JP2019127641A - 反応装置及び炭化水素の製造方法 - Google Patents

反応装置及び炭化水素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光電極に照射する光のエネルギーが低くても、メタンを含む低級炭化水素を活性化させて反応生成物を得ることが可能な反応装置を提供すること。【解決手段】プロトン伝導性の固体電解質膜2と、上記固体電解質膜2上に設けられ、n型半導体を含む光電極4と、上記固体電解質膜2の上記光電極4とは反対側に設けられ、上記光電極4と電気的に接続された触媒電極6と、を有する膜電極接合体8を備え、上記光電極4に光Lを照射しながら炭化水素を含む原料ガスを上記光電極4に接触させることによって、光電気化学的に上記炭化水素を活性化させ反応生成物を得る、反応装置100を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、反応装置及び炭化水素の製造方法に関する。
メタンをはじめとする低級炭化水素は豊富な天然資源である。この低級炭化水素を直接化成品等に変換するプロセスの検討がなされている。炭素水素間の結合の解離エネルギーは比較的大きく、メタンを活性化させて化成品等を直接得るためには高温で反応を行う必要がある。しかし高温での反応においては、反応中間体の逐次的な酸化反応が進行するため、エタン及びメタノール等の有用な化合物を高い選択率で得ることは困難である。
これに対して室温付近でメタンを活性化させる方法が検討されている。例えば、非特許文献1には、メタン存在下で酸化ガリウム(Ga)光触媒に波長254nmの深紫外線を照射すると、室温において水素とエタンとが生成することが開示されている。また、非特許文献2には、白金で修飾した酸化チタン(TiO)光触媒を水に懸濁させ、メタン存在下で波長254nmの深紫外線を照射すると、室温において水素及び二酸化炭素に加えてエタンが生成することが開示されている。
非特許文献1に開示される方法は、非常に高いエネルギーを有する深紫外線の照射が必須である上に、エタンの生成量が微量であり、外部量子効率が低くなっている。非特許文献2に開示される方法も、深紫外線の照射を必要としており、やはり外部量子効率が低くなっている。以上のような状況から、エネルギーの低い光であっても低級炭化水素を高い外部量子効率で活性化させることができ、反応生成物を得ることが可能な技術があれば有用であると考えられる。
そこで、本発明は、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、メタン等の低級炭化水素を活性化させて反応生成物を得ることが可能な反応装置を提供することを目的とする。本発明はまた、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、メタン等の低級炭化水素を活性化させて炭化水素を得ることが可能な炭化水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は一つの側面において、プロトン伝導性の固体電解質膜と、上記固体電解質膜上に設けられ、n型半導体を含む光電極と、上記固体電解質膜の上記光電極とは反対側に設けられ、上記光電極と電気的に接続された触媒電極と、を有する膜電極接合体を備え、上記光電極に光を照射しながら炭化水素を含む原料ガスを上記光電極に接触させることによって光電気化学的に上記炭化水素を活性化させ反応生成物を得る、反応装置を提供する。
上記反応装置では、膜電極接合体の光電極に光が照射されると、n型半導体における価電子帯の電子が伝導帯に励起されるとともにホール(正孔ともいう)が形成される。当該ホールは光電極側に気相状態で供給された炭化水素を直接的あるいは間接的に活性化させ、アルキルラジカルとプロトンとを生成する。アルキルラジカルは同様の経路で生じた別のアルキルラジカル等と反応して反応生成物を生じる。一方、伝導帯に励起された電子(以下、励起電子ともいう)は、n型半導体の価電子帯に生じたホールとの再結合等によって失活する前に、例えば、光電極と触媒電極とを電気的に接続する外部回路を経由して光触媒から触媒電極に移動する。触媒電極に移動した電子は、膜電極接合体の固体電解質膜を介して移動してきたプロトンと結合する。
以上のように、上記反応装置は膜電極接合体を備えることで、気相状態で供給される炭化水素とホールとの反応頻度を高めることができるとともに、酸化反応と還元反応との反応場を分離して逆反応等を抑制できる。このため、光照射によって生じた励起電子とホールとを有効に活用することができる。また、光電極と触媒電極との間にバイアス電圧を印加することで、バンドギャップエネルギーの小さなn型半導体を光電極に利用できる。このため、照射される光のエネルギーが低くても、炭化水素から光電気化学的に電子を引き抜いて活性化させ、反応生成物を得ることが可能となっている。上述のとおり、上記反応装置では、光照射によって生じた励起電子とホールとを有効に活用することができるため、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、低級炭化水素を活性化させることが可能であり、外部量子効率を比較的高くすることが可能となっている。
