以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
[第1実施形態]
第1実施形態は、光スイッチ装置の構成例である。光スイッチ装置は、電気信号に変換することなく光信号を分岐したり行き先を切り替えたりすることが可能である。入力ポート数がN、出力ポート数がMである光スイッチ装置(N×Mスイッチ)である場合、N個の入力ポートとM個の出力ポートとの間で光路を切り替えることが可能である。
[1] 光スイッチ装置10の構成
[1−1] 光スイッチ装置10の断面構成
図1は、第1実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。光スイッチ装置10は、複数の入力側光ファイバー(入力側光ファイバーアレイ)11、入力側レンズアレイ12、第1光偏向素子(入力側光偏向素子)15、第2光偏向素子(出力側光偏向素子)17、出力側レンズアレイ19、及び複数の出力側光ファイバー(出力側光ファイバーアレイ)22を備える。
複数の入力側光ファイバー11の各々は、外部からレーザー光を受け、このレーザー光を伝搬する。光ファイバー11は、レーザー光の入力ポートとして機能する。図1では、一例として、5本の光ファイバー11−1〜11−5を示している。なお、入力側光ファイバー11、すなわち入力ポートは、1個であってもよい。
入力側レンズアレイ12は、基材13、及び複数のレンズ(マイクロレンズ)14を備える。基材13は、レーザー光を透過する透明材料で構成される。複数のレンズ14は、基材13上に配列される。複数のレンズ14はそれぞれ、複数の光ファイバー11に対応して設けられ、複数の光ファイバー11から出射されたレーザー光を受ける。図1では、5本の光ファイバー11−1〜11−5にそれぞれ対応して、5個のレンズ14−1〜14−5を示している。各レンズ14は、対応する光ファイバー11から出射されたレーザー光を平行光に整形する。レンズ14は、例えば平凸レンズからなる。光ファイバー11の光軸は、基材13の垂線と平行に設定される。
第1光偏向素子15は、液晶層を備える液晶素子から構成される。第1光偏向素子15は、レンズアレイ12を透過したレーザー光を透過すると共に、このレーザー光を偏向させる。第1光偏向素子15は、複数の液晶パネル16が積層されて構成される。第1光偏向素子15の具体的な構成については後述する。光ファイバー11の光軸は、第1光偏向素子15の垂線と平行に設定される。
第2光偏向素子17は、液晶層を備える液晶素子から構成される。第2光偏向素子17は、第1光偏向素子15を透過したレーザー光を透過すると共に、このレーザー光を偏向させる。この際、第2光偏向素子17は、図1の水平方向、すなわち、入力側光ファイバー11から出射されたレーザー光と平行な方向に、レーザー光を偏向させる。第2光偏向素子17は、複数の液晶パネル18が積層されて構成される。第2光偏向素子17の具体的な構成については後述する。第1光偏向素子15と第2光偏向素子17とは、互いに平行に配置される。
出力側レンズアレイ19は、基材20、及び複数のレンズ(マイクロレンズ)21を備える。基材20は、レーザー光を透過する透明材料で構成される。各レンズ21は、第2光偏向素子17を透過したレーザー光を受け、このレーザー光を集光する。レンズ21は、例えば平凸レンズからなる。複数のレンズ21(21−1〜21−5)はそれぞれ、複数の光ファイバー22に対応して設けられ、複数の光ファイバー22に向けてレーザー光を出射する。基材20と第2光偏向素子17とは、平行に配置される。
複数の出力側光ファイバー22の各々は、レンズアレイ19からレーザー光を受け、このレーザー光を伝搬する。光ファイバー22は、レーザー光の出力ポートとして機能する。図1では、一例として、5本の光ファイバー22−1〜22−5を示している。光ファイバー22の光軸は、第2光偏向素子17の垂線と平行に設定される。
光ファイバーに用いる光の波長は、例えば1.55μmである。レンズアレイ12によって整形された平行光の直径は、例えば400μmである。光の波長、及び平行光の直径は、要求される装置コストやサイズなど要求仕様に応じて調整が可能である。
光ファイバー11を伝搬するレーザー光は、直線偏光である。第1光偏向素子15及び第2光偏向素子17の偏光方向(偏光軸)は、レーザー光の偏光方向と平行に設定される。第1光偏向素子15及び第2光偏向素子17の偏光軸とは、液晶分子の長軸(ダイレクタ)が電界に応じて動く面と平行な方向である。
[1−2] 光スイッチ装置10のブロック図
図2は、第1実施形態に係る光スイッチ装置10のブロック図である。光スイッチ装置10は、第1光偏向素子15、第2光偏向素子17、駆動回路30、電圧発生回路31、制御回路32、及び操作部33を備える。
後述するように、第1光偏向素子15及び第2光偏向素子17の各々は、液晶層の配向を制御するための複数の電極を備える。駆動回路30は、第1光偏向素子15が備える複数の電極に電気的に接続される。駆動回路30は、第1光偏向素子15に複数の電圧を印加することで、第1光偏向素子15を駆動する。同様に、駆動回路30は、第2光偏向素子17が備える複数の電極に電気的に接続される。駆動回路30は、第2光偏向素子17に複数の電圧を印加することで、第2光偏向素子17を駆動する。
電圧発生回路31は、外部電源を用いて、光スイッチ装置10の動作に必要な複数の電圧を発生する。電圧発生回路31により発生された電圧は、光スイッチ装置10内の各モジュール、特に駆動回路30に供給される。
操作部33は、ユーザーの入力操作を受け付ける。ユーザーは、操作部33を介して、レーザー光の光路を切り替えることが可能である。
制御回路32は、光スイッチ装置10の動作を統括的に制御する。制御回路32は、操作部33に入力された情報を受け、この情報を用いて、駆動回路30及び電圧発生回路31を制御することが可能である。
[1−3] 光偏向素子15、17の構成
次に、光偏向素子15、17の構成について説明する。図3は、光偏向素子15の断面図である。
光偏向素子15は、複数の液晶パネル16が積層されて構成される。図3では、一例として、10個の液晶パネル16−1〜16−10を示している。液晶パネル16−1〜16−10は、例えば、透明な接着材を用いて積層される。
図4は、図3に示した1つの液晶パネル16の平面図である。図5は、図4のA−A´線に沿った液晶パネル16の断面図である。
液晶パネル16は、透過型の液晶素子である。液晶パネル16は、対向配置された基板40、41と、基板40、41間に挟持された液晶層42とを備える。基板40、41の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板)から構成される。例えば、基板40は、光ファイバー11側に配置され、光ファイバー11からのレーザー光は、基板40側から液晶層42に入射する。
液晶層42は、基板40、41間に充填される。具体的には、液晶層42は、基板40、41と、シール材43とによって包囲された領域内に封入される。シール材43は、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいて基板40又は基板41に塗布された後、紫外線照射、又は加熱等により硬化させられる。
液晶層42を構成する液晶材料は、基板40、41間に印加された電圧(電界)に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。本実施形態の液晶パネル16は、例えばホモジニアスモードである。すなわち、液晶層42として正の誘電率異方性を有するポジ型(P型)のネマティック液晶が用いられ、液晶分子は、電圧(電界)を印加しない時には基板面に対して概略水平方向に配向する。ホモジニアスモードでは、電圧を印加しない時に液晶分子の長軸(ダイレクタ)が概略水平方向に配向し、電圧を印加した時に液晶分子の長軸が垂直方向に向かって傾く。液晶分子の傾斜角は、印加される実効電圧に応じて変化する。液晶層42の初期配向は、液晶層42を挟むようにして基板40、41にそれぞれ設けられた2つの配向膜によって制御される。
