JP2019131886A - 軟磁性合金および磁性部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】飽和磁束密度Bsが高く、保磁力Hcが低く、比抵抗ρが高い軟磁性合金を提供する。【解決手段】Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金である。Fe−rich相11およびFe−poor相13を含む。Fe−poor相におけるPの平均濃度が軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、軟磁性合金および磁性部品に関する。
近年、電子・情報・通信機器等において低消費電力化および高効率化が求められている。さらに、低炭素化社会へ向け、上記の要求が一層強くなっている。そのため、電子・情報・通信機器等の電源回路にも、エネルギー損失の低減や電源効率の向上が求められている。そして、電源回路に使用させる磁器素子の磁心には透磁率の向上およびコアロス(磁心損失)の低減が求められている。コアロスを低減すれば、電力エネルギーのロスが小さくなり、高効率化および省エネルギー化が図られる。
特許文献1にはFe−B−M(M=Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W)系の軟磁性非晶質合金が記載されている。本軟磁性非晶質合金は市販のFeアモルファスと比べて高い飽和磁束密度を有するなど、良好な軟磁気特性を有する。
特許第3342767号
磁心のコアロスを低減する方法として、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することが考えられる。
本発明の目的は、飽和磁束密度Bsが高く、保磁力Hcが低く、比抵抗ρが高い軟磁性合金を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る軟磁性合金は、
Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金であって、
Fe−rich相およびFe−poor相を含み、
前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であることを特徴とする。
本発明に係る軟磁性合金は、上記の特徴を有することにより、飽和磁束密度Bsが高く、保磁力Hcが低く、比抵抗ρが高い軟磁性合金となる。
本発明に係る軟磁性合金は、前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が1.0at%以上50at%以下であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記Fe−rich相におけるPの平均濃度の3.0倍以上であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、組成式(Fe1−αα(1−(a+b+c+d+e))CuM1M2Siで表される軟磁性合金であって、
XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
0≦a≦0.030
0≦b≦0.150
0.001≦c≦0.150
0≦d≦0.200
0≦e≦0.200
0≦α≦0.500
であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を有していてもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5nm以上30nm以下であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、薄帯形状であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、粉末形状であってもよい。
本発明に係る磁性部品は、上記のいずれかに記載の軟磁性合金からなる。
図1は、本発明の軟磁性合金におけるFeの分布を3DAPで観察した結果である。 図2は、本発明の軟磁性合金を3DAPで観察し、Feの含有量で2値化した結果を表す模式図である。 図3は、単ロール法の模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金である。Feを主成分とするとは、具体的には、軟磁性合金全体に占めるFeの含有量が65at%以上であることを指す。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の微細構造、Feの分布およびPの分布について図面を参考にして説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金についてFeの分布を3次元アトムプローブ(以下、3DAPと表記する場合がある)を用いて厚み5nmで観察すると図1に示すようにFeの含有量が多い部分と少ない部分とが存在していることが観察できる。
ここで、図1とは別の測定箇所について同じ測定方法で観察し、Feの濃度が高い部分と低い部分とで2値化した結果の概略図が図2である。そして、Feの濃度が軟磁性合金におけるFeの平均濃度以上である部分をFe−rich相11、Feの濃度が軟磁性合金におけるFeの平均濃度よりも0.1at%以上、低い部分をFe−poor相13とする。なお、軟磁性合金におけるFeの平均濃度とは軟磁性合金の組成におけるFeの含有量と同一である。図2ではFe−rich相11が島状に存在し、その周囲にFe−poor相13が位置している場合が多い。しかし、必ずしもFe−rich相11が島状に存在していなくてもよく、Fe−poor相13がFe−rich相11の周囲に位置していなくてもよい。なお、軟磁性合金全体に占めるFe−rich相11の面積割合およびFe−poor相13の面積割合は任意である。例えば、Fe−rich相11の面積割合が20%以上80%以下であり、Fe−poor相13の面積割合が20%以上80%以下である。
