JP2019108497A - 熱伝導シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的低い挟持圧力での使用に際し、優れた密着性および熱伝導性を有する熱伝導シートを製造することができる方法を提供する。【解決手段】常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを含むシートを用意する工程と、用意したシートの表面に活性化処理を施す工程とを有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導シートの製造方法に関するものである。
プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、電子部品自体が小型化・薄型化する一方、その高性能化に伴って発熱量が増大している。そして、電子部品の高性能化の結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
ここで、一般に、温度上昇による機能障害対策としては、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導性が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介して発熱体と放熱体とを密着させている。そのため、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、高い密着性と、高い熱伝導性とを有することが求められている。
そこで、近年では、被着体との密着性および熱伝導性に優れる熱伝導シートとして、樹脂と熱伝導性充填材とを含み、且つ、熱伝導性充填材を熱伝導シートの厚み方向に配向させた熱伝導シートが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
また、特許文献3には、熱伝導シートの表面を平滑化することにより、熱放射性に優れた熱伝導シートが得られることが提案されている。
特開2002−026202号公報 特開2010−254766号公報 国際公開第2016/129257号
特許文献1および2などに記載の熱伝導シートでは、熱伝導シート自体を柔らかくすることで密着性を高めている。しかしながら、これらの特許文献には、熱伝導シートと被着体との界面における熱抵抗(以下、「界面抵抗」とも称する。)を低減することについては検討されていない。特に、比較的低い挟持圧力で使用する場合、界面抵抗の影響はさらに大きくなり、密着性と熱伝導性とを両立させることについて改善の余地があった。
また、特許文献3においては、熱伝導シートの表面を平滑化することにより、熱放射性に優れた熱伝導シートが得られ、熱伝導シートの密着性が改善されるとしている。しかしながら、熱伝導シートと放熱体との間には熱抵抗の大きい空気層が存在し、特に低挟持圧力下では、空気層が界面に存在する割合が大きくなる。そのため、熱伝導シートと電子部材との密着性が劣り、熱抵抗を抑制できなくなるという課題は、なお残されたままである。
そこで、本発明は、比較的低い挟持圧力での使用に際し、優れた密着性および熱伝導性を有する熱伝導シートを製造することができる方法を提供することを目的とする。
ここで、本発明において、「比較的低い挟持圧力」とは、挟持圧力が0.08MPa以下(絶対圧)であることを指す。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを併用した熱伝導シートを形成する際に、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを含むシートの表面に活性化処理を施すことにより、被着体との密着性を改善し、比較的低い挟持圧力下において、被着体との密着性を良好にしつつ、優れた熱伝導性を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを含むシート(以下、単に「シート」とも称する。)を用意する工程と、用意したシートの表面に活性化処理を施す工程とを有することを特徴とする。このように、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを含むシートの表面に活性化処理を施すことにより、上記シートの表面に極性基が形成され、熱伝導シートと被着体との間の密着性を高めて、優れた熱伝導性を発揮することができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは1atm(絶対圧)を指す。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記活性化処理する方法が、プラズマ放電、コロナ放電、オゾン放電、紫外線放電のいずれか1つ以上の方法であることが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導シートと被着体との間の密着性をより高めることができる。
さらに、本発明の熱伝導シートの製造方法は、活性化処理する前後の水との接触角の低下が、20°以上であることが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導シートと被着体との間の密着性をより高めることができる。
さらにまた、本発明の熱伝導シートの製造方法は、活性化処理する前の上記シートの銅板との静止摩擦力N0と、前記活性化処理した後の上記シートの銅板との静止摩擦力N1との変化率N1/N0が、1.10以上であることが好ましい。これにより、ヒートシンク等の放熱体との間の密着性をより高めることができる。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、常温常圧下で固体の樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂であることが好ましい。これにより、熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性、および耐薬品性などを向上させることができる。
さらに、本発明の熱伝導シートの製造方法は、常温常圧下で液体の樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂であることが好ましい。これにより、熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性、および耐薬品性などを向上させることができる。
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、常温常圧下で液体の樹脂の含有割合が、常温常圧下で液体の樹脂および常温常圧下で固体の樹脂の合計含有量の60質量%以上75質量%以下であることが好ましい。これにより、熱伝導シートの柔軟性をより高めて、被着体との間の密着性をより良好にし、比較的低い挟持圧力下での熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができる。