上記光電極及び上記触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物を含んでもよく、上記プロトン伝導性の化合物はアイオノマーを含んでもよい。光電極及び触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物(例えば、アイオノマー)を含むことによって、膜電極接合体におけるプロトン伝導性を向上させることができる。電解質水溶液中での光電気化学反応とは異なり、固体である膜電極接合体におけるイオン伝導は容易には進行しない。このため、光電極側に生じたプロトンの触媒電極側への移動が律速段階となる場合においては、プロトン伝導性の化合物による修飾で固体表面上のプロトン伝導を促進することによって、反応全体の速度を向上させることができる。その結果として、原料ガス中の炭化水素の活性化も促すことができる。
上記光電極が3.0eVよりも小さなバンドギャップエネルギーを有するn型半導体を含むガス拡散電極でもよい。例えば、上記のようなn型半導体として酸化タングステンが挙げられるが、酸化タングステンは2.7eV程度のバンドギャップエネルギーを有する。このため、光電極に照射される光がエネルギーの低い可視光等であっても、価電子帯の電子を伝導帯に励起することができ、太陽光等を光源として利用する場合の光の利用効率をより向上させることができる。また、多孔性のガス拡散電極を備えることで、低級炭化水素を含む原料ガスの拡散が促進されるとともに、反応生成物の排出が促進される。このことによって、原料ガス中の低級炭化水素の活性化及び炭化水素の生成が容易となる。
上記反応装置は、上記光電極側のアノード反応で生成する上記反応生成物と、上記触媒電極側のカソード反応で生成する水素とを別々に回収可能に構成されていてもよい。反応装置がこのように構成されることによって、アノード反応で生成する反応生成物(例えばエタン)と、カソード反応で生成する生成物(例えば、水素)とが混合されることなく、別々に回収可能であり、生成物をより純度の高い状態で得ることができる。
上記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンからなる群より選択される一種以上の化合物を含んでもよい。
本発明は別の側面において、プロトン伝導性の固体電解質膜と、上記固体電解質膜上に設けられ、n型半導体を含む光電極と、上記固体電解質膜の上記光電極とは反対側に設けられ、上記光電極と電気的に接続された触媒電極と、を有する膜電極接合体の上記光電極に光を照射しながら第一の炭化水素を含む原料ガスを上記光電極に接触させることによって、光電気化学的に上記第一の炭化水素を活性化する工程と、活性化された上記第一の炭化水素を反応させて、上記第一の炭化水素よりも炭素数が大きな第二の炭化水素を生成する工程と、と含む、炭化水素の製造方法を提供する。
上記炭化水素の製造方法においては、膜電極接合体の光電極に光が照射されると、励起電子とホールとが発生する。発生したホールは光電極上で第一の炭化水素から直接的あるいは間接的に電子を引き抜いてアルキルラジカルとプロトンを生成するために消費される。アルキルラジカルは同様の経路で生じた別のアルキルラジカル等と反応して、上記第一の炭化水素よりも炭素数が大きな第二の炭化水素を生成する。一方、励起電子は、n型半導体の価電子帯に生じたホールとの再結合等によって失活する前に、光電極から触媒電極側に移動し、固体電解質膜を介して移動してきたプロトンと結合する。このように、上記炭化水素の製造方法では、膜電極接合体を用いているため、光照射によって生じた励起電子とホールとを有効に活用することができるため、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、低級炭化水素を活性化させることが可能であり、量子効率を比較的高くすることが可能となっている。
上記光電極と上記触媒電極との間にバイアス電圧を印加しながら、上記原料ガスを上記光電極に接触させてもよい。光電極と触媒電極との間にバイアス電圧を印加することで、光電極におけるn型半導体の伝導帯の下端準位が、触媒電極における目的とする反応の酸化還元電位よりもエネルギー的に低い(電位としては正側に位置する)場合であっても、n型半導体を光電極に利用できる。このため、バンドギャップエネルギーの小さなn型半導体も利用することが可能となり、照射される光のエネルギーがより低くても、炭化水素から光電気化学的に電子を引き抜いて活性化させ、反応生成物を得ることが可能である。また、光電極と触媒電極との間にバイアス電圧を印加することで光照射によって価電子帯から伝導帯へ励起された電子の移動を更に促進できる。したがって、励起電子とホールとの再結合等による失活をより十分に抑制することができ、バンドギャップエネルギーの小さなn型半導体の量子効率をより向上させることができる。バイアス電圧を印加して触媒電極側のカソード反応を促進することで、膜電極接合体上で起こる反応全体をより促進させることもできる。
上記光電極及び上記触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物を含んでもよく、上記プロトン伝導性の化合物がアイオノマーを含んでもよい。光電極及び触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物(例えば、アイオノマー)を含むことで、膜電極接合体におけるプロトン伝導性を向上させることができる。光電極側に生じたプロトンの触媒電極側への移動を促進することで、原料ガス中の炭化水素の活性化も促すことができる。
