JP2019119794A - 金属とイミノメチル置換ビピロール誘導体からなる一次元配位ポリマー - Google Patents

金属とイミノメチル置換ビピロール誘導体からなる一次元配位ポリマー Download PDF

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明彦 津田
久美子 西中
Kumiko Nishinaka
久美子 西中
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Keigo Imamura
圭吾 今村
義雄 古荘
Yoshio Furusho
義雄 古荘
延康 成瀬
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延康 成瀬
裕 目良
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裕 目良
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Abstract

【課題】本発明は、機能性材料として有用な新規高分子化合物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、式(I):[式中、各記号は本明細書中で定義した通りである。]で表される高分子化合物、並びに該高分子化合物を含有する機能性材料に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、π共役系のリンカーで架橋したビピロールと金属イオンを強固な配位結合で連結することにより形成される、新規な金属−有機一次元配位ポリマー(高分子化合物)に関する。
金属と有機配位子を組み合わせて形成される二次元又は三次元の配位ポリマーには、ナノシート、金属有機構造体(MOF)、多孔性配位ポリマー等が知られており、それらの多様な機能と性質が大きな注目を集めている(非特許文献1)。配位子と金属の巨大なネットワーク構造を有する前記二次元又は三次元の配位ポリマーと比較して、一次元の直鎖構造を形成する配位ポリマーは、概して、溶液中でそれを構成する配位子と金属に容易に解離し、または無秩序に凝集するなどして、機能性材料としての多岐にわたる応用が難しい。
一方、ポリエチレン等のような一次元共有結合ポリマーは、熱による成形が可能な絶縁性のプラスチックとして、容器や包装用フィルムをはじめ、様々な用途に利用されている。有機配位子と金属による重合反応によって前記一次元共有結合ポリマーのような強い一次元配位ポリマーを合成できれば、その実用的機能を維持したままでユニークな電子的性質や光学的性質を持つ新たな機能性材料の創製につながることが期待される。
しかし、共有結合で連結したポリマーのようにプラスチックや繊維等に成形できた例は非常に限られている(非特許文献2、3)。また、一般に、有機配位子と金属との配位結合は弱く容易に解離するため、実際に機能性材料としての応用を行う際の大きな弱点となっていた。
Metal-Organic Frameworks: Design and Application, Leonard R. MacGillivray (ed), WILEY, August 2010 Matsuoka, R. et al., Chem. Sci., 2015, Vol.6, p.2853-2858 樋口昌芳, 高分子論文集, 2010, Vol.67, No.7, p.368-374
このような背景のもと、物理的に強く、有機溶媒に易溶で、ユニークな物理化学的特性を有する金属−有機一次元配位ポリマーの開発がますます求められている。
本発明の目的は、分子内にπ共役部位と配位結合部位を併せ持つイミノメチル置換ビピロール誘導体からなる有機配位子を設計し、当該有機配位子を金属イオンを介して強固な配位結合で連結することにより、ユニークな機能(電子的性質、光学的性質等)を有する新規な金属−有機一次元配位ポリマー、及びそれを含有する機能性材料を提供することである。
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、下記式(I):
[式中、
R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は下式:
(式中、Xは、アルキレン基を示し、Yは、水素原子又はアルキル基を示し、mは、1〜10を示し、及びは、結合位置を示す。)で表される基を示し、
、R’、R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
−A−は、エチニレン基、置換されていてもよいアリーレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基を示し、並びに
nは、2以上の整数を示す。]
で表される高分子化合物(以下、「化合物(I)」と称することもある。)が、有機溶媒に易溶であり、分子量が大きく、カラム操作中に解離することもなく、従来公知の金属−有機一次元配位ポリマーよりも遥かに強い結合力(すなわち、強い物理的強度)を有すると共に、ユニークな電気化学的特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]式(I):
[式中、
R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は下式:
(式中、Xは、アルキレン基を示し、Yは、水素原子又はアルキル基を示し、mは、1〜10を示し、及びは、結合位置を示す。)で表される基を示し、
、R’、R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
−A−は、エチニレン基、置換されていてもよいアリーレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基を示し、並びに
nは、2以上の整数を示す。]
で表される高分子化合物、
[2]R及びR’が、共に水素原子又は同一のC1−6アルキル基である、上記[1]に記載の高分子化合物、
[3]R、R’、R及びR’が、それぞれ独立して、C1−6アルキル基であり、且つ−A−が1,4−フェニレン基又は2,5−チエニレン基である、上記[1]又は[2]に記載の高分子化合物、
[4]R及びR’が、共に同一の、フッ素原子及び式:
(式中、X’が、エチレンであり、Y’が、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、m’が、2〜10であり、及びが、結合位置である。)で表される基からなる群より選択される1以上の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、アリール基又はC1−20アルキル基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子化合物、
[5]R及びR’が、共にフェニル基又は同一のC4−20アルキル基である、上記[4]に記載の高分子化合物、
[6]nが2〜150である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子化合物、
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の高分子化合物を含有する、機能性材料。
[8]機能性材料が、導電性薄膜、有機半導体薄膜、導電性プラスチック、液晶及び音響配向性ナノファイバーからなる群より選択される、上記[7]に記載の機能性材料、等に関する。
本発明によれば、イミノメチル置換ビピロール誘導体と金属塩(パラジウム塩)を有機溶媒中で混合し、室温で撹拌するという簡便な操作により、分子量が大きく、強い結合力(すなわち、高い物理的強度)を有する金属−有機一次元配位ポリマーである化合物(I)を得ることが可能である。化合物(I)は、基板上で二次元的ネットワーク構造による幾何学模様を形成すると共に、多段階の可逆な酸化−還元波を示し、ユニークな電気化学的特性を示すことから、高い導電性を持つことが示唆される。また、配位子として光学活性な置換基を有する場合には、らせん状のポリマーを得ることも可能である。それ故、本発明の化合物(I)は、導電性薄膜、有機半導体薄膜、導電性プラスチック、液晶、導電性ナノファイバー、音響配向性ナノファイバー等の機能性材料に応用できる可能性がある。
図1の(a)と(b)は、それぞれ化合物(6a)と化合物(Ia)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)チャートを示す。 図2は、化合物(Ia)と化合物(6a)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。 図3は、化合物(Ia)と化合物(6a)の蛍光スペクトルを示す。 図4の(a)と(b)は、それぞれ化合物(6b)と化合物(Ib)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)チャートを示す。 図5は、化合物(Ib)と化合物(6b)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。 図6は、化合物(Ib)と化合物(6b)の蛍光スペクトルを示す。 図7は、化合物(6b)のジクロロメタン溶液のCDスペクトルを示す。 図8は、化合物(Ib)のジクロロメタン溶液のCDスペクトルを示す。 図9は、励起子キラリティー法より予測される化合物(Ib)及び化合物(Ic)のねじれ構造を示す。 図10の(a)と(b)は、それぞれ化合物(6c)と化合物(Ic)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)チャートを示す。 図11は、化合物(Ic)と化合物(6c)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。 図12は、化合物(Ic)と化合物(6c)の蛍光スペクトルを示す。 図13は、化合物(6c)のジクロロメタン溶液のCDスペクトルを示す。 図14は、化合物(Ic)のジクロロメタン溶液のCDスペクトルを示す。 図15の(a)と(b)は、それぞれ化合物(6d)と化合物(Id)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)チャートを示す。 図16は、化合物(Id)と化合物(6d)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。 図17は、化合物(Id)と化合物(6d)の蛍光スペクトルを示す。 図18の(a)と(b)は、それぞれ化合物(6e)と化合物(Ie)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)チャートを示す。 図19は、化合物(Ie)と化合物(6e)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。 図20は、化合物(Ie)と化合物(6e)の蛍光スペクトルを示す。 図21の(a)は、化合物(6e)のサイクリックボルタモグラムを示し、(b)は、化合物(Ie)のサイクリックボルタモグラムを示す。 図22の(a)は、化合物(6e)の微分パルスボルタモグラムを示し、(b)は、化合物(Ie)の微分パルスボルタモグラムを示す。 図23は、TEM(基板:ELS−C10 STEM Cu100Pグリッド、加速電圧:100kV)による化合物(Ie)の観察画像を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
(定義)
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
本明細書中、「置換されていてもよいアルキル基」における「アルキル基」とは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1以上の一価の飽和炭化水素基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、炭素数が1〜20のアルキル基(C1−20アルキル基)である。中でも、R及びR’における「アルキル基」としては、高分子量化の観点から、炭素数が4〜20のアルキル基(C4−20アルキル基)が特に好ましく、R、R’、R、R’、R、R’及びYにおける「アルキル基」としては、炭素数が1〜12のアルキル基(C1−12アルキル基)が好ましく、炭素数が1〜6のアルキル基(C1−6アルキル基)がより好ましい。
本明細書中、「C1−20アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−12アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
本明細書中、「C4−12アルキル基」としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
本明細書中、「C1−6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。中でも、C1−4アルキル基(例、メチル、エチル等)が好ましい。
本明細書中、「C1−6アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1−4アルコキシ基が好ましい。
本明細書中、「アルキレン基」とは、炭素数が1以上の直鎖状または分岐鎖状の二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、2,2−ジメチルエチレン、2,2−ジメチルプロピレン等が挙げられる。中でも、炭素数が1〜6のアルキレン基(C1−6アルキレン基)が好ましく、炭素数が2〜3のアルキレン基(C2−3アルキレン基)がより好ましく、エチレンが特に好ましい。
本明細書中、「置換されていてもよいシクロアルキル基」における「シクロアルキル基」とは、環を構成する炭素原子数3以上の飽和炭化水素環から誘導される一価の基を意味する。シクロアルキル基としては、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C3−10シクロアルキル基である。
