以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
本発明の実施形態を説明する前に本発明が適用される一例としての操舵装置の構成について図1を用いて簡単に説明し、また、本発明の理解を助けるために、従来の電動パワーステアリング装置の概略の構成についても図2を用いて簡単に説明する。
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端には図示しないピニオンが設けられ、このピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。このラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド3が連結されており、ラックはラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド3との間にはゴムブーツ5が設けられている。
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ7が設けられ、トルクセンサ7の検出値に基づいてラックにギヤ10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部8と、電動モータ部8に配置された電動モータを制御する電子制御装置(ECU)部9とが設けられている。電動パワーステアリング装置6の電動モータ部8は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないボルトを介してギヤ10に接続され、電動モータ8部の出力軸とは反対側に電子制御部9が設けられている。
従来の電動パワーステアリング装置は、図2に示すように、電動モータ部8はアルミ合金等から作られた筒部を有するモータハウジング11A及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御部9は、モータハウジング11Aの軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミ合金等で作られたECUハウジング11B及びこれに収納された図示しない電子制御組立体から構成されている。
モータハウジング11AとECUハウジング11Bはその対向端面で固定ボルトによって一体的に固定されている。ECUハウジング11Bの内部に収納された電子制御組立体は、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部8の電動モータを駆動制御するMOSFETやIGBT等からなるパワースイッチング素子を有する電力変換回路や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータの入力端子とはバスバーを介して電気的に接続されている。
ECUハウジング11Bの端面にはコネクタ端子組立体を兼用する合成樹脂製の蓋体12が固定ボルトによって固定されている。蓋体12には電力供給用のコネクタ端子形成部12A、検出センサ用のコネクタ端子形成部12B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部12Cを備えている。そして、ECUハウジング11Bに収納された電子制御組立体は、合成樹脂から作られた蓋体12の電力供給用のコネクタ端子形成部12Aを介して電源から電力が供給され、また検出センサ類から運転状態等の検出信号が検出センサ用のコネクタ形成端子部12Bを介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が制御状態送出用のコネクタ端子形成部12Cを介して送出されている。
ここで、蓋体12はECUハウジング11Bの開口部の全体を覆うような形状になっているが、各コネクタ端子を小型に形成して、ECUハウジング11Bに形成された挿入孔を挿通して電子制御装組立体と接続する構成にしても良いものである。
電動パワーステアリング装置6においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ7が検出し、この検出値に基づいて制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。この演算した駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト1を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンからギヤ10を介して図示しないラックへ伝達され、自動車が操舵されるものである。これらの構成、作用は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
このような電動パワーステアリング装置において、上述した通り自動車のエンジンルーム内は、排気ガス対策機器や安全対策機器等の補機類が多く設置される傾向にあり、電動パワーステアリング装置を含めて各種補機類はできるだけ小型化することが求められている。
そして、このような構成の電動パワーステアリング装置においては、電源回路部、電力変換回路部、及び制御回路部が2枚の基板に実装され、ECUハウジングの軸に直交するように半径方向に設置されている。このため、電動モータを制御するための必要な電気部品の部品点数は大まかに決まっているので、2枚の基板にこれらの部品点数の電気部品を実装すると、電子制御部を収納しているECUハウジングが自ずと半径方向に大きくなる。
