JP2019123839A - コークス炉の溶射補修方法 - Google Patents

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憲巨 池田
Kengo Ikeda
憲巨 池田
長島 康雄
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Abstract

【課題】簡便且つ確実に炉の奥側の損傷部位についても溶射による補修を可能とする。【解決手段】溶射にて補修する損傷部位Xを予め推定し、窯口1a,1b近傍の燃焼室2の煉瓦を積み替える際に、少なくとも上記推定した損傷部位Xの4m以内手前までの燃焼室2の煉瓦を積み替えの対象とし、上記煉瓦の積み替え作業のうち、上記対象とした燃焼室2の煉瓦を解体した段階で、窯内部に作業員が立ち入って上記推定した損傷部位Xに対して溶射補修を行い、その後に、解体位置の煉瓦の再積み上げを行う。【選択図】図1

Description

本発明は、炭化室を形成するコークス炉の炉壁の損傷部位を、溶射にて補修するコークス炉の溶射補修方法に関する。
コークス炉の炉壁は老朽化に伴い、炉壁表面の凹凸が顕在化し、その炉壁の凹凸が、乾留されたコークスを押出す際の抵抗となる。したがって、炉壁の凹凸(損傷部位)を平滑化する目的で溶射材を用いた溶射による補修を行う。
従来、溶射による損傷部位の補修は、窯口から、溶射用のランスを差し込んでランス先端部から補修材(セラミックなど)を吹き付けることで行われる(特許文献1参照)。
特開平7−126637号公報
炭化室の幅は例えば40cm程度と狭く、窯口からランスを差し込んで溶射にて補修する場合、窯口から4m程度までは目視確認しながら補修が可能である。しかしながら、それよりも炉の奥側を補修する場合、ランスが長くなることで当該ランスが撓んでしまい扱いにくくなったり、補修位置の目視確認が困難になったりする。このため、4m程度よりも奥側の補修は、作業員の経験に基づく補修となり、補修精度が著しく低下する。また、従来、窯口の炉長方向中央側の損傷部位については、作業員による目視確認ができないため、煉瓦の積み替えによる補修で対応しているのが現状である。
ここで、特許文献1に記載のような大型の溶射装置を用いて、窯奥部を補修する技術が報告されているが、装置に付設されているモニターでは窯内部を明瞭に観察することは困難で、操作性についても課題を有する。
本発明は、上記のような点に着目したもので、簡便且つ確実に炉の奥側の損傷部位についても溶射による補修を可能とすることを目的とする。
課題を解決するために、本発明の一態様は、コークス炉の炉壁の損傷部位を溶射にて補修する溶射補修方法であって、溶射にて補修する損傷部位を予め推定し、その推定した損傷部位が窯口から4mよりも奥側であると判定したら、窯口近傍の燃焼室の煉瓦を積み替える際に、少なくとも上記推定した損傷部位の4m以内手前までの燃焼室の煉瓦を積み替えの対象とし、上記煉瓦の積み替え作業のうち、上記対象とした燃焼室の煉瓦を解体した段階で、窯内部に作業員が立ち入って上記推定した損傷部位に対して溶射補修を行い、その後に、解体位置の煉瓦の再積み上げを行うことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、燃焼室を解体する際に、窯の奥部まで人が立ち入り、補修箇所を目視確認しながら確実に溶射による補修を行うことができる。このため、炉長中央側の炉壁の損傷に対し、そこまで煉瓦の積み替えを行う必要がなくなることで、作業が簡易となると共にコストも抑えることができる。
本発明に基づく実施形態に係るコークス炉を説明する模式的平面図である。 積み替え範囲を説明する模式的平面図である。 奥側の補修部位(損傷部位)を溶射補修する場合を説明する模式的平面図である。 溶射用のランスとその仮設台の例を示す側面図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜省略及び誇張して表現している。
コークス炉は、図1に示すように、炉幅方向に、炭化室1と、その炭化室1に熱を供給する燃焼室2とが交互に並んで配置され、隣り合う燃焼室2から炭化室1に対し熱の供給が行われる。なお、燃焼室2は、炉長方向に沿って所定間隔毎に区画されている。
