以下、本発明の実施の形態に係る液圧回転機を、可変容量型の斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、液圧回転機としての可変容量型の斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、外殻を構成するケーシング2を有している。ケーシング2は、一端側がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。
ケーシング2のケーシング本体3には、フロント底部3Aから軸方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられている。アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出している。そして、アクチュエータ取付部3B内には、後述の傾転アクチュエータ19等が設けられている。
また、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bには、後述するレギュレータ22との間に開口部3Cが形成され、この開口部3C内には、後述するフィードバックリンク26が、枢軸ピン27を介して回動可能に取付けられている。
ケーシング2のリヤケーシング4には給排通路4A,4Bが形成されている。これらの給排通路4A,4Bは、後述の各シリンダ9に対して作動油(圧油)を給排させるものである。
回転軸5は、ケーシング2内に回転可能に設けられている。回転軸5の軸方向の一側は、ケーシング本体3のフロント底部3Aに軸受6を介して回転可能に支持され、回転軸5の軸方向の一端5Aは、ケーシング本体3のフロント底部3Aから外部に突出している。回転軸5の軸方向の他端5Bは、リヤケーシング4に軸受7を介して回転可能に支持されている。これにより、回転軸5はケーシング2に対し、回転中心軸線O−Oを中心として回転する。回転軸5の一端5Aには、例えば油圧ショベルの原動機が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、この原動機により回転軸5が回転駆動される。
ここで、回転軸5の軸方向の中間部には雄スプライン部5Cが設けられ、この雄スプライン部5Cは、後述するシリンダブロック8の雌スプライン部8Dにスプライン結合されている。回転軸5のうち軸方向の他端5Bと雄スプライン部5Cとの間は、他端5Bよりも大径で雄スプライン部5Cの歯先円径よりも小径な円柱状の中間軸部5Dとなり、中間軸部5Dの外周側には、後述する姿勢保持用筒部材28が挿嵌されている。
シリンダブロック8は、回転軸5の外周側に位置してケーシング2内に回転可能に設けられている。シリンダブロック8には、後述する複数のシリンダ9が穿設されている。シリンダブロック8の軸方向の一側(フロント底部3A側)には、後述の斜板13側に向けて軸方向に突出する筒状突部8Aが一体形成されている。この筒状突部8Aの外周側には、後述する球状ガイド15が軸方向に相対変位可能に挿嵌されている。シリンダブロック8の軸方向の他側(リヤケーシング4側)は、平坦面状の摺動面8Bとなり、この摺動面8Bは後述する弁板17に摺動可能に当接している。
挿通孔8Cは、シリンダブロック8の中心部を軸方向に貫通して設けられ、回転軸5が挿通されている。挿通孔8Cは、筒状突部8A側に対して摺動面8B側が大径な段付孔として形成されている。ここで、挿通孔8Cのうち筒状突部8A側の内周面には、雌スプライン部8Dが形成され、この雌スプライン部8Dは、回転軸5の雄スプライン部5Cにスプライン結合されている。これにより、シリンダブロック8は、回転軸5と一体に回転する構成となっている。
挿通孔8Cのうち摺動面8B側の内周面は、雌スプライン部8Dの歯底円径よりも大きな孔径を有する大径孔部8Eとなっている。この大径孔部8Eは、雌スプライン部8Dを形成するときの切削工具の逃げ部となるもので、雌スプライン部8Dと大径孔部8Eとの境界部は段部8Fとなっている。大径孔部8Eには、回転軸5の中間軸部5Dが隙間をもって挿通され、大径孔部8Eの内周面と回転軸5の中間軸部5Dの外周面との間の円筒状の空間内には、後述する姿勢保持用筒部材28が挿嵌されている。さらに、大径孔部8Eの軸方向の他側(摺動面8B側)には、大径な環状溝8Gが全周に亘って形成され、この環状溝8Gには後述する止め輪29が装着されている。
複数のシリンダ9は、シリンダブロック8に形成されている。各シリンダ9は、回転軸5を中心にしてシリンダブロック8の周方向に一定の間隔をもって離間し、シリンダブロック8の軸方向に延びている。これら各シリンダ9のうち弁板17と対向する一端側は、シリンダブロック8の軸方向一側(筒状突部8A側)の端面に開口している。一方、各シリンダ9の他端側には、シリンダポート9Aがそれぞれ形成され、これらのシリンダポート9Aは、弁板17の給排ポート17A,17Bを介してリヤケーシング4の給排通路4A,4Bに対して間欠的に連通,遮断されるものである。
