JP6610301B2 - 硬さ解析方法および硬さ解析プログラム - Google Patents

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Description

本発明は、熱間加工等によりオーステナイト域で歪みが導入された鋼部材の硬さ(または硬さ分布)を、高精度に予測できる硬さ解析方法と、それをコンピューターで実施できる硬さ解析プログラムとに関する。
高い機械的特性(強度、靱性等)が要求される鋼部材は、塑性加工(鍛造、プレス等)後に、さらに熱処理(焼入れ等)が施されることが多い。この熱処理は、通常、塑性加工した部材を常温域からオーステナイト変態点以上に加熱して一定時間保持した後、急冷等してなされる。高温保持により、塑性加工で導入された(加工)歪みは解放され、冷却速度に対応した特性(硬さ、組織等)を発現する鋼部材が得られる。
最近では、塑性加工と熱処理を連続的に行う効率的な製造方法も行われている。例えば、車両用構造部材(ピラー、各パネル等)は、オーステナイト域まで加熱した鋼板をプレス成形すると共に金型内で急冷することにより、熱間プレス成形と熱処理(焼入れ)を連続的に行う、いわゆるホットスタンプにより製造されている。
Bozo Smoljan,Journal of Mechanical Engineering 56(2010)2, pp.115-120, Predictions of Mechanical Properties of Quenched and Tempered Steel
ところで、鋼部材が大型化または複雑化するほど、その部位(領域)によって熱処理時の冷却速度が異なり、それに応じて硬さや組織等も部位によって変化し得る。このような部位による特性の相違(硬さ分布等)がシミュレーションにより予めわかれば、費用低減や期間短縮等を図りつつ、所望の特性を有する鋼部材の開発が容易となる。このような熱処理したときの機械的特性の数値解析(シミュレーション)については、例えば、上記の非特許文献1に関連した記載がある。
もっとも、従来のシミュレーション方法は、熱処理時の冷却速度に応じて各部の硬さ等を算出しているだけに過ぎなかった。このため、従来の方法では、熱間(オーステナイト域)で加工して冷却した鋼部材の硬さ等を精度良く算出できないことが新たにわかった。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、熱間(オーステナイト域)で加工されて冷却された鋼部材の硬さをも、高精度に予測できる硬さ解析方法と、それを実施できる硬さ解析プログラムを提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、オーステナイト域で加工されてから冷却される鋼部材の硬さは、冷却速度のみならず、オーステナイト相に導入された歪みも考慮して解析すべきことを着想した。そして、この着想に基づく数値解析結果が、現実に熱間加工された鋼部材の硬さ分布をより正確に反映し得ることを確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《硬さ解析方法》
(1)本発明の硬さ解析方法(単に「解析方法」という。)は、加熱された鋼素材を塑性加工して得られた鋼部材の硬さを解析する硬さ解析方法であって、前記塑性加工により前記鋼部材の解析対象となる領域(以下「解析領域」という。)にオーステナイト域で導入され得る歪みを算出する歪み算出ステップと、該塑性加工後に冷却される該解析領域の冷却速度を算出する冷却速度算出ステップと、該算出された歪みおよび冷却速度と予め用意された前記鋼素材に関する歪み、冷却速度および硬さの相関データとに基づいて該解析領域の硬さを特定する硬さ特定ステップと、を備えることを特徴とする。
(2)本発明の解析方法によれば、オーステナイト域で歪みが導入された後に冷却されて得られた金属組織からなる鋼部材の領域についても、数値解析により、その硬さを高精度に求めることができる。これにより、試作・評価等の試行錯誤を抑制しつつ、所望する硬さ(分布)を有する鋼部材を効率的に設計でき、ひいては開発費用の低減や開発期間の短縮等も図れる。
(3)本発明の解析方法により、鋼部材の硬さを精度良く予測できる理由は次のように考えられる。鋼部材は、加熱状態からの冷却速度に応じて、種々の金属組織を生じる。特に、高温なオーステナイト域(γ相域)からフェライト域(α相域)へ冷却される過程で、結晶構造が面心立方格子(fcc)から面心立方格子(bcc)へ変化することに伴って、鋼部材の金属組織(ひいては硬さ等の特性)は急激に変化し得る。