そして、炭化室1に投入された石炭は、加熱されることでコークスに乾留され、その後に、炭化室1の他方の窯口1aから装入された押出機によって、炭化室1内のコークスは一方の窯口1bから押し出される。この操業の繰り返しによって、炭化室1の炉壁(燃焼室2の炉壁を兼ねる)は激しい熱サイクルを受ける。また、コークス炉は、一度操業を開始して高温状態になった後は、常温まで冷却すると煉瓦に急激な体積変化が起こることなどから、通常、コークス炉は、操業を開始すると寿命が尽きるまで連続的に使用される。
コークス炉は、上記のような石炭装入やコークス押出しの作業を繰り返すことで、経時的に炉壁への損傷が生じ、長期間の操業によって、炉壁にえぐれが生じることや、熱応力によって張り出しが顕在化したりして損傷することがある。損傷によって生じた炉壁の凹凸は、コークス押出し時の抵抗となり、押出機でのコークス排出が出来なくなる(押詰り)ことの原因となる。
このため、定期的に、炉壁煉瓦について、亀裂、角欠けなどの損傷の有無を点検し、必要に応じて、溶射による補修を行ったり、炉壁煉瓦自体の熱間積み替えによって部分的に補修したりして対応している。
ここで、窯口1a,1b近傍の炉壁の損傷については、図1のように、窯口1a,1bから溶射用のランス4を差し込んで、損傷部位X1の位置を目視しながら補修できるが、窯奥部の炉壁凹凸への補修については、従来は、損傷煉瓦の積み替えで対処していた。しかし、煉瓦積み替えは大規模な築炉工事となるため、工期やコスト面での負荷も非常に大きい。
これに対し、本実施形態では、煉瓦積み替え範囲を必要最低限に抑えつつ、窯奥部の炉壁凹凸への溶射補修が確実に行うことができる。
以下、本実施形態のコークス炉の補修方法について説明する。
<損傷部位の推定作業>
定期的に、炉壁煉瓦に対し、亀裂、角欠けなどの損傷の有無が損傷具合を点検する。点検方法は、公知の点検方法を採用すればよい。
本実施形態では、図1のように、レーザーミラースキャナーなどからなる3次元スキャナ3で、窯口1aから炭化室1内全域を3次元計測して、炭化室1内の3次元座標データ(以下、点群データとも呼ぶ)を取得する。他方の窯口1bからも3次元スキャナで、炭化室1内を3次元計測するようにして、データ数を増やすようにしても良い。
そして、取得した点群データついてメッシュ化などの処理を施して、炭化室1内の3次元画像データを作製する。作製した3次元画像データに基づき、炉壁全体における閾値以上に損傷した損傷部位Xの有無、及びその損傷具合の情報を取得する。この情報に基づき、補修すべき損傷部位Xを推定する。例えば、特開2014−218557号公報に記載のような公知の技術に基づく炉壁の補修診断を行えばよい。
なお、定期的に取得した取得時刻の異なる複数の3次元画像データに対し差分処理などのデータ処理を行うことで、損傷の進行具合の情報を取得して、将来の補修すべき損傷部位Xを推定するようにしても良い。
<補修作業>
(窯口近傍の溶射補修作業)
損傷部位の推定作業で推定した損傷部位Xが、窯口1a,1bから4m前後以内の間に存在する場合には、図1に示すように、窯口1aから溶射用のランス4を窯内に差し込んで、損傷部位X1に対し溶射による補修を行う。なお、符号5は、仮設の台であって、図4のように、ランス4を載置して操作することで、作業員の手作業での操作であっても、ランス4の進退や昇降の動作が滑らかに且つ安定して行えるようになる。
なお、炭化室1は幅40cm程度と狭く、炉長は例えば16m程度以上の長さである。
(窯奥側の溶射補修作業)
窯口1a,1bから4mよりも奥側に位置する損傷部位X(以下、奥側損傷部位X2とも呼ぶ)に対する補修ついては、窯口1a,1b近傍の煉瓦積み替え処理のタイミングまで待つようにする。
ここで、炭化室1は、炉長方向において、窯口1a,1b近傍が、熱衝撃も大きいなどの理由から炉壁が一番損傷しやすいため、炭化室1内の他の領域よりも頻繁に積み替えが行われる。
そして、窯口1a,1b近傍の炉壁を構成する燃焼室2の煉瓦を積み替える必要があると判定したら、窯口1a,1b近傍の燃焼室2の煉瓦積み替え作業を行う。煉瓦の積み替えは熱間積み替えで行う。
熱間積み替えは、積み替えを行う炭化室1の操業を停止し、積み替え作業を行う範囲について断熱施工を施した後に、補修部分の炉壁煉瓦の積み替え作業を行う。積み替えは、一般に、補修すべき煉瓦を解体し、新しい煉瓦を、解体までと同じように編み目状に組み込むようにして煉瓦積みして積み替え、その後、昇温して、停止していた炭化室1を使用可能とする。但し、熱間積み替えの作業は、この作業方法にこれに限定されず、特開2008−169315号公報など公知の方法を適用すればよい。
