以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。なお、同一又は相当部分には、同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る連結装置、及びそれを用いた駆動力伝達装置を適用する車両1の構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、車両1は、エンジン11と、トランスミッション(以下、T/Mと略す)12と、トランスファ(同、T/F)13と、フロント(同、Fr)プロペラシャフト14と、差動装置として機能するFrディファレンシャル機構(同、Frデフ)15及び連結装置16を備える駆動力伝達装置17と、制御装置18と、右車軸として機能する右Frドライブシャフト21と、左車軸として機能する左Frドライブシャフト22と、2つの前輪23と、リア(同、Rr)プロペラシャフト24と、Rrディファレンシャル機構(同、Rrデフ)25と、2つのRrドライブシャフト26と、2つの後輪27とを備える。
エンジン11で発生した駆動力は、T/M12を介しT/F13へ伝達される。駆動力は、Frプロペラシャフト14とRrプロペラシャフト24とへ分配される。Rrプロペラシャフト24へ分配された駆動力は、Rrデフ25及びRrドライブシャフト26を経て、左右の後輪27へ伝達される。Frプロペラシャフト14へ分配された駆動力は、Frデフ15へ伝達される。
さらに、車両1は、例えば、運転者の操作、又は走行状態によっては燃費向上のため、Frデフ15に伝達された駆動力を伝達する四輪駆動モードと、駆動力を伝達しない二輪駆動モードとに切り替えることができる。
制御装置18において四輪駆動モードが選択されると、T/F13とFrプロペラシャフト14とが連結される。その後、駆動力伝達装置17の連結装置16を介して、Frデフ15と右Frドライブシャフト21とが連結される。これにより、Frデフ15へ伝達された駆動力は、左Frドライブシャフト22と、連結装置16を介して右Frドライブシャフト21とへ分配され、左右の前輪23へ伝達される。また、四輪駆動モードが終了され二輪駆動モードが選択されると、T/F13とFrプロペラシャフト14との連結が開放される。その後、連結装置16とFrデフ15との連結が開放される。これにより、Frデフ15は空回りし、駆動力は伝達されなくなる。
図2は、図1に示す駆動力伝達装置17の構成を示す断面図である。図2に示すように、駆動力伝達装置17は、Frデフ15と、連結装置16とを備える。連結装置16は、第1シャフト31と、第2シャフト32と、ケース34と、第1制限部材として機能する第1スナップリング35と、第2制限部材として機能する第2スナップリング36と、第3スナップリング37と、第1軸受41と、第2軸受42と、第3軸受43と、ストロークセンサ44と、スリーブ81と、アクチュエータ82とを備える。
アクチュエータ82は、例えば図1に示す制御装置18によって制御され、スリーブ81を移動させることで、第1シャフト31と第2シャフト32とを駆動力伝達可能に連結する連結状態と、開放する開放状態とを切り替えられる。
第1シャフト31と、第2シャフト32と、ケース34と、スリーブ81とは、略同軸に設けられ、各々の筒状の部分、柱状の部分、及び回転する部分は、実質的に共通の中心軸を持つように配置される。
以下、上記中心軸が延びる方向(図2における左右方向)を軸方向、上記中心軸まわりに回転する方向を周方向、上記中心軸と直交する方向を径方向と称する。なお、中心軸が実質的に共通であるため、以下の説明における軸方向、周方向、及び径方向は、連結装置16の軸方向、周方向、及び径方向であるとともに、例えば第1シャフト31の軸方向、周方向、及び径方向でもある。
また、図2に示すように、Frデフ15は、例えば、ピニオンシャフト15aと、ピニオンギヤ15bと、サイドギヤ15cと、デフケース15dと、デフハウジング15eと、第4軸受15fとを備える。デフケース15dは、ピニオンシャフト15a、ピニオンギヤ15b、及びサイドギヤ15cを収容する。デフケース15dは、第4軸受15fによって、デフハウジング15eに回転可能に保持される。サイドギヤ15cは、第1シャフト31、第2シャフト32、ケース34、及びスリーブ81と略同軸に配置される。
図3及び図4は、図1に示す駆動力伝達装置17の構成の一部を示す断面図であり、図3は開放状態を、図4は連結状態を示す。スリーブ81が軸方向に移動させられることで、連結状態と、開放状態とが切り替わる。図4に示すスリーブ81の位置を連結位置P1と称し、図3に示すスリーブ81の位置を開放位置P2と称する。
図3に示すように、第1シャフト31は、例えば、中空の略円筒状に形成される。第1シャフト31は、第1接続部51と、第1連結部52と、2つの突設部53とを有する。
第1接続部51は、軸方向における第1シャフト31の一方の端部31aの近傍に設けられる。第1接続部51は、前輪23へ駆動力を分配するFrデフ15の一方のサイドギヤ15cに接続される。すなわち、本実施形態において、第1シャフト31は、図1のエンジン11のような動力源からの駆動力を伝達する入力軸である。なお、第1シャフト31は、出力軸のような他の軸であっても良い。
また、第1シャフト31に、開口部55と、油路56とが設けられる。開口部55は、第1シャフト31の端部31bに設けられた有底の穴である。油路56は、開口部55の底と、第1シャフト31の端部31aとを連通する孔である。油路56の断面積は、開口部55の断面積よりも小さい。
さらに、開口部55は、第1シャフト31の端部31bから離間するに従って段階的に内径が小さくなり、第1嵌着部55aと、第1軸受部55bとを有する。第1嵌着部55aは、第1シャフト31の端部31bの近傍に設けられる。第1軸受部55bは、第1嵌着部55aよりも、奥に設けられ、端部31bから離間する。第1軸受部55bの内径は、第1嵌着部55aの内径よりも小さい。