なお、液晶モードとして、ネガ型(N型)のネマティック液晶を用いた垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードを用いてもよい。VAモードでは、電界を印加しない時に液晶分子の長軸が概略垂直方向に配向し、電圧を印加した時に液晶分子の長軸が水平方向に向かって傾く。
基板40の液晶層42側には、それぞれがY方向に延びる複数の電極44、及び複数の電極45が設けられる。複数の電極44と複数の電極45とは、Y方向に直交するX方向に沿って、交互に配置される。複数の電極44は、同じ幅を有する。複数の電極45は、同じ幅を有する。図4及び図5では、一例として、4個の電極44と、4個の電極45とを示している。複数の電極44と複数の電極45とは、互いの間隔が同じであり、例えば、この間隔は、電極を加工する際の製造工程に起因する最小加工寸法である。
1つの電極44と1つの電極45との対が繰り返し単位46を構成する。繰り返し単位46の幅は、屈折率変化の周期幅Wである。液晶パネル16−1〜16−10は、同じ周期幅Wを有する。
基板40、及び電極44、45上には、液晶層42の初期配向を制御する配向膜47が設けられる。
基板41の液晶層42側には、共通電極48が設けられる。共通電極48は、基板41全面に平面状に設けられる。基板41、及び共通電極48上には、液晶層42の初期配向を制御する配向膜49が設けられる。なお、基板40に共通電極48を配置し、基板41に電極44、45を配置してもよい。
電極44、45、及び共通電極48はそれぞれ、透明電極から構成され、例えば、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。
図2には、一例として、6個の繰り返し単位46を示している。図2では、図面が煩雑になるのを避けるために、電極44が占める領域と、電極45が占める領域とを四角で表しているが、実際の断面構造は、図5に示す通りである。前述したように、液晶パネル16−1〜16−10は、同じ繰り返し単位46の幅(周期幅W)を有する。
液晶パネル16−1〜16−10において、同じ列の10個の繰り返し単位46に含まれる10個の電極44は、液晶パネル16−1〜16−10の順に長くなる。液晶パネル16−1〜16−10において、同じ列の10個の繰り返し単位46に含まれる10個の電極45は、液晶パネル16−1〜16−10の順に短くなる。
換言すると、同じ列の10個の電極44は、逆階段状に形成される。10個の電極44の増加分は一定である。例えば、最小の電極44(液晶パネル16−1の電極44)の幅が最小値10μm、最大の電極44(液晶パネル16−10の電極44)の幅が最大値100μmであり、液晶パネル16ごとに10μmずつ大きくなる。
同じ列の10個の電極45は、階段状に形成される。10個の電極45の減少分は一定である。例えば、最大の電極45(液晶パネル16−1の電極45)の幅が最大値100μm、最小の電極45(液晶パネル16−10の電極45)の幅が最小値10μmであり、液晶パネル16ごとに10μmずつ小さくなる。
なお、液晶パネル16−1〜16−10の積層順序は、図3の通りでなくてもよく、任意に入れ替えることが可能である。すなわち、順に幅が広くなる10個の電極44と、順に幅が狭くなる10個の電極45とをそれぞれ有する液晶パネル16−1〜16−10を光偏向素子15が備えていればよく、階段状に電極に並べなくてもよい。
液晶パネル16として、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式を用いた透過型液晶素子(透過型LCOS)を用いてもよい。透過型LCOSを用いることで、電極を微細加工することが可能となり、より小型の液晶パネル16を実現できる。透過型LCOSでは、シリコン基板(又は透明基板上に形成されたシリコン層)が用いられる。シリコン基板は、バンドギャップとの関係で、特定の波長以上の波長を有する光(赤外線を含む)を透過するため、LCOSを透過型液晶素子として使用することができる。LCOSを使用することにより、セル電極がより小さい液晶素子を実現することができるため、液晶素子を小型化することが可能となる。
(光偏向素子17の構成)
光偏向素子17は、光偏向素子15と同じ構成である。図6は、光偏向素子17の断面図である。
光偏向素子17は、複数の液晶パネル18が積層されて構成される。図6では、一例として、10個の液晶パネル18−1〜18−10を示している。液晶パネル18−1〜18−10は、例えば、透明な接着材を用いて積層される。
液晶パネル18−1〜18−10の構成は、図3の液晶パネル16−1〜16−10の構成と同じである。液晶パネル18の平面図及び断面図も、図4及び図5の液晶パネル16と同じである。
[1−4] 光偏向素子15、17の具体例
次に、光偏向素子15、17の具体例について説明する。図7は、光偏向素子15、17の具体例を説明する断面図である。
入力ポートの数(すなわち、光ファイバー11の数)が6個であり、出力ポートの数(すなわち、光ファイバー22の数)が6個であるものとする。光偏向素子15は、6個の入力ポートに対応する6個の偏向領域a〜fを備える。偏向領域a〜fの各々は、図7の例では、5個の繰り返し単位46で構成される。1つの偏向領域に含まれる5個の繰り返し単位46は、同じ電圧制御が行われる。
光偏向素子17は、6個の出力ポートに対応する6個の偏向領域A〜Fを備える。偏向領域A〜Fの各々は、図7の例では、5個の繰り返し単位46で構成される。1つの偏向領域に含まれる5個の繰り返し単位46は、同じ電圧制御が行われる。
[1−5] 光偏向素子15、17の他の構成例
次に、光偏向素子15、17の他の構成例について説明する。図8は、他の構成例に係る光偏向素子15の断面図である。なお、光偏向素子17の構成は、光偏向素子15の構成と同じであるため、説明は省略する。
光偏向素子15は、複数の液晶パネル16が積層されて構成される。図8では、一例として、7個の液晶パネル16−1〜16−7を示している。液晶パネル16−1〜16−7は、例えば、透明な接着材を用いて積層される。
図9は、図8に示した1つの液晶パネル16の平面図である。図10は、図9のA−A´線に沿った液晶パネル16の断面図である。
基板40の液晶層42側には、それぞれがY方向に延びる複数の電極44、及び複数の電極45が設けられる。複数の電極44と複数の電極45とは、Y方向に直交するX方向に沿って、交互に配置される。複数の電極44、及び複数の電極45はそれぞれ、同じ幅を有する。図9及び図10では、一例として、4個の電極44と、4個の電極45とを示している。複数の電極44と複数の電極45とは、互いの間隔が同じである。
図8において、液晶パネル16−1に含まれる複数の電極44及び複数の電極45は、電極ピッチP1を有する。液晶パネル16−1の電極パターンをパターン“a”と呼ぶ。図8では、図面が煩雑になるのを避けるために、電極44が占める領域と、電極45が占める領域とを四角で表しているが、実際の断面構造は、図10に示す通りである。
2個の液晶パネル16−2、16−3は、同じ構造を有する。液晶パネル16−2に含まれる複数の電極44及び複数の電極45は、電極ピッチP2を有する。液晶パネル16−3も、電極ピッチP2を有する。液晶パネル16−2、16−3の電極パターンをパターン“b”と呼ぶ。パターン“b”の電極ピッチP2は、パターン“a”の電極ピッチP1の2倍である。
4個の液晶パネル16−4〜16−7は、同じ構造を有する。液晶パネル16−4に含まれる複数の電極44及び複数の電極45は、電極ピッチP3を有する。液晶パネル16−5〜16−7も、電極ピッチP3を有する。液晶パネル16−4〜16−7の電極パターンをパターン“c”と呼ぶ。パターン“c”の電極ピッチP3は、パターン“b”の電極ピッチP2の2倍である。
最大の電極幅を有する液晶パネル16−7において、1つの電極44と1つの電極45との対が繰り返し単位46であり、この繰り返し単位の幅は、屈折率変化の周期幅Wである。周期幅Wごとに、屈折率の勾配が繰り返される。
光偏向素子15が7個の液晶パネル16−1〜16−7を備える構成例である場合、パターン“a”、“b”、“c”の3種類の液晶パネルを用いて、光偏向素子15を構成することができる。
