JP2013234366A - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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亨 蜂須賀
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Abstract

【課題】化学蒸着法においてプラズマ発生用電極の汚染を抑制し、基材の幅方向に対するガスバリア性が均一なガスバリア性フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】蒸着層は、搬送ロール21上の基材1付近でプラズマにより活性化された原料ガスが反応して基材上に成膜され、原料ガスは、基材の搬送方向における上流側及び下流側のそれぞれに搬送ロールの幅方向に並んだ複数のガス供給口5a,5bから供給され、前記搬送ロール上の前記基材と、前記複数のガス供給口との最短距離が1mm以上200mm以下であり、上流側及び下流側の複数のガス供給口は、上流側及び下流側の遮蔽板6a,6bによってプラズマを発生させるためのプラズマ発生部から遮蔽されており、プラズマは、遮蔽板により形成された開口部61から基材付近に供給されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明はガスバリア性フィルムの製造方法に関し、更に詳しくは、化学蒸着法により蒸着層を形成する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
ガスバリア性フィルムは、主に、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気等の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料として用いられたりしている。また、近年においては、従来ガラス等を用いていた部分にフレキシブル性や耐衝撃性を持たせる等の理由から、ガスバリア性フィルムが用いられる場合もある。
このようなガスバリア性フィルムは、プラスチックフィルムを基材として、その片面又は両面にガスバリア性の薄膜を形成するのが一般的である。そして、当該ガスバリア膜は、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等の様々な方法で形成される。
CVD法によりガスバリア性の薄膜を形成する方法としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いて、プラズマCVD法により基材上に化学蒸着膜を形成する方法が知られている(特許文献1〜3)。これら従来の方法では、いずれもプラズマ発生用電極を備えた真空チャンバー内にプラズマ発生用の不活性ガスを導入してプラズマを発生させ、このプラズマ発生空間内に、HMDSO等を気化させた原料ガス、及び必要に応じて酸素ガス等の反応ガスを導入して成膜している。
これらの方法では、プラズマ発生空間内に原料ガス及び反応ガスが拡散するため、連続して走行する基材フィルム上に薄膜を形成する場合には、該基材フィルムの近傍においてガス濃度分布が生じ、得られた膜の面内におけるガスバリア性にばらつきが生じやすいという問題がある。また、前記方法では、前記原料ガスと反応ガスとの反応生成物が基材フィルム上に成膜されると同時に、該反応生成物がプラズマ発生用電極にも付着して電極が汚染される場合がある。これによりプラズマ放電が不安定になると、長時間の成膜ができなくなったり、基材へのプラズマダメージが発生して、得られる膜のガスバリア性が低下したりするという問題がある。
CVD法において、原料ガスに由来するパーティクル(微粒子)の発生を抑制する方法については、これまでにも種々検討されている。例えば特許文献4には、プラスチックフィルムからなる基材上に酸化シリコン層をプラズマCVD法により形成する際に、反応室内のガス全体の気体分子の平均自由行程を特定の条件にすることにより、原料ガスである珪素化合物と酸素が結合して酸化シリコン膜が微粒子化することを防止する方法が開示されている。また、特許文献5には、プラズマCVD成膜装置の真空チャンバにおいて、ガス供給管の配置を所定の配置としてガスを供給することにより、成膜ロール上の基材近傍に導入されたガスの成分の一部が基材上に到達して堆積する前に、導入されたガスに起因するパーティクルが発生し、基材等に付着して欠陥となることを抑制する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献4及び5では、プラズマ発生用電極の汚染抑制については言及されていない。
特開2011−144438号公報 特開2007−522343号公報 特開2008−274385号公報 特開2003−276109号公報 特開2011−162852号公報
上記特許文献に記載の方法では、いずれも原料ガスをプラズマ発生空間内に導入していることから、連続して走行する基材上にCVD法で成膜する場合には、得られた膜の面内におけるガスバリア性にばらつきが生じやすく、かつ、プラズマ発生用電極が汚染されやすいという問題が生じる。
特許文献1では、処理ガスを電極間に満遍なく行き渡らせるため、処理ガスを導入するためのガス導入管を複数本配置してもよいことが記載されているが、図面上では該ガス導入管は基材フィルムの走行方向に複数配置されており、基材フィルムの幅方向に対する膜の均一性向上については言及されていない。
本発明が解決しようとする課題は、以上の従来技術の問題を解決することにあり、CVD法において電極の汚染を抑制し、基材の幅方向に対するガスバリア性が均一なガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明は、
[1]搬送ロールで連続的に搬送される基材の少なくとも一方の面に、化学蒸着法により蒸着層を形成する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法において、前記蒸着層は、前記搬送ロール上の前記基材付近でプラズマにより活性化された原料ガスが反応して該基材上に成膜されることにより形成され、前記原料ガスは、前記基材の搬送方向における上流側及び下流側のそれぞれに前記搬送ロールの幅方向に並んだ複数のガス供給口から供給され、前記搬送ロール上の前記基材と、前記複数のガス供給口との最短距離が1mm以上200mm以下であり、上流側の複数のガス供給口は、上流側の遮蔽板によって前記プラズマを発生させるためのプラズマ発生部から遮蔽されており、下流側の複数のガス供給口は、下流側の遮蔽板によって前記プラズマ発生部から遮蔽されており、前記プラズマは、前記上流側の遮蔽板と前記下流側の遮蔽板とにより形成された開口部から前記基材付近に供給されることを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法、
に関する。
本発明の製造方法は、CVD法においてプラズマ発生用電極の汚染を抑制できることからプラズマの放電安定性が良好であり、長時間成膜が可能で、高いガスバリア性を有し、特に基材の幅方向に対するガスバリア性が均一なガスバリア性フィルムを製造することができる。このようなガスバリア性フィルムは、食品や医薬品等の包装材料や、電子デバイス等のパッケージ材料、太陽電池用、電子ペーパー用及び有機EL(エレクトロルミネッセンス)用等として有用である。