また、図2に示すように、第2シャフト32は、略円柱状に形成される。第2シャフト32は、第2接続部71と、第2連結部72と、挿入部73とを有する。
第2接続部71は、軸方向における第2シャフト32の一方の端部32aの近傍に設けられる。第2接続部71は、図1に示す右Frドライブシャフト21に接続される。本実施形態において、第2シャフト32は、第1シャフト31から伝達された駆動力を、右Frドライブシャフト21を通じて右の前輪23に伝達する出力軸である。なお、第2シャフト32は、入力軸のような他の軸であっても良い。
図7は、図1に示す駆動力伝達装置17の第2シャフト32を示す斜視図である。図7に示すように、第2連結部72は、挿入部73に隣接する。挿入部73は、軸方向における第2シャフト32の他方の端部32bの近傍に設けられる。
さらに、挿入部73は、第2連結部72から離間するに従って段階的に外径が小さくなり、第2嵌着部73aと、第2軸受部73bとを有する。第2嵌着部73aは、第2連結部72の近傍に設けられる。第2軸受部73bは、第2シャフト32の端部32bの近傍に設けられる。第2軸受部73bの外径は、第2嵌着部73aの外径よりも小さい。
さらに、図3に示すように、挿入部73は、第1シャフト31の開口部55に挿入される。挿入部73が開口部55に挿入されると、第2嵌着部73aの外周面と、第1シャフト31の第1嵌着部55aの内周面とが隙間を介して向かい合う。さらに、第2軸受部73bの外周面と、第1シャフト31の第1軸受部55bの内周面とが隙間を介して向かい合う。挿入部73の外周面は、開口部55の内周面から離間する。
また、第1軸受41は、開口部55の第1軸受部55bの内周面と、挿入部73の第2軸受部73bの外周面との間に介在する。これにより、第2シャフト32は、第1シャフト31と周方向に相対的に回転可能に軸支される。
また、図2に示すように、ケース34は、カバー34aと、チューブ34bとを備える。カバー34aは、Frディファレンシャル機構15のデフハウジング15eに取り付けられるとともに、アクチュエータ82を収容する。チューブ34bは、略円筒状に形成され、第2シャフト32を覆う。
第3スナップリング37は、チューブ34bに取り付けられ、チューブ34bの内周面から突出する。第3スナップリング37は、チューブ34bと第2シャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、チューブ34bと第2シャフト32との軸方向における相対的な移動を制限する。
第2軸受42は、チューブ34bと第2シャフト32との間に介在し、第2シャフト32を回転可能に軸支し、第3軸受43は、デフケース15dと第1シャフト31との間に介在し、第1シャフト31を回転可能に軸支する。
図5は、図1に示す駆動力伝達装置17の第1シャフト31を示す斜視図である。図5に示すように、第1連結部52及び2つの突設部53は、軸方向における第1シャフト31の他方の端部31bの近傍に設けられる。突設部53は、第1連結部52から軸方向に突出する。
図6は、図1に示す駆動力伝達装置17の第1シャフト31を示す正面図である。図6に示すように、突設部53は、略円弧状に形成される。突設部53は、周方向に間隔を介して、回転対称に配置される。このため、周方向において、突設部53の間に2つの切欠き67が形成される。突設部53が回転対称に配置されることで、第1シャフト31の回転の偏心が抑制され得る。
切欠き67は、第1シャフト31の端部31bから軸方向に窪むとともに、突設部53の外周面53aと内周面53b(第1嵌着部55aの内周面)とを連通する。なお、突設部53の配置はこの例に限らない。突設部53の外径は、第1連結部52の外周面52aの外径よりも小さい。
さらに、図3に示すように、突設部53の内周面53bにそれぞれ、第1溝68が設けられる。言い換えると、開口部55の第1嵌着部55aの内周面に、第1溝68が設けられる。第1溝68は、周方向に延びるとともに、略四角形の断面を有する。
図8は、図1に示す駆動力伝達装置17の両シャフト31、32の一部を示す断面図である。図8に示すように、第2嵌着部73aの外周面に、第2溝75が設けられる。第2溝75は、周方向に延びるとともに、略四角形の断面を有する。第2溝75は、第2連結部72から軸方向に離間した位置に設けられる。第2嵌着部73aの外周面と第1嵌着部55aの内周面とが隙間を介して向かい合うと、第2溝75と第1溝68とが向かい合う。
図9は、図1に示す駆動力伝達装置17の第1スナップリング35を示す正面図である。図9に示すように、第1スナップリング35は、いわゆるCリングであり、弧状部35aと、2つの突起35bとを有する。弧状部35aは、周方向に円弧状に延び、略C字形状に形成される。弧状部35aの周方向の両端部の間に隙間35cが設けられる。突起35bは、弧状部35aの周方向の両端部から径方向外側に突出する。突起35bにそれぞれ、隙間35cから略周方向に延びる溝35dが設けられる。
さらに、第1スナップリング35は、例えば金属によって作られ、弾性を有する。第1スナップリング35は、隙間35cを狭めるように圧縮されることで、弧状部35aの外径を縮小するように、径方向に弾性的に収縮可能である。例えば、2つの突起35bが摘ままれることで、第1スナップリング35は容易に収縮させられる。
さらに、第1スナップリング35は、隙間35cを広げるように引っ張られることで、弧状部35aの内径を拡大するように、径方向に弾性的に拡大可能である。例えば、溝35dにプライヤのような工具を挿入されることで、第1スナップリング35は容易に拡大させられる。
