JP2019119135A - ガスバリアフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂フィルムに付着していた微小異物が製膜後に脱落してできるピンホールや、製膜工程における熱的、機械的ストレスで発生するクラックがたとえ存在しても、高いガスバリア性を維持するガスバリアフィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも、樹脂フィルム基材上に蒸着膜を積層し、その上に接着層を介して蒸着膜と樹脂フィルム基材とをこの順に積層してなるガスバリアフィルム。また、樹脂フィルム基材の一方の面に蒸着膜を積層してなるガスバリア単フィルムを2枚製造する工程と、前記2枚のガスバリア単フィルムの蒸着膜面同士を対向させ、少なくとも一方の蒸着膜面に接着層を塗布後、前記2枚のガスバリア単フィルムをラミネート加工する工程と、を含むガスバリアフィルムの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアフィルムに関し、特に製造時のクラック、ピンホールによるガスバリア性能の低下が少ないガスバリアフィルムおよびその製造方法に関する。
ガスバリアフィルムは、例えば、食品などの包装に用いられる包装材料として活用されている。食品などの包装用途では、内容物の変質を防止することが求められている。具体的には、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、更に風味や鮮度を保持できることが求められる。このため、好適にガスバリア性積層体が用いられる。
またガスバリアフィルムは、例えば、医薬品などの包装に用いられる包装材料として活用されている。医薬品などの包装用途では、内容物の変質を防止することが求められている。具体的には、無菌状態を保持し、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。このため、好適にガスバリアフィルムが用いられる。
また、例えば、半導体ウェハなどの電子部品や精密部品の包装に用いられる包装材料としても活用されている。精密部品は、外部のガスに暴露されると、外部のガスが異物として働き不良品となる恐れがあることから、外部のガスを遮蔽することが求められている。このため、好適にガスバリアフィルムが用いられる。
また、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの部材や、照明やバックライトなどの光源、光取り出し用の部材としても活用されている。光関連の用途では、画素素子など内部部材の劣化を防止することが求められている。このため、好適にガスバリアフィルムが用いられる。
また、例えば、太陽電池におけるバックシートやフロントシートとしても活用されている。太陽電池用途では、紫外線や湿気などから内部機構の劣化を防止することが求められる。このため、好適にガスバリアフィルムが用いられる。
この中で、有機ELディスプレイには特に高いガスバリア性を要求され、ガスバリア性は有機ELディスプレイの寿命を短くする要因の1つである。
このような事情により、従来、ガスバリア性を高めるための多数の発明がなされている。
例えば特許文献1においては、樹脂フィルム基材が金属化合物を含有し、バリア膜にポリカルボン酸を含有することによりガスバリア性を高める発明が紹介されている。
また、特許文献2においては、ガスバリア膜の化学的構造を工夫して特定の重合体を含有することでガスバリア性を高める発明が紹介されている。
また、特許文献3においては、樹脂フィルム上に無機酸化物層を形成し、さらにその上にALD膜を形成することにより無機酸化物層のピンホール等欠陥をALD膜でカバーして、ガスバリア性を高める発明が紹介されている。
特開2015−131494号公報 特開2015−183059号公報 国際公開第2015/133441号
前述のごとく、樹脂フィルムに高いガスバリア性を付与したいという要望があるが、前記特許文献1、2、3の技術では、ガスバリア性は向上するものの、樹脂フィルムに付着していた微小異物が製膜後に脱落してできるピンホールや製膜工程における熱的、機械的ストレスで発生するクラックのような製造時の膜欠陥を防ぐことが出来なかった。そしてこのような膜欠陥が存在することで、フィルム自体のガスバリア性が低下してしまうという問題があった。
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、樹脂フィルムに付着していた微小異物が製膜後に脱落してできるピンホールや、製膜工程における熱的、機械的ストレスで発生するクラックがたとえ存在しても、高いガスバリア性を維持するガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
少なくとも、樹脂フィルム基材上に蒸着膜を積層し、その上に接着層を介して蒸着膜と樹脂フィルム基材とをこの順に積層してなることを特徴とするガスバリアフィルムである。
また、請求項2に記載の発明は、
