以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。添付図面では、類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
なお、本明細書中において、「シート束のオフセット搬送」とは、排紙口から処理トレイ上に搬入されたシートを集積したシート束を、シート搬送方向と直交(又は交差)する方向に移動(幅寄せ移動)させることを意味し、「オフセット量」とはシート束のオフセット搬送の際のシート搬送方向と直交(又は交差)する方向の移動量を意味する。また、「シート束の整合」とは、排紙口から処理トレイ上に搬入された複数のシートや排出口から積載トレイ上に排出されたシートを、所定の基準(例えば、シート搬送方向や排出方向と直交する方向すなわち幅方向の中心位置であるセンター基準、または幅方向の片側に設定される片側基準)に従って処理トレイ上でシート束を予め定められた姿勢及び位置に配置することを意味する。例えば、「シートを整合した後、オフセットする」とは、複数のシートを前述の基準に従って予め定められた位置及び姿勢で配置した後、その状態のままシート束全体をシート搬送方向や排出方向と直交(又は交差)する方向に移動させることを意味する。
最初に、図1を参照して、画像形成システムの全体構成を説明する。画像形成システムは、画像形成装置Aと、シート処理装置Bとを含んで構成され、画像形成装置Aによって画像形成されたシートを、シート処理装置Bで部揃え集積し、集積されたシート束に綴じ処理などの後処理を施して、下流側の第1の積載トレイ26、第2の積載トレイ27又は第3の積載トレイ28に積載、収納する。なお、本明細書中において、図1の画像形成システムの手前側を装置フロント側、奥側を装置リア側と称し、装置フロント側で操作者が操作を行うものとする。
以下、画像形成装置A、シート処理装置Bについて詳細に説明する。
[画像形成装置]
画像形成装置Aは、図1に示されているように、画像形成ユニットA1と、画像読取ユニットA2と、原稿給送ユニットA3とを含んでいる。画像形成ユニットA1は、装置ハウジング1内に、給紙部2と画像形成部3と排紙部4とデータ処理部5とを備えている。
給紙部2は、図示されている実施形態では、複数のカセット2a,2b,2cを含んでおり、各カセット2a,2b,2cには、予め選定された異なる規格サイズのシートを収納可能になっている。各カセット2a,2b,2cには、内部のシートを一枚ずつ分離する分離機構と、シートを繰り出す給紙機構が内蔵されている。このような構成の給紙部2に収納されたシートは、コントロールパネル84(図9参照)から入力された情報に基づき、本体制御部80から指定されたサイズのシートを給紙経路6に繰り出す。給紙経路6には、中間部に配置され複数のカセット2a,2b,2cから供給されるシートを下流側に給送する搬送ローラ7と、経路端部に配置され各シートを先端揃えするレジストローラ対8とが設けられている。
また、給紙経路6には、大容量カセット2dと、手差しトレイ2eとが連結されており、大容量カセット2dは大量に消費するサイズのシートを収納するオプションユニットで構成され、手差しトレイ2eは、分離給送が困難な厚紙シート、コーティングシート、フィルムシートなど特殊なシートを供給可能となっている。
画像形成部3は、給紙部2から送られたシートに画像を形成するように構成されていればよく、種々の画像形成機構が採用可能である。図示されている実施形態では、画像形成部3として、静電式画像形成機構が示されている。しかしながら、画像形成部3は、図示されている静電式画像形成機構に限定されるものではなく、インクジェット式画像形成機構、オフセット式画像形成機構などを採用することも可能である。
図1に示されている画像形成部3では、感光体9(ドラム、ベルト)と、この感光体9に光学ビームを発光する発光器10とが設けられており、現像器11(ディベロッパー)とクリーナ(図示せず)とが回転する感光体9の周囲に配置されている。図示のものはモノクロ印刷機構であり、感光体9に発光器10で光学的に潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着する。感光体9に付着されたインク画像(インクトナー)は、給紙部2から送られたシートに転写チャージャ12で画像転写され、画像転写されたシートが定着ローラ13で定着された後に、排紙経路14へ送られる。排紙経路14には、排紙ローラ15が配置されていると共に、その末端に排紙口16が形成されており、排紙ローラ15によって排紙口16から後述するシート処理装置Bへシートを搬送する。
このように構成された画像形成ユニットA1の上部には、原稿画像を読み取る原稿読取ユニットA2が設けられており、原稿読取ユニットA2のさらに上部に、原稿給送ユニットA3が搭載されている。
画像読取ユニットA2は、透明ガラスで形成された第1のプラテン17及び第2のプラテン21と、読取キャリッジ18と、読取キャリッジ18に搭載された光源と、光電変換素子19と、ミラーやレンズを組み合わせて構成された縮小光学系20とを備え、プラテン17に沿って読取キャリッジ18を走査してプラテン17上に載置された原稿シートの画像に光源からの光を照射し、原稿シートの画像からの反射光を縮小光学系20で光電変換素子19に案内して、画像の読み取りを行う。光電変換素子19は画像データを電気信号に変換して画像形成部3に転送する。
原稿給送ユニットA3は、給紙トレイ22と、給紙経路23と、排紙トレイ24とを備え、給紙トレイ22上に載置された原稿を給紙経路23に沿って一枚ずつ搬送して、第2のプラテン21上を通過させ、排紙トレイ24に排出する。なお、原稿給送ユニットA3から給送されて第2のプラテン21上を通過する原稿を読み取るときには、読取キャリッジ18を第2のプラテン21の下方で予め停止させておき、第2のプラテン21上を通過する画像から画像データを生成させる。
[シート処理装置]
画像形成装置Aに連結されたシート処理装置Bは、画像形成装置Aの排紙口16から排出された画像形成済みのシートを受け取り、後処理を施す装置であり、(1)排紙口16から排出されたシートを、シート処理を施すことなく積載収容する機能(プリントアウトモード)と、(2)排紙口16から排出されたシートを束状に部揃えして積載収納する機能(ジョグ仕分けモード)と、(3)排紙口16から排出されたシートを束状に部揃えして綴じ処理を施した後に積載収納する機能(「綴じ処理モード」)と、(4)排紙口4から排出されたシートを束状に部揃えした後に、冊子状に折り畳んで積載収納する機能(「製本仕上げ処理モード」)とを有している。なお、シート処理装置Bは、上述の全ての機能を有している必要はなく、装置仕様(設計仕様)に応じて適宜有するようにすればよい。この場合にも、(3)の機能(綴じ処理モード)は最低限有するものとする。
