生することが知られている。非線形振動子50の動作点が小振幅振動動作点M2で安定した場合、振動発電装置の発電能力が著しく低下してしまう。そこで、本実施の形態に係る振動発電装置では、負性インピーダンス変換回路26を用いて、非線形振動子50の動作点を、大振幅振動動作点M1で安定させる。
図3に戻って、発電機Gは、電磁誘導型の発電機であり、非線形振動子50の筒体56に巻回されたコイル16を有する。そして、発電機Gは、このコイル16を介して、振動源100から非線形振動子50に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換して出力する。
出力回路18は、発電機Gから入力される電気エネルギを蓄電装置22および外部負荷20へ出力する。出力回路18は、整流回路BR18と、平滑用のコンデンサC18と、を有する。整流回路BR18は、ダイオードブリッジから構成され、その入力端がコイル16の2つの出力端間に接続されている。コンデンサC18は、整流回路BR18の出力端間に接続されている。発電機Gから入力される交流は、整流回路BR18およびコンデンサC18により整流平滑されて直流に変換される。なお、出力回路18は、例えばコンデンサC18の後段に接続され、DC−DCコンバータや力率改善回路を含み、コンデンサC18の両端間に生じる直流電圧を昇圧または降圧する電力変換回路(図示せず)を有するものであってもよい。出力回路18、外部負荷20および蓄電装置22は、発電機Gに接続されるインピーダンス要素R18と看做すことができる。
蓄電装置22は、二次電池、スーパキャパシタ等の電力を蓄積できるデバイスから構成され、出力回路18により電力を蓄積される。また、蓄電装置22は、負性インピーダンス変換回路26に接続され、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された状態において負性インピーダンス変換回路26へ電力を供給する。
負性インピーダンス変換回路26は、オペアンプOP26と、抵抗R261、R262、R263と、から構成されている。オペアンプOP26のプラス側の入力端は、スイッチ38を介してコイル16の一端側に接続され、マイナス側の入力端は、抵抗R263を介してコイル16の他端側に接続されている。また、オペアンプOP26の出力端は、抵抗R261を介してプラス側の入力端に接続され、抵抗R262を介してマイナス側の入力端に接続されている。更に、オペアンプOP26は、蓄電装置22に接続され、蓄電装置22から駆動電力の供給を受ける。負性インピーダンス変換回路26の負性抵抗値は、スイッチ38が負性インピーダンス変換回路26の側に接続されたときに発電機Gから見た出力側のインピーダンスが負の値となるように設定されている。即ち、負性インピーダンス変換回路26は、発電機Gに接続された状態において、発電機Gから見た出力側のインピーダンスを負にする。
スイッチ38は、n型トランジスタ、FET等の半導体素子、またはリードリレーのようなスイッチング素子から構成された3接点スイッチであり、出力レベル検出回路24により開閉される。
出力レベル検出回路24は、出力回路18の出力レベルが予め設定されたレベル閾値以上の場合、スイッチ38を出力回路18側に接続して、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに非接続の状態にする。一方、出力レベル検出回路24は、出力回路18の出力レベルがレベル閾値未満の場合、スイッチ38を負性インピーダンス変換回路26側に接続して、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された状態にする。出力レベル検出回路24は、比較器241と、駆動回路242と、定電圧回路243と、を有する。定電圧回路243は、蓄電装置22から電力供給を受けて、レベル閾値に相当する大きさの電圧を出力する。比較器241のプラス側の入力端は、定電圧回路243に接続され、比較器241のマイナス側の入力端は、整流回路BR18の高電位側の出力端に接続されている。比較器241のプラス側の入力端には、定電圧回路243からレベル閾値に相当する大きさの電圧が入力される。比較器241のマイナス側の入力端には、出力回路18の出力電圧が入力される。比較器241は、マイナス側の入力端の電圧値がプラス側の入力端のレベル閾値未満の場合、イネーブル信号を駆動回路242へ出力する。一方、比較器241は、マイナス側の入力端の電圧値がプラス側の入力端のレベル閾値以上の場合、ディセーブル信号を駆動回路242へ出力する。駆動回路242は、比較器241からイネーブル信号が入力されると、スイッチ38を負性インピーダンス変換回路26側に接続し、比較器241からディセーブル信号が入力されると、スイッチ38を出力回路18側に接続する。
ここで、本実施の形態に係る振動発電装置1の動作について説明する。出力レベル検出回路24は、出力回路18の出力レベルがレベル閾値以上の場合、非線形振動子50の動作点が大振幅振動動作点で維持されているとして、スイッチ38を出力回路18側に接続して、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gから切り離された状態で維持する。これにより、発電機Gから出力される電気エネルギは、出力回路18を介して外部負荷20または蓄電装置22へ出力される。一方、出力レベル検出回路24は、出力回路18の出力レベルがレベル閾値未満の場合、非線形振動子50の動作点が小振幅振動動作点に移行する状態になったとして、スイッチ38を負性インピーダンス変換回路26側に接続して、負性インピーダンス変換回路26が発電機Gに接続された状態にする。これにより、発電機Gから見た出力側のインピーダンスが負に転じる。このとき、出力回路18から発電機Gを介して非線形振動子50へエネルギが還流し、非線形振動子50の非線形ばね要素Sが励振され、非線形振動子50の動作点が大振幅振動動作点で維持される。このようにして、振動発電装置1は、出力回路18の出力レベルに応じて、負性インピーダンス変換回路26の発電機Gへの接続状態を切り替えることにより、非線形振動子50の動作点を、大振幅振動動作点で安定させる。