そして、本実施形態に係る軟磁性合金は、Fe−poor相13におけるPの平均濃度が軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であることを特徴とする。すなわち、本実施形態に係る軟磁性合金は、3DAPを用いて厚み5nmで観察する場合においてFeの濃度にばらつきがあり、さらに、Feの濃度が小さい部分に多くのPが存在している。本実施形態に係る軟磁性合金は、当該特徴を有することにより、Fe−poor相13を高抵抗化することができ、良好な磁気特性を有しながら比抵抗ρを向上させることができる。良好な磁気特性とは、具体的には飽和磁束密度Bsが高く、保磁力Hcが低いことを指す。
また、Fe−poor相13におけるPの平均濃度が1.0at%以上50at%以下であることが好ましい。Fe−poor相13におけるPの平均濃度が上記の範囲内であることにより、特に飽和磁束密度Bsが向上し易くなる。
さらに、Fe−poor相におけるPの平均濃度がFe−rich相11におけるPの平均濃度の3.0倍以上であることが好ましい。
また、Fe−rich相11はFe基ナノ結晶からなる構造を有し、Fe−poor相13は非晶質からなる構造を有する。本実施形態では、Fe基ナノ結晶とは粒径が50nm以下であり、Feの含有量が70at%以上である結晶を指す。
本実施形態に係るFe基ナノ結晶の粒径には特に制限はないが、平均粒径が5nm以上30nm以下であることが好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。平均粒径が上記の範囲内であることにより、保磁力Hcがより低くなる傾向にある。なお、ナノ結晶の平均粒径については、XRDを用いた粉末X線回折によって測定することができる。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Fe−rich相11において、前述したFeおよびP以外に、副成分として、B,C,Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,Cu,Si,La,Y,Sから選択される1種以上をさらに含んでもよい。Fe−rich相11に副成分が含まれることにより、飽和磁束密度を維持したまま、保磁力が低下する。すなわち、軟磁気特性が向上する。特に高周波領域において好適な軟磁気特性が得られる。また、Fe−poor相13においても、前述したFeおよびP以外に、上記の副成分をさらに含んでもよい。
軟磁性合金全体の組成はICP測定および蛍光X線測定により確認することが可能である。また、Fe−rich相11の組成およびFe−poor相13の組成は3DAPにより測定することが可能である。そして、Fe−rich相11におけるPの平均濃度およびFe−poor相13におけるPの平均濃度も上記の測定結果より算出することができる。
本実施形態に係る軟磁性合金の組成は、FeおよびPを含む点以外は任意である。好ましくは、下記の組成(1)の範囲内の組成である。
組成(1)は以下の組成である。
組成式(Fe1−αα(1−(a+b+c+d+e))CuM1M2Siで表され、
XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
0≦a≦0.030
0≦b≦0.150
0.001≦c≦0.150
0≦d≦0.200
0≦e≦0.200
0≦α≦0.500
である。
なお、以下の記載では、軟磁性合金の各元素の含有率について、特に母数の記載が無い場合は、軟磁性合金全体を100at%とする。また、軟磁性合金の組成が上記の組成(1)である場合には、軟磁性合金におけるFeの平均濃度が100×(1−α)(1−(a+b+c+d+e))(at%)となる。さらに、軟磁性合金におけるPの平均濃度が100×c(at%)となる。
Cuの含有量(a)は、3.0at%以下(0を含む)であることが好ましい。すなわち、Cuを含有しなくてもよい。また、Cuの含有量が少ないほど、後述する単ロール法によりFe−rich相11およびFe−poor相13を含む軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる傾向にある。一方、Cuの含有量が多いほど、保磁力を減少させる効果が大きくなる。保磁力を減少させる観点からはCuの含有量は、0.1at%以上であることが好ましい。
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上である。好ましくは、Zr,Hf,Nb,から選択される1種以上とする。後述する単ロール法によりFe−rich相11およびFe−poor相13を含む軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる傾向にある。
M1の含有量(b)は、15.0at%以下(0を含む)であることが好ましい。すなわち、M1を含有しなくてもよい。M1の含有量15.0at%以下(0を含む)とすることで飽和磁束密度Bsを向上させやすくなる。
Pの含有量(c)は、0.1at%以上15.0at%以下であることが好ましい。Pの含有量を上記の範囲内とすることで飽和磁束密度Bsを向上させやすくなる。
M2はBおよびCから選択される1種以上である。
M2の含有量(d)は、20.0at%以下(0を含む)であることが好ましい。すなわち、M2を含有しなくてもよい。M2を上記の範囲内で添加することで飽和磁束密度Bsを向上させやすくなる。
Siの含有量(e)は、20.0at%以下(0を含む)であることが好ましい。すなわち、Siを含有しなくてもよい。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Feの一部をXで置換してもよい。XはCoおよびNiから選択される1種以上である。
FeからXへの置換割合(α)は50at%以下(0を含む)であってもよい。αが高すぎるとFe−rich相11およびFe−poor相13が生じにくくなる。
Xの含有量(α(1−(a+b+c+d+e)))は、40at%以下(0を含む)であってもよい。
また、本実施形態に係る軟磁性合金の代表的な組成としては、下記の組成(2)〜(4)が挙げられる。
組成(2)は以下の組成である。
組成式(Fe1−αα(1−(a+b+c+d+e))CuM1M2Siで表され、
XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
0≦a≦0.030
0.020≦b≦0.150
0.001≦c≦0.150
0.025≦d≦0.200
0≦e≦0.070
0≦α≦0.500
である。
