JP2019123925A - 蒸着膜成膜装置及び蒸着膜成膜方法 - Google Patents

蒸着膜成膜装置及び蒸着膜成膜方法 Download PDF

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【課題】プラスチック基材と酸化アルミニウム蒸着膜との密着性が良好で、かつバリア性に優れた蒸着膜をプラスチック基材に成膜する。【解決手段】成膜装置は、プラスチック基材の表面に無機酸化物の蒸着膜を成膜する成膜装置であって、巻きかけられたプラスチック基材を搬送する成膜ローラーと、成膜ローラーに対向するよう位置し、蒸着膜の原料となる無機材料を含むターゲットが配置された成膜源と、を有する成膜機構と、プラスチック基材の搬送方向における成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマがプラスチック基材の表面に到達するよう水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する水蒸気放出部を少なくとも有する水蒸気供給機構と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、基材上に蒸着膜を成膜するための蒸着膜成膜装置及び蒸着膜成膜方法に関する。
蒸着法によって基材上に成膜された蒸着膜を備えた積層フィルムが、様々な用途で利用されている。例えば、食品、医薬品等のレトルト処理を必要とする分野では、内容物の変質を防止し、かつ機能や性質を維持できるように、温度、湿度などの影響を受けない、より高いバリア性を、安定して発揮し得る積層フィルムが、包装材料として求められている。
しかしながら、温度、湿度などの影響を受けやすいバリア性に優れた蒸着膜を有する積層フィルムのプラスチック基材は、寸法変化を起こし易く、このため、プラスチック基材の寸法変化に伴う伸縮に対応して、その上に設けた、酸化ケイ素蒸着膜、あるいは酸化アルミニウム蒸着膜等の蒸着膜の追従が困難である。そのため、プラスチック基材と、酸化ケイ素蒸着膜あるいは酸化アルミニウム蒸着膜等の蒸着膜との層間において、高温多湿の厳しい環境下等において、しばしば層間剥離現象が生じ、更に、クラックやピンホ−ル等も発生する。その結果、本来のバリア性能を著しく棄損し、そのバリア性能を保持することが極めて困難であるという問題がある。
上記の蒸着膜を用いる方法で、プラスチック基材上に酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成する場合において、プラスチック基材と形成した蒸着膜との間で高い密着性を得るために、平行平板型装置によるインラインプラズマ前処理や、アンダーコート処理層の形成といったプラスチック基材表面を改質する方法が実施されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
例えば、特許文献1の、一般的に用いられる平行平板型装置によるインラインプラズマ処理法は、プラスチック表面に水酸基やカルボニル基などの官能基を導入し、同官能基を介在して蒸着膜間との密着性を発現させている。しかし、水酸基による水素結合で密着性を発現させたものは、電子ペーパーなどの電子デバイス、レトルト包装材料などの用途に必要とされる高温多湿環境下では水素結合が破壊されるため密着性が著しく低下する問題がある。また、上記プラズマ処理は空気中で発生させたプラズマ雰囲気下をフィルムが通過するだけであることから基材と蒸着膜間で十分な高温多湿の厳しい環境下等における密着性が得られていないのが実情である。
また、特許文献2に記載のアンダーコート処理法は、プラスチックフィルム表面に接着層としてアンダーコート層を設けるもので、一般的に実施されているが、製造法として工程が増えるためコストアップとなる。
そこで、プラズマ発生のための電極を基材側にしてプラズマを発生させるリアクティブイオンエッチング(RIE)方式を用いてプラスチック基材表面に前処理を施すことにより、密着性を向上する技術が実施されている(特許文献3)。前記プラズマRIE法は、基材の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を飛ばし平滑化するという物理的効果の、2つの効果を同時に得ることで密着性を発現するものである。
RIE法では、上記インラインプラズマ処理と異なり、水素結合で密着性を発現していないことから、高温多湿環境下での密着性の低下は見られない。しかし、RIE法では、プラスチック基材上に官能基を持たせるため、界面での加水分解等を生じる耐水、耐熱水性が依然として不十分である。また、RIE法で十分な密着性を得るためには、一定値以上のEd値(=プラズマ密度×処理時間)が必要である。同法で一定値以上のEd値を得るためにはプラズマ密度を高くする方法と、処理時間を長くする方法が考えられるが、プラズマ密度を高くする場合は、高出力の電源が必要であり、基材のダメージが大きくなる問題があり、処理時間を長くする場合は、生産性の低下が問題となる(特許文献4、特許公報5参照)。
そのため、上記のような搬送されるプラスチック基材表面に無機酸化物の蒸着膜を形成する上での問題を解決し、レトルト処理後においても、プラスチック基材と蒸着膜との密着性が良好で、バリア性に優れた積層フィルムが望まれている。
特に、食品、医薬品等の高温高圧でのレトルト処理、殺菌処理を必要とする分野では、内容物の変質を防止し、かつ機能や性質を維持できるように、温度、湿度などの影響を受けない、より高いバリア性を、安定して発揮し得るバリア性積層フィルムが求められ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の酸化アルミニウムの薄膜からなるバリア層とバリア性の塗膜層を積層した多層構造を有する耐レトルト性に優れたバリア性積層フィルムが望まれている。
特開平7−233463号公報 特開2000−43182号公報 特開2005−335109号公報 特許第4461737号公報 特許第4135496号公報
従来技術の問題点において、熱水処理によるレトルト処理は、プラスチック基材と蒸着膜の界面に大きな機械的及び化学的なストレスを与える。このストレスによりバリア性が劣化してしまう。この部位にストレスがかかるのは、この部位が積層構成の中で一番脆弱だからである。従って、レトルト耐性を得るためには、基材との界面に強固に蒸着膜を被覆することが重要である。
本発明は、上記の課題及び知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱水処理のような蒸着膜にストレスをかける処理の後であっても、プラスチック基材との密着性が良好で、かつバリア性に優れた蒸着膜をプラスチック基材に成膜するための蒸着膜成膜装置及び蒸着膜成膜方法を提供することである。
本発明は、プラスチック基材の表面に無機酸化物の蒸着膜を成膜する成膜装置であって、巻きかけられた前記プラスチック基材を搬送する成膜ローラーと、前記成膜ローラーに対向するよう位置し、前記蒸着膜の原料となる無機材料を含むターゲットが配置された成膜源と、を有する成膜機構と、前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマが前記プラスチック基材の表面に到達するよう水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する水蒸気放出部を少なくとも有する水蒸気供給機構と、を備える、蒸着膜成膜装置である。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記水蒸気供給機構は、水蒸気又は水蒸気プラズマを生成する水蒸気生成部と、前記水蒸気生成部が生成した水蒸気又は水蒸気プラズマを前記水蒸気放出部に送給する水蒸気送給部と、前記プラスチック基材の周囲における水蒸気又は水蒸気プラズマの検出量に基づいて前記水蒸気送給部を制御して前記水蒸気放出部への水蒸気又は水蒸気プラズマの送給量を調整する水蒸気制御部と、を更に有してもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記水蒸気生成部は、水を収容するタンクを含み、前記水蒸気送給部は、前記タンクに収容されている水の液面よりも上方において前記タンクに接続された配管を含んでもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記水蒸気放出部は、前記プラスチック基材の搬送方向に直交する前記プラスチック基材の幅方向に並び、水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する複数の放出口を含んでもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記蒸着膜成膜装置は、前記成膜機構が配置された成膜室から隔壁によって隔てられるとともに前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜室よりも上流側に位置するプラズマ前処理室に配置されたプラズマ前処理機構を更に備え、前記プラズマ前処理機構は、前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜ローラーよりも上流側において巻きかけられた前記プラスチック基材を搬送する前処理ローラーと、前処理ローラーの周囲にプラズマを発生させるプラズマ供給手段と、を有し、前記水蒸気放出部は、前記プラズマ前処理室において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する前処理室用水蒸気放出部を有してもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記蒸着膜成膜装置は、前記成膜機構が配置された成膜室から隔壁によって隔てられた基材搬送室に配置された基材搬送機構を更に備え、前記水蒸気放出部は、前記基材搬送室のうち前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する基材搬送室用水蒸気放出部を有してもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記水蒸気放出部は、前記成膜機構が配置された成膜室のうち前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する成膜室用水蒸気放出部を有してもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記成膜機構は、酸素ガスが前記プラスチック基材の表面に到達するよう酸素ガスを放出する酸素放出部を有し、前記成膜源に配置された前記ターゲットは、アルミニウムを含んでもよい。