更に、電動パワーステアリング装置においては、自動車の操舵を行うため安全性が特に要求されており、二重系のような冗長系を備えた電子制御部とする必要がある。このため、冗長系の構成として同じ電子制御部が2系統必要になり、電子部品の数が2倍になるので、この点からもECUハウジングが更に大きくなる。
そして、電動パワーステアリング装置はその構造上から長手方向には軸長の制限は比較的少なく、半径方向の大型化が制限される傾向にある。したがって、電動駆動装置を半径方向へ小型化することが要請されているのが現状である。また、これに加えて、電源回路部や電力変換回路部を構成する電気部品は発熱量が大きく、小型化する場合はこの熱を効率よく外部に放熱してやる必要がある。
更に、電子制御部の基板は放熱基体に固定されるが、この種の固定方法は、放熱基体の外周に取り付けフランジを形成し、この取付フランジとモータハウジングの外周を固定ボルトで固定するのが一般的によく知られている。しかしながら、このように外周側で固定ボルトによって固定すると、この分だけ余計に径方向に大型化する傾向にある。
このような背景から、本実施形態では次のような構成の電動パワーステアリング装置を提案するものである。
つまり、本実施形態においては、電動モータが収納されたモータハウジングと、電動モータの回転軸の出力部とは反対側のモータハウジングの端面に、出力部とは反対側の回転軸方向に延びる互いに向き合って配置された一対の支持軸と、支持軸の間に配置され支持軸と同じ方向に延びる放熱基体と、支持軸から径方向内側にねじ込まれ、支持軸と放熱基体を結合する固定ボルトと、放熱基体が延びる方向に沿って配置され、放熱基体に熱伝導可能に固定された基板を備える冗長系の一方の電子制御手段と、放熱基体が延びる方向に沿って配置され、放熱基体に熱伝導可能に固定された基板を備える冗長系の他方の電子制御手段を備えた、構成とした。
以下、本発明の一実施形態になる電動パワーステアリング装置の構成について、図3乃至図9を用いて詳細に説明する。尚、図3は本実施形態になる電動パワーステアリング装置の全体的な構成部品を分解して斜め方向から見た図であり、図4から図9は各構成部品の組み立て順序にしたがって各構成部品を組み付けていった状態を示す図面である。したがって、以下の説明では、各図面を適宜引用しながら説明を行うものとする。
図3に電動パワーステアリング装置6の分解斜視図を示している。モータハウジング20には内部に円環状の鉄製のサイドヨーク(図示せず)が嵌合されており、このサイドヨーク内に電動モータ(図示せず)が収納されているものである。電動モータの出力部21はギヤを介してラックに操舵補助力を付与している。尚、電動モータの具体的な構造は良く知られているので、ここでは説明を省略する。
モータハウジング20はアルミ合金から作られており、電動モータで発生した熱や、後述する電子制御基板に実装された電子部品で発生した熱を外部大気に放出するヒートシンクとして機能している。電動モータとモータハウジング20で電動モータ部EMを構成している。
電動モータ部EMの出力部21の反対側のモータハウジング20の端面には電子制御部ECが取り付けられている。電子制御部ECは、回転位置検出回路基板22、放熱基体23、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27、電源コネクタ28から構成されている。
ここで、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27は冗長系を構成するものであり、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25によって主電子制御手段を構成し、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27によって副電子制御手段を構成している。
そして、通常は主電子制御手段によって電動モータが制御、駆動されているが、主電子制御手段の第1電力変換回路基板24や第1制御回路基板25に異常や故障が生じると、副電子制御手段に切り換えられ、副電子制御手段の第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27によって電動モータが制御、駆動されるようになるものである。
したがって、後述するが、放熱基体23には通常は主電子制御手段からの熱が伝えられ、主電子制御手段に異常や故障が生じると主電子制御手段が停止して副電子制御手段が作動し、放熱基体23には副電子制御手段からの熱が伝えられるものである。
ただ、本実施形態では採用していないが、主電子制御手段と副電子制御手段を合せて正規の電子制御手段として機能させ、一方の電子制御手段に異常、故障が生じると、他方の電子制御手段で半分の能力によって電動モータを制御、駆動することも可能である。この場合、電動モータの能力は半分となるが、いわゆる「リンプホーム機能」は確保されるようになっている。したがって、通常の場合は、主電子制御手段と副電子制御手段の熱が放熱基体23に伝えられるものである。