複数のピストン10は、シリンダブロック8の各シリンダ9内に摺動可能に挿嵌されている。これら各ピストン10は、シリンダブロック8の回転によってそれぞれのシリンダ9内を往復動し、各シリンダ9内に吸込んだ作動油を加圧した後に高圧の圧油として吐出させるものである。各ピストン10は、シリンダ9から大きく突出(伸長)した下死点と、シリンダ9内へと縮小した上死点との間で往復動する。そして、各ピストン10は、シリンダブロック8が1回転する間に、シリンダ9内を上死点から下死点へと摺動変位してシリンダ9内に作動油を吸込む吸入行程と、下死点から上死点へと摺動変位してシリンダ9内の作動油を高圧の圧油として吐出する吐出行程とを繰返す。
複数のシュー11は、シリンダ9から突出した各ピストン10の突出端部に揺動可能に設けられている。各シュー11は、ピストン10からの押付力(油圧力)で斜板13の平滑面13Aに押付けられ、この状態で回転軸5、シリンダブロック8及びピストン10と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面13A上を摺動するものである。
クレイドル12は、ケーシング本体3のフロント底部3Aに設けられ、斜板13を支持している。クレイドル12は、回転軸5の周囲に位置して斜板13の裏面側に配置され、ケーシング本体3のフロント底部3Aに固定されている。クレイドル12には、斜板13を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面12Aが凹湾曲面として形成され、各傾転摺動面12Aは、回転軸5を挟んで対向配置されている。
斜板13は、ケーシング2内に傾転可能に設けられている。斜板13は、ケーシング本体3のフロント底部3A側にクレイドル12を介して取付けられ、斜板13の表面側(シリンダブロック8側)は、各シュー11を摺動可能に案内する平滑面13Aとなっている。斜板13の中央部には、回転軸5が挿通される軸挿通孔13Bが穿設されている。ここで、斜板13は、油圧ポンプ1の容量可変部を構成し、斜板13の背面側(フロント底部3A側)は、クレイドル12の各傾転摺動面12Aに傾転可能に当接している。そして、斜板13は、後述の傾転アクチュエータ19により図2中の矢示A,B方向に傾転駆動される。
リテーナ14は、シリンダブロック8と斜板13の平滑面13Aとの間に設けられ、各シュー11を、斜板13の平滑面13A上で摺動可能に保持している。リテーナ14は環状の板体として形成され、リテーナ14の内周側には、後述の球状ガイド15が摺動可能に嵌合している。リテーナ14には、周方向に間隔をもって複数のシュー保持孔14Aが形成され、各シュー保持孔14A内には、それぞれシュー11が保持されている。リテーナ14は、後述するスプリング16のばね力により、球状ガイド15を介して斜板13の平滑面13Aに向けて付勢される。これにより、リテーナ14は、シュー保持孔14A内に保持されたシュー11を平滑面13Aに押付け、各シュー11を平滑面13A上でリング状軌跡を描くように案内する。
球状ガイド15は、シリンダブロック8の筒状突部8Aとリテーナ14の内周との間に設けられている。球状ガイド15の内周側は、筒状突部8Aの外周側に摺動可能に挿嵌され、球状ガイド15の球面状の外周面には、リテーナ14の内周側が揺動(摺動)可能に嵌合している。ここで、球状ガイド15は、その内周側が回転軸5の雄スプライン部5Cにスプライン結合され、回転軸5と一体に回転するものである。
スプリング16は、シリンダブロック8の筒状突部8Aと球状ガイド15との間に設けられている。スプリング16は、例えば複数枚の皿ばねを重合わせることにより構成され、回転軸5の外周側に挿通された状態でシリンダブロック8と球状ガイド15とを互いに逆向きに付勢している。これにより、シリンダブロック8の摺動面8Bが弁板17に押圧されると共に、各シュー11が、球状ガイド15及びリテーナ14を介して斜板13の平滑面13Aに押圧される構成となっている。
弁板17は、リヤケーシング4に固定して設けられている。弁板17は、シリンダブロック8の摺動面8Bに摺接する切換弁板を構成している。弁板17には、回転軸5の周囲を眉形状をなして延びる一対の給排ポート17A,17Bが形成され、各給排ポート17A,17Bのうち一方のポートは高圧側の吐出ポートを構成し、他方のポートは低圧側の吸込ポートを構成している。これら給排ポート17A,17Bは、シリンダブロック8の回転によって各シリンダ9のシリンダポート9Aと間欠的に連通し、各シリンダ9と各ピストン10との間に位置してシリンダブロック8内に画成された油室を、リヤケーシング4の給排通路4A,4Bを介して外部と連通させるものである。
傾転レバー18は、斜板13の側部に一体に設けられている。傾転レバー18は、斜板13の側部から後述のサーボピストン21に向けて延設されている。傾転レバー18の先端側には突出ピン18Aが設けられ、この突出ピン18Aは、後述するサーボピストン21の係合溝21Aに係合している。