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、粒子状無機材料が粒子状炭素材料であり、該粒子状炭素材料の含有割合が25体積%以上45体積%未満であることが好ましい。これにより、熱伝導シート中において伝熱パスを良好に形成しつつ、熱伝導シートの柔軟性が低下するのを抑制して、熱伝導シートおよび被着体間の密着性を高めて、熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させることができる。
本発明によれば、比較的低い挟持圧力での使用に際し、優れた密着性および熱伝導性を有する熱伝導シートを製造することができる。
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートを用意する工程(A)と、用意したシートの表面に対して活性化処理を施す工程(B)とを有する。このように、シートの表面に対して活性化処理を施すことにより、シートの表面に極性基が形成され、被着体との密着性に優れ、高い熱伝導性を有する熱伝導シートが得られる。
<工程(A)>
まず、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートを準備する。ここで、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートは、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料を含む組成物を使用し、既知の方法を用いて形成することができる。
[常温常圧下で液体の樹脂]
上記シートが含み得る常温常圧下で液体の樹脂は、シートひいては最終的に得られる熱伝導シートにおいてマトリックス樹脂を構成し、後述する粒子状無機材料などを結着する結着材として機能することができる。また、シートが常温常圧下で液体の樹脂を含むことにより、最終的に得られる熱伝導シートの柔軟性を良好にすることができ、例えば、熱伝導シートと、該熱伝導シートを接着させる被着体との間の密着性を高めて、熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができる。
ここで、常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、最終的に得られる熱伝導シートと被着体との間の密着性を高めて発熱体からの熱を良好に放熱させるなどの観点からは、常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
[[常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂]]
常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、最終的に得られる熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性、および耐薬品性などを向上させる観点からは、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂が好ましい。
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂は、常温常圧下で液体状の熱可塑性フッ素樹脂であれば、特に限定されない。常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
また、市販されている、常温常圧下で液状の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、デュポン株式会社製のバイトン(登録商標)LM、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−101、スリーエム株式会社製のダイニオンFC2210、信越化学工業株式会社製のSIFELシリーズなどが挙げられる。
なお、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れる観点からは、温度80℃における粘度(粘度係数)が、500cP以上30000cP以下であることが好ましく、550cP以上25000cP以下であることがより好ましい。
因みに、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の分子量は、一般に、後述する常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂の分子量に比べて小さい。従って、シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シート中に常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂と常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂とが含まれる場合は、溶離液にテトラヒドロフランを用い、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる異なる二つのピークのうち、低分子量側のピークが常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を、高分子量側のピークが常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を指すことが通常である。
[[常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂]]
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[[含有割合]]
上記シートひいては最終的に得られる熱伝導シートにおける常温常圧下で液体の樹脂の含有割合は、常温常圧下で液体の樹脂および後に詳述する常温常圧下で固体の樹脂の合計含有量の40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、90質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。常温常圧下で液体の樹脂の含有割合が上記範囲内であれば、熱伝導シートの柔軟性をより高めて、例えば、熱伝導シートと熱伝導シートを挟み込んでいる被着体との間の密着性をより良好にし得るため、比較的低い挟持圧力下での熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができるからである。
[常温常圧下で固体の樹脂]
上記シートが含み得る常温常圧下で固体の樹脂は、シートひいては最終的に得られる熱伝導シートにおいてマトリックス樹脂を構成し、後述する粒子状無機材料などを結着する結着材として機能することができる。ここで、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、熱伝導シートと被着体との良好な密着性を確保するなどの観点からは、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
[[常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂]]
