JP2019122652A - バックル、覚醒状態判定システム及び覚醒状態判定方法 - Google Patents

バックル、覚醒状態判定システム及び覚醒状態判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】覚醒状態を高精度に判定すること。【解決手段】車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力するセンサと、前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出する検出部と、前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する判定部とを備える、バックル。バックルに設けられるセンサは、車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力し、検出部は、前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出し、判定部は、前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する、覚醒状態判定方法。【選択図】図2

Description

本発明は、バックル、覚醒状態判定システム及び覚醒状態判定方法に関する。
従来、呼吸センサにより取得される人の呼吸データに基づいて、人の覚醒状態を判定する技術が知られている。例えば、120秒程度の所定の区間における、呼吸間隔を示すRI(Respiration Interval)の平均値やRIのばらつきを示すRrMSSD(Respiration root Mean Square Successive Difference)とを指標として、覚醒状態を判定する装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2015/060268号
RIの平均値やRrMSSDのような所定の区間における統計的指標は、その区間における呼吸の平均的特徴を表すのに適しており、覚醒状態の大まかな判定には有効である。しかしながら、区間内の呼吸の時系列的特徴(例えば、区間内の呼吸の増減の周期的変化や増減のパターンなど)の情報が、その区間における統計処理により丸め込まれてしまうと、覚醒状態の判定精度が低下するおそれがある。
そこで、本開示は、覚醒状態を高精度に判定できる、バックル、覚醒状態判定システム及び覚醒状態判定方法を提供する。
本開示は、
車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力するセンサと、
前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出する検出部と、
前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する判定部とを備える、バックルを提供する。
また、本開示は、
車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力するセンサを有するバックルと、
前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出する検出部と、
前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する判定部とを備える、覚醒状態判定システムを提供する。
また、本開示は、
バックルに設けられるセンサは、車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力し、
検出部は、前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出し、
判定部は、前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する、覚醒状態判定方法を提供する。
本開示によれば、覚醒状態を高精度に判定することができる。
シートベルト装置の構成の一例を示す図である。 第1の実施形態におけるバックルの構成の一例を示すブロック図である。 検出部が実施する呼吸信号抽出処理の一例を示すフローチャートである。 検出部が実施する呼吸周期統計処理の一例を示すフローチャートである。 検出部が実施する呼吸周波数成分比検出処理の一例を示すフローチャートである。 正規化前の呼吸信号の一例を示す図である。 正規化後の呼吸信号の一例を示す図である。 振幅成形する正規化処理についてのいくつかの簡便な方法を説明するための図である。 所定区間における呼吸周期変動の統計的分析の一例を示す図である。 運転中の運転者から検出された各信号の一例を示す波形図である。 LFR,HFRの周波数範囲と、ローパスフィルタとハイパスフィルタの通過周波数との関係の一例を示す図である。 ローパスフィルタとハイパスフィルタを用いて、LFR,HFR及びRLHRを算出する構成の一例を示す図である。 コンボリューションフィルタの生成用の関数f1,f2,f3を示す図である。 F2−F1フィルタ特性とF3フィルタ特性の模式図を示す。 コンボリューションフィルタとローパスフィルタとハイパスフィルタとの重ね合わせを示す図である。 図15のフィルタを用いてRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)を計算した結果の一例を示す図である。 20個の呼吸周期の時系列データの一例を示す図である。 20個の呼吸周期データについて、横軸を0.5秒刻みの周期区間とする度数分布(発生頻度)の一例を示す図である。 図18の度数分布の横軸を周波数で区間分けして並べ変えた度数分布(発生頻度)の一例を示す図である。 繰り返し周期6秒の呼吸波形の一例を示す図である。 図20の波形をスペクトル分析した結果の一例を示す図である。 呼吸周波数成分比の簡易推定方法の一例を示すフローチャートである。 呼吸周波数成分比の簡易推定方法の一例を示すフローチャートである。 呼吸周波数成分比の簡易推定法を用いてRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)を計算した結果の一例を示す図である。 第2の実施形態におけるバックルの構成の一例を示すブロック図である。
