以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
また、以下の各図では、測温装置の延伸方向に沿う方向をZ方向と規定する。Z方向に垂直な平面内に、互いに垂直となるX方向及びY方向を規定する。特に、鉛直方向上方に向かう方向がX方向である。また、測温装置が測温対象とする供試体上の被測温面は、XY平面内にある。
(測温装置)
まず、本実施形態に係る測温装置について説明する。図1は、測温装置10全体の構成を示す斜視図である。図2は、測温装置10の測温接点14c近傍の構成を示す分解斜視図である。測温装置10は、絶縁管12と、熱電対14と、熱電対素線16と、断熱シート18とを備える。
絶縁管12は、セラミックス等の絶縁性の材料から構成される管状部材である。絶縁管12は、延伸方向に並列する2つの管路12a,12bを有する。また、絶縁管12は、熱電対14を設置する側の先端部に、切り欠き部12cを有する。切り欠き部12cは、2つの管路12a,12bのそれぞれの一部を絶縁管12の延伸方向に沿って露出させる形状を有する。また、熱電対14を設置する側の絶縁管12の先端面12dは、絶縁管12の延伸方向に対しておおよそ垂直な平面である。
また、絶縁管12は、弾性部材20を介して支持される。弾性部材20は、絶縁管12に対して、絶縁管12の延伸方向に沿って、且つ、熱電対14が設置されていない側から熱電対14が設置されている側に向かう方向に、力を与える。弾性部材20は、例えば、軸方向に沿って内側に絶縁管12を通すコイルばねである。
また、絶縁管12には、弾性部材20の熱電対14側の端部に接触する固定部材22が設置されていてもよい。固定部材22は、例えば、内壁側に絶縁管12を貫通させる環状部材である。固定部材22は、外壁側から内壁側に貫通する不図示のねじ穴を有する。このねじ穴に外壁側から止めねじ24を通し、止めねじ24の先端部を絶縁管12に接触させた状態で締結させることで、固定部材22が絶縁管12の外周の一部に固定される。
熱電対14は、それぞれ異なる金属材からなる2つの金属板同士を接合させた、シート状の熱電対である。熱電対14の種類としては、例えば、JIS規格に準拠し、一方の金属材がクロメルであり、他方の金属材がアルメルであるK型とし得る。熱電対14は、例えば、一方の金属板で構成される第1板部14aと、他方の金属板で構成される第2板部14bと、一方の金属板と他方の金属板との接合部としての測温接点14cを有する先端板部14dとを含む。
第1板部14aは、絶縁管12の切り欠き部12cにおいて露出している一方の管路12aに沿って配置される平板部である。第2板部14bは、切り欠き部12cにおいて露出している他方の管路12bに沿って配置される平板部である。第1板部14aと第2板部14bとは、同一平面内で、且つ、非接触で、並列している。また、第1板部14a又は第2板部14bの延伸方向の長さL2は、それぞれ、切り欠き部12cの延伸方向の長さL1よりも短い。ただし、必ずしも第1板部14aの延伸方向の長さと第2板部14bの延伸方向の長さとを一致させる必要はない。
先端板部14dは、絶縁管12の先端面12dに対しておおよそ平行となる平板部である。先端板部14dは、第1板部14aに連続する一方の金属板と、第2板部14bに連続する他方の金属板とが接合された平板部である。ここで、先端板部14dに含まれる一方の金属板と他方の金属板とは、第1板部14a又は第2板部14bに連続する部分から絶縁管12の先端面12dに沿うようにおおよそ90°折れ曲がっている。また、先端板部14dに含まれる一方の金属板と他方の金属板とは、第1板部14aと第2板部14bとが対向するY方向とは平面内で垂直となるX方向に沿った1辺で接合される。この1辺が、熱電対14における測温接点14cである。すなわち、熱電対14は、露出した状態で、且つ、測温接点14cが絶縁管12の先端面12dに沿うように配置されている。
先端板部14dにおいて、測温接点14cの位置に相当する一方の金属板と他方の金属板とは、互いの端面同士で接合される。したがって、先端板部14dの厚さは、全体として略一定である。すなわち、第1板部14a、第2板部14b及び先端板部14dを含む熱電対14全体としても、各部の厚さは略一定である。
一対の熱電対素線16は、絶縁管12の一方の管路12aに配設され、絶縁管12の外部に導かれる第1素線16aと、絶縁管12の他方の管路12bに配設され、絶縁管12の外部に導かれる第2素線16bとを含む。第1素線16aは、熱電対14の第1板部14aと同一の金属材からなる。第2素線16bは、熱電対14の第2板部14bと同一の金属材からなる。第1素線16aは、絶縁管12の切り欠き部12cにおいて露出している一方の管路12a上の接合点17aで、第1板部14aと接合される。第2素線16bは、切り欠き部12cにおいて露出している他方の管路12b上の接合点17bで、第2板部14bと接合される。
断熱シート18は、絶縁管12の先端面12dと熱電対14の先端板部14dとの間に設置されるシート状の部材である。断熱シート18を構成する材料は、断熱性を有する。また、断熱シート18を構成する材料は、弾性を有することが望ましい。断熱シート18を構成する材料としては、例えばガラスウールが採用され得る。断熱シート18の平面形状は、先端板部14dの平面形状におおよそ合う。
次に、測温装置10の作用について説明する。