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、最終的に得られる熱伝導シートの難燃性、耐熱性、耐油性、および耐薬品性などを向上させる観点からは、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂であることが好ましい。
[粒子状無機材料]
上記シートが含みうる粒子状無機材料としては、粒子状炭素材料、粒子状無機酸化物材料、粒子状無機窒化物材料などが挙げられる。
[[粒子状炭素材料]]
上記シートが含みうる粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述した中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。シートに膨張化黒鉛を用いれば、最終的に得られる熱伝導シートの熱伝導性をより向上させることができる。ここで、膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
ここで、粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1超5以下であることがより好ましい。なお、本発明において、「粒子状炭素材料のアスペクト比」は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察された任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
粒子状炭素材料の平均粒子径は、体積平均粒子径で50μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。粒子状炭素材料の平均粒子径が上記下限以上であれば、最終的に得られる熱伝導シート中において粒子状炭素材料の伝熱パスをより良好に形成できるため、熱伝導シートの熱伝導性をより高めることができる。また、粒子状炭素材料の平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの良好な柔軟性を確保することができるからである。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA−960」)を用いて、レーザー回折法を用いて測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となるときの粒子径(D50)として求めることができる。
上記シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シートにおける粒子状炭素材料の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。粒子状炭素材料の含有量が上記下限以上であれば、熱伝導シート中において伝熱パスを良好に形成できるため、熱伝導シートの熱伝導性をより高めることができる。また、粒子状炭素材料の含有量が上記上限以下であれば、粒子状炭素材料の配合により熱伝導シートの柔軟性が低下するのを抑制し、熱伝導シートおよび被着体間の密着性を高めて、熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させることができる。
[[粒子状無機酸化物材料]]
上記シートが含みうる粒子状無機酸化物材料としては、具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などが挙げられる。
[[粒子状無機窒化物材料]]
上記シートが含みうる粒子状無機窒化物材料としては、具体的には、窒化ホウ素、窒化ガリウムなどが挙げられる。
[繊維状炭素材料]
また、上記シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シートは、任意に繊維状炭素材料を含んでもよい。この繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述した中でも、繊維状炭素材料としては、CNTなどの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。上記シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シートがCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を含むことにより、熱伝導シートの強度を向上させるとともに、熱伝導シートの熱伝導性等の熱特性を更に向上させることができるからである。
ここで、繊維状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、10超であることが好ましい。なお、本発明において、「繊維状炭素材料のアスペクト比」は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて無作為に選択した100本の繊維状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
ここで、繊維状炭素材料は、市販品のものであってもよく、例えば、スーパーグロース(SG)法(国際公開第2006/011655号参照)に準じて、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を効率的に製造してもよい(以下、SG法により得られたCNTを「SGCNT」とも称することがある。)。
上記シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シートにおける繊維状炭素材料の含有量は、0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、また、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。繊維状炭素材料の含有量が上記下限以上であれば、熱伝導シート中において伝熱パスを良好に形成できるため、熱伝導シートの熱伝導性をより高めることができるとともに、強度をより高めることができる。また、繊維状炭素材料の含有量が上記上限以下であれば、繊維状炭素材料の配合により熱伝導シートの柔軟性が低下するのを抑制し、熱伝導シートおよび被着体間の密着性を高めて、熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させることができる。
[添加剤]
上記シート、ひいては最終的に得られる熱伝導シートには、必要に応じて、熱伝導シートの形成に使用され得る既知の添加剤を配合することができる。そして、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤りん系難燃剤、りん酸エステル系難燃剤などの難燃剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