また、図8に示すように、第1シャフト31と第2シャフト32とは、第1スナップリング35によって、相対的に回転可能に接続される。第1スナップリング35は、第1溝68と第2溝75とに嵌められる。言い換えると、第1スナップリング35は、第1嵌着部55aと第2嵌着部73aとに取り付けられる。
この時、第1スナップリング35は、第1溝68の軸方向の内面(側面)に当接し、第2溝75の軸方向の内面(側面)に当接すると共に、第1溝68の底に接触し、第2溝75の底から離間する。第1溝68及び第2溝75の底は、径方向に向く部分である。
これにより、リング状に形成される第1スナップリング35は安定的に、第1シャフト31と第2シャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、第1シャフト31と第2シャフト32との軸方向における相対的な移動を制限し得る。言い換えると、第1スナップリング35は安定的に、第1シャフト31と第2シャフト32とを、軸方向において位置決めし得る。
さらに、遠心力により第1スナップリング35が径方向に弾性的に拡大することが抑制され、第1スナップリング35が第2溝75から外れることが抑制され得る。
また、図5に示すように、第1スナップリング35の2つの突起35bは、間隔を介して隣り合う2つの突設部53の間に位置する。突起35bの少なくとも一部は、突設部53の周方向の端部から離間する。突起35bは、2つの突設部53の間の切欠き67を通って、突設部53の外周面53aよりも径方向外側に突出する。
これにより、第1スナップリング35の取付状態を、第1及び第2シャフト31,32の外部から視認し得ると共に、容易に2つの突起35bを摘まみ、弾性的に変形させることで、第1スナップリング35を第1溝68から容易に取り外し得る。言い換えると、第1スナップリング35を取り外すことで、第1及び第2シャフト31,32の軸方向の移動の制限を開放し得る。
さらに、第1スナップリング35は、例えば次のように第1シャフト31及び第2シャフト32に取り付けられる。なお、第1スナップリング35の取付方法は、以下の例に限らない。
まず、図9に示すように、第1スナップリング35の溝35dにプライヤが挿入され、第1スナップリング35が径方向に弾性的に拡大される。これにより、弧状部35aの内径が、第2シャフト32の第2嵌着部73aの外径よりも大きくなる。
次に、図7に示すように、内径を広げられた第1スナップリング35が、第2嵌着部73aの第2溝75に嵌められる。プライヤが取り外されることで第1スナップリング35の内径が弾性的に元に戻り、弧状部35aが第2溝75に入り込む。
次に、第1スナップリング35の2つの突起35bが摘ままれ、第1スナップリング35が径方向に弾性的に縮小される。これにより、弧状部35aの外径が、第2嵌着部73aの外径と同じか、それより小さくなる。
次に、第2シャフト32の挿入部73が、図5に示す第1シャフト31の開口部55に挿入される。このとき、第1スナップリング35の突起35bは、2つの突設部53の間の切欠き67に配置される。
最後に、2つの突起35bを摘まむ力が開放されることで、第1スナップリング35の外径が弾性的に元に戻る。
以上により、図8に示すように、弧状部35aが、第1嵌着部55aの第1溝68に嵌められ、第1スナップリング35の取り付けは完了する。
ここで、一般的に、第1シャフト31と第2シャフト32とは、例えば横Gによって、軸方向に移動する、所謂ガタつくことがある。この場合、第1シャフト31と第2シャフト32とを確実に連結及び開放させるために、寸法的な公差及び冗長性、所謂遊びが設定され、連結装置16が大型化しやすい。
そこで、本実施形態において、第1スナップリング35は、第1シャフト31と第2シャフト32とが周方向に相対的に回転可能に、第1シャフト31と第2シャフト32との軸方向における相対的な移動を制限する。
これにより、第1及び第2シャフト31,32の位置がより正確に定まるため、寸法的な遊びを小さく設定でき、連結装置16の大型化が抑制され得る。さらに、第1及び第2シャフト31,32が、位置決め用スナップリングのような他の部材に接触して異音を生じさせることが抑制され得る。加えて、第1及び第2シャフト31,32を、ユニットアッセンブリとして提供することが容易になり得る。
続いて、連結装置16の連結構造について説明する。図5に示すように、第1連結部52に、第1スプライン60が設けられる。第1スプライン60に、複数の第1スプライン区間61と、複数の第1非スプライン区間62とが設けられる。本実施形態では、例えば4つの第1スプライン区間61と、3つの第1非スプライン区間62とが、第1スプライン60に設けられる。
複数の第1スプライン区間61は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯65をそれぞれ有する。複数の歯65はそれぞれ、第1連結部52の外周面52aから径方向に突出する。複数の第1非スプライン区間62は、例えば、第1スプライン60において、歯65が設けられていない部分である。なお、第1非スプライン区間62はこの例に限らない。
複数の第1スプライン区間61と、複数の第1非スプライン区間62とは、軸方向に交互に配置される。すなわち、複数の第1スプライン区間61は、軸方向に間隔を介して配置される。言い換えると、第1スプライン60は、軸方向に断続的にスプラインが形成された部分である。
第1スプライン区間61の複数の歯65はそれぞれ、軸方向に延びる。第1スプライン区間61に含まれる複数の歯65の数及び配置は、複数の第1スプライン区間61の間で共通である。歯65は、隣接する第1スプライン区間61の歯65と、軸方向に並べられる。
また、図7に示すように、第2連結部72に、第2スプライン77が設けられる。第2スプライン77は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯78を有する。複数の歯78はそれぞれ、第2連結部72の外周面72aから径方向に突出し、軸方向に延びる。