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、シートベルト装置の構成の一例を示す図である。シートベルト装置1は、車両に搭載された車載システムの一例である。シートベルト装置1は、例えば、シートベルト4と、リトラクタ3と、ショルダーアンカー6と、タング7と、バックル8とを備える。
シートベルト4は、車両のシート2に座る乗員11を拘束するシートベルトの一例であり、リトラクタ3に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルトは、ウェビングとも称される。シートベルト4の先端のベルトアンカー5は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
リトラクタ3は、シートベルト4の巻き取り又は引き出しを可能にする巻き取り装置の一例であり、車両衝突時等の所定値以上の減速度が車両に加わると、シートベルト4がリトラクタ3から引き出されることを制限する。リトラクタ3は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
ショルダーアンカー6は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員11の肩部の方へガイドする部材である。ショルダーアンカー6は、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー6によりガイドされたシートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。
バックル8は、タング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
バックル8は、本体部8aと、ステー8bとを有する。本体部8aは、タング7が着脱可能に連結される部位である。ステー8bは、バックル8の本体部8aを支持する支持部材の一例である。ステー8bは、シート2又はシート2の近傍の車体に固定される。
タング7がバックル8に連結された状態で、シートベルト4のうちショルダーアンカー6とタング7との間の部分が、乗員11の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に連結された状態で、シートベルト4のうちベルトアンカー5とタング7との間の部分が、乗員11の腰部を拘束するラップベルト部10である。
図2は、第1の実施形態におけるバックル8の構成の一例を示すブロック図である。第1の実施形態では、バックル8は、センサ20と、推定部30とを備える。センサ20は、車両の乗員11の呼吸に応じて変化する出力信号を出力する。推定部30は、センサ20から出力される出力信号に基づいて、乗員11の覚醒状態を推定する。
推定部30は、例えば、少なくとも一つのCPU(Central Processing Unit)と少なくとも一つのメモリとを備える少なくとも一つのコンピュータを含んで構成されている。コンピュータの具体例として、マイクロコンピュータが挙げられる。推定部30の各機能は、少なくとも一つのプログラムがCPUに実行させる処理により実現される。プログラムは、メモリに読み出し可能に記憶されている。推定部30は、検出部40と、判定部70と、出力部80との複数の機能ブロックを有する。
検出部40は、センサ20の出力信号から、乗員11の呼吸状態を表す呼吸情報を検出する。判定部70は、検出部40により検出される呼吸情報に基づいて、乗員11の覚醒状態を判定する。出力部80は、判定部70による覚醒状態の判定結果を、バックル8の外部装置に有線又は無線で出力する。外部装置は、当該判定結果に基づいて、所定の制御(例えば、乗員に対して警報する制御や、車両の走行を支援する制御など)を実行する。
ここで、人の覚醒状態を、人の呼吸状態を表す呼吸情報を用いて推定するのではなく、人の心拍状態を表す心拍情報を用いて推定する技術がある。例えば、心拍間隔RRIから導出される心拍変動HRVが、人の覚醒状態の推定に用いられることがある。心拍変動HRVは、自律神経の活動を表す情報を含んでいる。特に、交感神経と副交感神経の活動バランスの指標であるLF/HFは、覚醒状態にかかわる神経の重要な活動指標として用いられる。交感神経には、脳や体の活動を高める作用があり、例えば、朝起きると交感神経が活発になり、人は覚醒状態となる。副交感神経には、脳の興奮を抑える作用があり、副交感神経の活動が優位になると、覚醒状態が低下する。例えば、夜眠るときはこの状態になる。したがって、LF/HFの数値が大きいと交感神経優位となり、LF/HFの数値が小さいと副交感神経優位となる。
このLF/HF指標は、所定の区間(例えば、1〜2分間)の心拍間隔RRIの時系列変動を表す心拍変動HRVの波形を周波数分析し、周波数分析後の波形のパワースペクトラムを計測することによって算出される。周波数分析後の波形の周波数軸上の0.04Hzから0.15Hzの範囲の低周波成分のパワースペクトラム振幅の積算値をLFとし、0.15Hzから0.5Hzの範囲の高周波成分のパワースペクトラム振幅の積算値をHFとする。HFは、副交感神経の活動を示す指標となり、副交感神経の活動が活発になると、HFは高まる。一方、LFは、交感神経と副交感神経の活動を示す指標として知られており、LFは、交感神経が活発に活動しても副交感神経が活発に活動しても高まる。したがって、LFとHFとの比(LF/HF)を取ることで、交感神経と副交感神経との活動バランスの大小を推定することができ、このLF/HFが覚醒状態の推定にも用いられる。例えば、交感神経が活発になれば、LF/HFは、大きくなり、副交感神経が活発になれば、LF/HFは、小さくなる。つまり、交感神経が優位となることにより、LF/HFが所定の判定閾値よりも大きくなると、人は覚醒状態にあると判定可能となる。なお、LF/HFの周波数区分は、文献によって多少異なる。本文では、0.04Hz、0.15Hz、0.5Hzの数値が使われているが、周波数区分は、これらの数値に限定されない。