本発明による蒸着膜成膜装置において、前記成膜機構は、酸素ガスが前記プラスチック基材の表面に到達するよう酸素ガスを放出する酸素放出部を有し、前記成膜源に配置された前記ターゲットは、珪素を含んでもよい。
本発明は、プラスチック基材の表面に無機酸化物の蒸着膜を成膜する成膜方法であって、水蒸気又は水蒸気プラズマが前記プラスチック基材の表面に到達するよう水蒸気放出部が水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する水蒸気供給工程と、前記プラスチック基材の搬送方向における前記水蒸気放出部よりも下流側において前記プラスチック基材が巻きかけられた成膜ローラーに対向する成膜源に配置された、前記蒸着膜の原料となる無機材料を含むターゲットを蒸発させて、前記プラスチック基材の表面に前記蒸着膜を成膜する成膜工程と、を備える、蒸着膜成膜方法である。
本発明によれば、プラスチック基材との密着性が良好で、かつバリア性に優れた蒸着膜をプラスチック基材に成膜することができる。
蒸着膜を備えた積層フィルムの一例を示す断面図である。 蒸着膜を備えた積層フィルムの一例を示す断面図である。 積層フィルムのプラスチック基材の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る蒸着膜成膜装置の一例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の水蒸気供給機構の一例を示す図である。 飛行時間型二次イオン質量分析法を用いた積層フィルムの分析結果のグラフ解析図の一例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 水蒸気供給機構の水蒸気放出部の一例を示す斜視図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。 蒸着膜成膜装置の一変形例を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルム及び該積層フィルムを含むバリア性積層フィルムについて詳しく説明する。なお、この実施例は、単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。
図1aは、本発明において作製される積層フィルムの一例を示す断面図であり、図1bは、該積層フィルムを含み、表面にバリア性被覆層を積層したバリア性積層フィルムの一例を示す断面図であり、図2は、バリア性を有する積層フィルムの蒸着膜を成膜するのに好適なローラー式連続蒸着成膜装置の構成を模式的に示す図である。なお、バリア性被覆層を積層したバリア性積層フィルムを形成するために、バリアコート剤塗布装置が蒸着膜成膜装置に連続して配置されるが、公知のローラー塗布装置を連設するものであり、ここでは図示するのを省略した。
密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルムAは、図1aに示すように、プラスチック基材1の一方の面に、密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜2が積層されてなる層構成を基本構成とする。さらに図1bに示すように、該積層フィルムAの蒸着膜2上にバリア性被覆層3がさらに積層されてなる積層構成とし、更に、密着性及びバリア性に優れ、耐レトルト性に優れたバリア性積層フィルムBとしてもよい。後述する蒸着膜成膜装置によってプラスチック基材1の一方の面に成膜される蒸着膜2は、酸化アルミニウムや酸化珪素などの無機酸化物からなる。蒸着膜2が酸化アルミニウムを含む場合、後述する成膜源のターゲットがアルミニウムを含む。蒸着膜2が酸化珪素を含む場合、後述する成膜源のターゲットが珪素を含む。本実施の形態においては、蒸着膜2が酸化アルミニウムからなる例について説明する。
プラスチック基材は、特に制限されるものではなく、公知のプラスチックのフィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、バイオマス由来のポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂6、ポリアミド樹脂66、ポリアミド樹脂610、ポリアミド樹脂612、ポリアミド樹脂11、ポリアミド樹脂12などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα−オレフィンの重合体などのポリオレフィン系樹脂等、からなるフィルムを使用することができる。ポリエチレンテレフタレートとして知られているポリエステル系樹脂は、特に好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートとしては、例えばメカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンテレフタレートを使用できる。
(ポリブチレンテレフタレートフィルム)
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、熱変形温度が高く、機械的強度、電気的特性にすぐれ、成型加工性も良いことなどから、食品などの内容物を収容する包装袋に用いると、レトルト処理を施す際に包装袋が変形したり、その強度が低下したりすることを抑制することができる。
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、高い強度を有する。このため、ポリブチレンテレフタレートフィルムを用いると、包装袋を構成する包装用材料がナイロンフィルムを含む場合と同様に、包装袋に耐突き刺し性を持たせることができる。
また、ポリブチレンテレフタレートフィルムは、高温高湿度環境下で加水分解するためレトルト処理後の密着強度、バリア性の低下がみられるが、ナイロンに比べて水分を吸収しにくいという特性を有する。このため、ポリブチレンテレフタレートフィルムを包装用材料の外面に配置した場合であっても、包装袋の包装用材料間のラミネート強度が低下してしまうことを抑制することができる。ポリブチレンテレフタレートフィルムは、上記のような性質を持つため、レトルト包装袋に用いると、従来のポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの貼り合せ包装材に置き換えることができることから、好ましく用いられる。
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、主成分としてポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)を含むフィルムであり、51質量%以上のPBTを含む樹脂フィルムである。そして、ポリブチレンテレフタレートフィルムはその構造から2つの態様に分けられる。
第1の態様に係るポリブチレンテレフタレートフィルムにおけるPBTの含有率は、60質量%以上が好ましく、さらには70質量%以上、特には75質量%以上が好ましく、最も好ましくは80質量%以上である。
主たる構成成分として用いるPBTは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4−ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上である。
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、PBT以外のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。PBT以外のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)などのポリエステル樹脂のほか、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸が共重合されたPBT樹脂や、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が共重合されたPBT樹脂を挙げることができる。
これらPBT以外のポリエステル樹脂の添加量は、40質量%以下が好ましい。PBT以外のポリエステル樹脂の添加量が40質量%を超えると、PBTとしての力学特性が損なわれ、インパクト強度や耐ピンホール性、絞り成形性が不十分となることが考えられる。
第1の態様に係るポリブチレンテレフタレートフィルムの層構成は、キャスト法によって、樹脂を多層化してキャストすることによって作製されたもので、複数の単位層を含む多層構造部からなる。複数の単位層はそれぞれ、主成分としてPBTを含む。例えば、複数の単位層は、それぞれ、少なくとも51質量%以上の、好ましくは60質量%以上のPBTを含む。なお、複数の単位層においては、n番目の単位層の上にn+1番目の単位層が直接積層されている。すなわち、複数の単位層の間には、接着剤層や接着層が介在されていない。このようなポリブチレンテレフタレートフィルムは、少なくとも10層以上、好ましくは60層以上、より好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上の単位層を含む多層構造部からなる。