図3は、測温時の状態を示す測温装置10の側面図である。ここでは、測温装置10が供試体100の被測温面100aの温度を測定する場合を例示する。供試体100は、鉛直方向に沿って立設する板状の部材である。被測温面100aは、鉛直方向に沿ったXY平面である。
測温装置10は、熱電対14の測温接点14cを含む先端板部14dの表面全体が被測温面100aに対して面接触するように配置される。つまり、測温時の測温装置10は、絶縁管12の延伸方向が被測温面100aに対しておおよそ垂直となる姿勢となる。
測温装置10全体、具体的には絶縁管12は、例えば2つの支持部材を用いて支持される。第1支持部材110は、絶縁管12を延伸方向に摺動可能とし、固定部材22から熱電対14設置側にある絶縁管12の外周領域の一部を支持する。第2支持部材112は、固定部材22に接する側とは反対側の弾性部材20の端部に接しつつ、絶縁管12を延伸方向に摺動可能として、絶縁管12の外周領域の一部を支持する。
例えば、第1支持部材110は、不図示の支持機構を介して試験台に固定されている。一方、第2支持部材112は、絶縁管12の延伸方向に沿って移動可能である。ここで、熱電対14の先端板部14dの表面が被測温面100aに接触している状態で、図3において白抜きの矢印で示すように、第2支持部材112が第1支持部材110側に移動したとする。このとき、第2支持部材112に接触している弾性部材20は、絶縁管12に固定されている固定部材22を被測温面100a側に押圧する。これにより、熱電対14の先端板部14dは、図3において黒塗りの矢印で示すように、絶縁管12の先端面12dから弾性部材20の復元力を受けて、先端面12dと被測温面100aとの間に挟持される。また、断熱シート18は、絶縁管12の先端面12dと熱電対14の先端板部14dとの間に挟持される。すなわち、熱電対14の特に先端板部14dは、被測温面100aに対する熱電対14の接触方向に、先端面12d上に断熱シート18を介して積層されている。
なお、熱電対素線16は、外部に設置されている不図示の計測器等に接続されている。また、測定値の導出方法は、熱電対を用いた一般的な導出方法を採用し得る。
次に、測温装置10による効果について説明する。
まず、本実施形態に係る測温装置10は、一対の熱電対素線16とそれらの接合部である測温接点14cとに亘って平板状の熱電対14と、弾性部材20を介して支持される絶縁管12とを備える。熱電対14は、露出した状態で、且つ、測温接点14cが絶縁管12の先端面12dに沿うように配置されている。また、熱電対14は、先端面12dから弾性部材20の復元力を受けて先端面12dと被測温面100aとの間に挟持される。
本実施形態に係る測温装置10によれば、熱電対14の測温接点14が絶縁管12の先端面12dに沿って露出した状態で配置されている。そのため、先端面12dと被測温面100aとの間に熱電対14が挟持されたときの測温接点14cと被測温面100aとの接触面積がより大きくなる。これにより、より優れた測定精度及び応答性で、被測温面100aの温度を測定することができる。
また、熱電対14が一対の熱電対素線16と測温接点14cとに亘って平板状であるので、測温接点14cの周囲に隙間が形成されづらく、密着性が向上する。これにより、周囲の空気による影響を受けにくく、より高精度で応答性のよい測温が可能になる。
また、本実施形態に係る測温装置10では、熱電対14は、先端面上に弾性を有する断熱シート18を介して積層されている。
本実施形態に係る測温装置10によれば、熱電対14が断熱シート18を介して積層されるので、被測温面100a側から絶縁管12側への熱伝達が抑えられる。これにより、測定値が絶縁管12側の温度の影響を受けることが抑えられるので、測定誤差を小さくすることができる。また、断熱シート18は、例えば、空冷時に測温接点14c近傍が冷却されるような場合でも、その影響を抑え、測定誤差を小さくすることができる。
また、断熱シート18が弾性を有するので、弾性部材20の復元力がより均等に分散して熱電対14の先端板部14dに伝達される。これにより、先端面12dと被測温面100aとの偏当たりが抑制され、測温接点14cと被測温面100aとの接触面積がさらに大きくなる。
(熱サイクル試験用の供試体保持具)
次に、一実施形態に係る熱サイクル試験用の供試体保持具について説明する。熱サイクル試験とは、供試体の材料及びコーティングの繰り返し熱負荷、いわゆる熱サイクルに対する耐久性を評価する試験をいう。本実施形態では、供試体の一部をバーナで加熱しつつ他の部分に冷却空気を吹き付けて冷却することで、供試体に厚さ方向の温度勾配を付与する工程を、所定回数、所定の頻度で繰り返す熱サイクル試験を想定する。
図4は、本実施形態に係る供試体保持具の保持対象である供試体120の形状を示す図である。図4(a)は、供試体120の表面120a側を見た正面図である。図4(b)は、供試体120の側面図である。
供試体120の形状は、表面120aと、表面120aに対しておおよそ平行な裏面120bとを有する円板状である。本実施形態では、供試体120の表面120aが被加熱面となる。また、供試体120は、互いに径の異なる2つの外周縁部、すなわち、第1外周縁部120cと、第2外周縁部120dとを有する。第1外周縁部120cは、表面120a側の外周縁部である。以下、第1外周縁部120cの径をD1とする。第2外周縁部120dは、裏面120b側の外周縁部である。以下、第2外周縁部120dの径をD2とする。第2外周縁部120dの径D2は、第1外周縁部120cの径D1よりも大きい。また、供試体120の厚さをT0、第1外周縁部120cの厚さをT1、及び、第2外周縁部120dの厚さをT2とそれぞれ規定する。なお、供試体120の厚さT0は、第1外周縁部120cの厚さT1と第2外周縁部120dの厚さT2とを加えたものである。以下、径がD2の部分を、フランジ部120eという。