本発明に用いられる化学蒸着装置の一例の構成を示す、基材の搬送方向に平行な断面模式図である。 本発明に用いられる化学蒸着装置の一例の構成を示す、基材の搬送方向に垂直な断面模式図である。 本発明に用いられるガス供給口の一例の構成を示す模式図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明は、搬送ロールで連続的に搬送される基材の少なくとも一方の面に、化学蒸着法により蒸着層を形成する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
<化学蒸着装置>
図1及び図2は、本発明に好適に用いられる化学蒸着装置100の一例の構成を示す模式図である。化学蒸着装置100は、真空チャンバー10を備え、真空チャンバー10は、搬送ロール21、上流側のロール22、下流側のロール23、プラズマ発生用電極3、プラズマを発生させるために導入される不活性ガスの供給口4a及び4b、上流側の複数のガス供給口5a、下流側の複数のガス供給口5b、上流側の遮蔽板6a及び下流側の遮蔽板6bを備える。また真空チャンバー10は、隔壁13a及び13bにより、基材搬送室11と、蒸着室12とに仕切られている。
基材搬送室11は、搬送ロール21、上流側のロール22及び下流側のロール23を備える。基材1は、上流側のロール22から繰り出され、搬送ロール21で搬送され下流側のロール23に巻き取られることにより連続的に搬送される。
なお、図2においては、基材搬送室11の一部の図示は省略する。
蒸着室12は、プラズマ発生用電極3、プラズマを発生させるために導入される不活性ガスの供給口4a及び4b、上流側の複数のガス供給口5a、下流側の複数のガス供給口5b、上流側の遮蔽板6a及び下流側の遮蔽板6bを備える。また搬送ロール21の一部は蒸着室12にあり、その上にある基材1上に蒸着層が形成される。
蒸着室12は、さらに遮蔽板6a及び6bによって原料ガス導入部14とプラズマ発生部15とに仕切られている。原料ガス導入部14は、上流側の複数のガス供給口5aと下流側の複数のガス供給口5bとを備える。また、プラズマ発生部15は、プラズマ発生用電極3、ならびに不活性ガス供給口4a及び4bを備えており、プラズマを発生させるための空間である。
プラズマ発生部15に備えられるプラズマ発生用電極3(以下「電極3」ともいう)としては、平行平板方式、デュアルマグネトロン方式、及び搬送ロール21が対電極となったようなロール電極等が挙げられ、プラズマの放電安定性の観点から、デュアルマグネトロン方式の電極を用いることが好ましい。デュアルマグネトロン方式の電極は、図1に示すようにプラズマ発生用電極3が一対の電極からなり、交互にアノード、カソードに切り替わる。プラズマ発生部15におけるプラズマ密度を均一にする観点から、図2に示すように、プラズマ発生用電極3の搬送ロール21の幅方向の長さは、搬送ロール21の幅方向長さと同じかそれ以上であることが好ましい。
不活性ガスの供給口4a及び4bは、通常プラズマ発生用電極3の近傍に配置され、ここからアルゴン等の不活性ガスを電極3付近に供給することにより、プラズマ発生部15でプラズマを発生させる。不活性ガスの供給口4aは、例えば長尺の略円筒形等のガス配管41aの側面に形成された貫通孔又はノズルの噴射口等であり、不活性ガスの供給口4bは、同様に、例えば長尺の略円筒形等のガス配管41bの側面に形成された貫通孔又はノズルの噴射口等である。不活性ガスの供給口4a及び4bは、それぞれ1つ以上であればよい。
プラズマ発生部15におけるプラズマ密度を均一にする観点から、図1に示すように、不活性ガスの供給口4aは、蒸着室12の下方かつ基材1の上流側に設け、不活性ガスの供給口4bは、蒸着室12の下方かつ基材1の下流側に設けることが好ましい。
原料ガス導入部14に備えられる上流側の複数のガス供給口5a及び下流側の複数のガス供給口5bは、いずれも、蒸着層を形成するための原料ガスと、必要に応じて用いられる反応ガスとを供給するものである。
図3は複数のガス供給口5aの一例の構成を示す模式図であり、図3(a)は複数のガス供給口5aを有するガス配管51aの側面図、図3(b)はその断面図である。ガス配管51aは、長尺の略円筒形等であり、その側面に複数のガス供給口5aが形成される。ガス供給口5bもガス供給口5aと同様の構成である。
図示した例では、上流側の複数のガス供給口5aは、上流側のガス配管51aに形成された複数のノズルの噴射口であり、下流側の複数のガス供給口5bは、下流側のガス配管51bに形成された複数のノズルの噴射口である。なお、複数のガス供給口5aは、ガス配管51aの側面を貫通する貫通孔であってもよく、複数のガス供給口5bは、ガス配管51bの側面を貫通する貫通孔であってもよい。
ガス供給口5a及び5bの内径は、ガスの供給速度を高め、生産性を向上させる観点から、0.1mm以上5.0mm以下の範囲であることが好ましく、0.2mm以上3.0mm以下の範囲であることがより好ましい。
ガス供給口5a及び5bがノズルの噴射口である場合、該ノズルの長さは任意であるが、ガスの供給速度を高め、生産性を向上させる観点から、5mm以上200mm以下であるのが好ましく、10mm以上100mm以下であるのがより好ましい。
搬送ロール21上の基材1付近に原料ガス及び反応ガスを効率よく供給する観点から、ガス配管51a及び51bの長手方向の長さは、基材1の幅方向の長さと同じかそれ以上であることが好ましい。更に、電極3の搬送ロール21の幅方向の長さと同じかそれ以下であることが好ましい。
ガス配管51a及び51bの内径は、好ましくは0.5mm以上50mm以下の範囲であり、より好ましくは1mm以上20mm以下の範囲である。ガス配管51aの材質としては特に制限はなく、ステンレス、銅、アルミ等が挙げられ、反応ガスにより腐食し難い点から、ステンレスが好ましい。
ガス配管51aに形成された複数のガス供給口5aは、ガス配管51aの長手方向(ガス配管51aの軸方向)に所定の間隔で並んでおり、ガス配管51bに形成された複数のガス供給口5bも、ガス配管51bの長手方向(ガス配管51bの軸方向)に所定の間隔で並んでいる。そして、複数のガス供給口5a及び5bが、搬送ロール21上の基材1の搬送方向における上流側及び下流側のそれぞれに、搬送ロール21の幅方向に並ぶように配置される。
ここでいう「所定の間隔」とは、基材1の幅方向長さ等に応じて適宜選択することができるが、搬送ロール21上の基材1付近に原料ガス及び反応ガスを効率よく供給する観点から、複数のガス供給口5aは、基材1の幅方向の両端付近に1個ずつ配置され、かつ、両端付近に形成された2個のガス供給口5aの間に、好ましくは1mm以上500mm以下、より好ましくは2mm以上250mm以下の範囲で、等間隔に配置されることが好ましい。複数のガス供給口5bについても同様である。
搬送ロール21上の基材1付近に原料ガス及び反応ガスを効率よく供給し、かつ原料ガス及び反応ガスの反応物による蒸着室内の汚染を防止する観点から、複数のガス供給口5a及び5bは、図1に示すようにガス噴射口が搬送ロール21に向けられ、かつ水平になるように配置することが好ましい。
搬送ロール21上の基材1と、上流側の複数のガス供給口5aとの最短距離は、基材1付近に原料ガス及び反応ガスを効率よく供給し、かつ基材の幅方向における膜のガスバリア性を均一にする観点から、1mm以上200mm以下であり、2mm以上100mm以下であることが好ましい。搬送ロール21上の基材1と、下流側の複数のガス供給口5bとの最短距離についても同じである。
ここで、搬送ロール21上の基材1と、上流側の複数のガス供給口5aとの最短距離とは、蒸着室12側の搬送ロール21上にある基材1のうち最も上流側に位置する基材と、上流側の複数のガス供給口5a(ガス供給口5aがノズルの場合はノズルの先端)との距離をいい、搬送ロール21上の基材1と、下流側の複数のガス供給口5bとの最短距離とは、蒸着室12側の搬送ロール21上にある基材1のうち最も下流側に位置する基材と、下流側の複数のガス供給口5b(ガス供給口5bがノズルの場合はノズルの先端)との距離をいう。