本明細書中、「C3−10シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3−8シクロアルキル基が好ましく、C3−6シクロアルキル基がより好ましく、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が特に好ましい。
上記のC3−10シクロアルキル基は、ベンゼン環と縮合して縮合環基を形成していてもよく、このような縮合環基としては、例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル等が挙げられる。
また、上記のC3−10シクロアルキル基は、C7−10橋かけ式炭化水素基であってもよい。C7−10橋かけ式炭化水素基としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチル等が挙げられる。
さらに、上記のC3−10シクロアルキル基は、C3−10シクロアルカンとスピロ環基を形成していてもよい。ここで、C3−10シクロアルカンとしては、上記のC3−10シクロアルキル基に対応する環が挙げられる。このようなスピロ環基としては、スピロ[4.5]デカン−8−イル等が挙げられる。
本明細書中、「置換されていてもよいアリール基」における「アリール基」としては、芳香族性を示す単環式或いは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルナフチル、2−アンスリル、フェナントリル等のC6−22アリール基を示す。中でも、C6−10アリール基が好ましい。
本明細書中、「C6−10アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルが挙げられ、フェニルが特に好ましい。
上記のC6−10アリール基は、C3−10シクロアルカンと縮合して縮合環基を形成していてもよく、このような縮合環基としては、例えば、インダニル、テトラヒドロナフチル等が挙げられる。
本明細書中、「アラルキル基」とは、前記した「アルキル基」に前記した「アリール基」が置換した基を意味し、好ましくは、「C7−14アラルキル基」である。
本明細書中、「C7−14アラルキル基」とは、「C1−4アルキル基」に「C6−10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル、ビフェニリルメチル等が挙げられ、ベンジルが特に好ましい。
本明細書中、「アリーレン基」とは、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた二価の基を意味し、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも包含される。「アリーレン基」としては、例えば、フェニレン基、ナフタレン−ジイル基、アントラセン−ジイル基、ビフェニル−ジイル基、フルオレン−ジイル基、ターフェニル−ジイル基、スチルベン−ジイル基、ジスチルベン−ジイル基等が挙げられる。中でも、フェニレン基(例、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等)が好ましく、1,4−フェニレンが特に好ましい。
本明細書中、「アルキルスルホニル基」とは、−S(O)−に「アルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニル、ウンデシルスルホニル、ドデシルスルホニル等のC1−20アルキルスルホニル基が挙げられる。中でも、ドデシルスルホニル基が好ましい。
本明細書中、「アリールスルホニル基」とは、−S(O)−に「アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等のC6−10アリールスルホニル基が挙げられる。中でも、フェニルスルホニル基が好ましい。
本明細書中、「アシル基」としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルカノイル基、C7−13アロイル基等が挙げられる。具体的には、例えば、ホルミル、アセチル、n−プロピオニル、イソプロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル、ヘキサノイル、ベンゾイル、ナフトイル、レブリニル等が挙げられ、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
本明細書中、「アシロキシ基」とは、ヒドロキシ基に前記した「アシル基」が置換した基を意味し、好ましくは、C1−6アルカノイロキシ基、C7−13アロイロキシ基等が挙げられる。具体的には、例えば、アセトキシ、n−プロピオニロキシ、ピバロイロキシ、バレリロキシ、ヘキサノイロキシ、ベンゾイロキシ等が挙げられ、これらはそれぞれ置換されていてもよい。
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、特に規定する場合を除き、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン原子、(2)ニトロ基、(3)シアノ基、(4)アシロキシ基、(5)アシル基、(6)C1−6アルキル基、(7)C3−8シクロアルキル基、(8)C1−6アルコキシ基、(9)C1−6アルキレンジオキシ基、(10)C6−10アリール基、(11)C7−14アラルキル基、(12)C1−6アルキルスルホニル基、(13)C6−10アリールスルホニル基等が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、メチレンジオキシ、フェニル、シクロヘキシル、ベンジル等が好ましい。また、複数の置換基が存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
上記置換基は、さらに上記(1)〜(13)から選ばれる1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは、0個(すなわち無置換)、または1乃至5個である。
本明細書中、「光学活性キラルアミン」としては、光の平面偏光を回転させる性質、すなわち、旋光能を有する低分子化合物であり、中心性キラリティー、軸性キラリティー又は面性キラリティーを持つ分子量が500以下の有機アミン化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、光学的に純粋な不斉炭素原子を1つ有するアミン化合物であり、例えば、光学的に純粋な両エナンチオマーが市販品として入手可能な1−フェニルエチルアミン、1−シクロヘキシルエチルアミン、1−(1−ナフチル)エチルアミン、1−(2−ナフチル)エチルアミン、sec−ブチルアミン、1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミン、1−(p−トリル)エチルアミン、1−(4−メトキシフェニル)エチルアミン、β−メチルフェネチルアミン等のキラル化合物の光学活性体が挙げられる。中でも、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン又は(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンが特に好ましい。該光学活性キラルアミンとしては、光学的に純粋な化合物を使用するのが好ましい。
(本発明の化合物)
本発明の化合物は、下記式(I):
[式中、
R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は下式:
(式中、Xは、アルキレン基を示し、Yは、水素原子又はアルキル基を示し、mは、1〜10を示し、及びは、結合位置を示す。)で表される基を示し、
、R’、R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
−A−は、エチニレン基、置換されていてもよいアリーレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基を示し、並びに
nは、2以上の整数を示す。]
で表される高分子化合物(化合物(I))である。
以下、本発明の化合物(I)の各基について説明する。
R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。
R及びR’は、好ましくは、共に水素原子又は同一のC1−6アルキル基である。
高分子量化の観点からは、R及びR’は、共に水素原子であることが好ましく、光学的物性(らせんのキラリティー誘起等)付与の観点からは、R及びR’は、共に同一のC1−6アルキル基(より好ましくは、C1−4アルキル基)であることが好ましい。
及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は下式:
(式中、Xは、アルキレン基を示し、Yは、水素原子又はアルキル基を示し、mは、1〜10を示し、及びは、結合位置を示す。)で表される基を示す。
及びR’は、好ましくは、共に同一の、フッ素原子及び式:
(式中、X’が、エチレンであり、Y’が、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、m’が、2〜10(好ましくは、3〜8)であり、及びが、結合位置である。)で表される基からなる群より選択される1以上の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、アリール基又はC1−20アルキル基である。
及びR’は、より好ましくは、共にフェニル基又は同一のC1−20アルキル基である。
高分子量化の観点からは、R及びR’は、共にフェニル基又は同一のC4−20アルキル基(例、n−ペンチル、ウンデシル等)であることが好ましい。
、R’、R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示す。
、R’、R及びR’は、好ましくは、それぞれ独立して、C1−6アルキル基である。
、R’、R及びR’は、より好ましくは、共に同一のC1−4アルキル基である。
−A−は、エチニレン基、置換されていてもよいアリーレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基を示す。
−A−は、好ましくは、置換されていてもよい1,4−フェニレン基、置換されていてもよい1,3−フェニレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基であり、より好ましくは、1,4−フェニレン基又は2,5−チエニレン基であり、特に好ましくは、1,4−フェニレン基である。
nは、2以上の整数を示す。
nは、好ましくは、2〜150であり、より好ましくは、3〜130である。
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(IA)]
R及びR’が、共に水素原子又は同一のC1−6アルキル基であり、
及びR’が、共に同一の、フッ素原子及び式:
(式中、X’が、エチレンであり、Y’が、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、m’が、2〜10(好ましくは、3〜8)であり、及びが、結合位置である。)で表される基からなる群より選択される1以上の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、アリール基又はC1−20アルキル基であり、
、R’、R及びR’が、それぞれ独立して、C1−6アルキル基であり、
−A−が、置換されていてもよい1,4−フェニレン基、置換されていてもよい1,3−フェニレン基又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基であり、且つ
nが、2〜150である、
化合物(I)。
[化合物(IB)]
R及びR’が、共に水素原子であり、
及びR’が、共にフェニル基又は同一のC1−20アルキル基であり、
、R’、R及びR’が、それぞれ独立して、C1−6アルキル基であり、
−A−が、置換されていてもよい1,4−フェニレン基、置換されていてもよい1,3−フェニレン基又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基であり、且つ
nが、2〜150である、
化合物(I)が好ましい。
高分子量化の観点からは、R及びR’がフェニル基又は長鎖のアルキル基である方が化合物(I)の有機溶媒に対する脂溶性が向上する点で好ましいことから、
[化合物(IC)]
R及びR’が、共に水素原子であり、
及びR’が、共にフェニル基又は同一のC4−20アルキル基(例、n−ペンチル、ウンデシル等)であり、
、R’、R及びR’が、共に同一のC1−4アルキル基(例、メチル、エチル等)であり、
−A−が、1,4−フェニレン基又は2,5−チエニレン基であり、且つ
nが、3〜130である、
化合物(I)がより好ましい。
らせんのキラリティーを誘起するのに好ましい態様としては、
[化合物(ID)]
R及びR’が、共に同一のC1−6アルキル基であり、
及びR’が、共に同一の、フッ素原子及び式:
(式中、X’が、エチレンであり、Y’が、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、m’が、2〜10(好ましくは、3〜8)であり、及びが、結合位置である。)で表される基からなる群より選択される1以上の置換基で置換されていてもよい、アリール基であり、
R及びR、並びにR’及びR’がそれぞれ共に結合する炭素原子が、不斉炭素原子であり、
、R’、R及びR’が、それぞれ独立して、C1−6アルキル基であり、
−A−が、置換されていてもよい1,4−フェニレン基、置換されていてもよい1,3−フェニレン基又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基であり、且つ
nが、2〜150である、
化合物(I)である。
らせんのキラリティーを誘起するのにより好ましい態様としては、
[化合物(IE)]
R及びR’が、共に同一のC1−4アルキル基であり、
及びR’が、共にフェニル基であり、
R及びR、並びにR’及びR’がそれぞれ共に結合する炭素原子が、不斉炭素原子であり、
、R’、R及びR’が、共に同一のC1−4アルキル基(例、メチル、エチル等)であり、