上記光電極が3.0eVよりも小さなバンドギャップエネルギーを有するn型半導体を含むガス拡散電極でもよい。例えば、上記のようなn型半導体として酸化タングステンが挙げられるが、酸化タングステンは2.7eV程度のバンドギャップエネルギーを有する。このため、光電極に照射される光がエネルギーの低い可視光等であっても、価電子帯の電子を伝導帯に励起することができる。太陽光等を光源として利用する場合の光の利用効率をより向上させることができる。また、多孔性のガス拡散電極を備えることで、第一の炭化水素を含む原料ガスの拡散が促進されるとともに、反応生成物の排出が促進される。このことで、原料ガス中の炭化水素の活性化及び第二の炭化水素の生成が容易となる。
上記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンからなる群より選択される一種以上の化合物を含んでもよい。
本発明によれば、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、メタン等の低級炭化水素を活性化させて反応生成物を得ることが可能な反応装置を提供することができる。本発明によればまた、光電極に照射する光のエネルギーが低くても、メタン等の低級炭化水素を活性化せて炭化水素を得ることが可能な炭化水素の製造方法を提供することができる。
図1は反応装置の一実施形態を示す模式図である。 図2は反応装置の別の実施形態を示す模式図である。 図3は実施例におけるガス供給手段及び分析手段を含む反応装置の全体構成を示す模式図である。 図4は実施例における電流値の経時変化を示すグラフである。 図5の(a)は実施例1〜3において生成したエタンのモル流量の経時変化を示すグラフであり、図5の(b)は実施例1〜3において生成した酸素のモル流量の経時変化を示すグラフであり、図5の(c)は実施例1〜3において生成した二酸化炭素のモル流量の経時変化を示すグラフである。 図6は実施例1〜3において生成した水素のモル流量の経時変化を示すグラフである。
以下、場合によって図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いる。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
図1は、反応装置の一実施形態を示す模式図である。図1の反応装置100は、固体電解質膜2、固体電解質膜2上に設けられた光電極4、及び固体電解質膜2の光電極4とは反対側に設けられ、光電極4と電気的に接続された触媒電極6と、を有する膜電極接合体8(Membrane Electrode Assembly:MEA)を備える。光電極4と触媒電極6とは、電源10を含む外部回路によって電気的に接続されている。膜電極接合体8は容器12に収容されている。
容器12は固体電解質膜2によって、光電極4側のアノード室20と、触媒電極6側のカソード室30とに隔てられている。固体電解質膜2によって光電極4側のアノード反応で生成する反応生成物と、触媒電極6側のカソード反応で生成する水素とを別々に回収可能に構成されている。アノード室20は原料ガスを供給する原料ガス供給口20a及び反応生成物を取り出す導出口20bを有している。カソード室30は不活性ガス供給口30a及び反応生成物を取り出す導出口30bを有している。容器12は、光Lを光電極4に照射するための光透過部14(例えば、窓)を有している。なお、容器12自体が光Lを透過するものであれば容器12は光透過部14を有していなくてもよい。
上記反応装置100は、光電極4に光Lを照射して使用される。原料ガス供給口20aからは、例えば、低級炭化水素(以下、「第一の炭化水素」という場合もある)を含む原料ガスがアノード室20に供給される。光電極4は、光電極4に接触した第一の炭化水素から光電気化学的に電子を引き抜いて活性化させ、アルキルラジカルとプロトンとを生成させる。上記アルキルラジカルは、例えば、他のアルキルラジカルと反応して第一の炭化水素よりも炭素数が大きな炭化水素(以下、「第二の炭化水素」という場合もある)を生成する。当該第二の炭化水素は、導出口20bより回収される。なお、電源10によって、光電極4と触媒電極6との間にバイアス電圧が印加される。バイアス電圧を印加することで、励起電子とホールとの再結合が抑制され量子効率がより向上する。また、バンドギャップエネルギーの小さなn型半導体の利用が可能となるため、照射する光のエネルギーが小さい可視光を利用して第二の炭化水素の生成反応を促進することが可能となる。
固体電解質膜2はプロトン伝導性を有する膜である。固体電解質膜2は、光電極4に光Lを照射することでアノード室20に発生したプロトンをアノード室20側からカソード室30側へプロトンの濃度勾配を駆動力として移動させる。固体電解質膜2の厚みは、機械的強度とプロトン伝導性の観点から50〜250μmが望ましいが、これよりも薄膜又は厚膜であってもよい。
固体電解質膜2は、例えば、スルホン酸基を有するパーフルオロポリマー膜、及びスルホン酸以外のプロトン供与基をもつポリマー膜等であってよい。スルホン酸基を有するパーフルオロポリマー膜は、例えば、ナフィオン膜(デュポン株式会社製、「ナフィオン」は登録商標)として市販されているものを使用することができる。固体電解質膜2は、加湿してプロトン伝導性を向上させた状態で使用することもできる。加湿は、例えば、アノード室20に供給される原料ガス及びカソード室30に供給される不活性ガスの少なくとも一方に水蒸気を含ませることで行ってよい。原料ガス及び不活性ガスに水蒸気を含ませる方法としては、例えば、原料ガス及び不活性ガスをアノード室20及びカソード室30に供給する前に水に通す(バブリングする)方法等が挙げられる。