次に、本実施の形態に係る振動発電装置1の特徴について、比較例に係る振動発電装置と比較しながら説明する。比較例に係る振動発電装置は、図6に示すように、筒体56と、筒体56内に筒体56の筒軸方向に移動自在に配置された可動磁石14と、2つの固定磁石9051、9052と、を有する非線形振動子9050を備える。なお、図6において、振動発電装置1と同様の構成については図3と同一の符号を付している。
固定磁石9051、9052は、任意のものを選択することができるが、ここでは簡単化のために、いずれも円柱状であり同じものを選択する。そして、固定磁石9051、9052は、筒体56内であって、筒体56の筒軸方向における両端部のそれぞれに固定されて設置されている。固定磁石9051は、可動磁石14側の磁極(S極)が可動磁石14における固定磁石9051側の磁極(S極)と同種の磁極となるように配置されている。また、固定磁石9052は、可動磁石14側の磁極(N極)が可動磁石14における固定磁石9052側の磁極(N極)と同種の磁極となるように配置されている。可動磁石14は、固定磁石9051、9052との間に生じる斥力により筒軸方向に非接触保持されている。このとき、可動磁石14と固定磁石9051、9052それぞれとの間には、磁気ばねが形成されている。
比較例に係る非線形振動子9050について、可動磁石14と固定磁石9051、9052それぞれとの間に形成される磁気ばねから可動磁石14が受ける復元力FC(x)は、下記式(2)乃至(4)のように近似的に表される。
ここで、式(2)乃至式(4)のxは、筒体56の筒軸方向において固定磁石9051、9052それぞれからの距離が等しい位置を原点位置Oとしたときの原点位置Oからの可動磁石14の筒軸方向の変位を示す。なお、以下において、適宜xが正の側にある固定磁石9052を正側の固定磁石、xが負の側にある固定磁石9051を負側の固定磁石と称する。また、Lは、筒体56の筒軸方向における2つの固定磁石9051、9052の間の距離(第1距離)の半分に相当する距離(第2距離)を示す。更に、h1は、筒体56の筒軸方向における可動磁石14の長さを示し、h2は、筒体56の筒軸方向における固定磁石9051、9052の長さを示す。また、Brは、可動磁石14、および固定磁石9051、9052の残留磁束密度、S1は、可動磁石14の固定磁石9051、9052に対向する面の面積、S2は、固定磁石9051、9052の可動磁石14に対向する面の面積、μ0は真空中の透磁率を示す。
式(2)の右辺の第1項fC(L−x)は、可動磁石14が正側の固定磁石9052から受ける復元力を示し、式(2)の右辺の第2項−fC(L+x)は、可動磁石14が負側の固定磁石9051から受ける復元力を示す。fC(x)は、互いに距離xだけ離れた、可動磁石14と固定磁石9051または9052との間で作用する斥力を、また、式(4)のgC(x)は、互いに距離xだけ離れた、可動磁石14の1つの磁極と、それと同極の、固定磁石9051または固定磁石9052の一つの磁極との間で作用する斥力を示す。
比較例に係る非線形振動子9050について、可動磁石14が正側の固定磁石9052から受ける復元力fC(L−x)の、可動磁石14の変位xへの依存性を示すグラフを図7(A)に示す。なお、図7(A)において、xが「0」とは、可動磁石14が原点位置Oに位置することを示す。図7(A)に示すように、可動磁石14が正側の固定磁石9052から受ける復元力fc(L−x)は、可動磁石14の変位xに関わらず常に正である。従って、可動磁石14は、正側の固定磁石9052のみで保持されないことが判る。なお、可動磁石14が負側の固定磁石9051から受ける復元力の可動磁石14の変位x依存性は、図7(A)のグラフに対して原点0を中心とした点対称の関係にあるグラフで表される。即ち、可動磁石14が負側の固定磁石9051から受ける復元力−fc(L+x)は、可動磁石14の変位xに関わらず常に負である。従って、可動磁石14は、負側の固定磁石9051のみでも保持されないことが判る。
また、比較例に係る非線形振動子9050について、筒体56の筒軸方向における2つの固定磁石9051、9052の間の距離の半分に相当する距離Lを変化させた場合それぞれについて、可動磁石14が受ける復元力FC(x)の可動磁石14の変位xに対する依存性を図7(B)に示す。図7(B)中の曲線SCL1、SCL2、SCL3は、それぞれ距離LをL1、L2、L3(L1<L2<L3)に設定したときに対応する。ここで、可動磁石14が原点位置Oに位置する場合における磁気ばねのばね定数k0は、下記式(5)で表される。
ここで、FC’(x)、fC’(x)は、FC(x)、fC(x)のxでの微分を表す。
比較例に係る非線形振動子9050では、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態で、可動磁石14と固定磁石9051、9052それぞれとの間で作用する斥力同士が釣り合う。そして、可動磁石14は、原点位置Oで筒体56の筒軸方向に対して安定的に保持される。この非線形振動子9050では、距離Lが長くなるほど、ばね定数k0は「0」に近づく。これに伴い、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態での前述の磁気ばねのばね定数k0と可動磁石14が固定磁石9051、9052のいずれか一方に最も近づいた状態でのばね定数kendとの差分が大きくなる。即ち、この非線形振動子9050では、距離Lが大きくなるほど、顕著なハードニング特性を示すことが判る。但し、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態でのばね定数k0を「0」にするには、理論上、距離Lを無限大にする必要があり、距離Lを長くすることによるハードニング特性の向上には限度がある。