−A−が、1,4−フェニレン基又は2,5−チエニレン基であり、且つ
nが、3〜130である、
化合物(I)である。
化合物(I)の好ましい具体例としては、例えば、下記実施例に記載の実施例1〜6の化合物(以下、化合物(Ia)〜化合物(If)ともいう。)が挙げられる。
本発明の化合物(I)が不斉中心を有する場合、エナンチオマーあるいはジアステレオマーなどの異性体が存在しうる。このような異性体及びそれらの混合物はすべて本発明の範囲内に包含される。また、コンホメーションあるいは互変異性による異性体が生成する場合があるが、このような異性体あるいはその混合物も本発明の化合物(I)に包含される。
本発明の化合物(I)が塩、溶媒和物(例、水和物、アルコール和物等)等を生成する場合があるが、このような塩、溶媒和物等も本発明の化合物(I)に包含される。
(本発明の化合物(I)の合成)
本発明の化合物(I)の製造方法について以下に説明する。
以下の製造方法における各工程では反応液のままか、または粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィーなどの分離手段により単離及び/又は精製することができる。
本発明の化合物(I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、下記の反応式で示される方法またはそれに準じた方法等により製造することができる。
反応式
[式中、
は、下記式:
からなる群より選択されるホウ酸又はホウ酸エステル基を示し、
Zは、ハロゲン原子又はトリフルオロメタンスルホニロキシを示し、Lは、配位子を示し、その他の記号は、前記と同義である。]
(工程1)
本工程は、自体公知の方法(例えば、Setsune, J. et al., Tetrahedro Lett., 2006, 47, p.7541-7544; Setsune, J. et al., Chem. Eur. J., 2015, 21, p.12715-12727等参照)又はそれに準ずる方法に従って製造される化合物(1)及び化合物(1’)を、塩基存在下、パラジウム触媒を用いて、化合物(2)とのカップリング反応を行い、化合物(3)を製造する工程である。本工程は、場合によりホスフィン配位子存在下で行ってもよい。
本工程に使用するパラジウム触媒としては、例えば、、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、〔1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯化合物(1:1)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジアセテート、ベンジルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロライド、〔1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン〕パラジウム(II)ジクロライド、〔1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン〕パラジウム(II)ジクロライド、〔1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン〕パラジウム(II)ジクロライド、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロライド、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(2,4−ペンタンジオナート)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、アリルパラジウム(II)クロライドダイマー、〔N−i−プロピルアクリルアミド/4−(ジフェニルホスフィノ)スチレン共重合体〕パラジウム(II)ジクロライド等が挙げられる。中でも、酢酸パラジウム(II)が特に好ましい
パラジウム触媒の使用量は、化合物(1)及び化合物(1’)の合計量(1当量)に対して、通常、0.1〜20当量、好ましくは、0.5〜10当量である。
本工程に使用する塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。中でも、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が特に好ましい。当該塩基は、水に溶解して使用することもできる。
塩基の使用量は、化合物(1)及び化合物(1’)の合計量(1当量)に対して、通常、0.1〜50当量、好ましくは1〜10当量である。
本工程に使用するホスフィン配位子としては、例えば、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、フェニルジエチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、n−プロピルジフェニルホスフィン、メトキシジフェニルホスフィン、エトキシジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(2−チエニル)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等が挙げられる。中でも、特に、トリフェニルホスフィンが好ましい。
ホスフィン配位子の使用量は、化合物(1)及び化合物(1’)の合計量(1当量)に対して、通常0〜0.5当量、好ましくは0〜0.2当量である。
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行うのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、アニソール、ジフェニルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル等)、ケトン類(例、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)等が挙げられるが、中でも、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。上記溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、水を共存させることもできる。
この反応の反応温度は、通常0〜250℃、好ましくは10〜100℃であり、反応時間は、通常1〜200時間、好ましくは3〜48時間である。
この反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
この反応で使用する化合物(1)及び化合物(1’)は、同一であっても、異なっていてもよいが、同一の化合物を使用することが好ましい。
(工程2)
本工程は、化合物(3)を、塩基存在下、加熱還流することにより、化合物(4)を製造する工程である。
使用する塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好適に用いられる。
塩基の使用量は、化合物(3)1当量に対して、通常、2〜20当量、好ましくは4〜10当量、より好ましくは8〜10当量である。
この反応は、反応に影響を及ぼさない高沸点の溶媒中で行うのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例、キシレン、メシチレン等)、アルコール類(例、エチレングリコール等)、ニトリル類(例、ベンゾニトリル等)、エーテル類(例、ジグリム等)等が挙げられるが、中でも、エチレングリコールが好ましい。
この反応は、加熱還流下(通常約100〜220℃、好ましくは約130〜200℃)で行うことができる。
反応時間は、通常1〜30時間、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。
(工程3)
本工程は、化合物(4)を、自体公知のホルミル化反応(Vilsmeier-Haack反応)に付すことにより、化合物(5)を製造する工程である。
この反応に用いるホルミル化剤(Vilsmeier試薬)としては、例えば、塩化ホスホリルとN,N−ジメチルホルムアミドの組み合わせ等が好適に用いられる。
ホルミル化剤の使用量は、化合物(4)1当量に対して、通常、2〜20当量、好ましくは4〜10当量である。
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行うのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン等)、アルコール類、エーテル類、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドまたはこれらの混合溶媒が挙げられるが、中でも、1,2−ジクロロエタンが好ましい。
この反応は、冷却下(通常約−78〜20℃、好ましくは約−10〜10℃)、室温下または加熱下(通常約40〜200℃、好ましくは約40〜160℃)に行うことができる。
反応時間は、通常1〜30時間、好ましくは1〜20時間、より好ましくは1〜10時間である。
(工程4)
本工程は、化合物(5)を、式:RRCHNH及びR1’R’CHNH(式中、R及びR’、並びにR及びR1’は、前記と同義である。)で表されるアミンと反応させることにより、化合物(6)を製造する工程である。当該反応は、必要に応じて酸触媒の存在下で、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
式:RRCHNH及びR1’R’CHNH(式中、R及びR’、並びにR及びR1’は、前記と同義である。)で表されるアミンの合計使用量は、化合物(5)1当量に対して、通常、合計量として2〜50当量、好ましくは10〜30当量、より好ましくは20当量である。この反応で使用する式:RRCHNH及びR1’R’CHNH(式中、R及びR’、並びにR及びR1’は、前記と同義である。)で表されるアミンは、同一であっても、異なっていてもよいが、同一のアミン(すなわち、R=R’であり、且つR=R1’である化合物)を使用するのが好ましい。また、上記アミンとして、光学活性キラルアミン(例、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン等)を使用することもできる。
酸触媒としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩酸等が挙げられるが、中でもトリフルオロ酢酸が特に好ましい。
酸触媒の使用量は、使用する酸の種類により異なるが、化合物(5)1当量に対して、通常、0〜10当量、好ましくは0〜0.5当量である。
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行うのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン等)、炭化水素類(例、ヘキサン等)、水等が挙げられるが、中でも、ジクロロメタン又は水が好ましい。
この反応は、通常約0℃〜室温下、好ましくは、室温下で行うことができる。
反応時間は、通常1〜30時間、好ましくは1〜24時間、より好ましくは6〜12時間である。
(工程5)
本工程は、化合物(6)を、二価のパラジウム塩(PdL)と反応させることにより、本発明の化合物(I)を製造する工程である。当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
二価のパラジウム塩(PdL)としては、例えば、酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、アリルパラジウム(II)クロライドダイマー等が挙げられる。中でも、酢酸パラジウムが特に好ましい。
二価のパラジウム塩(PdL)の使用量は、化合物(6)1当量に対して、通常、1〜3当量、好ましくは2当量である。
この反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行うのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン等)、炭化水素類(例、ヘキサン等)、アルコール類(例、メタノール等)等が挙げられるが、中でも、ジクロロメタン、又はジクロロメタンとメタノールの混合溶媒が好ましく、ジクロロメタンが特に好ましい。
化合物(I)の重合度は、反応溶液中の化合物(6)の濃度に大きく影響を受ける。化合物(6)の濃度は、通常、1〜50mMであり、好ましくは、10〜30mMであり、高分子量(例えば、重合度:約130)の化合物(I)を得るのに最適な化合物(6)の濃度は、20mMである。好適な濃度よりも化合物(6)の濃度が低い場合には、反応速度が低下し、生成する化合物(I)の重合度が低下する傾向にあり、また、好適な濃度よりも化合物(6)の濃度が高い場合には、パラジウム塩や随時生成される化合物(I)の溶解性が低下することが予想される。
この反応は、通常約0℃〜室温下、好ましくは、室温下(より好ましくは、298K)で行うことができる。
反応時間は、通常8〜72時間、好ましくは12〜60時間、より好ましくは24〜60時間、特に好ましくは48〜60時間である。反応時間が短くなると化合物(I)の重合度が低下する傾向がある。
(本発明の化合物(I)の同定方法)
本発明の化合物(I)の分子サイズは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)により測定することが可能である。
SEC−HPLCの測定結果によれば、化合物(I)のピークの保持時間は、化合物(6)のピークに比べて短縮される。
本発明の化合物(I)の分子サイズは、具体的には、分子量906、1300、4000、13502、25000、50000、123000のポリスチレンスタンダードについても、化合物(I)の測定条件(溶離液の種類等)と同条件下でSEC−HPLC測定を行い、それぞれの分子量を縦軸に、保持時間を横軸にプロットした較正曲線(検量線)を作成する。当該検量線を用いて、外挿法により分子量計算を行うことができる。