供試体120を構成する材料としては、種々のものが適用可能である。一例として、供試体120を、ジェットエンジン等の高圧タービンを構成するホットセクション部品としてもよい。この場合、供試体120として適用される材料は、CMC材であってもよい。また、供試体120としてCMC材を採用する場合には、供試体120の表面120aにEBCやTBC等のコーティングが施されていてもよい。
図5は、本実施形態に係る供試体保持具30の前面側を示す斜視図である。図6は、供試体保持具30の後面側を示す斜視図である。図7は、供試体保持具30の構成を示す断面図である。本実施形態では、供試体120が、表面120a及び裏面120bがおおよそ水平方向を向くように供試体保持具30に保持される。以下、供試体保持具30において、供試体120を保持しているときに供試体120の表面120aが露出する側を「前面側」と規定する。ここで、表面120aは、例えばバーナで加熱される被加熱面であるので、前面側を「バーナ側」と表現することもできる。一方、供試体120を保持しているときに供試体120の裏面120bが露出する側を「後面側」と規定する。つまり、各図中、Z方向プラス側から見た方が、供試体保持具30の前面側である。一方、Z方向マイナス側から見た方が、供試体保持具30の後面側である。
供試体保持具30は、枠部材32と、熱電対固定ユニット34と、シールド36とを備える。
枠部材32は、供試体120を保持する部材である。枠部材32は、前面側に位置する第1壁部40と、第1壁部40に連続する側壁部46とを含む。枠部材32を構成する材料としては、例えば、熱伝導性に優れる銅や真鍮などを採用することが望ましい。
第1壁部40は、平面形状が一例として正方形の構造体である。第1壁部40は、前面側の側面42に、供試体120を嵌め込むための開口44(図8(b)参照)を有する。
図8は、開口44の内周縁部44aの形状及び構成を示す図である。図8(a)は、開口44に供試体120が嵌め込まれている状態で、鉛直方向に、且つ、供試体120の円盤形状の軸方向に切断した斜視断面図である。図8(b)は、開口44に供試体120が嵌め込まれていない状態で、開口44近傍の後面側を見た平面図である。
開口44は、水平方向に向いた円形状を有し、前面側と後面側との間で貫通する。開口44の内周縁部44aの径D3は、供試体120の第1外周縁部120cの径D1よりも大きく、第2外周縁部120dの径D2よりも小さい。また、開口44の内周縁部44aの厚さT3は、供試体120の第1外周縁部120cの厚さT1よりも小さい。そして、供試体120は、複数の球体38を介して、開口44の内周縁部44aに保持される。
供試体保持具30は、開口44の内周縁部44aと、開口44に嵌め込まれた供試体120の第1外周縁部120cとの間に介在し、内周縁部44aと第1外周縁部120cとを互いに離間した状態に保持する複数の球体38を有する。球体38は、例えば、耐熱ジルコニア製のセラミックボールである。以下、本実施形態では、4つの球体38a〜38dを用いる場合を例示する。
複数の球体38のうち、少なくとも開口44の中心より上方に位置する球体38は、開口44の径方向外側へ移動可能に、内周縁部44aに保持されている。本実施形態では、内周縁部44aにおいて最上部に設置されている第1球体38aが、これに相当する。
図9は、開口44の内周縁部44aの各位置における球体38の保持部の形状を示す斜視図である。図9(a)は、図8(b)に示すXAの部分拡大図に相当し、第1球体38aを保持する第1球体保持部44bの形状を示す図である。第1球体保持部44bは、開口44の径方向内側と、開口44の開口方向後面側との2つの側を開放とする溝である。第1球体保持部44bの周方向の幅W1は、第1球体38aが開口44の周方向へ若干のズレを許容可能とする程度に、球体38の径D5よりも大きい。また、第1球体保持部44bの径方向の幅W2は、第1球体38aが開口44の径方向外側へ移動可能となるように、後述する第2球体保持部44c等における径方向の幅W3に比べて長い。
一方、複数の球体38のうち、開口44の径方向外側へ移動可能に保持されている球体38以外で、且つ、開口44の中心より下方に位置する球体38は、開口44の径方向外側へ移動が不能となるように、内周縁部44aに保持されている。本実施形態では、内周縁部44aにおいて最下部に設置されている第2球体38b、並びに、それぞれ第2球体38bから周方向に一定距離離間している第3球体38c及び第4球体38dが、これらに相当する。
図9(b)は、図8(b)に示すXBの部分拡大図に相当し、一例として、第2球体38bを保持する第2球体保持部44cと、第3球体38cを保持する第3球体保持部44dとの形状を示す図である。なお、第4球体38dを保持する第4球体保持部44eの形状も第2球体保持部44c等の形状と同様であるので、以下、併せて説明する。第2球体保持部44c〜第4球体保持部44eが、それぞれ、開口44の径方向内側と、開口44の開口方向後面側との2つの側を開放とする溝である点は、第1球体保持部44bと同様である。また、第2球体保持部44c〜第4球体保持部44eの周方向の幅W1も、第1球体保持部44bにおける幅W1と同様である。しかし、第2球体38bは、内周縁部44aにおいて最下部に設置されているので、第1球体38aとは異なり、供試体120の自重を受ける。また、第3球体38c又は第4球体38dは、供試体120を保持する状態によっては、供試体120側から何らかの力を受ける可能性がある。したがって、第2球体保持部44c〜第4球体保持部44eの径方向の幅W3は、供試体120側から自重等を受けても、供試体120の第1外周縁部120cと開口44の内周縁部44aとが接触しないように、球体38の径D5よりも小さい。