第2の態様に係るポリブチレンテレフタレートフィルムは、PBTを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む単一の層によって構成されている。PBTを主たる繰返し単位とするポリエステルは、例えば、グリコール成分としての1,4−ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモ、またはコポリマータイプのポリエステルを含む。第2の構成に係るPBTの含有率は、70質量%以上が好ましく、さらには80質量%以上が好ましく、最も好ましくは90質量%以上である。
第2の態様に係るポリブチレンテレフタレートフィルムは、PBT以外のポリエステル樹脂を30質量%以下の範囲で含んでいてもよい。ポリエステル樹脂を含むことにより、PBT結晶化を抑制することができ、ポリブチレンテレフタレートフィルムの延伸加工性を向上させることができる。PBTと配合するポリエステル樹脂としては、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを用いることができる。例えば、グリコール成分としてのエチレングリコール、二塩基酸成分としてのテレフタル酸を主成分としたホモタイプを好ましく用いることができる。
第2の構成に係るポリブチレンテレフタレートフィルムは、チューブラー法又はテンター法により製造することができる。チューブラー法又はテンター法により、未延伸原反を縦方向及び横方向を同時に延伸してもよく、若しくは、縦方向及び横方向を逐次延伸してもよい。このうち、チューブラー法は、周方向の物性バランスが良好な延伸フィルムを得ることができ、特に好ましく採用される。
(バイオマス由来のポリエステルフィルム)
バイオマス由来のポリエステルフィルムは、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50〜95質量%、好ましくは50〜90質量%含んでなるものである。
バイオマス由来のエチレングリコールは、従来の化石燃料由来のエチレングリコールと化学構造が同じであるため、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて合成されたポリエステルのフィルムは、従来の化石燃料由来のポリエステルフィルムと機械的特性等の物性面で遜色がない。したがって、積層フィルムおよびそれを用いたバリア性積層フィルムは、カーボンニュートラルな材料からなる層を有するため、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層フィルムおよびそれを用いたバリア性積層フィルムに比べて、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、サトウキビ、トウモロコシ等のバイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
ポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
バイオマス由来のポリエステルフィルムを形成する樹脂組成物中に5〜45質量%の割合で含まれてもよいポリエステルは、化石燃料由来のポリエステル、化石燃料由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステル、バイオマス由来のポリエステル製品のリサイクルポリエステルである。
上記のようにして得られるポリエステルを含む樹脂組成物は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、ポリエステル中の全炭素に対して10〜19%含まれることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。ポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioを、以下のように定義する。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
ポリエチレンテレフタレートを例にとると、ポリエチレンテレフタレートは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10〜19%であることが好ましい。樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。
(メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンテレフタレートを含むフィルム)
本発明のプラスチック基材1として、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETとも記す)を含むフィルムを使用できる。
具体的には、プラスチック基材1として使用されるフィルムは、PETボトルをメカニカルリサイクルによりリサイクルしたPETを含み、このPETは、ジオール単位がエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸およびイソフタル酸を含む。
ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたPETボトル等のポリエチレンテレフタレート樹脂製品を粉砕、アルカリ洗浄してPET樹脂製品の表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してPET樹脂の内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、PET樹脂からなる樹脂製品の汚れを取り除き、再びPET樹脂に戻す方法である。
以下、本明細書においては、PETボトルをリサイクルしたポリエチレンテレフタレートを「リサイクルポリエチレンテレフタレート(以下、リサイクルPETとも記す)」といい、リサイクルされていないポリエチレンテレフタレートを「ヴァージンポリエチレンテレフタレート(以下、ヴァージンPETとも記す)」というものとする。
フィルムに含まれるPETのうち、イソフタル酸の含有量は、PETを構成する全ジカルボン酸単位に対して、0.5モル%以上5モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上2.5モル%以下であることがより好ましい。
イソフタル酸の含有量が0.5モル%未満であると柔軟性が向上しない場合があり、一方、5モル%を超えるとPETの融点が下がり耐熱性が不十分となる場合がある。
なお、PETは、通常の化石燃料由来のPETの他、バイオマスPETであっても良い。「バイオマスPET」とは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含み、ジカルボン酸単位として化石燃料由来のジカルボン酸を含むものである。このバイオマスPETは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするPETのみで形成されていてもよいし、バイオマス由来のエチレングリコールおよび化石燃料由来のジオールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするPETで形成されていてもよい。
PETボトルに用いられるPETは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。
具体的には、上記のジオール単位とジカルボン酸単位とのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、または有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法などによって製造することができる。
上記PETを製造する際に用いるジオール単位の使用量は、ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化および/またはエステル交換反応および/または縮重合反応中の留出があることから、0.1モル%以上20モル%以下過剰に用いられる。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
PETボトルをリサイクルしたPETは、上記のようにして重合して固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去したりするため、必要に応じて固相重合を行ってもよい。
具体的には、固相重合は、PETをチップ化して乾燥させた後、100℃以上180℃以下の温度で1時間から8時間程度加熱してPETを予備結晶化させ、続いて、190℃以上230℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下において1時間〜数十時間加熱することにより行われる。
リサイクルPETに含まれるPETの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下であることが好ましい。極限粘度が0.58dl/g未満の場合は、基材としてPETフィルムに要求される機械特性が不足する可能性がある。他方、極限粘度が0.80dl/gを超えると、フィルム成膜工程における生産性が損なわれる場合がある。なお、極限粘度は、オルトクロロフェノール溶液で、35℃において測定される。
