以下に本発明の圧延機及び圧延機の調整方法の実施例を、図面を用いて説明する。
ここで、以下の実施例では、駆動側とは圧延機を正面から見て作業ロールを駆動する電動機が設置されている側を、作業側とはその反対側を意味する。
<実施例1>
本発明の圧延機及び圧延機の調整方法の実施例1を、図1乃至図7を用いて説明する。図1及び図2に本実施例の4段圧延機を示す。図1は本実施例の4段圧延機の正面図であり、図2乃至図7は図1の領域Aを上から見た図である。
図1において、圧延機1は、圧延材を圧延する4段のクロスロール圧延機であって、ハウジング100と、制御装置20と、油圧装置30とを有している。なお、圧延機は図1に示すような1スタンドの圧延機に限られず、2スタンド以上からなる圧延機であってもよい。
ハウジング100は、上作業ロール110A及び下作業ロール110B、これら作業ロール110A,110Bを支持する上下補強ロール120A,120Bを備えている。
圧下シリンダ170は、上補強ロール120Aを押圧することで、上補強ロール120Aや上作業ロール110A,下作業ロール110B,下補強ロール120Bに対して圧下力を付与するシリンダである。圧下シリンダ170は、作業側ハウジング100Aと駆動側ハウジング100Bにそれぞれ設けられている。
ロードセル180は、作業ロール110A,110Bによる圧延材の圧延力を計測する圧延力計測手段としてハウジング100の下部に設けられており、計測結果を制御装置20に出力している。
油圧装置30は、作業ロール用押圧装置130A,130Bや作業ロール用定位位置制御装置140A,140Bの油圧シリンダに接続されており、この油圧装置30は制御装置20に接続されている。同様に、油圧装置30は、補強ロール用押圧装置150A,150Bや補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bの油圧シリンダに接続されている。
制御装置20は、ロードセル180や作業ロール用定位位置制御装置140A,140B、補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bの位置計測器からの計測信号の入力を受けている。
制御装置20は油圧装置30を作動制御し、作業ロール用押圧装置130A,130Bや作業ロール用定位位置制御装置140A,140Bの油圧シリンダに圧油を給排することで作業ロール用押圧装置130A,130Bや作業ロール用定位位置制御装置140A,140Bの作動を制御している。同様に、制御装置20は油圧装置30を作動制御し、補強ロール用押圧装置150A,150Bや補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bの油圧シリンダに圧油を給排することで補強ロール用押圧装置150A,150Bや補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bの作動を制御している。
各押圧装置は押圧装置を構成する。なお、本発明における押圧装置とは、油圧シリンダのシリンダストロークが制御されずに油圧シリンダが伸長方向に押圧される装置のことをいい、ミルスタビライザとも呼ばれる装置のことを意味する。
次に、図2を用いて上作業ロール110Aを代表して上作業ロール110Aに関係する構成について説明する。なお、上補強ロール120Aや下作業ロール110B,下補強ロール120Bについても、上作業ロール110Aと同等の構成を有しており、その詳細な説明も上作業ロール110Aのものと略同じであるため、省略する。
図2に示すように、作業側ハウジング100A及び駆動側ハウジング100Bは、圧延機1の上作業ロール110Aの両端側にあり、作業側ハウジング100A及び駆動側ハウジング100Bが上作業ロール110Aのロール軸に対して垂直に立てられている。
上作業ロール110Aは、作業側ハウジング100A及び駆動側ハウジング100Bにそれぞれ作業側ロールチョック112A及び駆動側ロールチョック112Bを介して回転自在に支持されている。
作業ロール用押圧装置131Aは、作業側ハウジング100Aの入側と作業側ロールチョック112Aの間に配置され、上作業ロール110Aのロールチョック112Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置131Aと作業側ロールチョック112Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ135Aとロールチョック側ライナ114Aが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置141Aは、作業側ハウジング100Aの出側と作業側ロールチョック112Aの間に配置され、上作業ロール110Aのロールチョック112Aを反圧延方向に押圧する油圧シリンダ(押圧装置)を有している。作業ロール用定位位置制御装置141Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器143Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置141Aと作業側ロールチョック112Aとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ145Aとロールチョック側ライナ114Aが設けられている。
ここで、定位位置制御装置とは、装置内に内蔵されている位置計測器(作業ロール用定位位置制御装置141Aの場合、位置計測器143A)を用いて押圧装置としての油圧シリンダの油柱位置を測定し、所定の油柱位置となるまで油柱位置を制御する装置のことを意味する。以後説明する定位位置制御装置もすべて同様とする。
作業ロール用定位位置制御装置140Aは、駆動側ハウジング100Bの入側と駆動側ロールチョック112Bの間に配置され、上作業ロール110Aのロールチョック112Bを圧延方向に押圧する油圧シリンダ(押圧装置)を有している。作業ロール用定位位置制御装置140Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器142Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置140Aと駆動側ロールチョック112Bとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ144Aとロールチョック側ライナ114Bが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置140A,141Aは、位置制御装置を構成する。
作業ロール用押圧装置130Aは、駆動側ハウジング100Bの出側と駆動側ロールチョック112Bの間に配置され、上作業ロール110Aのロールチョック112Bを圧延方向或いは反圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置130Aと駆動側ロールチョック112Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ134Aとロールチョック側ライナ114Bが設けられている。
作業側ロールチョック112Aに対し、ロールチョック側ライナ114A、押圧装置ライナ135A、位置制御装置ライナ145Aの摩耗を含む作業側ロールチョック112Aと作業側ハウジング100A間における作業側ロールチョック112Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ114A、位置制御装置ライナ145Aの摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック112Aに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)116Aと、作業側ハウジング100Aに設けられ、ロール基準部材116Aの第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)102Aと、上述した位置計測器143Aとによって構成される。
通常、図1に示すような圧延機1では、クロス角を0°から1.2°程度の範囲内で圧延を行う。そこで、これらロール基準部材116A及び圧延機基準部材102Aは通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材116Aの第1基準面と圧延機基準部材102Aの第2基準面とが接触する)に設ける。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材116A及び圧延機基準部材102Aは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
駆動側ロールチョック112Bに対しても、ロールチョック側ライナ114B、押圧装置ライナ134A、位置制御装置ライナ144Aの摩耗を含む駆動側ロールチョック112Bと駆動側ハウジング100B間における駆動側ロールチョック112Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ114B、位置制御装置ライナ144Aの摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック112Bに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)116Bと、駆動側ハウジング100Bに設けられ、第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)102Bと、上述の位置計測器142Aとによって構成される。
ロール基準部材116B及び圧延機基準部材102Bについても、圧延機1内に設けられ、通常圧延時に用いないロールクロス位置に設けられる(クロス角−0.1°の時にロール基準部材116Bの第1基準面と圧延機基準部材102Bの第2基準面とが接触する)。これらロール基準部材116B及び圧延機基準部材102Bも、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られており、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について、上作業ロール110Aを参照して図3乃至図7を参照して説明する。本実施例では、各ロールのロール位置を零点調整(ロール軸心を本来の正しい位置に調整)する。
なお、上補強ロール120Aや下作業ロール110B,下補強ロール120Bの零点調整についても以下説明する作業ロール110Aと同様の方法である。
本実施例の圧延機の調整方法は、主に、作業ロール110A,110Bや補強ロール120A,120Bの交換直後に行われる。
図3は上作業ロール110Aの交換直後(クロス角0°(仮))の図である。
具体的には、まず、図3に示すように上作業ロール110Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、図4に示すように、ロールチョック112Aを通常ロールクロスする方向とは反対側(クロス角=−0.1°)に、作業ロール用押圧装置131Aにてロール基準部材116Aの第1基準面と圧延機基準部材102Aの第2基準面とが接触するまで押圧する。同様に、ロールチョック112Bを通常ロールクロスする方向とは反対側に、作業ロール用押圧装置130Aにてロール基準部材116Bの第1基準面と圧延機基準部材102Bの第2基準面とが接触するまで押圧する。この際、作業ロール用定位位置制御装置140A,141Aの油圧シリンダの押圧力Fcは作業ロール用押圧装置130A,131Aの油圧シリンダの押圧力Fpより小さくする。