このような常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートは、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含む組成物を使用し、既知の方法を用いて形成することができる。中でも、上記シートは、シート形成時に既知の手法を用いて粒子状無機材料をシートの厚み方向に配向させる工程を経て製造することが好ましく、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形してプレ熱伝導シートを得る工程(プレ熱伝導シート形成工程)と、得られたプレ熱伝導シートを用いて積層体を形成する工程(積層体形成工程)と、積層体をスライスする工程(スライス工程)とを経て製造することがより好ましい。以下、一例として、プレ熱伝導シート形成工程、積層体形成工程、およびスライス工程を順次実施して、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートを得る場合について説明する。
[プレ熱伝導シート形成工程]
プレ熱伝導シート形成工程では、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料を含み、任意に添加剤を更に含有する組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る。
[[組成物]]
ここで、組成物は、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料と、任意の添加剤とを混合して調製することができる。そして、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂、粒子状無機材料および添加剤としては、上記した常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料および添加剤を用いることができる。因みに、熱伝導シートの樹脂を架橋型の樹脂とする場合には、架橋型の樹脂を含む組成物を用いてプレ熱伝導シートを形成してもよいし、架橋可能な樹脂と硬化剤とを含有する組成物を用いてプレ熱伝導シートを形成し、プレ熱伝導シート成形工程後に架橋可能な樹脂を架橋させることにより、熱伝導シートに架橋型の樹脂を含有させてもよい。
なお、混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ホバートミキサーやハイスピードミキサーなどのミキサー、二軸混練機、ロール等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。そして、混合時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体をさらに含有させる場合、繊維状炭素ナノ構造体は、凝集し易く、分散性が低いため、そのままの状態で樹脂などの他の成分と混合すると、組成物中で良好に分散し難い。一方、繊維状炭素ナノ構造体は、溶媒(分散媒)に分散させた分散液の状態で樹脂などの他の成分と混合すれば凝集の発生を抑制することはできるものの、分散液の状態で混合した場合には混合後に固形分を凝固させて組成物を得る際などに多量の溶媒を使用するため、組成物の調製に使用する溶媒の量が多くなる虞が生じる。そのため、プレ熱伝導シートの形成に用いる組成物に繊維状炭素ナノ構造体を配合する場合には、繊維状炭素ナノ構造体は、溶媒(分散媒)に繊維状炭素ナノ構造体を分散させて得た分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素ナノ構造体の集合体(易分散性集合体)の状態で他の成分と混合することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素ナノ構造体の集合体は、一度溶媒に分散させた繊維状炭素ナノ構造体で構成されており、溶媒に分散させる前の繊維状炭素ナノ構造体の集合体よりも分散性に優れているので、分散性の高い易分散性集合体となる。従って、易分散性集合体と、樹脂などの他の成分とを混合すれば、多量の溶媒を使用することなく効率的に、組成物中で繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の分散液は、例えば、溶媒に対して繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して得ることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
また、分散液からの溶媒の除去は、乾燥やろ過などの既知の溶媒除去方法を用いて行うことができるが、迅速かつ効率的に溶媒を除去する観点からは、減圧ろ過などのろ過を用いて行うことが好ましい。
[[組成物の成形]]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。このように組成物を加圧成形したシート状のものを、プレ熱伝導シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下、ロール間隙は50μm以上2500μm以下、ロール線圧は1kg/cm以上3000kg/cm以下、ロール速度は0.1m/分以上20m/分以下とすることができる。
そして、上述のようにして形成したプレ熱伝導シートでは、粒子状無機材料が主として面内方向に配列し、特に面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。なお、プレ熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。また、粒子状無機材料が粒子状炭素材料を含む場合、熱伝導シートの熱伝導性および熱放射性を更に向上させる観点からは、プレ熱伝導シートの厚みは、熱伝導シートの形成に用いられる粒子状炭素材料の個数基準のモード径の4倍超5000倍以下であることが好ましい。
[積層体形成工程]
積層体形成工程では、プレ熱伝導シート成形工程で得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。ここで、プレ熱伝導シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いてプレ熱伝導シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、プレ熱伝導シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、プレ熱伝導シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りにプレ熱伝導シートを捲き回すことにより行うことができる。また、プレ熱伝導シートの積層による積層体の形成は、特に限定されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で押し付けながら、120℃以上170℃以下で2〜8時間加熱することが好ましい。ここで、層間剥離の防止は、積層体を形成する際に接着剤または溶剤をプレ熱伝導シートに塗布し、プレ熱伝導シート同士を接着させることにより行ってもよいが、シートを効率的に製造する観点からは、接着剤または溶剤は使用しないことが好ましい。