さらに、第1球体保持部44b〜第4球体保持部44eの溝の深さH1、供試体120の第1外周縁部120cの厚さT1、及び、供試体120の第2外周縁部120dの径D2の具体的な大きさは、以下の条件を満足するように決定されることが望ましい。
第1に、開口44の径方向に関して、第2球体38b〜第4球体38dの少なくともいずれか1つが供試体120の第1外周縁部120cに接触している状態では、第1外周縁部120cは、開口44の内周縁部44aに接触しない。
第2に、開口44の開口方向に関して、すべての球体38は、それぞれの第1球体保持部44b〜第4球体保持部44eに保持されている状態では、供試体120のフランジ部120eの表面120a側の面120fに接触する。ただし、この状態では、フランジ部120eは、開口44が形成されている第1壁部40に接触しない。
第3に、供試体120が開口44に嵌め込まれている状態では、第1壁部40の前面側の側面42に対する供試体120の表面120aの高さは、側面42と同等、又は、側面42よりも若干突出する高さとなる。ここで、若干突出する高さとは、例えば、供試体120の表面120aにコーティングが施されている場合には、そのコーティングの厚さ程度の高さをいう。
また、第1壁部40の前面側では、図5に示すように、開口44が形成されている前面側の側面42を、平面形状が正方形の外周領域の側面42aよりも開口方向に突出するものとしてもよい。この場合、側面42の平面形状は、開口44と同一中心とする円形状としてもよい。また、側面42と、外周領域の側面42aとの境界は、側面42から外周領域の側面42aに向けて徐々に低くなる傾斜面42bとすることが望ましい。熱サイクル試験時には、供試体120の表面120aのおおよそ中心位置がバーナで加熱される。そこで、第1壁部40は、このような傾斜面42bを有するものとすれば、バーナの炎による熱の流れを均一化させて、加熱領域の偏りを抑えることができる。
また、第1壁部40の後面側では、図8(b)に示すように、第1壁部40の厚みが、開口44が形成されている中心部よりも、さらに外側の部分の方が厚くなるようにしてもよい。この場合、開口44が形成されている中心部の平面44fの平面形状は、開口44と同一中心とする円形状としてもよい。また、平面44fと、外側領域の平面44gとの境界は、平面44fから外側領域の平面44gに向けて徐々に高くなる傾斜面44hとすることが望ましい。熱サイクル試験時には、供試体120の裏面120bのおおよそ中心位置に冷却空気が吹き付けられる。そこで、第1壁部40は、このような傾斜面44hを有するものとすれば、冷却空気の流れを均一化させて、冷却領域の偏りを抑えることができる。
一方、枠部材32の側壁部46は、第1壁部40に連接する筒状の壁部である。本実施形態では、側壁部46の形状は、平面形状が正方形である第1壁部40の各端辺に合わせて、開口方向の断面がおおよそ正方形の環状となる。側壁部46は、第2壁部46a、第3壁部46b、第4壁部46c及び第5壁部46dを含む。第2壁部46a〜第5壁部46dの各壁部は、それぞれ、隣り合う壁部と垂直に連接する。また、第2壁部46a〜第5壁部46dの前面側の各端辺は、それぞれ、第1壁部40に連接する。一方、第2壁部46a〜第5壁部46dの後面側の各端辺は、露出された状態となる。これにより、枠部材32は、後面側に、開口48を有する形状となる。開口48は、前面側にある開口44に連通する。すなわち、枠部材32の内部には、開口44と開口48との間に内部空間S1が形成される。
ここで、枠部材32は、例えば、後述するような冷却流路の設置や、シールド36の支持を容易とするために、複数の構造体を組み合わせることで構成されることが望ましい。一例として、本実施形態では、枠部材32は、前面側にある第1構造体32aと、後面側にある第2構造体32bと、第1構造体32aと第2構造体32bとの間に設置される第3構造体32cとを組み合わせることで構成される。この場合、第1構造体32a、第2構造体32b及び第3構造体32cは、図6又は図7に示すように、第2壁部46a〜第5壁部46dの各壁部における後面側の端43bから前面側に向けて挿入される4つのボルト50を用いた締結により互いに固定される。第1構造体32aは、第1壁部40と、第1壁部40に連接する側壁部46の一部とを含む。第2構造体32b及び第3構造体32cは、それぞれ、開口方向の断面がおおよそ正方形の環状となる形状を有する。
また、枠部材32は、供試体120の主に加熱時の耐久性を向上させるために、第1壁部40又は側壁部46に、冷却水を還流させる冷却流路を有する。本実施形態では、第1壁部40は、供試体120を保持する開口44を含むので、供試体120の加熱時には、高温になりやすい。そこで、第1構造体32aは、第1壁部40の外周領域に沿って冷却水を環流させる水冷流路45を有する。水冷流路45は、第1構造体32aにおける第3構造体32cと接する端面に形成される溝部である。第1構造体32aと第3構造体32cとの組み合わせ時には、水冷流路45と第3構造体32cとの間に溝蓋52を介すことにより、冷却水の漏れが抑止される。一方、第2構造体32b及び第3構造体32cは、それぞれの内部を貫通するとともに、一端が水冷流路45の一部に連通する貫通流路47を有する。貫通流路47は、水冷流路45に冷却水を導入する導入用流路と、水冷流路45を環流した冷却水を回収する回収用流路とを含む。なお、図7では、貫通流路47のうち、導入用流路47aを例示している。