組成(2)においては、Cuの含有量(a)は3.0at%以下(0を含む)であることが好ましい。3.0at%以下であることにより後述する単ロール法によりFe−rich相11およびFe−poor相13を含む軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる。
組成(2)においては、M1の含有量(b)は2.0at%以上12.0at%以下であることが好ましい。2.0at%以上であることにより後述する単ロール法によりFe−rich相11およびFe−poor相13を含む軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる。12.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(2)においては、Pの含有量(c)は1.0at%以上10.0at%以下であることが好ましい。1.0at%以上であることにより比抵抗ρが向上しやすくなる。10.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(2)においては、M2の含有量(d)は2.5at%以上15.0at%以下であることが好ましい。2.5at%以上であることにより後述する単ロール法によりFe−rich相11およびFe−poor相13を含む軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる。15.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(3)は以下の組成である。
組成式(Fe1−αα(1−(a+b+c+d+e))CuM1M2Siで表される軟磁性合金であって、
XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
0≦a≦0.030
0.010≦b≦0.100
0.001≦c≦0.070
0.020≦d≦0.140
0.070≦e≦0.175
0≦α≦0.500
である。
組成(3)においては、M1の含有量(b)は1.0at%以上5.0at%以下であることが好ましい。5.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(3)においては、Pの含有量(c)は0.5at%以上5.0at%以下であることが好ましい。0.5at%以上であることにより比抵抗ρが向上しやすくなる。5.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(3)においては、M2の含有量(d)は9.0at%以上11.0at%以下であることが好ましい。9.0at%以上であることにより保磁力Hcが低下しやすくなる。11.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。また、Bの含有量は2.0at%以上10.0at%以下であってもよい。Cの含有量は5.0at%以下(0を含む)であってもよい。
組成(3)においては、Siの含有量(e)は10.0at%以上17.5at%以下であることが好ましい。10.0at%以上であることにより保磁力Hcが向上しやすくなる。
組成(4)は以下の組成である。
組成式(Fe1−αα(1−(a+b+c+d+e))CuM1M2Siで表される軟磁性合金であって、
XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
0≦a≦0.010
0≦b<0.010
0.010≦c≦0.150
0.090≦d≦0.130
0≦e≦0.080
0≦α≦0.500
である。
組成(4)においては、Pの含有量(c)は1.0at%以上7.0at%以下であることが好ましい。7.0at%以下であることにより飽和磁束密度Bsが向上しやすくなる。
組成(4)においては、Siの含有量(e)は2.0at%以上8.0at%以下であることが好ましい。2.0at%以上であることにより保磁力Hcが低下しやすくなる。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法は任意であるが、たとえば単ロール法により軟磁性合金の薄帯を製造する方法が挙げられる。
単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属等の各種原料を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法は任意であるが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(浴湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はないが、例えば1200〜1500℃とすることができる。
単ロール法に用いられる装置の模式図を図3に示す。本実施形態に係る単ロール法においては、チャンバー35内部において、ノズル31から溶融金属32を矢印の方向に回転しているロール33へ噴射し供給することでロール33の回転方向へ薄帯34が製造される。なお、本実施形態ではロール33の材質には特に制限はない。例えばCuからなるロールが用いられる。
単ロール法においては、主にロール33の回転速度を調整することで得られる薄帯の厚さを調整することができるが、例えばノズル31とロール33との間隔や溶融金属の温度などを調整することでも得られる薄帯の厚さを調整することができる。薄帯の厚さには特に制限はないが、例えば15〜30μmとすることができる。
後述する熱処理前の時点では、薄帯は非晶質または粒径の小さい微結晶のみが存在する状態であることが好ましい。そのような薄帯に対して後述する熱処理を施すことにより、本実施形態に係る軟磁性合金が得られる。