傾転アクチュエータ19は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられている。傾転アクチュエータ19は、アクチュエータ取付部3Bに形成された傾転制御シリンダ20と、この傾転制御シリンダ20内に摺動可能に挿嵌され、傾転制御シリンダ20内に液圧室(図示せず)を画成するサーボピストン21とにより構成されている。
サーボピストン21には、係合溝21Aと凹溝21Bとが設けられ、係合溝21Aには傾転レバー18の突出ピン18Aが係合し、凹溝21Bには後述のフィードバックリンク26が係合している。サーボピストン21は、液圧室内に傾転制御圧が給排されることにより、傾転制御シリンダ20内を軸方向に摺動変位する。このサーボピストン21の変位が傾転レバー18を介して斜板13に伝達されることにより、斜板13は、サーボピストン21に追従して矢示A,B方向に傾転駆動される。
レギュレータ22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けられ、傾転アクチュエータ19に傾転制御圧を給排するものである。レギュレータ22は、アクチュエータ取付部3Bの側部に着脱可能に設けられた弁ケース23と、弁ケース23に形成されたスリーブ摺動穴(図示せず)に摺動可能に挿嵌された制御スリーブ24と、制御スリーブ24内に摺動可能に挿嵌されたスプール25とを有している。制御スリーブ24は、後述するフィードバックリンク26を介してサーボピストン21に連結されている。
フィードバックリンク26は、レギュレータ22の制御スリーブ24とサーボピストン21との間に設けられている。図1に示すように、フィードバックリンク26は、アクチュエータ取付部3Bの開口部3C内に枢軸ピン27を介して回動可能に取付けられ、フィードバックリンク26の一端はサーボピストン21の凹溝21Bに係合し、フィードバックリンク26の他端は制御スリーブ24に係合している。フィードバックリンク26は、サーボピストン21の動きをレギュレータ22の制御スリーブ24に伝え、制御スリーブ24をスプール25に対して摺動変位させる。これにより、斜板13の傾転動作に応じてレギュレータ22がフィードバック制御され、傾転アクチュエータ19に対する傾転制御圧の給排が制御されるようになっている。
ここで、油圧ポンプ1を構成する回転軸5の雄スプライン部5Cと、シリンダブロック8の雌スプライン部8Dとの間には、両者をスプライン結合させるために僅かな隙間が形成されている。このため、シリンダブロック8は、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対して僅かに傾いた状態で回転する。これに対し、第1の実施の形態では、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを矯正し、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させる姿勢保持用筒部材28を備えており、以下、姿勢保持用筒部材28について説明する。
姿勢保持部材としての姿勢保持用筒部材28は、回転軸5の中間軸部5Dの外周面と、シリンダブロック8の挿通孔8Cのうち給排ポート17A,17Bを有する弁板17側に位置する大径孔部8Eの内周面との間に設けられている。姿勢保持用筒部材28は、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に挿嵌されることにより、回転軸5の回転中心軸線O−Oとシリンダブロック8の回転中心軸線とが一致するように、シリンダブロック8の姿勢を保持(矯正)するものである。
図2ないし図4に示すように、姿勢保持用筒部材28は、回転軸5の中間軸部5Dの外周面に当接する内周面28Aと、シリンダブロック8の挿通孔8Cを構成する大径孔部8Eの内周面に当接する外周面28Bとを有し、例えば金属材料を用いて形成された円筒体からなっている。姿勢保持用筒部材28の外周面28Bは、シリンダブロック8の大径孔部8Eに取付けられた状態で、給排ポート17A,17Bを有する弁板17側に位置し一様な外径寸法を有する円筒面28Cと、弁板17の給排ポート17A,17Bから離れるに従って外径寸法が徐々に小さくなるように傾斜したテーパー面28Dとを有している。
姿勢保持用筒部材28は、内周面28Aが回転軸5の中間軸部5Dの外周面に挿嵌されると共に、外周面28Bがシリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に挿嵌される。そして、姿勢保持用筒部材28の軸方向の一端部28Eが、シリンダブロック8の段部8Fに当接した状態で、姿勢保持用筒部材28の軸方向の他端部28Fが、シリンダブロック8の環状溝8Gに装着された止め輪(穴用止め輪)29に当接する。これにより、姿勢保持用筒部材28は、弁板17に接近した位置で中間軸部5Dと大径孔部8Eとの間に保持される。