電子制御部ECは、従来の図2に示すようなECUハウジングに収納されておらず、このため電子制御部ECの熱はECUハウジングから放熱されるものではない。本実施形態では、電子制御部ECはモータハウジング20に固定、支持される構成になっており、電子制御部ECの熱は、モータハウジング20から主に放熱されるものである。そして、電子制御部ECと電動モータ部EMの組み付けが終了すると、カバー29で電子制御部ECを覆い、モータハウジング20の端面とカバー20を突き合わせで両者を結合している。
カバー29は合成樹脂や金属で作ることができ、接着、溶着、ボルト等の固定方法、固定手段でモータハウジング20と一体化されている。このように、本実施形態では、電動パワーステアリング装置としてみると、シールする部分はモータハウジング20とカバー29との結合部だけであるので、シール部分の付加的な構造や、シールに必要な部品を少なくできるものである。
また、カバー29は電子制御部ECを支持する必要が無いので、厚さを薄くすることでき、電子制御部ECの半径方向の長さの縮小と軽量化に寄与している。また、カバー29を金属(アルミ合金や鉄等)で形成すると、放熱機能を備えることになるので、モータハウジング20からの熱がカバー29に伝わり、放熱作用を更に高めることができる。
このように本実施形態では、回転位置検出回路基板22はモータハウジング20の端面に固定され、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27は互いに向き合いながら放熱基体23に固定され、更に、放熱基体23は、モータハウジング20の端面で回転位置検出回路基板22を覆うようにして固定されている。また、カバー29がモータハウジング20の端面に液密的に結合される構成となっている。この構成が本実施形態の大きな特徴の一つである。
つまり、本実施形態では、図2に示す従来の電動パワーステアリング装置のような、モータハウジングの軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミ合金等で作られたECUハウジングを必要としないものである。
このため、従来のようにECUハウジング、ECUハウジング内の液密性を確保するシール、モータハウジングとECUハウジングを固定するボルト等を必要とせず、電動パワーステアリング装置自体の体格を小形にすることが可能となり、更には部品点数も少なくすることができるので、組み付け工数も併せて低減することができる。これによって、最終的な製品単価を抑えることができ、製品競走力を高めることが可能となる。
図3に戻って、モータハウジング20の中央部には電動モータのロータ部(図示せず)が配置されており、このロータ部の周囲に固定子巻線が巻回されている。固定巻線はスター結線されており、各相の巻線の入力端子30と各相の中性端子31が、モータハウジング20に設けた開口32から突き出している。尚、本実施形態では二重系に構成されているので、もう一方の系のために各相の巻線の入力端子30と各相の中性端子31が、モータハウジング20に設けた開口32から突き出している。これらの冗長系の入力端子30と中性端子31は、互いに180°の間隔を置いて開口32から突き出している。
この各相の巻線の入力端子30は、主電子制御手段を構成する第1電力変換回路基板24の各相の出力端子に接続されている。また、各相の中性端子31は回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターンによって接続されて中性点を形成している。同様にもう一方の系の各相の巻線の入力端子30は、副電子制御手段を構成する第2電力変換回路基板26の各相の出力端子に接続されている。また、もう一方の系の各相の中性端子31も回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターンによって接続されて中性点を形成している。基本的には冗長系であるのでほぼ同じ構成とされている。
この構成も本実施形態の大きな特徴の一つである。このように、主電子制御手段及び副電子制御手段の各相の中性端子31を、回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターンによって接続しているので、各相の中性端子31を引き回す必要がなく構成が極めて簡単となる。更に加えて、各相の入力端子30を夫々の電力変換回路基板24、26まで引き回す必要がないので、この引き回すための空間も必要がなくなり電子制御部ECの小径化が更に図れるものとなる。これについては、図8を用いて説明する。
尚、モータハウジング20の2つの開口32の間には図示していないが、ロータ部を構成する回転軸を支持する軸受が設けられており、この軸受部分を外部から覆うように密閉板33がモータハウジング20の端面側に設けられている。この密閉板33はロータ部と外部とを遮蔽するものであり、カバー29が取り付けられた後に、カバー29内に充填される充填剤がロータ部に侵入しないようにするために設けられている。尚、開口32を通って充填剤が巻線側に流れてくるが、巻線側は回転しないので何ら影響はないものである。
図3、図4にもある通り、モータハウジング20の端面には回転位置検出回路基板22がボルト34によって固定されており、この回転位置検出回路基板22の基板上で各相の中性端子31接続されて中性点を形成している。また、開口32と回転位置検出回路基板22の間から各相の巻線の入力端子30が軸方向に沿って延びている。この入力端子30は後述するように、電力変換回路基板24,26の各相の出力端子に接続されるものである。