なお、熱処理前の軟磁性合金の薄帯に粒径の大きな結晶が存在するか否かを確認する方法には特に制限はない。例えば、粒径0.01〜10μm程度の結晶の有無については、通常のX線回折測定により確認することができる。また、上記の非晶質中に結晶が存在するが結晶の体積割合が小さい場合には、通常のX線回折測定では結晶がないと判断されてしまう。この場合の結晶の有無については、例えば、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡を用いて、制限視野回折像、ナノビーム回折像、明視野像または高分解能像を得ることで確認できる。制限視野回折像またはナノビーム回折像を用いる場合、回析パターンにおいて非晶質の場合にはリング状の回折が形成されるのに対し、非晶質ではない場合には結晶構造に起因した回折斑点が形成される。また、明視野像または高分解能像を用いる場合には、倍率1.00×10〜3.00×10倍で目視にて観察することで結晶の有無を確認できる。なお、本明細書では、通常のX線回折測定により結晶が有ることが確認できる場合には「結晶が有る」とし、通常のX線回折測定では結晶が有ることが確認できないが、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡を用いて、制限視野回折像、ナノビーム回折像、明視野像または高分解能像を得ることで結晶が有ることが確認できる場合には、「微結晶が有る」とする。
ここで、本発明者らは、ロール33の温度およびチャンバー35内部の蒸気圧を適切に制御することで、熱処理前の軟磁性合金の薄帯を非晶質にしやすくなり、熱処理後にPの濃度が高いFe−poor相11およびPの濃度が低いFe−rich相13を得られやすくなることを見出した。具体的には、ロール33の温度を50〜70℃、好ましくは70℃とし、露点調整を行ったArガスを用いてチャンバー35内部の蒸気圧を11hPa以下、好ましくは4hPa以下とすることにより、軟磁性合金の薄帯を非晶質にしやすくなることを見出した。
また、ロール33の温度は50〜70℃とし、さらにチャンバー35内部の蒸気圧を11hPa以下とすることが好ましい。ロール33の温度およびチャンバー35内部の蒸気圧を上記の範囲内に制御することで、溶融金属32が均等に冷却され、得られる軟磁性合金の熱処理前の薄帯を均一な非晶質にしやすくなる。なお、チャンバー内部の蒸気圧の下限は特に存在しない。露点調整したアルゴンを充填して蒸気圧を1hPa以下にしてもよく、真空に近い状態として蒸気圧を1hPa以下にしてもよい。また、蒸気圧が高くなると熱処理前の薄帯を非晶質にしにくくなり、非晶質になっても、後述する熱処理後に上記の好ましい微細構造を得にくくなる。
得られた薄帯34を熱処理することで上記の好ましいナノ結晶部11および非晶質部13を得ることができる。この際に薄帯34が完全な非晶質であると上記の好ましい微細構造を得やすくなる。
本実施形態では、熱処理を2段階で行うことで、上記の好ましい微細構造を得やすくなる。1段階目の熱処理(以下、第1熱処理ともいう)はいわゆる歪とりのために行う。これは、軟磁性金属を可能な範囲で均一な非晶質にするためである。
本実施形態では、2段階目の熱処理(以下、第2熱処理ともいう)を1段階目よりも高い温度で行う。そして、2段階目の熱処理において薄帯の自己発熱を抑制するため、熱伝導率の高い材料のセッターを用いることが重要である。また、セッターの材料は比熱が低いことがより好ましい。従来、セッターの材料としてはアルミナがよく用いられていたが、本実施形態では、熱伝導率がさらに高い材料、例えばカーボンまたはSiCなどを用いることができる。具体的には、熱伝導率が150W/m以上の材料を用いることが好ましい。さらに、比熱が750J/kg以下の材料を用いることが好ましい。さらに、セッターの厚みをできるだけ薄くし、セッターの下に制御用熱電対を置き、ヒータの熱応答を高めることが好ましい。
熱処理を上記の2段階で行うことの利点について述べる。1段階目の熱処理の役割について説明する。本軟磁性合金は高温から急冷し凝固することにより非晶質を形成する。その際、高温から急冷されるため熱収縮による応力が軟磁性金属内に残り、歪や欠陥が発生する。1段階目の熱処理はこの軟磁性合金内の歪や欠陥を熱処理により緩和することにより、均一な非晶質を形成させる。続いて2段階目の熱処理の役割について説明する。2段階目の熱処理では、Pの濃度が高いFe−poor相およびPの濃度が低いFe−rich相(Fe基ナノ結晶)を生成させる。1段階目の熱処理で歪や欠陥を抑制することができ、均一な非晶質状態を形成しているため、2段階目の熱処理によりPの濃度が高いFe−poor相およびPの濃度が低いFe−rich相(Fe基ナノ結晶)を生成させることができる。すなわち、比較的低温で熱処理を行っても安定的にPの濃度が高いFe−poor相およびPの濃度が低いFe−rich相(Fe基ナノ結晶)を生成させることが可能となる。このため2段階目の熱処理での熱処理温度は、従来の1段階で熱処理を行う場合の熱処理温度と比較して低くなる傾向にある。言い換えれば、1段階で熱処理を行う場合には非晶質形成時に残っている歪や欠陥およびその周辺が先行してFe−rich相(Fe基ナノ結晶)になる反応が進行してしまう。さらに、ボライドからなる異相を形成してしまい、Fe−poor相におけるP濃度が十分に高くならない。そして、軟磁気特性および比抵抗ρを悪化させてしまう。また、1段階熱処理で可能な限り均一に熱処理させるためには軟磁性合金全体で可能な限り同時にFe−poor相およびFe−rich相(Fe基ナノ結晶)を生成させる必要がある。このため、1段階熱処理では前述した2段階熱処理よりも熱処理温度が高くなる傾向にある。
本実施形態において、第1熱処理および第2熱処理の好ましい熱処理温度および好ましい熱処理時間は軟磁性合金の組成により異なる。第1熱処理の熱処理温度は概ね350℃以上550℃以下であり、熱処理時間は概ね0.1時間以上10時間以下である。第2熱処理の熱処理温度は概ね550℃以上675℃以下であり、熱処理時間は概ね0.1時間以上10時間以下である。しかし、組成によっては上記の範囲を外れたところに好ましい熱処理温度および熱処理時間が存在する場合もある。
熱処理条件が好適に制御されていない場合や、好適な熱処理装置が選択されていない場合には、Fe−poor相におけるPの平均濃度が低下し、良好な軟磁気特性が得にくくなると共に比抵抗ρが低下する。
また、本実施形態に係る軟磁性合金を得る方法として、上記した単ロール法以外にも、例えば水アトマイズ法またはガスアトマイズ法により本実施形態に係る軟磁性合金の粉体を得る方法がある。以下、ガスアトマイズ法について説明する。
ガスアトマイズ法では、上記した単ロール法と同様にして1200〜1500℃の溶融合金を得る。その後、前記溶融合金をチャンバー内で噴射させ、粉体を作製する。
このとき、ガス噴射温度を50〜100℃とし、チャンバー内の蒸気圧4hPa以下とすることで、最終的に上記の好ましい微細構造を得やすくなる。