リサイクルPETを含むフィルムは、リサイクルPETを50重量%以上95重量%以下の割合で含むことが好ましく、リサイクルPETの他、ヴァージンPETを含んでいてもよい。リサイクルPETを含むフィルムが、さらにヴァージンPETを含む場合、ヴァージンPETは、上記したようなジオール単位がエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位がテレフタル酸およびイソフタル酸を含むPETであってもよく、また、ジカルボン酸単位がイソフタル酸を含まないPETであってもよい。
また、リサイクルPETを含むフィルムは、PET以外のポリエステルを含んでいてもよい。
リサイクルPETは、例えば、ジカルボン酸単位として、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸以外にも、脂肪族ジカルボン酸等を含んでいてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸などの、通常炭素数が2以上40以下の鎖状または脂環式ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどの低級アルキルエステル、無水コハク酸などの上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸およびコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物がより好ましい。
このようなリサイクルPETを含むフィルムは、単層であってもよく、多層であってもよい。
図1cに示すように、プラスチック基材1に、上記したようなリサイクルPETを含むフィルムを用いる場合は、第1層1a、第2層1b、および第3層1cの3層を備えたフィルムを用いてもよい。
この場合、第2層1bをリサイクルPETのみから構成される層またはリサイクルPETとヴァージンPETとの混合層とし、第1層1aおよび第3層1cは、ヴァージンPETのみから構成される層とすることが好ましい。
このように、第1層1aおよび第3層1cにヴァージンPETのみを用いることにより、リサイクルPETがプラスチック基材1の表面または裏面から表出することを防止することができる。このため、積層体の衛生性を確保することができる。
また、フィルムは、図1cに示す第1層1aを備えず、第2層1bおよび第3層1cの2層を備えたフィルムであってもよい。また、フィルムは、図1cに示す第3層1cを備えず、第1層1aおよび第2層1bの2層を備えたフィルムであってもよい。これらの場合においても、第2層1bをリサイクルPETのみから構成される層またはリサイクルPETとヴァージンPETとの混合層とし、第1層1aおよび第3層1cを、ヴァージンPETのみから構成される層とすることが好ましい。
リサイクルPETとヴァージンPETとを混合して混合層を成形する場合には、別々に成形機に供給する方法、ドライブレンド等で混合した後に供給する方法などがある。中でも、操作が簡便であるという観点から、ドライブレンドで混合する方法が好ましい。
リサイクルPETを含むフィルムには、その製造工程において、またはその製造後に、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、フィルムに含まれる、リサイクルPETを含む樹脂組成物全体に対して、5質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。
フィルムは、上記したPETを用いて、例えば、Tダイ法によってフィルム化することにより形成することができる。具体的には、上記したPETを乾燥させた後、PETの融点以上の温度(Tm)〜Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することによりフィルムを成形することができる。溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機等を目的に応じて使用することができる。
上記のようにして得られたフィルムは2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸は従来公知の方法で行うことができる。例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたフィルムを、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムとする。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。また、縦延伸の倍率は、フィルム用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、PETフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムを得ることが難しい。
縦延伸されたフィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施して2軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50℃以上100℃以下の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下が好ましい。2.5倍未満の場合はフィルムの厚み斑が大きくなり良好なフィルムが得られにくく、5.0倍を超える場合は成膜中に破断が発生しやすくなる。
横延伸のあと、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、PETのTg+70〜Tm−10℃である。また、熱固定時間は1秒以上60秒以下が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
上記のようにして得られるリサイクルPETを含むフィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、5μm以上100μm以下程度であり、好ましくは5μm以上25μm以下である。また、リサイクルPETを含むフィルムの破断強度は、MD方向で5kg/mm以上40kg/mm以下、TD方向で5kg/mm以上35kg/mm以下であり、また、破断伸度は、MD方向で50%以上350%以下、TD方向で50%以上300%以下である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1%以上5%以下である。
なお、ヴァージンPETは、化石燃料ポリエチレンテレフタレート(以下、化石燃料PETとも記す)であってもよく、バイオマスPETであってもよい。ここで、「化石燃料PET」とは、化石燃料由来のジオールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするものである。また、リサイクルPETは、化石燃料PETを用いて形成されたPET樹脂製品をリサイクルして得られるものであってもよく、バイオマスPETを用いて形成されたPET樹脂製品をリサイクルして得られるものであってもよい。
上記のようなプラスチック基材としてのプラスチックフィルムの厚さは、特に制限を受けるものではなく、後述するローラー式連続蒸着膜成膜装置により蒸着膜を成膜する際の前処理や成膜処理することができるものであればよく、可撓性及び形態保持性の観点から、6〜400μm、好ましくは、9〜200μmの範囲が望ましい。プラスチックフィルムの厚さが前記範囲内にあると、曲げやすい上に搬送中に破けることもなく、密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルムの製造に用いられる連続蒸着膜成膜装置で取り扱いやすい。
次に、蒸着膜について説明する。蒸着膜の成膜は、プラスチック基材と蒸着膜との密着性等を向上させるために、プラスチック基材のフィルムの表面に、以下で説明するプラズマ前処理機構を用いたプラズマ前処理を行うことが好ましい。プラズマ前処理は、各種樹脂のフィルム又はシートと蒸着膜との密着性等を従来法より強化、改善するための前処理であって、次のような蒸着膜成膜装置において実施されるものである。
密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルムの製造に好適に用いられる成膜装置10は、図2に示すように、プラスチック基材Sを搬送するための基材搬送機構11Aと、プラスチック基材Sの表面にプラズマ処理を施すプラズマ前処理機構11Bと、蒸着膜を成膜する成膜機構11Cと、プラスチック基材Sの表面に水蒸気又は水蒸気プラズマを供給する水蒸気供給機構40と、を備える。
本実施の形態に係る成膜装置10について、より詳細に説明する。図2に示すように、成膜装置10には、減圧チャンバ12内に隔壁35a〜35cが形成されている。該隔壁35a〜35cにより、基材搬送室12A、プラズマ前処理室12B、成膜室12Cが形成され、特に、隔壁と隔壁35a〜35cで囲まれた空間としてプラズマ前処理室12B及び成膜室12Cが形成されている。基材搬送機構11Aは基材搬送室12Aに、プラズマ前処理機構11Bはプラズマ前処理室12Bに、成膜機構11Cは成膜室12Cに、それぞれ配置されている。各室は、必要に応じて、さらに内部に排気室が形成される。また、図2に示す例において、水蒸気供給機構40は、プラズマ前処理室12Bにおいて、プラスチック基材Sの表面に水蒸気又は水蒸気プラズマを供給する。
(プラズマ前処理)
プラズマ前処理室12B内には、前処理が行われるプラスチック基材Sを搬送し、かつプラズマ処理を可能にする前処理ローラー20の一部が基材搬送室12Aに露出するように設けられており、プラスチック基材Sは巻き取られながらプラズマ前処理室12Bに移動するようになっている。