一方、本実施の形態に係る非線形振動子50では、前述のように、固定磁石51、52がいずれも円環状であり、図8に示すように、筒体56内における筒体56の筒軸方向における両端部それぞれにおいて筒体56を囲繞するように配置されている。そして、固定磁石51は、可動磁石14側の磁極(N極)が可動磁石14における固定磁石51側の磁極(S極)と異なる磁極となるように配置されている。また、固定磁石52は、可動磁石14側の磁極(S極)が可動磁石14における固定磁石52側の磁極(N極)と異なる磁極となるように配置されている。このとき、可動磁石14と固定磁石51、52それぞれとの間には、磁気ばねが形成されている。
本実施の形態に係る非線形振動子50について、簡単化のために固定磁石51、52として同じものを選択した場合に、可動磁石14と固定磁石51、52それぞれとの間に形成される磁気ばねから可動磁石14が受ける復元力FR(x)は、下記式(6)乃至(8)のように近似的に表される。
ここで、式(6)乃至式(8)のxは、筒体56の筒軸方向において固定磁石51、52それぞれからの距離が等しい位置を原点位置Oとしたときの原点位置Oからの可動磁石14の筒軸方向の変位を示す。なお、以下において、適宜xが正の側にある固定磁石52を正側の固定磁石、xが負の側にある固定磁石51を負側の固定磁石と称する。また、Lは、筒体56の筒軸方向における2つの固定磁石51、52の間の距離の半分に相当する距離を示す。更に、h2は、筒体56の筒軸方向における固定磁石51、52の長さを示す。更に、S2は、固定磁石51、52の可動磁石14側の面の面積を示す。また、Rは、固定磁石51、52の外径と内径との平均値である平均半径を示す。なお、h1、Br、S1、μ0は、前述の式(2)乃至(4)の場合と同様である。
式(6)の右辺の第1項fR(L−x)は、可動磁石14が正側の固定磁石52から受ける復元力を示し、式(6)の右辺の第2項−fR(L+x)は、可動磁石14が負側の固定磁石51から受ける復元力を示す。式(7)のfR(x)は、互いに距離xだけ離れた、可動磁石14と固定磁石51または52との間で作用する斥力を、また、式(8)のgR(x)は、互いに距離xだけ離れた、可動磁石14の一つの磁極と、それと同極の、固定磁石51または52の一つの磁極との間で作用する斥力を示す。
本実施の形態に係る非線形振動子50について、可動磁石14が正側の固定磁石52から受ける復元力fR(L−x)の、可動磁石14の変位xへの依存性を示すグラフを図9(A)に示す。なお、図9(A)において、xが「0」とは、可動磁石14が原点位置Oに位置することを示す。図9(A)に示すように、可動磁石14が正側の固定磁石52から受ける復元力fR(L−x)は、ゼロクロス点xfR0を有するグラフで表され、また、ゼロクロス点xfR0における傾きが正であり、ゼロクロス点xfR0よりも小さい位置xでは可動磁石14が正側の固定磁石52から受ける力は吸引力であり、ゼロクロス点xfR0よりも大きい位置xでは可動磁石14が正側の固定磁石52から受ける力は斥力である。従って、可動磁石14は、ゼロクロス点xfR0において、正側の固定磁石52のみで保持可能であることが判る。なお、可動磁石14が負側の固定磁石51から受ける復元力の可動磁石14の変位x依存性は、図9(A)のグラフに対して原点0を中心とした点対称の関係にあるグラフで表される。即ち、可動磁石14が負側の固定磁石51から受ける復元力−fR(L+x)は、ゼロクロス点を有するグラフで表され、また、ゼロクロス点における傾きが正である。従って、可動磁石14は、負側の固定磁石51のみでも保持可能であることが判る。
ここで、可動磁石14が原点位置Oに位置する場合における磁気ばねのばね定数k0は、下記式(9)で表される。
ここで、FR’(x)、fR’(x)は、FR(x)、fR(x)のxでの微分を表す。
ここで、本実施の形態に係る非線形振動子50について、互いに距離xだけ離れた可動磁石14と固定磁石51または52の間で作用する斥力fR(x)の距離xへの依存性を図9(B)に示す。なお、xmは、斥力fR(x)を表すグラフの極大点に対応する距離に相当する。図9(B)に示すように、可動磁石14が受ける斥力fR(x)を示すグラフは、可動磁石14と固定磁石51または52との距離が基準距離xeに相当する点に極小点を有する。すなわち、可動磁石14に作用する斥力fR(x)を示すグラフの傾きfR’(x)は、基準距離xeの前後で負から正に転じる。このことと式(9)より、距離Lの大きさとfR(x)のグラフの極小点に対応する基準距離xeとの大小関係により、可動磁石14の原点位置Oにおけるばね定数k0の符号が異なることになる。ここで、非線形振動子50について、筒体56の筒軸方向における2つの固定磁石51、52の間の距離の半分に相当する距離Lを変化させた場合それぞれについて、可動磁石14が受ける復元力FR(x)の可動磁石14の変位xへの依存性を図10(A)に示す。図10(A)中の曲線SRL1、SRL2、SRL3は、それぞれ距離LをL1(<xe)、L2(=xe)、L3(>xe)に設定したときに対応する。図10(A)に示すように、距離Lが基準距離xeよりも小さい場合、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は正となる。また、距離Lが基準距離xeと等しい場合、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は0となる。更に、距離Lが基準距離xeよりも大きい場合、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は負となる。また、距離Lが基準距離xeよりも大きい場合、原点位置Oよりも正側、負側のそれぞれに、可動磁石14が安定的に保持される位置x+SRL3、x−SRL3が存在する。