ガスアトマイズ法で粉体を作製した後に、単ロール法による場合と同様に二段階で熱処理を行うことで、好適な微細構造を得やすくなる。そして、特に耐酸化性が高く、良好な軟磁性特性を有する軟磁性合金粉末を得ることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
本実施形態に係る軟磁性合金の形状には特に制限はない。上記した通り、薄帯形状や粉末形状が例示されるが、それ以外にも薄膜形状やブロック形状等も考えられる。
本実施形態に係る軟磁性合金の用途には特に制限はない。例えば、磁心が挙げられる。インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。本実施形態に係る軟磁性合金は、磁心の他にも薄膜インダクタ、磁気ヘッド、変圧トランスにも好適に用いることができる。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金から磁心およびインダクタを得る方法について説明するが、本実施形態に係る軟磁性合金から磁心およびインダクタを得る方法は下記の方法に限定されない。
薄帯形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、薄帯形状の軟磁性合金を巻き回す方法や積層する方法が挙げられる。薄帯形状の軟磁性合金を積層する際に絶縁体を介して積層する場合には、さらに特性を向上させた磁芯を得ることができる。
粉末形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、適宜バインダと混合した後、金型を用いて成形する方法が挙げられる。また、バインダと混合する前に、粉末表面に酸化処理や絶縁被膜等を施すことにより、比抵抗が向上し、より高周波帯域に適合した磁心となる。
成形方法に特に制限はなく、金型を用いる成形やモールド成形などが例示される。バインダの種類に特に制限はなく、シリコーン樹脂が例示される。軟磁性合金粉末とバインダとの混合比率にも特に制限はない。例えば軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜10質量%のバインダを混合させる。
例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜5質量%のバインダを混合させ、金型を用いて圧縮成形することで、占積率(粉末充填率)が70%以上、1.6×10A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.4T以上、かつ比抵抗が1Ω・cm以上である磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的なフェライト磁心よりも優れた特性である。
また、例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜3質量%のバインダを混合させ、バインダの軟化点以上の温度条件下の金型で圧縮成形することで、占積率が80%以上、1.6×10A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.9T以上、かつ比抵抗が0.1Ω・cm以上である圧粉磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的な圧粉磁心よりも優れた特性である。
さらに、上記の磁心を成す成形体に対し、歪取り熱処理として成形後に熱処理することで、さらにコアロスが低下し、有用性が高まる。
また、上記磁心に巻線を施すことでインダクタンス部品が得られる。巻線の施し方およびインダクタンス部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁心に巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、巻線コイルが磁性体に内蔵されている状態で加圧成形し一体化することでインダクタンス部品を製造する方法がある。この場合には高周波かつ大電流に対応したインダクタンス部品を得やすい。
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、軟磁性合金粒子にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した軟磁性合金ペースト、および、コイル用の導体金属にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した導体ペーストを交互に印刷積層した後に加熱焼成することで、インダクタンス部品を得ることができる。あるいは、軟磁性合金ペーストを用いて軟磁性合金シートを作製し、軟磁性合金シートの表面に導体ペーストを印刷し、これらを積層し焼成することで、コイルが磁性体に内蔵されたインダクタンス部品を得ることができる。
ここで、軟磁性合金粒子を用いてインダクタンス部品を製造する場合には、最大粒径が篩径で45μm以下、中心粒径(D50)が30μm以下の軟磁性合金粉末を用いることが、優れたQ特性を得る上で好ましい。最大粒径を篩径で45μm以下とするために、目開き45μmの篩を用い、篩を通過する軟磁性合金粉末のみを用いてもよい。
最大粒径が大きな軟磁性合金粉末を用いるほど高周波領域でのQ値が低下する傾向があり、特に最大粒径が篩径で45μmを超える軟磁性合金粉末を用いる場合には、高周波領域でのQ値が大きく低下する場合がある。ただし、高周波領域でのQ値を重視しない場合には、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を使用可能である。バラツキの大きな軟磁性合金粉末は比較的安価で製造できるため、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を用いる場合には、コストを低減することが可能である。
本実施形態に係る圧粉磁心の用途には特に制限はない。例えば、インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(実験例1)
Fe:81.0at%、Nb:7.0at%、P:3.0at%、B:9.0at%の組成の母合金が得られるように各種原料金属等をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