ロール基準部材116A,116Bの第1基準面と圧延機基準部材102A,102Bの第2基準面とがそれぞれ接触するクロス角−0.1°となった際、図5に示すように、作業側ロールチョック112Aと作業側ハウジング100A間のライナ群の摩耗によって、ロールチョック側ライナ114Aと位置制御装置ライナ145Aとの間に隙間が生じる。同様に、ロールチョック側ライナ114Bと位置制御装置ライナ144Aとの間にも駆動側ロールチョック112Bと駆動側ハウジング100B間のライナ群の摩耗によって隙間が生じている。この圧延方向のずれを無視すると、クロス角の調整を高精度に行うことができなくなるため、この摩耗量を測定する必要がある。
そこで、図6に示すように、位置制御装置ライナ145Aがロールチョック側ライナ114Aに接触するまで作業ロール用定位位置制御装置141Aの油圧シリンダを前進させる。この時の前進量を位置計測器143Aによって計測する。この前進量はロールチョック側ライナ114Aと位置制御装置ライナ145Aとの間に生じた摩耗によるロールの位置ずれを補正する補正量となる。同様に位置制御装置ライナ144Aがロールチョック側ライナ114Bに接触するまでの作業ロール用定位位置制御装置140Aの油圧シリンダの前進量を位置計測器142Aによって計測する。この前進量はロールチョック側ライナ114Bと位置制御装置ライナ144Aとの間に生じた摩耗によるロールの位置ずれを補正する補正量となる。このように上作業ロール110Aのチョック両端の圧延方向位置を計測することで、チョック位置の圧延方向ずれ量を算出できる。また、上作業ロール110Aのロール軸線を算出できる。
次いで、制御装置(板ウェッジ抑制装置)20によって油圧装置30を制御することで、位置計測器142A,143Aによって計測された各油圧シリンダの前進量に基づいて作業ロール用定位位置制御装置140A,141Aの油圧シリンダを制御する。これにより作業側ロールチョック112A及び駆動側ロールチョック112Bの圧延方向位置を制御して、上作業ロール110Aのロール位置を零点位置に調整する。零点位置とは、クロス角度が0°の位置であり、上下作業ロール110A,110Bと上下補強ロール120A,120Bとが圧延方向に対して直角となる位置である。
また、上下作業ロール110A,110B間で圧延方向の位置ずれが生じていると、圧延材の板厚分布の左右非対称性が生じる。同様に、上下作業ロール110A,110Bと上下補強ロール120A,120Bとの間で所定のオフセット量とは異なるオフセットが生じることも圧延機1において望ましくない。
そこで、下作業ロール110Bについても、図4から図6に示したような動作を行うことで、作業ロール用定位位置制御装置140Bによって零点位置に調整する。同様に上下補強ロール120A,120Bも、図4から図6に示したような動作を行うことで補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bによって零点位置に調整する。このように下作業ロール110Bや上下補強ロール120A,120Bについてもチョック両端の圧延方向位置を計測することで、上下作業ロール110A,110B間の圧延方向軸心ずれや上下作業ロール110A,110Bと上下補強ロール120A,120Bとの軸線ずれを求め、作業ロール軸線と補強ロール軸線とを平行とすることができ、ロール位置調整(零点調整)を行うことができる。
なお、作業ロール用押圧装置131Aと作業側ハウジング100Aとの間や作業ロール用押圧装置130Aと駆動側ハウジング100Bとの間にも当然に摩耗は生じる。ここで、上述のように、作業ロール用押圧装置130A,131Aは押圧一方向の装置であることから、摩耗量分だけ押圧量が増加するものの、作業側ロールチョック112A及び駆動側ロールチョック112Bの圧延方向位置は作業ロール用定位位置制御装置140A,141Aによって調整されているため、その押圧量の増加量を作業ロール用押圧装置130A,131A側で調整する必要はない。
制御装置20は、圧延時は、上述の流れで零点調整した後の状態によって、図7に示すように通常の所望のクロス角となるよう、各油圧シリンダを制御する。
次に、本実施例の効果について説明する。
上述した本発明の実施例1によれば、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bを圧延機1内に設けた基準面に対して圧延方向に押付けた状態で、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bのチョック圧延方向位置を位置計測器142A,143Aによって直接測定することにより、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bのライナ群が摩耗していても高精度にロールチョック位置を測定でき、ライナ摩耗量を容易に測定することができる。また、クロス角が0°から1.2°程度の通常使用する範囲においては、基準面とロールチョックとは接触することはないため、運転中に基準面とチョックが干渉することはない。
そのため、圧延機1内のライナ群の摩耗の影響を受けることなく、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bの圧延方向位置を高精度に測定することができ、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bの圧延方向位置を作業ロール用定位位置制御装置140A,141Aや補強ロール用定位位置制御装置160A,160Bによって常に安定化することができる。従って、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120B間の微小交差をなくすことができ、板ウェッジの発生を抑制することができ、通板性を向上させることができる。
また、圧延機では、特に、チョック側とハウジング側とが当たるため、当たる部分が摩耗や欠損し易い。特には、板先端部が圧延機にかみこむ際の衝撃力は大きく作用するので、各ライナの摩耗が進み易い。本実施例のような圧延機1では、押圧装置によって衝撃力をある程度は緩和することはできるものの、衝撃力を完全には吸収しきれるわけではない。
そのため、チョックとハウジングとが直接当たるようにしておくとその補修が大変であることから、摩耗しても交換できるライナを圧延機に設けている。その上で、製鉄所ではライナの摩耗の進捗状況を計測し管理をしている。しかしながら、特にハウジング側のライナの摩耗の検査はハウジングの肉側にあるライナを計測することとなるので非常に大変な作業となっている。
これに対し、本実施例のような圧延機や圧延機の調整方法であれば、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bのチョック圧延方向位置を直接測定することができるため、作業ロール110A,110Bと補強ロール120A,120Bのライナ群の摩耗を非常に容易に計測し、管理することができる。それゆえ、メンテナンス時間を大幅に低減することができるとともに、ライナ摩耗群の管理も大幅に削減することができる、との効果が得られる。
なお、本実施例の圧延機及び圧延機の調整方法はこれに限られず、例えば、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対しても好適に適用することができる。作業ロールのみの圧延機についても、摩耗による上下作業ロールの圧延方向位置ずれに起因するオフセットは生じ、それによって圧延材の板ウェッジが生じるが、本発明によって上下作業ロールの圧延方向位置の零点調整が可能となり、圧延材の板ウェッジの抑制を図ることができる。
また、作業側位置計測装置や駆動側位置計測装置を設ける位置も限定されず、作業側ロールチョック112Aと作業側ハウジング100A間の摩耗の影響のない位置や駆動側ロールチョック112Bと駆動側ハウジング100B間の摩耗の影響のない位置に設けることができる。
更に、定位位置制御装置は位置計測器付きの液圧装置に限られず、後術の実施例2で説明するようなウォーム減速機等とすることができる。
<実施例1の変形例>
次に、本発明の実施例1の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法を図8乃至図10を用いて説明する。図8乃至図10は本変形例の圧延機の実施例1の図1の領域Aと同等の位置を上から見た図である。
図8に示すように、実施例1の変形例の圧延機では、作業ロール用定位位置制御装置241Aは、作業側ハウジング200Aの入側と作業側ロールチョック212Aの間に配置されている。作業ロール用定位位置制御装置241Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器243Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置241Aと作業側ロールチョック212Aとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ245Aとロールチョック側ライナ214Aが設けられている。
作業ロール用押圧装置231Aは、作業側ハウジング200Aの出側と作業側ロールチョック212Aの間に配置されている。作業ロール用押圧装置231Aと作業側ロールチョック212Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ235Aとロールチョック側ライナ214Aが設けられている。
作業ロール用押圧装置230Aは、駆動側ハウジング200Bの入側と駆動側ロールチョック212Bの間に配置されている。作業ロール用押圧装置230Aと駆動側ロールチョック212Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ234Aとロールチョック側ライナ214Bが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置240Aは、駆動側ハウジング200Bの出側と駆動側ロールチョック212Bの間に配置されている。作業ロール用定位位置制御装置240Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器242Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置240Aと駆動側ロールチョック212Bとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ244Aとロールチョック側ライナ214Bが設けられている。
作業側ロールチョック212Aに対して、ロールチョック側ライナ214A、押圧装置ライナ235A、位置制御装置ライナ245Aの摩耗を含む作業側ロールチョック212Aと作業側ハウジング200A間における作業側ロールチョック212Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ214A、位置制御装置ライナ245Aの摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック212Aに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)216Aと、作業側ハウジング200Aに設けられ、ロール基準部材216Aの第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)202Aと、上述した位置計測器243Aとによって構成される。
ロール基準部材216A及び圧延機基準部材202Aは通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材216Aの第1基準面と圧延機基準部材202Aの第2基準面とが接触する)に設ける。