また、枠部材32の後面側の端43bには、図6に示すように、一端が貫通流路47の導入用流路47aに連接する導入用の水冷配管54aと、一端が貫通流路47の回収用流路に連接する回収用の水冷配管54bとが、溶接等により接続されている。なお、水冷配管54a及び水冷配管54bの他端は、外部に設置されている冷却水循環装置に接続されている。なお、図7では、導入用流路47aに連接する導入用の水冷配管54aを例示している。
なお、上記説明では、枠部材32の開口方向の平面形状を正方形としたが、円形であってもよい。この場合、第1壁部40の平面形状が円形となるとともに、側壁部46の形状は、第1壁部40の平面形状に合わせた円筒形となる。
熱電対固定ユニット34は、上記実施形態に係る測温装置10を用いて、枠部材32の開口44に保持されている供試体120の裏面120bの測温を行う。熱電対固定ユニット34は、測温装置10と、空気供給管60と、管保持部62と、空冷配管64と、ユニット取付部材66と、調整ねじ68と、調整ねじ支持部材70とを備える。以下、上記説明した測温装置10の各構成要素と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
熱電対固定ユニット34は、熱電対14の測温接点14cを含む先端板部14dの表面全体が供試体120の被測温面である裏面120bに対して面接触するように、測温装置10を固定する。つまり、測温時の測温装置10は、絶縁管12の延伸方向が裏面120bに対しておおよそ垂直となる姿勢となる。
空気供給管60は、測温装置10を保持するとともに、供試体120の裏面120bに冷却空気を吹き付ける。空気供給管60は、第1管部72を内管とし、第2管部74を外管とする二重管構造を有する。第1管部72は、測温装置10に含まれる絶縁管12の一部を挿通して、測温装置10を保持する。第2管部74は、第1管部72の外径よりも大きい内径を有する。管保持部62は、第1管部72の外壁面72aと第2管部74の内壁面74aとが非接触で、且つ、第1管部72と第2管部74とがおおよそ同軸となるように、第1管部72と第2管部74との後面側の各端部を密に保持する。一方、第1管部72と第2管部74との前面側の各端部は、それぞれ、他の部材と連通することなく、供試体120の裏面120bに対向する。したがって、第1管部72と第2管部74との間に形成されている空間は、供試体120の裏面120bに近接して対向する位置で開放されている。空冷配管64は、一方の端部が第1管部72と第2管部74との間に形成されている空間に連通し、他方の端部が外部に設置されている空気供給装置に接続されている。
上記の構成により、空気供給管60では、第1管部72と第2管部74との間に形成されている空間が、空冷配管64から導入された冷却空気が流通する空冷流路76となる。そして、第1管部72の先端部と第2管部74の先端部との間に画成された前面側の開口が、空冷流路76を流通してきた冷却空気を供試体120の裏面120bに吹き付ける吹き出し口78となる。なお、図7では、冷却空気の流れを矢印で示している。
また、空気供給管60の第1管部72が絶縁管12の一部を挿通し、測温装置10を保持するとき、測温装置10の先端、すなわち、熱電対14の先端板部14dを含む部分が吹き出し口78から突出させた状態とする。
図10は、熱電対固定ユニット34を後面側から見た斜視図である。ユニット取付部材66は、熱電対固定ユニット34を枠部材32に固定するための部材である。例えば、ユニット取付部材66は、水平方向で、且つ、空気供給管60の延伸方向とは垂直となる方向に伸びる長板状の金属部材である。この場合、ユニット取付部材66は、長手方向の中央部分に、絶縁管12を貫通させる孔66aを含み、管保持部62を複数のボルト80を用いて固定するフランジ面66bを有する。また、ユニット取付部材66は、長手方向の両端部に、それぞれ、ユニット取付部材66を枠部材32の後面側の端43bに固定するための貫通孔66cを有する。図6に示すように、貫通孔66cにボルト82を通過させてユニット取付部材66を端43bに締結させることで、熱電対固定ユニット34を枠部材32に固定させることができる。
調整ねじ68は、測温装置10に含まれる弾性部材20に加える力を調整可能とする。調整ねじ68は、軸方向に絶縁管12を摺動可能に貫通させる孔68aと、弾性部材20と接触する雄ねじ部68bと、雄ねじ部68bに連接して雄ねじ部68bを軸周りに回転可能とするハンドル部68cとを有する。
調整ねじ支持部材70は、調整ねじ68を支持する部材である。例えば、調整ねじ支持部材70は、ユニット取付部材66に対して平行となる長板状の金属部材である。この場合、調整ねじ支持部材70は、長手方向の中央部分に、調整ねじ68の雄ねじ部68bに係合する雌ねじ部70aを含むフランジ面70bを有する。また、調整ねじ支持部材70の長手方向の両端部は、それぞれ、支柱84及びボルト86を介してユニット取付部材66に対して固定されている。つまり、ユニット取付部材66と調整ねじ支持部材70との間の距離は、不変である。