図2にシート処理装置Bの詳細な構成が示されている。シート処理装置Bは、本体筐体25と、第1の積載トレイ26と、第2の積載トレイ27と、第3の積載トレイ28とを備える。本体筐体25の内部には、搬入口29と経路排紙口30との間に略水平方向に略直線状に延びる搬入経路31が設けられている。搬入経路31は、図1に示されているように、画像形成装置Aの排紙口16に連なるように配置され、排紙口16から排出されたシートを搬入経路31を介してシート処理装置B内に搬入できるようになっている。さらに、本体筐体25の内部には、第3の排紙経路32、第2の排紙経路33、第1の排紙経路34が設けられている。第1の排紙経路34は、搬入経路31よりも下流側に配置されている。また、第3の排紙経路32及び第2の排紙経路33は、第1の排紙経路34よりも上流側に配置され、搬入口29から下流側にこの順番で搬入経路31から分岐するように構成されており、それぞれの分岐部には、第1の経路切換片35と第2の経路切換片36が設けられている。また、第1の排紙経路34及び第2の排紙経路33は、シートの搬送方向を搬入経路31とは反転させる方向にシートを搬送するスイッチバック搬送路となっている。
また、本体筐体25の内部には、第1の処理部B1と、第2の処理部B2と、第3の処理部B3とが設けられており、搬入口29から搬入経路31に搬入したシートに、第1の処理部B1、第2の処理部B2又は第3の処理部B3で後処理を施した後に、第1の積載トレイ26、第2の積載トレイ27又は第3の積載トレイ28に積載、収納するようになっている。図示されている実施形態では、搬入経路31の搬入口29は、画像形成装置Aの排紙口16に連なるように配置され、画像形成装置Aの排紙口16から排出されたシートが搬入口29から搬入され、第1の処理部B1を経て第1の積載トレイ26に、第2の処理部B2を経て第2の積載トレイ27に、第3の処理部B3を経て第3の積載トレイ28に排出されるようになっている。
第1の処理部B1は、搬入経路31の経路出口(経路排紙口30)の下流側に配置され、順次送られてくるシートを部揃え集積したシート束に綴じ処理を施した後に、第1の積載トレイ26に積載、収納する。しかしながら、第1の処理部B1で、部揃え集積したシート束を綴じ処理を施さずに第1の積載トレイ26にシートを積載、収納したり、後述する幅方向のオフセットのみを行って第1の集積トレイ26に集積、収納するようにしてもよい。第2の処理部B2は、搬入経路31から分岐する第2の排紙経路33の経路出口(排紙口)37に配置され、順次送られてくるシートを部揃え集積して綴じ処理を施した後に折り処理を施して、第2の積載トレイ27に積載、収納する。第3の処理部B3は、搬入経路から分岐する第3の排紙経路32の下流側に配置され、搬送するシートをシートの搬送方向と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に所定量オフセットさせて区分けした後に第3の積載トレイ28に積載、収納する。
[搬入経路]
搬入経路31は、搬入口29と経路排紙口30との間に略水平方向に延びる直線状の経路で構成されている。搬入経路31には、搬入口29から経路排紙口30に向けてシートを搬送する搬送ローラ38と、搬入経路31の出口端に設けられて搬送されてきたシートを経路排紙口30から排紙させる排紙ローラ39(上方に配置される排紙ローラ39aと下方に配置される排紙ローラ39bとによって構成されている)とが設けられており、これらのローラは正逆回転可能な駆動モータ(図示せず)によって駆動されるようになっている。また、搬入経路31の搬入口29及び経路排紙口30の近傍には、それぞれ、シートの先端及び/又は後端を検出する入口センサS1及び出口センサS2が設けられている。搬送ローラ38は、搬入経路31に沿って複数の箇所に設けるようにしてもよい。
上述の搬入経路31は、搬入口29から搬入されたシートを第1の処理部B1と第2の処理部B2に振り分けて移送できるように、第1の排紙経路34及び第2の排紙経路33と連結されており、経路排紙方向の上流側に第2の排紙経路33を介して第2の処理部B2が、下流側に第1の排紙経路34を介して第1の処理部B1が連結されている。第2の排紙経路33は、搬入経路31から分岐するように搬入経路31に連結され、その下流側に配置されている第2の処理部B2に搬入口29からのシートを案内し、第1の排紙経路34は搬入経路31の経路排紙口30の下流側に連結され、その下流側に配置されている第1の処理部B1に搬入口29からのシートを案内する。また、搬入経路31には、第1の処理部B1及び第2の処理部B2で後処理を施さないシートを第3の積載トレイ28に案内する第3の排紙経路32が第2の排紙経路への分岐部よりも経路排紙方向の上流側に連結されており、第3の排紙経路32を介して第3の処理部B3が連結されている。第3の処理部B3は、搬送するシートを排紙方向と直交する方向にオフセットさせて区分けするジョグ仕分けを行い、ジョグ仕分けされたシートが第3の積載トレイ28に積載、収納される。
搬入経路31から第3の排紙経路32及び第2の排紙経路33への分岐部には、それぞれ、第1の経路切換片35及び第2の経路切換片36がさらに設けられており、ソレノイドなどの作動手段(図示せず)によって駆動されるようになっている。第1の経路切換片35によって、搬入口29から搬入されたシートを第3の排紙経路32に案内するか、第1の排紙経路34又は第2の排紙経路33に案内するかが選定され、第2の経路切換片36によって、搬入口29から送られたシートを第2の処理部B2に案内するか、その下流側の第1の処理部B1に案内するかが選定される。
また、搬入経路31上には、シートにスタンプ(捺印手段)、パンチ(穿孔手段)などの後処理を施す後処理ユニット100が設けられている。図示されている実施形態では、後処理ユニット100は、装置仕様に応じてに脱着可能なように搬入経路31の搬入口29の近傍に配置されている。
[第1の処理部]
第1の処理部B1は、搬入経路31の下流側に配置され経路排紙口30から送られたシートを部揃え集積する処理トレイ40と、集積されたシート束を綴じ処理する綴じ処理機構とを備える。図2に示されているように、搬入経路31の経路排紙口30と段差を隔てた下方に処理トレイ40が設けられており、経路排紙口30と処理トレイ40との間には、経路排紙口30から搬送方向を反転させてシートを処理トレイ40上に案内する第1の排紙経路34が形成されている。