この方法により算出された分子量は、あくまでポリスチレン換算であるため、化合物(I)そのものの分子量とは多少誤差があるものの、数平均分子量(Mn:g/mol)、重量平均分子量(Mw:g/mol)、重合度(N)、分散度(Mw/Mn)等をそれぞれ算出することができる(後述の実施例参照)。
後述する実施例に示されるように、SEC−HPLC測定結果から算出された化合物(I)の重合度(N)(すなわち、式(I)中のnの値)は、使用する化合物(6)の種類(特に、化合物(6)中のR及びR1’の種類)により大きく変化する(N=2.7〜約130)。
化合物(6)におけるR及びR1’のアルキル基が長くなるにつれて(好ましくは、C4−20アルキル基)高分子量の化合物(I)が得られる傾向にある。
本発明の化合物(I)のSEC−HPLC測定結果においては、化合物(I)のピークの他にはピークが全く検出されなかったことから、化合物(I)は、ゲルカラム内で解離することなく、配位子とパラジウムが結合したまま溶出してくることが分かった。
一般に、有機−金属配位ポリマーは、HPLCカラム中で錯体が解離したり、吸着されることが多いが、化合物(I)では、そのような挙動が観測されなかったことは驚くべきことである。このことから、化合物(I)における配位子とパラジウムの結合力は、従来の有機−金属配位ポリマーよりも顕著に向上していることが確認された。
また、後述する実施例1〜5に示されるように、化合物(I)とその配位子である化合物(6)のH−NMRスペクトルを比較すると、化合物(I)のH−NMRスペクトルでは、いずれの場合にも各ピークにおいて幅広なピークが観測された。このことからも、各々の化合物(6)がパラジウムに配位して化合物(I)を形成していることを確認することができる。
本発明の化合物(I)の平均粒径は、動的光散乱法(DLS)により測定することができる。DLSにより測定された化合物(I)の平均粒径は、化合物(6)の種類、前記工程5の反応条件等により変化するが、約20〜500nmである。
(本発明の化合物(I)の物性)
1.紫外−可視吸収スペクトル
化合物(I)とその配位子である化合物(6)を、それぞれ別々にジクロロメタンに溶解させて、紫外−可視吸収スペクトルを測定すると、化合物(I)では、その配位子である化合物(6)の吸収極大波長と比較して約40nm〜60nm程度長波長シフトする。これは、化合物(6)がパラジウムに配位したことにより、配位子上の電子が金属原子やその隣接する配位子と電子的な相互作用を持ったことによるものであると推定される。
2.蛍光スペクトル
化合物(I)とその配位子である化合物(6)を、それぞれ別々にジクロロメタンに溶解させて、蛍光スペクトルを測定すると、化合物(6)では、400〜600nm付近にかけて強い蛍光を示すが、化合物(I)では、殆ど消光する。これは、化合物(6)がパラジウムに配位したことによるものであると推定される。
3.サイクリックボルタモグラム
化合物(I)とその配位子である化合物(6)のサイクリックボルタモグラムを測定すると、多段階の可逆的な酸化−還元波が観測される。
具体的には、化合物(Ie)とその配位子である化合物(6e)のサイクリックボルタモグラム及び微分パルスボルタモグラム(V vs. フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc)系)を測定したところ、後述する実施例5に示されるように、配位子である化合物(6e)では、不可逆な酸化波が観測され、化合物(Ie)では、多段階の可逆的な酸化−還元波が観測された(図21及び図22参照)。
化合物(6e)で観測された不可逆な酸化波は、主としてイミン部位に起因するものであり、パラジウムと錯形成することでイミン部位における不可逆な反応が抑えられたことにより、可逆なプロファイルが得られたものと推定される。
4.透過型電子顕微鏡(TEM)測定
後述する実験例2に示されるように、高分子量のポリマーとして得られた化合物(Ie)のジクロロメタン溶液をカーボンメッシュ基板にドロップし、それを濾紙で吸い取ることにより、基板に吸着した化合物(Ie)の構造、形態の視覚化を試みた。その結果、化合物(Ie)の一次元のポリマー鎖が基板上で二次元状に広がりながら幾何学模様を形成している様子が確認された(図23参照)。このように、一次元のポリマー鎖が幾何学構造を形成する例は、これまでに知られておらず、化合物(I)の高分子量体に特異的な性質である。
5.円偏光二色性(CD)スペクトル
光学活性配位子である化合物(6)を用いて本発明の化合物(I)を合成すると、化合物(I)にらせんのキラリティーを誘起することが可能であり、らせんのキラリティーが誘起されたか否かは、CDスペクトルを測定することにより確認することができる。
具体的には、後述する実施例2及び3に示されるように、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン又は(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン由来の光学活性配位子である化合物(6b)又は化合物(6c)を用いて合成した化合物(Ib)又は化合物(Ic)のCDスペクトルを測定したところ、それぞれ430nm付近にフェニレン架橋ビピロール部位の長軸方向間のねじれに由来すると推定される負のファーストコットン効果と正のファーストコットン効果が観測され、また、380nm付近に正のセカンドコットン効果と負のセカンドコットン効果が観測された(図8及び図14参照)。
励起子CDキラリティー法(例えば、原田宣之,有機合成化学協会誌,第51巻,第6号,p. 563-576 (1993)等参照)によれば、化合物(Ib)及び化合物(Ic)は、それぞれ図9に示されるようならせんのキラリティー(すなわち、Mヘリシティー及びPヘリシティー)を有することが推定される。
このことから、配位子である化合物(6)中の側鎖への点不斉の導入により化合物(I)のねじれ方向を一方向に偏らせることが可能である。
以上のように、本発明によれば、配位子である化合物(6)中の側鎖置換基の選択(若しくは調整)により、種々の分子量や種々のユニークな物理化学的特性(電子的特性、光学的特性等)を有する化合物(I)を自在に合成することが可能である。また、化合物(I)は、フィルム状の固体として得られることから、プラスチック、フィルム、繊維等に加工することが可能であり、新規な機能性材料として提供することが可能である。
以下に参考例、実施例及び実験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
反応は、Merck 60 F254 シリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。
H及び13C−NMRスペクトルは、Bruker AVANCE 400 を用い、内部標準として、テトラメチルシランを用いて、重クロロホルム又は重ジメチルスルホキシドを溶媒として測定した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット、br=ブロード)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
吸収スペクトルは、JASCO ETC−717温度/撹拌調節器を装着したJASCO V−670 UV/VIS/NIRを用いて測定した。蛍光スペクトルは、JASCO ETC−273T温度/撹拌調節器を装着したJASCO FP−6500を用いて測定した。フーリエ変換赤外スペクトルは、JSCO FT/IR 4200を用いて測定した。フーリエ変換質量分析は、Thermo Fisher Scientific LTQ Orbitrap Discoveryを用いて測定した。CDスペクトルは、JASCO J−820Fを用いて測定した。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)による分析は、全てサンプル溶液をナカライテスク株式会社製のコスモナノフィルターS(Pore Size 0.45μm)若しくはSartorius社製のミニザルトRC15(Pore Size 0.45μm)を用いてろ過した後、温度293Kでクロロホルム、JASCO Type PU−2089ポンプ、MD−2018フォトダイオードアレイ検出器、Co−2060カラムオーブンとTOSOH TSKgel G4000HXLカラムとTOSOH TSKgel G4000HHRカラムを繋いだカラムを用いて測定を行った。また分子量較正曲線にはPressure Chemical社製ポリスチレンスタンダード(分子量906、1300、2000、4000、13502、25000、50000、1230000g/mol)を用いた。
サイクリックボルタンメトリーは、ALS 1210A electrochemical analyzerを測定装置として用い、作用電極にガラス状炭素、カウンター電極に白金ワイヤー、参照電極にAg/Ag(0.01M AgNO,0.1M n-BuNClO(アセトニトリル溶媒))をそれぞれ用いた。測定電位はFc/Fcを外部標準物質として用いて調整した。
動的光散乱法による測定は全て、サンプル溶液をナカライテスク株式会社製のコスモナノフィルターS(Pore Size 0.45μm)もしくはSartorius社のミニザルトRC15(Pore Size 0.45μm)を用いてろ過した後、25mWヘリウム−ネオンレーザーを備えた大塚電子のELS−Z2を用いて行った。解析は全てCumulant法で行った。
X線解析データは、X−ray Bruker SMART APEX II Ultra CCD回折装置を用いて集めた。経験的吸収補正はSADABS programを用いて行った。構造は直接的手法とSHELXTL 97 program packageを用いたF2上のフルマトリックス最小二乗法計算によってリファインすることで解いた。水素原子は計算によって付け加えた。
高分解能走査透過分析電子顕微鏡(STEM)測定は、JEOL2100Fを用いて測定を行った。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約30℃を示す。%は、収率についてはmol/mol%を、その他については特に断らない限り重量%を示す。
以下の実施例において、化合物(Ia)、化合物(Ib)、化合物(Ic)、化合物(Id)、化合物(Ie)及び化合物(If)の合成に使用した原料化合物は、自体公知の方法(例えば、Setsune, J. et al., Tetrahedron Lett., 2006, 47, p.7541-7544;Imamura, K. et al., ChemPhotoChem, 2017, 1, p.427-431及びそのSupporting Information等参照)、又はそれに準ずる方法に従って製造することができる。また、当該原料化合物の合成に用いる1,4−ジヨードベンゼン(東京化成工業株式会社製)、2,5−ジヨードチオフェン(Sigma−Aldrich社製)、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(東京化成株式会社製)、ベンジルアミン(ナカライテスク株式会社製)、n−ヘキシルアミン(ナカライテスク株式会社製)、ドデシルアミン(東京化成株式会社製)、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン(東京化成株式会社製)、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン(東京化成株式会社製)、トリフェニルホスフィン(和光純薬工業株式会社製)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)及び酢酸パラジウム(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)は、市販品をそのまま使用した。その他の原料化合物は、市販品をそのまま使用するか、又は自体公知の方法若しくはそれに準ずる方法に従って製造することができる。
メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサンは、試薬グレードのものを購入し、そのまま用いた。その他の試薬は、市販品をそのまま使用するか、又は必要に応じて精製してから用いた。
参考例1
1,4−ビス(5−ベンジルイミノメチル−3,4−ジエチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6a))の合成
(1)3,4−ジエチル−5−エトキシカルボニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキソボロラン−2−イル)ピロール(化合物(1a))の合成
(i)2−エトキシカルボニル−3,4−ジエチル−5−ヨードピロールの合成
1Lの1口ナスフラスコに2−エトキシカルボニル−3,4−ジエチルピロール(20.0g,0.10mol)、炭酸水素ナトリウム(23.2g,0.28mol,2.8eq.)、ヘキサン(80mL)、水(400mL)及び撹拌子を入れ、室温で撹拌した。一方で、300mL三角フラスコにヨウ化カリウム(34.0g,0.20mol,2.0eq.)、ヨウ素(26.0g,0.20mol,2.0eq.)及び水(260mL)を加え、加熱撹拌することによりヨウ素を完全に溶かした溶液を作成し、500mLの滴下漏斗に移した。この滴下漏斗を前記1Lの1口フラスコに取り付け、30分かけて滴下した。滴下終了後、滴下漏斗から塩化カルシウム管付の還流管に付け替え、80℃で終夜加熱撹拌を行った。その後ヘキサンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒留去し、2−エトキシカルボニル−3,4−ジエチル−5−ヨードピロール(10.4g,収率:63%)を黄色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.90 (bs, 1H), 4.32 (q, 2H, J= 7.2 Hz), 2.76 (q, 2H, J = 7.5 Hz), 2.39 (q, 2H, J = 7.5 Hz), 1.36 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 1.14 (t, 3H, J = 7.6 Hz), 1.08 (t, 3H, J = 7.6 Hz).