このように、本実施の形態に係る非線形振動子50では、例えば距離Lを基準距離xeと等しくすることにより、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0を0とすることができる。この場合、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態での前述の磁気ばねのばね定数k0と可動磁石14が固定磁石51、52のいずれか一方に最も近づいた状態でのばね定数kendとの差分が極めて大きくなる。即ち、この非線形振動子50では、距離Lが基準距離xeに等しく、または基準距離xeよりわずかに小さく設定されるだけで、顕著なハードニング特性を示すことが判る。
ここで、比較例に係る非線形振動子9050の可動磁石14が受ける復元力FC(x)と、本実施の形態に係る非線形振動子50の可動磁石14が受ける復元力FR(x)と、を図10(B)に示す。ここで、筒体56の筒軸方向における、固定磁石51、52と固定磁石9051、9052との長さは等しい。図10(B)に示すように、本実施の形態に係る非線形振動子50は、比較例に係る非線形振動子9050に比べて、より顕著なハードニング特性を有することが判る。即ち、非線形振動子50は、非線形振動子9050に比べて、可動磁石14の変位xに対する可動磁石14が受ける復元力FR(x)の増加率が高い。従って、本実施の形態に係る非線形振動子50によれば、可動磁石14の変位xが、比較例に係る非線形振動子9050の可動磁石14の変位xの1/6程度にも関わらず、比較例に係る非線形振動子9050と同程度のばね定数k0を得ることができる。即ち、本実施の形態に係る非線形振動子50によれば、比較例に係る非線形振動子9050に比べて、距離Lを短くしながらも、ばね定数k0とばね定数kendとの差分を大きくする、つまり、ハードニング特性を向上することができる。
ここで、可動磁石14が原点位置Oに位置する状態でのばね定数k0と、可動磁石14が最も固定磁石51または固定磁石52に近づいた状態でのばね定数kendと、ばね定数k0をばね定数kendで除して得られる値k0/kend(以下、「非線形指標」と称する。)と、の距離L依存性を図11に示す。なお、図11では、横軸が距離L2を基準距離xeで除して得られる値L/xeと(以下、「規格化距離」と称する。)している。ここで、非線形指標k0/kendが正の場合、非線形振動子50が単安定性であり、非線形指標k0/kendが負の場合、非線形振動子50が双安定性であることを示している。図11に示すように、規格化距離L/xeが1より小さい場合、非線形指標k0/kendは正になり、規格化距離L/xeが1より大きい場合、非線形指標k0/kendは負になる。即ち、非線形振動子50は、距離Lが基準距離xeに等しい状態を境目にして、単安定性または双安定性に変化することが判る。
非線形振動子50が単安定性である場合、規格化距離L/xeが1の近傍において、k0が「0」に近づきkendとの差が大きくなるため強い非線形性を示す。具体的には、規格化距離L/xeが、0.9以上且つ1未満の場合、ばね定数kendがばね定数k0の10倍以上となるようなハードニング特性を実現できることが判る。また、規格化距離L/xeが、0.8以上且つ0.9未満の場合でも、ばね定数kendがばね定数k0の約2.5倍以上となるようなハードニング特性を実現できることが判る。即ち、距離Lを基準距離xeと等しくするか或いは、基準距離xeよりもその0%超20%以下に相当する距離だけ短い距離に設定することにより、ばね定数kendがばね定数k0の少なくとも約2.5倍以上となるようなハードニング特性を実現することができる。一方、規格化距離L/xeが、0.8よりも小さくなると、k0が大きくなり非線形指標k0/kendが1に近づいていく。そして、規格化距離L/xeが、0.7程度以下になると、線形ばねと同様の特性を示すようになる。
また、規格化距離L/xeが1.0超且つ1.2以下となるように距離Lを設定すれば、非線形振動子50は双安定性となる。即ち、距離Lが基準距離xeに比べて基準距離xeの0%超20%以下に相当する距離だけ長い距離に設定されると、非線形振動子50が双安定性となる。即ち、2つの固定磁石51、52の間において、可動磁石14と2つの固定磁石51、52それぞれとの間に形成される磁気ばねの復元力が0となる可動磁石14の平衡位置が3箇所形成され、そのうち中央の1箇所は不安定、両端の2箇所は安定な平衡位置となる。そして、2つの固定磁石51、52の間におけるこの磁気ばねの2箇所の安定平衡位置間の距離(第3距離)は、振動源100の振動振幅の20%以上且つ80%以下に設定するのが好ましく、良好な発電効率が得られる。
このように、本実施の形態に係る非線形振動子50は、可動磁石14と2つの固定磁石51、52それぞれとの間に形成される磁気ばねの特性が距離Lの長さによって異なるという特徴を有する。