光電極4はn型半導体を含む電極である。光電極4は、ガス拡散性が高い多孔性の電極構造を有する電極(以下、ガス拡散電極ともいう)であることが望ましく、その厚さは担体となる多孔性基材の厚さによって規定される。多孔性基材の厚さは、ハンドリング性の観点から50〜250μmが望ましいが、これよりも薄膜又は厚膜であってよい。また、固体電解質膜2にn型半導体層を直接的に付着させた後に別に設けたガス拡散層(多孔性構造をもつ導電性材料)を圧着させてもよい。光電極4に光Lを照射することで、n型半導体表面にホールが発生する。原料ガス供給口20aからアノード室20に導入された原料ガスに含まれる第一の炭化水素は光電極4の表面においてホールと結合して、下記一般式(1)及び(2)のとおり、アルキルラジカルとプロトンとを生成し、アルキルラジカルは反応生成物である第二の炭化水素を生成する(アノード反応)。ただし、光電極4の表面においてホールが第一の炭化水素と直接反応する経路の他に、ホールが水と反応してヒドロキシラジカルとプロトンとを生成し、ヒドロキシラジカルが第一の炭化水素と反応する間接的な経路があってもよい。
+h+H …(1)
=R …(2)
上記一般式(1)及び(2)において、Rは第一の炭化水素を示し、はアルキルラジカルを示し、Rは第二の炭化水素を示し、hはホールを示し、Hはプロトンを示す。
光電極4は、好ましくは担体と当該担体に担持されたn型半導体とを含む電極である。光電極4における上記担体は、好ましくは導電性基材である。導電性基材は、例えば、チタン、ステンレス鋼等の金属材料、炭素材料、及び酸化物材料などであってよく、これらの導電性基材の中でも、化学的な安定性が高いことからチタンが好ましい。
上記導電性基材の形状は、種々の多孔性構造であってよい。上記導電性基材は、多孔性構造を形成することが容易であることから、好ましくは繊維状又は粒子状の導電性材料等の焼結体である。光Lの照射によって発生する励起電子をより流しやすく、電子輸送がより効率化されること、及び多孔性構造を形成可能でありn型半導体の担持量を増大させることができることから、導電性基材は好ましくはチタン繊維の焼結体である。多孔性の導電性基材はガス拡散層としても機能し、n型半導体の表面に反応ガスを拡散するとともに、生成したガスの除去を促進する。なお、多孔性の導電性基材を使用する場合、アノード室20で発生したプロトンの移動がより容易となることからも好ましい。
上記n型半導体は、構成元素としてタングステン、ガリウム、鉄、亜鉛、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される一種以上の元素を含む化合物であってよい。当該化合物に含まれる構成元素を調整することでバンドギャップエネルギーを調整することができる。上記n型半導体は、3.0eVよりも小さなバンドギャップエネルギーを有することが好ましい。上記n型半導体としては、例えば、酸化タングステン(WO、バンドギャップエネルギー:2.7eV)等の酸化物、窒化タンタル(Ta、バンドギャップエネルギー:2.1eV)等の窒化物、酸窒化タンタル(TaON、バンドギャップエネルギー:2.5eV)等の酸窒化物、グラファイト状窒化炭素(g−C、バンドギャップエネルギー:約2.7eV)等の窒化炭素、硫化カドミウム(CdS,バンドギャップエネルギー:2.4eV)等の硫化物などが挙げられる。上記のn型半導体の中でも、光電極の調製が容易であり、高い量子効率を示すという観点において酸化タングステンが好ましい。
触媒電極6は還元反応を促進する触媒を含む電極である。触媒電極6は、ガス拡散電極であることが望ましく、その厚さは担体となる多孔性基材の厚さによって規定される。多孔性基材の厚さは、ハンドリング性の観点から50〜250μmが望ましいが、これよりも薄膜又は厚膜であってよい。また、固体電解質膜2に触媒層を直接的に付着させた後に別に設けたガス拡散層(多孔性構造をもつ導電性材料)を圧着させてもよい。還元反応の種類を特に制限するものではないが、例えば、アノード室20で生成して固体電解質膜2を介してカソード室30へ移動してきたプロトンと、光電極4に光Lを照射することで発生して触媒電極6に移動してきた励起電子とが結合して、下記一般式(3)のとおり、水素が生成する(カソード反応)。
2H+2e=H …(3)
ここで、光電極4におけるn型半導体の伝導帯の下端準位がH/Hの酸化還元電位(標準水素電極基準0V)よりもエネルギー的に低い(電位としては正側に位置する)場合には、バイアス電圧を印加してもよい。この触媒電極6によるカソード反応は、酸素分子の還元や二酸化炭素の還元等に置き換えることも可能である。酸素分子の還元反応を利用する場合には、O/HOの酸化還元電位(標準水素電極基準:1.23V)がエネルギー的に低いため、バイアス電圧を印加しなくても反応が進行する。ここでは、光電極4における伝導帯の下端準位とO/HOの酸化還元電位とのエネルギー差が、励起電子とホールの再結合を抑制するバイアスとなる。
触媒電極6は、好ましくは担体と当該担体に担持された触媒とを含む電極である。触媒電極6における上記担体は、例えば、炭素、及び酸化物等であってよい。触媒としては、上述のカソード反応を進行させるものを用いることができる。
上記触媒は、目的とするカソード反応に対する過電圧が小さい触媒が好ましい。水素発生の過電圧が小さな金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、金、及びニッケル等が挙げられる。触媒電極6が上記のような金属を含むことで、触媒電極6上で水素を発生する反応の反応速度を高めることが可能であり、ひいては光電極4上におけるプロトンの生成を促進することが可能となる。ただし、触媒電極6の触媒成分は金属に限るものではなく、例えば、硫化物、炭化物、及び錯体等を使うこともできる。