(ii)3,4−ジエチル−5−エトキシカルボニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキソボロラン−2−イル)ピロール(化合物(1a))の合成
200mLの2口ナスフラスコに前記工程(i)で得られた2−エトキシカルボニル−3,4−ジエチル−5−ヨードピロール(9.7g,30.0mmol)、PdCl(PPh(210.6mg,0.3mmol,0.01eq.)及び撹拌子を入れ、セプタムを付けた3方コック及び3方コック付の還流管を取り付け、真空乾燥、及びアルゴン置換を行った。その後、無水THF(100mL)、ピナコールボラン(5.2mL,36.0mmol,1.2eq.)、トリエチルアミン(10.5mL,75.0mmol,2.5eq.)をそれぞれシリンジを用いて加え、60℃で3時間加熱撹拌を行った。反応液を溶媒留去後、残渣をヘキサンで濾過、洗浄し、化合物(1a)を褐色オイルとして得た。化合物(1a)は、精製はすることなく、そのまま次の反応に用いた。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 9.11 (bs, 1H), 4.32 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 2.74 (q, 2H, J = 7.5 Hz), 2.64 (q, 2H, J = 7.6 Hz), 1.36 (t, 3H, J = 7.0 Hz), 1.31 (s, 12H), 1.14 (t, 3H, J = 7.8 Hz), 1.12 (t, 3H, J = 7.4 Hz).
(2)1,4−ビス(3,4−ジエチル−5−エトキシカルボニルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(3a))の合成(工程1)
100mLの2口ナスフラスコに前記(1)で得られた化合物(1a)(10.8mmol,2.1eq.)、1,4−ジヨードベンゼン(1.70g,5.12mmol)、酢酸パラジウム(138.0mg,0.61mmol,0.043eq.)、トリフェニルホスフィン(408mg,1.56mmol,0.11eq.)及び撹拌子を入れ、セプタムを付けた3方コック、及び3方コック付の還流管を取り付け、真空乾燥、アルゴン置換を行った。アルゴンバブリングによって残留酸素を除いたDMF(35mL)に炭酸カリウム(1.91g,13.8mmol,2.7eq.)の水溶液(7mL)をシリンジを用いて加えた。反応混合物を90℃で終夜加熱撹拌を行い、室温に戻した後、水を加えて固体を析出させた。固体をろ取した後、該固体をジクロロメタンに溶かし、パラジウムブラック等を濾過によって取り除いた。ろ液(ジクロロメタン溶液)を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣をエタノールで洗浄し、濾過することにより標題化合物(化合物(3a))(1.24g,収率:49%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.80 (bs, 2H), 7.53 (s, 4H), 4.35 (q, 4H, J = 7.2 Hz), 2.81 (q, 4H, J = 7.5 Hz), 2.62 (q, 4H, J = 7.6 Hz), 1.38 (t, 6H, J = 7.0 Hz), 1.21 (dt, 12H, J = 7.2 Hz).
(3)1,4−ビス(3,4−ジエチル−1H−ピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(4a))の合成(工程2)
200mlナスフラスコに前記(2)(工程1)で得られた1,4−ビス(3,4−ジエチル−5−エトキシカルボニルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(3a))(3.56g,7.7mmol)、水酸化ナトリウム(1.9g,47.5mmol,6eq.)及びエチレングリコール(109mL)を加え、アルゴン置換した。該混合物を、撹拌しながら3時間、200℃以上で加熱還流した。その後、反応混合物を室温に戻してから水を加えて固体を析出させた。固体をろ取し、水洗することにより標題化合物(化合物(4a))(2.4g,収率:99%)を黄色結晶として得た。
(4)1,4−ビス(3,4−ジエチル−5−ホルミルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(5a))の合成(工程3)
試験管に撹拌子をいれセプタムで蓋をした。該試験管の真空乾燥、及びアルゴン置換を行い、そこに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(1.2mL,1.1g,15.6mmol,10eq.)をシリンジで加えた。その後、前記混合物に氷浴中で塩化ホスホリル(1.45mL(2.4g),15.6mmol,10eq.)を滴下し、室温で30分間撹拌することにより、黄色オイルを得た(Vilsmeier試薬)。50mLの2口ナスフラスコに前記(3)(工程2)で得られた化合物(4a)(500mg,1.56mmol)及び撹拌子を入れ、真空乾燥、アルゴン置換を行った。そこへジクロロエタン(15mL)を加え、氷浴により0℃まで冷却後、先に合成したVilsmeier試薬を1,2−ジクロロエタン(5mL)に溶解させて加えた。更に1,2−ジクロロエタン(5mL)で試験管を共洗いし、この溶液もまた50mLの2口ナスフラスコ中の反応液に加えた。反応混合物を室温で6時間撹拌した後、炭酸カリウム水溶液で反応を停止させた。反応液をジクロロメタンにより抽出後、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥し、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、残渣に水を加え濾過し、標題化合物(化合物(5a))(536.3mg,収率:91%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 9.67 (s, 2H), 9.04 (bs, 2H), 7.58 (s, 4H), 2.81 (q, 4H, J = 7.6 Hz), 2.65 (q, 4H, J = 7.6 Hz), 1.31 (t, 6H, J = 7.6 Hz), 1.21 (t, 6H, J = 7.6 Hz);
13C NMR (100 MHz, CDCl3, 293 K):δ 177.23, 138.90, 136.02, 131.56, 128.74, 127.79, 124.90, 17.75, 17.32, 17.13, 15.92;
IR (ATR): 3300, 3264, 3054, 2965, 2924, 2872, 2809, 2361, 1629, 1442, 1384, 1337, 1287, 1265, 1237, 1197, 1090, 892, 735, 704, 629, 588 cm-1; Anal. Calcd for C24H28N2O2: C, 76.56; H, 7.50; N, 7.29 Found: C, 75.89; H, 7.14; N, 7.29.
(5)1,4−ビス(5−ベンジルイミノメチル−3,4−ジエチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6a))の合成(工程4−1)
25mLの1口ナスフラスコに前記(4)(工程3)で得られた化合物(5a)(100mg,0.26mmol)、ベンジルアミン(0.6mL,5.5mmol,21eq.)、トリフルオロ酢酸(4滴)、メタノール(10mL)、ジクロロメタン(0.2mL)及び撹拌子を入れ、室温で終夜撹拌した。析出した茶色の固体をろ取することにより、標題化合物(化合物(6a))(139.1mg,収率:96%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.27 (s, 2H), 7.49 (s, 4H), 7.35-7.23 (m, 10H), 4.73 (s, 4H), 2.67 (q, 4H, J = 7.5 Hz), 2.63 (q, 4H, J = 7.6 Hz) 1.24 (t, 6H, J = 7.6 Hz), 1.21 (t, 6H, J = 7.4 Hz);
FT-ESI-MS: m/z calcd for (C38H42N4+ H+) 555.35, found 555.3480.