例えば、炭素(C)を固溶しているγ相を急冷すると、無拡散変態であるマルテンサイト相となり、いわゆる「焼入れ」された金属組織となる。逆に、冷却速度が遅い場合、マルテンサイト相が得られず、パーライト(αFe+FeC)、ベイナイトさらにはフェライト(αFe)等が生じるようになる。このように、冷却速度の相違が相変態挙動に影響を及ぼし、各部の金属組織ひいては硬さを変化させ得る。従って、鋼種が特定されていれば、冷却速度に基づいて、得られる金属組織や硬さの予測が可能となる。このことは、鉄鋼材料の連続冷却変態線図(CCT線図)からもわかる。
ところが、オーステナイト域で塑性加工された後、そのまま冷却して得られた鋼部材の硬さは、必ずしも冷却速度のみでは定まらない。これは、オーステナイト域での塑性加工時に導入された(加工)歪みも、その後の相変態挙動に影響を及ぼしているためと考えられる。従って、鋼部材の硬さを予測するには、冷却速度のみならず、オーステナイト域で導入され得る歪みの有無または歪み量をも考慮することが必要となる。
本発明の解析方法では、硬さを求める解析領域について、その冷却速度を算出するに留まらず、その解析領域にオーステナイト域で導入された歪み(歪み量または歪みの有無)も算出している。そして、それらの算出結果と対比するデータベースとして、単なる冷却速度と硬さに関するデータベースではなく、歪みをも加味したデータベース(相関データ)を用いている。こうして本発明の解析方法によれば、オーステナイト域で歪みが導入される場合でも、解析領域の硬さを精度良く求めることが可能となる。
《硬さ解析プログラム/硬さ解析装置》
本発明は、上述した解析方法としてのみならず、計算機で実行することにより解析方法を実施できる硬さ解析プログラム(単に「解析プログラム」ともいう。)、その解析プログラムを実行できる硬さ解析装置(単に「解析装置」ともいう。)等としても把握できる。このような「物」に係る本発明の構成要素は、上述した解析方法に係る構成要素の各「ステップ」をそれぞれ「手段」と読み替えればよい。
《その他》
(1)本明細書では、便宜的に、塑性加工前の鋼材を鋼素材、塑性加工後の鋼材を鋼部材(熱間状態を含む。)といい、両者を併せて単に「鋼材」ともいう。
(2)「オーステナイト域」とは、鋼材(鋼素材または鋼部材)の少なくとも一部がγ相となっている状態またはその状態となる温度(範囲)をいう。オーステナイト域となる温度範囲は、鋼材の組成(特にC量)により異なるが、通常は700〜1500℃である。一旦オーステナイト化した後の冷却過程では、冷却速度により異なるが、700℃以下でもオーステナイト域となり得る。
「解析領域」は、数値解析の対象となる領域である。この解析領域は、例えば、鋼材モデルを区画(メッシュ切り)した各微小領域と考えても良いし、その微小領域が集合した特定領域と考えてもよい。本発明の解析方法は、少なくとも所望する解析領域の硬さを求めるものであればよいが、複数の解析領域の硬さを求めて硬さ分布を求めるものでもよい。
本発明の解析方法は、オーステナイト域から急冷されて焼入れされる場合に限らず、例えば、オーステナイト域から徐冷(放冷、炉冷等)されて焼鈍、焼準等される場合にも適用できる。また、オーステナイト域で歪みが導入されたまま冷却され得る解析領域は、鋼材(モデル)の少なくとも一部に存在すれば足りる。
(3)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
硬さ分布の解析対象となるモデルを示す図である。 現実の実験により得られた冷却速度と硬さの関係を示す相関データである。 シミュレーションにより得られた温度、冷却速度および歪みの分布図である。 シミュレーションにより得られた硬さ分布を示す図である。 モデルに対応する現物の硬さ分布を示す写真である。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。便宜上、本明細書では解析方法について説明するが、その内容は解析プログラムや解析装置にも適宜該当し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《鋼材(鋼素材・鋼部材)》
鋼材は、炭素鋼(合金鋼を含む)に限らず、ステンレス鋼等でもよい。炭素鋼は、例えば、鋼材全体を100質量%(適宜単に「%」という。)としてC量が0.15〜0.8%さらには0.2〜0.7%程度であるとよい。このような炭素鋼は、オーステナイト域からの冷却速度の相違によって組織や硬さが変化し易いため、本発明の解析により硬さを予測する意義が大きい。鋼材(鋼素材)は鋼板でも鋼塊でもよく、それに応じて塑性加工はプレス成形でも鍛造でもよい。鋼板は、組成や形態の異なる複数の鋼板を接合した接合板でもよい。