上流側の複数のガス供給口5aは、蒸着室12において、上流側の遮蔽板6aによってプラズマ発生部15から遮蔽されている。また、下流側の複数のガス供給口5bは、蒸着室12において、下流側の遮蔽板6bによってプラズマ発生部15から遮蔽されている。
遮蔽板6a及び6bの形状は、複数のガス供給口5a及び5bが少なくともプラズマ発生部15から遮蔽され、かつ、遮蔽板6aと遮蔽板6bにより開口部61が形成されていればよい。例えば図1に示すように、遮蔽板6aの基材1の搬送方向に平行な断面は、蒸着室12の内壁8aから中央に向かって水平に伸びる形状を有し、遮蔽板6bの基材1の搬送方向に平行な断面は、蒸着室12の内壁8bから中央に向かって水平に伸びる形状を有する。また、遮蔽板6aと遮蔽板6bにより開口部61が形成されている。
遮蔽板6aは内壁8aに接していてもよく、遮蔽板6bは内壁8bに接していてもよいが、ガス供給口5a及び5bから供給されたガスを原料ガス導入部14に滞留させない観点から、遮蔽板6aと内壁8aとの間、及び遮蔽板6bと内壁8bとの間に空隙を有していることが好ましい。さらには、プラズマを遮蔽する観点から、遮蔽板6aと遮蔽板6bとが開口部を形成し、かつ、電極3や不活性ガス供給口4a及び4bを含めたプラズマ発生部15を取り囲む形状であることが好ましい。
遮蔽板6a及び6bの長手方向の長さは、原料ガス及び反応ガス由来の反応物の付着による電極3の汚染抑制の観点から、ガス配管51a及び51bの長さと同じかそれ以上であることが好ましい。
遮蔽板6a及び6bの材質としては特に制限はなく、ステンレス、アルミニウム等が挙げられ、プラズマの放電安定性の観点から、アルミニウムが好ましい。
本発明においては、複数のガス供給口5a及び5bを前述のとおり配置し、さらに遮蔽板6a及び6bを前述のとおり設けることにより、基材1付近の原料ガス及び反応ガス濃度を高め、かつ該ガス濃度を基材1の搬送方向及び幅方向に対し均一にすることができる。これにより、得られる蒸着膜のガスバリア性の幅方向の均一性が向上する。
また、遮蔽板6a及び6bを設けて原料ガス及び反応ガスがプラズマ発生空間に混入しないようにすることで、原料ガス及び反応ガスの反応物が電極3を汚染することを抑制できる。これによりプラズマ放電が安定化し、長時間成膜が可能になるとともに基材1へのプラズマダメージを抑制し、高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを製造することができる。
また、電極3付近で発生したプラズマは、上流側の遮蔽板6aと下流側の遮蔽板6bとにより形成された開口部61から、搬送ロール21上の基材1付近に供給される。基材1付近でプラズマにより活性化された原料ガス及び反応ガスが反応して基材1上に成膜され、蒸着膜である無機層や有機層が形成される。
開口部61の幅は、蒸着室12に存在する搬送ロール21の搬送方向長さ未満の範囲で適宜選択されるが、電極3の基材搬送方向長さに対する開口部61の幅の比(開口部61の幅/電極3の基材搬送方向長さ)は、0.05〜1.0の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8の範囲であることがより好ましい。開口部61の幅が上記範囲であることにより、開口部61付近のプラズマ密度を高め、原料ガス及び反応ガスの反応性が向上し、搬送ロール21の幅方向に均一な無機層や有機層を基材1上に形成することができる。
また、本発明に好適に用いられる化学蒸着装置100には、通常排気口7を設ける。排気口7は、蒸着室12の任意の箇所に少なくとも1つ設ければよいが、図2に示されるように、排気口7を搬送ロール21の幅方向に複数配置することが好ましい。また、排気口7の各々に、開度調整弁を設置することが好ましい。これにより、搬送ロール21の幅方向のガス濃度分布及び真空度を均等にすることができるので、基材1の幅方向に対しガスバリア性が均一な膜を形成することができる。なお、排気口7を蒸着室に複数配置する場合には、基材1の幅方向に対しガスバリア性が均一な膜を形成する観点から、図2に示すように、少なくとも搬送ロール21の幅方向の両端付近に排気口7を1個ずつ配置することが好ましく、排気口7を3個以上配置する場合には、等間隔で配置することが好ましい。
排気口7には真空ポンプ等の真空排気装置(図示は省略)を接続する。蒸着室12内の真空度を高め、プラズマ放電を安定化させる観点から、真空排気装置としては公知のものを使用することができるが、強力な排気が可能なターボ分子ポンプを用いることが好ましい。
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、好ましくは前述した化学蒸着装置100を用いて、搬送ロール21で連続的に搬送される基材1の少なくとも一方の面に、化学蒸着法により形成した蒸着層(以下「CVD層」ともいう)を形成する工程を有する。
<CVD層の形成条件>
CVD層の形成は、前述した化学蒸着装置100の電極3付近に備えられた不活性ガス供給口4a及び4bからアルゴン等の不活性ガスを供給し、減圧下で電極3に印加して、プラズマ発生部15においてプラズマを発生させる。プラズマを発生させる装置としては、直流(DC)プラズマ、低周波プラズマ、高周波(RF)プラズマ、パルス波プラズマ、3極構造プラズマ、マイクロ波プラズマ、ダウンストリームプラズマ、カラムナープラズマ、プラズマアシスッテドエピタキシー等の低温プラズマ発生装置が挙げられるが、特にプラズマの安定性の点から高周波(RF)プラズマ装置を用いることがより好ましい。また、ガス配管51a及び51bの片端又は両端から原料ガス、及び必要に応じて用いられる反応ガスを導入し、蒸着室12内の原料ガス導入部14で複数のガス供給口5a及び5bからこれらのガスを基材1付近に供給して、連続的に搬送される基材1上にCVD層を形成する。
CVD層の形成は、10Pa以下の減圧環境下、かつ基材1の搬送速度が100m/分以上でなされることが好ましい。
すなわち、CVD層を形成する際の圧力は、緻密な薄膜を形成するため減圧下で行うことが好ましく、成膜速度とバリア性の観点から、好ましくは10Pa以下、より好ましくは1×10-2〜10Paの範囲、更に1×10-1〜1Paがより好ましい。このCVD層には、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行うこともできる。
また、基材1の搬送速度は、生産性向上の観点から、100m/分以上であることが好ましく、200m/分以上であることがより好ましい。上記搬送速度については、上限は特にないが、基材搬送の安定性の観点から1000m/分以下が好ましい。
上記CVD層の形成には、上記原料ガスの他に、前述したように必要に応じて窒素、酸素等の反応ガスを用いてもよい。これらの反応ガスを用いることにより、所望の酸化度及び/または窒化度を有する薄膜を形成することができる。
CVD層を形成する際に供給される反応ガスの流量は、CVD層の均一性の観点から、反応ガスの分圧が1×10-2〜10Paであることが好ましく、1×10-1〜1Paであることがより好ましい。
該反応ガスは、原料ガスと混合してガス配管51a及び51bの片端、両端、又は中央部分等から導入し、複数のガス供給口5a及び5bから蒸着室12内の原料ガス導入部14に供給してもよい。また、該反応ガスは、不活性ガスと混合し、不活性ガスの供給口4a及び4bからプラズマガス発生部15に供給してもよい。