駆動側ロールチョック212Bに対しても、ロールチョック側ライナ214B、押圧装置ライナ234A、位置制御装置ライナ244Aの摩耗を含む駆動側ロールチョック212Bと駆動側ハウジング200B間における駆動側ロールチョック212Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ214B、位置制御装置ライナ244Aの摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、それぞれ、駆動側ロールチョック212Bに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)216Bと、駆動側ハウジング200Bに設けられ、第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)202Bと、上述の位置計測器242Aとによって構成される。
ロール基準部材216B及び圧延機基準部材202Bは通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材216Bの第1基準面と圧延機基準部材202Bの第2基準面とが接触する)に設ける。
次に、本変形例に係る圧延機の調整方法について図8乃至図10を参照して説明する。本変形例でも、各ロールのロール位置を零点調整(ロール軸心を本来の正しい位置に調整)する。本変形例の圧延機の調整方法も、主に、ロール交換直後に行われる。
図9に示すように、ロールチョック212Aを通常ロールクロスする方向とは反対側(クロス角=−0.1°)に、作業ロール用定位位置制御装置241Aにてロール基準部材216Aの第1基準面と圧延機基準部材202Aの第2基準面とが接触するまで押圧する。同様に、ロールチョック212Bを通常ロールクロスする方向とは反対側に、作業ロール用定位位置制御装置240Aにてロール基準部材216Bの第1基準面と圧延機基準部材202Bの第2基準面とが接触するまで押圧する。この際、作業ロール用押圧装置230A,231Aは使用しない。
クロス角−0.1°となった際、作業側ロールチョック212Aと作業側ハウジング200A間や駆動側ロールチョック212Bと駆動側ハウジング200B間のライナ群の摩耗によって、作業ロール用定位位置制御装置240A、241Aの油圧シリンダの前進量は摩耗が生じる前とは異なる値となる。そこで、この前進量に基づいて摩耗によるロールの位置ずれを補正する。
次いで、制御装置によって油圧装置を制御することで、位置計測器242A,243Aによって計測された各油圧シリンダの前進量に基づいて作業ロール用定位位置制御装置240A,241Aの油圧シリンダを制御する。これにより作業側ロールチョック212A及び駆動側ロールチョック212Bの圧延方向位置を制御して、上作業ロール210Aのロール位置を零点位置に調整し、図10に示すようにクロス圧延を行う。
その他の構成・動作は前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例1の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
なお、本変形例も補強ロールを備えていない作業ロールのみを備えた圧延機に対して適用することができる。
また、定位位置制御装置と押圧装置との配置は、本変形例や実施例1の配置に限られず、定位位置制御装置を圧延機の入側の作業側及び駆動側に、押圧装置を圧延機の出側の作業側及び駆動側に配置することや、定位位置制御装置を圧延機の出側の作業側及び駆動側に、押圧装置を圧延機の入側の作業側及び駆動側に配置することができる。
同様に、作業側位置計測装置や駆動側位置計測装置を設ける位置も限定されず、作業側ロールチョック212Aと作業側ハウジング200A間の摩耗の影響のない位置や駆動側ロールチョック212Bと駆動側ハウジング200B間の摩耗の影響のない位置に設けることができる。
<実施例2>
本発明の実施例2の圧延機及び圧延機の調整方法を図11乃至図13を用いて説明する。図11は本実施例の4段圧延機の正面図であり、図12及び図13は図11の領域Bを上から見た図である。
図11において、圧延機1Aは、圧延材を圧延する4段のクロスロール圧延機であって、ハウジング300と、制御装置20Aと、油圧装置30Aと、モータ制御装置32Aを有している。
ハウジング300は、上作業ロール310A及び下作業ロール310B、これら作業ロール310A,310Bを支持する上下補強ロール320A,320Bを備えている。
圧下シリンダ370は、上補強ロール320Aや上作業ロール310A,下作業ロール310B,下補強ロール320Bに対して圧下力を付与するシリンダである。
ロードセル380は、作業ロール310A,310Bによる圧延材の圧延力を計測する圧延力計測手段としてハウジング300の下部に設けられている。
油圧装置30Aは、作業ロール用押圧装置330A,330Bや補強ロール用押圧装置350A,350Bの油圧シリンダに接続されており、この油圧装置30Aは制御装置20Aに接続されている。
モータ制御装置32Aは、作業ロール用定位位置制御装置340A,340Bや補強ロール用定位位置制御装置360A,360Bのモータ343A,343B,363A,363Bにそれぞれ接続されている。
制御装置20Aは、作業ロール用定位位置制御装置340A,340Bや補強ロール用定位位置制御装置360A,360Bの回転角計測器344A,344B,364A,364B、近距離位置計測器302、ロードセル380からの計測信号の入力を受けている。
制御装置20Aは油圧装置30Aを作動制御し、作業ロール用押圧装置330A,330Bや補強ロール用押圧装置350A,350Bの油圧シリンダに圧油を給排することで作業ロール用押圧装置330A,330Bや補強ロール用押圧装置350A,350Bの作動を制御している。
同様に、制御装置20Aはモータ制御装置32Aを作動制御し、作業ロール用定位位置制御装置340A,340Bや補強ロール用定位位置制御装置360A,360Bのモータ343A,343B,363A,363Bにモータ駆動指令を出力することで作業ロール用定位位置制御装置340A,340Bや補強ロール用定位位置制御装置360A,360Bの作動を制御している。
作業ロール用定位位置制御装置340Aは、一般的にウォーム減速機と呼ばれる装置であり、スクリュ341A、ナット342A、モータ343A、回転角計測器344A、シャフト345A、歯車346Aを備えている。モータ343Aの駆動によりモータ343Aにその一端が取り付けられたシャフト345Aが回転し、シャフト345Aの他端に取り付らえた歯車346Aが回転することでハウジング300に固定されたナット342A内をスクリュ341Aが前進,後退することで上作業ロール310Aの圧延方向位置を所定位置に制御する。作業ロール用定位位置制御装置340Aは、後述する位置制御装置ライナ345A1の圧延方向位置を回転角計測器344Aによって間接的に計測する。
作業ロール用定位位置制御装置340Bは、スクリュ341B、ナット342B、モータ343B、回転角計測器344B、シャフト345B、歯車346Bを備えている。補強ロール用定位位置制御装置360Aは、スクリュ361A、ナット362A、モータ363A、回転角計測器364A、シャフト365A、歯車366Aを備えている。補強ロール用定位位置制御装置360Bは、スクリュ361B、ナット362B、モータ363B、回転角計測器364B、シャフト365B、歯車366Bを備えている。その動作は作業ロール用定位位置制御装置340Aと略同じである。
次に、図12を用いて上作業ロール310A周りの構成について説明する。なお、上補強ロール320Aや下作業ロール310B,下補強ロール320Bについても、上作業ロール310Aと同等の構成であるため、詳細な説明は省略する。
図12に示すように、上作業ロール310Aは、作業側ハウジング300A及び駆動側ハウジング300Bにそれぞれ作業側ロールチョック312A及び駆動側ロールチョック312Bを介して回転自在に支持されている。
作業ロール用押圧装置331Aは、作業側ハウジング300Aの入側と作業側ロールチョック312Aの間に配置され、上作業ロール310Aのロールチョック312Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置331Aと作業側ロールチョック312Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ335Aとロールチョック側ライナ314Aが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置340Aは、作業側ハウジング300Aの出側と作業側ロールチョック312Aの間に配置され、上作業ロール310Aのロールチョック312Aを反圧延方向に押圧する。作業ロール用定位位置制御装置340Aと作業側ロールチョック312Aとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ345A1とロールチョック側ライナ314Aが設けられている。作業ロール用定位位置制御装置340Aは、位置制御装置ライナ345A1の圧延方向位置を間接的に計測するための回転角計測器344Aを備えている。
作業ロール用定位位置制御装置340A1は、駆動側ハウジング300Bの入側と駆動側ロールチョック312Bの間に配置され、上作業ロール310Aのロールチョック312Bを圧延方向に押圧する。作業ロール用定位位置制御装置340A1と駆動側ロールチョック312Bとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ345A2とロールチョック側ライナ314Bが設けられている。作業ロール用定位位置制御装置340A1は、位置制御装置ライナ345A2の圧延方向位置を間接的に計測するための回転角計測器344A1を備えている。
作業ロール用押圧装置330Aは、駆動側ハウジング300Bの出側と駆動側ロールチョック312Bの間に配置され、上作業ロール310Aのロールチョック312Bを圧延方向或いは反圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置330Aと駆動側ロールチョック312Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ334Aとロールチョック側ライナ314Bが設けられている。
作業側ロールチョック312Aに対して、ロールチョック側ライナ314A、押圧装置ライナ335A、位置制御装置ライナ345A1の摩耗を含む作業側ロールチョック312Aと作業側ハウジング300A間における作業側ロールチョック312Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ314A、位置制御装置ライナ345A1の摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック312Aに設けられ、基準面を有するロール基準部材316Aと、作業側ハウジング300Aに設けられ、ロール基準部材316Aの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器302Aと、によって構成される。
ロール基準部材316A及び近距離位置計測器302Aは、圧延機1A内に設けられ、通常、圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。
ロール基準部材316A及び近距離位置計測器302Aは、ロールチョック位置測定でも接触することはなく、摩耗しない。
近距離位置計測器302Aは、例えば渦電流型の距離計測器である。クロス角を0°から1.2°まで移動させた場合にはロールチョックの移動量は約55mm程度と大きい。しかし、ロールチョックの位置測定はロール零調時の微小位置ずれ量を計測できればよく、計測範囲が10mm以下であれば十分である。したがって、高精度計測が可能であり、またメンテナンスも容易となる。