前記樹脂フィルム基材と前記蒸着膜の間に、アンダーコート層を備えることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルムである。
請求項3に記載の発明は、
前記蒸着膜の、前記樹脂フィルム基材とは反対側の面に、オーバーコート層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルムである。
請求項4に記載の発明は、
前記蒸着膜が、ALD法により成膜された無機化合物膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアフィルムである。
また、請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
樹脂フィルム基材の一方の面に蒸着膜を積層してなるガスバリア単フィルムを2枚製造する工程と、前記2枚のガスバリア単フィルムの蒸着膜面同士を対向させ、少なくとも一方の蒸着膜面に接着層を塗布後、前記2枚のガスバリア単フィルムをラミネート加工する工程と、を含むことを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法である。
本発明のガスバリアフィルムによれば、樹脂フィルム基材の一方の面に蒸着膜を積層してなるガスバリア単フィルムを2枚重ね合わせたことにより、たとえ一方のガスバリアフィルムにピンホールやクラックが存在していても、蒸着膜を貫通するクラック、ピンホールが存在しないガスバリアフィルムを得ることが可能となる。
さらには、本発明のガスバリアフィルムの製造方法によれば、ガスバリア単フィルム上の蒸着膜は従来技術のガスバリアフィルムに必要とされる膜厚の1/2で良いため、生産時間および生産設備の規模も概ね1/2で済むので、ガスバリア単フィルムを2枚生産することと比較しても生産効率の低下は少ない。
本発明に係るガスバリアフィルムの一実施形態の断面図。 本発明に係るガスバリア単フィルムの断面図。 ピンホール、クラックが存在する場合のガスバリアフィルムの断面図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るガスバリアフィルム10の一実施形態の断面図である。
また、図2は本発明に係るガスバリア単フィルム13の断面図である。
樹脂フィルム基材11a、又は11bとその一方の面に積層された蒸着膜12a、又は12bから成るガスバリア単フィルム13a、13bの2枚が、蒸着膜12a、12bをそれぞれ内側とするように配置され、両方のガスバリア単フィルム13aと13bが接着層14を介して接着されることによって、1枚のガスバリアフィルム10を構成している。
本実施形態では、図2のガスバリア単フィルム13は樹脂フィルム基材11と蒸着膜12のみから構成したが、樹脂フィルム基材11と蒸着膜12の間に、密着性や伸縮耐性を改善するアンダーコート層(図示せず)のような補助層を設けたり、蒸着膜12の表面にオーバーコート層(図示せず)のような保護層を設けたりした構成とすることももちろん可能である。
図3は本実施形態のガスバリアフィルム10に、ピンホール15およびクラック16が存在していた場合の模式図である。
ガスバリア単フィルム13a、13bの2枚がそれぞれ個別に製造されるため、製造工程でランダムに生じるピンホール15およびクラック16の位置は上下のガスバリア単フィルム13a、13bの面内でそれぞれ異なった場所に存在し、その位置が一致することはほとんどありえない。
例えば、一方のガスバリア単フィルム13上のピンホール15およびクラック16から侵入した酸素や水蒸気等のガスは、接着層14の面内で等方的に拡散するため、反対側のガスバリア単フィルム13上のピンホール15およびクラック16の方向に拡散するガスの量はわずかであり、かつ接着層14の面内で長距離の移動が必要とされるため、反対側のガスバリア単フィルム13上のピンホール15およびクラック16に到達できるガスはさらにわずかな量となり、実質的にピンホールやクラックが皆無の状態に等しい。
これにより、本実施形態に係るガスバリアフィルムにおける蒸着膜12のそれぞれの厚さが、従来技術で製作したガスバリアフィルムの蒸着膜の1/2であっても、言い換えれば蒸着膜12の合計厚さが従来技術で製作したガスバリアフィルムの蒸着膜と同じであっても、従来技術以上のガスバリア性を発現することが可能となる。
これにより、蒸着膜12の厚さが従来技術で製作したガスバリアフィルムの蒸着膜の1/2で済むので製膜時間も1/2となり、ガスバリア単フィルム13を2枚生産することを考慮しても、従来技術と少なくとも同等の生産効率が得られる。
原材料費の面でも、蒸着膜については使用量が同じなので同等であり、さらには樹脂フィルムの厚みも1/2で接着後は同じ強度を得られるので、2枚必要であっても価格差は小さい。そして量産した場合には、価格差は更に小さくなるか、逆に安価になる可能性もありうる。
以下に、本発明に係るガスバリアフィルムを構成する各層の材料組成等について詳述する。
<樹脂フィルム基材>