調整ねじ68及び調整ねじ支持部材70の構成によれば、絶縁管12は、枠部材32に対して、第1管部72を介してだけでなく、弾性部材20を介して支持されている。ここで、図3を用いて説明した測温装置10では、絶縁管12を支持する部材として、第1支持部材110及び第2支持部材112を例示した。この例示に対して熱電対固定ユニット34の構成を当てはめると、ユニット取付部材66が第1支持部材110に相当する。一方、調整ねじ68が第2支持部材112に相当する。
ここで、枠部材32の内部に形成されている内部空間S1は、熱電対固定ユニット34の一部、例えば空気供給管60の部分を内包するに十分な広さが確保されていることが望ましい。特に空気供給管60には、図7に示すように、空冷配管64が接続されている。そこで、内部空間S1に連なる開口48は、熱電対固定ユニット34を枠部材32に取り付けたときに空冷配管64が枠部材32に干渉しない程度に大きく開放されていることが望ましい。
また、内部空間S1では、空気供給管60の吹き出し口78から供試体120の裏面120bに冷却空気が吹き付けられるので、吹き付けられた後の冷却空気は、内部空間S1内に分散する。そこで、内部空間S1の広さ、又は、開口48の大きさは、吹き付けられた後の冷却空気が開口48から効率よく外部に排出されるように決定されることが望ましい。また、熱電対固定ユニット34は、吹き出し口78から供試体120の裏面120bの中央部に冷却空気が吹き付けるので、供試体120を中心部から放射状に均一に冷却することができる。そこで、内部空間S1の形状は、熱電対固定ユニット34の周囲から均一に開口48側に向かうような、熱電対固定ユニット34を基準とした対称形とすることが望ましい。ここで、熱電対固定ユニット34を枠部材32に固定するユニット取付部材66は、その形状が長板状であるので、開口48からの冷却空気の排出を妨げることが抑えられている。
シールド36は、供試体120の表面120aを、バーナ等を用いて加熱する際に、後方にある各部材に熱が到達することを回避するための保護部材である。シールド36は、金属製の複数の板体を溶接等により組み合わせて製作されてもよいし、金属製の1枚の板体を折り曲げ加工することで製作されてもよい。本実施形態では、シールド36の水平方向に向かう平面形状は、第1壁部40の平面形状に合わせて正方形である。シールド36は、枠部材32の側壁部46の周囲を取り囲むように、側壁部46に支持される。
ここで、枠部材32は、上記のとおり、第1構造体32a〜第3構造体32cの3つの構造体で構成される。そこで、図7に示すように、例えば、第3構造体32cは、第2構造体32bと接続される側の端面43cの周端部に、シールド36を取り付けるための溝部49を有してもよい。この場合、シールド36は、水平方向に向かう平面上の中央領域に、溝部49に係合可能な大きさの貫通孔36aを有する。このような構成によれば、シールド36の貫通孔36aの端部が、溝部49と第2構造体32bの端面43dとの間に挟まれるので、例えば、シールド36取り付け用のボルト等を用いることなく、シールド36を簡易的に枠部材32に支持させることができる。
なお、後方にある各部材への熱の到達をより抑えるために、シールド36は、その外周部に、バーナからの熱をより効率よく枠部材32の外周側へ分散させる、前面側から後面側へ傾斜した傾斜面36bを有してもよい。
また、供試体保持具30は、試験位置に供試体保持具30を固定するための取付アーム88を有してもよい。取付アーム88は、例えば、第1アーム部88a、第2アーム部88b及び第3アーム部88cを含む。第1アーム部88a及び第3アーム部88cは、それぞれ鉛直方向に沿って延伸する板体である。一方、第2アーム部88bは、水平方向に沿って延伸する板体である。第1アーム部88aの一端は、枠部材32の端面43dに対してボルト90を用いて固定される。第1アーム部88aの他端は、第2アーム部88bの一端に連接される。第2アーム部88bの他端は、第3アーム部88cの一端に連接される。なお、第3アーム部88cの他端は、試験位置にある不図示の固定部材に固定される。
ここで、第1アーム部88aは、枠部材32に固定されている状態で、前面側から供試体保持具30を見てシールド36に隠れる大きさであることが望ましい。この場合、前面側から供試体保持具30を見てシールド36から露出する部分に相当する第3アーム部88cが、第2アーム部88bの長さ分、枠部材32から水平方向に離れることになる。したがって、取付アーム88がバーナからの熱で温められる影響を抑えることができる。
次に、枠部材32に形成されている開口44への供試体120の取り付け方について説明する。まず、作業者は、枠部材32に熱電対固定ユニット34を取り付けていない状態で、開口44の後面側が鉛直方向上側に若干向くように傾ける。次に、作業者は、第2球体保持部44c〜第4球体保持部44eの3つの球体保持部に、それぞれ、第2球体38b〜第4球体38dを設置する。次に、作業者は、供試体120の第1外周縁部120cに第2球体38b〜第4球体38dが接するように、供試体120を開口44に嵌め込む。次に、作業者は、第1球体保持部44bに、第1球体38aを挿入する。次に、作業者は、供試体120の姿勢を維持しながら、枠部材32に熱電対固定ユニット34を取り付ける。このとき、作業者は、熱電対固定ユニット34の先端から突出する熱電対14の先端板部14dを、供試体120の裏面120bに面接触させる。次に、作業者は、熱電対固定ユニット34を枠部材32に取り付けた後、適宜、ハンドル部68cを回すことで、測温装置10に対して軸方向に加える力を調整し、熱電対14の先端板部14dを供試体120の裏面120bに押し付ける。最後に、作業者は、供試体保持具30を試験に適した姿勢に戻す。したがって、供試体保持具30では、供試体120は、開口44の内周縁部44aによって前面側及び外周側が支持され、測温装置10によって後面側が支持されることで、開口44に保持されることになる。