ここで、姿勢保持用筒部材28の内周面28Aは、回転軸5の中間軸部5Dの外径寸法C1と同等の内径寸法D1を有し、回転軸5の中間軸部5Dに圧入されることにより、例えば中間ばめ、またはしまりばめの状態で中間軸部5Dの外周面に挿嵌される。これにより、姿勢保持用筒部材28の内周面28Aは、回転軸5の中間軸部5Dの外周面に隙間なく金属接触している。一方、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bを構成する円筒面28Cは、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内径寸法C2と同等の外径寸法D2を有し、シリンダブロック8の大径孔部8Eに圧入されることにより、例えば中間ばめ、またはしまりばめの状態で大径孔部8Eの内周面に挿嵌される。これにより、姿勢保持用筒部材28の円筒面28Cは、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に隙間なく金属接触している。
なお、姿勢保持用筒部材28のテーパー面28Dと、シリンダブロック8の大径孔部8Eとの間には適度な隙間が形成される。従って、シリンダブロック8の大径孔部8Eに対し、姿勢保持用筒部材28のテーパー面28Dを先に挿入することにより、大径孔部8Eに対する円筒面28Cの芯合わせを行うことができ、円筒面28Cを大径孔部8Eに対して圧入するときの作業性を高めることができる構成となっている。
第1の実施の形態による油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
原動機によって回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック8が回転軸5と一体に回転する。シリンダブロック8の各シリンダ9に挿嵌されたピストン10には、シュー11がそれぞれ設けられており、各シュー11は、リテーナ14に保持された状態で斜板13の平滑面13A上を摺動する。これにより、各ピストン10は、シリンダ9内を上死点から下死点へと摺動変位する間にシリンダ9内に作動油を吸込む吸入行程と、下死点から上死点へと摺動変位する間にシリンダ9内の作動油を高圧の圧油として吐出する吐出行程とを繰返す。
この結果、油圧ポンプ1は、作動油タンク(図示せず)に貯留された作動油を、例えばリヤケーシング4の給排通路4A、弁板17の給排ポート17A、シリンダポート9Aを通じて各シリンダ9内に吸入し、この吸入した作動油を加圧した圧油を、各シリンダ9からシリンダポート9A、弁板17の給排ポート17B、リヤケーシング4の給排通路4Bを通じて外部に吐出する。
油圧ポンプ1のポンプ容量(圧油の吐出量)を調整する場合には、傾転アクチュエータ19によって斜板13の傾転角度を変更する。これにより、各ピストン10のストローク量が増,減し、油圧ポンプ1のポンプ容量を可変に制御することができる。
ところで、回転軸5の雄スプライン部5Cと、シリンダブロック8の雌スプライン部8Dとの間には、両者をスプライン結合させるために僅かな隙間が形成されているため、シリンダブロック8は、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対して僅かに傾いた状態で回転する。
これに対し、第1の実施の形態では、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に姿勢保持用筒部材28を設けることにより、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを矯正しており、以下、姿勢保持用筒部材28の作用について説明する。
まず、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に姿勢保持用筒部材28を取付ける場合には、図3に示すように、リヤケーシング4を取外したケーシング本体3内に、回転軸5、軸受6、シリンダブロック8、各ピストン10、各シュー11、クレイドル12、斜板13、リテーナ14、球状ガイド15等を配置する。
この状態で、姿勢保持用筒部材28の内周面28Aを、回転軸5の他端5B側から中間軸部5Dに挿嵌すると共に、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bを、シリンダブロック8の大径孔部8Eに挿嵌する。このとき、姿勢保持用筒部材28の一端部28E側の外周面28Bは、円筒面28Cから一端部28Eに向けて(弁板17の給排ポート17A,17Bから離れるに従って)外径寸法が徐々に小径となるテーパー面28Dとして形成されている。これにより、姿勢保持用筒部材28の円筒面28Cをシリンダブロック8の大径孔部8Eに挿嵌する前段階で、大径孔部8Eに対する姿勢保持用筒部材28の芯合わせを行うことができる。