そして、プレ熱伝導シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、粒子状無機材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
[スライス工程]
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、ワイヤーソー法、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカッター、カンナ、スライサー)を用いることができる。
なお、熱伝導シートの熱伝導性および熱放射性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが更に好ましい。
そして、スライス工程を経て得られた、常温常圧下で液体の樹脂、常温常圧下で固体の樹脂および粒子状無機材料とを含むシートは、通常、樹脂と無機材料とを含む条片(積層体を構成していたプレ熱伝導シートのスライス片)が並列接合されてなる構成を有する。
<工程(B)>
次に、上記工程(A)において用意したシートの表面に対して、活性化処理を施す。これにより、シートの表面に極性基が形成され、被着体との密着性に優れ、高い熱伝導性を有する熱伝導シートが得られる。
[活性化処理]
シート表面に対する活性化処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理および紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、被着体との密着性の向上効果と外観欠点の発生防止効果とをバランス良く向上させることができる点から、コロナ放電処理、プラズマ処理およびグロー放電処理が好ましい。コロナ放電処理、プラズマ処理およびグロー放電処理を採用した場合の放電量は、密着性を向上させる点で高放電量とすることが好ましいが、熱伝導シート表面の黒鉛などの粒子状無機材料が破壊されて脱落しない、後述する処理条件で行うことが好ましい。なお、これらの方法は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。以下、コロナ放電処理の条件について説明する。
[活性処理後のシートの状態]
コロナ放電処理は、必要に応じて除電工程に供されたシートの表面に、極性基を付与することができる。処理されたシート表面の極性基の量は、X線光電子分光(XPS)により測定することができる。処理されたシート表面には、C−C結合、C−O結合、C=O結合、C(=O)O結合、およびO−C(=O)O結合の極性基が形成され、濡れ性が向上する。
上記活性化処理が施されたシート表面に極性基が多く存在すると、極性の液体に対する親和性が高められ、極性の液体に対する接触角が、処理前に比べて小さくなる。本発明においては、活性化処理する前後の水との接触角の低下が、20°以上であることが好ましい。これにより、最終的に得られる熱伝導シートの密着性および熱伝導性をさらに高めることができる。
加えて、コロナ放電処理は、シート表面に対する処理を均質に行うことができるため、処理後のシートの水に対する接触角を面内の多くの箇所で測定した場合に、測定値の標準偏差を小さくすることができる。例えば、水に対する親和性が低い、フッ素ゴム系やシリコーンゴム系を熱伝導シートの材料として用いた場合であっても、水に対する平均接触角θが50°未満、θの標準偏差σが4.0未満といった、高い親水性をシート表面において均一に達成することができる。
活性化処理としてコロナ放電処理を行うに際し、電極に印加する電力は、幅方向に均一な良好なコロナ放電が形成されるよう適宜調整する。具体的な放電処理の出力は、好ましくは10W・min/m以上、より好ましくは50W・min/m以上であり、好ましくは600W・min/m以下、より好ましくは300W・min/m以下である。
また、コロナ放電処理は、シート表面に極性基を均一に生成するために、1回に限定されるものではなく、2回、更にはシートの劣化を抑えるため、600W・min/m以下の出力で3回以上行ってもよい。回数の上限は特に限定されないが、生産の効率を向上させるため、100回以下が好ましく、10回以下がより好ましい。
また、コロナ放電処理の際のシートと電極との隙間の間隔は、0.5mm以上2mm以下が好ましい。さらに、コロナ処理速度は特に限定されないが、1m/min以上10m/min以下が好ましい。
そして、活性化処理する前のシートの銅板との静止摩擦力N0と、活性化処理した後のシート(すなわち、熱伝導シート)の銅板との静止摩擦力N1との変化率N1/N0が1.10以上であることが好ましい。銅板は、ヒートシンク等の放熱体の基材として一般的に使用されている材料であり、上記要件を満足することにより、最終的に得られる熱伝導シートと放熱体との間の密着性をより高めることができる。
本発明においてコロナ放電処理が施されるシートは、黒鉛などの粒子状無機材料を含有するため、放電によるシートの劣化、特に粒子状無機材料の破壊、表層の粒子状無機材料のシートからの脱落が発生し得る。上記条件でコロナ放電処理を施すことにより、これらを抑制することができる。
上記コロナ放電処理の効果は、1か月程度持続する。そのため、コロナ放電処理後の熱抵抗値測定や、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等への貼号、密着、接着などは1ヶ月以内に行うことが好ましく、3日以内に行うことがより好ましく、1日以内に行うことが最も好ましい。
コロナ放電処理以外のプラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理および紫外線照射処理においても同様の条件で行うことができる。そして、コロナ放電処理を行う場合と同様に、シートの表面に極性基が形成され、最終的に得られる熱伝導シートと被着体との密着性を高めることができ、優れた熱伝導性を得ることができる。
上記活性化処理は、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等に対しても行うことが好ましい。これにより、熱伝導シートとの密着性をより高めることができる。
本発明により得られた熱伝導シートは、0.05MPa加圧下の熱抵抗の値が0.30℃/W以下であることが好ましく、0.20℃/W以下であることがより好ましく、0.18以下であることが更に好ましい。0.05MPa加圧下の熱抵抗の値が0.30℃/W以下であると、比較的低い圧力が加えられる使用環境下で、優れた熱伝導性を維持することができる。
また、本発明によって製造された熱伝導シートは、0.50MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であることが好ましく、0.10℃/W以下であることがより好ましく、0.08以下℃/W以下であることが更に好ましい。0.5MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であると、比較的高い圧力が加えられる使用環境下で、優れた熱伝導性を有することができる。