光電極4及び触媒電極6の少なくとも一方はプロトン伝導性の化合物を含む電極であることが好ましく、光電極4及び触媒電極6の両方がプロトン伝導性の化合物を含む電極であることがより好ましい。電極がプロトン伝導性の化合物を含むことにより、光電極4、固体電解質膜2及び触媒電極6におけるプロトンの移動が円滑なものとなり、膜電極接合体8のプロトン伝導性をより向上させることができる。プロトン伝導性の化合物としては、例えば、アイオノマー、硫酸塩、リン酸塩、ヘテロポリ酸塩、酸化物、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。これらのプロトン伝導性の化合物の中でも、アイオノマーを含むことが好ましい。
アイオノマーは、例えば、上記n型半導体の粒子及び上記触媒の粒子の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。アイオノマーは酸性官能基を有する高分子である。酸性官能基としては、例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びカルボン酸基等を挙げることができる。酸性官能基を有する高分子としては、例えば、スルホン酸基を有するパーフルオロアイオノマーを挙げることができ、例えば、ナフィオン分散液(デュポン株式会社製、「ナフィオン」は登録商標)として市販されているものを使用することができる。
電源10は、特に制限されるものではなく、膜電極接合体8の光電極4と触媒電極6との間に電圧を印加できるものであればよい。膜電極接合体8に印加する電圧は、n型半導体の種類、及び反応状況に応じて調整してもよく、例えば、0〜1.5Vとすることができる。省エネルギーの観点からは、印加電圧は小さいほうが望ましい。
光電極4に照射する光Lとしては、上記光電極に含まれるn型半導体の吸収帯に対応する波長を含む光を用いることができる。エネルギーの低い光としては、可視光及び紫外光等であってもよい。光Lは、例えば、300〜800nmの波長域の波長を有する光であってよく、また太陽光のように異なる波長を有する光であってもよい。反応装置100は、光源を備えてもよい。この場合、光源は、例えば、発光ダイオード、キセノンランプ、及びハロゲンランプ等を用いることができる。
図2は反応装置の別の実施形態を示す模式図である。図2の反応装置200は、固体電解質膜2、固体電解質膜2上に設けられた光電極4、及び固体電解質膜2の光電極4とは反対側に設けられ、光電極4と電気的に接続された触媒電極6と、を有する膜電極接合体8を備える。膜電極接合体8は上記の実施形態と同じであり、この積層構造に関しては、上述の説明内容を適用することができる。
光電極4は第一の集電板72を介して電源10と接続している。第一の集電板72の光電極4とは反対側の面には石英ガラス板16が設けられている。触媒電極6は第二の集電板74、カーボンペーパ62、及びカーボンセパレータ64の積層体を介して電源10と接続されている。
第一の集電板72及び石英ガラス板16には、原料ガス供給のための原料ガス供給口40aと、光電極4側のアノード反応で生成した炭化水素を導出する導出口40bと、が設けられている。第一の集電板72は、更に光電極4に光Lを照射するための光透過部72aを有する。第一の集電板72は、ガスをより均一に輸送するために、ガス流路を有してもよく、ガス流路は、例えば、蛇行状に形成された溝等であってよい。第二の集電板74及びカーボンセパレータ64には不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口50aと、触媒電極6側のカソード反応で生成した反応生成物(例えば、水素)を取り出す導出口50bと、が設けられている。図2において、カーボンペーパ62がガス拡散層となり、カーボンセパレータ64は蛇行状の溝からなるガス流路(図示せず)を有している。
第一の集電板72及び第二の集電板74は、それぞれ光電極4及び触媒電極6と電源10を含む外部回路とを接続する。第一の集電板72及び第二の集電板74の厚みは、特に制限されるものではなく、それぞれ独立に、2〜5mm程度であってよい。光電極4及び触媒電極6と電源10との電気的な接続は、集電板を介することで、集電板を用いずに導線で直接接続する場合と比較してより確実なものにできる。第一の集電板72及び第二の集電板74は、例えば、金、白金、ステンレス鋼、銅、及びアルミニウム等の金属で形成されていてよい。
上記反応装置によれば目的とする反応生成物の選択率を高めることができる。第二の炭化水素の選択率を、炭素基準で、例えば、20%以上、40%以上、60%以上、又は80%以上とすることができる。各反応生成物の選択率の合計は、100%以下である。反応生成物の選択率は、反応によって消費された第一の炭化水素のうち、目的とする反応生成物になった第一の炭化水素の割合を意味するものであり、下記式(II)から求められる。
(反応生成物の選択率)[炭素基準%]=[(反応生成物の物質量)/{(反応中に消費された第一の炭化水素の物質量)×(反応生成物の量論係数)}]×100 …(II)
ここで「反応生成物の量論係数」は、第一の炭化水素の量論係数が1になるように量論式を書き表したときの反応生成物の量論係数とする。反応生成物の物質量、及び反応で消費される第一の炭化水素の物質量は、ガスクロマトグラフィーによる生成物の定量分析の結果から決定することができる。