このようにして、大径孔部8Eに対する姿勢保持用筒部材28の芯合わせが行われた状態で、治具等(図示せず)を用いて姿勢保持用筒部材28の内周面28Aを中間軸部5Dに挿嵌すると共に、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bを大径孔部8Eに挿嵌する。そして、姿勢保持用筒部材28の一端部28Eが、シリンダブロック8の段部8Fに当接した状態で、環状溝8Gに止め輪29を装着する。これにより、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に、姿勢保持用筒部材28を圧入状態で取付けることができる。
この状態で、姿勢保持用筒部材28の内周面28Aは、回転軸5の中間軸部5Dに圧入(挿嵌)され、中間軸部5Dの外周面に隙間なく金属接触している。一方、姿勢保持用筒部材28の円筒面28Cは、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に圧入(挿嵌)され、大径孔部8Eの内周面に隙間なく金属接触している。
このため、回転軸5の雄スプライン部5Cとシリンダブロック8の雌スプライン部8Dとの間に隙間が形成されていたとしても、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを姿勢保持用筒部材28によって矯正し、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させることができる。この結果、シリンダブロック8に形成された各シリンダポート9Aと弁板17との間に隙間が生じるのを抑え、この隙間からの圧油の漏れを抑えることができるので、油圧ポンプ1の容積効率を適正に維持することができる。
この場合、姿勢保持用筒部材28は、給排ポート17A,17Bを有する弁板17に接近した位置に設けられている。これにより、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを、弁板17に近い位置で矯正することができ、シリンダブロック8の各シリンダポート9Aと弁板17との間に隙間が生じるのを効率良く抑えることができる。
しかも、回転軸5とシリンダブロック8とは一体に回転するため、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に取付けられた姿勢保持用筒部材28が、シリンダブロック8の回転によって摩耗(摩擦)を生じることはない。このため、回転するシリンダブロック8に対し、姿勢保持用筒部材28がブレーキ作用(引き摺りトルク)を付与することがなく、シリンダブロック8を円滑に回転させることができる。
また、姿勢保持用筒部材28が摩耗を生じることがないので、姿勢保持用筒部材28の機能、即ち、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを矯正する機能を長期に亘って維持することができる。さらに、姿勢保持用筒部材28の摩耗によるコンタミネーションが発生しないので、作動油が早期に劣化するのを抑えることができる。この結果、油圧ポンプ1の信頼性を高めることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、ケーシング2と、ケーシング2内に回転可能に設けられた回転軸5と、回転軸5と一体に回転できるように回転軸5が挿通される挿通孔8Cを有すると共に、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ9を有するシリンダブロック8と、シリンダブロック8の各シリンダ9内に往復動可能に挿嵌された複数のピストン10と、各シリンダ9と各ピストン10との間に位置してシリンダブロック8内に画成された油室を外部と連通させる弁板17の給排ポート17A,17Bとを備えてなる油圧ポンプ1において、回転軸5(中間軸部5D)の外周面と、給排ポート17A,17B側(弁板17側)に位置するシリンダブロック8の挿通孔8C(大径孔部8E)の内周面との間には、回転軸5の回転中心軸線O−Oとシリンダブロック8の回転中心軸線とが一致するようにシリンダブロック8の姿勢を保持する姿勢保持用筒部材28が設けられている。
これにより、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きが姿勢保持用筒部材28によって矯正され、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させることができる。この結果、シリンダブロック8に形成された各シリンダポート9Aと弁板17との間に隙間が生じるのを抑え、この隙間からの圧油の漏れを抑えることができるので、油圧ポンプ1の容積効率を適正に維持することができる。
また、第1の実施の形態によれば、姿勢保持用筒部材28は、回転軸5(中間軸部5D)の外周面に当接する内周面28Aと、シリンダブロック8の挿通孔8C(大径孔部8E)の内周面に当接する外周面28Bとを有する円筒状の筒部材により構成されており、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bには、弁板17の給排ポート17A,17Bから離れるに従って外径寸法が小さくなるように傾斜したテーパー面28Dが設けられている。