一方、人の呼吸は、2秒から6秒の周期で吸気と呼気を繰り返し、体に酸素を取り入れる。吸気は、肺を拡張し、その中を負圧にすることで空気を肺に取り入れる。呼気は、肺を圧縮し、その中を正圧にすることで空気を吐き出す。この時、肺から血液に取り入れられる酸素濃度は、負圧の時に減少し、正圧の時に上昇する。そうすると、呼吸の周期に応じて、肺から血液に取り入れられる酸素濃度は、上下に変化する。
心臓は、血液に取り込まれた酸素を全身に送る機能を有する。心臓の心房の収縮を司る洞結節は、心臓のペースメーカーとして心房を収縮させ、心室に血液を送る。房室結節は、洞結節の興奮から時間遅れで心室を収縮させ、強い圧力で血液を全身に送る。洞結節は、血液中の酸素濃度に反応し、酸素濃度が低下すると心拍を早め、酸素濃度が上昇すると心拍を抑える自動調整機能を持つ。このように、心拍変動は、酸素濃度の変化を通して呼吸の影響を受けることから、心拍変動には呼吸変動の情報が含まれており、心拍変動と呼吸が相関すると言える。
また、心拍を検出する方式として、心電計を用いる接触検知や、脈波を計測する脈拍計測などが存在する。体表面の微小な動きをマイクロ波や静電センサで検知して心拍を検出する技術もある。しかしながら、車載環境下では、乗員にわずらわしさを感じさせずに心拍検知する非接触検知を行う場合でも、ベッド上の安静状態とは異なり、車両走行による振動や体の動きがあるので、体表の微小な動きを安定して検知することは難しくなる。
これに対し、呼吸は、心拍に比べて体の表面が大きく動き、呼吸の周波数は、1Hz以上の車両振動周波数領域とはあまり重ならない(心拍の周波数は、車両振動周波数領域と略重なる)。そのため、車載環境下では、呼吸状態を表す呼吸情報の検出は、心拍状態を表す心拍情報の検出に比べて有利である。例えば、シートベルトに生ずる張力の変化は、胸などの動きに同期し、呼吸情報を含む。したがって、乗員がシートベルトを装着した状態で、シートベルトの張力変化を検出することで、乗員にわずらわしさを感じさせずに、呼吸情報を精度良く検出することが可能となる。
このように、心拍変動は、呼吸と相関し、車載環境下では、呼吸情報は、心拍情報に比べて高精度に検出できる。そこで、本実施形態の推定部30は、乗員の自律神経の活動に関係する特徴的情報(例えば、心拍変動から得られる上述のLF/HFに相当するような情報)を検出部40により得られる呼吸情報から取り出し、その特徴的情報に基づき乗員の覚醒状態を推定する。
なお、呼吸は、呼吸よりも変位が大きな身体の移動(体動)によっても変化する。そのため、体動も呼吸活動の一部とみなすと考えると、乗員の覚醒状態の推定に呼吸情報を利用することで、体動の状態が乗員の覚醒状態の推定に加味されると考えることもできる。体動には、例えば、シート上での乗員の姿勢変化などが含まれる。
次に、図2に示される本実施形態の構成及び機能について、より詳細に説明する。
センサ20は、乗員11の呼吸に応じた変化をモニタし、そのモニタ結果に応じた出力信号を出力する。乗員11の呼吸に応じた変化とは、例えば、胸、腹、腰、背中又は臀部などの呼吸に同期する体動変化、鼻孔から吸排気される息の流れや温度などの呼吸に同期する変化などが挙げられる。検出部40は、センサ20により取得される乗員11の呼吸に応じた変化から、呼吸情報を検出する。センサ20は、例えば、シート2、シートベルト4、バックル8、タング7又はダッシュボードなどに搭載される。
例えば、センサ20は、シートベルト4に生ずる張力(以下、「張力F」とも称する)を検出し、検出された張力Fに応じて変化する出力信号を出力する。シートベルト4が乗員11に装着されていると、乗員11の体動や呼吸によって生ずる乗員11の胸や腹の動きがシートベルト4に伝わるため、シートベルト4の張力Fが変化する。シートベルト4の張力Fの変化は、タング7に伝達し、タング7を介してバックル8に伝達する。センサ20は、バックル8の本体部8aに設けられてもよいし、バックル8のステー8bに設けられてもよい。このように、センサ20は、乗員11の呼吸に応じた変化を張力Fの変化として検出してもよい。
センサ20は、例えば、シートベルト4の張力Fの変化によって生ずる変形又は変位を、シートベルト4の張力Fとして検出する。例えば、センサ20は、シートベルト4からタング7を介してバックル8に入力される荷重の変化を検出するひずみセンサでもよいし、シートベルト4の張力Fの変化によって生ずる静電容量の変化を検出する静電容量センサでもよい。また、シートベルト4の張力Fが変化すると、シートベルト4にタング7を介して接続されるバックル8自体が変位する。そのため、センサ20は、バックル8自体の変位をシートベルト4の張力Fの変化として検出するデバイスでもよい。例えば、光又は電波の送受によって、バックル8外部の反射対象物との相対距離を検出する非接触センサなどが挙げられる。
乗員11の胸の動きは、ショルダーベルト部9の張力を主に変化させ、乗員11の腹の動きは、ラップベルト部10の張力を主に変化させる。そして、バックル8には、ショルダーベルト部9とラップベルト部10との両方がタング7を介して接続されている。したがって、バックル8に設けられるセンサ20は、乗員11の胸と腹の両方の動きの情報を張力変化から検出できるので、センサ20がバックル8に設けられることで、張力Fの検出精度が向上し、ひいては乗員11の呼吸情報の検出精度が向上する。
検出部40は、センサ20の出力信号から、乗員11の呼吸情報を含む呼吸信号を取り出す。検出部40は、例えば、センサ20の出力信号の取りうる数値範囲が適正範囲内かをチェックした後で、ノイズ除去や、呼吸信号の周期や振幅を選択的に強調するためのフィルタリングをセンサ20の出力信号に対して行う。運転中の定常呼吸の周期は、通常3秒から6秒の範囲にあるが、その範囲は各人によって異なるとともに、各人の覚醒状態などによっても異なる。そのため、検出部40は、運転中の定常呼吸の周波数範囲よりも広い周波数範囲(例えば、0.04Hz(25秒周期)から0.5Hz(2秒周期)までの範囲)の信号を通過させ、その周波数範囲以外の周波数の信号を選択的にカットするフィルタを用いるとよい。