第1の排紙経路34上には、経路排紙口30から送られたシートを処理トレイ40上に搬入するシート搬入機構が設けられており、処理トレイ40には、所定の綴じ位置にシートを位置決めするための位置決め機構と、綴じ処理を施したシート束を下流側の第1の積載トレイ26に搬出するシート束搬出機構が設けられている。シート搬入機構、位置決め機構、シート束搬出機構については、後述する。なお、図示されている実施形態では、処理トレイ40は、経路排紙口30から送られたシートを下流側に配置された第1の積載トレイ26との間でブリッジ支持するようになっている。すなわち、経路排紙口30から送られたシートは、その先端部を下流側の第1の積載トレイ26に積載された最上シートの上に支持されると共に後端部を処理トレイ40上に支持され、第1の積載トレイ26と処理トレイ40とにまたがるように支持される。
[第2の処理部]
搬入経路31には、第1の排紙経路34よりも上流側で、第2の排紙経路33が搬入経路31から分岐するように連結されており、搬入口29から搬入されたシートが第2の排紙経路33を経て第2の処理部B2に案内されるようになっている。第2の処理部B2は、搬入経路31から送られたシートを部揃え集積して、中央部に綴じ処理を施した後に内折り処理する(以下、「製本仕上げ」と記載する。)。製本仕上げされたシート束は、第2の処理部B2の下流側に配置された第2の積載トレイ27に積載、収納される。
第2の処理部B2は、シートを束状に集積するガイド部材41と、ガイド部材41上の所定の位置にシートを位置決めする規制ストッパ42と、規制ストッパ42によって位置決めされたシートの中央部に綴じ処理(中綴じ処理)を施す中綴じステープルユニット43と、中綴じ処理後にシート束を中央部で折り合わせる折り処理機構とを備える。
中綴じステープルユニット43は、特開2008−184324号公報や特開2009−051644号公報などに開示されているように、ヘッドユニットとアンビルユニットでシート束を挟んだ状態でシート中央部に沿って位置移動させることにより中綴じ処理を行う機構を採用している。また、折り処理機構は、図2に示されているように、互いに圧接した折りロール対44に折りブレード45によってシート束を挿入して折りローラ対44の転動で折り合わせる構成を採用している。かかる機構も特開2008−184324号公報や特開2009−051644号公報などに開示されている。
第2の処理部B2の下流側には、第2の積載トレイ27が配置されており、冊子状に折り合わされたシート束が排紙ローラ46によって送り出され、第2の積載トレイ27上に積載、収納されるようになっている。第2の積載トレイ27は、装置筐体25の排出方向の側面において、第1の積載トレイ26の下方に配置されている。
[第3の処理部]
搬入経路31には、第2の排紙経路33よりも上流側で、第3の排紙経路32が搬入経路31から分岐するように連結されており、搬入口29から搬入されたシートが第3の排紙経路32を経て第3の処理部B3に案内されるようになっている。第3の処理部B3は、搬入経路31から送られたシートを搬送方向と直交する方向に所定量だけオフセットさせるローラシフト機構(図示せず)を備え、第3の排紙経路32を搬送されるシートは、部ごとに区分けするようにシートの搬送方向に直交する方向の位置をオフセットさせて第3の処理部B3第3の積載トレイ28に積載、収納される。このようなジョグ仕分け機構は種々の機構が知られているので、ここでは詳しい説明を省略する。なお、第3の積載トレイ28に積載されるシートは、搬入経路31や第3の排紙経路32での搬送中に搬送方向と直交する方向にオフセットされるようにしてもよい。
[手差しセット部]
本体筐体25には、外部で作成したシート束を挿入セットして綴じ処理を施すための手差しセット部47が設けられている。手差しセット部47は、操作者が例えば画像読取した原稿シートを束揃えして綴じ処理を施す際に使用されるものであり、操作者にセットされたシート束に対して内蔵された綴じ処理装置57で綴じ処理を施す機構を装備している。詳細には、図4に示されているように、手差しセット部47は、スリット状開口47aと、シート支持面47bと、規制面47cとによって構成されており、外部からスリット状開口47aにシート束Sを挿入し、シート支持面47b上に支持されたシート束Sに対して、装置内部に配置された綴じ処理装置57で綴じ処理が施されるようになっている。図示されている実施形態では、支持面47bは、処理トレイ40の紙載面40aと同一平面上の隣接する位置に配置されている。これは、後述する処理トレイ40の端縁に沿って移動可能なステープルユニット57aを、処理トレイ40に隣接する位置に設けられたシート支持面47bまで移動させて、操作者によってシート支持面47b上にセットされたシート束に綴じ処理を行うことができるようにするためである。
スリット状開口47aから手差し挿入されたシート束Sは、シート支持面47bに沿って綴じ位置まで挿入され、規制面47cに端面が突き当て規制される。これによって、外部から挿入されたシート束Sは、その下面をシート支持面47bに支持されると共にその端面を規制面47cによって突き当て規制され、所定の綴じ位置に位置決めされる。その後、綴じ位置まで移動されるステープルユニット57aによってシート束Sに綴じ処理が施される。
次に、第1の処理部B1の構成について詳細に説明する。
[第1の処理部の詳細]
図3に示されているように、経路排紙口30と処理トレイ40との間には、シート搬入機構として、経路排紙口30から排紙されるシートの排紙方向と反対方向にスイッチバック搬送する反転搬送機構と、シートを処理トレイ40側に案内するガイド機構と、シートを規制部材55に案内する掻き込み回転体52とが配置されている。
反転搬送機構は、処理トレイ40上に搬入されるシートと係合する作動位置とシートから離間する待機位置との間で上下動する昇降ローラ48と、シートを排紙方向と反対方向に移送するパドル回転体49とによって構成され、昇降ローラ48とパドル回転体49とは搖動ブラケット50に取り付けられている。
装置フレームに回転軸39x(図示されている実施形態では、排紙ローラ39aの回転軸)を中心に搖動可能に搖動ブラケット50が配置され、この搖動ブラケット50に昇降ローラ48とパドル回転体49の回転軸が軸受支持されている。搖動ブラケット50には、図示されていない昇降モータが連結されており、支持されている昇降ローラ48とパドル回転体49とを、処理トレイ40上のシートと係合する作動位置と処理トレイ40上のシートから離間する待機位置との間で上下動する。