上記のようにして形成されるCVD層の厚さは、断面TEM法により測定した値が20nm未満であることが好ましい。上記範囲であることにより、化学蒸着法による生産速度を物理蒸着法と同等程度に高めることができるため、生産効率が向上すると共に製造設備も小型化、簡素化できるため、安価なバリアフィルムを製造することができる。上記観点から、CVD層の厚さは、10nm未満であることが好ましく、5nm未満であることがより好ましく、3nm未満であることが更に好ましい。
また、CVD層の厚さの下限値は、0.01nmであることが好ましく、0.1nmであることがより好ましく、0.5nmであることが更に好ましい。厚さが上記範囲内であれば、密着性、ガスバリア性等が良好になる。上記観点から、CVD層の厚さは、0.01nm以上20nm未満であることが好ましく、更に0.1nm以上20nm未満であることが好ましく、0.1nm以上10nm未満であることがより好ましく、0.1nm以上5nm未満であることが更に好ましく、0.1nm以上3nm未満であることが更により好ましい。
上記CVD層の厚さの断面TEM法による測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行い、具体的には、後述の方法により行うことができる。
ガスバリア性の点から、形成されるCVD層は無機層であることが好ましい。該無機層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ダイヤモンドライクカーボン等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物又はそれらの混合物等が挙げられるが、ガスバリア性、密着性の点から、好ましくは酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化チタン、ダイヤモンドライクカーボンから選ばれる少なくとも1種である。なかでも、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素及び酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点でより好ましい。CVD無機層は上記無機物質を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
酸化珪素等からなるCVD層形成のための原料としては、例えば、珪素化合物が挙げられる。また、酸化チタン等からなるCVD層形成のための原料としては、チタン化合物が挙げられる。珪素化合物やチタン化合物等の化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用できる。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
上記珪素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、塩化チタン等のチタン無機化合物や、チタンテトラブトキシド、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート及びテトラメチルチタネート等のチタンアルコキシド類や、チタンラクテート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート及びチタントリエタノールアミネート等のチタンキレート類等が挙げられる。
<基材>
本発明に用いられる基材1としては、通常の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料や、太陽電池用部材、電子ペーパー用部材、有機EL用部材に使用しうるプラスチックフィルムであれば特に制限なく用いることができる。該プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、具体的には、エチレン、プロピレン、イソブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸などの生分解性樹脂などが挙げられる。更に、フィルム強度、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましく、表面平滑性、フィルム強度、耐熱性等の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステルが特に好ましい。
プラスチックフィルム中の樹脂の含有量は50〜100質量%であるのが好ましい。
また、上記基材は、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、光安定剤等の安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
上記基材としてのプラスチックフィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。また、単層又は多層のいずれでもよい。かかる基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。
基材の厚さは、ガスバリア性フィルムの基材としての機械強度、可撓性、透明性等の点から、その用途に応じ、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲で選択され、厚さが厚いシート状のものも含む。また、フィルムの幅や長さについては特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。
[ガスバリア性フィルム]
本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、基材の少なくとも一方の面に、前述の方法で形成されたCVD層を有していればよく、ガスバリア性の観点から、該CVD層が無機層であることが好ましい。
また、ガスバリア性の観点から、本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、基材の少なくとも一方の面に無機層を有していることが好ましい。該無機層は、前述のCVD無機層であってもよく、PVD法等により形成されたものでもよい。
なお、ガスバリア性向上の観点からは、無機層単層の厚みを厚くするよりは、複数の種類の無機層で多層化する方がより有効であると考えられる。すなわち、単層の場合、層形成過程で該層中にクラック等が生じ、それが残存してガスバリア性不良の原因になりやすいのに対し、複数の種類の無機層を順次形成し多層化する場合は、層が切り替わる際にそれまでに生成したクラックの成長が停止し、そこから新たに層が成長することにより、無機層全体を貫通するクラック等が発生しにくくなるためと考えられる。
従って、無機層として複数の種類の無機層で多層化したものが好ましく、PVD法により形成した無機層とCVD無機層を組み合わせてなる多層膜がより好ましく用いられる。
無機層としては、特に、PVD法により形成された無機層(以下、「PVD無機層(1)」ということがある)、CVD無機層及びPVDにより形成された無機層(以下、「PVD無機層(2)」ということがある)をこの順で有し、該CVD無機層が、本発明の方法により形成されたものであることが好ましい。
以下、基材の少なくとも一方の面にPVD無機層(1)、CVD無機層及びPVD無機層(2)をこの順で有するガスバリア性フィルムについて説明する。
〔PVD無機層〕