図3は、検出部40が実施する呼吸信号抽出処理の一例を示すフローチャートである。図4は、検出部40が実施する呼吸周期統計処理の一例を示すフローチャートである。図5は、検出部40が実施する呼吸周波数成分比検出処理の一例を示すフローチャートである。検出部40は、図3〜5に示されるこれらの各処理を所定の周期で繰り返し実施する。次に、図3〜5に示される各処理について説明する。
図3は、検出部40が実施する呼吸信号抽出処理の一例を示すフローチャートである。検出部40は、センサ20から出力される出力信号sを読み込み(ステップS11)、読み込んだ出力信号sから呼吸信号Rsを取り出す処理を実施する(ステップS13)。検出部40は、例えば、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、0.04Hz(25秒周期)から0.5Hz(2秒周期)までの周波数範囲の信号を通過させ、その範囲以外の周波数の信号をカットする処理を出力信号sに対して実施する。これにより、呼吸信号Rsが出力信号sから取り出される。
ステップS15にて、検出部40は、取り出された呼吸信号Rsを正規化し、正規化された呼吸信号Rsnを生成する。検出部40は、呼吸周期や呼吸信号Rsの周波数成分の検出精度を高めるため、呼吸信号Rsの振幅やオフセットを調整する正規化処理を行うことで、呼吸信号Rsを正規化する。
図6は、正規化前の呼吸信号Rsの一例を示す図である。図7は、正規化後の呼吸信号Rsnの一例を示す図である。例えば、検出部40は、呼吸信号Rsの周期や周波数成分の検出精度を高めるため、呼吸信号Rsの振幅中心Rcがゼロとなり、呼吸信号Rsの平均振幅Rsmaveが1となるように、呼吸信号Rsを正規化し、正規化された呼吸信号Rsnを生成する。
呼吸信号Rsの振幅を正規化する方法は、目的に応じて多種考えられる。呼吸周期や呼吸周波数成分を検出することを目的とする場合、振幅変動の影響を避けるため、検出部40は、例えば、平均振幅Rsmaveが1となるように正規化してもよいし、次の簡便な方法で振幅成形して正規化してもよい。
図8は、振幅成形する正規化処理についてのいくつかの簡便な方法を説明するための図である。図8(a)は、正規化前の呼吸信号Rsの一例を示す。図8(b)は、呼吸信号Rsの振幅を所定レベルで制限して、正規化された呼吸信号Rsを生成する正規化処理の一例を示す。図8(c)は、呼吸信号Rsの振幅変化速度を所定の上限レベルと下限レベルとで制限することで、速い振幅変化と遅い振幅変化を抑制し、振幅が或るレベルに制限された呼吸信号Rsnを生成する正規化処理の一例を示す。図8(d)は、呼吸信号Rsの振幅をゼロクロスでコンパレートし、変化エッジに角度制限を施すことで、アイパターン(eye pattern)の呼吸信号Rsnを生成する正規化処理の一例を示す。図8(e)は、呼吸信号Rsの振幅をゼロクロスでコンパレートしたときの呼吸信号Rsの元波形の一例を示す。
図4は、検出部40が実施する呼吸周期統計処理の一例を示すフローチャートである。ステップS21にて、検出部40は、正規化された呼吸信号Rsnから、呼吸情報の一つである呼吸周期RIを検出し、呼吸周期RIの時系列データである呼吸周期変動RIVを生成する。検出部40は、正規化された呼吸信号Rsnのゼロクロス又はピークを検知することにより、呼吸周期RIを検出する。
ステップS23にて、検出部40は、例えば、所定区間における呼吸周期変動RIVの統計的分析を行う。検出部40は、例えば、平均呼吸周期RIsave、呼吸周期標準偏差RIsstd、平均差分変動RIVsave及び平均振幅Rsmaveなどの呼吸情報を検出する。
図9は、所定区間における呼吸周期変動RIVの統計的分析の一例を示す図である。
検出部40は、所定の計算区間で測定されるn(nは、2以上の整数)個の呼吸周期RIの測定データS〜Sの平均値を平均呼吸周期RIsaveとして算出する。
検出部40は、所定の計算区間で測定されるn個の呼吸周期RIの測定データS〜Sの標準偏差を呼吸周期標準偏差RIsstdとして算出する。呼吸周期標準偏差RIsstdは、計算区間の平均値からのばらつきを表し、呼吸周期RIが安定していると小さくなり、呼吸周期RIが変動すると大きくなる。呼吸周期RIが計算区間でランダムに変動するかゆっくり大きく変動するかは、呼吸周期標準偏差RIsstdからは区別できない。
検出部40は、一呼吸ごとの差分変化の二乗積算値の平方根を、平均差分変動RIVsaveとして算出する。つまり、「RIVsave=√((S−S+(S−S+・・・(S−Sn−1)」である。平均差分変動RIVsaveは、呼吸周期RIが計算区間でランダムに変動すると大きくなり、呼吸周期RIが計算区間でゆっくり大きく変動すると小さくなる。
検出部40は、呼吸信号の振幅の平均値を、平均振幅Rsmaveとして算出する。判定部70は、例えば、呼吸信号Rsの振幅が平均振幅Rsmaveの2倍以上である場合、呼吸が、深呼吸や体動など通常とは異なる呼吸状態であると判定する。
図5は、検出部40が実施する呼吸周波数成分比検出処理の一例を示すフローチャートである。なお、呼吸周波数成分比検出処理を行う場合、呼吸信号Rsを必ずしも正規化する必要はなく、呼吸信号Rsをそのまま呼吸周波数成分比検出処理に用いてもよい。しかし、本実施形態では、図3のステップS15で正規化された呼吸信号Rsnを用いて周波数分析することで、振幅変動の影響を減じている。
ステップS31にて、検出部40は、呼吸信号Rs(又は、正規化後の呼吸信号Rsn)を所定のサンプリング周波数fsでサンプリングする。例えば、検出部40は、呼吸信号Rs(又は、正規化後の呼吸信号Rsn)をサンプリング周波数fs(=4Hz)でサンプリングし、2(=256)個以上の時系列データを作成する。サンプリング周波数fsが10Hzであれば、2(=512)個以上の時系列データ(例えば、210(=1024)個)を作成することが好ましい。