また、昇降ローラ48とパドル回転体49とには、図示されていない駆動モータが連結されており、昇降ローラ48は図3中の時計回り方向及び反時計回り方向の両方向(処理トレイ40にシートを送り込む方向及び処理トレイ40からシートを送り出す方向)に回転し、パドル回転体49は図3中の反時計回り方向(処理トレイ40にシートを送り込む方向)に回転するように駆動が伝達されている。また、処理トレイ40には、昇降ローラ48と互いに圧接する従動ローラ51が設けられており、昇降ローラ48と従動ローラ51との間にシート又はシート束をニップして下流側に搬送する。
処理トレイ40上には、処理トレイ40にシートを搬入するためのシート搬入機構として、掻き込み回転体52がさらに設けられている。本実施形態では、掻き込み回転体52は、処理トレイ40の上方に回転可能に配置されたリング形状又は短円筒状のベルト部材によって構成されている。掻き込み回転体52は、処理トレイ40上に集積されているシート束の最上位置のシート上に搬送されてくる新たなシートの上面に係合し、当該シートの先端を押圧しながら図中反時計回りに回転して、シートを後述する規制部材55に当接するまで送り込む。これにより、処理トレイ40上を規制部材55に当接するまで搬送する間に生じ得るカールやスキューを解消させることができる。
さらに、処理トレイ40上には、シート押え部材53が設けられている。シート押え部材53は、板状部材であり、その先端が掻き込み回転体52の回転軸線方向の両側に位置するように配置されており、排紙ローラ39bの回転軸に自重により搖動可能に取り付けられている。したがって、シート押え部材53は処理トレイ40上のシート積載枚数が多くなるにつれて反時計回りに搖動する。
昇降ローラ48と掻き込み回転体52との間には、処理トレイ40上に搬入されるシートを規制部材55に向けて案内するガイド機構が設けられている。図示されている実施形態では、ガイド機構は、図3に点線で示される位置と実線で示されている位置との間で上下動するシートガイド部材54によって構成されている。シートガイド部材54は、経路排紙口30からシートが排紙されるときには点線で示される位置に退避し、排紙されるシートの後端が経路排紙口30を通過した後に実線で示される位置に下降し、シートを処理トレイ40上に案内する。
処理トレイ40は、紙載面40aを有し、紙載面40a上の所定の位置にシートを位置決めするための位置決め機構として、処置トレイ40へ搬入されるシートの先端部(図中の右側の端部)を突き当て規制する規制部材55と、シートの幅方向(搬入及び排出方向と直交する方向)の両側縁に当接して基準(センタ基準、片側サイド基準)の位置に位置決めする一対の側縁整合板56(56F,56R)とを備えると共に、紙載面40a上に積載されたシート束に綴じ処理を施す綴じ処理装置57を備える。
規制部材55は、綴じ処理を施されたシート束を処理トレイ40の下流側に配置された第1の積載トレイ26に向けて搬出する機能を果たせるように、処理トレイ40に沿って排紙方向に往復動可能に構成されている。すなわち、規制部材55は、シート束搬出機構として機能する。図示されている実施形態では、規制部材55を往復動させるための機構は、図5に示されているように、規制部材55が取り付けられているコンベアベルト55vと、コンベアベルト55vを駆動させる駆動モータMとによって構成されている。
装置フロント側(操作者に面する側)に配置される側縁整合板56Fと装置リア側(操作者から遠い側)に配置される側縁整合板56Rは、図6に示されているように、シートの側縁と係合する規制面56xを有し、互いの規制面56xを対向させるように配置される。このような一対の側縁整合板56を所定のストロークで往復動可能に処理トレイ40に配置する。側縁整合板56のストロークは、最大サイズシートと最小サイズシートのサイズ差及び整合した後のシート束を幅方向(搬入方向及び排出方向と直交する方向)に位置移動(オフセット搬送)するオフセット量に応じて設定する。なお、側縁整合板56F,56Rのオフセット移動は、コーナ綴じのときにはセンター基準で積載されたシートを、右コーナ綴じのときには右側に、左コーナ綴じのときには左側に所定量移動する。このオフセット移動は、処理トレイ40にシートが搬入されるたびに一枚ずつ実行する方式と、シートを束状に整合した後に綴じ処理を施すために束毎移動させる方式の何れかを採用する。なお、処理トレイ40には、貫通するスリット溝(図示せず)が設けられており、シート側縁と係合する規制面56xを有する側縁整合板56F、56Rがスリット溝を貫通して処理トレイ40の紙載面40aから突出して延びるように配置されている。
各側縁整合板56F,56Rは、処理トレイ40の背面側(紙載面40aと反対側)で、複数のガイドコロ58(レール部材であってもよい)で摺動可能に支持されるラック59と一体形成されている。各ラック59にはピニオン60を介して整合モータM1が連結されている。整合モータM1は例えばステッピングモータで構成され、図示されていない位置センサで各側縁整合板56F,56Rの位置を検出し、検出値を基準に各側縁整合板56F,56Rを幅方向に指定された移動量だけ移動させることができるように構成されている。なお、図示されているラックピニオン機構以外の機構、例えば側縁整合板56F,56Rをタイミングベルトに固定し、プーリを介しモータによりタイミングベルトを往復動させる機構を採用することも可能である。
このような構成の側縁整合板56は、画像形成装置Aなどから提供されるシートサイズ情報に基づいて所定の待機位置(シートの幅+αの位置)に待機し、「マルチ綴じ」のときには、処理トレイ40上にシートを搬入し、シート端が規制部材55に突き当たったタイミングで整合動作を開始する。この場合の整合動作では、一対の側縁整合板56F,56Rが同一量ずつ互いと反対方向(接近する方向)に移動する。これにより、処理トレイ40に搬入されたシートはシートセンタを基準に位置決めされる。このようなシートの搬入動作と整合動作の繰り返しにより、シートは処理トレイ40上に束状に部揃え積載される。このとき、異なるサイズのシートは、センター基準で位置決めされる。「コーナ綴じ」のときにも、同様に、処理トレイ40上にシートを搬入し、シート端が規制部材55に突き当たったタイミングで整合動作を開始する。この場合の整合動作では、綴じ位置側の側縁整合板56F又は56Rと綴じ位置と反対側の側縁整合板56R又は56Fとの移動量を異ならせ、予め定められた綴じ位置にシートコーナが位置するように移動量が設定される。