《歪み算出ステップ》
(1)塑性加工により導入される歪みは、伸び歪みでも圧縮歪みでもよい。なお、歪みには、弾性歪みと永久歪みがあるが、本発明でいう「歪み」は永久歪み(塑性歪み)である。
(2)歪み算出ステップは、解析領域にオーステナイト域で導入され得る歪みを算出するステップである。具体的には、例えば、鋼素材の形状および機械的特性(弾性率、降伏応力、応力―歪み曲線等)と、塑性加工された鋼部材の形状とに基づいて、数値解析することにより求めることができる。この数値解析に必要となるモデル形状はCADデータ等を利用してもよい。歪み算出時には、温度変化の計算も同じように行うことが予測精度を高めるために望ましい。また、温度変化に伴い鋼素材の機械的特性が変化するため機械的特性の温度依存性を考慮すると好ましい。
《冷却速度算出ステップ》
冷却速度算出ステップは、塑性加工によりオーステナイト域で導入された解析領域が、その塑性加工後に冷却されるときの冷却速度を算出するステップである。後述するデータベース(相関データ)で採用されている冷却速度と対応していることを前提に、冷却速度の算出方法は種々考えられる。
例えば、熱処理過程の初期(塑性加工直後)から熱処理過程の終期までの全熱処理過程中における平均冷却速度を、本発明でいう冷却速度(V)として算出してもよい。この他、例えば、熱処理過程中の任意の温度区間(例えば700〜300℃)または時間区間(例えば塑性加工直後からの経過時間で3〜10秒)における平均冷却速度を、本発明でいう冷却速度(V)として算出してもよい。いずれの場合でも、冷却速度の算出区間における経過時間:Δtと温度変化:ΔTから求まる平均冷却速度:V=ΔT/Δtを採用すると処理が容易となり好ましい。
なお、冷却速度の算出には、解析領域の温度変化(ΔT)の把握が必要となる。そこで本発明の解析方法は、例えば、初期温度(鋼素材の加熱温度)から熱処理過程の終了まで、解析領域の温度を逐次算出する温度算出ステップを備えると好ましい。
《硬さ特定ステップと相関データ》
硬さ特定ステップは、歪み算出ステップで算出された歪みと冷却速度算出ステップで算出された冷却速度とに基づいて、実測等により予め用意されている解析対象である鋼材に係る相関データ(データベース)を参照して、解析領域の硬さを特定(算出)するステップである。
(1)オーステナイト域で導入される歪みの有無または歪みの大小により、冷却速度と硬さの関係も相違する。このため、鋼材毎に、多くの歪みに対応して、冷却速度と硬さの関係を明らかにした相関データも多数用意されていることが本来好ましい。しかし、試料の製作・測定・評価等を行う実験を繰り返すことによって漸く得られる相関データを、歪み量の刻み幅毎に多数用意することは現実的ではない。また、一つの鋼材について、多数の相関データが無くても、実用上十分な精度の硬さを求めることも可能である。
例えば、相関データは、オーステナイト域で導入される歪みを考慮しない冷却速度と硬さの関係を指標する第一相関データと、オーステナイト域で導入される歪みを考慮した冷却速度と硬さの関係を指標する第二相関データとを備えるだけでも、実用上は十分なことが多い。後述するように、歪みを考慮せずに硬さを特定するか、歪みを考慮して硬さを特定するかを、算出された歪みと所定の閾値との比較により判別して行う場合であれば、相関データとして第一相関データと第二相関データの二つがあれば十分である。
このような二値的(二段階的)な判別を行わず、算出された歪み量に応じて硬さを算出する場合であっても、第一相関データと第二相関データに基づいて硬さ特定ステップを実行できる。具体的にいうと、算出された歪みが第一相関データと第二相関データに直接的に対応していない場合でも、第一相関データと第二相関データに基づく補間により、算出された歪みに対応する相関データを算出して対応できる。例えば、算出された歪みが、第一相関データと第二相関データの対応する歪みの中間であれば、それらに基づく内挿により、補間する相関データを得ることができる。また算出された歪みが第二相関データの対応する歪みよりも大きいときは、第一相関データと第二相関データに基づく外挿により、補間する相関データを得ることもできる。