第2スプライン77の複数の歯78の数及び配置は、図5に示す第1スプライン区間61と共通である。すなわち、第2スプライン77の歯78のピッチ及び歯数と、第1スプライン区間61の歯65のピッチ及び歯数とは実質的に等しい。軸方向における歯78の長さは、軸方向における第1スプライン60の歯65の長さよりも長い。
また、図3に示すように、スリーブ81は、略円筒状に形成され、第1連結部52の少なくとも一部と、第2連結部72の少なくとも一部とを覆う。言い換えると、第1シャフト31と第2シャフト32とが、スリーブ81の内側を通される。
図10は、図1に示す駆動力伝達装置17のスリーブ81を示す斜視図である。図10に示すように、スリーブ81の内周面81aに、第3スプライン84が設けられる。第3スプライン84に複数の第2スプライン区間91と、第3スプライン区間92と、複数の第2非スプライン区間93とが設けられる。本実施形態では、例えば三つの第2スプライン区間91と、三つの第2非スプライン区間93とが、第3スプライン84に設けられる。
複数の第2スプライン区間91及び第3スプライン区間92は、周方向に間隔を介して配置された複数の歯95をそれぞれ有する。複数の歯95はそれぞれ、スリーブ81の内周面81aから径方向に突出する。複数の第2非スプライン区間93は、例えば、第3スプライン84において、歯95が設けられていない部分である。なお、第2非スプライン区間93はこの例に限らない。
複数の第2スプライン区間91と、複数の第2非スプライン区間93とは、軸方向に交互に配置される。すなわち、複数の第2スプライン区間91は、軸方向に間隔を介して配置される。さらに、第2スプライン区間91と第3スプライン区間92との間に、第2非スプライン区間93が介在する。このように、第3スプライン84は、軸方向に断続的にスプラインが形成された部分である。
第2スプライン区間91及び第3スプライン区間92の複数の歯95の数及び配置は、図5に示す第1スプライン区間61と共通である。すなわち、第2スプライン区間91及び第3スプライン区間92の歯95のピッチ及び歯数と、第1スプライン区間61の歯65のピッチ及び歯数とは実質的に等しい。
第3スプライン区間92の歯95の軸方向における長さは、第2スプライン区間91の歯95の軸方向における長さよりも長い。第2スプライン区間91の歯95の軸方向における長さは、第1スプライン60の第1非スプライン区間62の軸方向における長さよりも短い。第1スプライン区間61の歯65の軸方向における長さは、第2非スプライン区間93の軸方向における長さよりも短い。
第3スプライン84の第3スプライン区間92の複数の歯95は、図7に示す第2スプライン77の複数の歯78と噛み合う。このため、第2シャフト32とスリーブ81とは、第2及び第3スプライン77,84により、軸方向に相対的に移動可能に周方向における相対的な回転を制限される。すなわち、スリーブ81と、第1及び第2シャフト31,32とは、軸方向に相対的に移動可能である。言い換えると、スリーブ81は、第3スプライン区間92が第2スプライン77で軸方向に摺動可能に軸支される。
図11は、図1に示す駆動力伝達装置17の第1スプライン60と第3スプライン84とを概略的に示す展開図である。図11は、左右方向が軸方向、上下方向が周方向となるように第1スプライン60及び第3スプライン84を展開して示す。また、図11は、開放位置P2に位置する第3スプライン84を実線で示し、連結位置P1に位置する第3スプライン84を二点鎖線で示す。
図4及び図11に示すように、スリーブ81が連結位置P1に位置すると、第3スプライン84の第2スプライン区間91の複数の歯95は、第1スプライン60の第1スプライン区間61の複数の歯65と噛み合う。言い換えると、第2スプライン区間91の複数の歯95と、第1スプライン区間61の複数の歯65とが、周方向に交互に配置される。さらに、第3スプライン区間92の複数の歯95も、第1スプライン区間61の複数の歯65と部分的に噛み合う。このため、第1シャフト31が、スリーブ81を介して駆動力伝達可能に第2シャフト32に連結される。
一方、図3及び図11に示すように、スリーブ81が開放位置P2に位置すると、第2スプライン区間91と第1スプライン区間61とが、軸方向に交互に配置される。言い換えると、軸方向において、第2スプライン区間91は隣り合う第1スプライン区間61の間の隙間(第1非スプライン区間62)に位置し、第1スプライン区間61は隣り合う第2スプライン区間91の間の隙間(第2非スプライン区間93)に位置する。このため、第3スプライン84が第1スプライン60から外れる。
第3スプライン84が第1スプライン60から外れると、第1スプライン60の歯65と第3スプライン84の歯95とが噛み合わず、第1スプライン60の歯65は、隣り合う第2スプライン区間91の間で回転可能となる。さらに、第3スプライン84の歯95は、隣り合う第1スプライン区間61の間で回転可能となる。このため、スリーブ81を介する第1シャフト31と第2シャフト32との連結が開放され、第1シャフト31と、スリーブ81及び第2シャフト32とが、周方向に相対的に回転可能となる。
このように、スリーブ81は、連結状態においては第1シャフト31に設けられる第1スプライン60と噛み合い、開放状態においては第1スプライン60から外れる、第2シャフト32に設けられる第2スプライン77と噛み合っている第3スプライン84を有している。
ここで、第1シャフト31及び第2シャフト32と、スリーブ81とは、スプラインによって係合する場合について説明したが、スプラインを用いることで、軸方向に摺動可能に、回転トルクを伝達し得る。また、スプラインの歯形は、例えば、インボリュート歯を用いると良い。これにより、伝達トルクが大きく、加工が容易になり得る。