ステップS33にて、検出部40は、0.04Hzから0.5Hzの範囲の呼吸信号Rsの周波数成分を分析する。検出部40は、2のべき乗の個数の時系列データに、同数の窓関数を掛け合わせて、高速フーリエ変換(FFT)を行う。検出部40は、呼吸信号Rsに対してFFTを行うことによって、呼吸信号Rsの低周波呼吸成分のパワースペクトラム振幅の積算値LFRと、呼吸信号Rsの高周波呼吸成分のパワースペクトラム振幅の積算値HFRとを算出する。検出部40は、例えば、上述のLFと同じ周波数範囲(0.04Hzから0.15Hzの範囲)の低周波呼吸成分のパワースペクトラム振幅の積算値LFRを算出することが好ましい。また、検出部40は、例えば、上述のHFと同じ周波数範囲(0.15Hzから0.5Hzの範囲)の高周波呼吸成分のパワースペクトラム振幅の積算値HFRとを算出することが好ましい。パワースペクトラムは、例えば、呼吸信号RsnのFFT演算後、複素共役が掛け合わされ、実数として計算される。
サンプリング周波数fsが4Hzで2(=256)個以上の時系列データの場合、最小周波数分解能が0.033Hz(=2×4/256)となるので、0.04Hzよりも小さな値であり、時系列データの個数は適正である。サンプリング周波数fsが4Hzで2(=512)個以上の時系列データの場合、最小周波数分解能が0.016Hz(=2×4/512)となるので、0.04Hzよりもさらに小さな値であり、時系列データの個数はより適正である。
ステップS35にて、検出部40は、LFRをHFRで除算することで、LFRとHFRとの比(LFR/HFR)である呼吸周波数成分比RLHRを算出する。検出部40は、RLHRについて無限インパルス応答フィルタによるフィルタ処理を行って、過去のRLHRの時間平均RLHRaveを計算し、RLHRn(=RLHR/RLHRave)を計算する。RLHRnは、呼吸周波数成分比の正規化出力となる。
図10は、運転中の運転者から検出された各信号の一例を示す波形図である。図10(a)は、呼吸信号Rs及び心拍間隔RRIを示す波形図である。心拍間隔RRIは、心電計で計測された値である。横軸は、データポイントを表し、RRIの縦軸は、一分間の心拍数を表す。図10(a)に示されるように、呼吸の変化と心拍変動が連動している。
図10(b)は、LF/HFとLFR/HFRを示す波形図である。LF/HFは、心電計で計測した心拍間隔RRIから求められたLF/HFの値を示し、全区間の平均値が1となるように正規化されている。一方、LFR/HFRは、図5の上述の呼吸周波数成分比検出処理で呼吸信号Rsから求められたLFR/HFRの値を示し、全区間の平均値が1となるように正規化されている。図10(b)に示されるように、LFR/HFRは、LF/HFと同様に推移する。
図10(c)は、呼吸周期RIを示す。縦軸の単位は秒である。
図10に示されるように、呼吸信号Rsに基づき図5の上述の呼吸周波数成分比検出処理で計算されたRLHR(=LFR/HFR)又はRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)は、心拍間隔RRIに基づき計算されたLF/HFの値と類似した変化となる。つまり、呼吸信号Rsに基づき計算されたRLHR(=LFR/HFR)又はRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)は、心拍間隔RRIに基づき計算されたLF/HFと同様に、交感神経と副交感神経の活動を示す指標データとして利用可能である。
したがって、呼吸信号Rsから計算されるRLHR又はRLHRnの周波数比の範囲を、心拍間隔RRIから計算する周波数比の範囲と上述のように同じにすることにより、LF/HFの代わりに、RLHR又はRLHRnを覚醒状態の推定に使用することができる。
特に、呼吸は、副交感神経の活動と密接に関連するため、交感神経の活動が低下し、副交感神経の活動が活発になる状態では、呼吸信号Rsから推定された自律神経の活動状態は、心拍間隔RRIから推定された自律神経の活動とよく一致すると考えられる。なぜなら、RLHR又はRLHRnの値が比較的低くなる期間では、副交感神経が優位に働いており、呼吸との相関がより高くなるからである。したがって、判定部70は、例えば、RLHR又はRLHRnの値が所定の判定閾値よりも低下した場合、自律神経が副交感神経優位の状態であると判定し、覚醒状態が低下していると判定できる。例えば図10(b)において、判定部70は、RLHRnの値が所定の判定閾値0.4よりも低下した場合、自律神経が副交感神経優位の状態であると判定し、覚醒状態が低下していると判定する。
また、RLHR又はRLHRnの値が比較的低くなる期間では、覚醒が低下し、リラックス状態を経過した後に眠気が生じる場合がある。眠気が強まり、乗員が眠気に気づくと、乗員は目を覚まそうとする努力(覚醒努力)をし始め、覚醒させる交感神経が活発になり、副交感神経との活動バランスが大きく変動する。したがって、判定部70は、RLHR又はRLHRnの値が所定の判定閾値よりも低下した後に上昇する繰り返しパターンが検出部40から得られた場合、乗員に眠気が生じていると判定できる。
また、図10(b)に示されるRLHR(=LFR/HFR)は、表示されている全区間の平均値が1となるように正規化されたRLHRnを表す。RLHRnを計算するための周波数範囲を呼吸周期に変換すると、HFRが2秒〜6秒の呼吸周期に相当し、LFRは、6秒から25秒の呼吸周期に相当する。HFRは、呼吸そのものの周期として理解することができ、LFRは、呼吸周期の周期的増減変動成分として理解することができる。したがって、RLHR(=LFR/HFR)の値は、平均呼吸周期の大小変化でも、LFRとHFRの比率の変化により変動し、RLFRの絶対値は、呼吸周期が遅くなると、大きくなる傾向がある。したがって、呼吸の変化を確実にとらえるには、正規化することが好ましい。
例えば、呼吸の平均周期とRLHRの大小の相関を取り、その相関係数に応じてRLHRを平均周期で除算することで、正規化が行われる。RLHRの変化に注目する場合は、RLHRの現在から過去数分の区間の平均値、又は無限インパルス応答フィルタ値で、RLHRを除算することで、正規化ができる。このように正規化された場合、各人の平均呼吸周期の変化を吸収でき、RLHRに変化があると、RLHRnには、その変化が強調して現れる。したがって、RLHRnを覚醒状態の推定に利用することで、その推定精度を高めることができる。