積層される液晶パネル16の数がさらに増えた場合でも、上記と同様の電極ピッチ及び電極パターンの関係が適用される。例えば、光偏向素子15が15個の液晶パネル16を備える構成例である場合、4種類の電極パターンをそれぞれ有する4種類の液晶パネルを用いて、光偏向素子15を構成することができる。
一般化すると、最小パターンであるパターン“a”の電極ピッチP1の2(n−1)倍の電極ピッチを有する液晶パネルの枚数は、2(n−1)である。“n”は、1から連続する自然数である。また、“n”は、最低で2まで増分(インクリメント)される。上記関係を満たすように、液晶パネルを積層することで、光偏向素子15に屈折率の勾配を形成できる。
具体的には、パターン“b”の電極ピッチP2は、パターン“a”の電極ピッチP1の2倍であるため、パターン“b”の液晶パネルの数は2個である。パターン“c”の電極ピッチP3は、パターン“a”の電極ピッチP1の4倍であるため、パターン“c”の液晶パネルの数は4個である。液晶パネル16の積層数が3個以上であれば、上記関係が成り立つ。
なお、パターン“a”、“b”、“c”それぞれの液晶パネルの枚数が規定した通りであればよく、積層順序は、図8と同じでなくてもよい。すなわち、同じパターンの液晶パネルを連続して積層しなくてもよい。
[1−6] 光偏向素子15、17の配線構造
次に、光偏向素子15、17の配線構造について説明する。図11は、光偏向素子15、17の配線構造を示す模式図である。
前述したように、光偏向素子15は、複数の液晶パネル16(例えば10個の液晶パネル16−1〜16−10)が積層されて構成される。また、光偏向素子15は、X方向に並んだ複数の繰り返し単位46を備える。図11では、一例として、光偏向素子15が6個の繰り返し単位46−1〜46−6を備える場合を示している。各繰り返し単位46は、複数の液晶パネル16の数に対応する複数の電極44と、複数の液晶パネル16の数に対応する複数の電極45とを備える。
繰り返し単位46−1に含まれる10個の電極44は、配線50−1に共通接続される。繰り返し単位46−1に含まれる10個の電極45は、配線51−1に共通接続される。配線50−1、51−1は、駆動回路30にも接続される。すなわち、繰り返し単位46−1に含まれる10個の電極44には、同じ電圧が印加され、繰り返し単位46−1に含まれる10個の電極45には、同じ電圧が印加される。
配線50−2〜50−6、及び配線51−2〜51−6はそれぞれ、繰り返し単位46−2〜46−6に接続される。
同様に、光偏向素子17は、X方向に並んだ複数の繰り返し単位46を備える。図11では、一例として、光偏向素子17が6個の繰り返し単位46−1〜46−6を備える場合を示している。光偏向素子17には、電極44用の配線52−1〜52−6と、電極45用の配線53−1〜53−6とが接続される。
[2] 動作
次に、上記のように構成された光スイッチ装置10の動作について説明する。
図1に示すように、例えば光ファイバー11−4から出射したレーザー光は、レンズ14−4によって平行光に整形される。レンズ14−4を透過したレーザー光は、光偏向素子15に垂直に(入射角=0で)入射する。光偏向素子15は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。光偏向素子15の偏向角θは、制御回路32によって制御される。
光偏向素子15を透過したレーザー光は、入射角θで光偏向素子17に入射する。光偏向素子17は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。これにより、光偏向素子17から出射したレーザー光は、光偏向素子17の垂線と平行になる。すなわち、光偏向素子17から出射したレーザー光は、光偏向素子15に入射するレーザー光と平行になる。光偏向素子17を透過したレーザー光は、レンズ21−2で集光され、その後、光ファイバー22−2に入射する。その後、光ファイバー22−2によってレーザー光が伝搬される。
図3に示すように、駆動回路30は、光偏向素子15の所定の偏向領域に含まれる複数の電極44に電圧V1を印加し、複数の電極45及び共通電極48に電圧V2(<V1、例えばV2=0V)を印加する。電圧V1と電圧V2とは、所定時間毎に極性反転され、すなわち、交流駆動される。
これにより、電極44が占める領域は、液晶層に電界が印加され、液晶層の屈折率が低くなる。一方、電極45が占める領域は、液晶層に電界が印加されず、液晶層の屈折率が高いままである。図3の各液晶パネル16において、ハッチングがない領域は、液晶層の屈折率が相対的に高い領域を表しており、ドットハッチングの領域は、液晶層の屈折率が相対的に低い領域を表している。
偏向領域は、右に向かって順に高くなる屈折率の勾配を有する。偏向領域において、最も左側の領域は、屈折率が最も低く、最も右側の領域は、屈折率が最も高い。屈折率が最も低い領域は、光が進む速度が最も速く、屈折率が最も高い領域は、光が進む速度が最も遅い。すなわち、屈折率が最も低い領域を透過したレーザー光と、屈折率が最も高い領域を透過したレーザー光とは、所定の位相差を有する。よって、図3の例では、光偏向素子15は、レーザー光を右側に偏向させることができる。レーザー光を左側に偏向させる場合は、電極44と電極45との電圧関係を図3と逆にすればよい。
また、0V以外に1種類の電圧を用いるのみで、光偏向素子15に屈折率の勾配を形成することができる。すなわち、制御回路32の電圧制御を容易にすることができる。また、電極44に印加する電圧V1のレベルを変化させることで、屈折率の勾配の大きさを変化させることができる。これにより、光偏向素子15の偏向角θを制御することができる。
図6に示すように、駆動回路30は、光偏向素子17の所定の偏向領域に含まれる複数の電極45に電圧V1を印加し、複数の電極44及び共通電極48に電圧V2(0V)を印加する。これにより、偏向領域には、屈折率の勾配が形成される。よって、図6の例では、光偏向素子17は、レーザー光を左側に偏向させることができる。
図7を用いて、光偏向素子15、17のより具体的な動作について説明する。図7には、光偏向素子15の偏向領域cにレーザー光が入射し、光偏向素子17の偏向領域Dからレーザー光が出射する例を示している。
駆動回路30は、偏向領域cに含まれる複数の電極44に電圧V1を印加し、複数の電極45及び共通電極48に電圧V2(0V)を印加する。駆動回路30は、偏向領域c以外の偏向領域に含まれる複数の電極44、45、及び共通電極48に、0Vを印加する。
駆動回路30は、偏向領域Dに含まれる複数の電極45に電圧V1を印加し、複数の電極44及び共通電極48に電圧V2(0V)を印加する。駆動回路30は、偏向領域D以外の偏向領域に含まれる複数の電極44、45、及び共通電極48に、0Vを印加する。
以上のような電圧制御により、図7に示すように、光偏向素子15、17内にそれぞれ、鋸歯状の屈折率分布を持つブレーズド回折格子のような屈折率分布を形成することができる。これにより、レーザー光の光路を切り替えることができる。
偏向角θ、屈折率変化の周期幅(位相変化ピッチ)をW、周期幅W内の位相差(リタデーション)をRe、液晶層の屈折率異方性をΔn、全ての液晶パネルの液晶ギャップの合計をdとする。液晶ギャップとは、液晶パネルの2つの基板間の距離、又は液晶層の厚さを意味する。本実施形態では、10個の液晶パネル16−1〜16−10の液晶ギャップの合計が“d”である。偏向角θは以下の式(1)で表され、リタデーションReは以下の式(2)で表される。
θ=asin(Re/W) ・・・(1)
Re=Δn・d ・・・(2)
asinは、アークサインを意味する。
例えば、屈折率異方性Δn=0.2、各液晶パネル16のギャップが7μm、各液晶パネル16のリタデーションが1,400nm、10個の液晶パネル16で得られるReが14,000nm、10個の液晶パネル16で構成される周期幅W=100μmであるとすると、式(1)、(2)から、片側の最大偏向角は8度と計算される。