次に、供試体保持具30による効果について説明する。
まず、本実施形態に係る熱サイクル試験用の供試体保持具30は、バーナ側の側面に板状の供試体120を嵌め込むための開口44が形成された枠部材32を備える。供試体保持具30は、開口44に嵌め込まれた供試体120のバーナ側と反対側の面に冷却空気を吹き付けるための吹き出し口78を備えた空気供給管60を備える。また、供試体保持具30は、絶縁管12が、枠部材32に弾性部材20を介して支持され、且つ、吹き出し口78から先端を突出させた状態で空気供給管60に挿通されている、上記の実施形態に係る測温装置10を備える。ここで、供試体120が開口44に嵌め込まれた状態において、熱電対14が、先端面12dと供試体120との間に挟持される。また、供試体120が、開口44の内周縁部44aと測温装置10とによって保持される。
本実施形態に係る供試体保持具30によれば、開口44の内周縁部44aと測温装置10とで供試体120を開口44に嵌め込まれた状態に保持するため、供試体120の外周側面に固定ピン挿入穴等を形成する必要がない。これにより、供試体120の厚さが十分でないために、その外周側面に穴加工を施すことができない場合であっても、供試体120を枠部材32に安定して保持しつつその温度を測定することができる。また、供試体120を支持するための支持部材を供試体120に接合して形成する必要もないため、供試体120が、例えばCMC材のように支持部材を直接接合できない材料からなる場合であっても、これを安定して保持しつつその温度を測定することができる。
また、絶縁管12は、その先端面12dが吹き出し口78から突出した状態で空気供給管60に挿通されているので、供試体120のバーナ側と反対側の被測温面のうち熱電対14が接触している部分の周囲近傍を効率的に冷却することができる。なお、供試体120の被測温面とは、例えば裏面120bである。
さらに、絶縁管12は、その先端面12dが吹き出し口78から突出した状態で空気供給管60に挿通されている。そのため、熱電対14が供試体120に押し付けられた状態において、空気供給管60の吹き出し口78の先端縁と供試体120の被測温面との間には、周方向に連続する隙間Gが形成される。従って、吹き出し口78から被測温面に吹き付けられた冷却空気は、この隙間Gから、熱電対14を中心として放射状に広がるようにして流れる。これにより、被測温面を効率よく冷却することができる。
また、本実施形態に係る供試体保持具30は、開口44の内周縁部44aと、開口44に嵌め込まれた供試体120の外周縁部であるとの間に介在し、内周縁部44aと外周縁部とを互いに離間した状態に保持する複数の球体38を備える。なお、供試体120の外周縁部とは、例えば第1外周縁部120cである。
本実施形態に係る供試体保持具30によれば、供試体120と枠部材32との間の直接の接触を防止し、且つ、供試体120との接触面積を減少させて、供試体120からの熱の逃げを抑制することができる。
また、本実施形態に係る供試体保持具30は、開口44は、水平方向に向いた円形状の開口である。また、複数の球体38のうち少なくとも開口44の中心より上方に位置する球体は、開口44の径方向外側へ移動可能に内周縁部に保持されている。なお、開口44の中心より上方に位置する球体とは、例えば第1球体38aである。
本実施形態に係る供試体保持具30によれば、供試体120が熱膨張した場合でも、開口44の中心より上方に位置する球体38が径方向外側に移動して、供試体120の熱膨張を吸収することができる。したがって、過度な熱応力が供試体120に負荷されることを抑止することができる。
また、本実施形態に係る供試体保持具30では、空気供給管60は、内管と外管とからなる二重管構造を有する。吹き出し口78は、内管の先端部と外管の先端部との間に画成されている。また、絶縁管12は、内管に挿通されている。なお、空気供給管60の内管とは、例えば第1管部72である。一方、空気供給管60の外管とは、例えば第2管部74である。
本実施形態に係る供試体保持具30によれば、供試体120の被測温面を、熱電対14が接触している部分を中心として周方向に均一に冷却することができる。また、絶縁管12の軸方向の移動を内管でガイドすることができるため、内管がない場合と比較して、供試体120の被測温面上における熱電対14の位置を安定させることができる。すなわち、温度の計測位置の再現性が向上する。
(熱サイクル試験装置)
次に、一実施形態に係る熱サイクル試験装置について説明する。本実施形態に係る熱サイクル試験装置は、上記実施形態に係る熱サイクル試験用の供試体保持具30を用いて、所望の供試体に対して熱サイクル試験を行う装置の一例である。
図11は、本実施形態に係る熱サイクル試験装置200の構成を示す図である。なお、上記各実施形態において説明した各構成要素と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。熱サイクル試験装置200は、試験ユニット202と、制御ユニット204とを含む。
