JP2019105897A - 塑性加工の解析方法およびそのプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】熱処理を挟んだ塑性加工を行う場合に蓄積されるひずみを的確に予測できる塑性加工の解析方法を提供する。【解決手段】本発明の解析方法は、金属材を第1塑性加工した第1加工材に生じる第1残留ひずみ分布を算出する第1ひずみ算出ステップと、第1加工材を熱処理したときに生じる温度分布を算出する温度算出ステップと、第1残留ひずみ分布と温度分布に基づいて熱処理後の第1加工材に生じる中間硬さ分布を算出する中間硬さ算出ステップと、中間硬さ分布に基づいて熱処理後の第1加工材に残存している中間ひずみ分布を算出する中間ひずみ算出ステップと、中間ひずみ分布に基づいて第1加工材を第2塑性加工した第2加工材に蓄積している第2残留ひずみ分布を算出する第2ひずみ算出ステップとを備える。この解析方法によれば、塑性加工により割れが発生し易い部位等を高精度に予測でき、中間熱処理時間を短縮した工程設計等も効率的に行える。【選択図】図1
Description
本発明は、熱処理を挟んだ塑性加工を行う場合に蓄積されるひずみを的確に予測できる塑性加工の解析方法等に関する。
多くの金属製品は、塑性加工(鍛造、プレス等)を経て製造される。塑性加工により、切削加工の低減や材料歩留まりの向上等が図られ、高精度な製品の量産も可能となる。もっとも、変形量(加工度)の大きい塑性加工を一度に行うと、局所的に割れ等を生じ得る。そこで、変形量の大きい塑性加工は、加熱処理(単に「熱処理」という。)を挟んで多段階に分けてなされることが多い。このような塑性加工工程間で行う熱処理(単に「中間熱処理」ともいう。)により、先の塑性加工で導入された残留ひずみや残留応力は解消または低減される。そのため、後の塑性加工に伴う割れの発生等が抑制される。
高倉 章雄, 山口 克彦,アルミニウム薄板の延性の向上に対する変形中の焼なましの影響,軽金属, Vol. 44 (1994) No. 1 P 41-47
ところで、塑性加工による金属製品の生産性の向上等を図る観点から、塑性加工の段数の低減や熱処理時間の短縮等が望まれている。それを実現する工程設計を行う際に、熱処理を挟んだ塑性加工により蓄積されるひずみ等が数値解析により予め的確にわかれば、現実の塑性加工や熱処理等による試行錯誤に要する期間や工数を大幅に低減できる。このような数値解析(シミュレーション)に関連する記載が上記の非特許文献1にある。
非特許文献1は、中間熱処理として完全焼き鈍しする場合を想定して、その熱処理後の残留ひずみを零としてシミュレーションしている。しかし、そのような熱処理は長時間を要するものであるため、非特許文献1のような解析方法は、上述した要望に沿ったものではない。また、中間熱処理を短時間の急速加熱で終了させる場合、加工材には不均一な温度分布が生じ、中間熱処理後でも残留ひずみが零とはならない部位も現れる。このような場合にも非特許文献1のシミュレーションを適用すると、中間熱処理の影響を過大評価することとなり、割れが発生する領域を的確に予測できなくなる。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、残留ひずみが零とはならないような中間熱処理を行う場合でも、その影響(効果)を的確に反映させて、塑性加工により蓄積されるひずみを高精度に予測し得る塑性加工の解析方法等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、中間熱処理後の硬さに基づいて、その熱処理後にも残存しているひずみを求め、そのひずみを加味して熱処理後の塑性加工材に蓄積しているひずみを算出することを着想した。この着想に基づく数値解析結果が現実の塑性加工後の状態を的確に反映していることも確認した。このような成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《塑性加工の解析方法》