ここで、熱抵抗値は、熱伝導シートの熱抵抗を測定するのに通常用いられる既知の測定方法を用いて測定することができ、樹脂材料熱抵抗試験器(例えば、株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、商品名「C47108」)などで測定することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、熱伝導シートの膜厚、熱抵抗値、水に対する接触角、静止摩擦力は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
<膜厚>
熱伝導シートの膜厚は、株式会社ミツトヨ社製デジマチックインジケーター(ID−C112X)を用いて(1/1000mm)の精度で測定した。
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、試料温度50℃において、比較的低圧である0.05MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)と、試料温度50℃において、比較的高圧である0.50MPaを加えた時の熱抵抗値(℃/W)をそれぞれ測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
<静止摩擦力>
ヒートシンクの基材で主に用いられる銅板と熱伝導シートの静止摩擦力を評価した。測定装置としては、ヘイドン式表面性測定機(商品名「HEIDON−14D」、新東科学社製)を用いて、表面摩擦抵抗の測定を行った。治具に10mm×10mm角の熱伝導シートを切り出し、両面テープ(ニチバン社製ナイスタック)で貼り付けた。また、50mm×50mm×3mmの銅板を移動テーブルに前記と同じ両面テープで張り付けた。200gの分銅を試料上部にある台に載せ、移動テーブルを100mm/minの速度で移動させる。移動し同時の最大試験力(N)を静止摩擦力とした。測定は、上記試験片を同じ熱伝導シートから5個切り出し、5点の平均とした。
<水に対する接触角>
接触角計(協和界面化学社製、「DM−701」)を用い、熱伝導シート表面に、表面張力測定用液としての蒸留水を2.0μL滴下し、滴下から60秒後の接触角(°)を液適法により測定した。この接触角の測定を繰り返し10回行い、その平均を熱伝導シートの水に対する接触角とした。
(実施例1)
<繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
<<分散液の調製>>
繊維状の炭素ナノ構造体(SGCNT、日本ゼオン社製、比表面積:600m/g)を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状の炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
<<溶媒の除去>>
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状炭素材料としての、シート状の繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−101」)を70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC−2211」、ムーニー粘度:27ML1+4、100℃)を30部と、粒子状無機材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC50」、体積平均粒子径:250μm)を50部と、繊維状炭素材料としての上述で得られた繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.5部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.5mmのプレ熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.5mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に120枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約60mmの積層体を得た。
<シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横60mm×厚み0.15mmのシートを得た。
<コロナ放電処理>
上述のように得られたシートの両面に、ウエッジ株式会社製 スイッチバック式 コロナ放電表面処理装置(A3SW−LW型)を用い、大気圧下で、片面ずつ、出力200W・min/m、処理速度2m/min、周波数34.8kHz、電極間距離3.5mmで、コロナ処理を2回施した。こうして、実施例1の熱伝導シートを得た。得られた熱伝導シートについて、上述の方法に従って、膜厚、熱抵抗値および静止摩擦力を測定した。また、コロナ放電処理を行わずに得られた熱伝導シート(後述する比較例1)に対する静止摩擦力の変化率も求めた。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
コロナ放電処理における出力を100W・min/mで行った以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
コロナ放電処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
添加した膨張化黒鉛を40部とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例4)
添加した膨張化黒鉛を60部とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例5)
添加した「G−101」を100部とし、「FC−2211」を添加しなかった。また、膨張化黒鉛を伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC100」、体積平均粒子径:170〜230μmのものに変更し、添加量を90部とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(実施例6)
添加した膨張化黒鉛を80部とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
コロナ放電処理を行わなかった以外は実施例3と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例3と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例3)
コロナ放電処理を行わなかった以外は実施例4と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例4と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例4)
コロナ放電処理を行わなかった以外は実施例5と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例5と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例5)