なお、第1シャフト31とスリーブ81とは、スプラインによって係合、係脱する場合に限らない。軸方向に移動し回転トルクを伝達、遮断すれば良く、例えば、ドグクラッチ等を用いても良い。これにより、より大きなドグ歯を用いることで強度、耐久性が向上し得る。また、要求精度の高いスプライン加工が不要になり、安価及び簡易な構造になり得る。
また、第2シャフト32とスリーブ81とは、スプラインによって係合する場合に限らない。軸方向に移動可能に係合すれば良く、例えば、僅かな隙間を有するキーとキー溝の組合せ等を用いても良い。これにより、要求精度の高いスプライン加工が不要になり、安価及び簡易な構造になり得る。
また、図11に示すように、複数の第1スプライン区間61は、先行スプライン区間61aと、複数の後続スプライン区間61bとを含む。さらに、複数の第2スプライン区間91は、先行スプライン区間91aと、複数の後続スプライン区間91bとを含む。
開放状態において、先行スプライン区間61aと、連結状態において当該先行スプライン区間61aと噛み合う第2スプライン区間91との間の軸方向における距離Dpは、後続スプライン区間61bと、連結状態において当該後続スプライン区間61bと噛み合う第2スプライン区間91との間の軸方向における距離Dsよりも短い。このため、先行スプライン区間61aは、開放状態から連結状態に移行するとき、後続スプライン区間61bよりも先に第2スプライン区間91と噛み合う。
同じく、開放状態において、先行スプライン区間91aと、連結状態において当該先行スプライン区間91aと噛み合う第1スプライン区間61との間の軸方向における距離Dpは、後続スプライン区間91bと、連結状態において当該後続スプライン区間91bと噛み合う第1スプライン区間61との間の軸方向における距離Dsよりも短い。このため、先行スプライン区間91aは、開放状態から連結状態に移行するとき、後続スプライン区間91bよりも先に第1スプライン区間61と噛み合う。
先行スプライン区間91aは、複数の後続スプライン区間91bよりも、スリーブ81の軸方向における端部に近い。第3スプライン84の先行スプライン区間91aは、連結状態において、第1スプライン60の先行スプライン区間61aと噛み合う。
先行スプライン区間61aの複数の歯65はそれぞれ、第1側面65aと、第2側面65bと、先端部65cと、2つの傾斜面65dとを有する。先端部65cは、端部の一例である。
第1側面65a及び第2側面65bは、軸方向に沿うとともに周方向に向く平面である。第2側面65bは、第1側面65aの反対側に位置する。先端部65cは、連結状態において歯65と噛み合う第2スプライン区間91の歯95に向く方向の端部である。先端部65cは、例えば周方向に沿うとともに軸方向に向く平面である。
2つの傾斜面65dは、先端部65cと、第1及び第2側面65a,65bとの角に設けられた面取りである。すなわち、一方の傾斜面65dは、第1側面65aと先端部65cとを接続するとともに、先端部65cに向かうに従って第2側面65bに近づくように延びる。他方の傾斜面65dは、第2側面65bと先端部65cとを接続するとともに、先端部65cに向かうに従って第1側面65aに近づくように延びる。言い換えると、2つの傾斜面65dは、先端部65cに向かって先細るように延びる。
先行スプライン区間91aの複数の歯95はそれぞれ、第1側面95aと、第2側面95bと、先端部95cと、2つの傾斜面95dとを有する。先端部95cは、端部の一例である。
第1側面95a及び第2側面95bは、軸方向に沿うとともに周方向に向く平面である。第2側面95bは、第1側面95aの反対側に位置する。先端部95cは、連結状態において歯95と噛み合う第1スプライン区間61の歯65に向く方向の端部である。先端部95cは、例えば周方向に沿うとともに軸方向に向く平面である。
2つの傾斜面95dは、先端部95cと、第1及び第2側面95a,95bとの角に設けられた面取りである。すなわち、一方の傾斜面95dは、第1側面95aと先端部95cとを接続するとともに、先端部95cに向かうに従って第2側面95bに近づくように延びる。他方の傾斜面95dは、第2側面95bと先端部95cとを接続するとともに、先端部95cに向かうに従って第1側面95aに近づくように延びる。言い換えると、2つの傾斜面95dは、先端部95cに向かって先細るように延びる。
連結装置16が開放状態から連結状態に切り替わるとき、第1シャフト31の回転速度と、第2シャフト32及びスリーブ81の回転速度とが異なる場合がある。このとき、歯65の傾斜面65dが第2スプライン区間91の歯95に当接するとともに、歯95の傾斜面95dが第1スプライン区間61の歯65に当接し、図4に示す第1方向D1に移動しようとするスリーブ81が押し戻される。このため、回転速度に大きな差がある状態で第1スプライン60と第3スプライン84とが噛み合うことが抑制され得る。
また、第1及び第3スプライン60,84に、軸方向に間隔を介して配置された第1及び第2スプライン区間61,91が設けられる。開放状態において、第1スプライン区間61と第2スプライン区間91とが軸方向に交互に配置される。言い換えると、開放状態において、第1スプライン区間61の歯65は、軸方向に間隔を介して配置された2つの第2スプライン区間91の間を通って回転可能に配置される。一方、連結状態において、第1スプライン区間61と第2スプライン区間91とが噛み合う。
このように、第1及び第3スプライン60,84が軸方向に分割されるため、連結状態と開放状態との切り替え時におけるスリーブ81の軸方向における移動量をより短く設定できる。従って、アクチュエータ82として変位距離が短いソレノイドアクチュエータを利用することができ、例えば回転を直動に変化させるモータを利用する場合に比べ、連結状態と開放状態との切り替え時における応答速度が向上し得る。