上記反応装置によれば目的とする反応生成物の電流効率(ファラデー効率)を高めることができる。第二の炭化水素が生成する反応の電流効率を、例えば、3%以上、8%以上、16%以上、又は33%以上とすることができる。各反応生成物の電流効率の合計は、100%以下である。電流効率は、全通過電荷量の総量に対する反応生成物の生成に用いられた電荷量の割合を意味するものであり、下記式(III)から求められる。
(反応生成物の電流効率)[%]=[(反応生成物の生成に使われた電荷量)/(反応中に光電極から触媒電極に流れた全電荷量)]×100 …(III)
ここで「反応生成物の生成に消費された電荷量」は、目的とする生成物の生成に必要な反応電子数と、ガスクロマトグラフィーによる生成物の定量分析の結果から決定することができる。
以上、反応装置の幾つかの実施形態を説明したが、反応装置は上述のものに限定されない。図1及び図2で説明した反応装置の共通する部分については、互いの説明内容を相互に適用できる。
炭化水素の製造方法は、プロトン伝導性の固体電解質膜と、上記固体電解質膜上に設けられ、n型半導体を含む光電極と、上記固体電解質膜の上記光電極とは反対側に設けられ、上記光電極と電気的に接続された触媒電極と、を有する膜電極接合体の上記光電極に光を照射しながら第一の炭化水素を含む原料ガスを上記光電極に接触させることによって、光電気化学的に上記第一の炭化水素を活性化する工程と、活性化された上記第一の炭化水素を反応させて、上記第一の炭化水素よりも炭素数が大きな第二の炭化水素を生成する工程と、と含む。
炭化水素の製造方法には、上述した反応装置を使用してもよい。したがって、上記炭化水素の製造方法は、上述の反応装置についての説明内容を適用することができる。また逆に、以下の炭化水素の製造方法についての説明内容は上述の反応装置に適用することができる。
第一の炭化水素は、好ましくはメタン、エタン、プロパン、及びブタンからなる群より選択される一種以上の化合物である。第一の炭化水素として上記化合物を使用することにより、上記反応を気相状態で行うことが可能であり、光電極上に高濃度の第一の炭化水素を供給できる点で好ましい。光電気化学反応を電解質溶液中で行う場合、物質の溶解度によって電極付近に存在する原料の供給量に制限があり、反応が進行し難くなることが想定される。また、溶媒への溶解度の低いガス等が原料となる場合には、溶液での原料供給で濃度を向上させる方法では限界がある。例えば、電解質溶液として水溶液を使用する場合には、水への溶解性に乏しい炭化水素を原料として供給することが困難である。メタンの水への溶解度は極端に低いため、電解質中の溶存メタン濃度に依存するメタンの活量は、低い値にならざるを得ない。メタンの活量が低くなるため、光電極側においてホールと結合し、活性化させることは難しい。これに対して、上記のように炭化水素を気相状態で供給することで、原料供給をより効率的にでき(光電極側における炭化水素の活量を高めることができ)、光照射により光電極に発生したホールの利用効率を高めることが可能となる。また、メタンの活量が低い場合には、反応を起こすために余計なバイアス電圧を印加する必要があり、エネルギー的に不利である。
供給する第一の炭化水素の濃度は、第一の炭化水素を含む混合ガス全量を基準として、好ましくは10体積%以上、より好ましくは50体積%以上、更に好ましくは70体積%以上であり、100体積%(供給ガスの全量が低級炭化水素ガスであることを意味する)であってもよい。供給する第一の炭化水素の濃度が上記範囲であると、光電極上に供給する第一の炭化水素の濃度をより高めることが可能であり、炭化水素生成に関する選択率と電流効率をより高めることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[膜電極接合体の調製]
カーボン担体に担持された白金触媒をイオン交換水に分散させたのち、プロパノールを加えて更に分散させた。次いで、スルホン酸修飾パーフルオロアイオノマーと、カーボン担体との質量比が等しくなるように、スルホン酸修飾パーフルオロアイオノマーを添加して触媒インクを調製した。白金の塗布量が0.1〜0.2mg/cmとなる様に、この触媒インクをテフロンシートに塗布、乾燥して触媒電極膜を形成した。固体電解質膜としてのナフィオン膜に、上記触媒電極膜を押し付けて140℃でプレスすることにより、テフロンシートから固体電解質膜に上記触媒電極膜を転写し、触媒電極を有する固体電解質膜を得た。
次に、メタタングステン酸アンモニウム六水和物の水溶液(メタタングステン酸アンモニウムの33質量%水溶液)に、ポリエチレングリコール(PEG20,000)を14質量%となるように溶解させた。多孔性のチタン繊維焼結体に、上記メタタングステン酸アンモニウム六水和物の水溶液をディップコーティングした後、空気中にて650℃で2時間焼成することで酸化タングステン(WO、バンドギャップエネルギー:2.7eV)が担持されたチタン繊維焼結体を得た。次に、スルホン酸修飾パーフルオロアイオノマーの分散液を、焼成後の酸化タングステンが付着したチタン繊維焼結体に塗布した後、乾燥させることで光電極を得た。
得られた光電極を上述の触媒電極を有する固体電解質膜の触媒電極とは反対側の面に接するようにして、140℃でプレスすることで、光電極、固体電解質膜及び触媒電極がこの順に積層された膜電極接合体を調製した。