その後、作製した母合金を加熱して溶融させ、1250℃の溶融状態の金属とした後に、ロール温度70℃、チャンバー内の蒸気圧4hPa、チャンバー内の温度30℃として単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作成した。また、ロールの回転数を適切に調整することで得られる薄帯の厚さを20μmとした。蒸気圧は露点調整を行ったArガスを用いることで調整した。
次に、作製した各薄帯に対して熱処理を行い、単板状の試料を得た。本実験例では、試料No.6〜10以外の試料については、2回の熱処理を行った。熱処理条件を表1に示す。また、各薄帯に対して熱処理を行う際には、表1に記載した材質のセッターの上に薄帯を置き、セッターの下に制御用熱電対を置いた。このときのセッター厚みは1mmで統一した。なお、アルミナは熱伝導率31W/m、比熱779J/kgのものを用いた。カーボンは熱伝導率150W/m、比熱691J/kgのものを用いた。SiC(炭化ケイ素)は熱伝導率180W/m、比熱740J/kgのものを用いた。
熱処理前の各薄帯の一部を粉砕して粉末化した後にX線回折測定を行い、結晶の有無を確認した。さらに、透過電子顕微鏡を用いて制限視野回折像および30万倍で明視野像を観察し結晶および微結晶の有無を確認した。その結果、各実施例および比較例の薄帯には粒径20nm以上の結晶が存在せず非晶質であることを確認した。なお、粒径20nm以上の結晶が存在せず粒径20nm未満の初期微結晶のみが存在している場合も非晶質であるとみなす。なお、試料全体の組成は母合金の組成とほぼ一致することをICP測定および蛍光X線測定により確認した。
そして、各薄帯を熱処理した後の各試料の飽和磁束密度および保磁力を測定した。結果を表1に示す。飽和磁束密度(Bs)は振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁場1000kA/mで測定した。保磁力(Hc)は直流BHトレーサーを用いて磁場5kA/mで測定した。比抵抗(ρ)は4探針法による抵抗率測定で測定した。さらに、各薄帯を熱処理した後の各試料についてX線回折測定を行った結果、後述する実験例7以外の各実験例の全ての実施例において、熱処理した後の各薄帯におけるFe基ナノ結晶の平均粒径は5〜30nmであった。
実験例1などの全ての実験例において、飽和磁束密度Bsは1.00T以上を良好とした。保磁力Hcは10.0A/m未満を良好とした。また、以下に示す表では、比抵抗は、110μΩcm以上を◎、100μΩcm以上110μΩcm未満を○、100μΩcm未満を×とした。また、◎、○、×の順に評価が高く、◎または○である場合を良好とした。
さらに、各試料について3DAP(3次元アトムプローブ)を用いて観察範囲40nm×40nm×200nmの範囲を観察した。その結果、X線回折測定にて結晶および微結晶が存在しなかった試料が全てFe−poor相およびFe−rich相を含むことを確認した。さらに、当該Fe−poor相が非晶質からなり、当該Fe−rich相がナノ結晶からなることを確認した。そして、3DAPを用いてFe−poor相におけるPの平均濃度およびFe−rich相におけるPの平均濃度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2019131886
表1より、セッターの材質が、熱伝導率が比較的高く比熱が比較的低いカーボンまたはSiCであり、かつ、熱処理温度を2段階で行い、第1熱処理温度および第2熱処理温度を適切に制御した実施例は、軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった。そして、飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好な結果となった。これに対し、セッターの材質が、熱伝導率が比較的低く比熱が比較的高いアルミナである試料No.1−5、熱処理を1段階で行った試料No.6−11、第1熱処理の温度が低すぎた試料No.19、および、第1熱処理の温度が高すぎた試料No.24は、いずれも保磁力Hcおよび/または比抵抗ρが劣る結果となった。
(実験例2)
実験例2では、母合金の組成を表2に記載の組成(上記組成(2)または上記組成(2)に近い組成)に変化させた。そして、表1の試料番号16と同条件で熱処理を行った。具体的には、セッターの材質をカーボンとし、1回目の熱処理温度を450℃、1回目の
熱処理時間を1時間、2回目の熱処理温度を650℃、2回目の熱処理時間を1時間とした。
さらに、全ての実施例および比較例について実験例1と同様にして各種測定を行った。X線回折測定の結果、結晶が存在した比較例では、軟磁性合金全体としてはFe濃度が一定でありFe−poor相およびFe−rich相が存在しなかった。なお、実験例2では、飽和磁束密度Bsは1.30T以上をさらに良好とし、1.40T以上を特に良好とした。保磁力Hcは4.0A/m以下を特に良好とした。結果を表3に示す。
Figure 2019131886
Figure 2019131886
表2および表3より、軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった各実施例は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好となった。特に、合金全体の組成が上記の組成(1)および組成(2)の範囲内である実施例は残留磁束密度Bsおよび保磁力Hcが特に良好となった。
これに対し、Fe−poor相が存在しなかった各比較例は保磁力Hcが著しく高くなった。特に試料番号48および57は比抵抗ρも低下した。
また、軟磁性合金がPを含有しない試料番号40aは比抵抗ρが低下した。また、保磁力Hcも表2および表3の他の実施例と比較して上昇した。
(実験例3)
実験例3では、母合金の組成を表4に記載の組成(上記組成(3)または上記組成(3)に近い組成)に変化させた。そして、表1の試料番号16と同条件で熱処理を行った。具体的には、セッターの材質をカーボンとし、1回目の熱処理温度を450℃、1回目の
熱処理時間を1時間、2回目の熱処理温度を650℃、2回目の熱処理時間を1時間とした。