PVD無機層(1)及び(2)の各々を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ダイヤモンドライクカーボン等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物又はそれらの混合物等が挙げられるが、ガスバリア性の点から、好ましくは酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン等である。なかでも、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素及び酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点でより好ましい。PVD無機層は上記無機物質を1種単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
PVD無機層(1)及び(2)の各々の厚さは、一般に0.1〜500nmであるが、ガスバリア性、フィルムの生産性の点から、好ましくは0.5〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。
PVD無機層の厚さは蛍光X線を用いて測定することができ、具体的には後述の方法で行うことができる。
上記PVD無機層(1)及び(2)の各々の形成は、緻密な薄膜を形成するため減圧下で、好ましくはフィルムを搬送しながら行う。PVD無機層(1)及び(2)の各々を形成する際の圧力は真空排気能力とバリア性の観点から、好ましくは1×10-7〜1Pa、より好ましくは1×10-6〜1×10-1Paの範囲、更に好ましくは1×10-4〜1×10-2Paの範囲である。上記範囲内であれば、十分なガスバリア性が得られ、また、PVD無機層に亀裂や剥離を発生させることなく、透明性にも優れている。
〔CVD無機層〕
本発明の方法により好ましく製造されるガスバリア性フィルムにおいては、前記PVD無機層(1)上に、前記方法によりCVD無機層を形成する。CVD無機層により、前記PVD無機層に生じた欠陥等の目止めが行われ、ガスバリア性や層間の密着性が向上するものと考えられる。CVD無機層の形成方法、組成及び好ましい膜厚については前述の通りである。
上記ガスバリア性フィルムにおいては、CVD無機層は、X線光電子分光法(XPS法)により測定された炭素含有量が20at.%未満、好ましくは10at.%未満、より好ましくは5at.%未満である。炭素含有量をこのような値とすることにより、該無機層の表面エネルギーが大きくなり、無機層同士の間の密着性を妨げることがなくなる。そのためバリアフィルムの耐折曲げ性、耐剥離性が向上する。
また、上記ガスバリア性フィルムにおけるCVD無機層の炭素含有量は0.5at.%以上であることが好ましく、1at.%以上であることがより好ましく、2at.%以上であることが更に好ましい。中間層に炭素が僅かながら含まれることで、応力の緩和が効率よくなされ、バリアフィルムのカールが低減される。
以上の点から、上記CVD無機層における炭素含有量は、好ましくは0.5at.%以上20at.%未満の範囲にあり、より好ましくは0.5at.%以上10at.%未満の範囲にあり、より好ましくは0.5at.%以上5at.%未満の範囲にあり、より好ましくは1at.%以上5at.%未満の範囲にあり、さらに好ましくは2at.%以上5at.%未満の範囲にある。ここで、「at.%」とは、原子組成百分率(atomic %)を示す。
上記X線光電子分光法(XPS法)により測定された炭素含有量を達成する方法としては、特に制限はなく、例えば、CVDにおける原料を選択することにより達成する方法、原料や反応ガス(酸素、窒素等)の流量や比率によって調整する方法、製膜時の圧力や投入電力によって調整する方法等が挙げられる。
X線光電子分光法(XPS法)による炭素含有量の具体的な測定方法は後述の通りである。
上記ガスバリア性フィルムにおけるCVD無機層は、PVD無機層への目止め効果を確実とするために、2層以上から構成されることが好ましく、より好ましくは2〜5層から構成されることが好ましい。
また、上記ガスバリア性フィルムにおいては、隣接するCVD無機層とPVD無機層において、その厚さの比(CVD無機層厚さ/PVD無機層厚さ)が0.0001〜0.2、更に0.0005〜0.1、特に0.001〜0.1であるのが好ましい。PVD無機層厚さに比してCVD無機層厚さが上記範囲より薄すぎる場合、全体の無機層に対するCVD無機層の割合が極めて小さくなり、ほぼPVD無機層のみの特性と変わらなくなり、CVD無機層による目止め効果、応力緩和等の効果が殆ど得られなくなる恐れがある。また、PVD無機層厚さに比してCVD無機層厚さが上記範囲より厚すぎる場合、CVD法の製膜レートはPVD法に比べ極めて低く、Roll to RollプロセスにてPVD無機層とCVD無機層を連続して製膜するためには、基材の搬送速度を製膜レートの低いCVD無機層に合わせて大きく低下させる必要があり、生産性が低下する恐れがある。
PVD無機層の表面粗さ(AFMにより測定)は概ね5nm以下とすることが、蒸着粒子が密に堆積するため、バリア性発現のためには好ましい。この際にCVD無機層の厚みを上記値未満とすることで、蒸着粒子間の谷間の部分に存在する開放空孔を埋めながらも蒸着粒子の山の部分は極めて薄くしか被覆しない(もしくは部分的に露呈する)ため、PVD無機層間の密着性をさらに高めることができる。また、CVD無機層の厚みを0.1nm以上とすることで、上記した下層のPVD無機薄幕層の開放空孔の目止め効果が発現すると同時に表面が滑らかになり、上層のPVD無機層を蒸着した際に、蒸着粒子の表面拡散が良好となり、粒子同士がより密に堆積するため、バリア性がさらに向上する。
ガスバリア性、生産性の点から、上記PVD無機層(1)、CVD無機層及びPVD無機層(2)の形成は減圧下、連続して行うことが好ましい。また、同様の観点から、上記無機層の形成の全てを、基材を搬送させながら、特に、CVD無機層の形成を、基材の搬送速度を100m/分以上として行うことが好ましい。すなわち、各層の形成終了後に、真空槽内の圧力を大気圧近傍にまで戻して、再度真空にして後工程を行うものではなく、真空状態のまま連続的に成膜を行うことが好ましい。
PVD無機層(1)を形成した後に、CVD無機層及びPVD無機層(2)の形成を行うが、このCVD無機層及びPVD無機層の形成は、更に1回以上繰り返して行ってもよい。すなわち、品質安定性の点からPVD無機層(1)、CVD無機層及びPVD無機層(2)の上に、更にCVD無機層及びPVD無機層からなる構成単位を1あるいは複数有することが好ましく、1〜3単位有することがより好ましく、また、1又は2単位有することが更に好ましい。
なお、上記各無機層の形成を繰り返す場合も、減圧下、連続して行うことが好ましい。
すなわち、PVD無機層(1)及び(2)により、ガスバリア性の高い均一な無機層を得ることができる。また、CVD無機層の形成を行うことにより、無機層の多層膜における各層の密着性を向上させることができる。
〔アンカーコート層〕
本発明においては、必要に応じ、前記基材とその上に形成される無機層等との密着性を向上させるため、基材上にアンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート層を構成する主成分としては、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ビニルエステル系樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコキシル基含有樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、スチレン系樹脂、ポリパラキシリレン系樹脂等の樹脂が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂としては、ガスバリア性フィルムとした際のガスバリア性や密着性の点から、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコーン系樹脂及びイソシアネート基含有樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。なかでも、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及びイソシアネート基含有樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂がより好ましく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が更に好ましい。