回転位置検出回路基板22の密閉板33側の面には、図示しないGMR(巨大磁気抵抗効果)素子が設けられており、出力部21とは反対側の回転軸に固定した位置検出用永久磁石と協働してロータ部の磁極位置情報を得るようにしている。また、回転位置検出回路基板22のGMR素子が設けられた面の反対側の面には磁気シールド板35が設けられている。
この磁気シールド板35は、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27に搭載されている電子部品の動作に起因する磁気がGMR素子に影響を与えるのを抑制する機能を備えている。
モータハウジング20の端面には、出力部21とは反対側に向けて軸方向に植立する支持軸36がモータハウジング20と一体的に形成されている。したがって、支持軸36はアルミ合金で作られており、熱伝導性が高いものである。この支持軸36は、回転位置検出回路基板22を挟んで約180°間隔で、対向するように設けられている。この支持軸36は、後述するように放熱基体23を固定、支持する共に、放熱基体23からの熱をモータハウジング20に伝える機能を備えている。
この支持軸36は放熱基体23に対して、正面とこの正面の両側に形成される側面の3面で放熱基体23と熱的に接触する形状に形成されている。そして、側面は熱伝導面積をより多くするために、軸方向先端に向かって傾斜面に形成されている。これによって、側面の長さが長くなり熱伝導面積を多く確保できる。また、支持軸36の正面と背面には固定ボルトが挿通する挿通孔37が形成されている。
図3、図5、図6において、放熱基体23は熱伝導性の良いアルミ合金から作られており、ほぼ直方体の形状に形成されている。この放熱基体23は、基本的にはモータハウジング20の端面のほぼ中央付近、言い換えれば、ロータ部の回転軸の延長線上の領域を通るように配置され、出力部21とは反対側に向けて軸方向に延在するように配置されている。この放熱基体23を中心にして、後述する冗長系の電子制御基板が軸方向に配置されるものである。この構成も本実施形態の大きな特徴の1つとなっている。
そして、放熱基体23の両側面23Sの下側には支持軸36が取り付けられる支持軸取付部38が形成されており、上側にはコネクタ取付部39が形成されている。支持軸取付部38は、支持軸36の正面と対向する面と側面に対向する面を備える凹部形状に形成されており、この凹部形状の部分に支持軸36が収納、配置されるものである。尚、支持軸36の正面と対向する面には固定ボルトがねじ込まれるボルト孔40が形成されている。
支持軸36の側面に対向する支持軸取付部38の面は、支持軸36の側面に合わせて上側に向けて狭まるような傾斜面に形成されている。これによって、放熱基体23から支持軸36に向かう熱の熱伝導面積を大きく確保すると共に、放熱基体23を支持軸36に差し込む時の案内を行うことができる。
しかも、支持軸36の側面と、これに対向する支持軸取付部38の面とが傾斜面になっているので、両者の夫々の面の密着が良くなり、支持軸36と放熱基体23の間の振れを抑制することができる。これによって、放熱基体23が無用な振動を行うことが抑制できるようになる。
また、放熱基体23の上側に形成したコネクタ取付部39も、電源コネクタが係合する形状に形成されている。これについては図8で説明する。
図6は、図5に示している状態の放熱基体23の側面23Sの反対側の側面から見た放熱基体23の取り付け状態を示している。
図6にあるように、放熱基体23の支持軸取付部38を、モータハウジング20に形成した支持軸36に沿って下側に移動させていき、所定の位置に達すると固定ボルト41によって、支持軸36と放熱基体23を強固に固定している。この状態で、放熱基体23は、モータハウジング20の端面の中央付近を通る位置で固定されるようになる。尚、本実施形態では放熱基体23のモータハウジング20の端面への取付面の長さを、後述する制御回路基板25、27の大きさに合わせているので、放熱基体23はモータハウジング20の端面の中央付近を横切るような形態で取り付けられている。
そして、これによって、後述する電子制御基板からの熱を放熱基体23に伝え、更に放熱基体23の熱を支持軸36に伝えることができる。したがって、従来のようなECUハウジングを用いることなく、電子制御基板からの熱をモータハウジング20から放熱することができるので、電動パワーステアリング装置自体の体格を小形にすることが可能となり、更には部品点数も少なくすることができるので、組み付け工数も併せて低減することができる。尚、支持軸36と放熱基体23の接触部分は、熱的な接触を高めるため(界面熱抵抗を小さくする)熱伝導性の良い接着剤、放熱シート、放熱グリース等の放熱機能材を介装することもできる。
図5に戻って、放熱基体23の正面側に対応する基板取付面23Fには、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25を固定する固定面が形成されている。図1、図8に示しているように、放熱基体23の正面側には第1電力変換回路基板24が固定され、更にその上から第1制御回路基板25が固定されるようになっている。