プラズマ前処理室12B及び成膜室12Cは、基材搬送室12Aと接して設けられており、プラスチック基材Sを大気に触れさせないままに移動可能である。また、プラズマ前処理室12Bと基材搬送室12Aの間は、矩形の穴により接続されており、その矩形の穴を通じて前処理ローラー20の一部が基材搬送室12A側に飛び出しており、該搬送室の壁と該前処理ローラー20の間に隙間が開いており、その隙間を通じて基材Sが基材搬送室12Aから成膜室12Cへ移動可能である。基材搬送室12Aと成膜室12Cとの間も同様の構造となっており、プラスチック基材Sを大気に触れさせずに移動可能である。
基材搬送室12Aは、成膜ローラー23により再度基材搬送室12Aに移動させられた、片面に蒸着膜が成膜されたプラスチック基材Sをロール状に巻き取るため、巻取り手段としての巻き取りローラーが設けられ、蒸着膜を成膜されたプラスチック基材Sを巻き取り可能とするようになっている。
密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルムを製造する際、前記プラズマ前処理室12Bは、プラズマが生成する空間を他の領域と区分し、対向空間を効率よく真空排気できるように構成されることで、プラズマガス濃度の制御が容易となり、生産性が向上する。その減圧して形成する前処理圧力は、0.1Pa〜100Pa程度に設定、維持することができ、特に、酸化アルミニウムからなる蒸着膜の構成を好ましいものとするためプラズマ前処理の処理圧力としては、1〜20Paが好ましい。
プラスチック基材Sの搬送速度は、特に限定されないが、生産効率の観点から、少なくとも200m/min、から1000m/minにすることができ、特に、蒸着膜の構成を好ましいものとするためのプラズマ前処理の搬送速度としては、300〜800m/minが好ましい。
プラズマ前処理機構11Bを構成する前処理ローラー20は、プラスチック基材Sがプラズマ前処理手段によるプラズマ処理時の熱による基材の収縮や破損を防ぐこと、プラズマPをプラスチック基材Sに対して均一にかつ広範囲に適用することを目的とするものである。
前処理ローラー20は、前処理ローラー内を循環させる温度調節媒体の温度を調整することにより、−20℃から100℃の間で、一定温度に調節することが可能であることが好ましい。
プラズマ前処理手段は、プラズマ供給手段及び磁気形成手段を含むものである。プラズマ前処理手段は前処理ローラー20と協働し、プラスチック基材S表面近傍にプラズマPを閉じ込める。
プラズマ前処理手段は、前処理ローラー20の一部を覆うように設けられている。具体的には、プラズマ前処理手段は、前処理ローラー20の外周近傍の表面に沿って配置されたプラズマ供給手段と磁気形成手段とを有する。プラズマ供給手段は、プラズマ原料ガスを供給するとともにプラズマPを発生させる電極ともなるプラズマ供給ノズル22a〜22cを有する。磁気形成手段は、マグネット21等を有する。前処理ローラー20とマグネット21などの磁気形成手段とにより挟まれた空隙においては、磁気形成手段の作用により、プラズマPの密度が均一化される。
該空隙の空間にプラズマ供給ノズル22a〜22cを開口させてプラズマを基材表面に向かって噴射し、該空隙内をプラズマ形成領域とし、さらに、前処理ローラー20とプラスチック基材Sの表面近傍にプラズマ密度の高い領域を形成することで、プラスチック基材Sの片面にプラズマ処理面を形成する本発明のプラズマ前処理が行えるように構成されている。
プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、減圧チャンバ12の外部に設けたプラズマ供給ノズルに接続された原料ガス揮発供給装置18と、該装置から原料ガス供給を供給する原料ガス供給ラインを含むものである。供給されるプラズマ原料ガスは、酸素単独又は酸素ガスとアルゴン、ヘリウム、窒素及びそれらの1種以上のガスとの混合ガスが、ガス貯留部から流量制御器を介することでガスの流量を計測しつつ供給される。本実施の形態においては、プラズマ原料ガスとして、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いる例について説明する。
これら供給されるガスは、必要に応じて所定の比率で混合されて、プラズマ原料ガス単独又はプラズマ形成用混合ガスに形成され、プラズマ供給手段に供給される。その単独又は混合ガスは、プラズマ供給手段のプラズマ供給ノズル22a〜22cに供給され、プラズマ供給ノズル22a〜22cの供給口が開口する前処理ローラー20の外周近傍に供給される。
そのノズル開口は前処理ローラー20上のプラスチック基材Sに向けられ、プラスチック基材Sの表面全体に均一にプラズマPを拡散、供給させることが可能となるように配置、構成され、プラスチック基材Sの大面積の部分に均一なプラズマ前処理が可能となる。
酸化アルミニウムからなる蒸着膜を、好ましい構成、すなわち水酸化アルミニウムが蒸着膜においてプラスチック基材S側で多く形成される構成とするためのプラズマ前処理としては、酸素ガスとアルゴンまたはヘリウムとの混合比率は、5対1、好ましくは、2対1である。混合比率を5対1とすることで、プラスチック基材S上での蒸着アルミニウムの膜形成エネルギーが増加し、更に2対1とすることで、水酸化アルミニウムの形成がプラスチック基材Sの界面近傍で形成される。
前記プラズマ供給ノズル22a〜22cは、前処理ローラー20の対向電極として機能するもので、電極機能を有するようにできているものであり、前処理ローラー20との間に供給される高周波電圧、低周波電圧等による電位差によって供給されたプラズマ原料ガスが励起状態になり、プラズマPが発生し、供給される。
具体的には、プラズマ前処理手段のプラズマ供給手段は、プラズマ電源として前処理ローラーを設置し、対向電極との間に周波数が10Hzから2.5GHzの交流電圧を印加し、投入電力制御または、インピーダンス制御等を行い、前処理ローラー20との間に任意の電圧を印加した状態にすることができるものであり、基材の表面物性を物理的ないしは化学的に改質する処理ができるプラズマPを正電位にするバイアス電圧を印加できる電源32を備えている。
本発明で採用する単位面積あたりのプラズマ強度は10〜8000W・sec/m2であり、10W・sec/m2以下では、プラズマ前処理の効果がみられず、また、8000W・sec/m2以上では、基材の消耗、破損着色、焼成などプラズマによる基材の劣化が起きる傾向にある。特に、酸化アルミウムからなる蒸着膜の構成を好ましいものとするためプラズマ前処理のプラズマ強度は、50〜1000W・sec/m2が好ましい。
上述の磁気形成手段として、マグネットケース内に絶縁性スペーサ、ベースプレートが設けられ、このベースプレートにマグネット21が設けられる。マグネットケースに絶縁性シールド板が設けられ、この絶縁性シールド板に電極が取り付けられる。
したがって、マグネットケースと電極は電気的に絶縁されており、マグネットケースを減圧チャンバ12内に設置、固定しても電極は電気的にフローティングレベルとすることが可能である。
電極には電力供給配線31が接続され、電力供給配線31は電源32に接続される。また、電極内部には電極及びマグネット21の冷却のための温度調節媒体配管が設けられる。
マグネット21は、電極兼プラズマ供給手段であるプラズマ供給ノズル22a〜22cからの酸素プラズマPをプラスチック基材Sに集中して適用するために設けられる。マグネット21を設けることにより、基材表面近傍での反応性が高くなり、良好なプラズマ前処理面を高速で形成することが可能となる。
マグネット21は、プラスチック基材Sの表面位置での磁束密度が10ガウスから10000ガウスである。プラスチック基材S表面での磁束密度が10ガウス以上であれば、基材表面近傍での反応性を十分高めることが可能となり、良好な前処理面を高速で形成することができる。
電極のマグネット21の配置構造によりプラズマ前処理時に形成されるイオン、電子がその配置構造に従って運動するため、例えば、1m2以上の大面積のプラスチック基材Sに対してプラズマ前処理をする場合においても電極表面全体にわたり、電子やイオン、プラスチック基材Sの分解物が均一に拡散され、プラスチック基材Sが大面積の場合にも所望のプラズマ強度で、均一かつ安定した目的の前処理が可能となるものである。
(水蒸気供給機構)
次に、水蒸気供給機構40について説明する。水蒸気供給機構40は、プラスチック基材Sの表面に水蒸気又は水蒸気プラズマを供給するための構成要素である。図2に示す例において、水蒸気供給機構40は、水蒸気放出部41、水蒸気生成部42及び水蒸気送給部43を有する。
図2に示す水蒸気供給機構40について、図3を参照して詳細に説明する。図3は、図2において符号IIIが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大し、図2においては省略されていた水蒸気供給機構40の具体的形態を示した図である。なお、図3においては、図2に示されている電源32とプラズマ供給ノズル22a〜22cとを接続する電力供給配線31の記載を省略している。
本実施の形態において、水蒸気生成部42は、水蒸気を生成するための構成要素である。図3に示す水蒸気生成部42は、水Wを収容するタンク42aを含む。図3において、タンク42aの下方には液体の水Wが収容されており、水Wの液面よりも上方には水蒸気が存在している。水蒸気の圧力は、例えば、液体の水Wの温度に応じた飽和水蒸気圧になっている。タンク42aには、水Wの温度を制御するための制御部が設けられていてもよい。
本実施の形態において、水蒸気送給部43は、水蒸気生成部42において生成された水蒸気を、後述する水蒸気放出部41に送給するための構成要素である。図3に示す例において、水蒸気送給部43は、MFC(マスフローコントローラ)43aと、配管43bとを含む。
図3に示すように、配管43bは、水Wの液面よりも上方においてタンク42aに接続されている。タンク42a内の水蒸気は、タンク42aから配管43bに導入される。MFC43aについては後述する。