綴じ処理装置57は、図6及び図7に示されているように、ステープル針を用いてシート束に針綴じ処理を施す針綴じ装置(以下、ステープルユニットと記載する。)57aと、ステープル針を用いずにシート束に針なし綴じ処理を施す針なし綴じ装置(以下、エコ綴じユニットと記載する。)57bとによって構成され、選択的に綴じ位置に配置されるように構成されている。ステープルユニット57aとエコ綴じユニット57bとは、図7に示されているように、処理トレイ40の規制部材55側の端部に沿って移動可能となっている。エコ綴じユニット57bは、綴じ処理にステープル針を用いないので、綴じ処理にステープルス針を用いるテープルユニット57aと比較してステープル針の補充など消耗品等に係るメンテナンス頻度が少ない。また、特にエコ綴じユニット57bとして圧着綴じを行う機構を採用する場合、一対の加圧面の間でシート束を加圧変形させて圧着させるために一対の加圧面の間に大きな力を作用させる。このため、安全面から、操作者から離れて配置させることが好ましい。このため、本実施形態では、エコ綴じユニット57bは、処理トレイ40の規制部材55側の端部において幅方向の装置奥側(リア側)に配置されている。
針なし綴じ処理は、例えば、ステープル針を用いずに、対向する加圧面の間でシート束を圧着変形させるいわゆる圧着綴じにより行うことができる。針綴じ処理を行うステープルユニット57aや針なし綴じ処理を行うエコ綴じユニット57bの構造は公知であり、特に限定されるものではないので、ここでは詳しい説明を省略する。
ここで、図6及び図7を参照して、各綴じ位置と整合位置との関係並びに各綴じ位置へのステープルユニット54及びエコ綴じユニット55への移動について説明する。
本実施形態では、図7に示されているように、ステープルユニット57aによってステープル針でシート束の複数箇所に綴じ処理を施す「マルチ綴じ位置Ma1、Ma2」と、ステープルユニット57aによってシート束のコーナーに束綴じ処理を施す「コーナ綴じ位置Cp1、Cp2」と、ステープルユニット57aによって手差しセットしたシート束に綴じ処理を施す「マニュアル綴じ位置Mp」と、エコ綴じユニット57bによってシート束のコーナに針なし綴じを施す「エコ綴じ位置Ep」と、ステープルユニット57aの待機位置Wp1と、エコ綴じユニット57bの待機位置Wp2とが設定されている。
マルチ綴じ処理では、処理トレイ40上で規制部材55と一対の側縁整合板56とによって位置決め整合されたシート束の端縁にステープルユニット57aによって綴じ処理を施し、2箇所の綴じ位置として、紙載面40aの端縁に沿って綴じ位置Ma1、Ma2が設定されている。図示されている実施形態では、側縁の2箇所に綴じ処理を施すが、3箇所以上に綴じ処理を施してもよい。コーナ綴じ処理では、処理トレイ40上で集積、整合されたシート束の右コーナ又は左コーナにステープルユニット57aによって綴じ処理を施し、右コナーに綴じ処理を施すための右コーナ綴じ位置Cp1と、左コーナに綴じ処理を施すための左コーナ綴じ位置Cp2とが設定されている。マニュアル綴じ処理では、手差しセット部47のシート支持面47bに支持されているシート束にステープルユニット47aによって綴じ処理を施し、図示されている実施形態では、装置フロント側の領域にマニュアル綴じ位置Mpが設定されている。エコ綴じ処理では、処理トレイ40上で集積、整合されたシート束の側縁部のコーナにエコ綴じユニット47bによって綴じ処理を施し、図示されている実施形態では、装置リア側の領域にエコ綴じ位置Epが設定されている。
ステープルユニット47aには、第1の転動コロ63と第2の転動コロ64とが設けられており、装置フロント側の側枠フレーム61Fに設けられた開口部(図示せず)を貫通させて側枠フレーム61F、61Rに固定されている装置フレーム62に形成された第1の走行レール65と第2の走行レール65にそれぞれ第1の転動コロ63と第2の転動コロ64とを係合させることにより、ステープルユニット47aが第1の走行レール65及び第2の走行レール66に沿って待機位置Wp1とコーナ綴じ位置Cp1との間でストロークSL1で移動できるようになっている。また、エコ綴じユニット47bは、装置フレーム(図示せず)に配置されたガイドロット67に沿って待機位置Wp2とエコ綴じ位置Cp2との間でストロークSL2で移動できるようになっている。
[ニート整合装置]
シート処理装置Bは、積載トレイ上のシートを整合するためのニート整合装置68をさらに備える。図示されている実施形態では、ニート整合装置68は、第1の積載トレイ26と第3の積載トレイ28との間に配置されており、昇降ローラ48と従動ローラ51との間に形成される排出口69を通って処理トレイ40から第1の積載トレイ26上に排出されるシート束を予め定められた位置に整合させる。なお、処理トレイ40の紙載面40aと手差しセット部47のシート支持面47bとが同一平面上に位置するように形成されているので、排出口69は、手差しセット部47のスリット状開口47aにより本体筐体25の側面上に形成される手差し口70と幅方向(シートの排出方向と直交する方向)に隣接して位置する。
以下に、ニート整合装置68の詳細な構造を説明する。以下の説明において、「フロント側」とは、本体筐体において手差しセット部47が設けられている側を意味し、「リア側」とは、フロント側とシート排出方向の反対側を意味する。
ニート整合装置68は、ニート筐体71と、排出口69から排出されるシートの排出方向と直交する方向(以下、幅方向と記載する。)に延びるようにニート筐体71に回転可能に支持されるニート軸部材72と、ニート軸部材72に支持される一対のニート整合板73(73F,73R)と、ニート軸部材72に支持されるパドル装置74と、ニート筐体71内に収容されるニート制御回路75とを備える。ニート筐体71は、本体筐体25のシート排出方向の側面において排出口69の上方に取り付けられる。また、ニート筐体71は、区画壁71aによって区画される機構収納部71bと制御回路収納部71cとを有し、制御回路収納部71cにニート制御回路75が収納されている。ニート軸部材72は、一端部を区画壁71a、他端部を軸支持部71dに回転可能に支持されている。