同様に、放熱基体23の背面側に対応する基板取付面23Fには、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27を固定する固定面が形成されている。これも図1に示しているように、放熱基体23の背面側には第2電力変換回路基板26が固定され、更にその上から第2制御回路基板27が固定されるようになっている。
第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26は、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属からなる金属基板上に、電力変換回路を構成する複数のMOSFETからなるパワースイッチング素子、及びこれの出力用の出力コネクタが設けられている。更に、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26には、電源回路を構成するコイル、MOSFETよりなるスイッチング素子、各種コネクタ端子が設けられている。この第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26には大きな電流をスイッチングするスイッチング素子が多く実装されているので発熱量が多く、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26が主たる発熱源となっている。もちろん、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27からも熱が発生するが、これも放熱基体23に放熱される構成となっている。これについては後述する。
この第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26の金属基板は、図5、図6に示すように、放熱基体23の正面及び背面に形成した収納凹部42に固定ボルトによって固定されている。金属基板と収納凹部42の間には、パワースイッチング素子が配置されており、パワースイッチング素子と収納凹部42の間には熱伝導性能を高めるために熱伝導性の良い接着剤、放熱シート、放熱グリース等の放熱機能材が介装されている。
尚、パワースイッチング素子を収納凹部42とは反対側に配置して、金属基板と収納凹部42を接触させる構成としても良いことはいうまでもない。ただ本実施形態では、より効率よくパワースイッチング素子の熱を放熱基体23に伝えるため、パワースイッチング素子と収納凹部42とを接触する形態としている。
このように、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を放熱基体23に形成した収納凹部42に収納する構成とすることによって、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26が放熱基体23内に収納される形態となって、電子制御部ECが径方向に大型化するのを抑制するようにしている。
更に、図8に示しているように、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を覆うようにして、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27が放熱基体23の基板取付面23Fに固定ボルト47によって固定されている。つまり、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27は、放熱基体23の取付面23Fに形成した収納凹部42を取り囲む取付平面部44に固定ボルト47によって固定されるものである。
第1制御回路基板25、第2制御回路基板27は、合成樹脂等からなる樹脂基板上に、電力変換回路のスイッチング素子等を制御するマイクロコンピュータ48やその周辺回路49が実装されている。尚、本実施形態では第1制御回路基板25、第2制御回路基板27に電源回路を構成する電解コンデンサ43を搭載している。
電解コンデンサ43は体格的に形状が大きいので、上述した収納凹部42に配置することが困難なため、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27に実装するようにしている。図1にあるようにカバー29との空間が充分であるため、電解コンデンサ43を配置しても何ら問題ないものである。
ここで、収納凹部42と取付平面部44を結ぶ間には、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27を固定した場合に通路となる通路空間45が形成されている。この通路空間は収納凹部42を空気によって冷却するために形成されている。このため、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27からの熱は、通路空間45の空気に流れ、また、取付平面部44を通って放熱基体23に流れるようになっている。
放熱基体23の固定側とは反対側の上端面には、図5にある通りコネクタ収納凹部46が形成されている。このコネクタ収納凹部46は後述する電源コネクタの内側端が収納されるものであり、位置決めの機能も有している。