駆動側ロールチョック312Bに対しても、ロールチョック側ライナ314B、押圧装置ライナ334A、位置制御装置ライナ345A2の摩耗を含む駆動側ロールチョック312Bと駆動側ハウジング300B間における駆動側ロールチョック312Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ314B、位置制御装置ライナ345A2の摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック312Bに設けられ、基準面を有するロール基準部材316Bと、駆動側ハウジング300Bに設けられ、ロール基準部材316Bの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器302Bと、によって構成される。
ロール基準部材316B及び近距離位置計測器302Bも圧延機1A内に設けられ、通常、圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。ロール基準部材316B及び近距離位置計測器302Bは、ロールチョック位置測定でも接触することはなく、摩耗しない。近距離位置計測器302Bも計測範囲が10mm以下であれば十分であり、例えば渦電流型の距離計測器である。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について説明する。本実施例でも、各ロールのロール位置を零点調整(ロール軸心を本来の正しい位置に調整)する。
本実施例の圧延機の調整方法も、主に、作業ロール310A,310Bや補強ロール320A,320Bの交換直後に行われる。
具体的には、まず、図12に示すように、上作業ロール310Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、作業ロール用定位位置制御装置340Aは、近距離位置計測器302Aにより計測されるロール基準部材316Aの基準面までの距離δ1が所定距離(ライナ摩耗前の距離δ10)となるよう、ロール基準部材316Aが設けられたロールチョック312Aを作業ロール用定位位置制御装置340Aによって押圧することで直接ロールチョック312Aの圧延方向位置を零点調整する。
作業ロール用定位位置制御装置340A1についても、近距離位置計測器302Bにより計測されるロール基準部材316Bの基準面までの距離δ2が所定距離(ライナ摩耗前の距離δ20)となるよう、ロール基準部材316Bが設けられたロールチョック312Bを作業ロール用定位位置制御装置340A1によって押圧することで直接ロールチョック312Bの圧延方向位置を零点調整する。
これらの際の位置制御装置ライナ345A1,345A2の圧延方向位置をモータ343A,343A1の回転角を計測する回転角計測器344A,344A1によってそれぞれ間接的に計測し、記録する。
同様に、下作業ロール310Bについても、作業ロール用定位位置制御装置340Bによって零点位置に調整する。上下補強ロール320A,320Bも、補強ロール用定位位置制御装置360A,360Bによって零点位置に調整する。このように下作業ロール310Bや上下補強ロール320A,320Bについてもチョック両端の圧延方向位置を計測することで、上下作業ロール310A,310B間の圧延方向軸心ずれや上下作業ロール310A,310Bと上下補強ロール320A,320Bとの軸線ずれを求めることができる。
このように近距離位置計測器302により、作業ロール310A,310Bのチョック両端の圧延方向位置や、補強ロール320A,320Bのチョック両端の圧延方向位置を直接測定する。また、測定したロールチョック両端位置を直線で結ぶことで、それぞれのロール軸線を算出し、作業ロール310A,310Bと補強ロール320A,320Bの軸線ずれ(微小交差)を算出する。また、上下作業ロール310A,310B間の圧延方向軸心ずれを求める。
制御装置20Aは、圧延時は、上述の流れで零点調整した際のパラメータを利用して、図13に示すように通常の所望のクロス角となるよう、各ロール用定位位置制御装置を制御する。
その他の構成・動作は前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例2の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
また、基準部材が設置できない圧延機においても、ロールチョックの圧延方向位置を直接測定する近距離位置計測器302A,302Bを設置することで、ロールチョック位置を正確に把握することができる。
なお、本実施例2についても、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対して適用することができる。
また、本実施例2においても、定位位置制御装置と押圧装置との位置関係や作業側位置計測装置や駆動側位置計測装の位置関係も限定されず、適宜入れ替えることができる。
<実施例2の変形例>
次に、本発明の実施例2の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法を図14乃至図16を用いて説明する。図14は本実施例の4段圧延機の正面図であり、図15及び図16は図14の領域Cを上から見た図である。
図14において、圧延機1Bは、圧延材を圧延する4段のクロスロール圧延機であって、ハウジング400と、制御装置20Bと、油圧装置30Bと、を有している。
ハウジング400は、近距離位置計測器402、作業ロール410A,410B、補強ロール420A,420B、作業ロール用押圧装置431A,430B、作業ロール用定位位置制御装置441A,440B、補強ロール用押圧装置450A,450B、補強ロール用定位位置制御装置460A,460B、圧下シリンダ装置470、及びロードセル480を備えている。
制御装置20Bは、近距離位置計測器402や、作業ロール用定位位置制御装置441A,440B、補強ロール用定位位置制御装置460A,460Bの位置計測器からの計測信号の入力を受けている。
圧延機1Bは、図15に示すように、作業側ハウジング400A、駆動側ハウジング400B、作業ロール410A、作業ロール用押圧装置430A,431A、作業ロール用定位位置制御装置440A,441A、ロールチョック412A,412B、ロールチョック側ライナ414A,414B、ロール基準部材416A,416B、押圧装置ライナ434A,435A、位置制御装置ライナ444A,445A、位置計測器442A,443A、及び近距離位置計測器402A,402Bを備えている。
圧延機1Bでは、図1に示す圧延機1に設けられたロール基準部材116Aと圧延機基準部材102Aと位置計測器143Aとの替わりに、作業側ロールチョック412Aに設けられ、基準面を有するロール基準部材416Aと、作業側ハウジング400Aに設けられ、ロール基準部材416Aの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器402Aと、によって構成される作業側位置計測装置が設けられている。
同様に、ロール基準部材116Bと圧延機基準部材102Bと位置計測器142Aとの替わりに、駆動側ロールチョック412Bに設けられ、基準面を有するロール基準部材416Bと、駆動側ハウジング400Bに設けられ、ロール基準部材416Bの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器402Bと、によって構成される駆動側位置計測装置が設けられている。
近距離位置計測器402A,402Bも、例えば渦電流型の計測器である。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について説明する。本実施例でも、各ロールのロール位置を零点調整(ロール軸心を本来の正しい位置に調整)する。本実施例の圧延機の調整方法も、主に、作業ロール410A,410Bや補強ロール420A,420Bの交換直後に行われる。
具体的には、まず、図15に示すように、上作業ロール410Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、作業ロール用定位位置制御装置440Aは、近距離位置計測器402Aにより計測されるロール基準部材416Aの基準面までの距離δ1が所定距離(ライナ摩耗前の距離δ10)となるよう、ロール基準部材416Aが設けられたロールチョック412Aを作業ロール用定位位置制御装置440Aによって押圧することで直接ロールチョック412Aの圧延方向位置を零点調整する。作業ロール用定位位置制御装置441Aも、近距離位置計測器402Bにより計測されるロール基準部材416Bの基準面までの距離δ2が所定距離(ライナ摩耗前の距離δ20)となるよう、ロール基準部材416Bが設けられたロールチョック412Bを作業ロール用定位位置制御装置441Aによって押圧することで直接ロールチョック412Bの圧延方向位置を零点調整する。
制御装置20Bは、圧延時は、上述の流れで零点調整した際のパラメータを利用して、図16に示すように通常の所望のクロス角となるよう、各油圧シリンダを制御する。
その他の構成・動作は前述した実施例2の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例2の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例2の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
なお、本実施例2の変形例も、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対して適用することができる。
また、本変形例においても、定位位置制御装置と押圧装置との位置関係や作業側位置計測装置や駆動側位置計測装の位置関係も限定されず、適宜入れ替えることができる。
<実施例3>
本発明の実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法を図17乃至図20を用いて説明する。図17及び図18は本実施例の圧延機を実施例1の図1の領域Aと同等の位置を上から見た図である。図19は圧延機における、上下作業ロール間オフセットの概略を示す図、図20は圧延機における上下作業ロール間オフセット時の上下作業ロール間ギャップの様子を示す図である。
図17に示すように、実施例3の圧延機では上作業ロール510Aは、作業側ハウジング500A及び駆動側ハウジング500Bにそれぞれ作業側ロールチョック512A及び駆動側ロールチョック512Bを介して回転自在に支持されている。
作業ロール用押圧装置531Aは、作業側ハウジング500Aの入側と作業側ロールチョック512Aの間に配置され、上作業ロール510Aのロールチョック512Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置531Aと作業側ロールチョック512Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ535Aとロールチョック側ライナ514Aが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置540Aは、作業側ハウジング500Aの出側と作業側ロールチョック512Aの間に配置され、上作業ロール510Aのロールチョック512Aを反圧延方向に押圧する油圧シリンダ(押圧装置)を有している。作業ロール用定位位置制御装置540Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器542Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置540Aと作業側ロールチョック512Aとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ544Aとロールチョック側ライナ514Aが設けられている。