参考例2
1,4−ビス((R)−1−フェニルエチルイミノメチル−3,4−ジエチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6b))の合成(工程4−2)
試験管に、参考例1の(4)(工程3)で得られた化合物(5a)(100mg,0.26mmol)、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン(660μl(0.63g),5.19mmol,20eq.)及び撹拌子を入れ、室温で終夜撹拌した。その後、反応混合物を真空乾燥して、残留した(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンを完全に除去することにより、標題化合物(化合物(6b))(142.8mg,収率:93%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.24 (s, 2H), 7.52 (s, 4H), 7.41-7.21 (m, 10 H), 4.48 (q, 2H, J = 6.4 Hz), 2.64 (dq, 4H, J = 7.6 Hz), 1.57 (d, 6H, J = 6.8 Hz), 1.219 (t, 6H, J = 7.6 Hz), 1.199 (t, 6H, J = 7.8 Hz) ;
13C NMR (100 MHz, CDCl3, 293 K): δ 148.12, 145.37, 131.39, 128.34, 127.12, 126.71, 126.55, 125.83, 123.40, 69.14, 24.59, 17.56, 17.47, 17.05, 16.16;
FT-ESI-MS: m/z calcd for (C40H46N4 + H+) 583.83, found 583.3796;
IR (cm-1, ATR): 3053.73, 2980.45, 2920.66, 1468.53, 1421.28, 1264.11, 1236.15, 1089.58, 893.844, 732.817, 703.89, 629.644, 574.683, 563.112.
参考例3
1,4−ビス((S)−1−フェニルエチルイミノメチル−3,4−ジエチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6c))の合成(工程4−3)
試験管に、参考例1の(4)(工程3)で得られた化合物(5a)(100mg,0.26mmol)、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン(660μl(0.63g),5.19mmol,20eq.)及び撹拌子を入れ、室温で終夜撹拌した。その後、反応混合物を真空乾燥して、残留した(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンを完全に除去することにより、標題化合物(化合物(6c))(129mg,収率:85%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.23 (s, 2H), 7.53 (s, 4H), 7.41-7.21 (m, 10 H), 4.48 (q, 2H, J = 6.4 Hz), 2.64 (q, 8H, J = 7.5 Hz), 1.58 (d, 6H, J = 6.4 Hz), 1.22 (t, 6H, J = 7.0 Hz), 1.20 (t, 6H, J = 7.2 Hz) ;
13C NMR (100 MHz, CDCl3, 293 K): δ 148.23, 145.40, 131.40, 128.34, 127.09, 126.70, 126.55, 125.84, 123.32, 69.21, 24.62, 17.56, 17.49, 17.06, 16.18;
FT-ESI-MS: m/z calcd for (C40H46N4+ H+) 583.83, found 583.3797;
IR (cm-1, ATR): 3053.73, 2980.45, 2920.66, 1469.49, 1264.11, 1236.15, 1089.58, 893.844, 732.817, 703.89, 630.609, 581.433, 561.184.
参考例4
1,4−ビス(3,4−ジエチル−5−n−ヘキシルイミノメチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6d))の合成(工程4−4)
25mLの1口ナスフラスコに、参考例1の(4)(工程3)で得られた化合物(5a)(235.3mg,0.62mmol)、n−ヘキシルアミン(1.4mL(1.1g),10.6mmol,17eq.)、及び撹拌子を入れ、室温で5時間撹拌した。その後、反応混合物に水を加えて、固体を析出させ、該固体をろ取することにより、標題化合物(化合物(6d))(313.0mg,収率:94%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.12 (s, 2H), 7.51 (s, 4H), 3.52 (t, 4H, J = 6.8 Hz), 2.64 (q, 8H, J = 7.5 Hz), 1.64 (m, 4H), 1.39-1.31 (m, 12H), 1.22 (t, 6H, J = 7.6 Hz), 1.21 (t, 6H, J = 7.6 Hz), 0.89 (t, 6H, J = 6.8 Hz);
FT-ESI-MS: m/z calcd for (C36H54N4 + H+) 543.44, found 543.4424.
参考例5
1,4−ビス(3,4−ジエチル−5−n−ドデシルイミノメチルピロール−2−イル)ベンゼン(化合物(6e))の合成(工程4−5)
50mLの1口ナスフラスコに、参考例1の(4)(工程3)で得られた化合物(5a)(500mg,1.33mmol)、n−ドデシルアミン(493.1mg,2.66mmol,2.0eq.)、水(10.5mL)、ジクロロメタン(13.8mL)及び撹拌子を入れ、室温で終夜撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒留去した。ジクロロメタン、メタノールを加えて再沈殿させ、析出してきた固体をろ取することにより、標題化合物(化合物(6e))(711.3mg,収率:75%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.12 (s, 2H), 7.51 (s, 4H), 3.52 (t, 4H, J = 7.0 Hz), 2.64 (q, 8H, J = 7.5 Hz), 1.64 (m, 4H), 1.32-1.19 (m, 48H), 0.88 (t, 6H, J = 6.8 Hz);
13C NMR (100 MHz, CDCl3, 293 K): δ 149.39, 131.36, 131.05, 130.79, 127.00, 125.91, 123.24, 61.42, 31.93, 31.41, 29.68, 29.66, 29.51, 29.37, 27.33, 22.70, 17.60, 17.50, 17.04, 16.18, 14.14;
FT-ESI-MS: m/z calcd for (C48H78N4 + H+) 711.63, found 711.6291;
IR (cm-1, ATR): 3054.69, 2981.41, 2921.63, 1625.7, 1468.53, 1264.11, 1236.15, 1089.58, 893.844, 732.817, 703.89, 629.644, 579.504, 566.969.
参考例6
2,5−ビス(3,4−ジエチル−5−n−ヘキシルイミノメチルピロール−2−イル)チオフェン(化合物(6f))の合成(工程4−6)
25mLのナスフラスコに撹拌子と、自体公知の方法(Imamura, K. et al., ChemPhotoChem, 2017, 1, 427-431及びそのSupporting Information)に従って合成した5,5’−(チオフェン−2,5−ジイル)ビス(3,4−ジエチル−1H−ピロール−2−カルボアルデヒド)(化合物(5b))(100mg,0.26mmol)、n−ヘキシルアミン(0.52mL,3.92mmol)及び水(7.5mL)を加えた。室温で19時間撹拌後、吸引ろ過をし、n−ヘキサンで洗浄することにより、標題化合物(化合物(6f))(24mg,収率:16%)を深緑黄色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 293 K): δ 8.10 (s, 2H, imine-H), 7.06 (s, 2H, thiophene-H), 5.56 (br, 2H, NH), 3.53 (t, J = 6.9 Hz, 4H, hexyl-CH2), 2.67 (q, J = 7.6 Hz, 4H, CH2), 2.61 (q, J = 7.6 Hz, 4H, CH2), 1.68-1.61 (m, 4H, hexyl), 1.40-1.31 (m, 12H, hexyl), 1.20 (t, J = 7.6, 12H, CH3), 0.90 (t, J = 6.9, 6H, hexyl-CH3);
IR (ATR): 3082, 2959, 2925, 2857, 1618, 1558, 1460, 1440, 1373, 1350, 1291, 1247, 1223 cm-1;
FAB-MS: m/z calcd for [M+H]+(C34H52N4S) 548.39, found 550.8475.