樹脂フィルム基材11は、ガスバリア性積層体の基体となる層である。樹脂フィルム基材11は、一般的に使用されている種々のシート状の基材(フィルム状のものを含む)の中から適宜選択し、用いてよい。例えば、(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、(2)ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、(3)ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルム、などが挙げられる。
また、樹脂フィルム基材11には、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤が含有されていてもよい。
また、樹脂フィルム基材11の厚みは、特に制限がなく、仕様などに応じて適宜決定してよい。実用上の厚みとしては、6μm以上200μm以下、好ましくは12μm以上125μm以下、より好ましくは12μm以上50μm以下が望ましい。ただし、本実施形態のガスバリアフィルムにおいて、樹脂フィルム基材11の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
また、樹脂フィルム基材11は、樹脂フィルム基材表面に表面処理を施してもよい。表面処理を行うことにより、他の層(蒸着膜、アンダーコート層など)を積層するにあたり、他の層との密着性を高めることができる。ここで、表面処理として、例えば、(1)コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理的処理、(2)酸やアルカリによる薬液処理などの化学的処理、などを用いてもよい。
<蒸着膜>
蒸着膜12は、ガスバリア性を付与するため、蒸着材料を蒸着させることにより樹脂フィルム基材11より上層に形成される層である。蒸着膜12に用いる蒸着材料は、公知のガスバリア性蒸着膜を構成する無機材料から適宜選択して用いてよい。例えば、Si、Al、Zn、Sn、Fe、Mn等の金属、これらの金属の1種以上を含む無機化合物などが挙げられる。該無機化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等が挙げられる。これらの中でも、金属及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体的には、例えば、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素酸化物(SiOx)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズなどが挙げられる。
また、蒸着膜12は、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を用いて真空蒸着により形成することが特に好ましい。真空蒸着により形成された蒸着膜は、透明性や、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性に特に優れる。蒸着材料中、金属ケイ素と二酸化ケイ素の含有量の比率は、ケイ素と酸素との元素比O/Siが1.0以上1.8以下になる比率で含有することが好ましく、O/Siが1.2以上1.7以下になる比率で含有することがより好ましい。O/Siが1.0以上であると、透明性が良好であり、O/Siが1.8以下であると、バリア性が良好である。ただし、本実施形態のガスバリア性積層体において、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を用いる場合の含有量の比率は上記範囲に限定されるものではない。
金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料は、さらに、Al、Zn、Sn、Fe、Mn、からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の金属(以下、特定金属と呼称する)またはそれらの酸化物を含有していてもよい。これにより、金属ケイ素と二酸化ケイ素との混合物を蒸着材料として用いた場合よりも、膜密度が高い蒸着膜を形成でき、高いガスバリア性が発現する。
金属ケイ素と二酸化ケイ素と特定金属またはそれらの酸化物とを含有させた蒸着材料を用いる場合、蒸着材料中における特定金属又はその酸化物の含有量は、金属ケイ素と二酸化ケイ素の合計100質量%に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。1質量%以上であれば、膜密度の向上効果が充分に得られる。50質量%を超えると、相対的に金属ケイ素及び二酸化ケイ素の含有量が少なくなるため、蒸着膜の透明性、耐湿熱環境下におけるバリア性等が低下するおそれがある。また、特定金属又はその酸化物以外の残部は、金属ケイ素及び二酸化ケイ素からなることが好ましい。つまり、上記特定金属又はその酸化物と、金属ケイ素と、二酸化ケイ素との合計が100質量%であることが好ましい。