膜電極接合体の光電極側には、1辺の長さが2cmの正方形の光照射用の孔が4か所設けられた第一の集電板を接触させ、石英板ガラスで蓋をした。また膜電極接合体の触媒電極側には、ガス拡散層としてのカーボンペーパ及びガス流路を有するカーボンセパレータを介して第二の集電板を接触させた。さらに、第一の集電板と、第二の集電板とを電源を介して接続することで反応装置を準備した(図2に示すような構成を有する)。
上記で得られた反応装置の光電極上に、混合ガス中のメタン濃度が5体積%となる様にアルゴンガスで希釈した混合ガス(原料ガスに相当)を流量20mL/分で供給した。一方、上記で得られた反応装置の触媒電極に、アルゴンガスを流量20mL/分で供給した。なお、上記混合ガス及びアルゴンガスは、室温下でイオン交換水にバブリングさせ加湿させてから供給した。
光電極及び触媒電極のそれぞれに上記混合ガス及び上記アルゴンガスを供給しながら、青色発光ダイオードを用いて上記光電極に光(中心波長:453nm、半値幅:22nm、光電極設置位置における照度:7mW/cm)を照射し、メタンを反応させた。この反応の間、光電極及び触媒電極の間に1.2Vのバイアス電圧を印加した。光の照射は60分間継続した。
図3は実施例におけるガス供給手段及び分析手段を含む反応装置の全体構成を示す模式図である。反応の状況を、ポテンシオスタットを用いた2極式の電気化学測定により観測した。また、アノード室及びカソード室のそれぞれから排出されるガス成分については、ガスクロマトグラフを用いて定量分析した。結果を図4、図5及び図6に示す。光電極の外部量子効率を下記式(I)から求めた。結果を表1に示す。各種生成物についての選択率を下記式(II)から求めた。結果を表2に示す。各種生成物の電流効率を下記式(III)から求めた。結果を表3に示す。ここで、外部量子効率とは、照射した光子のうち光電流に変換されて移動した電子の割合(Incident Photon−to−current Conversion Efficiency:IPCE)のことである。
(外部量子効率)[IPCE%]=[(反応中に光電極から触媒電極に流れた電子数)/(照射光の光子数)]×100 …(I)
ここで、「反応中に光電極から触媒電極に流れた電子数」は、ポテンシオスタットによる光電流の測定値から決定することができる。「照射光の光子数」は、光パワーメータを用いて、外部光源から光電極に入射する単色光の照度を測定することで決定できる。
(反応生成物の選択率)[炭素基準%]=[{(反応生成物の物質量)/(反応中に消費された第一の炭化水素の物質量)×(反応生成物の量論係数)}]×100 …(II)
ここで「反応生成物の量論係数」は、第一の炭化水素の量論係数が1になるように量論式を書き表したときの反応生成物の量論係数とする。反応生成物の物質量、及び反応で消費された第一の炭化水素の物質量は、ガスクロマトグラフィーによる生成物の定量分析の結果から決定することができる。ただし、本実施例では、ガスクロマトグラフィーで定量できた反応生成物の物質量と量論係数から、反応で消費された第一の炭化水素の物質量を算出した。
(反応生成物の電流効率)[%]=[(反応生成物の生成に使われた電子数)/(反応中に光電極から触媒電極に流れた電子数)]×100 (III)
ここで「反応生成物の生成に消費された電子数」は、目的とする生成物の生成に必要な反応電子数と、ガスクロマトグラフィーによる生成物の定量分析の結果から決定することができる。
(実施例2〜4)
実施例1で用いた反応装置と同じものを用いて、光電極上に供給する混合ガス中のメタン濃度を10体積%(実施例2)、50体積%(実施例3)、70体積%(実施例4)、及び100体積%(実施例5)の順に増加させていったこと以外は、実施例1と同様にしてメタンの反応を行った。実施例1と同様に評価を行い、結果を図4、図5及び図6に示す。外部量子効率を求め、結果を表1に示す。また、各種生成物についての選択率及びファラデー効率を求め、結果を表2及び表3に示す。
Figure 2019127641
Figure 2019127641
Figure 2019127641
図4は実施例における光電極と触媒電極との間に流れた電流値の経時変化を示すグラフである。図4から、光電極に光を照射している間だけ大きなアノード電流が流れ、光の照射を停止する(図4中において「off」で示す)と電流が速やかに流れなくなっており、酸化タングステンを含む光電極が、照射光に対して良好な応答を示して酸化反応を進行させることが確認された。なお、このときの光電流値および照射光強度から外部量子効率を算出したところ、9.7〜11.1%であり高い値を示した。
光電極側で発生した生成物を分析したところ、目的のエタンが生成されていることが確認された。エタンは下記化学反応式(4)に基づく酸化反応により生成したと推察される。その他、酸素及び二酸化炭素も生じていることが確認された。
図5の(a)は実施例1〜3において生成したエタンのモル流量の経時変化を示すグラフであり、図5の(b)は実施例1〜3において生成した酸素のモル流量の経時変化を示すグラフであり、図5の(c)は実施例1〜3において生成した二酸化炭素のモル流量の経時変化を示すグラフである。モル流量は生成物の生成速度を示し、図5から、光電極に光を照射している時間に対応して生成物が生じていることが確認された。エタンの生成はメタンの濃度が高いほど高く、選択率が向上することが確認された。なお、酸素及び二酸化炭素は混合ガスを加湿して供給したことによる副生成物であると推察される。すなわち、下記化学反応式(5)及び(6)に基づく反応により生成されたものと推察される。
2CH+2h=C+2H …(4)