また、一般的に、深くゆっくりとした呼吸は、リラックスしており、覚醒が低いと解釈される。一例として、5秒周期呼吸から8秒周期呼吸に変化した場合、呼吸がゆっくりになることを表しているので、通常は覚醒が低下していることに対応している。5秒周期はHFRの周波数領域に一致し、8秒周期はLFRの周波数領域に一致する。そうすると、5秒周期呼吸から8秒周期呼吸に変化したということは、HFRが大きい状態からLFRが大きい状態に遷移し、LFR/HFRが小さい状態から大きい状態に遷移したとも思われる。つまり、LFR/HFRの数値からでは、覚醒度が大きくなることになるので、覚醒の低下と相反しているように思われる。
しかし、通常、呼吸が速い場合は吸気時間と排気時間がほぼ同じであるが、呼吸が長くなると排気時間が長くなる。つまり、吸気時間は、余り変わらない。そうすると、吸気にかかる時間が2秒から3秒とすると、残りの時間はずっと排気していることになるので、吸気による周波数成分が、HFRの領域のパワースペクトルを大きくする。その吸気の繰り返し周期がLFRのパワースペクトルとして加わるため、RLHR(=LFR/HFR)の分母と分子の両方が同時に大きくなり、結果としてバランスが取られる。結局、長周期の呼吸をしたからといって、長周期に相当するLFRだけが大きくなるのではなくHFRも大きくなるので、結果的には、覚醒度が大きく上がるということは起こりにくい。したがって、呼吸の周期だけに着目して覚醒状態を判定する方法に比べて、呼吸の周波数成分を分析して覚醒状態を判定する本実施形態は、高精度に覚醒状態を判定できる。このようなメカニズムで、呼吸から自律神経の活動が関連付けられる。
上述の実施例では、FFTを用いて呼吸の周波数成分を分析する方法が使われているが、FFTを用いなくても、簡便なローパスフィルタ、ハイパスフィルタ及びスライドウインドウフィルタを用いても、呼吸の周波数成分を分析することができる。最も簡単な離散系のローパスフィルタ及びハイパスフィルタは、無限インパルス応答フィルタであり、アナログのCRフィルタの特性を差分方程式の簡単な計算で実現できる。LFR,HFRの周波数範囲は、ローパスフィルタとハイパスフィルタとの組み合わせで、図11,12のようになる。しかし、フィルタのカットオフ特性が急峻でないため、LFRとHFRのコントラストが低下する。そこで、0.15Hz付近にノッチ特性を持つフィルタを重ね合わせることで、フィルタ特性の改善が可能となる。
計算処理が簡便なノッチ特性を持つフィルタとして、コンボリューションフィルタが考えられる。次に、コンボリューションフィルタについて、図13〜15を参照して説明する。
呼吸信号Rsnのデータ列をS0、S−1、S−2、・・・S−nとする。検出部40は、最も簡単な実施例として矩形関数を用い、矩形関数を所定の遅れ時間を起点に平行移動しながら、データ列をS0、S−1、S−2、・・・S−nに重ね足し合わせる畳み込み演算を行う。実施例では、起点はT=0である。矩形関数の振幅は1または−1であるため、検出部40は、矩形関数が1である区間のSnの総和を、その区間のデータ数で割ればよい。検出部40は、矩形関数の振幅が−1の区間では、その区間のデータに−1をかけてSnの総和を演算する。フィルタ特性は、サンプリング周波数とn0,n1,n2,n3,n4,n5の数値選択により決まる(例えば、サンプリング周波数=4Hz,n0=0,n1=13,n2=4,n3=10,n4=19,n5=39)。図14は、F2−F1フィルタ特性とF3フィルタ特性の模式図を示す。図15は、コンボリューションフィルタとローパスフィルタとハイパスフィルタとの重ね合わせを示す図である。
図16は、図15のフィルタを用いてRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)を計算した結果の一例を示す図である。図16(b)にRLHRnの波形が追加されている点を除いて、図16は、図10と同じである。FFTを用いて呼吸の周波数成分を分析する方法による計算結果と比べると、フィルタの周波数弁別能力が荒いため、コントラストは低下しているが、RLHRnの増減の傾向は、LF/HFと略一致している。したがって、計算処理が簡便なノッチ特性を持つフィルタを用いても、自律神経の活動を推測することが可能である。
次に、呼吸周波数成分比の演算量を抑えた実施例について説明する。この実施例は、8ビットのMPU(Micro Processing Unit)など、メモリや演算精度が十分でない計算環境への実装に好適である。
図8(e)のように、検出部40は、呼吸信号Rsの振幅を1,0の二値信号に変換し、二値信号の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジ毎に、1呼吸周期を計算する。または、検出部40は、二値信号の変化点(半周期)毎に、一呼吸周期を計算する。図17は、このようにして得られた20個の呼吸周期の時系列データである(N=20)。図18は、20個の呼吸周期データについて、横軸を0.5秒刻みの周期区間とする度数分布(発生頻度)を示す。呼吸周期はそのまま、呼吸の基本周波数に対応するため、周期の逆数が呼吸の基本周波数に相当する。4秒の場合は0.25Hz、6秒の場合は0.166Hzとなる。図19は、図18の度数分布の横軸を周波数で区間分けして並べ変えた度数分布(発生頻度)を示す。図19の度数分布は、呼吸の基本周波数のFFT解析結果と一致する。
したがって、呼吸周期の度数分布を用いて、簡易的に周波数分析し、呼吸周波数成分の比を推定することが可能である。図の実施例では、0.04Hzから0.15Hzまでの度数の総和をLF_binとし、0.16Hzから0.5Hzまでの度数の総和をHF_binとすると、それぞれLF_bin=1、HF_bin=19となる。したがって、LFR/HFR=1/19=0.05となる。これが、呼吸周期から求めた自律神経の活動の簡易指標となる。しかし、呼吸周期が6秒以下で安定の場合は、LF_bin=0となり、LF/HF=0となる。また、呼吸周期が7秒以上で安定の場合は、LF_bin=20となり、LF/HF=20で常時活性となるなど不自然な判定となる。