光偏向素子15に含まれる偏向領域a〜fの各々の幅は、使用されるレーザー光の直径と同じかそれより大きいことが望ましく、本実施形態では、1,000μmとする。光偏向素子17に含まれる偏向領域A〜Fの条件についても、光偏向素子15と同じである。
光偏向素子15、17による偏向角が±8度であるので、光偏向素子15と光偏向素子17との距離が10cmである場合、約±1.4cm(全体で2.8cm)の範囲で光偏向素子17の偏向領域を選択することができる。光偏向素子17の偏向領域の幅が1,000μmであるので、1つの入力ポートに入力されたレーザー光の出力先を、最大で27個の出力ポートの中から1つを選択することができる。
他の例として、屈折率異方性Δn=0.25、各液晶パネル16のギャップが7μm、各液晶パネル16のリタデーションが1,750nm、10個の液晶パネル16で得られるReが17,500nm、10個の液晶パネル16で構成される周期幅W=100μmであるとすると、式(1)、(2)から、片側の最大偏向角は10度と計算される。
光偏向素子15、17による偏向角が±10度であるので、光偏向素子15と光偏向素子17との距離が10cmである場合、約±1.76cm(全体で3.52cm)の範囲で光偏向素子17の偏向領域を選択することができる。光偏向素子17の偏向領域の幅が1,000μmであるので、1つの入力ポートに入力されたレーザー光の出力先を、最大で35個の出力ポートの中から1つを選択することができる。
なお、光偏向素子における液晶ギャップ、液晶材料、及び電極ピッチなどを調整することで、最大偏向角や応答速度を要求される仕様に調整することができる。
[3] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、光スイッチ装置10は、光ファイバー(入力ポート)11から第1レーザー光を受け、第1レーザー光を偏向させて第2レーザー光を出射する第1光偏向素子15と、第1光偏向素子15と平行に配置され、第2レーザー光を第1レーザー光と平行になるように偏向させて第3レーザー光を出射する第2光偏向素子17と、第2光偏向素子17から第3レーザー光を受ける複数の光ファイバー(出力ポート)22と、第1光偏向素子15の偏向角、及び第2光偏向素子17の偏向角を制御する制御回路32とを備える。第1光偏向素子15は、複数の光ファイバー22の1つを選択するようにして、複数の第1偏向角の1つで第1レーザー光を偏向させる。第2光偏向素子17は、複数の光ファイバー22に対応するように配置された複数の偏向領域A〜Fを有し、複数の偏向領域A〜Fの各々は、第2レーザー光を偏向させる。
従って第1実施形態によれば、第1光偏向素子15の偏向角と第2光偏向素子17の偏向角とを制御することで、入力側の複数の光ファイバー11と、出力側の複数の光ファイバー22との間の光路を切り替えることが可能である。
また、高価な電子部品及び光学部品を使用せず、液晶素子を用いて光スイッチ装置10を構成することができる。これにより、光スイッチ装置10のコストを低減することができる。また、光スイッチ装置10の消費電力を低減できる。
また、機械動作を行う部品を使用しないため、光スイッチ装置10の信頼性を向上させることができる。また、光スイッチ装置10を小型化することができる。
[第2実施形態]
図12は、第2実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。第2実施形態では、光ファイバー11を伝搬するレーザー光は、直線偏光でなくても構わない。
レンズアレイ12と第1光偏向素子15との間には、偏光板(直線偏光子)23が設けられる。偏光板23は、面内において、互いに直交する透過軸及び吸収軸を有する。偏光板23は、ランダムな方向の振動面を有する光から、透過軸と平行な一方向の振動面を有する光を透過する、すなわち直線偏光(直線偏光した光成分)を透過する。偏光板23の透過軸は、第1光偏向素子15及び第2光偏向素子17の偏光軸と平行に設定される。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
第2実施形態によれば、光ファイバー11から出射するレーザー光の偏光条件に制限なく、かつ第1実施形態と同じ動作を実現できる。
[第3実施形態]
第3実施形態は、反射型の光スイッチ装置の構成例である。第3実施形態は、レーザー光を反射する反射部材と、1つの光偏向素子とを用いて光スイッチ装置を構成している。
[1] 光スイッチ装置10の構成
[1−1] 光スイッチ装置10の断面構成
図13は、第3実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。光スイッチ装置10は、複数の入力側光ファイバー(入力側光ファイバーアレイ)11、複数の出力側光ファイバー(出力側光ファイバーアレイ)22、レンズアレイ12、偏光板23、光偏向素子15、及び反射部材24を備える。
複数の入力側光ファイバー11、及び複数の出力側光ファイバー22は、光偏向素子15に対して同じ側に配置される。図13では、一例として、3本の入力側光ファイバー11−1〜11−3、及び3本の出力側光ファイバー22−1〜22−3を示している。なお、入力側光ファイバー11、すなわち入力ポートは、1個であってもよい。
レンズアレイ12は、基材13、複数の入力側レンズ14、及び複数の出力側レンズ21を備える。複数のレンズ14はそれぞれ、複数の光ファイバー11に対応して設けられ、図13では、3本の光ファイバー11−1〜11−3にそれぞれ対応して、3個のレンズ14−1〜14−3を示している。複数のレンズ21はそれぞれ、複数の光ファイバー22に対応して設けられ、図13では、3本の光ファイバー22−1〜22−3にそれぞれ対応して、3個のレンズ21−1〜21−3を示している。
偏光板23は、透過軸に平行な直線偏光を透過する。偏光板23の透過軸は、光偏向素子15の偏光軸と平行に設定される。なお、光ファイバー11を出射するレーザー光が直線偏光である場合は、偏光板23を省略することが可能である。
光偏向素子15は、液晶層を備える液晶素子から構成される。光偏向素子15は、レンズアレイ12を透過したレーザー光を透過すると共に、このレーザー光を偏向させる。また、光偏向素子15は、反射部材24によって反射されたレーザー光を透過すると共に、このレーザー光を偏向させる。光偏向素子15は、入射光を偏向させる入力領域15−1と、出射光を偏向させる出力領域15−2とを備える。
光偏向素子15は、複数の液晶パネル16が積層されて構成される。光偏向素子15の入力領域15−1の構成は、図3の光偏向素子15と同じである。また、入力領域15−1は、図7の光偏向素子15と同様に、複数の偏向領域a〜fを備える。光偏向素子15の出力領域15−2の構成は、図6の光偏向素子17と同じである。また、出力領域15−2は、図7の光偏向素子17と同様に、複数の偏向領域A〜Fを備える。
反射部材24は、例えば、三角柱からなるプリズムで構成され、プリズムの平面形状は、例えば直角二等辺三角形である。換言すると、反射部材24は、直角プリズムミラーで構成してもよい。反射部材24は、光偏向素子15の面内方向に対して45度の角度を持つ第1反射面24Aと、第1反射面24Aに直交する第2反射面24Bとを有する。プリズムの反射面に反射膜を形成することで、反射面の反射率を向上させるようにしてもよい。反射膜としては、アルミニウム(Al)などの金属を用いることができる。反射部材24は、入射光を2回反射させることで、入射光の入射位置と異なる位置からレーザー光を出射することが可能である。反射部材24に入射するレーザー光と、反射部材24から出射するレーザー光とは平行である。
[1−2] 光スイッチ装置10のブロック図
図14は、第3実施形態に係る光スイッチ装置10のブロック図である。光スイッチ装置10は、光偏向素子15、駆動回路30、電圧発生回路31、制御回路32、及び操作部33を備える。光偏向素子15は、入射光を偏向させる入力領域15−1と、出射光を偏向させる出力領域15−2とを備える。
駆動回路30は、光偏向素子15の入力領域15−1に複数の電圧を印加することで、入力領域15−1を駆動する。また、駆動回路30は、光偏向素子15の出力領域15−2に複数の電圧を印加することで、出力領域15−2を駆動する。その他の構成は、第1実施形態と同じである。