相関データは、二つに限らず、三つ以上でもよい。この場合でも、算出された歪みと閾値との比較による段階的な判別、または算出された歪みに応じた相関データの補間を行うことにより、硬さ特定ステップを実行できる。
ちなみに、歪みを考慮する場合に用いる第二相関データ等は、歪みが冷却速度と硬さの相関に明確な影響を及ぼすものであると好ましい。その歪み量を一概に特定することは困難であるが、歪みが例えば0.1〜1.0さらには0.1〜0.5程度であるときの相関データを用意するとよい。
なお、歪みを考慮しない第一相関データは、従前(既存)のデータベースを利用してもよい。また、歪みを考慮した第二相関データ等は、例えば、鋼材毎に、オーステナイト域で歪みを導入した状態(予歪み状態)で、種々の冷却速度と、各冷却速度で冷却した際に得られる硬さと、を直接的に対応付けたものであると好ましい。この他、第二相関データは、鋼材毎に予歪み状態で、種々の冷却速度と、その各冷却速度で冷却した際に生じる相変態挙動に起因して生じる組織(各種類と各分率)を測定し、その組織から特定される硬さと、を間接的に対応付けたものであってもよい。
(2)さらに、硬さ特定ステップは、算出された歪みが所定の閾値(臨界歪み)より小さいときはオーステナイト域で導入される歪みを考慮せずに解析領域の硬さを特定し、算出された歪みが閾値より大きいときはオーステナイト域で導入される歪みを考慮して解析領域の硬さを特定するステップであると好ましい。なお、算出された歪みが閾値に等しいときは、どちらか一方により硬さを特定すれば良い。
このように歪みを考慮するか、しないかを所定の閾値で判別することにより、硬さ特定ステップを簡素化でき、効率的な数値解析が可能となる。また、このような判別と上述した第一相関データと第二相関データの選択を組合わせることにより、硬さ特定ステップをより効率的に行える。具体的にいうと、算出された歪みが所定の閾値より小さく歪みを考慮しないときは第一相関データを用い、逆に算出された歪みが所定の閾値より大きく歪みを考慮するときは第二相関データを用いるとよい。
なお、硬さ特定ステップに係る歪みの閾値と、第二相関データを取得する際の歪み量とは、同じでも良いが、異なっていてもよい。両者が大きく乖離していない限り、実用上、算出される硬さに大差はない。硬さ特定ステップに係る歪みの閾値も一概に特定することは困難であるが、例えば、0.05〜0.5さらには0.1〜0.3程度の閾値を採用すれば良い。
スポット溶接した2枚の鋼板をオーステナイト域まで加熱して塑性変形(塑性加工)させた後に冷却して得られる鋼部材のモデルについて、その硬さ分布を数値解析(シミュレーション)により求めた。また、そのモデルと同様な試験片(鋼部材)を実際に製造して、その硬さ分布を観察した。これらに基づいて、本発明をより具体的に説明する。
《接合板》
硬さ分布の解析対象となるモデルとして、図1に示すような、2枚の鋼板をスポット溶接した接合板(鋼素材)を取り上げた。本実施例で、接合板を採用した理由は、歪みや硬さの分布がスポット溶接部の周辺に出現し易く、評価または観察に適しているためである。
接合した各鋼板は、いずれも普通圧延鋼板(JIS S20C相当、C量:0.2%)を想定した。この鋼板は、Ac点:約800℃、Ms点:約400℃である。
スポット溶接は、図1に示すA−A断面図にあるように、両鋼板の中央で1箇所行う場合を想定した。これにより両鋼材は溶着したナゲット(溶着部)により完全に接合されているとした。ナゲットの大きさは約φ5.5mmとした。
《相関データ》
上述した鋼板と同じ鋼種からなる実際の試料(120×10×2mm)を、オーステナイト域(800℃)から種々の冷却速度で冷却した。こうして得られた各試料の冷却後(熱処理後)の硬さ(ビーカス硬さ/500g)を測定した。この測定を、オーステナイト域で歪みを導入しない試料(Without strain)と、オーステナイト域で歪み(0.2)を導入した試料(With strain)とについて行った。これらの測定結果を図2にまとめて示した。こうして、オーステナイト域で歪みを導入しないときの冷却速度と硬さとの関係を示す第一相関データ(Without strain)と、オーステナイト域で歪みを導入したときの冷却速度と硬さとの関係を示す第二相関データ(With strain)を用意した。
図2から明らかなように、オーステナイト域で歪みが導入されたまま冷却される場合、その歪みが導入されないで冷却される場合に対して、冷却速度が同じでも、得られる硬さが小さくなることがわかる。
《シミュレーション》
(1)塑性加工
上記の接合板を800℃(オーステナイト域)まで加熱した状態で、図1に示すように、各鋼板を両側から引張り(塑性加工)、接合板に塑性変形を生じさせた。