上述のように、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を真空蒸着させると、ケイ素酸化物(SiOx)を含有する無機材料からなる蒸着膜が形成される。また、金属ケイ素と、二酸化ケイ素と、特定金属又はその酸化物とを含有する蒸着材料を真空蒸着すると、ケイ素酸化物と、特定金属又はその酸化物を含有する無機材料とからなる蒸着膜が形成される。形成された蒸着膜を構成する元素の種類と存在比は、X線光電子分光分析装置(ESCA)により測定できる。
蒸着材料に、金属ケイ素と二酸化ケイ素とを含有する蒸着材料を用いた場合、蒸着膜12におけるケイ素酸化物の含有量は、蒸着膜12を構成する全元素中のSi元素の存在比として、15atm%以上が好ましく、25atm%以上がより好ましい。25atm%以上であれば、透明性、バリア性等に優れる。
蒸着材料に、金属ケイ素と二酸化ケイ素と特定金属またはそれらの酸化物とを含有させた蒸着材料を用いる場合、蒸着膜12における特定金属又はその酸化物の含有量は、蒸着膜12を構成する全元素中の特定金属元素の存在比として、1atm%以上20atm%以下が好ましく、3atm%以上15atm%以下がより好ましく、3atm%以上10atm%以下がさらに好ましい。1atm%以上であれば、高いガスバリア性が発現する。20atm%を超えると、相対的にケイ素酸化物の含有量が少なくなるため、蒸着膜の透明性、耐湿熱環境下におけるバリア性等が低下するおそれがある。特定金属元素の存在比が1atm%以上20atm%以下の蒸着膜は、例えば、金属ケイ素と二酸化ケイ素の合計100質量%に対して、特定金属又はその酸化物を1質量%以上50質量%以下の割合で配合した蒸着材料を用いることで形成できる。
蒸着膜12の形成方法は、公知の蒸着方法から適宜選択し用いてよい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法等の化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、ALD:Atomic Layer Deposition法(原子層堆積法)、などを用いてよい。特に、EB:Electron Beam加熱方式の真空蒸着法は高い成膜速度が得ることができ、本実施形態のガスバリア性積層体の蒸着膜の形成方法として好ましい。
上記成膜法のうちALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法であって、CVDの範疇に分類されている。なお、ALD法が一般的なCVDと区別されるのは、いわゆるCVD(一般的なCVD)は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基板上で反応させて薄膜を成長させるものである
。それに対して、ALD法は、前駆体(TMA:Tri-Methyl Aluminum)、またはプリカーサとも云われている活性に富んだガスと反応性ガス(これもまたALDでは前駆体と呼ばれる)を交互に用い、基板表面における吸着と、これに続く化学反応によって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法である。
ALD法の具体的な成膜方法は、基板上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上そのガスの吸着が生じない、いわゆるセルフ・リミッティング効果を利用し、前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する。続いて、反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ得たのちに反応性ガスを排気する。このような処理を1サイクルとし、このサイクルを繰り返して薄膜を成長させていくものである。したがって、ALD法では薄膜は二次元的に成長する。また、ALD法は、従来の真空蒸着法やスパッタリングなどとの比較では、もちろんのこと、一般的なCVDなどと比較しても、成膜欠陥が少ないことが特徴である。
また、ALD法によって原子層蒸着を行うことで、プラスチック基板またはガラス基板上に気体透過バリア層を形成する技術が公知であり、可撓性及び光透過性のあるプラスチック基板の上に発光ポリマーを搭載し、その発光ポリマーの表面と側面にALD法によって原子層蒸着を施している(トップコーティングしている)。これにより、コーティング欠陥を減らすことができると共に、数十ナノメートルの厚さにおいて桁違いで気体透過を低減させることが可能な光透過性のバリアフィルムを実現することができる。
また、蒸着を行うにあたり、反応蒸着法を用いてもよい。反応蒸着法は、蒸着材料を蒸着させる際に、蒸発した粒子と雰囲気中に導入したガスなどと反応させて蒸着させる方法である。導入するガスとしては、例えば、酸素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