試験ユニット202は、供試体120の熱サイクル試験を行うユニットである。試験ユニット202は、試験実施部206と、制御機器収納部208とを備える。試験実施部206及び制御機器収納部208は、架台210に設置される。熱サイクル試験中の状況確認や、供試体120の取り付け又は取り外しなどの作業を容易とするために、試験実施部206は、架台210の上部に設置されることが望ましい。この場合、制御機器収納部208は、架台210の下部に設置される。
試験実施部206は、熱サイクル試験が実施される領域である。試験実施部206は、供試体保持具30と、バーナ214と、放射温度計216とを備える。供試体保持具30は、上記実施形態において例示した供試体保持具である。供試体保持具30は、固定バイス218を介して、架台210に連結されている試験台212に設置される。バーナ214は、供試体120を加熱する加熱装置である。バーナ214は、供試体保持具30に保持されている供試体120の表面120aに向けて炎を吹き出す。そのため、バーナ214は、炎の吹き出し面が供試体120の表面120aに対向する位置に、支持脚220を介して試験台212に設置される。放射温度計216は、例えば、架台210の上部に設置され、供試体120の表面120aの温度を非接触で測定する。
また、バーナ214は、供試体保持具30に保持されている供試体120の表面120aに向けて冷却空気を吹き付ける冷却機構を有してもよい。この場合、空冷機構は、供試体保持具30側からの空冷機構と、バーナ214側からの空冷機構との2系統となる。これにより、降温時の冷却速度を調整しやすくなる。また、このように2系統の空冷機構を設けることにより、高速冷却が可能となる。
なお、固定バイス218や支持脚220は、試験台212上で移動可能としてもよい。これにより、供試体120、供試体保持具30若しくはバーナ214の大きさや種類、又は、その他の試験条件により、適宜、供試体保持具30又はバーナ214の位置を変更することができる。また、試験実施部206の側面の少なくとも一部は、供試体120の取り付け又は取り外しや、試験実施部206内に設置されている供試体保持具30等の各種ユニットの位置の調整などを行うために、開閉可能である。
制御機器収納部208は、各種制御機器や配管系を収納する領域である。制御機器収納部208は、燃焼ガス系統に含まれるマスフローコントローラ222と、冷却水及び冷却空気系統に含まれるバルブユニット224と、データ記憶装置226とを備える。
マスフローコントローラ222は、バーナ214に供給する燃焼ガスの流量等を調整する。マスフローコントローラ222の導入側は、外部に設置されている燃焼ガス供給部300に、第1燃焼ガス配管230を介して接続されている。マスフローコントローラ222の排出側は、バーナ214に、第2燃焼ガス配管232を介して接続されている。
バルブユニット224は、調整バルブや電磁弁を含み、供試体保持具30に供給する冷却水若しくは冷却空気、又は、バーナ214に供給する冷却水の流量を調整したり、流れのON/OFF切り替えたりする。バルブユニット224の導入側は、外部に設置されている冷却水/冷却空気供給部302に、第1冷却水配管234及び第1冷却空気配管236を介して接続されている。バルブユニット224の一方の排出側は、供試体保持具30に、水冷配管54及び空冷配管64を介して接続されている。バルブユニット224の他方の排出側は、バーナ214に、水冷配管242を介して接続されている。ただし、第1冷却水配管234、水冷配管54及び水冷配管242は、図11中ではそれぞれ1つの管で表示されているが、実際には冷却水の供給と回収とを繰り返す循環系である。
データ記憶装置226は、熱サイクル試験中に測定された供試体120の温度データを取得し、記憶する。データ記憶装置226は、第1に、放射温度計216に電気的に接続され、供試体120の表面120aの温度データを取得し、記憶する。また、データ記憶装置226は、第2に、供試体保持具30内に設置されている測温装置10に含まれる熱電対素線16に電気的に接続され、供試体120の裏面120bの温度データを取得し、記憶する。
制御ユニット204は、試験ユニット202に含まれる各種構成要素の動作等を制御するユニットである。制御ユニット204は、制御部252と、シーケンサ254と、操作パネル256とを含む。制御部252、シーケンサ254及び操作パネル256は、制御架台250に設置される。
制御部252は、データ記憶装置226から温度データを取得し、データ処理や外部への出力等を実行する。シーケンサ254は、予め操作パネル256から入力された試験条件等に基づいて、マスフローコントローラ222やバルブユニット224を作動させる。特に、シーケンサ254によれば、例えば、点火・失火・冷却の1サイクルの試験パターンや、繰り返しサイクル数を一括制御することができるため、再現性のある連続運転が可能となる。操作パネル256は、オペレータが試験条件等を入力する、例えば液晶式のタッチパネルである。
このように、本実施形態に係る熱サイクル試験装置200は、供試体120を保持する供試体保持具30と、供試体120を加熱するバーナ214とを備える。また、熱サイクル試験装置200は、供試体120の温度データを熱電対14から取得する制御部252を備える。
本実施形態によれば、上記説明した測温装置10又は供試体保持具30を備えるので、それらによる効果を奏する熱サイクル試験装置200を提供することができる。
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。