以上説明したように、本実施の形態に係る振動発電装置1は、筒体56における可動磁石14が移動する体積範囲の外側の位置、即ち、可動磁石14の筒体56の筒軸方向への投影領域A1の外側の位置に配置された固定磁石51、52を有し、可動磁石14の一方の磁極と可動磁石14の一方側に位置する固定磁石51、52の可動磁石14側の磁極とが異なる非線形振動子50を備える。これにより、可動磁石14の変位量に対する可動磁石14と固定磁石51、52との間に形成される磁気ばねのばね定数の変化量を大きくすることができるので、非線形振動子50の共振周波数帯域を広げながらも筒体56の長さを短縮することができる。従って、振動源100の広い振動周波数帯域において振動発電装置1の発電能力を高めつつ、非線形振動子50を含む振動発電装置1全体の小型化が図れる。また、本実施の形態に係る振動発電装置1は、例えば線形振動子を用いた振動発電装置に比べて、振動源100の広い振動周波数帯域において高い発電能力を維持できる。
また、本実施の形態に係る振動発電装置1によれば、前述の距離Lが、前述の基準距離xeに比べて、基準距離xeの0%以上且つ20%以下に相当する距離だけ短い距離に設定することができる。この場合、前述のばね定数kendがばね定数k0の少なくとも約2.5倍以上となるようなハードニング特性を実現することができる。更に、本実施の形態に係る振動発電装置1によれば、前述の距離Lが、前述の基準距離xeに比べて、基準距離xeの0%以上且つ10%以下に相当する距離だけ短い距離に設定することができる。この場合、前述のばね定数kendがばね定数k0の10倍以上となるようなハードニング特性を実現することができる。従って、筒体56の筒軸方向における長さを比較的短くしつつ、非線形振動子50の共振周波数帯域を低周波数側へ広げることができるので、振動源100の振動周波数が比較的低くても高い発電効率を得ることができる。
更に、本実施の形態に係る振動発電装置によれば、前述の距離Lを、前述の基準距離xeに比べて、基準距離xeの0%超20%以下に相当する距離だけ長い距離に設定することにより、非線形振動子50が双安定性となる。そして、2つの固定磁石51、52の間におけるこの磁気ばねの2箇所の安定平衡位置間の距離が、振動源100の振動振幅の20%以上且つ80%以下に設定されることにより、非線形振動子50が、比較的広い周波数帯域において安定して動作する。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば図12に示すように、可動磁石として可動磁石複合体3014を備えた非線形振動子3050を備える振動発電装置であってもよい。
非線形振動子3050は、筒体56と、筒体56の筒軸方向の両端部で、筒体56の外側に配置された一対の固定磁石51、52と、筒体56内に配置された可動磁石複合体3014と、を有する。なお、図12において、実施の形態と同様の構成については図8と同一の符号を付している。可動磁石複合体3014は、円柱形状を有し、筒体56内に筒軸J31方向に自在に移動可能に封止されている。固定磁石51、52は、実施の形態と同様に、円環状の形状を有し、可動磁石複合体3014の両端の磁極と同極が対向するように筒体56の両端部に嵌め込まれた形で固定されている。
可動磁石複合体3014は、2つの可動磁石3141、3142を、それらの同極同士が対向するように結合した複合磁石の形態をとっている。可動磁石複合体3014は、例えば非磁性体の円筒形状シェル(図示せず)の中に、2つの円筒形状の可動磁石3141、3142を軟磁性体から形成されたセパレータ3143を介して圧入して接着剤により封止することにより形成される。
次に、本変形例に係る振動発電装置の特徴について、前述の比較例に係る振動発電装置と比較しながら説明する。
本実施の形態に係る非線形振動子50について、簡単化のために固定磁石51、52として同じものを選択した場合に、可動磁石14と固定磁石51、52それぞれとの間に形成される磁気ばねから可動磁石複合体3014が受ける復元力FRD(x)は、下記式(10)乃至(13)のように近似的に表される。
ここで、式(10)のxは、筒体56の筒軸J31方向において固定磁石51、52それぞれからの距離が等しい位置を原点位置Oとしたときの原点位置Oからの可動磁石複合体3014の筒軸J31方向の変位を示す。なお、以下において、適宜xが正の側にある固定磁石52を正側の固定磁石、xが負の側にある固定磁石51を負側の固定磁石と称する。また、Lは、筒体56の筒軸J31方向における2つの固定磁石51、52の間の距離の半分に相当する距離を示す。更に、式(11)のdは可動磁石複合体3014の2つの可動磁石3141、3142の間の距離である。また、h31は、筒体56の筒軸J31方向における可動磁石3141、3142それぞれの長さを示す。式(13)のS1は、2つの可動磁石3141、3142それぞれの固定磁石51、52に対向する面の面積を示す。さらに、Brは、2つの可動磁石3141、3142および固定磁石51、52の残留磁束密度、μ0は真空中の透磁率を示す。なお、h2、S2、Rは、前述の実施の形態で説明した式(6)乃至(8)の場合と同様である。
式(10)の右辺の第1項fRD(L−x)は、可動磁石複合体3014が正側の固定磁石52から受ける復元力を示し、式(10)の右辺の第2項−fRD(L+x)は、可動磁石複合体3014が負側の固定磁石51から受ける復元力を示す。式(11)のfRD(x)は、互いに距離xだけ離れた、可動磁石複合体3014と固定磁石51または固定磁石52との間で作用する斥力を、式(12)のfR(x)は、可動磁石複合体3014の2つの可動磁石3141、3142のうちの一方である可動磁石3141と、そこから距離xだけ離れた固定磁石52との間で作用する斥力、または、他方である可動磁石3142と、そこから距離xだけ離れた固定磁石51との間で作用する斥力を表す。また、gR(x)は、互いにxだけ離れた、可動磁石複合体3014の2つの可動磁石3141、3142のいずれか1つの磁極と、それと同極の、固定磁石51、52のいずれか1つの磁極の間で作用する斥力を示す。
ここで、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する場合における磁気ばねのばね定数k0は、下記式(14)で表される。