酸素ガスなどとの反応蒸着を行うことにより、蒸着材料中の金属成分が酸化され、蒸着膜の透明性を向上させることができる。また、反応蒸着法を用いる場合、ガスを導入する際は、成膜室の圧力を2×10−1Pa以下にすることが望ましい。成膜室の圧力が2×10−1Paよりも大きくなってしまうと、蒸着膜がきれいに積層されず、水蒸気バリア性が低下してしまうおそれがある。
また、蒸着膜12の膜厚は、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下がより好ましい。5nm以上であると充分なバリア性が発現し、300nm以下であると、後工程などでクラックの発生やそれによるバリア性の低下が生じにくい。ただし、本実施形態のガスバリア性積層体において、蒸着膜12の膜厚は上記範囲に限定されるものではない。
<接着層>
接着層に用いる接着剤としては、接着する素材に応じて適宜選択してよい。
一般的には、例えばポリウレタン系、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸エステル共重合体、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂等が用いられる。厚さは目的に応じて適宜決められる。
また、接着する面の活性を上げるために、接着面にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理をすることも可能である。
また、蒸着膜としてTiO膜を成膜した場合に接着層に使用する樹脂としては、シリコン含有量2〜60重量%のアクリル−シリコン樹脂、エポキシ−シリコン樹脂等のシリコン変性樹脂、コロイダルシリカを5〜40重量%含有する樹脂、およびポリシロキサンを3〜60重量%含有する樹脂等が例示できる。
<アンダーコート層>
アンダーコート層(図示せず)は、蒸着層12の下地となる層であり、蒸着層12の欠陥数などへの影響が大きいため、高い熱安定性を有し、異物が少なく、平滑で均質な状態であることが好ましい。
<オーバーコート層>
オーバーコート層(図示せず)は、蒸着層12上に形成される層である。オーバーコート層を蒸着層12上に積層することで、蒸着層12が単層で構成されたガスバリア性積層体では発現できない優れたガスバリア性を得ることができる。また、オーバーコート層は、緻密で脆い蒸着層を保護する機能も有しており、擦れや屈曲によるクラックの発生を抑制できる。
オーバーコート層13は、塗布液を調製し、蒸着膜上に塗布液を塗布した後、塗布液を加熱乾燥することにより形成する。
<塗布方法>
アンダーコートあるいはオーバーコート層の塗布方法は、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等の周知の方法を用いることができる。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など、熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
乾燥方法において、加熱温度は、特に限定されないが、60℃以上140℃以下の範囲内が好ましく、残留溶剤がない程度でかつ巻き取り加工しても塗工面が裏面にくっついてしまう、いわゆるブロッキング現象がないような条件を適宜選択でき、必要に応じて40℃以上60℃以下の範囲内でエージング処理を行っても良い。
次に、本発明のガスバリアフィルムの実施例を以下に説明する。ただし、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
<ガスバリア層の成膜方法>
ここでは、TiOの蒸着膜をALD法を用いて作製する方法を示す。
樹脂フィルム基材(100μm厚)上にアンダーコート層(UC層)を設けた上面に、蒸着膜としてALD法によってTiO膜を成膜した。このとき、原料ガスは四塩化チタン(TiCl)とした。また、原料ガスと同時に、プロセスガスとしてNを、パージガスとしてNを、反応ガス兼プラズマ放電ガスとしてOを、それぞれ成膜室へ供給した。その際の処理圧力は10〜50Paとした。さらに、プラズマガス励起用電源は13.56MHzの電源を用い、ICPモードでプラズマ放電を実施した。
また、各ガスの供給時間は、TiClとプロセスガスを60msec、パージガスを10sec、反応ガス兼放電ガスを3secとした。そして、反応ガス兼放電ガスを供給すると同時に、ICPモードでプラズマ放電を発生させた。なお、このときのプラズマ放電の出力電力は250wattとした。また、プラズマ放電後のガスパージとして、パージガスOとNを10sec供給した。このときの成膜温度は90℃とした。
上記のようなサイクル条件におけるTiO膜の成膜速度は次のようになった。
すなわち、単位成膜速度が約0.9Å/サイクルであるため、110サイクルの成膜処理を実施して膜厚10nmのTiO成膜を行ったところ、成膜の合計時間は約43minとなった。(比較例1を参照)
上記の成膜条件で成膜したガスバリアフィルムに対して、成膜サイクル数を55サイクル、使用する樹脂フィルム基材の厚みを上記の1/2の50μmとして同様に成膜処理をしたガスバリアフィルムを作製した。(実施例1を参照)