図7は支持部材36と放熱基体23の取付状態を示す断面である。モータハウジング20の端面には回転軸50の出力部21とは反対側の端部が位置しており、この端部には、磁石保持部材51が固定されており、この磁石保持部材51の内部に、位置検出センサを構成する位置検出用永久磁石52が収納されている。この位置検出用永久磁石52は、複数の単位磁石が環状に形成されるように着磁されている。
位置検出用永久磁石52と位置検出回路基板22の間には密閉板33が配置されており、この密閉板33はモータハウジング20の端面に固定されて、回転軸50が配置されている空間と位置検出回路基板22側の空間を遮蔽している。これによって、回転軸50が配置されている空間と位置検出回路基板22側の空間を液密的、或いは気密的に遮蔽することが可能となる。
したがって、回転軸50を伝わって侵入してくる水分が、電子制御基板が配置されている空間に移動するのを遮断することができ、電子制御基板に実装されている電子部品等に水分による悪影響が及ぶのを抑制することができる。もちろん、電動モータの回転によって生じる微細塵が侵入するのを抑制することも可能である。これによって電子部品の故障を避けるという効果を奏することもできる。
尚、位置検出回路基板22に水分の侵入を検出するセンサを配置して、水分が侵入したことを検出することも可能である。本実施形態では、モータハウジング20とカバー29の突き合せ面でしか結合部が形成されないので、この部分での水の侵入が想定される。したがって、位置検出回路基板22がモータハウジング20の端面付近に固定されるので、この位置検出回路基板22に水分を検出するセンサを配置すれば、最も早く水分の検出が可能となる。
また、GMR素子53は、位置検出回路基板22の位置検出用永久磁石52側の面に実装されており、位置検出用永久磁石52と対向する位置に配置されている。したがって、GMR素子53はモータハウジング20に一体的に組み付けられることになる。つまり、位置検出用永久磁石52が固定された回転軸50は、モータハウジング20の端面によって支持されており、また、GMR素子53を実装した位置検出回路基板22もモータハウジング20の端面に固定されている。このため、モータハウジング20の端面で位置検出用永久磁石52と位置検出回路基板22の位置が決められるので、GMR素子53の組み付け精度が向上し、正確な検出信号を得ることが可能となる。
また、図7において、放熱基体23の支持軸取付部38が支持軸36に挿入、配置された状態で、固定ボルト41は径方向外側から内側に向けて、支持軸36を通って放熱基体23にねじ込まれ、支持軸36と放熱基体23が強固に固定されている。
ここで、この固定ボルト41の固定方向も本実施形態の大きな特徴であるがある。本実施形態では、固定ボルト41は径方向外側から内側に向けて、支持軸36を通って放熱基体23にねじ込まれている。これによって、電子制御部ECの小径化を図ることが可能となっている。この種の固定方法は、放熱基体23の外周に取り付けフランジを形成し、この取付フランジとモータハウジング20の外周を固定ボルトで固定するのが一般的によく知られている。しかしながら、このように外周側で固定すると、この分だけ余計に径方向に大型化する傾向にある。
これに対して、本実施形態では放熱基体23とカバー29によって形成される空間を利用し、この空間に固定ボルト41が位置するようにしたものである。したがって、固定ボルト41は、径方向外側から内側に向けて、支持軸36を通って放熱基体23にねじ込まれるので、外周側で固定されないものとなる、これによって、電子制御部ECの小径化を図ることが可能となっている。
また、2つの支持軸36はモータハウジング20で片持ち梁となっているので、放熱基体23と支持軸36を固定ボルト41で固定したときに、支持軸36は若干の撓みをもって固定されることになる。これによって固定ボルト41のネジ山に常に軸方向の荷重が作用するので、固定ボルト41の緩みを抑制することができる。
モータハウジング20に放熱基体23が固定されると、次に冗長系の電子制御基板が取り付けられる。
図8において、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26の金属基板は、放熱基体23の正面及び背面に形成した収納凹部42に固定ボルトによって固定されている。尚、この図8では、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27が組み付けられているため、表示されていない。第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26が、放熱基体23に形成した収納凹部42に収納される構成とすることによって、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26が放熱基体23内に収納される形態となって、電子制御部ECが径方向に大型化するのを抑制できるものである。
更に、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を覆うようにして、第1制御回路基板25、第2制御回路基板27が放熱基体23の基板取付面23Fに固定ボルト47によって固定されている。第1制御回路基板25、第2制御回路基板27には、電源回路に使用される電解コンデンサ43、電力変換回路のスイッチング素子等を制御するマイクロコンピュータ48、その周辺回路49が実装されている。