作業ロール用押圧装置530Aは、駆動側ハウジング500Bの入側と駆動側ロールチョック512Bの間に配置され、上作業ロール510Aのロールチョック512Bを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置530Aと駆動側ロールチョック512Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ534Aとロールチョック側ライナ514Bが設けられている。
ピボットブロック506は、駆動側ハウジング500Bの出側と駆動側ロールチョック512Bの間に配置され、作業ロール用押圧装置530Aによって駆動側ハウジング500Bに向けて押圧された作業ロール510Aを駆動側ロールチョック512Bのロールチョック側ライナ514Bを介して保持している。
作業側ロールチョック512Aに対して、ロールチョック側ライナ514A、押圧装置ライナ535A、位置制御装置ライナ544Aの摩耗を含む作業側ロールチョック512Aと作業側ハウジング500A間における作業側ロールチョック512Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ514A、位置制御装置ライナ544Aの摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック512Aに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)516Aと、作業側ハウジング500Aに設けられ、ロール基準部材516Aの第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)504Aと、上述した位置計測器542Aとによって構成される。
ロール基準部材516A及び圧延機基準部材504Aは、圧延機内に設けられ、通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材516Aの第1基準面と圧延機基準部材504Aの第2基準面とが接触する)に設ける。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材516A及び圧延機基準部材504Aは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
駆動側ロールチョック512Bに対しても、ロールチョック側ライナ514B、押圧装置ライナ534A、ピボットブロック506の摩耗を含む駆動側ロールチョック512Bと駆動側ハウジング500B間における駆動側ロールチョック512Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ514B、ピボットブロック506の摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック512Bに設けられ、第3基準面を有するロール基準部材(第3基準部材)516Bと、駆動側ハウジング500Bに設けられ、第3基準面までの距離を計測する近距離位置計測器502B(近距離位置センサ)とによって構成される。
ロール基準部材516A及び近距離位置計測器502Bも、圧延機内に設けられ、通常圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について説明する。本実施例では、各ロールチョック512A,512Bの両端位置を計測することや、作業ロール510A,補強ロールの軸線ずれを算出することはできる。しかし、駆動側は定位位置制御装置が設けられていないため、作業ロール510A,補強ロールを零点位置へ位置調整することはできない。そこで、定位位置制御装置がない駆動側ロールチョック512Bの位置に合わせるように、作業側ロールチョック512A側の位置測定値を、作業ロール用定位位置制御装置540Aによって作業ロール510Aや補強ロールを位置調整することで、作業ロール510Aと補強ロールの軸線ずれを調整する。
具体的には、まず、図17に示すように、上作業ロール510Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、図18に示すように、ロールチョック512Aを通常ロールクロスする方向とは反対側(クロス角=−0.1°)に、作業ロール用押圧装置531Aにてロール基準部材516Aの第1基準面と圧延機基準部材504Aの第2基準面とが接触するまで押圧する。この際、作業ロール用定位位置制御装置540Aの油圧シリンダの押圧力Fcは作業ロール用押圧装置531Aの油圧シリンダの押圧力Fpより小さくする。接触後、位置制御装置ライナ544Aがロールチョック側ライナ514Aに接触するまで作業ロール用定位位置制御装置540Aの油圧シリンダを前進させる。この時の前進量を位置計測器542Aによって計測する。同時に、駆動側の近距離位置計測器502Bによりロール基準部材516Bの第3基準面までの距離δ’を計測する。
その後、制御装置(板ウェッジ抑制装置)によって油圧装置を制御することで、位置計測器542Aによって計測された各油圧シリンダの前進量及び近距離位置計測器502Bにより計測されたδ’−δ(ライナ摩耗前の距離)分の制御量に基づいて作業ロール用定位位置制御装置540Aの油圧シリンダを制御する。これにより作業側ロールチョック512Aの圧延方向位置を制御して、上作業ロール510Aのロール軸線を圧延方向に平行に調整(所定位置に調整)する。
同様に、下作業ロールや上下補強ロールに対しても同様の手法によってロール軸線を平行に調整する。この際、上作業ロール510Aと上補強ロールとの軸心のずれが所定量より大きいときは、この軸心ずれが所定量以下となるよう圧延方向位置の調整量を適宜調整することが望ましい。下作業ロールと下補強ロールとの軸心のずれが所定量より大きいときも、同様に軸心ずれが所定量以下となるよう圧延方向位置の調整量を適宜調整することが望ましい。
本実施例では、上述の圧延機の調整方法では各ロールの軸心を平行にすることはできるが、圧延機の入側、出側両側にそれぞれ定位位置制御装置がないことから、上作業ロールと下作業ロールの間で圧延方向軸心ずれ(上下作業ロール間オフセット)が生じる可能性がある。
上下作業ロール間軸心ずれ(上下作業ロール間オフセット)がない場合には上下作業ロールのクロスポイントずれは無いが、例えば、図19に示すように上側作業ロールが下側作業ロールに対して圧延方向入側へオフセットした場合には、上下作業ロールのクロスポイントにずれを生じる。その結果、図20に示すように、板端位置で駆動側のロール間ギャップh2が作業側のロール間ギャップh1よりも小さくなり、作業側と駆動側のロール間ギャップに差を生じ、圧延材に板ウェッジを発生させる可能性がある。
このため、本実施例の調整方法では、別手段によっても上下作業ロール軸心差を修正することが望ましい。そこで、本実施例の圧延機の制御装置では、この上下作業ロールの圧延方向軸心ずれにより生じる作業側と駆動側のロールギャップ差に起因して生じる板ウェッジ変化量を推定し、板ウェッジ変化量が所定値以下となるように、作業側と駆動側の圧下シリンダ位置(レベリング)を調整する。これにより、板ウェッジ発生を更に抑制することが望ましい。
詳細な原理については後述する実施例5にて説明するが、本実施例の制御装置では、上下作業ロール間オフセット量Δq[mm]と、クロス角θ[rad]、作業ロール径D
w[mm]、板幅b[mm]を用いて作業側と駆動側のロールギャップ差(板端)ΔG[mm]を次式(1)に示す関係によって求める。
その後、次式(2)の関係に基づいて、作業側と駆動側の圧下シリンダの油柱位置差(レベリング)を算出する。
式(2)中、ΔSはレベリング補正量(mm)、LCは作業側と駆動側シリンダ間距離(mm)である。
制御装置は求めた油柱位置差が得られるよう作業側圧下シリンダ及び駆動側圧下シリンダを制御することで、作業側と駆動側のロール間ギャップ差を低減し、板ウェッジの発生をより抑制する。
その他の構成・動作は前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果、すなわち作業ロールチョックや補強ロールチョック両端の圧延方向位置を測定することで、作業ロール軸線や補強ロール軸線が算出でき、作業ロールや補強ロールの軸線微小交差量を評価できる。さらに、定位位置制御装置にてロール位置を調整することで、作業ロールと補強ロール間の微小交差をなくすことができ、幅方向スラスト力に起因した圧延荷重差を抑制でき、その結果、板ウェッジ変化量を低減することで通板性向上に貢献することができる。
なお、本実施例3も、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対して適用することができる。
また、本実施例3においても、定位位置制御装置と押圧装置との配置や作業側位置計測装置や駆動側位置計測装置を設ける位置は上述の実施例3の形態に限定されない。
<実施例3の変形例>
本発明の実施例3の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法を図21及び図22を用いて説明する。図21及び図22は本実施例の圧延機を実施例1の図1の領域Aと同等の位置を上から見た図である。
図21に示すように、本変形例の圧延機は、作業側ハウジング(クロス側)600A、駆動側ハウジング(ピボット側)600B、作業ロール610A、作業ロール用押圧装置630A,631A、作業ロール用定位位置制御装置640A、ピボットブロック606、ロールチョック612A,612B、ロールチョック側ライナ614A,614B、ロール基準部材616A,616B、押圧装置ライナ634A,635A、位置計測器642A、位置制御装置ライナ644A、近距離位置計測器602A,602Bを備えている。
本実施例の圧延機は、実施例3の圧延機において、作業側位置計測装置が、ロール基準部材516Aと圧延機基準部材504Aと位置計測器542Aに替わって、作業側ロールチョック612Aに設けられ、第3基準面を有するロール基準部材(第3基準部材)616Aと、作業側ハウジング600Aに設けられ、第3基準面までの距離を計測する近距離位置計測器602A(近距離位置センサ)とによって構成される。ロール基準部材616A及び近距離位置計測器602Aも圧延機内に設けられ、圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。
これら以外の構成は実施例3と概略同じ構成であるため、詳細は省略する。
次に、本変形例に係る圧延機の調整方法について説明する。本変形例でも、定位位置制御装置がない駆動側ロールチョック612Bの位置に合わせるように、作業側ロールチョック612A側の位置測定値を、作業ロール用定位位置制御装置640Aによって作業ロール610Aや補強ロールを位置調整することで、作業ロール610Aと補強ロールの軸線ずれを調整する。
具体的には、まず、上作業ロール610Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、図22に示すように、作業側の近距離位置計測器602Aによりロール基準部材616Aの第3基準面までの距離δDを計測する。同様に、駆動側の近距離位置計測器602Bによりロール基準部材616Bの第3基準面までの距離δWを計測する。
その後、制御装置(板ウェッジ抑制装置)によって油圧装置を制御することで、近距離位置計測器602Aにより計測されたδDが近距離位置計測器602Bにより計測されたδWに一致するように作業ロール用定位位置制御装置640Aの油圧シリンダを制御する。これにより作業側ロールチョック612Aの圧延方向位置を制御して、上作業ロール610Aのロール軸線を圧延方向に平行に調整(所定位置に調整)する。
同様に、下作業ロールや上下補強ロールに対しても同様の手法によってロール軸線を平行に調整する。