(1)本発明の塑性加工の解析方法(単に「解析方法」という。)は、金属材を第1塑性加工した第1加工材に生じる第1残留ひずみ分布を算出する第1ひずみ算出ステップと、該第1加工材を熱処理したときに生じる温度分布を算出する温度算出ステップと、該第1残留ひずみ分布と該温度分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に生じる中間硬さ分布を算出する中間硬さ算出ステップと、該中間硬さ分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に残存している中間ひずみ分布を算出する中間ひずみ算出ステップと、該中間ひずみ分布に基づいて該第1加工材を第2塑性加工した第2加工材に蓄積している第2残留ひずみ分布を算出する第2ひずみ算出ステップと、を備える。
(1)本発明の塑性加工の解析方法(単に「解析方法」という。)は、金属材を第1塑性加工した第1加工材に生じる第1残留ひずみ分布を算出する第1ひずみ算出ステップと、該第1加工材を熱処理したときに生じる温度分布を算出する温度算出ステップと、該第1残留ひずみ分布と該温度分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に生じる中間硬さ分布を算出する中間硬さ算出ステップと、該中間硬さ分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に残存している中間ひずみ分布を算出する中間ひずみ算出ステップと、該中間ひずみ分布に基づいて該第1加工材を第2塑性加工した第2加工材に蓄積している第2残留ひずみ分布を算出する第2ひずみ算出ステップと、を備える。
(2)本発明の解析方法によれば、第1塑性加工と第2塑性加工の中間で行う熱処理(中間熱処理)の影響を適切に考慮しているため、第2加工材に蓄積している加工ひずみ(第2残留ひずみ)を的確に算出できる。こうして得られたひずみ分布に基づけば、例えば、第2塑性加工後の割れの発生の判定や、割れを生じ易い第2加工材の領域の特定等も高精度に行える。その結果、中間熱処理に要する時間を短縮した工程設計を行うような場合でも、実際の試作や評価等に要する工数を削減しつつ、低コスト・短期間で想定している工程設計の良否を効率的に判断できるようになる。
(3)本発明の解析方法により、第2塑性加工後までに蓄積されたひずみを精度良く予測できる理由は次のように考えられる。先ず、中間熱処理により、それ以前の塑性加工で導入された加工ひずみがどの程度低減するかを、直接的に定量化することは困難である。これは加工ひずみの定量化自体がそもそも困難であることと、それ以前の塑性加工で導入された加工ひずみの大小と熱処理時の温度の高低とにより、加工ひずみは様々に変化するためである。
このため、従来は、中間熱処理による影響を考慮せずに数値解析したり、既述したように中間熱処理により加工ひずみが零になるとして数値解析されていた。しかし、現実には、中間熱処理後に残存する加工ひずみは、熱処理条件(加熱温度、加熱時間等)や加工材の形態(形状、大きさ、材質等)により変化する。つまり、加工ひずみは、中間熱処理により低減するとしても必ずしも零とはならないし、加工材に生じる不均一な温度分布等のために、部位によって異なる。
そこで本発明では、塑性加工した金属材に係るひずみと硬さの関係と、その金属材を中間熱処理したときの熱処理温度と硬さの関係は実験的に求められることに着目して、硬さをパラメータとして、加工材の各部について熱処理温度と熱処理後に残存するひずみとを関連付けている。これにより、熱処理後の加工材に残存しているひずみ(中間ひずみ)や応力(中間応力)も適性に評価できるようになる。
そして、そのような中間ひずみや中間応力を加して熱処理後の塑性加工で導入される加工ひずみを改めて算出することにより、加工ひずみを解消できない中間熱処理を行うような場合でも、塑性加工全体として蓄積される加工ひずみを的確に求めることが可能となったと考えられる。
《塑性加工の解析プログラム/解析装置》
本発明は、上述した解析方法としてのみならず、計算機で実行することにより解析方法を実施できる塑性加工の解析プログラム(単に「解析プログラム」ともいう。)、その解析プログラムを実行できる塑性加工の解析装置(単に「解析装置」ともいう。)等としても把握できる。このような「物」に係る本発明の構成要素は、上述した解析方法に係る構成要素の各「ステップ」をそれぞれ「手段」と読み替えればよい。