ここで、FRD’(x)、fRD’(x)は、FRD(x)、fRD(x)のxでの微分を表す。
本変形例に係る非線形振動子3050について、互いに距離xだけ離れた可動磁石複合体3014と固定磁石51または52の間で作用する斥力fRD(x)の可動磁石複合体3014の変位xへの依存性を図13に示す。前述の式(11)に示すように、この斥力fRD(x)は、2つの可動磁石3141、3142それぞれに作用する斥力fR(x)の差分に相当する。従って、可動磁石複合体3014が受ける斥力fRD(x)を表すグラフのゼロクロス点xz1は、図9(B)に示した実施の形態に係る非線形振動子50における斥力fR(x)を表すグラフの極大点(距離xmに対応する点)に相当する。また、可動磁石複合体3014が受ける斥力fRD(x)を表すグラフのゼロクロス点xz2は、図9(B)の極小点xeに相当する。図13に示すように、可動磁石複合体3014が受ける斥力fRD(x)を表すグラフは、ゼロクロス点xz1の前後において斥力から吸引力に転じる。このため、非線形振動子3050は、実施の形態で説明した非線形振動子50と同様に、このゼロクロス点xz1において、可動磁石複合体3014が固定磁石51、52のいずれか一方のみで安定に保持される。
また、図13に示すように、可動磁石複合体3014が受ける斥力fRD(x)を表すグラフは、可動磁石複合体3014と固定磁石51、52のいずれか一方との間の距離が基準距離xeに相当するところに極小点を有する。この極小点は、図9(B)に示した可動磁石14に作用する斥力fR(x)を表すグラフの極大点と極小点との間に位置する変曲点に相当する。このため、本変形例に係る基準距離xeは、図9(B)に示す基準距離xeの約1/2の長さになっている。可動磁石複合体3014に作用する斥力fRD(x)を表すグラフの傾きfRD’(x)は、実施の形態で説明した非線形振動子50と同様に、基準距離xeの前後で負から正に転じる。このことと、前述の式(14)で表される関係式とから、本変形例に係る非線形振動子3050は、実施の形態に係る非線形振動子50と同様に、距離Lの大きさと斥力fRD(x)を表すグラフの極小点に対応する基準距離xeとの大小関係に応じて、可動磁石複合体3014の原点位置Oにおけるばね定数k0の符号が異なることになる。即ち、距離Lが基準距離xeよりも小さい場合、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は正となる。また、距離Lが基準距離xeと等しい場合、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は0となる。更に、距離Lが基準距離xeよりも大きい場合、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0は負となる。そして、距離Lが基準距離xeよりも大きい場合、原点位置Oよりも正側、負側のそれぞれに、可動磁石複合体3014が安定的に保持される位置が存在する。すなわち、距離Lが基準距離xeよりも大きい場合、非線形振動子3050は双安定性を有することになる。
このように、本変形例に係る非線形振動子3050では、例えば距離Lを基準距離xeと等しくすることにより、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する状態におけるばね定数k0を0とすることができる。この場合、可動磁石複合体3014が原点位置Oに位置する状態での前述の磁気ばねのばね定数k0と可動磁石複合体3014が固定磁石51、52のいずれか一方に最も近づいた状態でのばね定数kendとの差分が極めて大きくなる。即ち、この非線形振動子3050では、実施の形態に係る非線形振動子50と同様に、距離Lが基準距離xeに等しく設定されるだけで、顕著なハードニング特性を示すことが判る。
ここで、前述の比較例に係る非線形振動子9050の可動磁石14が受ける復元力FC(x)と、実施の形態に係る非線形振動子50の可動磁石14が受ける復元力FR(x)と、本変形例に係る非線形振動子3050の可動磁石複合体3014が受ける復元力FRD(x)とのそれぞれを表したグラフを図14に示す。ここで、筒体56の筒軸J31方向における、固定磁石51、52と固定磁石9051、9052との長さは等しくなっている。図14に示すように、本変形例に係る非線形振動子3050は、実施の形態に係る非線形振動子50に比べて、より小さな変位に対して顕著なハードニング特性を有することが判る。即ち、非線形振動子3050は、非線形振動子50に比べて、可動磁石複合体3014の変位xに対する可動磁石14が受ける復元力FRD(x)の増加率が高い。即ち、本変形例に係る非線形振動子3050によれば、実施の形態に係る非線形振動子50に比べて、距離Lを実施の形態の場合の1/2程度に短くしながらも、ばね定数k0とばね定数kendとの差分を大きくする、つまり、ハードニング特性を向上させることができる。
本構成によれば、可動磁石複合体3014の変位量に対する可動磁石複合体3014と固定磁石51、52との間に形成される磁気ばねのばね定数の変化量を大きくすることができるので、非線形振動子3050の共振周波数帯域を広げながらも筒体56の長さを短縮することができる。従って、非線形振動子3050を含む振動発電装置全体の小型化が図れる。