また、本変形例においても上作業ロールと下作業ロールの圧延方向軸心ずれ(上下作業ロール間オフセット)が生じる可能性があることから、上下作業ロールの圧延方向軸心ずれにより生じる作業側と駆動側のロールギャップ差に起因して生じる板ウェッジ変化量を推定し、板ウェッジ変化量が所定値以下となるように、作業側と駆動側の圧下シリンダ位置(レベリング)を調整する。
その他の動作は前述した実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例3の変形例の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
なお、本実施例3の変形例も、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対して適用することができる。更に、定位位置制御装置と押圧装置との配置や作業側位置計測装置や駆動側位置計測装置を設ける位置も上述の実施例3変形例の形態に限定されない。
<実施例4>
本発明の実施例4の圧延機及び圧延機の調整方法を図23乃至図25を用いて説明する。図23は本実施例の圧延機を実施例1の図1の領域Aと同等の位置を上から見た図、図24及び図25は図23の領域Dを拡大した図である。
図23に示すように、実施例4の圧延機では、上作業ロール710Aは、作業側ハウジング700A及び駆動側ハウジング700Bにそれぞれ作業側ロールチョック712A及び駆動側ロールチョック712Bを介して回転自在に支持されている。
作業ロール用押圧装置731Aは、作業側ハウジング700Aの入側と作業側ロールチョック712Aの間に配置され、上作業ロール710Aのロールチョック712Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置731Aと作業側ロールチョック712Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ735Aとロールチョック側ライナ714Aが設けられている。
作業ロール用定位位置制御装置740Aは、作業側ハウジング700Aの出側と作業側ロールチョック712Aの間に配置され、上作業ロール710Aのロールチョック712Aを反圧延方向に押圧する油圧シリンダ(押圧装置)を有している。作業ロール用定位位置制御装置740Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器742Aを備えており、油圧シリンダの位置制御を行う。作業ロール用定位位置制御装置740Aと作業側ロールチョック712Aとの接触部分にはそれぞれ位置制御装置ライナ744Aとロールチョック側ライナ714Aが設けられている。
作業ロール用押圧装置730Aは、駆動側ハウジング700Bの入側と駆動側ロールチョック712Bの間に配置され、上作業ロール710Aのロールチョック712Bを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置730Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器732Aを備えている。作業ロール用押圧装置730Aと駆動側ロールチョック712Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ734Aとロールチョック側ライナ714Bが設けられている。
ピボットブロック706は、駆動側ハウジング700Bの出側と駆動側ロールチョック712Bの間に配置され、作業ロール用押圧装置730Aによって駆動側ハウジング700Bに向けて押圧された作業ロール710Aを駆動側ロールチョック712Bのロールチョック側ライナ714Bを介して保持している。
作業側ロールチョック712Aに対して、ロールチョック側ライナ714A、押圧装置ライナ735A、位置制御装置ライナ744Aの摩耗を含む作業側ロールチョック712Aと作業側ハウジング700A間における作業側ロールチョック712Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ714A、位置制御装置ライナ744Aの摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック712Aに設けられ、第1基準面を有するロール基準部材(第1基準部材)716Aと、作業側ハウジング700Aに設けられ、ロール基準部材716Aの第1基準面に接触可能な第2基準面を有する圧延機基準部材(第2基準部材)702Aと、上述した位置計測器742Aとによって構成される。
ロール基準部材716A及び圧延機基準部材702Aは、圧延機内に設けられ、ロール基準部材716A及び圧延機基準部材702Aは通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材716Aの第1基準面と圧延機基準部材702Aの第2基準面とが接触する)に設ける。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材716A及び圧延機基準部材702Aは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
駆動側ロールチョック712Bに対しても、ロールチョック側ライナ714B、押圧装置ライナ734A、ピボットブロック706の摩耗を含む駆動側ロールチョック712Bと駆動側ハウジング700B間における駆動側ロールチョック712Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ714B、ピボットブロック706の摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック712Bに設けられ、第4基準面を有するロール基準部材(第4基準部材)716Bと、駆動側ハウジング700Bに設けられ、第4基準面に接触可能な第5基準面を有する圧延機基準部材(第5基準部材)702Bと、上述した位置計測器732Aとによって構成される。
ロール基準部材716B及び圧延機基準部材702Bは圧延機内に設けられ、ロール基準部材716Bは駆動側ロールチョック712Bに対して取り外し可能となっている。なお、圧延機基準部材702Bを駆動側ハウジング700Bに対して取り外し可能とすることができ、ロール基準部材716B及び圧延機基準部材702Bの両方を取り外し可能とすることもできる。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材716B及び圧延機基準部材702Bは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について説明する。本実施例でも、定位位置制御装置がない駆動側ロールチョック712Bの位置に合わせるように、作業側ロールチョック712A側の位置測定値を、作業ロール用定位位置制御装置740Aによって作業ロール710Aや補強ロールを位置調整することで、作業ロール710Aと補強ロールの軸線ずれを調整する。
具体的には、まず、上作業ロール710Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、ロールチョック712Aを通常ロールクロスする方向とは反対側(クロス角=−0.1°)に、作業ロール用押圧装置731Aにてロール基準部材716Aの第1基準面と圧延機基準部材702Aの第2基準面とが接触するまで押圧する。接触後、位置制御装置ライナ744Aがロールチョック側ライナ714Aに接触するまで作業ロール用定位位置制御装置740Aの油圧シリンダを前進させる。この時の前進量を位置計測器742Aによって計測する。
これに前後して、図24に示すように、ロール基準部材716Bを駆動側ロールチョック712Bに対して取り付けた後に、駆動側ロールチョック712Bを通常ロールクロスする方向に、作業ロール用押圧装置730Aにてロール基準部材716Bの第4基準面と圧延機基準部材702Bの第5基準面とが接触するまで押圧することで基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークα1を位置計測器732Aによって計測することでロールチョック712Bの位置を計測する。ここで、第4基準面と第5基準面との接触時のロール中心位置と初期状態のロール中心位置は設計時に求められる既知の値である。このため、ロール交換直後での基準部材押付時の実際のロール中心位置と初期のロール中心位置との差分βも既知である。これらα1+βは作業ロール用押圧装置730Aと駆動側ロールチョック712Bとの間の摩耗量を反映した押圧量となる。
その後、上作業ロール710Aを圧延機外に取り出してロール基準部材716Bを駆動側ロールチョック712Bから取り外す。このようにすることで圧延中は基準面にロールチョックは接触しないので常に精度良くロールチョック位置を計測することができる。
次いで、図25に示すように、上作業ロール710Aを圧延機に再び取り付け、作業ロール用押圧装置730Aによってロール基準部材716Bが設けられたロールチョック712Bがピボットブロック706に接触するまでロールチョック712Bを押圧することで再び基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークα2を位置計測器732Aによって計測することでロールチョック712Bの位置を計測する。この時の油圧シリンダのストロークα2は、実際に補正すべき量である初期のロール中心位置とロール交換直後でのロール基準部材716B取り外しての押付時の実際のロール中心位置との差分をγとすると、α2=(作業ロール用押圧装置730Aと駆動側ロールチョック712Bとの間の摩耗量を反映した押圧量)+(ピボットブロック706と駆動側ロールチョック712Bとの間の摩耗量を反映した押圧量)=(α1+β)+(γ)で表される。この関係から、γはγ=α2−α1−βと求めることができる。
その後、制御装置(板ウェッジ抑制装置)によって油圧装置を制御することで、位置計測器742Aによって計測された油圧シリンダの前進量及び正しいロール中心位置からの実際のロール中心位置のズレ量γ分を制御する。これにより作業側ロールチョック712Aの圧延方向位置を制御して、上作業ロール710Aのロール軸線を圧延方向に平行に調整(所定位置に調整)する。
同様に、下作業ロールや上下補強ロールに対しても同様の手法によってロール軸線を平行に調整する。
また、本実施例においても上作業ロールと下作業ロールの圧延方向軸心ずれ(上下作業ロール間オフセット)が生じる可能性があることから、上下作業ロールの圧延方向軸心ずれにより生じる作業側と駆動側のロールギャップ差に起因して生じる板ウェッジ変化量を推定し、板ウェッジ変化量が所定値以下となるように、作業側と駆動側の圧下シリンダ位置(レベリング)を調整する。
その他の構成・動作は前述した実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例4の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例3の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
なお、本実施例4も、補強ロールを備えていない作業ロールのみの圧延機に対して適用することができる。
また、本実施例4においても、定位位置制御装置と押圧装置との配置や作業側位置計測装置や駆動側位置計測装置を設ける位置は上述の実施例4の形態に限定されない。
<実施例5>
本発明の実施例5の圧延機及び圧延機の調整方法を図26乃至図33を用いて説明する。本実施例は、ロール位置を調整する定位位置制御装置が設けられていない圧延機であり、作業ロール及び補強ロールチョック両端の圧延方向位置を計測して、作業ロールと補強ロール間の軸線ずれにより生じる圧延材の板ウェッジを抑制する圧延機及び圧延機の調整方法である。