図20は、繰り返し周期6秒の呼吸波形の一例を示す。図21は、図20の波形をスペクトル分析した結果の一例を示す。図21では、サンプリング周波数を2Hzとし、64点のデータでFFT分析が行われている。0.16Hz付近と0.33Hz付近に、2つのスペクトルピークが観測される。0.16Hzは、呼吸波形の繰り返し周期6秒に対応し、一呼吸の基本周波数である。0.33Hzは、吸気と排気の時間のアンバランスに伴う高調波スペクトルに対応し、周期3秒の二次高調波成分である。この二次高調波成分は、図20の整形後の波形のデューティー比が50%とならないアンバランスが現れることに対応する。特に長周期呼吸ほど、アンバランスは大きくなる。
度数分布を用いた簡易周波数比計算法は、呼吸周期の時系列から呼吸振幅の周波数成分を所定のルールに基づいて推定する。そして、一呼吸波形が持つ周波数成分をHFR成分に振り分け、呼吸の時系列変動が持つ周波数成分をLFR成分に振り分け、度数分布を生成し、LFRとHFRの度数の比で呼吸周波数成分比を推定する。
次に、呼吸周波数成分比の簡易推定のルールの一実施例を図22,23を参照して説明する。周期列は、I(0)からI(-20)とする(括弧内の数字nは、現在から過去にさかのぼって、n番目の呼吸とし、I(n)はその呼吸周期とする)。
(0)検出部40は、呼吸信号Rsから呼吸振幅データを読み込む(ステップS41)。検出部40は、読み込んだ呼吸振幅データの変化に基づいて1呼吸周期を繰り返し計算して、I(0)からI(-20)までの21個の呼吸周期の信号列を作成する(ステップS43)。
(1)検出部40は、2秒から6秒の呼吸周期を、高調波スペクトルを含めて、すべてHF_binの度数としてカウントする(ステップS45からステップS51まで)。
(2)一方、6秒から12秒の呼吸周期は、二次の高調波、三次の高調波成分が6秒以下となるため、6秒以上の基本周波数と6秒以下の高調波周波数を持つ。そのため、検出部40は、6秒から12秒の呼吸周期を、LF_binとHF_binの両方の度数としてカウントする(ステップS49からステップS55まで)。LF_binとHF_binへの組み入れの割合(つまり、LF_binとHF_binとのうち、どちらの度数として組み入れるのかの割合)は、一周期のデューティー比に基づいて決められるとよい。実施例では、簡易化のため、組み入れの割合を1:1とした。ただし、6秒を境に度数組み入れの計算が変わり不連続が生じるため、5秒から7秒の周期では(ステップS49 Yes)、その周期に応じてLF_binとHF_binへの組み入れバランスを連続的に変えることにより(ステップS51)、不連続を減じる。
つまり、ステップS45にて、検出部40は、I(n)が5秒未満の呼吸周期のデータであるか否かを判定する。検出部40は、I(n)が5秒未満の呼吸周期のデータであると判定した場合(ステップS45 Yes)、HF_binを一つインクリメントする(ステップS47)。一方、検出部40は、I(n)が5秒以上の呼吸周期のデータであると判定した場合(ステップS45 No)、HF_binをインクリメントしない。次に、ステップS49にて、検出部40は、I(n)が5秒以上7秒未満の呼吸周期のデータであるか否かを判定する。検出部40は、I(n)が5秒以上7秒未満の呼吸周期のデータであると判定した場合(ステップS49 Yes)、ステップS51に記載の二つの式に従って、HF_binとLF_binを計算する。次に、検出部40は、I(n)が7秒以上12秒以下の呼吸周期のデータであるか否かを判定する(ステップS53)。検出部40は、I(n)が7秒以上12秒以下の呼吸周期のデータであると判定した場合(ステップS53 Yes)、LF_binを一つインクリメントする(ステップS55)。一方、検出部40は、I(n)が7秒以上12秒以下の呼吸周期のデータでないと判定した場合(ステップS53 No)、LF_binをインクリメントしない。検出部40は、I(0)からI(-20)までの21個の呼吸周期のデータそれぞれについて、ステップS45からステップS55までの処理を実施する。
(3)検出部40は、2つの呼吸周期I(n)、I(n-1)の和Aが6秒以上12秒以下の場合は、その差分B(=abs(I(n)-I(n-1)))を評価する(ステップS61からステップS70まで)。"abs(*)"は、*の絶対値を表す。つまり、検出部40は、差分Bが1秒より小さい場合は(ステップS69 Yes)、I(n)とI(n-1)は6秒以下の同一周期の周波数成分を持つとして、HF_binの度数を一つインクリメントしてカウントする(ステップS70)。検出部40は、差分Bが2秒より大きな場合は(ステップS65 Yes)、I(n)とI(n-1)は6秒以上12秒以下の周波数成分を持つとして、LF_binの度数を一つインクリメントしてカウントする(ステップS67)。
(4)検出部40は、2つの呼吸周期I(n)、I(n-1)の和Aが6秒以上24秒以下の場合において、2つの呼吸周期の和A(=I(n)+I(n-1))を一吸収周期と仮にみなし、その差分C(=(I(n)+I(n-1))-(I(n-2)+I(n-3)))を評価する(ステップS71からステップS79まで)。つまり、検出部40は、差分Cが1秒より小さい場合は(ステップS77 Yes)、4つの呼吸周期(I(n), I(n-1), I(n-2), I(n-3))に長周期変動がなく、それら4つの呼吸周期が6秒以下の類似周期の周波数成分を持つと判断する。検出部40は、この場合、HF_binの度数を一つインクリメントしてカウントする(ステップS79)。検出部40は、差分Cが3秒より大きな場合は(ステップS73 Yes)、4つの呼吸周期(I(n), I(n-1), I(n-2), I(n-3))に長周期変動があり、それら4つの呼吸周期が6秒以上24秒以下の周波数成分を持つと判断する。検出部40は、この場合、LF_binの度数を一つインクリメントしてカウントする(ステップS75)。
(5)検出部40は、0から−17までのnのそれぞれについて、ステップS61からステップS79までの処理を実施する(ステップS81)。そして、検出部40は、LF_binをHF_binで除算することによって、LFR/HFRに相当するLF/HF_binを算出する(ステップS83)。なお、3つの呼吸周期の和に対しても、(4)を3つ以上に拡張して同様に計算できる。また、LF_binとHF_binへの組み入れでは、(1)から(5)までにおいて、それぞれ重み係数がかけられて組み入れられるが、本実施例では、すべて重み係数1として計算した。