一対のニート整合板73は、ニート軸部材72に沿って移動可能で且つニート軸部材72周りに回動可能に支持されており、軸方向駆動機構76によってニート軸部材72に沿って移動するように駆動され、回動駆動機構77によって退避位置と作動位置との間でニート軸部材72周りに回動させられる。なお、軸方向駆動機構76及び回動駆動機構77の動作は、後述するシート処理装置Bの後処理制御部81ではなく、ニート制御回路75によって構成されるニート整合制御部によって制御されるようになっている。しかしながら、軸方向駆動機構76及び回転駆動機構77の動作は、シート処理装置Bの後処理制御部81によって制御されるようにしてもよい。
本実施形態では、各ニート整合板73をニート軸部材72に沿って移動させるための軸方向駆動機構76は、各ニート整合板73が取り付けられており且つニート軸部材72に沿って摺動可能にニート軸部材72に支持される移動ブロック76aと、ニート筐体71の機構収納部71b内に配置される軸方向駆動モータ(図示せず)と、移動ブロック76aが固定されており且つ軸方向駆動モータによってニート軸方向に移動する駆動ベルト76bとによって構成されており、移動ブロック76aが軸方向駆動モータによる駆動ベルト76bの移動に伴ってニート軸部材72に沿って案内されながら移動することによりニート整合板73をニート軸部材72に沿って移動させる。しかしながら、軸方向駆動機構76の構成は、一対のニート整合板73をニート軸部材72に沿って移動させることができれば、限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
一対のニート整合板73は、一対の整合板73が排出口69から排出されるシート束の幅よりも広い間隔で配置される受け入れ準備位置から、軸方向駆動機構76によりニート軸部材72に沿って互いに接近する方向に整合位置まで移動して、第1の積載トレイ26上に載置されるシートを挟むようにその幅方向(シートの排出方向と直交する方向)の側縁に一対の整合板73を突き当てることにより、第1の積載トレイ26上の予め定められた位置にシート束を整合させる。
また、本実施形態では、各ニート整合板73をニート軸部材72周りに回動させるための回動駆動機構77は、ニート軸部材72に回動不能に固定される一対の固定ブロック77a,77aと、一対の固定ブロック77a,77aの間にニート軸部材72と平行に且つ移動ブロック76aを貫通して延びる平行軸部材77bと、ニート軸部材72を回転駆動する回動モータ77cとによって構成されている。回動モータ77cはニート筐体71の区画壁71aに固定された状態で制御回路収納部71c内に配置されている。回動モータ77cによってニート軸部材72を回動させると、一対の固定ブロック77aがニート軸部材72周りに回動して、固定ブロック77a,77aの間に支持される平行軸部材77bがニート軸部材72周りに回動する。これにより、平行軸部材77bが貫通する移動ブロック76aがニート軸部材72周りに回動し、移動ブロック76aに取り付けられているニート整合板73をニート軸部材72周りに回動させることができる。しかしながら、回動駆動機構77の構成は、一対のニート整合板73をニート軸部材72周りに回動させることができれば、限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
一対のニート整合板73は、第1の積載トレイ26上に載置されるシート束から離間して上方に位置する退避位置から、回動駆動機構77によりニート軸部材72周りに第1の積載トレイ26へ向けて回動され、第1の積載トレイ26上に載置されるシート束の幅方向の側縁の高さ位置(作動位置)まで下降することにより、第1の積載トレイ26上に載置されるシート束の幅方向の側縁に当接して整合動作を行うことが可能となる。
なお、各ニート整合板73が取り付けられている移動ブロック76aは、ニート軸部材72上で一対の固定ブロック77a,77aの間に配置されているので、ニート軸部材72に沿ったニート整合板73の可動範囲は、一対の固定ブロック77a,77aの配置位置及び間隔によって規制されることとなる。したがって、一対の固定ブロック77a,77aの位置は、排出口69から排出されるシート束の最大幅及び最小幅と第1の積載トレイ26上の予め定められた整合位置とを考慮して設定される。例えば、排出口69からセンター基準で排出されるシート束を一対のニート整合板73F,73Rによってフロント側及びリア側に所定量だけオフセットさせる設定になっている場合、リア側のニート整合板73Rは、リア側にオフセットされたときの最大幅のシート束のリア側側縁よりもリア側まで移動できるようにリア側極限位置が設定されると共に、フロント側にオフセットされたときの最小幅のシート束のリア側側縁の位置まで移動できるようにフロント側極限位置が設定される。また、フロント側のニート整合板73Fは、フロント側にオフセットされたときの最大幅のシート束のフロント側端縁よりもフロント側まで移動できるようにフロント側極限位置が設定されると共に、リア側にオフセットされたときの最小幅のシート束のフロント側の側縁の位置まで移動できるようにリア側極限位置が設定される。
パドル装置74は、ニート軸部材72に回動可能に支持されるパドル支持部材74aと、弾性材料からなり且つパドル支持部材74aに回転可能に支持される羽根状のパドル部材74bと、パドル部材74bを回転駆動するパドル回転駆動機構78と、パドル部材74bをニート軸部材72周りに回動させて昇降するパドル昇降機構79とにより構成される。パドル装置74は、パドル昇降機構79により、パドル部材74bが排出口69から排出されるシート束に接触可能となる図8に実線で示される作動位置と、作動位置よりも上方に位置しパドル部材74bが排出口から69から排出されるシート束に接触不能となる図8に点線で示される待機位置との間でニート軸部材72周りに回動する。
本実施形態では、パドル部材74bを回転駆動するためのパドル回転駆動機構78は、ニート筐体71内に回転可能に支持されるパドル駆動軸78aと、ニート筐体71の区画壁71aに固定された状態で制御回路収納部71c内に収容されており且つパドル駆動軸78aを回転駆動させるパドル回転駆動モータ79と、ニート軸部材72に回転可能に支持される中間回転体78cとによって構成され、ベルト78d,78eを介してパドル駆動軸78aと中間回転体78cとの間並びに中間回転体78cとパドル部材74bとの間で回転を伝達させることにより、パドル部材74bを回転させる。しかしながら、パドル回転駆動機構78の構成は、パドル部材74bを回転させることができれば、限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