実施例1
化合物(6a)−Pdポリマー(化合物(Ia))の合成
5mLのサンプル瓶に、化合物(6a)(30.5mg,0.055mmol)、酢酸パラジウム(24.6mg,0.11mmol,2.0eq.)を加え、ジクロロメタン(2.8mL)に溶かし、撹拌子を入れ室温で約54時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム水溶液を加えて、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(Ia))(32.0mg)を赤橙色フィルム状固体として得た。
図1の(a)と(b)に化合物(6a)と化合物(Ia)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)のチャートを示す。図1によれば、化合物(Ia)の1H NMRスペクトル(b)では、各ピークにおいて、化合物(6a)よりも幅広なピークが観測されたことから、パラジウムと錯形成して化合物(Ia)が生成していることを確認することができた。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC)による分子サイズの測定)
錯形成前後における分子サイズの変化を確認するため、化合物(6a)及び化合物(Ia)のSEC−HPLC測定を下記のプロファイルにて行った。
<SEC−HPLCプロファイル>
カラム:TOSOH TSKgel G4000HXL+TOSOH TSKgel G4000HHR
溶離液:クロロホルム
温度:298K
モニター波長:364.3nm(化合物(6a))、420nm(化合物(Ia))
その結果、化合物(6a)は、約30分にシャープで最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(Ia)は、約14分にピークが観測され、化合物(6a)に比べ、顕著に保持時間が短縮した。また、化合物(Ia)では、上記ピークの他には別のピークが検出されなかったことから、化合物(Ia)の化合物(6a)−パラジウム結合はカラム内においても解離することなく、分子サイズを保ったまま溶出していることが分かった。
このことから、化合物(Ia)における配位子(化合物(6a))とパラジウムの結合力は、従来の有機−金属配位ポリマーと比較して、顕著に強固であり、安定な錯体が形成されていることが確認された。
(SEC−HPLC測定結果から化合物(Ia)の分子量の算出方法)
分子量906、1300、2000、4000、13502、25000、50000及び123000のポリスチレンスタンダードについてクロロホルムを溶離液としてSEC−HPLC測定を行い、それぞれの分子量を縦軸に、保持時間を横軸にプロットした較正曲線(検量線)を作成した。この検量線を用いて、化合物(Ia)について外挿法による分子量計算を行った。
その結果、化合物(Ia)の数平均分子量(Mn)は、5112g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、68205g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N;式(I)におけるnに相当)は103.5量体であり、分散度(Mw/Mn)は、13.3413であった。
(化合物(6a)と化合物(Ia)の紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
化合物(6a)と化合物(Ia)をそれぞれジクロロメタンに溶解させて紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図2(紫外−可視スペクトル)及び図3(蛍光スペクトル)に示した。
図2によれば、化合物(6a)は、367.5nmにフェニレン架橋ビピロール部分の長軸方向に由来する極大吸収を示したのに対し、化合物(Ia)では、その極大吸収が418.5nmにまで長波長シフトした。このことは、化合物(6a)がパラジウムに配位したことにより、配位子上の電子がパラジウムやその隣接する配位子(化合物(6a))と電子的な相互作用を持ったことによるものと推定される。
図3によれば、化合物(6a)は、400〜600nmにかけて強い蛍光を発したのに対し、化合物(Ia)では、殆ど消光した。このことは、化合物(6a)がパラジウムに配位したことによるものと推定される。
(動的光散乱法(DLS)測定による化合物(Ia)の粒径測定)
化合物(Ia)の粒径は、化合物(Ia)のクロロホルム溶液を細孔径0.45μmのフィルターに通してダストを除去した後、動的光散乱法により測定した。その結果、化合物(Ia)の粒径は、平均87.7nmであった。
実施例2
化合物(6b)−Pdポリマー(化合物(Ib))の合成
5mLのサンプル瓶に、化合物(6b)(32.1mg,0.055mmol)、酢酸パラジウム(24.6mg,0.11mmol,2.0eq.)を加え、ジクロロメタン(2.8mL)に溶かし、撹拌子を入れ室温で約54時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム水溶液を加えて、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(Ib))(34.7mg)を茶色フィルム状固体として得た。
図4の(a)と(b)に化合物(6b)と化合物(Ib)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)のチャートを示す。図4によれば、化合物(Ib)の1H NMRスペクトル(b)では、各ピークにおいて、化合物(6b)よりも幅広なピークが観測されたことから、パラジウムと錯形成して化合物(Ib)が生成していることを確認することができた。
(SEC−HPLC測定による化合物(Ib)の分子量の算出)
モニター波長を、424nm(化合物(6b))及び406.9nm(化合物(Ib))に変更した以外は、実施例1と同じプロファイルにて、化合物(6b)及び化合物(Ib)のそれぞれについて、SEC−HPLC測定を行った。その結果、化合物(6b)は、約34分に最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(Ib)は、約19分にピークが観測された。
実施例1と同様、検量線に基づき、保持時間から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N;式(I)におけるnに相当)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。その結果、化合物(Ib)の数平均分子量(Mn)は、180g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、3122g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N)は4.5量体であり、分散度(Mw/Mn)は、17.3414であった。
(化合物(6b)と化合物(Ib)の紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
化合物(6b)と化合物(Ib)をそれぞれジクロロメタンに溶解させて紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図5(紫外−可視スペクトル)及び図6(蛍光スペクトル)に示した。
図5によれば、化合物(6b)は、365nmに極大吸収を示したのに対し、化合物(Ib)では、その極大吸収が405.5nmにまで長波長シフトし、実施例1と同様の挙動が観測された。
図6によれば、化合物(6b)は、400〜600nmにかけて強い蛍光を発したのに対し、化合物(Ib)では、殆ど消光し、実施例1と同様の挙動が観測された。
(化合物(6b)と化合物(Ib)のCDスペクトル測定)
化合物(6b)と化合物(Ib)をそれぞれジクロロメタンに溶解させてCDスペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図7及び図8に示した。
図7によれば、化合物(6b)では、弱いCDシグナルが観測され、350nm付近に光学活性部位に由来する負のファーストコットン効果が観測された。一方、図8によれば、化合物(Ib)では、非常に強いCDシグナルが観測され、430nm付近にフェニレン架橋ビピロール部分の長軸方向間のねじれに由来すると考えられる負のファーストコットン効果が観測され、また、380nm付近に正のセカンドコットン効果が観測された。
励起CDキラリティー法によれば、図8の結果から、化合物(Ib)は、図9に示されるようなMヘリシティーを持つことが予想された。このことから、配位子の側鎖への点不斉の導入によって、化合物(Ib)のねじれ方向(すなわち、らせんのキラリティー)を一方向に偏らせることが可能であることが分かった。
実施例3
化合物(6c)−Pdポリマー(化合物(Ic))の合成
5mLのサンプル瓶に、化合物(6c)(32.1mg,0.055mmol)、酢酸パラジウム(24.6mg,0.11mmol,2.0eq.)を加え、ジクロロメタン(2.8mL)に溶かし、撹拌子を入れ室温で約54時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム水溶液を加えて、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(Ic))(20.1mg)を緑色フィルム状固体として得た。
図10の(a)と(b)に化合物(6c)と化合物(Ic)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)のチャートを示す。図10によれば、化合物(Ic)の1H NMRスペクトル(b)では、各ピークにおいて、化合物(6c)よりも幅広なピークが観測されたことから、パラジウムと錯形成して化合物(Ic)が生成していることを確認することができた。
(SEC−HPLC測定による化合物(Ic)の分子量の算出)
モニター波長を、424nm(化合物(6c))及び409.1nm(化合物(Ic))に変更した以外は、実施例1と同じプロファイルにて、化合物(6c)及び化合物(Ic)のそれぞれについて、SEC−HPLC測定を行った。その結果、化合物(6c)は、約34分に最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(Ic)は、約19分にピークが観測された。
実施例1と同様、検量線に基づき、保持時間から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N;式(I)におけるnに相当)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。その結果、化合物(Ic)の数平均分子量(Mn)は、174g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、2439g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N)は3.5量体であり、分散度(Mw/Mn)は、14.0003であった。
(化合物(6c)と化合物(Ic)の紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
化合物(6c)と化合物(Ic)をそれぞれジクロロメタンに溶解させて紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図11(紫外−可視スペクトル)及び図12(蛍光スペクトル)に示した。
図11によれば、化合物(6c)は、366.5nmに極大吸収を示したのに対し、化合物(Ic)では、その極大吸収が402.5nmにまで長波長シフトし、実施例1と同様の変化が観測された。
図12によれば、化合物(6c)は、400〜600nmにかけて強い蛍光を発したのに対し、化合物(Ic)では、殆ど消光し、実施例1と同様の変化が観測された。
(化合物(6c)と化合物(Ic)のCDスペクトル測定)
化合物(6c)と化合物(Ic)をそれぞれジクロロメタンに溶解させてCDスペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図13及び図14に示した。
図13によれば、化合物(6c)では、弱いCDシグナルが観測され、350nm付近に光学活性部位に由来する正のファーストコットン効果が観測された。一方、図14によれば、化合物(Ic)では、非常に強いCDシグナルが観測され、430nm付近にフェニレン架橋ビピロール部分の長軸方向間のねじれに由来すると考えられる正のファーストコットン効果が観測され、また、380nm付近に負のセカンドコットン効果が観測された。
励起CDキラリティー法によれば、実施例2と同様に、図14の結果から、化合物(Ic)は、図9に示されるようなPヘリシティーを持つことが予想された。
実施例4
化合物(6d)−Pdポリマー(化合物(Id))の合成
5mLのサンプル瓶に、化合物(6d)(30mg,0.055mmol)、酢酸パラジウム(24.6mg,0.11mmol,2.0eq.)を加え、ジクロロメタン(2.8mL)に溶かし、撹拌子を入れ室温で約54時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム水溶液を加えて、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(Id))(26.8mg)を茶色フィルム状固体として得た。
図15の(a)と(b)に化合物(6d)と化合物(Id)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)のチャートを示す。図15によれば、化合物(Id)の1H NMRスペクトル(b)では、各ピークにおいて、化合物(6d)よりも幅広なピークが観測されたことから、パラジウムと錯形成して化合物(Id)が生成していることを確認することができた。
(SEC−HPLC測定による化合物(Id)の分子量の算出)
モニター波長を、424nm(化合物(6d))及び413nm(化合物(Id))に変更した以外は、実施例1と同じプロファイルにて、化合物(6d)及び化合物(Id)のそれぞれについて、SEC−HPLC測定を行った。その結果、化合物(6d)は、約35分に最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(Id)は、15.8分にピークが観測された。