例えば、一般的に、製品寸法のばらつきにより、1つの第1スプライン区間61において、周方向における歯65の幅が大きくなることがある。この場合、第1スプライン区間61の歯65と、第2スプライン区間91の歯95との間の周方向における隙間が小さい状態で第1スプライン区間61と第2スプライン区間91とが噛み合おうとするとき、幅の大きい歯65が第2スプライン区間91の歯95と、軸方向に当接する、すなわち引っ掛かる。この引っ掛かりにより、第1シャフト31とスリーブ81との相対的な移動が制限され、第1スプライン区間61と第2スプライン区間91とが噛み合い難くなる。全ての第1スプライン区間61と第2スプライン区間91との間の距離が等しい場合、噛み合いが同時に行われるため、第1スプライン区間61の数が多いほど引っ掛かりの生じる可能性が高くなる。
そこで、本実施形態では、開放状態において、先行スプライン区間61aと、連結状態において当該先行スプライン区間61aと噛み合う前記第2スプライン区間91と、の間の軸方向における距離は、後続スプライン区間61bと、連結状態において当該後続スプライン区間61bと噛み合う第2スプライン区間91と、の間の軸方向における距離よりも短い。
これにより、先行スプライン区間61aが先に第2スプライン区間91と噛み合った状態で、複数の後続スプライン区間61bが第2スプライン区間91と噛み合う。従って、全ての第1スプライン区間61と第2スプライン区間91との間の距離が等しい場合と比べて、同時に噛み合おうとするスプラインの数が低減されるため、後続スプライン区間61bと第2スプライン区間91とに引っ掛かりが生じる確率が低減され得る。
また、先行スプライン区間61aの歯65は、第1側面65aと先端部65cとを接続するとともに先端部65cに向かうに従って第2側面65bに近づくように延びる傾斜面65dを有する。連結装置16が開放状態から連結状態に切り替わるとき、先行スプライン区間61aの歯65は、後続スプライン区間61bの歯65よりも先に、第2スプライン区間91に向かって移動する。このとき、第1シャフト31の回転速度と第2シャフト32の回転速度との差が大きい場合、先行スプライン区間61aの歯65の傾斜面65dが第2スプライン区間91の歯95に当接し、第1スプライン区間61と第2スプライン区間91とを互いに離間させる力を生じさせる。
これにより、第1シャフト31の回転速度と第2シャフト32の回転速度との差が大きい状態で第1スプライン60と第3スプライン84とが噛み合うことが抑制され得る。
さらに、先行スプライン区間91aは、複数の後続スプライン区間91bよりも、スリーブ81の軸方向における端部に近い。このため、先行スプライン区間91aの歯95を加工して、傾斜面95dを設けることが容易になり得る。
次に、アクチュエータ82の構造について説明する。図3に示すように、アクチュエータ82は、固定子として機能するステータ101と、コイル102と、可動子として機能するプランジャ103と、保持部として機能する第1保持部材104及び第2保持部材105と、付勢部材として機能するリターンスプリング106と、ヨーク(吸引壁)107とを有する。
ステータ101は、筒部101aと、フランジ部101bとを有する。筒部101aは、第1シャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成される。フランジ部101bは、筒部101aの軸方向の一方の端部から径方向内側に突出し、略円環状に形成される。フランジ部101bの内周面は、第1シャフト31の外周面に僅かな隙間を介して面する。
第1シャフト31に、第3溝108が設けられる。第3溝108は、第1シャフト31の外周面に設けられて周方向に延びる。第3溝108は、第1接続部51と第1連結部52との間に位置し、第1連結部52から離間した位置に設けられる。フランジ部101bは、軸方向において、第1連結部52と第3溝108との間に位置する。
第3溝108に、第2スナップリング36が嵌められる。このため、フランジ部101bは、軸方向において、第1連結部52と第2スナップリング36との間に位置する。なお、第2スナップリング36とフランジ部101bとの間に、ワッシャ109が介在しても良い。
第2スナップリング36は、アクチュエータ82のステータ101と第1シャフト31との軸方向における相対的な移動を制限する。従って、軸方向における第1シャフト31とアクチュエータ82の位置がより正確に定まるため、寸法的な遊びをより小さく設定でき、連結装置16の大型化がより効果的に抑制され得る。
コイル102は、ステータ101の筒部101aに設けられ、軸方向に延びる円筒状に巻回されたソレノイドである。コイル102は、図1に示す制御装置18の制御により通電され、磁場を発生させる。
プランジャ103は、第1シャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成され、ステータ101の筒部101aの内側に配置される。プランジャ103は、軸方向において、ステータ101に設けられたヨーク107と、筒部101aの内周面から突出する第4スナップリング101cとの間に位置する。第4スナップリング101cは、筒部101aの内周面に設けられた溝に取り付けられる。
図12は、図1に示す駆動力伝達装置17のケース34を示す斜視図である。図12に示すように、ケース34は、非磁性体からなる、第1シャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成される円筒部34cと、その円筒部34cに切り欠き34dと、奥面部34eを有する。切り欠き34dは、円筒部34cの一端から軸方向に形成される、一又は複数の切り欠き形状である。奥面部34eは、切り欠き34dの奥側に形成される底面の内、最も深さの浅い面である。本実施形態では、周方向に等間隔の、深さの等しい六つの切り欠き34dと、六つの奥面部34eが設けられる。