放熱基体23の上端面には、電源コネクタ28が取り付けられ、図5に示すコネクタ取付部39で固定ボルト56によって固定されている。電源コネクタは図示しないケーブルによって車載バッテリに接続されている。したがって、電源コネクタ28から供給された電力は、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27に与えられ、更に電動モータに与えられて電動モータが駆動されるものである。更に、この後にカバー29が電子制御部ECを密閉するように、モータハウジング20の端面に固定される。
このように、放熱基体23の正面に第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25を設け、放熱基体23の背面に、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27を設けることによって、通常では、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25が動作している状態で発生した熱の一部は、放熱基体23を介して第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27に溜められるので、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25の熱を効率よく逃がすことができる。もちろん、これ以外に多くの熱は放熱基体23を介してモータハウジング20から放熱されることはいうまでもない。
また、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26の各相の出力端子54が位置検出回路基板22の上面から径方向外側に突出されており、この各相の出力端子54が各相の巻線の入力端子30に接続されている。このように、開口32から突出した巻線の入力端子30は引き回すことなく、直接的に各相の出力端子54と開口32付近で接続されるので、余分な引き回しのための空間を必要としないものである。これによって、電子制御部ECの小径化が図れるものである。
また、各相の中性端子31は回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターンによって接続されて中性点を形成している。同様に、もう一方の系の各相の中性端子31も回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターン55によって接続されて中性点を形成している。主電子制御手段及び副電子制御手段の各相の中性端子31を、回転位置検出回路基板22の基板上で配線パターン55によって接続しているので、各相の中性端子31を引き回すことがなく構成が極めて簡単となる。更に加えて、各相の入力端子30を夫々の電力変換回路基板24,26まで引き回す必要がないので、この引き回すための空間も必要が無いので、電子制御部ECの小径化が更に図れるものとなる。
そして、このようにして組み付けられた電子制御部ECにおいては、特に第1電力変換回路基板24(或いは、第2電力変換回路基板26)で発生した熱の一部は、放熱基体23を介して第2電力変換回路基板26(或いは、第1電力変換回路基板24)に溜められ、また、放熱基体23に伝達された熱の多くは支持軸36を通ってモータハウジング20に移動して放熱される。
以上で説明した構成においては、放熱基体23の正面側に対応する基板取付面23Fには、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25を固定する固定面が形成され、放熱基体23の背面側に対応する基板取付面23Fには、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27を固定する固定面が形成されている。そして、放熱基体23の正面側に対応する基板取付面23Fと放熱基体23の背面側に対応する基板取付面23Fは、互いにほぼ平行な状態に形成されている。したがって、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25と第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27もほぼ平行に配置されている。
しかしながら、電子制御手段の電子部品で発生した熱を効率よく逃がすためには、電子部品から発生した熱を素早く溜める基板の熱容量が大きいことが有利である。更に、一方の電子制御手段(例えば、主電子制御手段)で発生した熱を効率よく逃がすためには、他方の電子制御手段(例えば、副電子制御手段)の熱を溜める容量が大きいことが有利である。同様の理由で、電子制御手段で発生した熱を効率よく逃がすためには、放熱基体23との接触面積が大きいことが有利である。このような理由から、本実施形態として次のような構成を採用しており、この構成も本実施形態の大きな特徴である。
本実施形態では、先ず第1制御回路基板25と第2制御回路基板27を、放熱基体23に傾斜して取り付け、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27の基板面積を大きくして熱を溜める容量を大きくしている。更に、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を、放熱基体23に傾斜して取り付け、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26の接触積を大きくして熱を素早く放熱基体23に逃がすようにしている。