なお、前述の変形例では、可動磁石複合体3014が、2つの可動磁石3141、3142を有する例について説明したが、可動磁石複合体が有する可動磁石の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。ここで、可動磁石複合体が有する複数の可動磁石は、それぞれの同極同士が対向するように結合されている。そして、可動磁石複合体が有する複数の可動磁石の数が奇数の場合、可動磁石複合体の筒体56の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石複合体の前述の一方側に位置する固定磁石の可動磁石複合体側の磁極とが異なっている。一方、可動磁石複合体が有する複数の可動磁石の数が偶数の場合、可動磁石複合体の筒体56の筒軸方向における一方の磁極と可動磁石複合体の前述の一方側に位置する固定磁石の可動磁石複合体側の磁極とが同一である。
実施の形態では、2つの固定磁石51、52の位置が固定されている構成について説明したが、2つの固定磁石51、52の位置は必ずしも固定されているものに限定されるものではない。例えば、2つの固定磁石51、52の少なくとも一方を筒体56の筒軸方向へ移動可能なように構成した非線形振動子を備える振動発電装置であってもよい。例えば図15に示すように、非線形振動子2050が、固定磁石52を保持し、筒体2056の筒軸方向に移動可能な固定磁石保持部2057を有するものであってもよい。なお、図15において、実施の形態と同様の構成については図3および図8と同一の符号を付している。ここで、筒体2056は、円筒状であり、筒軸方向における一方の端部に第1螺子部2056aが設けられている。そして、固定磁石保持部2057は、筒体2056の第1螺子部2056aが設けられた端部側に配置された固定磁石52を保持し、第1螺子部2056aに螺合する第2螺子部2057aを有する。ユーザは、固定磁石保持部2057を筒体2056に対してその筒軸を中心として回転させることにより、固定磁石保持部2057の筒体2056に対する位置を変更して2つの固定磁石51、52の間の距離を変更することができる。2つの固定磁石51、52の間の距離は、例えば非線形振動子2050を振動源に取り付ける際、その振動源の振動周波数特性に応じて適宜設定してもよい。或いは、振動発電装置の発電効率を観察し、振動発電装置の発電効率が最大となるように2つの固定磁石51、52の間の距離を調節するようにしてもよい。
本構成によれば、2つの固定磁石51、52の間の距離を変更することにより、可動磁石14と2つの固定磁石51、52それぞれとの間に形成される磁気ばねの剛性を変化させたり、単安定性または双安定性のいずれかに変化させたりすることができる。
なお、前述の固定磁石保持部2057は、例えばアクチュエータ(図示せず)に連結され、アクチュエータにより回転されるものであってもよい。この場合、振動発電装置は、その発電効率を監視して発電効率が予め設定された基準効率以上となるように、アクチュエータを制御して2つの固定磁石51、52の間の距離を変化させる制御部(図示せず)を備えるものとしてもよい。この場合、振動発電装置は、その動作環境、動作状態等が変動しても常に発電効率を基準発電効率以上に維持することができる。
実施の形態では、2つの固定磁石51、52として特性と形状が同じ磁石を採用したが、これに限らず、例えば非線形振動子を取り付ける振動源の振動周波数特性に応じて、2つの固定磁石51、52として互いに形状、特性が異なる磁石を採用してもよい。
実施の形態では、2つの固定磁石51、52を有する非線形振動子50を備える振動発電装置1の例について説明したが、例えば、固定磁石が1つでも可動磁石14を安定位置に留めることができるので、固定磁石を1つだけ有する非線形振動子を備える構成であってもよい。
実施の形態では、固定磁石51、52がそれぞれ円環状である例について説明したが、固定磁石の形状は円環状に限定されるものではない。固定磁石は、可動磁石14の筒体56の筒軸J1方向への投影領域A1の外側の位置に配置されるものであれば、例えば矩形枠状その他の形状を有するものであってもよい。
実施の形態では、可動磁石14が筒体56の内壁により直接その位置が規定される構成について説明したが、これに限らず、例えば、可動磁石14が、板ばね(図示せず)によりその側方から支持される構成であってもよい。具体的には、可動磁石14が、可動磁石14と筒体56の内壁との間に介在する板ばねを介して支持される構成であってもよい。
実施の形態では、電磁誘導を利用した発電機Gを備える振動発電装置1の例について説明したが、発電機Gの構成はこれに限定されない。発電機Gとして、例えば圧電効果を利用した発電機、静電容量の変動を利用した発電機、電荷誘導を利用したエレクトレット発電機、磁歪効果を利用した発電機等任意の構成の発電機を採用することができる。
本発明は、非線形振動子を振動源に取り付けて共振させることにより生じる力学的エネルギを電気エネルギに変換して出力する共振型振動発電装置に好適である。
1:振動発電装置、14,3141,3142:可動磁石、16:コイル、18:出力回路、22:蓄電装置、24:出力レベル検出回路、26:負性インピーダンス変換回路、38:スイッチ、50,2050,3050:非線形振動子、51,52:固定磁石、56,2056:筒体、100:振動源、241:比較器、242:駆動回路、243:定電圧回路、2056a:第1螺子部、2057:固定磁石保持部、2057a:第2螺子部、3014:可動磁石複合体、3143:セパレータ、BR18:整流回路、BW1,BW2:共振周波数帯域、BW3:複数動作点共存帯域、C18:コンデンサ、G:発電機、k0,kend:ばね定数、m:質量要素、OP26:オペアンプ、R18:インピーダンス要素、R261,R262,R263:抵抗、S:非線形ばね要素
Claims (11)
- 筒体と、前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石と、前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える、