図13は、図1に示す駆動力伝達装置17のプランジャ103を示す斜視図である。図13に示すように、プランジャ103は、突出部103aを有する。突出部103aは、プランジャ103の軸方向における一方の端部から径方向内側に突出して形成される、切り欠き34dに嵌合する一又は複数の突出形状である。突出部103aと切り欠き34dの側面との間には僅かな隙間が形成されており、プランジャ103は、円筒部34cに対して、軸方向に摺動可能に、周方向に回転制限されて配設される。本実施形態では、ヨーク107と反対側のプランジャ103端部に、周方向に等間隔の、略四角形断面の六つの突出部103aが設けられる。さらに、突出部103aの内の少なくとも一つは、その先端から更に径方向内側に延伸して形成される延伸部103bを有する。本実施形態では、突出部103aは周方向に等間隔の三つの延伸部103bを有する。
さらに、図3に示すように、プランジャ103は、径方向において、円筒部34cを挟んでスリーブ81と対向する位置に配設される。プランジャ103の内周面は円筒部34cの外周面に僅かな隙間を介して面しており、プランジャ103は軸方向に摺動可能に配設される。言い換えると、円筒部34cは、プランジャ103を軸方向にガイド、及びセンタリングする外周面を有する。
軸方向においては、プランジャ103は、ヨーク107とケース34との間で移動可能である。図4に示すように、連結状態においては、プランジャ103とヨーク107とが当接する。なお、円筒部34cは、プランジャ103の最大移動位置まで、又はそれ以上にヨーク107側まで形成されると良い。これにより、プランジャ103の円筒部34cからの脱落、又はプランジャ103の傾きが低減され得る。また、図3に示すように、開放状態においては、プランジャ103の突出部103aと、ケース34の奥面部34eとが当接する。この場合、奥面部34eがストッパ機能を果たすため、第4スナップリング101cは廃されても良い。
一方で、プランジャ103は、奥面部34eに当接せず、第4スナップリング101cに当接する位置関係でも良い。この場合、第4スナップリング101cがストッパ機能を果たすため、奥面部34eの位置精度が不要になり、安価になり得る。
また、図3に示すように、第1保持部材104と第2保持部材105は、非磁性体からなり、第1シャフト31と同軸に配置された略円筒状に形成される。
さらに、スリーブ81に、図10に示す突起部85が設けられる。突起部85は、スリーブ81の外周面81bから径方向に突出し、略四角形の断面を有する。突起部85は、周方向に延びるフランジ状に形成される。
軸方向において、第1保持部材104と第2保持部材105との間に、スリーブ81の突起部85が配置される。このため、スリーブ81と、第1保持部材104及び第2保持部材105との軸方向における相対的な移動は制限される。一方、スリーブ81の外周面は両保持部材104、105の内周面に僅かな隙間を介して面しており、スリーブ81と、第1保持部材104及び第2保持部材105とは、周方向に相対的に回転可能である。このように、第1保持部材104及び第2保持部材105は、スリーブ81を周方向に相対的に回転可能に保持する。
さらに、第1保持部材104は、第1受け部104aを有する。第1受け部104aは、第1保持部材104の軸方向における一方の端部から、径方向外側に突出する。第1受け部104aは、例えば、周方向に延びたフランジ状に形成される。第1受け部104aは、軸方向において、スリーブ81の突起部85と、プランジャ103の延伸部103bの間に位置する。第1受け部104aの外周面は円筒部34cの内周面に僅かな隙間を介して面しており、第1保持部材104は軸方向に摺動可能に配設される。言い換えると、円筒部34cは、第1保持部材104を軸方向にガイド、及び径方向にセンタリングする内周面を有する。
さらに、第2保持部材105は、軸方向において、スリーブ81の突起部85と、ステータ101のフランジ部101bとの間に位置する。第2保持部材105は、略L字断面の環状に形成される。第2保持部材105の外周面は円筒部34cの内周面に僅かな隙間を介して面しており、第2保持部材104は軸方向に摺動可能に配設される。言い換えると、円筒部34cは、第2保持部材105を軸方向にガイド、及び径方向にセンタリングする内周面を有する。
リターンスプリング106は、例えば、ウェーブスプリングである。なお、リターンスプリング106は、他のスプリングであっても良い。リターンスプリング106は、第2保持部材105とフランジ部101bとの間に介在する。
さらに、リターンスプリング106は、第2保持部材105及び第1保持部材104を介して、プランジャ103を軸方向に沿う第1方向D1と反対の第2方向D2に付勢する。さらに、リターンスプリング106は、第2保持部材105を介して、突起部85を通じてスリーブ81を第2方向D2に付勢する。
また、アクチュエータ82の第1保持部材104の外周面に、マグネット111が取り付けられる。マグネット111は、第1保持部材104とともに、第1シャフト31及び第2シャフト32に対して軸方向に移動可能である。
ストロークセンサ44は、第1保持部材104のマグネット111に向く。ストロークセンサ44は、例えば、マグネット111の磁力を検知することで、プランジャ103、第1保持部材104、第2保持部材105、及びスリーブ81の位置に係る信号を出力できる。図1の制御装置18は、ストロークセンサ44の信号により、スリーブ81が連結位置P1及び開放位置P2のいずれに配置されているかを検出する。