これにより、姿勢保持用筒部材28の内周面28Aが、中間軸部5Dの外周面に隙間なく当接し、姿勢保持用筒部材28の外周面28B(円筒面28C)が、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に隙間なく当接するので、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させることができる。一方、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bに設けられたテーパー面28Dを、シリンダブロック8の大径孔部8Eに挿入することにより、姿勢保持用筒部材28の円筒面28Cをシリンダブロック8の大径孔部8Eに挿嵌するときに、大径孔部8Eに対する姿勢保持用筒部材28の芯合わせを容易に行うことができる。これにより、回転軸5の中間軸部5Dとシリンダブロック8の大径孔部8Eとの間に、姿勢保持用筒部材28を圧入状態で取付けるときの作業性を高めることができる。
次に、図5ないし図7は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、姿勢保持部材が、円筒状の第1,第2の筒部材と、スプリングディスクとにより構成されていることにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、姿勢保持部材30は、回転軸5の中間軸部5Dの外周面と、シリンダブロック8の挿通孔8Cのうち大径孔部8Eの内周面との間に設けられている。姿勢保持部材30は、第1の実施の形態による姿勢保持用筒部材28と同様に、回転軸5の回転中心軸線O−Oとシリンダブロック8の回転中心軸線とが一致するように、シリンダブロック8の姿勢を保持するものである。ここで、姿勢保持部材30は、後述するインサートワッシャ31と、インサートカラー32と、2枚のスプリングディスク33,34とにより構成されている。
第1の筒部材としてのインサートワッシャ31は、例えば金属材料を用いて短尺な円筒状に形成されている。インサートワッシャ31の内径寸法E1は、回転軸5の中間軸部5Dの外径寸法C1よりも大きく、インサートワッシャ31の外径寸法E2は、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内径寸法C2よりも小さく設定されている。従って、インサートワッシャ31の内周側は、中間軸部5Dの外周側に隙間をもって挿通され、インサートワッシャ31の外周側は、大径孔部8Eの内周側に隙間をもって挿通される。インサートワッシャ31の軸方向の一端部31Aは、スプリングディスク33に当接し、インサートワッシャ31の軸方向の他端部31Bは、止め輪29に当接する。
第2の筒部材としてのインサートカラー32は、例えば金属材料を用いてインサートワッシャ31よりも長尺な円筒状に形成されている。インサートカラー32の内径寸法F1は、回転軸5の中間軸部5Dの外径寸法C1よりも大きく、インサートカラー32の外径寸法F2は、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内径寸法C2よりも小さく設定されている。従って、インサートカラー32の内周側は、中間軸部5Dの外周側に隙間をもって挿通され、インサートカラー32の外周側は、大径孔部8Eの内周側に隙間をもって挿通される。インサートカラー32は、軸方向の一端部32Aがシリンダブロック8の段部8Fに当接し、軸方向の他端部32Bがスプリングディスク34に当接する。
2枚のスプリングディスク33,34は、互いに同一形状を有し、インサートワッシャ31とインサートカラー32との間に設けられている。スプリングディスク33は、内周縁部33A側が円錐状に隆起した円板状の板体からなり、軸方向に荷重が作用することにより外周縁部33Bの外径寸法が増大するように弾性変形するものである。スプリングディスク34も同様に、内周縁部34A側が円錐状に隆起した円板状の板体からなり、軸方向に荷重が作用することにより外周縁部34Bの外径寸法が増大するように弾性変形するものである。
各スプリングディスク33,34の内径寸法G1は、軸方向に荷重が作用していない状態では回転軸5の中間軸部5Dの外径寸法C1よりも大きく、軸方向に荷重が作用した状態では中間軸部5Dの外径寸法C1よりも小さくなるように設定されている。一方、各スプリングディスク33,34の外径寸法G2は、軸方向に荷重が作用していない状態ではシリンダブロック8の大径孔部8Eの内径寸法C2よりも小さく、軸方向に荷重が作用した状態では大径孔部8Eの内径寸法C2よりも大きくなるように設定されている。