(2)冷却
加熱されたまま引張られている状態の接合板の両面(上下面)側に、冷金を当接させて急冷することを想定した。
(3)数値解析
上述した各工程を解析ソフト(LSTC社製LS-DYNA)を用いてシミュレーションした。これにより得られた結果を図3に示した。なお、図3には、2枚の鋼材が重なっている部分を抽出して示している。
図3(1)には、均一に加熱していた接合板を引張って塑性変形させた直後における各部の温度(冷却前温度/熱処理開始温度)を、数値解析(温度算出ステップ)により求めた結果(冷却前の温度分布)を示した。図3(2)には、その塑性変形後の接合板を60秒冷却後の各部の温度(冷却後温度/熱処理終了温度)を、数値解析(温度算出ステップ)により求めた結果(冷却後の温度分布)を示した。図3(3)には、その冷却過程で接合板に生じた各部の冷却速度を、数値解析(冷却速度算出ステップ)により求めた結果(冷却速度分布)を示した。この冷却速度は、冷却前温度と冷却後温度の温度差を、冷却時間(60秒)で除して求めた平均冷却速度である。図3(4)には、均一に加熱していた接合板を塑性変形させた直後における各部の歪み(歪み分布)を、数値解析(歪み算出ステップ)により求めた結果を示した。図3(4)から明らかなように、スポット溶接部周辺に歪みが集中することがわかる。
算出された冷却速度分布(図3(3))と、実測のデータベース(図2)とに基づいて、上述した冷却後の接合板の各部の硬さを、数値解析(硬さ特定ステップ)により求めた結果(硬さ分布)を、図4(1)〜(3)に示した。図4(1)は、接合板全域(全解析領域)について、オーステナイト域で導入される歪みを考慮していない第一相関データのみを用いて算出した硬さ分布である。図4(2)は、接合板全域(全解析領域)について、オーステナイト域で導入される歪みを考慮した第二相関データのみを用いて算出した硬さ分布である。
図4(3)は、算出された各解析領域の歪み(図3(4))の大きさに応じて、第一相関データと第二相関データを使い分けて算出した硬さ分布である。この際、算出された歪みが閾値(0.1)未満のときは第一相関データを用い、その歪みが閾値以上のときは第二相関データを用いた。
《観察と評価》
上述したモデルと同様な現物の供試材(鋼素材)を用意し、上述した加熱、塑性変形および冷却を施した試験片(鋼部材)を製造した。この試験片を中央で切断した断面を、 鏡面に研磨した後にピクラール腐食液に30秒程度浸漬してから、光学顕微鏡で観察した様子を図5に示した。図5の写真中で、白色部分が硬さの小さい領域であり、灰色部分または黒色部分が硬さの大きな領域である。
図4(1)〜(3)と図5を比較すると明らかなように、オーステナイト域で導入され得る歪みを考慮したシミュレーションを行うことにより、現物(図5)の硬さ分布を高精度に予測し得ることが確認できた。

Claims (4)

  1. 加熱された鋼素材を塑性加工して得られた鋼部材の硬さを解析する硬さ解析方法であって、
    前記塑性加工により前記鋼部材の解析対象となる領域(以下「解析領域」という。)にオーステナイト域で導入され得る歪みを算出する歪み算出ステップと、
    該塑性加工後に冷却される該解析領域の冷却速度を算出する冷却速度算出ステップと、
    該算出された歪みおよび冷却速度と予め用意された前記鋼素材に関する歪み、冷却速度および硬さの相関データとに基づいて該解析領域の硬さを特定する硬さ特定ステップと、
    を備えることを特徴とする硬さ解析方法。
  2. 前記相関データは、オーステナイト域で導入される歪みを考慮しない冷却速度と硬さの関係を指標する第一相関データと、オーステナイト域で導入される歪みを考慮したときの冷却速度と硬さの関係を指標する第二相関データと、を備える請求項1に記載の硬さ解析方法。
  3. 前記硬さ特定ステップは、前記算出された歪みが所定の閾値より小さいときはオーステナイト域で導入される歪みを考慮せずに前記解析領域の硬さを特定し、該算出された歪みが該閾値より大きいときは該オーステナイト域で導入される歪みを考慮して前記解析領域の硬さを特定するステップである請求項1または2に記載の硬さ解析方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬さ解析方法を実施できることを特徴とする硬さ解析プログラム。
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