さらに、全ての実施例および比較例について実験例1と同様にして各種測定を行った。X線回折測定の結果、全ての実施例および比較例は非晶質であった。そして、全ての実施例および比較例でFe−poor相およびFe−rich相が存在した。しかし、試料番号83はPを含有しないため、Fe−poor相でもFe−rich相でも軟磁性合金全体でもP濃度は0であった。なお、実験例3では、飽和磁束密度Bsは1.00T以上をさらに良好とし、1.10T以上を特に良好とした。保磁力Hcは1.0A/m以下をさらに良好とし、0.5A/m以下と特に良好とした。また、比抵抗はPを含有しない比較例である試料番号83を基準として、130μΩcm以上を◎、試料番号83の比抵抗超130μΩcm未満を○、試料番号83の比抵抗以下を×とした。また、◎、○、×の順に評価が高く、◎または○である場合を良好とした。なお、試料番号83の比抵抗は100μΩcm未満であり、試料番号84の比抵抗は100μΩcm以上である。結果を表5に示す。
Figure 2019131886
Figure 2019131886
表4および表5より、軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった各実施例は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好となった。特に、合金全体の組成が上記の組成(1)および組成(3)の範囲内である実施例は残留磁束密度Bsおよび保磁力Hcが特に良好となった。
これに対し、Pを含有しなかった試料番号83は比抵抗ρが低下した。
(実験例4)
実験例4では、母合金の組成を表6に記載の組成(上記組成(4)または上記組成(4)に近い組成)に変化させた。そして、表1の試料番号16と同条件で熱処理を行った。具体的には、セッターの材質をカーボンとし、1回目の熱処理温度を450℃、1回目の
熱処理時間を1時間、2回目の熱処理温度を650℃、2回目の熱処理時間を1時間とした。
さらに、全ての実施例および比較例について実験例1と同様にして各種測定を行った。X線回折測定の結果、全ての実施例および比較例は非晶質であった。そして、全ての実施例でFe−poor相およびFe−rich相が存在した。なお、実験例4では、飽和磁束密度Bsは1.40T以上をさらに良好とし、1.45T以上を特に良好とした。保磁力Hcは7.0A/m以下をさらに良好とし、5.0A/m以下を特に良好とした。結果を表7に示す。
Figure 2019131886
Figure 2019131886
表6および表7より、軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった各実施例は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好となった。特に、合金全体の組成が上記の組成(1)および組成(4)の範囲内である実施例は残留磁束密度Bsおよび保磁力Hcが特に良好となった。
(実験例5)
実験例5では、試料番号16のFeの一部をX1に置換した点以外は実験例2と同条件で実施し、評価した。X線回折測定の結果、全ての実施例は非晶質であった。そして、全ての実施例でFe−poor相およびFe−rich相が存在した。結果を表8に示す。
Figure 2019131886
表8より、Feの一部をX1で置換しても軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった各実施例は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好となった。
(実験例6)
実験例6では、試料番号50のMの種類を変化させた点以外は実験例2と同条件で試料番号123〜135の軟磁性合金を作製した。試料番号52のMの種類を変化させ、bを0.080から0.060に変化させた点以外は実験例2と同条件で試料番号136〜148の軟磁性合金を作製した。試料番号54のMの種類を変化させた点以外は実験例2と同条件で試料番号149〜161の軟磁性合金を作製した。そして、実験例2と同様に評価した。X線回折測定の結果、結晶が存在した比較例では、軟磁性合金全体としてはFe濃度が一定でありFe−poor相およびFe−rich相が存在しなかった。また、各比較例については比抵抗ρの測定を行わなかった。
Figure 2019131886
表9より、Mの種類を変化させても軟磁性合金全体のPの平均濃度に対してFe−poor相におけるPの平均濃度が高くなった各実施例は飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρが良好となった。これに対し、Fe−poor相およびFe−rich相が存在しなかった各比較例は保磁力Hcが著しく上昇した。
(実験例7)
薄帯作製時における溶融金属の温度、および熱処理条件を変化させた点以外は実施例16と同条件で実施した。試験条件を表10に示す。また、実験例7では熱処理前の初期微結晶の平均粒径および熱処理後のFe基ナノ結晶の平均粒径を記載した。なお、全ての実施例において熱処理前の薄帯は非晶質であった。また、表11には実験例2と同様にして評価した結果を示す。
Figure 2019131886
Figure 2019131886
実験例7では、全ての実施例で飽和磁束密度、保磁力および比抵抗が良好であった。さらに、Fe基ナノ結晶の平均粒径が5〜30nmである実施例はさらに保磁力が良好であり、10〜30nmである場合は特に保磁力が良好であった。
(実験例8)
実験例8では、ロール温度およびチャンバー内蒸気圧を変化させた点以外は実施例16と同条件で実施し、実験例1と同様にして評価した。結果を表12に示す。なお、表12で「アルゴン充填」と記載している試料は、露点調整したアルゴンをチャンバー内に充填してチャンバー内の蒸気圧を1hPa以下にした試料である。また、「真空」と記載している試料は、チャンバー内を真空に近い状態として蒸気圧を1hPa以下にした試料である。
Figure 2019131886
表12より、ロール温度が50〜70℃であり、かつチャンバー内において11hPa以下に蒸気圧を制御した実施例では非晶質の薄帯が得られた。そして、当該薄帯を適切に熱処理することで、Pの濃度が高いFe−poor相およびPの濃度が低いFe−rich相を形成した。そして、飽和磁束密度Bsが高く、保磁力Hcが低く、比抵抗ρが高い軟磁性合金が得られた。