<水蒸気透過度測定>
水蒸気透過度(WVTR)測定では、モダンコントロール社製の水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製 MOCON Aquatran(登録商標))を用いて、40℃90%RH雰囲気下での水蒸気透過度〔g/m・day〕を測定した。
<実施例1>
実施例1では、樹脂フィルム基材上にアンダーコート層を形成して、その上にTiO薄膜をALD法によって形成した。
まず、樹脂フィルム基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)の延伸フィルム(50μm厚)を用意し、その片面に酸素プラズマ処理を行った後に、次の処方のアンダーコート剤を塗布し、樹脂フィルム基材上にアンダーコート層を1μmの乾燥厚みで形成した。
なお、酸素プラズマ処理は、プラズマ放電ガスとしてOを100sccm供給し、プラズマガス励起用電源として13.56MHzの電源を用い、ICPモードでプラズマ放電を180sec実施した。
アンダーコート層は、ポリビニルアルコール(PVA)500g(クラレ(株)製のポバール117、ケン化度98−99%をイオン交換水で固形分が5重量%となるように溶解して攪拌したもの)と、コロイダルシリカ100g(日産化学工業(株)製のスノーテックスXS)とを混合して攪拌した。また、アンダーコート層の塗布は、マイヤーバーを用いて行った。なお、塗布した試料は105℃のオーブンで5分間の乾燥を行った。
次に、ALD成膜装置(Opal、Oxford Instruments社)を用い、樹脂フィルム基材上のアンダーコート層の上に、上述のALD法によってTiOの薄膜を約5nmの厚みで形成した。このようにして作製した2枚のガスバリアフィルムのTiO薄膜形成面側同士を、接着層を介してラミネートして、ガスバリアフィルム積層体を作製した。
なお、接着層は、アクリル−シリコン樹脂を塗布し、2μmの乾燥厚みで形成した。このようにして作製したガスバリアフィルム積層体の試料について水蒸気透過度(WVTR)を測定した。このときのWVTRの測定値は、5.0×10−5〔g/(m・day)〕であった。
<比較例1>
比較例1では、樹脂フィルム基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)の延伸フィルム(100μm厚)を用意し、上記と同様に高分子基材上のアンダーコート層の上に、ALD法によってTiOの薄膜を約10nmの厚みで形成して、ガスバリアフィルムとした。
この試料について水蒸気透過度(WVTR)を測定したところ、WVTRの測定値は、10.0×10−5〔g/(m・day)〕であった。
上記の実施例1及び比較例1で示した構成のガスバリアフィルムを用いて水蒸気透過度試験を行ったところ、実施例1のガスバリアフィルムでは5.0×10−5〔g/(m
・day)〕であったのに対し、樹脂フィルム基材厚の合計と蒸着膜厚の合計が略同等である比較例1のガスバリアフィルムでは10.0×10−5〔g/(m・day)〕となった。即ち、比較例1と比べて実施例1は水蒸気透過度が小さく、ガスバリア性が向上したことがわかった。
このように、実施例の構成とすることで、TiO薄膜の欠陥をカバーし合い、貫通するピンホールやクラックなどの欠陥の影響を低減することができるため、よりガスバリア性能を高めたガスバリアフィルムを提供することができた。
10 ガスバリアフィルム
11 樹脂フィルム基材
12 蒸着膜
13 ガスバリア単フィルム
14 接着層
15 ピンホール
16 クラック

Claims (5)

  1. 少なくとも、樹脂フィルム基材上に蒸着膜を積層し、その上に接着層を介して蒸着膜と樹脂フィルム基材とをこの順に積層してなることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記樹脂フィルム基材と前記蒸着膜の間に、アンダーコート層を備えることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記蒸着膜の、前記樹脂フィルム基材とは反対側の面に、オーバーコート層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記蒸着膜が、ALD法により成膜された無機化合物膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    樹脂フィルム基材の一方の面に蒸着膜を積層してなるガスバリア単フィルムを2枚製造する工程と、
    前記2枚のガスバリア単フィルムの蒸着膜面同士を対向させ、少なくとも一方の蒸着膜面に接着層を塗布後、前記2枚のガスバリア単フィルムをラミネート加工する工程と、
    を含むことを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
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