図26は本実施例の4段圧延機の正面図であり、図27は図26の領域Eを上から見た図である。図28は作業ロールと補強ロール間の軸方向にスラスト力が発生した場合の板ウェッジ予測モデルを示した図、図29は作業ロールと補強ロール間微小交差量とスラスト係数の関係を示した図、図30はスラスト係数と板ウェッジ変化量の関係を示した図、図31はミル算出方法を示した図、図32はミル定数の左右差と板ウェッジ変化量の関係を示した図、図33は作業ロールと補強ロール間微小交差時のレベリングの調整方法の流れを示したフローチャート図である。
図26において、圧延機1Cは、圧延材を圧延する4段のクロスロール圧延機であって、ハウジング800と、制御装置20Cと、油圧装置30Cとを有している。
ハウジング800は、上作業ロール810A及び下作業ロール810B、これら上下作業ロール810A,810Bを支持する上下補強ロール820A,820Bを備えている。
圧下シリンダ870は、上補強ロール820Aを押圧することで、各ロール810A,810B,820A,820Bに対して圧下力を付与するシリンダである。圧下シリンダ870は、作業側ハウジング800Aに設けられた作業側圧下シリンダ装置870A(図28参照)と駆動側ハウジング800Bに設けられた駆動側圧下シリンダ装置870B(図28参照)とからなる。
ロードセル880は、上下作業ロール810A,810Bによる圧延材の圧延力を計測する圧延力計測手段としてハウジング800の下部に設けられており、計測結果を制御装置20Cに出力している。ロードセル880も、作業側ハウジング800Aに設けられた作業側ロードセル880A(図28参照)と駆動側ハウジング800Bに設けられた駆動側ロードセル880B(図28参照)とからなる。
油圧装置30Cは、作業ロール用押圧装置830A,830Bや補強ロール用押圧装置850A,850Bの油圧シリンダに接続されている。
制御装置20Cは、ロードセル880や近距離位置計測器802からの計測信号の入力を受けている。
制御装置20Cは油圧装置30Cを作動制御し、作業ロール用押圧装置830A,830Bや補強ロール用押圧装置850A,850Bの油圧シリンダに圧油を給排することで作業ロール用押圧装置830A,830Bや補強ロール用押圧装置850A,850Bの作動を制御している。各押圧装置は押圧装置を構成する。
また制御装置20Cは、後述する作業側位置計測装置及び駆動側位置計測装置の計測結果に基づいて上下作業ロール810A,810Bの軸線と上下補強ロール820A,820Bの軸線を求める。また、上作業ロール810A軸線と上補強ロール820A軸線の微小交差量及び下作業ロール810Bの軸線と下補強ロール820Bの軸線の微小交差量を演算し、微小交差量により生じる作業ロール810A,810Bと補強ロール820A,820B間のスラスト力を演算する。同時に、上下補強ロール820A,820Bを支持する作業側ハウジング800Aと駆動側ハウジング800Bの剛性差の影響を考慮して、圧延後の板ウェッジ変化量を推定し、この板ウェッジ変化量が所定値以下となるように作業側圧下シリンダ装置870A及び駆動側圧下シリンダ装置870Bを制御する。以下、その原理及び詳細を説明する。
次に、図27を用いて上作業ロール810A周りの構成について説明する。なお、上補強ロール820Aや下作業ロール810B,下補強ロール820Bについても、上作業ロール810Aと同等の構成であるため、詳細な説明は省略する。
図27に示すように、作業側ハウジング800A及び駆動側ハウジング800Bは、圧延機1Cの上作業ロール810Aの両端側にあり、作業側ハウジング800A及び駆動側ハウジング800Bが上作業ロール810Aのロール軸に対して垂直に立てられている。
上作業ロール810Aは、作業側ハウジング800A及び駆動側ハウジング800Bにそれぞれ作業側ロールチョック812A及び駆動側ロールチョック812Bを介して回転自在に支持されている。
作業ロール用押圧装置831Aは、作業側ハウジング800Aの入側と作業側ロールチョック812Aの間に配置され、上作業ロール810Aのロールチョック812Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置831Aと作業側ロールチョック812Aとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ835Aとロールチョック側ライナ814Aが設けられている。
ピボットブロック806Aは、作業側ハウジング800Aの出側と作業側ロールチョック812Aの間に配置され、作業ロール用押圧装置831Aによって作業側ハウジング800Aに向けて押圧された作業ロール810Aを作業側ロールチョック812Aのロールチョック側ライナ814Aを介して保持している。
作業ロール用押圧装置830Aは、駆動側ハウジング800Bの入側と駆動側ロールチョック812Bの間に配置され、上作業ロール810Aのロールチョック812Bを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置830Aと駆動側ロールチョック812Bとの接触部分にはそれぞれ押圧装置ライナ834Aとロールチョック側ライナ814Bが設けられている。
ピボットブロック806Bは、駆動側ハウジング800Bの出側と駆動側ロールチョック812Bの間に配置され、作業ロール用押圧装置830Aによって駆動側ハウジング800Bに向けて押圧された作業ロール810Aを駆動側ロールチョック812Bのロールチョック側ライナ814Bを介して保持している。
作業側ロールチョック812Aに対して、ロールチョック側ライナ814A、押圧装置ライナ835A、ピボットブロック806Aの摩耗を含む作業側ロールチョック812Aと作業側ハウジング800A間における作業側ロールチョック812Aの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ814A、ピボットブロック806Aの摩耗の影響のない位置にて計測する作業側位置計測装置が設けられている。
作業側位置計測装置は、作業側ロールチョック812Aに設けられ、基準面を有するロール基準部材816Aと、作業側ハウジング800Aに設けられ、ロール基準部材816Aの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器(近距離位置センサ)802Aとから構成される。
ロール基準部材816A及び近距離位置計測器802Aは、圧延機1C内に設けられ、通常、圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。ロール基準部材816Aは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。近距離位置計測器802Aは、例えば渦電流型の距離計測器である。
駆動側ロールチョック812Bに対しても、ロールチョック側ライナ814B、押圧装置ライナ834A、ピボットブロック806Bの摩耗を含む駆動側ロールチョック812Bと駆動側ハウジング800B間における駆動側ロールチョック812Bの圧延方向位置を、ロールチョック側ライナ814B、ピボットブロック806Bの摩耗の影響のない位置にて計測する駆動側位置計測装置が設けられている。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック812Bに設けられ、基準面を有するロール基準部材816Bと、駆動側ハウジング800Bに設けられ、ロール基準部材816Bの基準面までの距離を計測する近距離位置計測器(近距離位置センサ)802Bとから構成される。
ロール基準部材816B及び近距離位置計測器802Bも、圧延機1C内に設けられ、通常、圧延時でも摩耗することがない位置に配置される。ロール基準部材816Bも、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。近距離位置計測器802Bも、例えば渦電流型の距離計測器である。
次に、本変形例に係る圧延機の調整方法について説明する。本変形例では、作業側及び駆動側のいずれにも定位位置制御装置がないため、制御装置20Cは圧下シリンダ870を調整することで圧延材の板ウェッジを抑制する。
まず、図27に示すように、作業側の近距離位置計測器802Aによりロール基準部材816Aの基準面までの距離δDを計測する。同様に、駆動側の近距離位置計測器802Bによりロール基準部材816Bの基準面までの距離δWを計測する。これらの計測値よりロールチョック両端位置を直線で結ぶことで、上作業ロール810Aの軸線を算出する。
同様に、下作業ロール810Bや上下補強ロール820A,820Bに対しても同様の手法によってロール軸線を算出する。
ここで、上述したように、上下作業ロールの圧延方向軸心ずれがあると、ロールクロス圧延時にはクロスポイントずれによる左右のロールギャップ差を生じ、圧延材に板ウェッジを発生させる可能性がある。また、ロールクロスを行わない場合であっても作業ロール810A,810Bと補強ロール820A,820Bの軸線ずれによりロール間軸方向にスラスト力が生じる。このスラスト力によって板ウェッジが発生してしまう。しかし本実施例の圧延機は定位位置制御装置が設けられていないため、軸線ずれを修正することができない。そこで、別手段にて軸線ずれにより生じる板ウェッジを抑制する。板ウェッジを抑制する手段として、上述実施例3,4でも簡単に説明したように作業側圧下シリンダ装置870Aと駆動側圧下シリンダ装置870Bの圧下シリンダ油柱位置(レベリング量)を調整する。ここでの板ウェッジとは、板尾端部で生じる板ウェッジを示す。
そのためにはまず板ウェッジ発生量の予測が必要である。図28に示すような板ウェッジ予測モデルを考える。この板ウェッジ予測モデルは、板変形解析とロール弾性変形解析を連成した厳密なモデルである。本モデルでは、ロール弾性変形には、圧延材2Cから上下作業ロール810A,810Bへの荷重による軸心撓み変形、上下作業ロール810A,810Bから上下補強ロール820A,820Bへの荷重による補強ロール軸心撓み変形、板と作業ロール間ロール偏平変形、作業ロールと補強ロール間偏平変形を考慮している。さらに、作業側補強ロール支持バネ定数800A1と駆動側補強ロール支持バネ定数800B1と、ロール間軸方向へのスラスト力(上補強ロールに作用するスラスト力820A1、上作業ロールに作用するスラスト力810A1、下作業ロールに作用するスラスト力810B1、下補強ロールに作用するスラスト力820B1)を考慮したモデルである。
通常、板ウェッジ発生要因としては、機械的要因と圧延材による要因のものがあり、機械的要因としては、上下作業ロール810A,810Bと上下補強ロール820A,820B間微小交差により生じるスラスト力、作業側ハウジング800Aと駆動側ハウジング800Bとでの各装置の剛性の非対称性などの違いによって生じる駆動側のミル定数と作業側のミル定数との差、あるいは上補強ロール820Aの支持バネ定数差等があり、圧延材による要因としては、入側板ウェッジ、板幅方向温度差、オフセンタによるもの等が挙げられる。ここで制御装置20Cによって行う圧延機1Cの調整は、圧延前の段階で行う機械的要因によるものである。
スラスト力、左右(駆動側と作業側)のミル定数差あるいは補強ロールの支持バネ定数差による板尾端部で生じる板ウェッジへの影響を整理した。まず、作業ロールと補強ロール間の軸方向スラスト力が作用した場合の板ウェッジ変化量を算出した。計算条件を表1に、結果を図29に示す。ここで、作業ロールと補強ロール間の微小交差量とは、作業側押圧装置と駆動側押圧装置位置での作業ロール軸線と補強ロール軸線の圧延方向ずれ量である。
図29に示すように、作業ロールと補強ロール間微小交差量が大きくなると、スラスト係数は大きくなり、微小交差量4mmで、スラスト係数0.1程度であることが分かった。