本発明は、上述した解析方法としてのみならず、計算機で実行することにより解析方法を実施できる塑性加工の解析プログラム(単に「解析プログラム」ともいう。)、その解析プログラムを実行できる塑性加工の解析装置(単に「解析装置」ともいう。)等としても把握できる。このような「物」に係る本発明の構成要素は、上述した解析方法に係る構成要素の各「ステップ」をそれぞれ「手段」と読み替えればよい。
《その他》
(1)本明細書では、便宜上、中間熱処理とそれに隣接する塑性加工工程とだけを抽出して本発明を説明している。このため、塑性加工は二段階に限らず、三段階以上に分けてなされても良いし、塑性加工の段数に応じて熱処理も複数回なされてもよい。また、三段階以上の塑性加工がなされる場合、塑性加工工程の隣接間全てで熱処理がなされる必要もない。
(1)本明細書では、便宜上、中間熱処理とそれに隣接する塑性加工工程とだけを抽出して本発明を説明している。このため、塑性加工は二段階に限らず、三段階以上に分けてなされても良いし、塑性加工の段数に応じて熱処理も複数回なされてもよい。また、三段階以上の塑性加工がなされる場合、塑性加工工程の隣接間全てで熱処理がなされる必要もない。
本明細書でいう「金属材」は、本発明に係る第1塑性加工の対象となる素材である。その素材は、塑性加工が全くなされていない原材でも良いし、第1塑性加工前に別な塑性加工がなされた加工材(中間材)でもよい。本明細書では、両者を併せて単に「金属材」という。なお、熱処理温度と硬さの関係を示す実験データ(第1データ)は、加工材(加工ひずみが既知なもの)を熱処理して採取すればよい。ひずみと硬さの関係を示す実験データ(第2データ)は、原材を塑性加工して採取すればよい。
(2)本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。便宜上、本明細書では解析方法について説明するが、その内容は解析プログラムや解析装置にも適宜該当し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《金属材/加工材》
金属材(加工材)の材質は、本発明の解析方法を適用できる限り問わないが、例えば、鉄系金属(純Fe、Fe合金(特に鋼材))、アルミニウム系金属(純Al、Al合金)、マグネシウム系金属(純Mg、Mg合金)、チタン系金属(純Ti、Ti合金)等である。
金属材(加工材)の材質は、本発明の解析方法を適用できる限り問わないが、例えば、鉄系金属(純Fe、Fe合金(特に鋼材))、アルミニウム系金属(純Al、Al合金)、マグネシウム系金属(純Mg、Mg合金)、チタン系金属(純Ti、Ti合金)等である。
《塑性加工》
塑性加工は、中間熱処理を挟んで多段階でなされるものであれば、鍛造、プレス成形等のいずれでもよく、各塑性加工における加工度も問わない。本発明の解析方法を適用できる範囲内であれば、塑性加工は熱間または温間でなされてもよい。本発明の解析方法は、中間熱処理を前提としているため、少なくとも第1塑性加工と2塑性加工が冷間加工である場合に特に有効である。
塑性加工は、中間熱処理を挟んで多段階でなされるものであれば、鍛造、プレス成形等のいずれでもよく、各塑性加工における加工度も問わない。本発明の解析方法を適用できる範囲内であれば、塑性加工は熱間または温間でなされてもよい。本発明の解析方法は、中間熱処理を前提としているため、少なくとも第1塑性加工と2塑性加工が冷間加工である場合に特に有効である。
《熱処理》
熱処理の加熱方法(手段)や加熱条件は、本発明の解析方法を適用できる限り問わない。加熱方法は、例えば、高周波加熱や工業用(遠)赤外線ヒータ等を用いた急速加熱でもよいし、加熱炉等を用いた低速加熱でもよい。加熱条件(加熱温度、加熱時間等)は、塑性加工の程度(加工度)、金属材の材質、加工材の組織等を考慮して適宜選択される。本発明の解析方法は、生産性の向上等を図るため、急速加熱されて加工材に不均一な温度分布が生じる場合に特に有効である。
熱処理の加熱方法(手段)や加熱条件は、本発明の解析方法を適用できる限り問わない。加熱方法は、例えば、高周波加熱や工業用(遠)赤外線ヒータ等を用いた急速加熱でもよいし、加熱炉等を用いた低速加熱でもよい。加熱条件(加熱温度、加熱時間等)は、塑性加工の程度(加工度)、金属材の材質、加工材の組織等を考慮して適宜選択される。本発明の解析方法は、生産性の向上等を図るため、急速加熱されて加工材に不均一な温度分布が生じる場合に特に有効である。
《ひずみ算出ステップ》