コロナ放電処理を行わなかった以外は実施例6と同様にして熱伝導シートを作製し、実施例6と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例6)
特開2015−67638に準拠し、下記のごとく熱伝導シートを作製した。まず、反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。
次に、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA、和光純薬株式会社製)84部と、有機過酸化物熱重合開始剤(1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度は150℃である。))1.0部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した、架橋剤である多官能性単量体(ライトアクリレートPE−3A、共栄社化学株式会社製)1.0部と、メタクリル酸5部と、を電子天秤で計量し、これらを上記(メタ)アクリル酸エステル重合体10部と混合した。混合には、恒温槽(東機産業株式会社製、ビスコメイト 150III)及びホバートミキサー(株式会社小平製作所製、ACM−5LVT型、容量:5L)を用いた。ホバート容器の温調は40℃に設定し、回転数目盛を3にして10分間攪拌した。この工程を第1混合工程という。
次に、リン酸エステル(味の素ファインテクノ株式会社製、レオフォス65、化合物名:リン酸トリアリールイソプロピル化物)50部と、熱伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BF−083、平均粒径:8μm、BET比表面積:0.8m2/g)700部と、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−5103、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)1.0部と、を計量して上記ホバート容器に投入し、ホバート容器の温調を40℃に設定し、回転数目盛を5にして10分間攪拌した。
続いて、上記第1混合工程及び第2混合工程を経て得た混合組成物を、厚さ75μmの離型PETフィルム上に垂らし、当該混合組成物上にさらに、厚さ75μmの他の離型PETフィルムを被せた。混合組成物が離型PETフィルムに挟持されたこの積層体を、間隔を200μmに調整した2つのロールの間に通し、混合組成物をシート状に成形した。その後、当該積層体をオーブンに投入し、150℃で15分間加熱した。この加熱工程によって、(メタ)アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸(有機酸基を有する単量体)、及び多官能性単量体を重合させ、またほぼ同時に、架橋剤である多官能性単量体により、(メタ)アクリル酸エステル重合体)、(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造単位、及びメタクリル酸単量体由来の構造単位を含む重合体を架橋させ、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G1)を得た。なお、上記シート状成形体(G1)中の残存単量体量から、全単量体の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。得られた熱伝導シートの厚みは、200μmであった。得られた熱伝導シートに対して、比較例1と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例1と同じ条件でコロナ放電処理を行った以外は、比較例6と同様にして熱伝導シートを作製し、比較例6と同様にして評価を行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2019108497
表1に示すように、実施例1〜6に示すコロナ処理した熱伝導シートの熱抵抗値は、比較例1〜7と比較して低いことが分かる。これは、熱抵抗試験機の熱検出部の銅基材と熱伝導シートとの密着性が向上したためと考えられる。さらに、実施例1〜6の熱伝導シートの静止摩擦力も向上しており、ヒートシンクとして使用される銅との密着性が向上していることも分かる。
また、実施例1と比較例7との対比から、実施例1の熱伝導シートは、比較例7のアクリレート系の熱伝導シートに対して熱抵抗値が著しく低い。しかも、実施例1の熱伝導シートの静止摩擦力の変化率は、比較例7の熱伝導シートに比べて大きく増加している。この改善効果は、実施例1の熱伝導シートにおいては、活性化処理によって密着性が向上したためと考えられる。また、実施例1の熱伝導シートでは、活性化処理によって水との接触角が大きく低下しているのに対して、比較例7の熱伝導シートでは、活性化処理による水との接触角の低下は小さい。このことより、本発明による熱伝導シートをヒートシンクに貼り合せた時に、密着性の向上により、従来の熱伝導シートよりも効率的に熱を拡散させることができることが分かる。
本発明によれば、比較的低い挟持圧力での使用に際し、優れた密着性および熱伝導性を有する熱伝導シートを製造することができる。

Claims (8)

  1. 熱伝導シートの製造方法であって、
    常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂と、粒子状無機材料とを含むシートを用意する工程と、
    用意したシートの表面に活性化処理を施す工程とを有することを特徴とする熱伝導シートの製造方法。
  2. 前記活性化処理する方法が、プラズマ放電、コロナ放電、オゾン放電、紫外線放電のいずれか1つ以上の方法である、請求項1に記載の熱伝導シートの製造方法。
  3. 前記活性化処理する前後の水との接触角の低下が20°以上である、請求項1または2に記載の熱伝導シートの製造方法。
  4. 前記活性化処理する前の前記シートの銅板との静止摩擦力N0と、前記活性化処理した後の前記シートの銅板との静止摩擦力N1との変化率N1/N0が1.10以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
  5. 前記常温常圧下で固体の樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
  6. 前記常温常圧下で液体の樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
  7. 前記常温常圧下で液体の樹脂の含有割合が、前記常温常圧下で液体の樹脂および前記常温常圧下で固体の樹脂の合計含有量の60質量%以上75質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
  8. 前記粒子状無機材料は粒子状炭素材料であり、該粒子状炭素材料の含有割合が、25体積%以上45体積%未満である、請求項1〜7のいずれか一項の記載の熱伝導シートの製造方法。
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