[1−3] 光偏向素子15の配線構造
図15は、光偏向素子15の配線構造を示す模式図である。図15では、一例として、入力領域15−1が6個の繰り返し単位46−1〜46−6を備え、出力領域15−2が6個の繰り返し単位46−1〜46−6を備える場合を示している。各繰り返し単位46は、複数の液晶パネル16の数に対応する複数の電極44と、複数の液晶パネル16の数に対応する複数の電極45とを備える。
入力領域15−1には、配線50−1〜50−6、及び配線51−1〜51−6が接続される。配線50−1〜50−6はそれぞれ、繰り返し単位46−1〜46−6に含まれる複数の電極44に接続される。配線51−1〜51−6はそれぞれ、繰り返し単位46−1〜46−6に含まれる複数の電極45に接続される。
出力領域15−2には、配線52−1〜52−6、及び配線53−1〜53−6が接続される。配線52−1〜52−6はそれぞれ、繰り返し単位46−1〜46−6に含まれる複数の電極44に接続される。配線53−1〜53−6はそれぞれ、繰り返し単位46−1〜46−6に含まれる複数の電極45に接続される。
[2] 動作
次に、上記のように構成された光スイッチ装置10の動作について説明する。
図13に示すように、例えば光ファイバー11−2から出射したレーザー光は、レンズ14−2によって平行光に整形される。レンズ14−2を透過したレーザー光は、光偏向素子15の入力領域15−1に垂直に(入射角=0で)入射する。光偏向素子15は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。光偏向素子15の偏向角θは、制御回路32によって制御される。
光偏向素子15の入力領域15−1を透過したレーザー光は、反射部材24によって反射される。具体的には、レーザー光は、反射部材24が備える2つの反射面24A、24Bで2回反射される。反射面24Aに入射するレーザー光と、反射面24Bで反射されたレーザー光とは、平行になる。
反射部材24によって反射されたレーザー光は、入射角θで光偏向素子15の出力領域15−2に入射する。光偏向素子15は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。これにより、光偏向素子15の出力領域15−2から出射したレーザー光は、光偏向素子15の垂線と平行になる。すなわち、出力領域15−2から出射したレーザー光は、入力領域15−1に入射するレーザー光と平行になる。光偏向素子15の出力領域15−2を透過したレーザー光は、レンズ21−3で集光され、その後、光ファイバー22−3に入射する。その後、光ファイバー22−3によってレーザー光が伝搬される。
[3] 第3実施形態の効果
以上詳述したように第3実施形態では、光スイッチ装置10は、入力領域15−1及び出力領域15−2を含み、入力領域15−1において光ファイバー(入力ポート)11から第1レーザー光を受け、第1レーザー光を偏向させて第2レーザー光を出射する光偏向素子15と、第2レーザー光を出力領域15−2に向けて反射させる反射部材24と、出力領域15−2から出射される第3レーザー光を受ける複数の光ファイバー(出力ポート)22と、入力領域15−1の偏向角、及び出力領域15−2の偏向角を制御する制御回路32とを備える。入力領域15−1は、複数の光ファイバー22の1つを選択するようにして、複数の第1偏向角の1つで第1レーザー光を偏向させる。出力領域15−2は、複数の光ファイバー22に対応するように配置された複数の偏向領域A〜Fを有し、複数の偏向領域A〜Fの各々は、第2レーザー光を第1レーザー光と平行になるように偏向させて第3レーザー光を出射する。
従って第3実施形態によれば、入力領域15−1の偏向角と出力領域15−2の偏向角とを制御することで、入力側の複数の光ファイバー11と、出力側の複数の光ファイバー22との間の光路を切り替えることが可能である。
また、1つの光偏向素子15を用いて、光スイッチ装置10を実現できる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
[第4実施形態]
第4実施形態は、入力側のレーザー光源として、レーザーダイオードを用いるようにしている。
図16は、第4実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。図17は、第4実施形態に係る光スイッチ装置10のブロック図である。光スイッチ装置10は、レーザーダイオードアレイ(LDアレイ)25を備える。
レーザーダイオードアレイ25は、基板26、及び複数のレーザーダイオード27を備える。図16では、一例として、5個のレーザーダイオード27−1〜27−5を示している。なお、複数のレーザーダイオードを配置した構造以外のレーザーアレイを用いてもよい。例えば、単体の素子で多チャンネルのレーザーを出射できる、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用いてもよい。
制御回路32は、レーザーダイオードアレイ(LDアレイ)25の動作を制御する。具体的には、制御回路32は、複数のレーザーダイオード27のうち少なくとも1つを選択し、選択したレーザーダイオード27からレーザー光を出射させる。
(動作)
次に、上記のように構成された光スイッチ装置10の動作について説明する。
図16に示すように、制御回路32は、例えばレーザーダイオード27−3からレーザー光を出射させる。レーザーダイオード27−3から出射したレーザー光は、レンズ14−3によって平行光に整形される。レンズ14−3を透過したレーザー光は、光偏向素子15に垂直に(入射角=0で)入射する。光偏向素子15は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。光偏向素子15の偏向角θは、制御回路32によって制御される。
光偏向素子15を透過したレーザー光は、入射角θで光偏向素子17に入射する。光偏向素子17は、偏向角θでレーザー光を偏向させる。これにより、光偏向素子17から出射したレーザー光は、光偏向素子17の垂線と平行になる。すなわち、光偏向素子17から出射したレーザー光は、光偏向素子15に入射するレーザー光と平行になる。光偏向素子17を透過したレーザー光は、レンズ21−1で集光され、その後、光ファイバー22−1に入射する。その後、光ファイバー22−1によってレーザー光が伝搬される。
第4実施形態によれば、複数のレーザーダイオード27で発生されたレーザー光の光路を切り替えると共に、光ファイバー22から出射させることができる。
[第5実施形態]
第5実施形態は、振動面(振動方向)が異なる複数の光を含むレーザー光を扱うことが可能な光スイッチ装置の構成例である。
図18は、第5実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。図19は、第5実施形態に係る光スイッチ装置10のブロック図である。
光スイッチ装置10は、複数の入力側光ファイバー(入力側光ファイバーアレイ)11、入力側レンズアレイ12、第1光偏向素子(入力側光偏向素子)15−p、第2光偏向素子(入力側光偏向素子)15−s、第3光偏向素子(出力側光偏向素子)17−p、第4光偏向素子(出力側光偏向素子)17−s、出力側レンズアレイ19、及び複数の出力側光ファイバー(出力側光ファイバーアレイ)22を備える。
光ファイバー11から出射したレーザー光は、互いに振動面が直交するp偏光及びs偏光を含む。第1光偏向素子15−p、及び第3光偏向素子17−pは、p偏光用の光偏向素子である。第2光偏向素子15−s、及び第4光偏向素子17−sは、s偏光用の光偏向素子である。
第1光偏向素子15−pは、光ファイバー11から出射したレーザー光に含まれるp偏光を偏向させる。第2光偏向素子15−sは、光ファイバー11から出射したレーザー光に含まれるs偏光を偏向させる。第1光偏向素子15−pの偏光軸と第2光偏向素子15−sの偏光軸とは、概略直交する。