図24は、呼吸周波数成分比の簡易推定法を用いてRLHRn(呼吸周波数成分比の正規化出力)を計算した結果の一例を示す図である。図24(b)に簡易推定法によるRLHRnの波形が追加されている点を除いて、図24は、図16と同じである。簡易推定法によるRLHRnの波形は、10個の呼吸周期の時系列データで、一呼吸確定毎に計算された結果を表す。FFTを用いて呼吸の周波数成分を分析する方法による計算結果と比べると、簡易推定法によるRLHRnの増減の傾向は、LF/HFと略一致している。したがって、呼吸周波数成分比の簡易推定法を用いても、自律神経の活動を推測することが可能である。
なお、呼吸信号から呼吸周波数成分を推定する方法は、上記に限られない。例えば、心拍間隔RRIから推定される自律神経の活動指標に対応するため、LFRとHFRとを分割するための閾値を6秒(0.16Hz)としているが、呼吸パターンの特徴を取り出す目的であれば、閾値を4秒や8秒としても、その特徴の検出は可能である。周波数度数の分割範囲を増やしてもよい。また、分析する呼吸数が一定であれば、LFRとHFRとの比(RLHR)を算出せずに、LFRを、LF/HFに対応する値として使用されてもよい。つまり、LFRが、交感神経と副交感神経の活動を示す指標データとして利用可能であれば、覚醒状態の判定に使用する指標として利用されてよい。このように、覚醒状態の判定に使用する指標は、LFRとHFRとの比(RLHR)に限定されない。
2周期や3周期など、複数周期に亘る変動の周波数成分の推定の閾値や差分演算方法も、同様に特徴検出の目的に合わせて変えることができる。また、2周期や3周期に亘る変動の判定閾値の前後で判定条件の変化による数値の不連続変化を抑えるには、1周期の場合で例示したバランスを連続的に変える手法の適用が可能である。FFT手法、フィルタ手法及び度数分布手法の3つの実施例が上記されている。いずれの手法も、呼吸信号の一振幅周期が持つ周波数成分と、呼吸の時系列繰り返し変動が持つ周波数成分とを分析し、その分析結果から呼吸を特徴づける数値を取り出し、呼吸状態の推定、及び呼吸から自律神経の活動を推定する。これらの手法で取り出した呼吸状態及び神経の活動状態は、乗員の覚醒状態やストレス状態の推定に役立つ。
図25は、第2の実施形態におけるバックルの構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態のうち第1の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第1の実施形態(図2参照)では、判定部70及び出力部80は、バックル8に設けられているのに対し、第2の実施形態(図25参照)では、判定部70及び出力部80は、バックル8とは別のデバイスに設けられている。図25に示される覚醒状態判定システム15は、バックル8と、推定部30とを備える。推定部30は、検出部40と、判定部70と、出力部80とを備える。
以上、バックル、覚醒状態判定システム及び覚醒状態判定方法を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
例えば、シート2は、車両の前側座席でもよいし、後部座席でもよい。また、図25において、検出部40は、バックル8とは別のデバイスに設けられてもよい。また、センサ20の出力信号sに対して実施される複数の処理の一部(例えば、正規化処理)は、検出部40で実行されるのではなく、判定部70で実行されてもよい。
1 シートベルト装置
8 バックル
15 覚醒状態判定システム
20 センサ
30 推定部
40 検出部
70 判定部
80 出力部

Claims (8)

  1. 車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力するセンサと、
    前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出する検出部と、
    前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する判定部とを備える、バックル。
  2. 前記検出部は、前記周波数成分を用いて、交感神経と副交感神経の活動を示す指標データを算出し、
    前記判定部は、前記検出部により算出される前記指標データに基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する、請求項1に記載のバックル。
  3. 前記判定部は、前記指標データが所定の判定閾値よりも低下した場合、前記乗員の覚醒状態が低下していると判定する、請求項2に記載のバックル。
  4. 前記判定部は、前記指標データが所定の判定閾値よりも低下した後に上昇する繰り返しパターンが前記検出部から得られた場合、前記乗員に眠気が生じていると判定する、請求項2又は3に記載のバックル。
  5. 前記指標データは、前記呼吸の低周波成分のパワースペクトラムの振幅の積算値と、周波数範囲が前記低周波成分よりも高い前記呼吸の高周波成分のパワースペクトラムの振幅の積算値との比である、請求項2から4のいずれか一項に記載のバックル。
  6. 前記指標データは、正規化されたデータである、請求項2から5のいずれか一項に記載のバックル。
  7. 車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力するセンサを有するバックルと、
    前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出する検出部と、
    前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する判定部とを備える、覚醒状態判定システム。
  8. バックルに設けられるセンサは、車両の乗員の呼吸に応じて変化する出力信号を出力し、
    検出部は、前記出力信号から、前記呼吸の周波数成分を周波数分析により検出し、
    判定部は、前記検出部により検出される前記周波数成分に基づいて、前記乗員の覚醒状態を判定する、覚醒状態判定方法。
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