(1)塑性加工により導入されるひずみは、伸びひずみでも圧縮ひずみでもよい。なお、ひずみには、弾性ひずみと永久ひずみがあるが、本発明でいう「ひずみ」は永久ひずみ(塑性ひずみ、残留ひずみ、加工ひずみ)である。
(1)塑性加工により導入されるひずみは、伸びひずみでも圧縮ひずみでもよい。なお、ひずみには、弾性ひずみと永久ひずみがあるが、本発明でいう「ひずみ」は永久ひずみ(塑性ひずみ、残留ひずみ、加工ひずみ)である。
(2)第1ひずみ算出ステップと第2ひずみ算出ステップは、塑性加工により各解析領域に生じる(残留)ひずみをそれぞれ算出する。各ひずみは、例えば、金属材の機械的特性(弾性率、降伏応力、応力―ひずみ曲線等)や塑性加工前後の形状等に基づいて、有限要素法を用いた数値解析により求まる。数値解析に必要なモデル形状はCADデータ等を利用してもよい。
(3)中間ひずみ算出ステップは、各解析領域毎に、後述する中間硬さ算出ステップで得られた中間硬さに基づいて、熱処理後の加工材に残存している中間ひずみを算出する。この際、金属材について予め用意したひずみと硬さの関係を示す相関データベース(第2データ/図2B参照)を利用して、その関係を中間ひずみと中間硬さの関係に対応付けて算出するとよい。
《硬さ算出ステップ》
(1)硬さの指標は、ビッカース硬さ(HV)、ロックウェル硬さ(HRC)、ブリネル硬さ(HBS)等のいずれでもよいが、最も普及しているビッカース硬さを用いると好ましい。
(1)硬さの指標は、ビッカース硬さ(HV)、ロックウェル硬さ(HRC)、ブリネル硬さ(HBS)等のいずれでもよいが、最も普及しているビッカース硬さを用いると好ましい。
(2)中間硬さ算出ステップは、各解析領域毎に、第1ひずみ算出ステップで得られた第1残留ひずみと後述する温度算出ステップで得られた熱処理時の(最高)温度とに基づいて、熱処理後の第1加工材に生じる中間硬さをそれぞれ算出する。この際、金属材について予め用意したひずみ毎の温度と硬さの関係を示す相関データベース(第1データ/図2A参照)を利用して、その関係を中間熱処理の温度と中間硬さの関係に対応付けて算出するとよい。
(3)第1ひずみ算出ステップで得られた第1残留ひずみに基づいて、第1加工材に生じる第1硬さを算出する第1硬さ算出ステップを行ってもよい。この際、上述したひずみと硬さの関係を示す相関データベース(第2データ)を利用して、その関係を第1残留ひずみと第1硬さの関係に対応付けて算出するとよい。
第1硬さを利用して中間ひずみを算出することもできる。例えば、先ず、第1硬さと中間硬さに基づいて中間熱処理前後の硬さの変化量を各解析領域毎に算出する。次に、その第1硬さの変化量(低下量)を上述した第2データに当てはめて、第1残留ひずみの変化量(低下量)に換算する。こうして、第1残留ひずみの変化量を考慮することにより、中間ひずみが算出される。
《温度算出ステップ》
温度算出ステップは、各解析領域毎に、中間熱処理したときの第1加工材の温度を算出する。その温度は、ひずみまたは硬さに影響を及ぼす熱処理時の最高到達温度であると好ましい。
温度算出ステップは、各解析領域毎に、中間熱処理したときの第1加工材の温度を算出する。その温度は、ひずみまたは硬さに影響を及ぼす熱処理時の最高到達温度であると好ましい。
《判定ステップ》
第2ひずみ算出ステップで得られた第2残留ひずみ分布に基づいて、第2加工材に発生し得る割れの有無または割れの発生領域を判定(特定)する判定ステップを備えると好適である。例えば、割れに至る残留ひずみの閾値を予め設定しておき、第2残留ひずみがその閾値を超える領域を特定する。これにより、割れの発生の有無または割れの発生領域の判定(特定)が可能となる。
第2ひずみ算出ステップで得られた第2残留ひずみ分布に基づいて、第2加工材に発生し得る割れの有無または割れの発生領域を判定(特定)する判定ステップを備えると好適である。例えば、割れに至る残留ひずみの閾値を予め設定しておき、第2残留ひずみがその閾値を超える領域を特定する。これにより、割れの発生の有無または割れの発生領域の判定(特定)が可能となる。
中間熱処理を挟んで二段階で炭素鋼を鍛造する場合を例にとり、各部に生じるひずみを数値解析(シミュレーション)により求めた。このような実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
《解析モデル》