第3光偏向素子17−pは、第1光偏向素子15−pを透過したp偏光を偏向させる。第4光偏向素子17−sは、第2光偏向素子15−sを透過したs偏光を偏向させる。第3光偏向素子17−pの偏光軸は、第1光偏向素子15−pの偏光軸と平行である。第4光偏向素子17−sの偏光軸は、第2光偏向素子15−sの偏光軸と平行である。
第1光偏向素子15−p、及び第2光偏向素子15−sは、偏向軸以外は第1実施形態の光偏向素子15と同じ構成を有する。第3光偏向素子17−p、及び第4光偏向素子17−sは、偏向軸以外は第1実施形態の光偏向素子17と同じ構成を有する。第1光偏向素子15−pと第3光偏向素子17−pとの距離D1は、第2光偏向素子15−sと第4光偏向素子17−sとの距離D2と同じに設定される。
第1光偏向素子15−p、及び第2光偏向素子15−sは、制御回路32によって、同じ電圧制御が行われる。すなわち、第1光偏向素子15−p、及び第2光偏向素子15−sにおいて、同じ列に配置された2つの偏向領域に同じ電圧が印加される。
同様に、第3光偏向素子17−p、及び第4光偏向素子17−sは、制御回路32によって、同じ電圧制御が行われる。すなわち、第3光偏向素子17−p、及び第4光偏向素子17−sにおいて、同じ列に配置された2つの偏向領域に同じ電圧が印加される。
(動作)
次に、上記のように構成された光スイッチ装置10の動作について説明する。
図18に示すように、例えば光ファイバー11−4から出射したレーザー光は、レンズ14−4によって平行光に整形される。レンズ14−4を透過したレーザー光は、光偏向素子15−p、15−sに入射する。光偏向素子15−pは、レーザー光に含まれるp偏光を偏向角θで偏向させる。光偏向素子15−sは、レーザー光に含まれるs偏光を偏向角θで偏向させる。光偏向素子15−p、15−sの偏向角θは、制御回路32によって制御される。
光偏向素子15−pを透過したp偏光は、入射角θで光偏向素子17−pに入射する。光偏向素子17−pは、p偏光を偏向角θで偏向させる。これにより、光偏向素子17−pから出射したp偏光は、光偏向素子17−pの垂線と平行になる。
光偏向素子15−sを透過したs偏光は、入射角θで光偏向素子17−sに入射する。光偏向素子17−sは、s偏光を偏向角θで偏向させる。これにより、光偏向素子17−sから出射したs偏光は、光偏向素子17−sの垂線と平行になる。
光偏向素子17−p、17−sを透過したレーザー光は、レンズ21−2で集光され、その後、光ファイバー22−2に入射する。その後、光ファイバー22−2によってレーザー光が伝搬される。
第5実施形態によれば、p偏光及びs偏光を含むレーザー光、換言すると、複数の振動面を有する複数の光を含むレーザー光の光路を切り替えることができる。また、第5実施形態では、直線偏光を生成するための偏光板が不要である。
[第6実施形態]
第6実施形態は、第3実施形態の変形例であり、反射型の光スイッチ装置の構成例である。また、第6実施形態は、振動面(振動方向)が異なる複数の光を含むレーザー光を扱うことが可能な光スイッチ装置の構成例である。
図20は、第6実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。図21は、第6実施形態に係る光スイッチ装置10のブロック図である。
光スイッチ装置10は、複数の入力側光ファイバー(入力側光ファイバーアレイ)11、複数の出力側光ファイバー(出力側光ファイバーアレイ)22、レンズアレイ12、偏光板23、第1光偏向素子15−p、第2光偏向素子15−s、位相差板28、及び反射部材24を備える。
複数の入力側光ファイバー11、及び複数の出力側光ファイバー22は、光偏向素子15−p、15−sに対して同じ側に配置される。図20では、一例として、4本の入力側光ファイバー11−1〜11−4、及び3本の出力側光ファイバー22−1〜22−3を示している。
レンズアレイ12は、4本の光ファイバー11−1〜11−4にそれぞれ対応して、4個のレンズ14−1〜14−4を備え、また3本の光ファイバー22−1〜22−3にそれぞれ対応して、3個のレンズ21−1〜21−3を備える。
光ファイバー11から出射したレーザー光は、互いに振動面が直交するp偏光及びs偏光を含む。第1光偏向素子15−pは、p偏光用の光偏向素子である。第2光偏向素子15−sは、s偏光用の光偏向素子である。第1光偏向素子15−pの偏光軸と第2光偏向素子15−sの偏光軸とは、概略直交する。第1光偏向素子15−p、及び第2光偏向素子15−sは、偏向軸以外は第3実施形態の光偏向素子15と同じ構成を有する。
第1光偏向素子15−pは、光ファイバー11から出射したレーザー光に含まれるp偏光を偏向させる。また、第1光偏向素子15−pは、反射部材24によって反射されたレーザー光に含まれるp偏光を偏向させる。
第2光偏向素子15−sは、光ファイバー11から出射したレーザー光に含まれるs偏光を偏向させる。また、第2光偏向素子15−sは、反射部材24によって反射されたレーザー光に含まれるs偏光を偏向させる。
位相差板28は、屈折率異方性を有しており、光の進行方向に直交する平面内において、互いに直交する遅相軸及び進相軸を有する。位相差板28は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長の光の間に所定のリタデーション(λを透過する光の波長としたとき、λ/2の位相差)を与える機能を有する。すなわち、位相差板28は、1/2波長板(λ/2板)から構成される。位相差板28の遅相軸は、第1光偏向素子15−pの偏光軸に対して概略45度の角度をなすように設定される。
反射部材24の構成は、第3実施形態の図3と同じである。
第1光偏向素子15−pの入力領域15−1、及び第2光偏向素子15−sの入力領域15−1は、制御回路32によって、同じ電圧制御が行われる。すなわち、第1光偏向素子15−pの入力領域15−1、及び第2光偏向素子15−sの入力領域15−1において、同じ列に配置された2つの偏向領域に同じ電圧が印加される。
同様に、第1光偏向素子15−pの出力領域15−2、及び第2光偏向素子15−sの出力領域15−2は、制御回路32によって、同じ電圧制御が行われる。すなわち、第1光偏向素子15−pの出力領域15−2、及び第2光偏向素子15−sの出力領域15−2において、同じ列に配置された2つの偏向領域に同じ電圧が印加される。
(動作)
次に、上記のように構成された光スイッチ装置10の動作について説明する。
図20に示すように、例えば光ファイバー11−3から出射したレーザー光は、レンズ14−3によって平行光に整形される。レンズ14−3を透過したレーザー光は、光偏向素子15−pの入力領域15−1、及び光偏向素子15−sの入力領域15−1に入射する。光偏向素子15−pは、レーザー光に含まれるp偏光を偏向角θで偏向させる。光偏向素子15−sは、レーザー光に含まれるs偏光を偏向角θで偏向させる。光偏向素子15−p、15−sの偏向角θは、制御回路32によって制御される。
光偏向素子15−pによって偏向されたp偏光は、1/2波長板28によって、s偏光に変換される。続いて、反射部材24によって反射されたs偏光は、光偏向素子15−sの出力領域15−2に入射し、光偏向素子15−sは、s偏光を偏向角θで偏向させる。これにより、光偏向素子15−sから出射したs偏光は、光偏向素子15−sの垂線と平行になる。
光偏向素子15−sによって偏向されたs偏光は、1/2波長板28によって、p偏光に変換される。続いて、反射部材24によって反射されたp偏光は、光偏向素子15−pの出力領域15−2に入射し、光偏向素子15−pは、p偏光を偏向角θで偏向させる。これにより、光偏向素子15−pから出射したp偏光は、光偏向素子15−pの垂線と平行になる。
光偏向素子15−p、15−sを透過したレーザー光は、レンズ21−3で集光され、その後、光ファイバー22−3に入射する。その後、光ファイバー22−3によってレーザー光が伝搬される。
第6実施形態によれば、p偏光及びs偏光を含むレーザー光の光路を切り替えることができる。また、第6実施形態では、直線偏光を生成するための偏光板が不要である。また、第6実施形態によれば、2個の光偏向素子15−p、15−sを用いて、レーザー光の光路を切り替えることが可能である。