本実施の形態において、水蒸気放出部41は、水蒸気送給部43から送給された水蒸気を放出するための構成要素である。図3に示す水蒸気放出部41は、プラズマ前処理室12Bの壁面からプラズマ前処理室12Bに水蒸気を導入するよう構成されている。例えば、水蒸気放出部41は、配管43bに接続されるとともにプラズマ前処理室12Bの壁面に形成された穴を含む。図3に示す水蒸気放出部41により、配管43bから送給された水蒸気を、プラズマ前処理室12B内に放出し、プラスチック基材Sの表面に到達させることができる。また、プラズマ前処理室12B内に放出された水蒸気は、上述のプラズマPを発生させるための電界の作用により水蒸気プラズマとなることもある。この場合には、水蒸気プラズマを、プラスチック基材Sの表面に到達させることができる。この場合には、プラスチック基材Sの表面は、水蒸気プラズマと、原料ガスである酸素及びアルゴンのプラズマとの混合プラズマにより、プラズマ処理されることとなる。なお、図3に示すようにプラズマ前処理室12Bの壁面からプラズマ前処理室12Bに水蒸気を導入する場合、水蒸気の圧力がプラズマ前処理室12B内において均一に成り得る。
図3に示すように、水蒸気供給機構40は、水蒸気制御部45を更に有していてもよい。水蒸気制御部45は、プラスチック基材Sの周囲における水蒸気又は水蒸気プラズマを検出する検出部と、検出部が検出した水蒸気又は水蒸気プラズマの検出量に基づいて水蒸気送給部43を制御して水蒸気放出部41への水蒸気又は水蒸気プラズマの送給量を調整する調整部とを有している。
図3に示す例において、検出部は、水蒸気を検出することができる限り、特に限定されない。例えば、検出部として四重極質量分析装置を用いることができる。この場合、四重極質量分析(Q−MAS)を行って水蒸気の分圧を求め、検出量とすることができる。
また、検出部として分光器を用い、プラズマ前処理機構11Bにより発生させられた水蒸気プラズマのプラズマ分光分析を行い、水蒸気プラズマを検出してもよい。また、プラズマ前処理室12B内の全圧のうち水蒸気以外の気体の分圧は一定であるという前提のもと、検出部として真空計を用いてプラズマ前処理室12B内の全圧を求め、全圧に基づいて水蒸気の分圧を算出し、検出量としてもよい。
図3に示す例において、水蒸気制御部45の調整部により水蒸気送給部43を制御する方法について説明する。水蒸気送給部43の上述のMFC43aは、水蒸気制御部45の調整部によって制御可能であるよう、調整部と接続されている。MFC43aは、例えば、配管43bに設けられた、開口度を連続的に変化させることが可能なバルブを含む。検出量に基づいて調整部によりMFC43aを制御し、配管43bを通る水蒸気の量を調整することにより、プラズマ前処理室12Bにおける水蒸気の分圧を所定の目標値に制御することができる。目標値は、例えば0.1Pa以上であり、好ましくは0.5Pa以上である。また、目標値は、例えば200Pa以下であり、好ましくは50Pa以下である。
(酸化アルミニウム蒸着膜)
プラズマ処理されたプラスチック基材Sは、次の成膜室12Cに導くためのガイドロール14a〜14dにより基材搬送室12Aから成膜室12Cに移動し、成膜区画で酸化アルミニウム蒸着膜が形成される。
酸化アルミニウム蒸着膜は、主成分として酸化アルミニウムを含む無機酸化物の薄膜であって、酸化アルミニウムあるいはアルミニウムの窒化物、炭化物、水酸化物の単独又はその混合物などのアルミニウム化合物を含むことができる酸化アルミニウムを主成分として含む層である。
さらに、酸化アルミニウム蒸着膜は、前記アルミニウム化合物を主成分として含み、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸化窒化物、ケイ素炭化物、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、またはこれらの金属窒化物、炭化物及びその混合物などを含むことができる。
本実施の形態における酸化アルミニウム蒸着膜は、水酸化アルミニウムが蒸着膜においてプラスチック基材側で多く形成されたものである。
酸化アルミニウム蒸着膜における水酸化アルミ二ウムの形成状態は、バリア性を有する積層フィルムAの酸化アルミニウム蒸着膜に対し、Cs(セシウム)イオン銃により一定の速度でソフトエッチングを繰り返しながら、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いて、アルミニウム蒸着膜由来のイオンと、プラスチック基材に由来するイオンを測定することにより得られるグラフ解析図から定められる。
グラフ解析図の一例を、図4に示す。グラフの縦軸の単位(intensity)は、イオンの強度について常用対数をとって表示したものである。グラフの横軸の単位(cycle)は、エッチングの回数である。具体的には、飛行時間型二次イオン質量分析計を用いてCsにより、一定の条件で酸化アルミニウム蒸着膜の最表面からエッチングを行い、酸化アルミニウム蒸着膜とプラスチック基材との界面の元素結合及び酸化アルミニウム蒸着膜の元素結合を測定し、測定された元素および元素結合についてそれぞれのグラフを得(図4 グラフ解析図の一例)、1)元素C6のグラフの強度が半分になる位置を、プラスチック基材と酸化アルミニウムの界面として、表面から界面までを酸化アルミニウム蒸着膜として求める。
図4において、横軸のT0の位置は、積層フィルムの最表面、すなわち蒸着膜2の最表面に相当する。また、横軸のTの位置は、元素C6の強度が、プラスチック基材Sにおける強度であるH0の半分にあたるH1になる位置である。ここでは、位置T1を、プラスチック基材Sと酸化アルミニウム蒸着膜の界面と考える。また、横軸のT2の位置は、T0とT1との中間の位置であり、蒸着膜2の厚み方向における中心に相当する。
図4に示すように、本実施の形態における成膜装置10を用いて形成された積層フィルムにおいては、T1とT2との間、すなわち蒸着膜2の厚み方向における中心よりもプラスチック基材Sの界面側に、水酸化アルミニウム(Al2O4H)の強度のピークが存在する。つまり、プラスチック基材Sの界面の近傍において、水酸化アルミニウムの形成が多くなされている。これにより、プラスチック基材Sに対する蒸着膜2の密着性を向上させることができる。
酸化アルミニウム蒸着膜は、プラズマ前処理されたプラスチック基材表面に蒸着膜を成膜することで形成することができる。蒸着膜を成膜する蒸着法としては、物理蒸着法、化学蒸着法の中から種々の蒸着法が適用できる。
物理蒸着法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、クラスターイオンビーム法からなる群から選ぶことができ、化学蒸着法としては、プラズマCVD法、プラズマ重合法、熱CVD法、触媒反応型CVD法からなる群から選ぶことができる。本発明においては、物理蒸着法の蒸着法が好適である。
本発明に好適な物理蒸着法により蒸着を行うことができる、図2に示すローラー式の成膜機構11Cを使った酸化アルミニウム蒸着膜の成膜について、以下説明する。
成膜機構11Cは、減圧された成膜室12C内に配置されている。成膜機構11Cは、プラズマ前処理機構11Bで前処理されたプラスチック基材Sの処理面を外側にしてプラスチック基材Sを巻きかけて搬送し、成膜処理する成膜ローラー23を含む。成膜機構11Cは、成膜ローラー23に対向して配置された成膜源24のターゲットを蒸発させてプラスチック基材Sの表面に蒸着膜を成膜する。
成膜機構11Cは抵抗加熱方式であり、アルミニウムを蒸発源としてアルミニウムの金属線材を用い、酸素供給機構50を用いて酸素を供給してアルミニウム蒸気を酸化しつつ、プラスチック基材Sの表面に酸化アルミニウム蒸着膜を成膜させる。
ここで、図2の例における酸素供給機構50は、酸素ガスを蓄えておく酸素貯蔵部52と、酸素貯蔵部52の酸素ガスを送給する酸素送給部53と、酸素送給部53から送給された酸素ガスを、酸素ガスがプラスチック基材Sの表面に到達するよう放出する酸素放出部51とを有する。
図2の例において、酸素放出部51は、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側に放出口を有し、これによって、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側において酸素ガスがプラスチック基材Sの表面に到達するよう、酸素ガスを放出する。しかしながら、酸素放出部51の放出口の配置は、これに限られない。
例えば、酸素放出部51は、成膜源24とプラスチック基材Sとの間に放出口を有していてもよい。この場合においても、酸素放出部51からの酸素の放出量と、上述の水蒸気放出部41からの水蒸気の放出量とを制御することにより、蒸着膜においてプラスチック基材S側で水酸化アルミニウムを多く形成することができる。
また、酸素放出部51は、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも下流側に放出口を有していてもよい。この場合においても、酸素放出部51からの酸素の放出量と、上述の水蒸気放出部41からの水蒸気の放出量とを制御することにより、蒸着膜においてプラスチック基材S側で水酸化アルミニウムを多く形成することができる。
舟形(「ボートタイプ」という)蒸着容器に、成膜ローラー23の軸方向にアルミニウムの金属線材を複数配置し、抵抗加熱式により加熱する。このようにすることで、供給される熱、熱量を抑えてアルミニウムの金属材料を蒸発させることができ、プラスチック基材Sの熱的変形性を極力抑えながら酸化アルミニウム蒸着膜を成膜することができる。
上記のように成膜される酸化アルミニウムの蒸着膜の厚さは、3〜50nmであり、好ましくは8〜30nmである。この範囲であれば、バリア性を保持することができる。
(バリア性被覆層)
積層フィルムの酸化アルミニウム蒸着膜などの蒸着膜の表面上に積層されるバリア性被覆層は、蒸着膜を機械的・化学的に保護するとともに、バリア性を有する積層フィルムのバリア性能を向上させるものである。以下、バリア性に優れたレトルト耐性を備えるバリア性積層フィルムを形成するためコートされるバリア性被覆層について説明する。