また、本実施形態では、パドル部材74bをニート軸部材72周りに回動させるパドル昇降機構79は、ニート筐体71に回動可能に支持されるパドル搖動軸79aと、パドル搖動軸79aを回動させるパドル搖動駆動モータ79bと、ニート軸部材72に回転可能に支持され且つパドル支持部材74に連結されている中間搖動体79cとによって構成され、ベルト79dを介してパドル搖動軸79aと中間搖動体79cとの間で回転伝達させることにより、ニート軸部材72周りに中間搖動体79cを回動させて中間搖動体79cと連結されるパドル支持部材74aをニート軸部材72周りに回動させる。このパドル支持部材72aの回動に伴って、待機位置と作動位置との間でパドル支持部材72aに回転可能に支持されるパドル部材72bが待機位置と作動位置との間でニート軸部材72周りに搖動される。しかしながら、パドル昇降機構79の構成は、パドル部材74bを昇降させることができれば、限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
パドル装置74は、シート束が排出口69から排出されるときに、待機位置から作動位置へ降下してパドル部材を回転することにより、排出口69から排出されたシート束をパドル部材74bで排出口69よりも下方に配置されている第1の積載トレイ26へ向けて掻き落とし、第1の積載トレイ26上に確実に載置させる機能を果たす。
[制御構成]
図9を参照して、図1に示されている画像形成システムの制御構成について説明する。画像形成システムは、画像形成装置Aの制御部(以下、「本体制御部」と記載する。)80と、シート処理装置Bの制御部(以下、「後処理制御部」と記載する。)81とを備えている。本体制御部81は、画像形成制御部82、給紙制御部83と入力部(コントロールパネル)84とを含んでいる。
コントロールパネル84からは、「画像形成モード」と「後処理モード」の設定を行う。画像形成モードは、カラー・モノクロ印刷、両面・片面印刷などのモード設定と、シートサイズ、シート紙質、プリントアウト部数、拡大・縮小印刷などの画像形成条件を設定する。また、「後処理モード」は、例えば「プリントアウトモード」、「綴じ処理モード」の種類である「ステープル綴じ処理モード」及び「エコ綴じ処理モード」、「製本仕上げ処理モード」、「ジョグ仕分けモード」などに設定する。なお、図示されている画像形成装置Aには、「マニュアル綴じモード」が設けられ、このモードが選択されたときには画像形成装置Aの本体制御部80とは別にオフラインでシート束の綴じ処理動作を実行するようになっている。画像形成制御部部82は画像形成部3の動作を制御し、給紙制御部83は、給紙部2から画像形成部3への給紙動作を制御する。
また、本体制御部80は、選択された後処理モード情報とシート枚数、部数情報及び画像形成するシートの紙厚さ情報などを後処理制御部81にデータ送信する。さらに、本体制御部80は、画像形成を終了するたびに、ジョブ終了信号を後処理制御部81に送信する。
上述の後処理モードについて詳細に説明すると、上述の「プリントアウトモード」が選択されたときには、経路排紙口30からのシートを、綴じ処理を施すことなく処理トレイ40を介して第1の積載トレイ26に積載、収納する。この場合には、シートを処理トレイ40に重ね合わせて集積し、本体制御部80からのジョグ終了信号で集積後のシート束を第1の積載トレイ26に排出する。また、第3の処理部B3を経て幅方向にオフセットされ、ジョグ仕分けして第3の積載トレイ28に排出することもできる。
「ステープル綴じ処理モード」は、経路排紙口30から排紙されたシートを処理トレイ40上に集積して部揃えし、部揃えされたシート束に針綴じを施した後に、第1の積載トレイ26に積載、収納する。この場合、画像形成されるシートは原則として同一紙厚さで同一サイズのシートに操作者によって指定される。このステープル綴じ処理モードは、「「マルチ綴じ」「右コーナ綴じ」「左コーナ綴じ」の何れかが選択され指定される。各綴じ位置については前述した通りである。
「ジョグ仕分けモード」」は、画像形成装置Aで画像形成されたシートをオフセットさせて集積するグループと、オフセットさせることなく集積するグループとに区分けされ、第1の処理トレイ26には交互にオフセットされたシート束とオフセットされないシート束が積み上げられる。
第1の積載トレイ26上に積載されるシート又はシート束に対しては、設定に応じて、ニート整合装置73による整合が行われる。また、ニート整合装置73による整合においても、単純なセンタ基準位置への整合と、ジョグ仕分け整合とが行われる。
次に、ニート整合装置68による整合動作の一例として、ニート整合装置73により排出口69から排出されたシート束をセンタ基準位置へ整合する場合のニート整合装置の動作を説明する。処理トレイ40上で、ステープル綴じユニット57a又はエコ綴じユニット57bによりシート束に対して綴じ処理が行われると、シート束は、処理トレイ40上における綴じ処理時の位置そのままで又は一対の側縁整合板56によりセンター基準位置に整合された後に、処理トレイ40から排出口69を経て第1の積載トレイ26へ向けて排出される。排出口69から第1の積載トレイ26へのシート又はシート束の排出が行われるに先だって、ニート制御回路75は、後処理制御部81から、排出口69から排出されるシート又はシート束の位置設定情報及びシートサイズ情報を受信し、回動駆動機構77により一対のニート整合板73を退避位置から第1の積載トレイ26まで下降させると共に一対のニート整合板73が排出口69から排出されるシート又はシート束の幅方向の中心を基準としてシート幅+αの間隔で配置される受け入れ準備位置までニート軸部材72に沿って一対のニート整合板73を移動させる。同時に、ニート制御回路75は、パドル昇降機構79によってパドル装置74を待機位置から作動位置まで下降させてパドル回転駆動機構78によりパドル部材74bを回転させる。さらに、排出口69から排出されたシート又はシート束がパドル部材74bによって第1の積載トレイ26へ掻き落とされて第1の積載トレイ26上に載置されると、ニート制御回路75は、軸方向駆動機構76により一対のニート整合板73を互いに接近させる方向に整合位置まで移動させてシート又はシート束の幅方向の側縁に突き当てさせ、所定の位置にシート又はシート束を整合させる。整合動作が完了すると、ニート整合板73は次のシートの受け入れのために退回動駆動機構77により退避位置に戻されると共に、パドル装置74も待機位置まで上昇される。このようにして、第1の積載トレイ26上での整合動作が行われる。
さらに、シート処理装置Bは、処理トレイ40上でエコ綴じユニット57bによって針なし綴じ処理を施されたシート束に対して、ニート整合装置68を用いて、幅方向のオフセット移動(シフト移動)を行うことが可能となっている。