[第7実施形態]
第7実施形態は、第6実施形態の変形例であり、反射型の光スイッチ装置の構成例である。また、第7実施形態は、振動面(振動方向)が異なる複数の光を含むレーザー光を扱うことが可能な光スイッチ装置の構成例である。
図22は、第7実施形態に係る光スイッチ装置10の断面図である。光スイッチ装置10のブロック図は、図21と同じである。
位相差板29は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長の光の間にλ/4の位相差を与える機能を有する。すなわち、位相差板29は、1/4波長板(λ/4板)から構成される。位相差板29の遅相軸は、第1光偏向素子15−pの偏光軸に対して概略45度の角度をなすように設定される。
このように構成された光スイッチ装置10において、第1光偏向素子15−pによって偏向されたp偏光は、1/4波長板29によって、円偏光に変換される。続いて、反射部材24によって反射された円偏光は、1/4波長板29によって、s偏光に変換される。1/4波長板29を透過したs偏光は、第2光偏向素子15−sによって偏向される。
第2光偏向素子15−sによって偏向されたs偏光は、1/4波長板29によって、円偏光に変換される。続いて、反射部材24によって反射された円偏光は、1/4波長板29によって、p偏光に変換される。1/4波長板29を透過したp偏光は、第1光偏向素子15−pによって偏向される。
第7実施形態によれば、p偏光及びs偏光を含むレーザー光の光路を切り替えることができる。
[第8実施形態]
第8実施形態は、第1乃至第7実施形態で示した光スイッチ装置の応用例である。第8実施形態は、光通信ネットワークの構築に用いられる波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)の構成例である。具体的には、波長選択スイッチは、波長の異なる複数の光信号が多重された波長多重光信号を通信するための波長多重光通信に用いることが可能である。
図23は、第8実施形態に係る波長選択スイッチ(WSS)60のブロック図である。WSS60は、分波器61、スイッチモジュール62、複数の合波器63、及び制御モジュール64を備える。スイッチモジュール62は、複数の光スイッチ装置10を備える。複数の光スイッチ装置10の各々は、第1乃至第7実施形態で示した光スイッチ装置10のいずれかに対応する。図23では、一例として、スイッチモジュール62は、4個の光スイッチ装置10−1〜10−4を備える。合波器63−1〜63−4はそれぞれ、光スイッチ装置10−1〜10−4に対応して設けられる。
分波器61は、入力ポート65を介して、外部から入力信号を受ける。入力ポート65に入力される入力信号は、波長の異なる複数の光信号が多重された波長多重光信号である。分波器61は、入力信号を、波長の異なる複数の光信号(レーザー光)に分波する。図23の例では、分波器61は、波長の異なる4つの光信号を出力ポートから出力する。
光スイッチ装置10−1〜10−4はそれぞれ、分波器61から、互いに波長の異なる4つの光信号を受ける。各光スイッチ装置10は、例えば、1つの入力ポート(入力側光ファイバー)11と、4つの出力ポート(出力側光ファイバー)22とを備える。光スイッチ装置10は、入力ポート11と出力ポート22との光路を切り替える。
合波器63−1〜63−4の各々は、光スイッチ装置10−1〜10−4から光信号を受ける。各合波器63は、入力された複数の光信号を合波する。合波器63−1〜63−4はそれぞれ、出力ポート66−1〜66−4を介して、出力信号を出力する。
なお、分波器61と光スイッチ装置10との間の光信号の伝搬、及び光スイッチ装置10と合波器63との間の光信号の伝搬は、例えば光ファイバーを用いて行われる。
制御モジュール64は、スイッチモジュール62の動作を制御する。具体的には、制御モジュール64は、前述した駆動回路30、電圧発生回路31、制御回路32、及び操作部33などを備える。光スイッチ装置10−1〜10−4は、制御モジュール64の制御に基づいて、光信号の光路を切り替える。
図23に示した動作例では、光スイッチ装置10−1は、第1波長(第1波長領域)の光信号(図23の実線)を、光ファイバーを介して合波器63−1に出力する。光スイッチ装置10−2は、第2波長(第2波長領域)の光信号(図23の破線)を、光ファイバーを介して合波器63−4に出力する。光スイッチ装置10−3は、第3波長(第3波長領域)の光信号(図23の一点鎖線)を、光ファイバーを介して合波器63−1に出力する。光スイッチ装置10−4は、第4波長(第3波長領域)の光信号(二点鎖線)を、光ファイバーを介して合波器63−3に出力する。
これにより、第1波長の光信号と第3波長の光信号とが合波された出力信号が出力ポート66−1から出力される。また、第4波長の出力信号が出力ポート66−3から出力される。また、第2波長の出力信号が出力ポート66−4から出力される。
第8実施形態によれば、第1乃至第7実施形態に示した光スイッチ装置10を用いて波長選択スイッチ(WSS)を構成することができる。
[第9実施形態]
第9実施形態は、第1乃至第7実施形態で示した光スイッチ装置の応用例である。第9実施形態は、レーザー光を用いた照明装置の構成例である。
[1] 照明装置の構成
複数のレーザー光源71は、互いに異なる色のレーザー光を発光する。図 図24は、第9実施形態に係る照明装置70の構成を示す概略図である。照明装置70は、複数のレーザー光源71、複数の光スイッチ装置10、及び複数のランプ75を備える。複数の光スイッチ装置10は、第1乃至第7実施形態で示した光スイッチ装置10のいずれかに対応する。
24では、一例として、3個のレーザー光源71−1〜71−3を示している。レーザー光源71−1〜71−3の出力には、光ファイバー72−1〜72−3が接続される。なお、レーザー光源71の数は、1つであってもよい。
複数の光スイッチ装置10の各々は、第1乃至第7実施形態で示した光スイッチ装置10のいずれかに対応する。図24では、一例として、5個の光スイッチ装置10−1〜10−5を示している。
光スイッチ装置10−1は、3個の入力ポートと、4個の出力ポートとを備える。光スイッチ装置10−1の3個の入力ポートにはそれぞれ、光ファイバー72−1〜72−3が接続される。光スイッチ装置10−1の4個の出力ポートにはそれぞれ、光ファイバー73−1〜73−4が接続される。光スイッチ装置10−1は、レーザー光源71−1〜71−3から受けたレーザー光を、光ファイバー73−1〜73−4から出力することができる。
光スイッチ装置10−2は、1個の入力ポートと、複数の出力ポートとを備える。光スイッチ装置10−2の1個の入力ポートは、光ファイバー73−1に接続される。光スイッチ装置10−2の複数の出力ポートは、複数の光ファイバー74を介して、複数のランプ75に接続される。
光スイッチ装置10−3は、1個の入力ポートと、複数の出力ポートとを備える。光スイッチ装置10−3の1個の入力ポートは、光ファイバー73−2に接続される。光スイッチ装置10−3の複数の出力ポートは、複数の光ファイバー74を介して、複数のランプ75に接続される。
光スイッチ装置10−4は、1個の入力ポートと、複数の出力ポートとを備える。光スイッチ装置10−4の1個の入力ポートは、光ファイバー73−3に接続される。光スイッチ装置10−4の複数の出力ポートは、複数の光ファイバー74を介して、複数のランプ75に接続される。
光スイッチ装置10−5は、1個の入力ポートと、複数の出力ポートとを備える。光スイッチ装置10−5の1個の入力ポートは、光ファイバー73−4に接続される。光スイッチ装置10−5の複数の出力ポートは、複数の光ファイバー74を介して、複数のランプ75に接続される。
図25は、第9実施形態に係る照明装置70のブロック図である。照明装置70は、複数のレーザー光源71−1〜71−m、複数の光スイッチ装置10−1〜10−n、駆動回路30、電圧発生回路31、及び制御回路32を備える。“m”及び“n”はそれぞれ、1以上の整数である。図24の例では、m=3、n=5である。