これに対し、ロール温度が30℃の比較例(試料No.182〜187)、もしくは、ロール温度が50℃または70℃であり、11hPaより蒸気圧が高い比較例(試料No.171,172,176,177)では、熱処理後にFe−poor相が生じなかったか、Fe−poor相が生じてもFe−poor相におけるPの平均濃度が十分に高くならなかった。そして、飽和磁束密度Bs、保磁力Hcおよび比抵抗ρのうちいずれか一つ以上が悪化した。
11… Fe−rich相
13… Fe−poor相
31… ノズル
32… 溶融金属
33… ロール
34… 薄帯
35… チャンバー

Claims (8)

  1. Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金であって、
    組成式(Fe1−αXα)(1−(a+b+c+d+e))CuaM1bPcM2dSieで表され、
    XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
    M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
    M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
    0≦a≦0.030
    0.020≦b≦0.150
    0.001≦c≦0.150
    0.025≦d≦0.200
    0≦e≦0.070
    0≦α≦0.500
    であり、
    Feの含有量は89.9at%以下であり、
    Fe−rich相およびFe−poor相を含み、
    前記Fe−rich相はFe基ナノ結晶からなる構造を有し、前記Fe−poor相は非晶質からなる構造を有し、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であり、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が1.0at%以上50at%以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  2. Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金であって、
    組成式(Fe1−αXα)(1−(a+b+c+d+e))CuaM1bPcM2dSieで表される軟磁性合金であって、
    XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
    M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
    M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
    0≦a≦0.030
    0.010≦b≦0.100
    0.001≦c≦0.070
    0.020≦d≦0.140
    0.070≦e≦0.175
    0≦α≦0.500
    であり、
    Feの含有量は89.9at%以下であり、
    Fe−rich相およびFe−poor相を含み、
    前記Fe−rich相はFe基ナノ結晶からなる構造を有し、前記Fe−poor相は非晶質からなる構造を有し、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であり、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が1.0at%以上50at%以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  3. Feを主成分とし、Pを含有する軟磁性合金であって、
    組成式(Fe1−αXα)(1−(a+b+c+d+e))CuaM1bPcM2dSieで表される軟磁性合金であって、
    XはCoおよびNiから選択される1種以上であり、
    M1はTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,V,W,Cr,Al,Mn,Zn,La,Y,Sから選択される1種以上であり、
    M2はBおよびCから選択される1種以上であり、
    0≦a≦0.010
    0≦b<0.010
    0.010≦c≦0.150
    0.090≦d≦0.130
    0≦e≦0.080
    0≦α≦0.500
    であり、
    Feの含有量は89.9at%以下であり、
    Fe−rich相およびFe−poor相を含み、
    前記Fe−rich相はFe基ナノ結晶からなる構造を有し、前記Fe−poor相は非晶質からなる構造を有し、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記軟磁性合金におけるPの平均濃度に対して原子数比で1.5倍以上であり、
    前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が1.0at%以上50at%以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  4. 前記Fe−poor相におけるPの平均濃度が前記Fe−rich相におけるPの平均濃度の3.0倍以上である請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性合金。
  5. 前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5nm以上30nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性合金。
  6. 薄帯形状である請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性合金。
  7. 粉末形状である請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性合金。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の軟磁性合金からなる磁性部品。
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