各スプリングディスク33,34は、互いの外周縁部33B,34Bが当接するように組合わせた状態(直列組合わせ)で、インサートワッシャ31とインサートカラー32との間に配置される。従って、スプリングディスク33の内周縁部33Aは、インサートワッシャ31の一端部31Aに当接し、スプリングディスク34の内周縁部34Aは、インサートカラー32の他端部32Bに当接する。この状態で、インサートワッシャ31の他端部31Bを止め輪29によって軸方向に押圧し、この止め輪29を、シリンダブロック8の環状溝8Gに取付ける。これにより、インサートワッシャ31の弁板17に向かう軸方向の変位が止め輪29によって阻止され、インサートワッシャ31とインサートカラー32との間で各スプリングディスク33,34が挟持されるので、各スプリングディスク33,34に対して軸方向の荷重が作用する。
これにより、各スプリングディスク33,34は弾性変形を生じ、内径寸法G1が小さくなると共に外径寸法G2が大きくなる。従って、各スプリングディスク33,34の内周縁部33A,34Aが、回転軸5の中間軸部5Dの外周面に金属接触し、各スプリングディスク33,34の外周縁部33B,34Bが、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に金属接触する。
このため、回転軸5の雄スプライン部5Cとシリンダブロック8の雌スプライン部8Dとの間に隙間が形成されていたとしても、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きを姿勢保持部材30によって矯正し、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させることができる。この結果、シリンダブロック8に形成された各シリンダポート9Aと弁板17との間に隙間が生じるのを抑え、この隙間からの圧油の漏れを抑えることができるので、油圧ポンプ1の容積効率を適正に維持することができる。
かくして、第2の実施の形態によれば、姿勢保持部材30は、シリンダブロック8の挿通孔8Cの大径孔部8E内に挿通されたインサートワッシャ31及びインサートカラー32と、これらインサートワッシャ31とインサートカラー32との間で軸方向に挟持されることにより、内周縁部33A,34Aが回転軸5の中間軸部5Dの外周面に当接すると共に、外周縁部33B,34Bがシリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に当接するように弾性変形するスプリングディスク33,34とにより構成されている。
これにより、インサートワッシャ31とインサートカラー32との間で各スプリングディスク33,34が挟持され、各スプリングディスク33,34に対して軸方向の荷重が作用すると、各スプリングディスク33,34が弾性変形を生じ、内周縁部33A,34Aが、回転軸5の中間軸部5Dの外周面に金属接触し、外周縁部33B,34Bが、シリンダブロック8の大径孔部8Eの内周面に金属接触する。この結果、第2の実施の形態においても、回転軸5の回転中心軸線O−Oに対するシリンダブロック8の傾きが姿勢保持用筒部材28によって矯正され、シリンダブロック8の回転中心軸線を、回転軸5の回転中心軸線O−Oに一致させることができる。
なお、第2の実施の形態では、第1の筒部材として、内周側が回転軸5の中間軸部5Dの外周側に挿通される円筒状のインサートワッシャ31を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図8に示す変形例のように構成してもよい。
即ち、第1の筒部材として、インサートワッシャ31に代えて、内周面に雌ねじ部35Aが螺設された円筒状のねじ付きインサートワッシャ35を用いる構成としてもよい。この場合には、回転軸5の中間軸部5Dの外周面に雄ねじ部5Eを螺設し、この中間軸部5Dの雄ねじ部5Eに、ねじ付きインサートワッシャ35の雌ねじ部35Aを螺合させる。このため、インサートカラー32とねじ付きインサートワッシャ35との間に配置された各スプリングディスク33,34に対し、ねじ付きインサートワッシャ35の締込み作業によって軸方向の荷重を加えることができ、各スプリングディスク33,34を容易に弾性変形させることができる。
第1の実施の形態では、姿勢保持用筒部材28の外周面28Bに、円筒面28Cとテーパー面28Dとを設ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、テーパー面がない一様な外径寸法を有する円筒体によって姿勢保持部材を構成してもよい。
第2の実施の形態では、インサートワッシャ31とインサートカラー32との間に、2枚のスプリングディスク33,34を設ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1枚または3枚以上のスプリングディスクを設ける構成としてもよい。
実施の形態では、液圧回転機として可変容量型の斜板式油圧ポンプを例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば定容量型の斜板式油圧ポンプに適用してもよく、さらに、可変容量型あるいは定容量型の斜板式油圧モータに適用してもよい。