振動発電装置。 - 前記固定磁石は、2つ存在し、前記筒軸方向において前記可動磁石を挟む両側の2箇所における、前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置それぞれに配置され、
前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と、2つの固定磁石のうち前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極と、は異なり、
前記可動磁石の前記筒軸方向における他方の磁極と、前記2つの固定磁石のうち前記可動磁石の前記他方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なる、
請求項1に記載の振動発電装置。 - 前記筒体の筒軸方向における前記2つの固定磁石の間の第1距離の半分に相当する第2距離は、前記2つの固定磁石それぞれから前記可動磁石までの距離が互いに等しい状態において前記磁気ばねのばね定数が0となる基準距離に比べて、前記基準距離の0%以上且つ20%以下に相当する距離だけ短い距離に設定されている、
請求項2に記載の振動発電装置。 - 前記第2距離は、前記基準距離に比べて、前記基準距離の0%以上且つ10%以下に相当する距離だけ短い距離に設定されている、
請求項3に記載の振動発電装置。 - 前記筒体の筒軸方向における前記2つの固定磁石の間の第1距離の半分に相当する第2距離は、前記可動磁石が前記2つの固定磁石それぞれから前記可動磁石までの距離が互いに等しい状態において前記磁気ばねのばね定数が0となる基準距離に比べて、前記基準距離の0%超且つ20%以下に相当する距離だけ長い距離に設定され、
前記2つの固定磁石の間における前記磁気ばねのばね定数が0となる2箇所の間の第3距離は、前記振動源の振動振幅の20%以上且つ80%以下に設定されている、
請求項2に記載の振動発電装置。 - 前記非線形振動子は、前記2つの固定磁石のうちの一方を保持し、前記筒軸方向に移動可能な固定磁石保持部を更に有する、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の振動発電装置。 - 前記筒体は、前記筒軸方向における少なくとも一方の端部に第1螺子部が設けられ、
前記固定磁石保持部は、前記筒体の前記第1螺子部が設けられた端部側に配置された固定磁石を保持し、前記第1螺子部に螺合する第2螺子部を有する、
請求項6に記載の振動発電装置。 - 筒体と、複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を有し、前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている非線形振動子と、
振動源から前記非線形振動子に与えられる力学的エネルギを電気エネルギに変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器から入力される電気エネルギを外部へ出力する出力回路と、を備える、
振動発電装置。 - 前記可動磁石複合体は、2つの可動磁石を有し、
前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、
前記2つの可動磁石は、前記2つの可動磁石それぞれの同極同士が対向するように結合されている、
請求項8に記載の振動発電装置。 - 筒体と、
前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に設置された可動磁石と、
前記筒体における前記可動磁石が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記可動磁石の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石側の磁極とが異なり、前記可動磁石と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている、
非線形振動子。 - 筒体と、
複数の可動磁石を有し前記筒体内に前記筒体の筒軸方向に移動可能に配置された可動磁石複合体と、
前記筒体における前記可動磁石複合体が移動する体積範囲の外側の位置に配置された固定磁石と、を備え、
前記複数の可動磁石がそれぞれの同極同士が対向するように結合されており、前記複数の可動磁石の個数が奇数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが異なり、前記複数の可動磁石の個数が偶数の場合、前記可動磁石複合体の前記筒軸方向における一方の磁極と前記可動磁石複合体の前記一方側に位置する固定磁石の前記可動磁石複合体側の磁極とが同一であり、前記可動磁石複合体と前記固定磁石との間に磁気ばねが形成されている、
非線形振動子。
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JP2018013438A JP2019134540A (ja) | 2018-01-30 | 2018-01-30 | 振動発電装置および非線形振動子 |
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DE102021111203A1 (de) | 2021-04-30 | 2022-11-03 | INS GmbH | Elektrodynamischer Energiewandler |
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2018
- 2018-01-30 JP JP2018013438A patent/JP2019134540A/ja active Pending
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