2HO+4h=O+4H …(5)
CH+2HO+8h=CO+8H …(6)
上記式(4)、(5)及び(6)中、hは光電極で生じたホールを意味する。
触媒電極側で発生した生成物を分析したところ、水素が生じていることが確認された。水素は下記化学反応式(7)に基づく反応によって生成したと推察される。図6は実施例1〜3において生成した水素のモル流量の経時変化を示すグラフである。水素の発生も光電極への光の照射時間とよく対応していることが確認された。水素生成の電流効率は、ほぼ100%であった。
2H+2e=H …(7)
図5に示される結果から、メタンの濃度を50%に増加させると、酸素の生成速度が大きく減少し、エタン及び二酸化炭素の生成速度が増加することが確認された。表2に示される結果から、メタン濃度が増加するにつれて、エタンの選択率が増加し、二酸化炭素の選択率が減少した。なお、選択率の計算の際には、エタン及び二酸化炭素だけがメタンに含まれる炭素由来の生成物であると仮定して、ガスクロマトグラフィーを用いたこれらの生成物の定量分析の結果から、反応中に消費されたメタン物質量を計算した。そのため、エタン及び二酸化炭素の選択率の合計は100%である。
表3に示される結果から、メタン濃度が増加すると、酸素の電流効率が大きく減少し、エタン及び二酸化炭素の電流効率が増加した。しかし、エタン生成の電流効率はメタン濃度に伴って単調に増加したのに対して、二酸化炭素生成の電流効率はメタン濃度50%で頭打ちとなり、メタン濃度が高くなりすぎると減少する傾向を示した。なお、電流効率の計算の際には、上記化学反応式(4)、(5)、及び(6)に基づいて、エタン1molの生成に対する電子数は2mol、酸素1molの生成に対する電子数は4mol、二酸化炭素1molの生成に対する電子数は8molとして反応電子数を計算した。
2…固体電解質膜、4…光電極、6…触媒電極、8…膜電極接合体、10…電源、12…容器、14…光透過部、16…石英ガラス板、20…アノード室、20a,40a…原料ガス供給口、20b,30b,40b,50b…導出口、30…カソード室、30a,50a…不活性ガス供給口、72…第一の集電板、72a…光透過部、74…第二の集電板、100,200…反応装置。

Claims (12)

  1. プロトン伝導性の固体電解質膜と、前記固体電解質膜上に設けられ、n型半導体を含む光電極と、前記固体電解質膜の前記光電極とは反対側に設けられ、前記光電極と電気的に接続された触媒電極と、を有する膜電極接合体を備え、
    前記光電極に光を照射しながら炭化水素を含む原料ガスを前記光電極に接触させることによって、光電気化学的に前記炭化水素を活性化させ反応生成物を得る、反応装置。
  2. 前記光電極及び前記触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物を含む、請求項1に記載の反応装置。
  3. 前記プロトン伝導性の化合物がアイオノマーを含む、請求項1又は2に記載の反応装置。
  4. 前記光電極が3.0eVよりも小さなバンドギャップエネルギーを有するn型半導体を含むガス拡散電極である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反応装置。
  5. 前記光電極側のアノード反応で生成する前記反応生成物と、前記触媒電極側のカソード反応で生成する水素とを別々に回収可能に構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置。
  6. 前記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンからなる群より選択される一種以上の化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
  7. プロトン伝導性の固体電解質膜と、前記固体電解質膜上に設けられ、n型半導体を含む光電極と、前記固体電解質膜の前記光電極とは反対側に設けられ、前記光電極と電気的に接続された触媒電極と、を有する膜電極接合体の前記光電極に光を照射しながら第一の炭化水素を含む原料ガスを前記光電極に接触させることによって、光電気化学的に前記第一の炭化水素を活性化する工程と、
    活性化された前記第一の炭化水素を反応させて、前記第一の炭化水素よりも炭素数が大きな第二の炭化水素を生成する工程と、と含む、炭化水素の製造方法。
  8. 前記光電極と前記触媒電極との間にバイアス電圧を印加しながら、前記原料ガスを前記光電極に接触させる、請求項7に記載の炭化水素の製造方法。
  9. 前記光電極及び前記触媒電極の少なくとも一方がプロトン伝導性の化合物を含む、請求項7又は8に記載の炭化水素の製造方法。
  10. 前記プロトン伝導性の化合物がアイオノマーを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法。
  11. 前記光電極が3.0eVよりも小さなバンドギャップエネルギーを有するn型半導体を含むガス拡散電極である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法。
  12. 前記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンからなる群より選択される一種以上の化合物を含む、請求項7〜11のいずれか一項に記載の炭化水素の製造方法。
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