上記樹脂を構成するポリマーの分子量は、ガスバリア性、密着性の点から、数平均分子量で、3,000〜50,000が好ましく、より好ましくは4,000〜40,000であり、さらに好ましくは5,000〜30,000である。
また、アンカーコート層には、硬化剤を配合し、架橋することが好ましい。該硬化剤としては、イソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートや、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ガスバリア性、密着性の点から、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートが好ましく、より好ましくはイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートである。
アンカーコート層には、その他、公知の各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、水性エポキシ樹脂、アルキルチタネート、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、抗菌剤、滑剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤等を挙げることができる。
基材上に設けられるアンカーコート層の厚さは、通常0.1〜5000nm、好ましくは1〜2000nm、より好ましくは1〜1000nmである。上記範囲内であれば、滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力による基材からの剥離もほとんどなく、また、均一な厚さを保つことができ、更に層間の密着性においても優れている。
また、基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に基材に通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
〔保護層〕
また、本発明の本発明の方法で製造されるガスバリア性フィルムにおいては、上記各無機層を形成した側の最上層に保護層を形成する工程を行うことが好ましい。
上記保護層としては、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂やエチレンビニルアルコール系樹脂等のビニルアルコール系樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、ビニルエステル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂等の樹脂層が挙げられる。なかでも無機層のガスバリア性向上の点から上記のうち水溶性樹脂の樹脂層が好ましく、さらに該水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂及びエチレン−不飽和カルボン酸共重合体から選択される少なくとも1種が好ましい。上記保護層に用いられる樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、保護層には、ガスバリア性、耐摩耗性、滑り性向上のため、シリカゾル、アルミナゾル等の無機酸化物ゾル等、粒子状無機フィラー及び層状無機フィラーから選ばれる1種以上の無機粒子を配合することができる。
保護層の厚さは、印刷性、加工性の点から、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜3μmである。その形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、バーコーター、スプレイを用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、基材に無機層及び構成単位層等を形成した後、コート液に浸漬して保護層の形成を行ってもよい。コーティング後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることにより、均一な保護層が形成される。
本発明により製造されるガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性、各層間の密着性の点から、以下の(1)〜(12)のような層構成の態様が好ましい態様として挙げられる。下記で、例えば、A/B/Cの表記は、下から(あるいは上から)A,B,Cの順に積層していることを示す。
(1)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(2)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(3)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(4)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(5)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(6)基材/AC/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(7)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(8)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(9)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層
(10)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(11)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(12)基材/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/CVD無機層/PVD無機層/保護層
(なお、上記態様中、ACはアンカーコート層を指す。)
本発明においては、前記アンカーコート層を形成した後、あるいは無機層を形成した後、あるいは保護層を形成した後に、ガスバリア性、密着性、構成層の安定化等の点から加熱処理を施すことが好ましい。更に、加熱処理はガスバリア性フィルムを構成する全ての層を形成後に行うことが好ましい。