実施例1と同様、検量線に基づき、保持時間から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N;式(I)におけるnに相当)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。その結果、化合物(Id)の数平均分子量(Mn)は、1560g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、31843g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N)は49.2量体であり、分散度(Mw/Mn)は、20.4133であった。
(化合物(6d)と化合物(Id)の紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
化合物(6d)と化合物(Id)をそれぞれジクロロメタンに溶解させて紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図16(紫外−可視スペクトル)及び図17(蛍光スペクトル)に示した。
図16によれば、化合物(6d)は、364.5nmに極大吸収を示したのに対し、化合物(Id)では、その極大吸収が413.5nmにまで長波長シフトし、実施例1と同様の挙動が観測された。
図17によれば、化合物(6d)は、400〜600nmにかけて強い蛍光を発したのに対し、化合物(Id)では、殆ど消光し、実施例1と同様の挙動が観測された。
(動的光散乱法(DLS)測定による化合物(Id)の粒径測定)
化合物(Id)の粒径は、実施例1と同様、化合物(Id)のクロロホルム溶液を細孔径0.45μmのフィルターに通してダストを除去した後、動的光散乱法により測定した。その結果、化合物(Id)の粒径は、平均105.4nmであった。
実施例5
化合物(6e)−Pdポリマー(化合物(Ie))の合成
5mLのサンプル瓶に、化合物(6e)(39.1mg,0.055mmol)、酢酸パラジウム(24.6mg,0.11mmol,2.0eq.)を加え、ジクロロメタン(2.8mL)に溶かし、撹拌子を入れ室温で約54時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム水溶液を加えて、反応を停止させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒留去し、残渣をメタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(Ie))(28.3mg)を赤橙色フィルム状固体として得た。
図18の(a)と(b)に化合物(6e)と化合物(Ie)の1H NMR (400 MHz, CDCl3, 298 K)のチャートを示す。図18によれば、化合物(Ie)の1H NMRスペクトル(b)では、各ピークにおいて、化合物(6e)よりも幅広なピークが観測されたことから、パラジウムと錯形成して化合物(Ie)が生成していることを確認することができた。
(SEC−HPLC測定による化合物(Ie)の分子量の算出)
モニター波長を、424nm(化合物(6e))及び420nm(化合物(Ie))に変更した以外は、実施例1と同じプロファイルにて、化合物(6e)及び化合物(Ie)のそれぞれについて、SEC−HPLC測定を行った。その結果、化合物(6e)は、約23.5分に最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(Ie)は、13.4分にピークが観測された。
実施例1と同様、検量線に基づき、保持時間から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N;式(I)におけるnに相当)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。その結果、化合物(Ie)の数平均分子量(Mn)は、18001g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、105812g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N)は、129.7量体であり、分散度(Mw/Mn)は、5.8780であった。
(化合物(6e)と化合物(Ie)の紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
化合物(6e)と化合物(Ie)をそれぞれジクロロメタンに溶解させて紫外−可視スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した(温度:298K)。測定結果を図19(紫外−可視スペクトル)及び図20(蛍光スペクトル)に示した。
図19によれば、化合物(6e)は、365nmに極大吸収を示したのに対し、化合物(Ie)では、その極大吸収が414.5nmにまで長波長シフトし、実施例1と同様の挙動が観測された。
図20によれば、化合物(6e)は、400〜600nmにかけて強い蛍光を発したのに対し、化合物(Ie)では、殆ど消光し、実施例1と同様の挙動が観測された。
(動的光散乱法(DLS)測定による化合物(Ie)の粒径測定)
化合物(Ie)の粒径は、化合物(Ie)のクロロホルム溶液を細孔径0.45μmのフィルターに通してダストを除去した後、動的光散乱法により測定した。その結果、化合物(Ie)の粒径は、平均371.6nmであった。
(化合物(6e)と化合物(Ie)のサイクリックボルタモグラム及び微分パルスボルタモグラム測定)
化合物(6e)と化合物(Ie)のサイクリックボルタモグラム及び微分パルスボルタモグラム(V vs.Fc/Fc)を測定し、それぞれの電気化学的性質について調査した(図21、図22及び表1参照)。図21及び図22によれば、化合物(6e)では不可逆な酸化波が観測された(図21の(a)及び図22の(a))のに対し、図22によれば、化合物(Ie)では0.347〜0.565Vに多段階の可逆的な酸化-還元波が観測された(図21の(b)及び図22の(b))。
化合物(6e)で観測された不可逆なレドックスは主としてイミン部位によるものと考えられ、パラジウムと錯形成することでイミン部位における不可逆な反応が抑えられたことにより、可逆なプロファイルが得られたと推定される。微分パルスボルタモグラムより求めた化合物(6e)と化合物(Ie)の中点電位(すなわち、半波電位;E1/2 V)(V vs.Fc/Fc)は、化合物(6e)が0.776Vであり、化合物(Ie)が0.328、0.496及び0.762Vであった。
一方、リファレンスとして酢酸パラジウムのみでも同様にフェロセン/フェロセニウム系でサイクリックボルタモグラムを測定したところ、酢酸パラジウムでは酸化側にも還元側にも特徴的なピークは観測されなかった。このことから、化合物(Ie)がユニット間で電子的な相互作用を有するポリマーであることが示唆された。
実施例6
化合物(6f)−Pdポリマー(化合物(If))の合成
5mLのサンプル瓶に撹拌子と、2,5−ビス(3,4−ジエチル−5−n−ヘキシルイミノメチルピロール−2−イル)チオフェン(化合物(6f))(14mg,0.026mmol)、酢酸パラジウム(11mg,0.051mmol)、ジクロロメタン(2mL)を加えた。室温で120時間撹拌後、0.18Mの炭酸カリウム水溶液(1mL)を添加し、撹拌した。反応液をジクロロメタンで抽出後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒除去後、メタノールで洗浄することにより、標題化合物(化合物(If))(14mg)を赤茶色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, C6D6, 293 K): δ 7.43 (br), 7.36 (br), 6.96 (br), 2.87-2.41 (br), 1.52 (s), 1.54-1.06 (br), 1.01-0.77 (br), 0.41 (s).
(SEC−HPLC測定による化合物(If)の分子量の算出)
モニター波長を、483nm(化合物(6f))及び438nm(化合物(If))に変更した以外は、実施例1と同じプロファイルにて、化合物(6f)及び化合物(If)のそれぞれについて、SEC−HPLC測定を行った。その結果、化合物(6f)は、29.2分に最も強度の強いピークが観測された。一方、化合物(If)は、18.8分にピークが観測された。
実施例1と同様、検量線に基づき、保持時間から数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N;式(I)におけるnに相当)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。その結果、化合物(If)の数平均分子量(Mn)は、6312g/mol(ポリスチレン換算)であり、重量平均分子量(Mw)は、12198g/mol(ポリスチレン換算)であり、重合度(N)は19量体であり、分散度(Mw/Mn)は、1.93であった。
実験例1
化合物(6)とパラジウム塩との反応による化合物(I)の合成における反応条件の最適化の検討
(試験方法)
化合物(6)として化合物(6d)を用い、パラジウム塩として酢酸パラジウムを用いて、下表2に示す各反応条件下で化合物(Id)を合成した。
表2のentry 1〜11に記載の反応条件下で合成して得られた化合物(Id)のSEC−HPLC測定結果から算出した各々の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、重合度(N)、分散度(Mw/Mn)並びに動的光散乱測定による粒径測定の結果を下記表3に示す。
表2及び表3の結果から、entry 10の反応条件を用いた場合(すなわち、酢酸パラジウムを化合物(6d)に対して2当量使用し、溶媒としてジクロロメタンを用い、反応液中の化合物(6d)濃度を20mMとした場合)に重合度が高く、且つ粒径の大きな化合物(Id)が得られることが分かった。
前記実施例1〜6の化合物(Ia)〜化合物(If)は、いずれも上記entry 10の反応条件に従い、化合物(6a)〜化合物(6f)と酢酸パラジウムとの反応により合成した。
実験例2
化合物(Ie)の透過型電子顕微鏡(TEM)測定による直接観察
高分子量で得られた化合物(Ie)を、TEM測定による直接観察を行った(図23)。
(試験方法)
希薄な化合物(Ie)のジクロロメタン溶液をカーボンメッシュ基板にドロップし、それをろ紙で吸い取ることにより、基板に吸着したポリマーの構造及び形態の視覚化を透過型電子顕微鏡(TEM)測定により試みた。
(結果)
図23によれば、化合物(Ie)の一次元ポリマー鎖が基板上で二次元上に広がりながら幾何学模様を形成している様子が確認された。このように、一次元のポリマー鎖が幾何学構造を形成する例はこれまでに知られておらず、本発明の化合物(I)に特徴的な興味深い性質であり、各種機能性材料への応用が期待される。
本発明によれば、イミノメチル置換ビピロール誘導体とパラジウム塩を有機溶媒中で混合し、室温で撹拌するという簡便な操作により、高い分子量を有し、粒径が大きく、強い結合力(すなわち、高い物理的強度)を有する金属−有機一次元配位ポリマーである化合物(I)を提供することができる。特に、高分子量の化合物(I)は、基板上で二次元的ネットワーク構造による幾何学模様を形成すると共に、多段階の可逆な酸化−還元波を示し、ユニークな電気化学的特性を示すことから、導電性薄膜、有機半導体薄膜、導電性プラスチック、導電性ナノファイバー等の導電性材料、液晶や音響配向性ナノファイバー等への応用が期待される。また、配位子である化合物(6)に光学活性な置換基を導入することにより、らせんのキラリティーを有する化合物(I)を得ることも可能であることから、新規な光学活性素材としての用途への応用も可能である。

Claims (8)

  1. 式(I):

    [式中、
    R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
    及びR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は下式:

    (式中、Xは、アルキレン基を示し、Yは、水素原子又はアルキル基を示し、mは、1〜10を示し、及びは、結合位置を示す。)で表される基を示し、
    、R’、R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基を示し、
    −A−は、エチニレン基、置換されていてもよいアリーレン基、又は置換されていてもよい2,5−チエニレン基を示し、並びに
    nは、2以上の整数を示す。]
    で表される高分子化合物。
  2. R及びR’が、共に水素原子又は同一のC1−6アルキル基である、請求項1に記載の高分子化合物、
  3. 、R’、R及びR’が、それぞれ独立して、C1−6アルキル基であり、且つ−A−が1,4−フェニレン基又は2,5−チエニレン基である、請求項1又は2に記載の高分子化合物。
  4. 及びR’が、共に同一の、フッ素原子及び式:

    (式中、X’が、エチレンであり、Y’が、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、m’が、2〜10であり、及びが、結合位置である。)で表される基からなる群より選択される1以上の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、アリール基又はC1−20アルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
  5. 及びR’が、共にフェニル基又は同一のC4−20アルキル基である、請求項4に記載の高分子化合物。
  6. nが2〜150である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物を含有する、機能性材料。
  8. 機能性材料が、導電性薄膜、有機半導体薄膜、導電性プラスチック、液晶及び音響配向性ナノファイバーからなる群より選択される、請求項7に記載の機能性材料。
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