バリア性被覆層は、バリアコート剤を蒸着膜上に塗布し固化して形成されるものである。バリアコート剤は金属アルコキシド、水溶性高分子、必要に応じて加えられるシランカップリング剤、ゾルゲル法触媒、酸などから構成される。
バリア性被覆層は、以下の方法で製造することができる。
まず、上記金属アルコキシド、必要に応じて添加するシランカップリング剤、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、酸、及び溶媒としての水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール等の有機溶媒を混合し、バリアコート剤を調製する。
次いで、蒸着膜の上に、常法により、上記のバリアコート剤を塗布し、乾燥する。この乾燥工程によって、上記金属アルコキシド、シランカップリング剤および水溶性高分子の重縮合が更に進行し、塗膜が形成される。
上記にように形成されるバリア性被覆層は、層厚が100〜500nmである。この範囲であれば、コート膜が割れず蒸着膜表面を十分に被覆するため好ましい。
(包装材料)
本発明の実施の形態に係る密着性が改善されたバリア性を備える蒸着膜を有する積層フィルム及び該積層フィルムを含むバリア性積層フィルムは、熱水処理、特に高温熱水処理のレトルト処理後においても、プラスチック基材と蒸着膜との密着性が良好で、かつガスバリア性にも優れているので、食品用のレトルト包装材、医療用の高温熱水処理包装材だけでなく、ペットフード等のレトルト処理を行う内容物の包装材として好適に使用できる。
包装材料は、バリア性積層フィルムに少なくとも1層のヒートシール可能な層を積層したものであって、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂が接着層を介して、あるいは介することなく、最内層として積層され、ヒートシール性が付与されたものである。包装材料としては、さらに必要に応じて、包装材料として付与したい機能、例えば、遮光性を付与するための遮光性層、装飾性、印字を付与するための印刷層、絵柄層、レーザー印刷層、臭気を吸収又は吸着する吸収性・吸着性層など各種機能層を層構成として追加し、包装材料とすることもできる。
(第1の変形例)
上述の実施の形態においては、水蒸気放出部41が、プラズマ前処理室12Bの壁面に設けられ、配管43bに接続された穴を有する例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、図5に示すように、水蒸気放出部41が、プラズマ前処理室12Bの壁面よりもプラスチック基材Sに近い位置において水蒸気を放出する放出口を有していてもよい。
図5に示す例においては、水蒸気放出部41の放出口は、前処理ローラー20とマグネット21などの磁気形成手段との間の空隙、又は前処理ローラー20に向けて水蒸気を放出するように構成されている。
なお、図5に示す例においては、水蒸気放出部41が、プラズマ前処理室12Bのうち、プラスチック基材Sの搬送方向におけるプラズマ供給ノズル22a〜22cよりも上流側に、水蒸気を放出する放出口を有する例について示している。しかしながら、水蒸気放出部41が、プラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気を放出する場合における、水蒸気放出部41の放出口の位置は、特に限られない。例えば、図示はしないが、水蒸気放出部41は、プラズマ前処理室12Bのうち、プラズマ供給ノズル22a〜22cよりも下流側に、水蒸気を放出する放出口を有していてもよい。
図5に示す水蒸気放出部41について、図6を参照してより詳細に説明する。図6は、図5の水蒸気送給部43、水蒸気放出部41、前処理ローラー20及びマグネット21を拡大し、図5においては模式化されていた水蒸気放出部41の具体的な形状を示した図である。
図6に示す例において、水蒸気放出部41は、前処理ローラー20の回転軸線が延びる方向に沿って並ぶ複数の放出口41aを有する。なお、前処理ローラー20の回転軸線は、前処理ローラー20に巻き付けられて搬送されるプラスチック基材Sの搬送方向に直交する方向であり、また、プラスチック基材Sの幅方向に平行な方向である。従って、図6に示す複数の放出口41aは、プラスチック基材Sの幅方向に沿って並んでいると言える。このような複数の放出口41aから水蒸気を放出させることにより、プラスチック基材Sの周囲における水蒸気又は水蒸気プラズマの密度が、プラスチック基材Sの幅方向においてばらつくことを抑制することができる。放出口41a同士の間隔は特に限定されないが、例えば0.5cm以上50cm以下である。図示はしないが、水蒸気放出部41は、プラスチック基材Sの幅方向において複数に分割されていてもよい。
(第2の変形例)
図7に示すように、水蒸気放出部41は、マグネット21などの磁気形成手段に設けられた図示しない貫通孔を介して前処理ローラー20と磁気形成手段との間の空隙に向けて水蒸気を放出するよう構成されていてもよい。
(第3の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、水蒸気放出部41が、プラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気を放出する例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、図8及び図9に示すように、水蒸気放出部41が、基材搬送室12Aにおいて水蒸気を放出してもよい。本願においては、プラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気を放出する水蒸気放出部41を前処理室用水蒸気放出部とも称し、基材搬送室12Aにおいて水蒸気を放出する水蒸気放出部41を基材搬送室用水蒸気放出部とも称する。
プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する限りにおいて、基材搬送室12Aにおける水蒸気放出部41の放出口の配置は任意である。例えば図8に示すように、水蒸気放出部41は、基材搬送室12Aのうち、プラスチック基材Sの搬送方向におけるプラズマ前処理室12Bよりも上流側において放出口を有し、水蒸気を放出してもよい。この場合、プラスチック基材Sの表面に付着した、又はプラスチック基材Sに吸収された水蒸気が、プラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気プラズマになってもよい。また、図9に示すように、水蒸気放出部41は、プラズマ前処理室12Bよりも下流側であって成膜室12Cよりも上流側において水蒸気を放出してもよい。
(第4の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、水蒸気放出部41が、基材搬送室12A又はプラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気を放出する例について説明した。しかしながら、これに限られることなく、図10に示すように、水蒸気放出部41が、成膜室12Cのうち、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側において放出口を有し、水蒸気又は水蒸気プラズマを放出してもよい。本願においては、成膜室12Cにおいて水蒸気を放出する水蒸気放出部41を成膜室用水蒸気放出部とも称する。
水蒸気放出部41が成膜室12C内に配置されている場合には、水蒸気放出部41は、成膜室12Cのうち、酸素放出部51よりも上流側において放出口を有し、水蒸気又は水蒸気プラズマを放出してもよい。図10に示す例において、水蒸気放出部41は、酸素放出部51よりも上流側において放出口を有し、水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する。この場合、酸素ガスよりも水蒸気が先にプラスチック基材Sの表面に到達し、酸化アルミニウムの蒸着膜よりも先に水酸化アルミニウムがプラスチック基材Sの表面に形成されるため、酸化アルミニウム蒸着膜のプラスチック基材Sの界面の近傍において、水酸化アルミニウムの形成を多くすることができる。また、図示はしないが、酸素放出部51が酸素ガスとともに水蒸気又は水蒸気プラズマを放出してもよい。この場合、酸素放出部51が水蒸気放出部41の機能も有しているといえる。この場合には、酸素ガスとともに水蒸気又は水蒸気プラズマをプラスチック基材Sの表面に到達させることができ、プラスチック基材Sの界面の近傍において、水酸化アルミニウムの形成を多くすることができる。
図10に示す例において、酸素放出部51は、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側に放出口を有し、これによって、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも上流側において酸素ガスがプラスチック基材Sの表面に到達するよう、酸素ガスを放出する。しかしながら、酸素放出部51の放出口の配置は、これに限られない。
例えば、酸素放出部51は、成膜源24とプラスチック基材Sとの間に放出口を有していてもよい。この場合においても、酸素放出部51からの酸素の放出量と、上述の水蒸気放出部41からの水蒸気の放出量とを制御することにより、蒸着膜においてプラスチック基材S側で水酸化アルミニウムを多く形成することができる。
また、酸素放出部51は、プラスチック基材Sの搬送方向における成膜源24よりも下流側に放出口を有していてもよい。この場合においても、酸素放出部51からの酸素の放出量と、上述の水蒸気放出部41からの水蒸気の放出量とを制御することにより、蒸着膜においてプラスチック基材S側で水酸化アルミニウムを多く形成することができる。