加熱処理は、ガスバリア性フィルムの各構成層を構成する成分の種類や層の厚さ等によりその条件が異なるが、必要な温度、時間を維持できる方法であれば方法は特に限定されない。例えば、必要な温度に設定したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱版と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法等が使用できる。また、取り扱いが容易な大きさにフィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。さらに必要な時間と温度が得られる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
加熱処理の温度は、使用する基材、プラスチックフィルム等の耐熱温度以下の温度であれば特に限定されないが、熱処理の効果が発現するために必要な処理時間を適度に設定できることから60℃以上であることが好ましく、70℃以上で行うことがより好ましい。加熱処理温度の上限は、ガスバリア性フィルムを構成する成分の熱分解によるガスバリア性の低下を防止する観点から、通常200℃以下、好ましくは160℃以下である。処理時間は、加熱処理温度に依存し、処理温度が高い程、短くすることが好ましい。例えば、加熱処理温度が60℃の場合、処理時間は3日〜6ヶ月程度、80℃の場合、処理時間は3時間〜10日程度、120℃の場合、処理時間は1時間から1日程度、150℃の場合、処理時間は3〜60分程度であるが、これらは単なる目安であって、ガスバリア性フィルムを構成する成分の種類や構成層の厚さ等により適宜調整することができる。
さらに本発明の方法で製造されるガスバリア性フィルムにおいては、用途や必要に応じて上記構成に追加の層を積層してもよく、例えば、上記無機層あるいは保護層の上にプラスチックフィルムを設ける等の積層を行い各種用途に使用されるガスバリア性積層フィルムが得られる。プラスチックフィルムの厚さは、機械強度、可撓性、透明性等の点から、通常5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲で用途に応じて選択される。また、該フィルムの幅や長さは特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。例えば、無機層あるいは保護層の面上にヒートシールが可能なプラスチックフィルムを積層することにより、ヒートシールが可能なガスバリア性積層フィルムとなり、種々の容器として使用できる。ヒートシールが可能なプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、アクリル系樹脂、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等の公知の樹脂からなるフィルムが挙げられる。
本発明の方法により製造されるガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や医薬品等の包装材料や太陽電池や電子ペーパー、有機EL等の材料、電子デバイス等のパッケージ材料として好適に使用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における評価方法は、次の通りである。
<プラズマの放電安定性>
1秒あたりのアーク放電回数から、プラズマの放電安定性を評価した。アーク放電は、アーク電流が発生し、プラズマ電極の電圧降下が所定電圧の半分以下になった時点で放電は一旦停止し、瞬時に放電を再開する。その1秒間あたりのアーク放電回数は、プラズマ放電が安定して継続するかの指標となるものである。
(評価基準)
○:1秒あたりのアーク放電回数1回以下
△:1秒あたりのアーク放電回数2〜10回
×:1秒あたりのアーク放電回数11回以上
<水蒸気透過率(WvTR)>
ガスバリア性フィルムを基材の幅方向に6等分し、200mm×100mm角のガスバリア性フィルムを6枚得た。次に各ガスバリア性フィルムの無機層面が外側になるようにして幅方向で二つ折りし、四辺を封じた100mm×100mmの袋を6枚作成した。各袋を温度40℃、相対湿度90%RHの恒湿装置に入れ、水蒸気透過率が安定した14日目から72時間以上間隔で30日目まで質量測定し、14日目以降の経過時間と袋重量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率(g/m2/day)を算出した。
得られた6つの水蒸気透過率(g/m2/day)の平均値を水蒸気透過率(g/m2/day)とし、最大値と最小値との差を水蒸気透過率の幅方向差(g/m2/day)とした。
<PVD無機層の膜厚>
膜厚の測定は蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成する。測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、検量線からその膜厚を測定した。
<CVD無機層の膜厚>
エポキシ樹脂包埋超薄切片法で試料を調整し、日本電子(株)製の断面TEM装置「JEM−1200EXII」により加速電圧120KVの条件で測定した。なお、10nm以下のCVD無機層の厚みについては、断面TEM法による測定においても正確な値を得ることは難しいため、同様の製膜条件にて製膜した20nm以上の比較的厚いCVD無機層を、断面TEM法により測定して単位搬送速度当たりの製膜レートを算出し、実施例記載の搬送速度で製膜した場合の厚みを算出した値としている。
<CVD無機層の炭素含有量>
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のXPS分析装置「K−Alpha」を使用し、XPS(X線光電子分光法)により結合エネルギーを測定し、Si2P、C1S、N1S、O1S等に対応するピークの面積から換算することによって元素組成(at.%)を算出した。なお、CVD無機層の炭素含有量は、XPSチャートのCVD無機層の部分の値を読み取ることで評価した。
実施例1
基材として、幅1.2m、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績(株)製「バイロン300」、数平均分子量23000)とを1:1質量比で配合した混合物を塗布乾燥して厚さ100nmのアンカーコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して2×10-3Paの真空下でSiOを加熱方式で蒸発させ、アンカーコート層上に厚さ40nmのSiOxの真空蒸着層(PVD無機層)を形成した。PVD層形成の際の基材の搬送速度は、300m/分であった。
次いで、圧力を大気圧に戻すことなく、図1に示す構成を有する化学蒸着装置100を使用して、蒸着室12の原料ガス導入部14に、複数のガス供給口5a及び5bから原料ガスとしてHMDSN(ヘキサメチルジシラザン)及び反応ガスとして窒素を供給し、また蒸着室12のプラズマ発生部15に、不活性ガス供給口4a及び4bからArガスを供給した。HMDSN、窒素、Arガスのモル比は1:7:7の比率であった。
この際、側面に内径1mm、長さ40mmのノズル(ガス供給口5a)を40mm間隔で40個取り付けた、長さ1600mm、内径10mmのガス配管51aを基材の搬送方向における上流側に搬送ロール21と平行に配置し、ガス配管51aと同一形状のガス配管51bを基材の搬送方向における下流側に搬送ロール21と平行に配置した。基材1とガス供給口5a及び5bの各ノズル先端との最短距離はそれぞれ30mmであり、ガス配管51a及び51bの中央部分からHMDSN及び窒素を導入した。遮蔽板6a,6bが形成する開口部61の幅は65mmとした。また、化学蒸着装置100には、3個の排気口7を、蒸着室12下部の、搬送ロール21の幅方向に等間隔で配置し、排気口7には真空排気装置としてターボ分子ポンプを接続した。