次に、アクチュエータ82の作動原理について説明する。アクチュエータ82は、以下のようにスリーブ81を軸方向に移動させることで、開放状態と連結状態とを切り替える。
通電が切られる場合、例えば、二輪駆動モード中や、四輪駆動モード中の運転手による二輪駆動への切換操作によって、又は走行状態に基づいて、制御装置18によって四輪駆動モード終了判断が成されると、コイル102への通電が停止される。コイル102の通電が切れると、コイル102はプランジャ103に対して第1方向D1への電磁力を発生しない。対して、リターンスプリング106は第2保持部材105を軸方向に沿う第1方向D1と反対の第2方向D2に付勢するため、第2保持部材105と、第2保持部材105に当接される第1保持部材104及びスリーブ81と、第1保持部材104に当接されるプランジャ103とは、ステータ101に対して、第2方向D2へ移動する。
その結果、図3に示すように、プランジャ103の突出部103aと、ケース34の奥面部34eとが当接する。よって、奥面部34eは、プランジャは103、第1保持部材104、第2保持部材105、及びスリーブ81のさらなる移動を制限するストッパとして機能する。
この時、スリーブ81は開放位置P2に位置する。第2シャフト32に係合されているスリーブ81が第1シャフト31から係脱されるため、スリーブ81を介する第1シャフト31と第2シャフト32との連結が開放され、第1シャフト31と、スリーブ81及び第2シャフト32とが、周方向に相対的に回転可能となり、トルクの伝達は行われない。
通電が行われる場合、例えば、運転手による四輪駆動への切換操作によって、又は走行状態に基づいて、制御装置18が四輪駆動モードになると、コイル102は通電され、コイル102は磁界を発生し、プランジャ103に対して第1方向D1への電磁力を発生する。この電磁力は、リターンスプリング106が発生する第1方向D1と反対の第2方向D2への付勢力よりも大きいため、プランジャ103と、プランジャ103の延伸部103bに当接される第1保持部材104と、第1保持部材104に当接される第2保持部材105及びスリーブ81とは、ステータ101に対して、図4に示す第1方向D1へ移動する。
これにより、プランジャ103は、突出部103aの一部である延伸部103bを通じ、第1保持部材104を介して、スリーブ81を保持しつつ、第1方向D1に移動するため、プランジャ103とスリーブ81との間にケース34の円筒部34cを配した構成でも、スリーブ81を第1方向D1に移動させ得る。
なお、第1保持部材104に、突出部103a及び延伸部103bを、径方向外側に突出するように形成し、プランジャ103にはそれに係合する係合部、例えば、延伸部103bに嵌合する凹部を設ける組合せでも良い。これにより、プランジャ103の内周面に突出部103aのような凸形状が無くなることで加工が容易になり、円筒形状の寸法精度が向上する。よって、プランジャ103と円筒部34cとの摺動抵抗が減少し、移動速度に余裕が生まれるため、プランジャ103とスリーブ81の移動速度が低下する場合でも、その影響を抑え得る。
その結果、図4に示すように、プランジャ103とヨーク107とが当接する。よって、ヨーク107は、プランジャは103、第1保持部材104、第2保持部材105、及びスリーブ81のさらなる移動を制限するストッパとして機能する。
この時、スリーブ81は連結位置P1に位置する。第2シャフト32に係合されているスリーブ81が第1シャフト31に係合されるため、スリーブ81を介する第1シャフト31と第2シャフト32との連結が成され、第1シャフト31と、スリーブ81及び第2シャフト32とが、周方向における相対的な回転を制限され、トルクの伝達が行われる。また、複数の第1スプライン区間61と複数の第2スプライン区間91とが噛み合うため、第1スプライン60と第3スプライン84との噛合量が大きく確保され、第1シャフト31と第2シャフト32及びスリーブ81との間で大きなトルクが伝達可能となる。
なお、付勢部材として機能する部材はリターンスプリング106に限らない。例えば、コイル102への通電が切られた時に通電され、第2方向D2に電磁力を発生する第2コイルを設けても良い。これにより、リターンスプリング106が発生する第2方向D2への付勢力が存在しないため、スリーブ81が第1方向D1へ移動する移動速度は大きく成り得る。
また、アクチュエータ82は上記の例に限らない。例えば、コイル102に通電された時にスリーブ81が開放位置P2に移動させられ、コイル102の通電が切られた時にスリーブ81がリターンスプリング106によって連結位置P1に移動させられても良い。
なお、上述の実施形態においては、第1シャフトの具体例として第1シャフト31が説明され、第2シャフトの具体例として第2シャフト32が説明された。しかし、第1シャフト31が第2シャフトの、そして第2シャフト32が第1シャフトの具体例であっても良い。この場合、第2シャフト(第1シャフト31)は開口部55が設けられるとともに突設部53を有し、第1シャフト(第2シャフト32)が挿入部73を有している。
また、連結装置16は、例えば、T/F13に適用され、四輪駆動と二輪駆動とを切り替えても良い。さらには、車両1に限らず、駆動力伝達軸の断接が必要な種々の装置や機械に適用して良い。
以上のように、上述の実施形態によれば、連結装置16、及び駆動力伝達装置17は、
連結と開放との切替時間の増加を抑制できる連結装置、及びそれを用いた駆動力伝達装置を提供することができる。
また、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。上述した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置換、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。