(1)炭素鋼(JIS10C相当、C量:0.1wt%)からなる丸棒(φ30×30mm/金属材)に対して、最初の鍛造工程(単に「鍛造工程1」という。/第1塑性加工)を施すことにより軸対象な加工材1(φ50×15mm/第1加工材)を得ると共に、その加工材1に次の鍛造工程(単に「鍛造工程2」という。/第2塑性加工)を施すことにより軸対象な加工材2(φ120×6mm)を得る場合を想定した。なお、いずれの鍛造工程も冷間状態で行うものとした。
(1)炭素鋼(JIS10C相当、C量:0.1wt%)からなる丸棒(φ30×30mm/金属材)に対して、最初の鍛造工程(単に「鍛造工程1」という。/第1塑性加工)を施すことにより軸対象な加工材1(φ50×15mm/第1加工材)を得ると共に、その加工材1に次の鍛造工程(単に「鍛造工程2」という。/第2塑性加工)を施すことにより軸対象な加工材2(φ120×6mm)を得る場合を想定した。なお、いずれの鍛造工程も冷間状態で行うものとした。
(2)中間熱処理は、高周波誘導加熱により、加工材1の外周面近傍を急速加熱した後に徐冷(空冷)する場合を想定した。その際、加工材1の外周面近傍の最大到達温度は800℃、その保持時間は1秒とした。
(3)本実施例では、次の3つの領域におけるひずみを評価した。
A領域:外周面、B領域:R/2の円筒面、C領域:R/8の円筒面
Rは、加工材1または加工材2の半径である。
A領域:外周面、B領域:R/2の円筒面、C領域:R/8の円筒面
Rは、加工材1または加工材2の半径である。
《データベース》
(1)第1データ
上述した炭素鋼からなる実際の試料を用いて、所定の(加工)ひずみを付与した試料を種々の温度に加熱したときのビッカース硬さをそれぞれ測定した。その結果を図2Aに示した。
(1)第1データ
上述した炭素鋼からなる実際の試料を用いて、所定の(加工)ひずみを付与した試料を種々の温度に加熱したときのビッカース硬さをそれぞれ測定した。その結果を図2Aに示した。
(2)第2データ
同じ炭素鋼からなる実際の試料を用いて、ひずみとビッカース硬さの関係を測定により求めた。その結果を図2Bに示した。
同じ炭素鋼からなる実際の試料を用いて、ひずみとビッカース硬さの関係を測定により求めた。その結果を図2Bに示した。
(3)第3データ
同じ炭素鋼からなる実際の試料を用いて測定した(残留)応力−(残留)ひずみ線図を図2Cに示した。
同じ炭素鋼からなる実際の試料を用いて測定した(残留)応力−(残留)ひずみ線図を図2Cに示した。
《数値解析》
上述した解析モデルとデータベースに基づいて、図1に示す手順(ステップ)に沿って、加工材2に蓄積される加工ひずみ(第2残留ひずみ)を算出し、それに基づいて割れの発生の有無または割れが発生する領域を特定した。以下、各ステップについて説明する。なお、数値解析は、解析ソフト(Transvalor社製 FORGE NxT 2.0)を利用して行った。
上述した解析モデルとデータベースに基づいて、図1に示す手順(ステップ)に沿って、加工材2に蓄積される加工ひずみ(第2残留ひずみ)を算出し、それに基づいて割れの発生の有無または割れが発生する領域を特定した。以下、各ステップについて説明する。なお、数値解析は、解析ソフト(Transvalor社製 FORGE NxT 2.0)を利用して行った。
鍛造工程1で加工材1に導入される各領域のひずみ(第1残留ひずみ分布)を算出する(ステップS1/第1ひずみ算出ステップ)。
加工材1を中間熱処理したときの各領域の最高温度(温度分布)を算出する(ステップS2/温度算出ステップ)。なお、A領域の最高温度が800℃のとき、B領域の最高温度は400℃、C領域の最高温度は100℃となった。
加工材1について、中間熱処理前の各領域のひずみと中間熱処理時の各領域の最高温度とに基づいて、中間熱処理後の各領域のビッカース硬さ(中間硬さ分布)を図2Aに示すデータベース(第1データ)を利用して求める(ステップS3/中間硬さ算出ステップ)。
中間熱処理後の加工材1の各領域のビッカース硬さに基づいて、その加工材1の各領域に残存しているひずみ(中間ひずみ分布)を、図2Bに示すデータベース(第2データ)を利用して求める(ステップS4/中間ひずみ算出ステップ)。
中間熱処理後の加工材1の各領域について、残存しているひずみに対応する残留応力(中間応力分布)を、図2Cに示すデータベース(第3データ)を利用して求める(ステップS5/中間応力算出ステップ)。