一般に、煉瓦の積み替え範囲は、コストと手間を考慮して、補修すべき最小限の範囲に限定される。
これに対し、本実施形態では、図2に示すように、熱間積み替えによる初期の補修範囲A0と奥側損傷部位X2との炉長方向の距離Lが4mよりも大きい場合には、熱間積み替えによる補修範囲を、奥側損傷部位X2の手前4m位置以内(L≦4m)の範囲A1まで広げるように変更する。
ここで、炉長が16mで、且つ炉の中央位置が損傷して奥側損傷部位X2が発生しているとして、窯口1a,1b近傍の積み替え範囲が3mの場合には、熱間積み替えによる補修範囲と奥側損傷部位X2との炉長方向の距離Lは5mであるので、窯口1a,1b近傍の積み替え範囲が炉長方向に1mだけ増加することになる。通常、窯口1a,1b近傍の積み替えは3〜4m程度の範囲であり、奥側損傷部位X2のために積み替え範囲を拡大しても1m以内に抑えられると考えられる。
なお、補修すべき奥側損傷部位X2が複数箇所存在する場合には、一緒に溶射補修する損傷部位のうちの一番奥側の損傷部位を対象として、積み替え範囲を変更する。
ここで、一つの炭化室1に対し窯口1a,1bは入側と出側の2箇所存在する。したがって、溶射補修すべき奥側損傷部位X2に近い側の窯口1a,1bを積み替える際に、当該奥側損傷部位X2を溶射補修の対象とすることが好ましい。すなわち、炉長中央位置を境にして2つの領域に区分して、その領域に存在する損傷部位X2に近い側の窯口1a,1bの積み替え作業を行う場合に、その溶射補修の対象とするように設定することが好ましい。なお、上記2つの領域を跨がるような損傷部位については、どちらの窯口1a,1bを積み替える場合に処理しても良い。
そして、本実施形態では、従来と同様に、煉瓦の積み替えのために燃焼室2の煉瓦を部分的に解体し、新たな煉瓦の再積込み作業を行う前に、作業員が、解体した窯口1a,1b内部に立ち入って、奥側損傷部位X2を目視確認しながら、図3に示すように、ランス4からの溶射材吹き付けを行って奥側損傷部位X2の溶射補修を行う。ここで、解体した炉壁煉瓦(燃焼室2の煉瓦)は40〜50cm前後の幅があるため、1m前後の幅を有する空間が作業空間として確保されるため、作業員が溶射作業を容易に行うことが出来る。
その後に、従来と同様にして、新たな煉瓦の再積込み作業を行い、補修した炭化室1での操業を再開する。
以上のように、本実施形態にあっては、燃焼室2を解体することにより、窯の奥部まで人が立ち入り、補修箇所を目視確認しながら確実に溶射が可能となる。また、奥側損傷部位X2を補修する際に、その部分の煉瓦の積み替えを行う必要がなく、目視確認で確実に溶射補修が可能となるため、積み替え費用の低廉化が可能で、かつ窯奥側の炉壁えぐれの平滑化をより確実に実現することができる。
すなわち、煉瓦積み替えは大規模な築炉工事となるため、工期やコスト面での負荷も非常に大きいが、本実施形態では、窯奥側の補修であっても、積み替え範囲を必要最低限にすることができる。この結果、積み替え費用の低廉化が可能で、従来補修が困難とされた窯奥部の溶射が可能となるため、炉壁えぐれの平滑化を実現できる。
1 炭化室
1a,1b 窯口
2 燃焼室
3 3次元スキャナ
4 ランス
5 仮設の台
X 損傷部位
X2 奥側損傷部位

Claims (2)

  1. コークス炉の炉壁の損傷部位を溶射にて補修する溶射補修方法であって、
    溶射にて補修する損傷部位を予め推定し、その推定した損傷部位が窯口から4mよりも奥側であると判定したら、窯口近傍の燃焼室の煉瓦を積み替える際に、少なくとも上記推定した損傷部位の4m以内手前までの燃焼室の煉瓦を積み替えの対象とし、
    上記煉瓦の積み替え作業のうち、上記対象とした燃焼室の煉瓦を解体した段階で、窯内部に作業員が立ち入って上記推定した損傷部位に対して溶射補修を行い、
    その後に、解体位置の煉瓦の再積み上げを行うことを特徴とするコークス炉の溶射補修方法。
  2. 上記積み替える窯口近傍の煉瓦は、上記推定した損傷部位に近い側の窯口側の煉瓦であることを特徴とする請求項1に記載したコークス炉の溶射補修方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021060149A (ja) * 2019-10-04 2021-04-15 黒崎播磨株式会社 窯炉の吹付け補修方法

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