図9において、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27は、放熱基体23に対して下側に向けて互いに広がるような傾斜を有して取り付けられている。このように第1制御回路基板25と第2制御回路基板27を傾斜させると、図3にあるように、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27を略平行に配置させた場合に比べて、基板面積を大きくできる。したがって、この大きくなった分だけ余分に熱を溜めることができるので、基板上の電子部品で発生した熱は、素早く基板に逃がすことができ、電子部品の耐熱性を向上することができる。
また、放熱基体23の正面に第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25を設け、放熱基体23の背面に、第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27を設けているので、通常では、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25が動作している状態で発生した熱の一部は、放熱基体23を介して第2電力変換回路基板26、第2制御回路基板27に溜められるので、第1電力変換回路基板24、第1制御回路基板25の熱を素早く効率よく逃がすことができる。
また、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27を傾斜させることによって、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27はカバー29の内周面との距離が短くなり、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27からの熱がカバー29に伝わり易くなって、カバー29からの熱の放散量を増やすことができる。
次に、図9では示していないが、第1制御回路基板25と第2制御回路基板27の傾斜に合わせて、放熱基体23の形状が下側に向けて互いに広がるような傾斜を有するようにし、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を、放熱基体23の傾斜部分に傾斜して取り付けることもできる。このように、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を傾斜させると、図3にあるように、第1電力変換回路基板24、第2電力変換回路基板26を略平行に配置させた場合に比べて、放熱基体23との接触面積を大きくできる。したがって、この大きくなった分だけ熱を素早く放熱基体23に逃がすことができるので、電子部品の耐熱性を向上することができる。
このように、本実施形態においては、電動モータの回転軸方向に沿って延びる放熱基体に、これも軸方向に沿って延びる電子制御手段の基板を熱伝導可能に固定することで、電動駆動装置の半径方向の大きさを縮小する小型化することができる。また、夫々の基板からの熱が放熱基体を介して電動モータ部のハウジングに放熱されるので、小型化した場合であっても基板からの熱を効率よく外部に放熱することができる。
また、放熱基体とカバーによって形成される空間を利用し、この空間に固定ボルトが位置するようにしている。このため、固定ボルトは、径方向外側から内側に向けて、支持軸を通って放熱基体にねじ込まれるので、外周側で固定されないものとなる、これによって、電子制御部ECの小径化を図ることが可能となっている。
以上述べた通り、本発明は電動モータが収納されたモータハウジングと、電動モータの回転軸の出力部とは反対側のモータハウジングの端面に、出力部とは反対側の回転軸方向に延びる互いに向き合って配置された一対の支持軸と、支持軸の間に配置され支持軸と同じ方向に延びる放熱基体と、支持軸から径方向外側から内側にねじ込まれ、支持軸と放熱基体を結合する固定ボルトと、放熱基体が延びる方向に沿って配置され、放熱基体に熱伝導可能に固定された基板を備える冗長系の一方の電子制御手段と、放熱基体が延びる方向に沿って配置され、放熱基体に熱伝導可能に固定された基板を備える冗長系の他方の電子制御手段を備えた構成とした。
これによれば、電動モータの回転軸方向に沿って延びる放熱基体に、これも回転軸方向に沿って延びる電子制御部の基板を熱伝導可能に固定することで、電動駆動装置の半径方向の大きさを縮小して小型化することができる。また、夫々の基板からの熱が放熱基体を介して電動モータ部のハウジングに放熱されるので、小型化した場合であっても基板からの熱を効率よく外部に放熱することができる。また、固定ボルトは、径方向外側から内側に向けて、支持軸を通って放熱基体にねじ込まれるので、外周側で固定されないものとなる、これによって、電子制御部の小径化を図ることが可能となる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。