駆動回路30は、複数の光スイッチ装置10−1〜10−nを駆動する。
電圧発生回路31は、外部電源を用いて、照明装置70の動作に必要な複数の電圧を発生する。
制御回路32は、照明装置70の動作を統括的に制御する。制御回路32は、外部から入力信号を受け、この入力信号を用いて、レーザー光源71、駆動回路30、及び電圧発生回路31を制御することが可能である。
(ランプ75の構成)
次に、ランプ75の構成の一例について説明する。図26は、図24に示したランプ75の断面図である。ランプ75は、発光部(蛍光体)80、反射部材81、及び透過フィルター82を備える。
発光部80は、前述した光ファイバー74に接続される。発光部80は、光ファイバー74から出射されるレーザー光を受ける。発光部80は、このレーザー光を波長変換して、所望の色の照明光を放射する。
反射部材81は、発光部80から放射された照明光を反射すると共に、レーザー光を吸収又は反射する機能を有する。また、反射部材81は、レーザー光の漏れを抑制し、発光部80から放射された照明光を、一定の方向に投光する機能を有する。反射部材81は、例えば、所望の形状を有する基材と、基材の内面に設けられた反射膜とから構成される。図26の例では、反射部材81は、お椀形の形状を有する。反射部材81は、光ファイバー74を通す開口部を有する。
透過フィルター82は、発光部80で波長変換された光を透過し、波長変換されないレーザー光(紫外光など)を透過しない性質を有する。透過フィルター82は、人体への悪影響や部材の劣化を招く紫外光や高エネルギー紫光がランプ外に漏れるのを防ぐ役割を担う。
このように構成されたランプ75の動作を説明する。光ファイバー74は、例えば、励起光として紫色の可視光(例えば、波長λ=405nm)を出射するものとする。光ファイバー74から出射された紫光は、発光部80に入射する。発光部80は、これに含まれる蛍光体によって紫光を波長変換し、インコヒーレントな照明光を放射する。
発光部80から放射された照明光は、透過フィルター82を透過し、反射部材81によって一定の方向に投光される。透過フィルター82は、余分な励起光を吸収する。
なお、レーザー光源で発生したレーザー光をそのまま照明光に用いる場合は、蛍光体及び透過フィルターは不要である。
[2] 照明装置70の実施例
次に、照明装置70の実施例について説明する。照明装置70を自動車(車両)の方向指示器に応用した例について説明する。
近年、自動車の方向指示器において、複数のランプを順番に点灯させることによってデザイン性を向上させたシーケンシャルターンランプ(シーケンシャル点灯が可能な方向指示器)が採用され始めている。LEDや電球などの光源を用いた場合、発光部毎に発光素子が必要になる。一方、光スイッチ装置を用いることで、単一、もしくは少数の光源でシーケンシャル点灯が可能であり、信頼性の向上、コストダウン、低消費電力、発熱の抑制、及び省スペース化に貢献できる。
図27は、照明装置70を備えた自動車90の概略図である。照明装置70は、自動車90のヘッドライトを構成する。
照明装置70は、一般的なランプ81−1〜81−3に加えて、方向指示器75_A〜75_Gを備える。方向指示器75_A〜75_Gの各々は、図26のランプで構成される。
制御回路32は、方向指示器75_A〜75_Gの動作を制御する。例えば、制御回路32は、方向指示器75_A〜75_Gをシーケンシャルに点灯させる。
なお、1つのレーザー光源から同時に選択可能な出力は1つであるが、高速で光スイッチ装置を切り替えることで、複数のランプが同時に点灯しているように見せることもできる。また、光ネットワーク内に複数のレーザー光源を設けることも可能である。本実施例では、方向指示器への利用を示したが、メインランプ、ブレーキランプ、フォグランプ、ハザードランプ、テールランプ、及び室内灯などに用いてもよい。
液晶は光の波長によって屈折率が変化する特性を持つため、光源に用いるレーザー光は単一の波長に揃っていることが望ましい。レーザー光は光ファイバー及び光スイッチ装置を通過した後、任意の出力ポートから放射される。放射されたレーザー光をランプに設けられた蛍光体に入射することによって任意の色にて発光させることができる。光源に用いるレーザー光の波長は蛍光による波長変換で複数色の照明光を利用する場合、紫外光か青色光が好ましい。照明光が単色に決まっている場合は、単色の波長のレーザー光を光源として用い、このレーザー光をそのまま、ランプの照明光に用いてもよい。
[3] 第9実施形態の効果
近年、自動車のランプは、かつてのフィラメント球から、高輝度で、長寿命、低電力消費のLEDを用いた光源に移り変わりつつある。特に動力に電力を用いる電動自動車では、各種ランプの消費電力が航続可能距離に直接的に影響するため、フィラメント球から、光変換効率が高く消費電力の少ないLEDへの置き換えが進んでいる。LEDは点光源であるため、発光領域を線や面としてデザインするためには多数の素子を用意する必要がある。さらに、LEDは、電流密度が高くなると発光効率が低下するドループ現象が知られている。このため、光量を確保する上でも複数のLEDを用いる必要がある。このことによってパーツ数やコストが上昇してしまう。
これに対し、第9実施形態によれば、レーザー光を用いた照明装置を実現できる。また、第1乃至第7実施形態に示した光スイッチ装置10を用いて照明装置を構成することができる。
また、高価な電子部品及び光学部品を使用せず、液晶素子を用いて照明装置を構成することができる。これにより、照明装置のコストを低減することができる。
また、機械動作やMEMSミラー方式のスイッチを利用する場合、自動車など振動が懸念される環境での信頼性確保が難しい。しかし、本実施形態では、機械動作を行う部品を使用しないため、照明装置の信頼性を向上させることができる。また、照明装置を小型化することができる。
また、レーザーダイオードは、ドループ現象が起きず、高出力でも高効率を維持することができる。また、レーザー光は、光ファイバーを利用して、ほとんど損失無く任意のポイントに光を送ることが可能である。この特性を利用すれば、少数のレーザーダイオードを用いて多数の発光点を点灯させることができる。また、光ファイバーによる光の伝達には、電線と比べ、軽量でノイズに強く、発火の原因になりにくいなどのメリットもある。
このような、光スイッチを用いた照明装置は、自動車のほかにも、屋内照明、看板、建造物のイルミネーション、航空機、船舶、及びパチンコ台など幅広い用途に応用できる。この本実施形態によれば、発光箇所毎に光源を設ける必要がなくなるため、部品数やコストの低減、ランプの省スペース化、軽量化、発熱の抑制が実現できる。また、光ネットワーク上に複数の光源を持つことで、一部の光源が故障した場合の冗長性も確保することができる。
[変形例]
上記各実施形態では、1次元でレーザー光の光路を切り替える構成について示している。例えば1次元の構成を図面の奥行き方向に複数セット並べることで、2次元で入射するレーザー光の光路を切り替えるように構成することも可能である。
なお、前述した偏光板及び位相差板を規定する角度は、所望の動作を実現可能な誤差、及び製造工程に起因する誤差を含むものとする。例えば、前述した概略45度は、45°±5°の範囲を含むものとする。例えば、前述した直交は、90°±5°の範囲を含むものとする。
本明細書において、「平行」とは、完全に平行であることが好ましいが、必ずしも厳密に平行である必要はなく、本発明の効果に鑑みて実質的に平行と同視できるものを含み、また、製造プロセス上発生しうる誤差を含んでいてもよい。また、「垂直」とは、必ずしも厳密に垂直である必要はなく、本発明の効果に鑑みて実質的に垂直と同視できるものを含み、また、製造プロセス上発生しうる誤差を含んでいてもよい。
本明細書において、板やフィルムは、その部材を例示した表現であり、その構成に限定されるものではない。例えば、偏光板及び位相差板は、板状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有するフィルムやその他の部材であってもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。