(第5の変形例)
上述の図2の例において示した、壁面に形成された穴を有する水蒸気放出部41と、上述の図5の例において示した、壁面よりもプラスチック基材Sに近い位置において水蒸気を放出する放出口を有する水蒸気放出部41とが、同一の室に配置されていてもよい。図11は、図2に示す水蒸気放出部41及び図5に示す水蒸気放出部41の両方がプラズマ前処理室12Bに配置されている例を示す図である。
図2の例における水蒸気放出部41を用いた場合には、水蒸気の圧力がプラズマ前処理室12B内において均一に成り得る。また、図5の例における水蒸気放出部41を用いた場合には、プラスチック基材Sの表面に、より多くの水蒸気又は水蒸気プラズマを到達させることができる。これらの水蒸気放出部41を組み合わせて用いることにより、プラスチック基材Sの幅方向に均一に、かつより多くの水蒸気をプラスチック基材Sに供給することができる。
(第6の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、水蒸気放出部41が、基材搬送室12A、プラズマ前処理室12B又は成膜室12Cのいずれかに配置されている例を示した。本変形例においては、水蒸気放出部41を、基材搬送室12A、プラズマ前処理室12B及び成膜室12Cのうちの複数の室に配置する例について説明する。図12に示す例においては、プラズマ前処理室12B及び成膜室12Cに水蒸気放出部41を配置している。
水蒸気放出部41が基材搬送室12A又はプラズマ前処理室12Bにおいて水蒸気を放出する場合、成膜室12Cに搬送された時のプラスチック基材Sの表面には既に水蒸気又は水蒸気プラズマの影響が及んでいる。このため、基材搬送室12A又はプラズマ前処理室12Bにおいて放出された水蒸気は、水酸化アルミニウム(Al2O4H)の強度のピークをプラスチック基材Sの界面側により近い側に出現させることに寄与し得る。これにより、プラスチック基材Sに対する蒸着膜の密着性を高めることができる。
一方、成膜室12Cにおいて放出された水蒸気は、成膜工程において蒸着膜の原料として利用される。このため、水蒸気放出部41が成膜室12Cにおいて水蒸気を放出することにより、蒸着膜中の、水蒸気に起因する構造の濃度を高くすることができる。これにより、蒸着膜のバリア性を高めることができる。蒸着膜中の、水蒸気に起因する構造の例としては、水酸基、水和物又は水分子などを挙げることができる。
(第7の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、水蒸気放出部41によって水蒸気を放出することにより、水蒸気又は水蒸気プラズマが前記プラスチック基材の表面に到達させる場合について説明した。しかしながら、これに限られることなく、あらかじめ水蒸気をプラズマ化しておき、水蒸気放出部41が水蒸気プラズマを放出してもよい。
(第8の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、水蒸気放出部41が水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、水蒸気放出部41は、水蒸気又は水蒸気プラズマに加えて、その他のガスを放出してもよい。例えば、水蒸気放出部41は、プラズマ前処理室12Bにおいて、水蒸気に加えて、酸素単独又は酸素ガスとアルゴン、ヘリウム、窒素及びそれらの1種以上のガスとの混合ガスなどのプラズマ原料ガスを放出してもよい。
(第9の変形例)
図示はしないが、水蒸気供給機構40は、水蒸気放出部41から放出された水蒸気又は水蒸気プラズマをプラスチック基材Sに向かわせるためのキャリアガスを供給するキャリアガス供給部を更に有していてもよい。キャリアガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
1,S プラスチック基材
1a 第1層
1b 第2層
1c 第3層
2 蒸着膜
3 バリア性被覆層
A 積層フィルム又は蒸着膜フィルム
B バリア性積層フィルム
P プラズマ
W 水
10 成膜装置
11A 基材搬送機構
11B プラズマ前処理機構
11C 成膜機構
12 減圧チャンバ
12A 基材搬送室
12B プラズマ前処理室
12C 成膜室
14a〜d ガイドロール
18 原料ガス揮発供給装置
20 前処理ローラー
21 マグネット
22a〜c プラズマ供給ノズル
23 成膜ローラー
24 成膜源
31 電力供給配線
32 電源
35a〜35c 隔壁
40 水蒸気供給機構
41 水蒸気放出部
41a 放出口
42 水蒸気生成部
42a タンク
43 水蒸気送給部
43a MFC
43b 配管
45 水蒸気制御部
50 酸素供給機構
51 酸素放出部
52 酸素貯蔵部
53 酸素送給部

Claims (10)

  1. プラスチック基材の表面に無機酸化物の蒸着膜を成膜する成膜装置であって、
    巻きかけられた前記プラスチック基材を搬送する成膜ローラーと、前記成膜ローラーに対向するよう位置し、前記蒸着膜の原料となる無機材料を含むターゲットが配置された成膜源と、を有する成膜機構と、
    前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマが前記プラスチック基材の表面に到達するよう水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する水蒸気放出部を少なくとも有する水蒸気供給機構と、を備える、蒸着膜成膜装置。
  2. 前記水蒸気供給機構は、
    水蒸気又は水蒸気プラズマを生成する水蒸気生成部と、
    前記水蒸気生成部が生成した水蒸気又は水蒸気プラズマを前記水蒸気放出部に送給する水蒸気送給部と、
    前記プラスチック基材の周囲における水蒸気又は水蒸気プラズマの検出量に基づいて前記水蒸気送給部を制御して前記水蒸気放出部への水蒸気又は水蒸気プラズマの送給量を調整する水蒸気制御部と、を更に有する、請求項1に記載の蒸着膜成膜装置。
  3. 前記水蒸気生成部は、水を収容するタンクを含み、
    前記水蒸気送給部は、前記タンクに収容されている水の液面よりも上方において前記タンクに接続された配管を含む、請求項2に記載の蒸着膜成膜装置。
  4. 前記水蒸気放出部は、前記プラスチック基材の搬送方向に直交する前記プラスチック基材の幅方向に並び、水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する複数の放出口を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  5. 前記蒸着膜成膜装置は、前記成膜機構が配置された成膜室から隔壁によって隔てられるとともに前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜室よりも上流側に位置するプラズマ前処理室に配置されたプラズマ前処理機構を更に備え、
    前記プラズマ前処理機構は、前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜ローラーよりも上流側において巻きかけられた前記プラスチック基材を搬送する前処理ローラーと、前処理ローラーの周囲にプラズマを発生させるプラズマ供給手段と、を有し、
    前記水蒸気放出部は、前記プラズマ前処理室において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する前処理室用水蒸気放出部を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  6. 前記蒸着膜成膜装置は、前記成膜機構が配置された成膜室から隔壁によって隔てられた基材搬送室に配置された基材搬送機構を更に備え、
    前記水蒸気放出部は、前記基材搬送室のうち前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する基材搬送室用水蒸気放出部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  7. 前記水蒸気放出部は、前記成膜機構が配置された成膜室のうち前記プラスチック基材の搬送方向における前記成膜源よりも上流側において水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する成膜室用水蒸気放出部を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  8. 前記成膜機構は、酸素ガスが前記プラスチック基材の表面に到達するよう酸素ガスを放出する酸素放出部を有し、
    前記成膜源に配置された前記ターゲットは、アルミニウムを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  9. 前記成膜機構は、酸素ガスが前記プラスチック基材の表面に到達するよう酸素ガスを放出する酸素放出部を有し、
    前記成膜源に配置された前記ターゲットは、珪素を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の蒸着膜成膜装置。
  10. プラスチック基材の表面に無機酸化物の蒸着膜を成膜する成膜方法であって、
    水蒸気又は水蒸気プラズマが前記プラスチック基材の表面に到達するよう水蒸気放出部が水蒸気又は水蒸気プラズマを放出する水蒸気供給工程と、
    前記プラスチック基材の搬送方向における前記水蒸気放出部よりも下流側において前記プラスチック基材が巻きかけられた成膜ローラーに対向する成膜源に配置された、前記蒸着膜の原料となる無機材料を含むターゲットを蒸発させて、前記プラスチック基材の表面に前記蒸着膜を成膜する成膜工程と、を備える、蒸着膜成膜方法。
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