加工材1の各領域に残存しているひずみと応力を踏まえて、その加工材1に鍛造工程2を施して得られた加工材2の各領域のひずみ(第2残留ひずみ分布)を算出する(ステップS6/第2ひずみ算出ステップ)。
加工材2の各領域のひずみが、割れを生じるひずみの閾値を超えているか否かを判断する。そのひずみが閾値を超えている領域があれば、その領域を割れが生じ得る部位として特定する(ステップS7/判定ステップ)。
《評価》
上述した数値解析の結果として、鍛造工程1、中間熱処理および鍛造工程2の各段階における加工材の各部に生じているひずみを図3Aに示した。比較例として、中間熱処理により加工材1のひずみが解消される(つまり零になる)として数値解析した場合の結果を図3Bに示した。また、中間熱処理を行わない(または中間熱処理により加工材1のひずみが低減しない)として数値解析した場合の結果を図3Cに示した。
上述した数値解析の結果として、鍛造工程1、中間熱処理および鍛造工程2の各段階における加工材の各部に生じているひずみを図3Aに示した。比較例として、中間熱処理により加工材1のひずみが解消される(つまり零になる)として数値解析した場合の結果を図3Bに示した。また、中間熱処理を行わない(または中間熱処理により加工材1のひずみが低減しない)として数値解析した場合の結果を図3Cに示した。
図3Aから明らかなように、中間熱処理の影響を適切に考慮すると、加工材2のひずみはB領域で2.5超で最大となり、そこが割れを最も生じ易い部分であることが予測される。この予測結果は、鍛造工程1、中間熱処理および鍛造工程2を実際に行った場合に得られた結果をほぼ反映したものであった。
一方、図3Bから明らかなように、従来のように中間熱処理の影響を過大評価すると、加工材2のひずみはA領域で最大となり、そのひずみは2未満となった。仮に、割れを生じるひずみの閾値を2.5としたとき、図3Bの場合は、いずれの部位にも割れが発生しないことになる。もし割れが発生するなら、外周面(A領域)ということになる。このような予測結果は、現実とは乖離したものである。
また、図3Cから明らかなように、中間熱処理の影響を無視すれば、加工材2のひずみはA領域で最大となり、そのひずみは4超にもなる。このため、図3Cのような予測結果も、やはり、現実とは乖離したものとなる。
以上から明らかなように、本発明の解析方法によれば、中間熱処理を挟んで多段階の塑性加工を行うときに生じる各領域のひずみを高精度に予測され得ることが確認された。
Claims (6)
- 金属材を第1塑性加工した第1加工材に生じる第1残留ひずみ分布を算出する第1ひずみ算出ステップと、
該第1加工材を熱処理したときに生じる温度分布を算出する温度算出ステップと、
該第1残留ひずみ分布と該温度分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に生じる中間硬さ分布を算出する中間硬さ算出ステップと、
該中間硬さ分布に基づいて該熱処理後の第1加工材に残存している中間ひずみ分布を算出する中間ひずみ算出ステップと、
該中間ひずみ分布に基づいて該第1加工材を第2塑性加工した第2加工材に蓄積している第2残留ひずみ分布を算出する第2ひずみ算出ステップと、
を備える塑性加工の解析方法。 - さらに、前記第2残留ひずみ分布に基づいて前記第2加工材に発生し得る割れの有無または該割れの発生領域を判定する判定ステップを備える請求項1の記載の塑性加工の解析方法。
- 前記中間硬さ算出ステップは、前記金属材について予め用意したひずみ毎の温度と硬さの関係を示す第1データに基づいて算出される請求項1または2に記載の塑性加工の解析方法。
- 前記中間ひずみ算出ステップは、前記金属材について予め用意したひずみと硬さの関係を示す第2データに基づいて算出される請求項1〜3のいずれかに記載の塑性加工の解析方法。
- 前記第1塑性加工と前記第2塑性加工は、冷間加工である請求項1〜4のいずれかに記載の塑性加工の解析方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の塑性加工の解析方法を実施できることを特徴とする塑性加工の解析プログラム。
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