圧力0.4Paの真空下でプラズマを発生させ、PVD無機層面上にCVD無機層(SiOCN(酸化炭化窒化珪素)を形成した(厚さ1nm、炭素含有量:3at.%)。CVD無機層形成の際の基材の搬送速度は、300m/分であった。
次いで、圧力を大気圧に戻すことなく、2×10-3Paの真空下でSiOを加熱方式で蒸発させ、CVD無機層上に厚さ40nmの無機層(SiOx)を形成した。PVD無機層形成の際の基材の搬送速度は、300m/分であった。更に、その無機層面側に、ウレタン系接着剤(東洋モートン社製「AD900」と「CAT−RT85」とを10:1.5の割合で配合)を塗布、乾燥し、厚さ約3μmの接着樹脂層を形成し、この接着樹脂層上に、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製「パイレンフィルム−CT P1146」)をラミネートし、ガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、基材の搬送速度を200m/分に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、基材の搬送速度を100m/分に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例2において、図1に示す化学蒸着装置にガス供給口5a、5b及び遮蔽板6a、6bを設けず、またHMDSN及び窒素ガスをArガスと混合してガス供給口4a及び4bからプラズマ発生部15へ供給したこと以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。なお、CVD無機層形成時の圧力は0.5Paであった。結果を表1に示す。
比較例2
実施例2において、図1に示す化学蒸着装置にガス供給口5a、5bを設けず、HMDSN及び窒素ガスをArガスと混合してガス供給口4a及び4bからプラズマ発生部15へ供給したこと以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、遮蔽板6a、6bを設けず、排気口7を、図1に示す化学蒸着装置の蒸着室12の下部1箇所のみに配置したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。なお、CVD層形成時の圧力は1.2Paであった。結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、遮蔽板6a、6bを設けず、排気口7を、図1に示す化学蒸着装置の蒸着室12の下部1箇所のみに配置し、排気口7には真空排気装置としてドライポンプを接続したこと以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作製し、前記の評価を行った。なお、CVD層形成時の圧力は3.5Paであった。結果を表1に示す。
Figure 2013234366
表1に示されるように、本発明の製造方法は、CVD法におけるプラズマの放電安定性が良好であり、高いガスバリア性を有し、特に基材の幅方向のガスバリア性の均一性に優れるガスバリア性フィルムを製造することができる。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、CVD法において電極の汚染を抑制しうることからプラズマの放電安定性に優れ、長時間の成膜が可能であり、高いガスバリア性を有し、特に基材の幅方向に対するガスバリア性が均一なガスバリア性フィルムを提供することができる。このようなガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や医薬品等の包装材料や太陽電池や電子ペーパー、有機EL等の材料、電子デバイス等のパッケージ材料として好適に使用できる。
1 基材
10 真空チャンバー
11 基材搬送室
12 蒸着室
13 隔壁
14 原料ガス導入部
15 プラズマ発生部
21 搬送ロール
22 上流側ロール
23 下流側ロール
3 プラズマ発生用電極
4a、4b 不活性ガス供給口
41a、41b ガス配管
5a、5b ガス供給口
51a、51b ガス配管
6a、6b 遮蔽板
61 開口部
7 排気口
8a、8b 内壁
100 化学蒸着装置

Claims (9)

  1. 搬送ロールで連続的に搬送される基材の少なくとも一方の面に、化学蒸着法により蒸着層を形成する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法において、
    前記蒸着層は、前記搬送ロール上の前記基材付近でプラズマにより活性化された原料ガスが反応して該基材上に成膜されることにより形成され、
    前記原料ガスは、前記基材の搬送方向における上流側及び下流側のそれぞれに前記搬送ロールの幅方向に並んだ複数のガス供給口から供給され、
    前記搬送ロール上の前記基材と、前記複数のガス供給口との最短距離が1mm以上200mm以下であり、
    上流側の複数のガス供給口は、上流側の遮蔽板によって前記プラズマを発生させるためのプラズマ発生部から遮蔽されており、
    下流側の複数のガス供給口は、下流側の遮蔽板によって前記プラズマ発生部から遮蔽されており、
    前記プラズマは、前記上流側の遮蔽板と前記下流側の遮蔽板とで形成された開口部から前記基材付近に供給されることを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記ガス供給口の内径が0.1mm以上5.0mm以下である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  3. 前記蒸着層を形成する際の圧力が10Pa以下である、請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  4. さらに、前記搬送ロールの幅方向に排気口を複数配置する、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 前記プラズマを発生させるために用いられる電極がデュアルマグネトロン方式の電極である、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 前記蒸着層が無機層である、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  7. 前記無機層を構成する無機物質が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化チタン、及びダイヤモンドライクカーボンから選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  8. 前記蒸着層の厚さが0.01nm以上20nm未満である、請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  9. 基材の少なくとも一方の面に、物理蒸着法により形成された無機層、化学蒸着法により形成された無機層及び物理蒸着法により形成された無機層をこの順で有するガスバリア性フィルムの製造方法において、該化学蒸着法により形成された無機層を、請求項1〜8のいずれかに記載の方法で形成するガスバリア性フィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021004409A (ja) * 2019-06-27 2021-01-14 株式会社アルバック 防着シート

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