エコ綴じユニット57bは、処理トレイ40の装置奥側に隣接して配置されているため、シート束は、一対の側縁整合板56F,56Rにより処理トレイ40上で幅方向に奥側にオフセット移動され、センタ基準位置よりも奥側(リア側)に設定されるリア側基準位置に整合された後に、エコ綴じユニット57bによって針なし綴じ処理を施される。処理トレイ40上から第1の積載トレイ26に針なし綴じ処理を施したシート束を排出するときに、一対の側縁整合板56F,56Rによってセンタ基準位置に戻す処理を行うと、その間、処理トレイ40上に後続のシートを搬入することができず、処理速度が低下してしまう。このため、エコ綴じユニット57bにより針なし綴じ処理を施されたシート束は、装置奥側のリア側基準位置に配置されたまま第1の積載トレイ26に排出されることが好ましい。しかしながら、装置奥側のリア側基準位置に配置されたまま第1の積載トレイ26上にシート束が排出されると、操作者から遠くなり、操作者が第1の積載トレイ26上に積載、収納されたシート束を取り出しにくくなる。そこで、シート処理装置Bでは、エコ綴じユニット57bによって針なし綴じ処理を施されたシート束がリア側基準位置のまま排出方向に排出された場合に、ニート制御回路75がニート整合装置68の一対のニート整合板73を用いて、第1の積載トレイ26上でシート束を幅方向にセンタ基準位置側へ向かってオフセット移動させるようになっている。これにより、シート束は排出された状態のときよりも操作者に近い位置に配置されるので、操作者が第1の積載トレイ26上のシート束を取り出しやすくなる。
なお、長尺のシートの場合、処理トレイ40上のシート束が処理トレイ40と第1の積載トレイ26とにまたがってブリッジ支持させる場合がある。この場合、一対のニート整合板73と干渉してしまうことがあり、これを防止するためには、一対のニート整合板73によるシート束の上記シフト移動が完了するまで、処理トレイ40に搬入しないようにする必要が生じる。したがたって、シートの排出方向の長さが予め定められた長さ(処理トレイ40上のシートが一対のニート整合板73と干渉することがない長さ)以下のときのみに、一対のニート整合板73による上記のシフト移動を行うことが好ましい。
以下に、図10を参照して、エコ綴じユニット57によって針なし綴じ処理を施されたシート束に対するニート整合装置68によるシフト移動動作について説明する。ただし、説明を簡単化するために、パドル装置74の動作についての説明は省略する。
処理トレイ40上に搬入されて集積されたシート束Sに針なし綴じ処理を施す場合、図10(a)に示されているように、図示が省略されている一対の側縁整合板56F,56Rによって、シート束Sは、シート束Sの中心S0がセンタ基準R0上に位置するセンタ基準位置から、シート束Sの中心S0がセンタ基準RCよりもリア側に位置するリア側基準位置に整合され、整合されたシート束Sに対してエコ綴じユニット57bによって針なし綴じ処理が施される。このとき、ニート制御回路75は、受け入れ準備位置として、リア側基準位置のシート束Sがそのまま排出方向に排出されたときに一対のニート整合板73の間をシート束が通ることを許容するシート束Sの幅よりも広い幅(シート幅+α)の間隔で配置されるように第1の積載トレイ26の上方に上昇した状態で一対のニート整合板73を移動させる。このとき、フロント側のニート整合板73Fは、第1の積載トレイ26上におけるニート整合装置68による幅方向のオフセット移動の目標位置に移動されたシート束の幅方向のフロント側側縁の位置に配置されることが好ましい。
次に、図10(b)に示されているように、エコ綴じユニット57bにより針なし綴じ処理を施されたシート束Sは、一対の側縁整合板56F,56Rによりセンタ基準位置に戻されることなく、処理トレイ40から第1の積載トレイ26に排出される。シート束Sが第1の積載トレイ26上に排出されると、図10(c)に示されているように、ニート制御回路75は、一対のニート整合板73F,73Rを下降させて、ニート整合板73F、73Rをシート束の幅方向の側縁に当接させた状態で予め定められた目標位置まで幅方向に移動させることにより、シート束Sを目標位置までオフセット移動させる。本実施形態では、フロント側のニート整合板73Fを目標位置に配置した状態で、リア側のニート整合板73Rを幅方向にフロント側のニート整合板73Fに接近させてシート束Sのリア側側縁に突き当ててシート束をフロント側ニート整合板73Fに押し付けることにより、シート束Sを目標位置までオフセット移動させる。
図10では、目標位置は、シート束Sの中心S0がセンタ基準RC上に配置された状態でシート束Sが処理トレイ40から第1の積載トレイ26に排出されたときのシート束Sの位置に設定されている。しかしながら、目標位置は、適宜の位置に設定することが可能である。
フロント側のニート整合板73Fを受け入れ準備位置から下降させて目標位置に配置することで、第1の積載トレイ26上に既に積載されたシート束の上に針なし綴じ処理を施されたシート束が排出された場合に、フロント側のニート整合板73Fによって第1の積載トレイ26に既に積載されたシート束を第1の積載トレイ26に対して押さえつけた状態にすることができる。この状態で、リア側のニート整合板73Rによって針なし綴じ処理を施したシート束を幅方向にオフセット移動させれば、既に積載されたシート束の積載状態を崩しにくくなる。
シート束Sの目標位置へのオフセット移動が完了すると、ニート制御回路75は、図10(d)に示されているように、次のシート束Sの排出に備えて、一対のニート整合板73F,73Rを上昇させ、受け入れ準備位置まで幅方向に移動させる。
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明のシート処理装置及びこれを備える画像形成システムを説明したが、本発明は図示される実施形態に限定されるものではない。図示されている実施形態では、フロント側ニート整合板73Fを目標位置に配置した状態で、リア側ニート整合板73Rをフロント側ニート整合板73Rに幅方向に接近させてシート束をオフセット移動させているが、例えば、第1の積載トレイ26上に排出されたシート束Sの幅方向の両側縁にそれぞれフロント側ニート整合板73Fとリア側ニート整合板73Rを当接させて挟んだ状態でフロント側ニート整合板73F及びリア側ニート整合板73Rを幅方向に移動させることで、目標位置までシート束Sをオフセット移動させるようにしてもよい。