次いで、図28に示すように、補強ロールにおいて、駆動側から作業側に向けてスラスト力が発生した場合のスラスト係数と板ウェッジ変化量の関係を整理した。その結果を図30に示す。図30では、スラスト力は圧延荷重×スラスト係数として付与した。その結果、図30に示すように、作業側の板ウェッジが大きくなる結果であった。板ウェッジは113μm程度発生し、板ウェッジ比率変化として1.6%と問題となる大きさとなることが分かった。
次に、実機での左右ミル定数測定値から算出した補強ロールの支持バネ定数の左右差による板ウェッジ変化量を整理した。ミル定数算出方法を図31に示す。通常、ミル定数Kは、ロールキスした状態で、圧下シリンダ変位と作業側ロードセル880A及び駆動側ロードセル880Bにて測定した荷重の関係を整理し、その勾配から作業側と駆動側のミル定数Kを求める。左右それぞれ求めたミル定数に対して、上下補強ロール支持バネと上下作業ロール剛性を直列バネとして、未知数である左右の補強ロール支持バネ定数を求めることができる。このとき、上述したのと同様に、作業ロール軸心撓み変形、作業ロールから補強ロールへの荷重による補強ロール軸心撓み変形、さらに上下作業ロール間の接触荷重による変形、作業ロールと補強ロール間偏平変形、さらに、左右の補強ロール支持バネ定数などを厳密に考慮して算出する。
次に、測定した左右ミル定数を用いて、左右の補強ロール支持バネ定数をそれぞれ求め、図28に示した板ウェッジ予測モデルを用いて、補強ロール支持バネ定数の左右差と板ウェッジ変化量の関係を求めた。図32にその板ウェッジ変化量を求めた結果を示す。このとき、作業ロールと補強ロール間スラスト力は無とした。
図32に示すように、左右ミル定数差が大きくなると、板ウェッジ変化量も大きくなることが分かった。左右ミル定数差が5%の場合に板ウェッジは139μm、板ウェッジ比率変化は2.0%発生し、既に記載したスラスト力に起因して発生する板ウェッジと同程度であることが分かった。
これら図30及び図32より、スラスト力、左右の補強ロール支持バネ差のいずれも板ウェッジ変化に大きく影響することが分かり、板ウェッジ制御するには、両者の影響を詳細に考慮して板ウェッジを予測する必要があることが分かる。
次いで、上述の知見に基づいた、作業ロールと補強ロール間に微小交差がある時のレベリングを制御する流れを図33を用いて説明する。
まず、制御装置20Cは、作業ロールチョック両端部及び補強ロールチョック両端部の位置を測定する(ステップS10)。
ついで、ステップS10における作業ロールチョック両端、補強ロールチョック両端の圧延方向位置測定値に基づいて、制御装置20Cは、作業ロールと補強ロール間の微小交差量を算出する(ステップS12)。
その後、制御装置20Cは、作業ロールと補強ロール間に作用するスラスト力を推定する(ステップS14)。
これらステップS12,S14と同時に、作業側ロードセル880A及び駆動側ロードセル880Bを用いて作業側ハウジング800Aに掛かる荷重と駆動側ハウジング800Bに掛かる荷重を測定し、制御装置20Cは、測定結果を利用してロールキス状態でのミル定数を算出する(ステップS16)。
次いで、制御装置20Cは、ステップS16で求めたミル定数を用いて、作業側と駆動側の補強ロール支持バネ定数を同定する(ステップS18)。
ステップS14で求めたスラスト力及びステップS18で同定した作業側と駆動側の補強ロール支持バネ定数を考慮して板ウェッジ予測モデルにて板ウェッジ変化量を算出する(ステップS20)。
次いで、制御装置20Cは、求めたウェッジ変化量を目標値に修正する作業側圧下シリンダ装置870Aと駆動側圧下シリンダ装置870Bの圧下シリンダ油柱位置(レベリング量)を算出する(ステップS22)。
制御装置20Cは、算出したレベリング量が得られるよう圧下シリンダ870A,870Bを調整することで板ウェッジの発生を抑制する。
その他の構成・動作は前述した実施例4の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例5の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例1の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。すなわち、ロールチョックの圧延方向位置を直接測定する位置計測器を設置することができ、ロールチョック位置を正確に把握することができる。また、作業ロール軸線と補強ロール軸線が算出でき、作業ロールと補強ロールの軸線微小交差量を評価できる。また、定位制御装置が無い圧延設備において、作業ロールと補強ロールの軸線微小交差により生じる板ウェッジ変化量を算出し、板ウェッジが所定値以下となるレベリング量を調整することで、定位制御装置がない圧延機においても、作業ロールと補強ロール軸線間のずれにより生じる板ウェッジを抑制でき、通板性の向上を図ることができる。
<実施例6>
本発明の実施例6の圧延機及び圧延機の調整方法を図34を用いて説明する。
図34に示すように、本実施例の圧延機は、作業側ハウジング900A、駆動側ハウジング900B、作業ロール910A、作業ロール用押圧装置930A,931A、ピボットブロック906A,906B、ロールチョック912A,912B、ロールチョック側ライナ914A,914B、ロール基準部材916A,916B、押圧装置ライナ934A,935A、位置計測器932A,933A、及び圧延機基準部材902A,902Bを備えている。
本実施例の圧延機は、実施例5の圧延機において、作業ロール用押圧装置931Aが、作業側ハウジング900Aの入側と作業側ロールチョック912Aの間に配置され、上作業ロール910Aのロールチョック912Aを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置931Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器933Aを備えている。同様に、作業ロール用押圧装置930Aが、駆動側ハウジング900Bの入側と駆動側ロールチョック912Bの間に配置され、上作業ロール910Aのロールチョック912Bを圧延方向に押圧する。作業ロール用押圧装置930Aは、油圧シリンダの動作量を計測する位置計測器932Aを備えている。
また、作業側位置計測装置が、ロール基準部材816Aと近距離位置計測器802Aに替わって、作業側ロールチョック912Aに設けられ、第4基準面を有するロール基準部材(第4基準部材)916Aと、作業側ハウジング900Aに設けられ、ロール基準部材916Aの第4基準面に接触可能な第5基準面を有する圧延機基準部材(第5基準部材)902Aと、上述の位置計測器933Aとからなる。
ロール基準部材916A及び圧延機基準部材902Aは、圧延機内に設けられ、通常圧延時に用いないロールクロス位置(クロス角−0.1°の時にロール基準部材916Aの第1基準面と圧延機基準部材902Aの第2基準面とが接触する)に設ける。また、ロール基準部材916Aは作業側ロールチョック912Aに対して取り外し可能となっている。なお、圧延機基準部材902Aを作業側ハウジング900Aに対して取り外し可能とすることや、いずれの基準部材も取り外し可能とすることができる。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材916A及び圧延機基準部材902Aは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
駆動側位置計測装置は、駆動側ロールチョック912Bに設けられ、第4基準面を有するロール基準部材(第4基準部材)916Bと、駆動側ハウジング900Bに設けられ、第4基準面に接触可能な第5基準面を有する圧延機基準部材(第5基準部材)902Bと、上述した位置計測器932Aとによって構成される。
ロール基準部材916B及び圧延機基準部材902Bは圧延機内に設けられ、ロール基準部材916Bは駆動側ロールチョック912Bに対して取り外し可能となっている。なお、圧延機基準部材902Bを駆動側ハウジング900Bに対して取り外し可能とすることや、いずれも取り外し可能とすることができる。これにより、圧延時に各基準面同士が接触しないようになっている。これらロール基準部材916B及び圧延機基準部材902Bは、ステンレス材等の非常に硬く腐食に強い材料で作られ、基準面同士が接触しても、長期間蒸気や熱に晒されても摩耗しないものである。
その他の構成は前述した実施例5の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ構成であり、詳細は省略する。
次に、本実施例に係る圧延機の調整方法について説明する。
具体的には、まず、上作業ロール910Aの組替えをした状態をクロス角0°(仮)とする。
次いで、ロール基準部材916Aを作業側ロールチョック912Aに対して取り付けた後に、作業側ロールチョック912Aを通常ロールクロスする方向とは逆方向に、作業ロール用押圧装置931Aにてロール基準部材916Aの第4基準面と圧延機基準部材902Aの第5基準面とが接触するまで押圧することで基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークを位置計測器933Aによって計測することでロールチョック912Aの位置を計測する。同様に、ロール基準部材916Bを駆動側ロールチョック912Bに対して取り付けた後に、駆動側ロールチョック912Bを通常ロールクロスする方向に、作業ロール用押圧装置930Aにてロール基準部材916Bの第4基準面と圧延機基準部材902Bの第5基準面とが接触するまで押圧することで基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークを位置計測器932Aによって計測することでロールチョック912Bの位置を計測する。
その後、上作業ロール910Aを圧延機外に取り出してロール基準部材916Aを作業側ロールチョック912Aから、ロール基準部材916Bを駆動側ロールチョック912Bから取り外す。
次いで、上作業ロール910Aを圧延機に再び取り付け、作業ロール用押圧装置931Aによってロール基準部材916Aが設けられたロールチョック912Aが作業側ハウジング900Aに接触するまでロールチョック912Aを押圧することで再び基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークを位置計測器933Aによって計測することでロールチョック912Aの位置を計測する。この時の油圧シリンダのストロークから正しいロール中心位置からの実際のロール中心位置のズレ量を求める。同様に、作業ロール用押圧装置930Aによってロール基準部材916Bが設けられたロールチョック912Bが駆動側ハウジング900Bに接触するまでロールチョック912Bを押圧することで再び基準位置を設定し、接触時の油圧シリンダのストロークを位置計測器932Aによって計測することでロールチョック912Bの位置を計測する。この時の油圧シリンダのストロークから正しいロール中心位置からの実際のロール中心位置のズレ量を求める。これらの計測値よりロールチョック両端位置を直線で結ぶことで、上作業ロール910Aの軸線を算出する。
同様に、下作業ロールや上下補強ロールに対しても同様の手法によってロール軸線を算出する。
その後、実施例5と同様に、上作業ロールと下作業ロールの圧延方向軸心ずれが生じる可能性があることから、上下作業ロールの圧延方向軸心ずれにより生じる作業側と駆動側のロールギャップ差に起因して生じる板ウェッジ変化量を推定し、板ウェッジ変化量が所定値以下となるように、作業側と駆動側の圧下シリンダ位置(レベリング)を調整する。
その他の動作は前述した実施例5の圧延機及び圧延機の調整方法と略同じ動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例6の圧延機及び圧延機の調整方法においても、前述した実施例5の圧延機及び圧延機の調整方法とほぼ同様な効果が得られる。
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。