JP2019104020A - 立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 - Google Patents

立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】立向エレクトロガスアーク溶接方法において、強度及び靭性が良好な溶接金属を得ることができる立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤと、これを用いた溶接継手の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係るフラックス入りワイヤは、脱酸能指標Xが100〜200であり、スラグ剤の合計量Yが、0.10〜1.00%未満であり、前記脱酸能指標Xと前記合計量Yとの積が10〜200であり、合金成分が所定範囲内であり、前記合金成分のCeqが0.45〜0.75%である。【選択図】なし

Description

本発明は、立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及びこの立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いた溶接継手の製造方法に関する。
一般に、エレクトロガスアーク溶接の1パス大入熱溶接は、小〜中入熱の多層盛溶接法に比べ、簡便で高能率な溶接が可能である。そのため、船舶などの溶接構造物の溶接に用いられている。その溶接入熱は数十kJ/mm以上であり、溶接入熱が数kJ/mm程度の多層盛溶接に比べて極めて大きい。しかしながら、1パス大入熱溶接では、溶接入熱が大きいことから、溶接によって形成される溶接金属の冷却速度が遅く、溶接金属の強度を確保することが困難になるという問題がある。また、エレクトロガスアーク溶接では、1パス溶接であるが故に、後続の溶接ビードによる組織微細化や焼戻し効果が期待できないので、溶接金属の靭性を確保することが容易ではない。その結果、エレクトロガスアーク溶接では、溶接構造物を形成する溶接継手としての安全性確保が困難であるという問題がある。特に板厚が60mm以上である場合、エレクトロガスアーク溶接では入熱が45kJ/mm超となり、その問題が顕在化する。
上述のように、大入熱溶接における溶接金属の強度及び靭性を共に確保することは、一般的に困難である。
特許文献1に開示されている技術は、フラックス入りワイヤのNi量及びMo量を調整することで、入熱が50kJ/mm超の2電極エレクトロガスアーク溶接でも、溶接金属の強度及び靭性を確保することを狙ったフラックス入りワイヤ及び溶接方法を提案するものである。しかしながら、この技術では、溶接金属中にAlが含有されておらず、微細な粒内変態組織を得ることができないので、溶接金属の靭性を向上させるには不十分である。
特許文献2と特許文献3とに開示されている技術は、板厚50〜80mmの鋼板を、主にフラックス入りワイヤとソリッドワイヤとを用いて2電極エレクトロガスアーク溶接する方法と、それに適した溶接材料とを提案するものである。しかしながらこれら文献では、性能確保に有効なフラックス入りワイヤのスラグ剤の種類について言及されておらず、フラックス入りワイヤを活用したエレクトロガスアーク溶接の設計指針が明確に提示されていない。
特許文献4に開示されている技術は、板厚35〜100mmの1パス多電極エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、金属弗化物を活用することで溶接金属の靭性を確保することを提案するものである。しかしながら、特許文献4のフラックス入りワイヤ中に1.0質量%以上のスラグが含まれているので、溶接中に多量のスラグが発生し、アークが不安定になり、溶接欠陥が発生する。
特開2008−87045号公報 特開2005−330578号公報 特開2005−329460号公報 特開平11−10391号公報
本発明は、上述した背景をもとに、板厚60〜80mmの鋼板を1パス立向溶接するエレクトロガスアーク溶接方法において、靭性と強度(降伏強さ及び引張強さ)とが良好な溶接金属を得ることができる立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤと、このエレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いた溶接継手の製造方法とを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下である。
(1)本発明の一態様に係る立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮とフラックスとを備え、前記フラックスが、スラグ剤として、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、NaO:0.00〜1.00%未満、NaF:0.00〜1.00%未満、CaO:0.00〜1.00%未満、CaF:0.00〜1.00%未満、MgO:0.00〜1.00%未満、MgF:0.00〜1.00%未満、MnO:0.00〜1.00%未満、及びMnF:0.00〜1.00%未満を含有し、式(A)で表わされる脱酸能指標Xが100〜200であり、前記スラグ剤の合計量Yが、0.10〜1.00%未満であり、かつ、前記脱酸能指標Xと前記合計量Yとの積が10〜200であり、前記フラックス入りワイヤが、10%未満の鉄粉を含み、さらに前記フラックス入りワイヤが、合金成分として、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.2〜0.9%、Mn:1.0〜4.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.1〜3.0%、Mo:0.05〜1.00%、V:0.20%以下、Ti:0.05〜0.25%、B:0.0010〜0.0200%、Al:0.05〜0.50%、Mg:0.01〜0.50%、及びREM:0〜0.0010%未満を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、式(B)で表されるCeqが0.35〜0.50%である。
X=100×{2.0×([NaO]+[NaF])+1.5×([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF])+1.0×([MnO]+[MnF])}/([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF]+[NaO]+[NaF]+[MnO]+[MnF])……式(A)
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(B)
但し、前記式(A)における[]付化学式は、各化学式に係る前記スラグ剤の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を示し、前記式(B)における[]付元素は、各元素記号に係る前記合金成分中の元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を示す。
(2)上記(1)に記載のフラックス入りワイヤは、さらに前記合金成分として、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、Cu:0.1〜0.5%、Cr:0.05〜0.50%、及びNb:0.01〜0.05%のうちの1種または2種以上を含有してもよい。
(3)本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法は、上記(1)又は(2)に記載の立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板を溶接する。
(4)上記(3)に記載の溶接継手の製造方法では、式(C)で表される、溶接継手の溶接金属のCeqが0.35〜0.50%であってもよい。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(C)
但し、前記式(C)における[]付元素は、各元素記号に係る前記溶接金属中の元素の単位質量%での含有量を示す。
(5)上記(3)又は(4)に記載の溶接継手の製造方法では、前記溶接が多電極立向エレクトロガスアーク溶接であり、前記多電極立向エレクトロガスアーク溶接において、全ての電極の前記立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤが同一であり、式(D)で表される、前記鋼板のCeqが0.30〜0.40%であり、前記鋼板の板厚が60〜80mmであってもよい。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(D)
但し、前記式(D)における[]付元素は、各元素記号に係る前記鋼板中の元素の単位質量%での含有量を示す。
本発明のエレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及びこれを用いた溶接継手の製造方法によれば、板厚60〜80mmの多電極エレクトロガスアーク溶接において、溶接金属の引張強さ(TS)が570MPa以上、溶接金属の降伏強さ(YP)が460MPa以上、及び溶接金属の−20℃シャルピー吸収エネルギー(vE−20)が80J以上の、強度と靭性とに優れた溶接金属を安定して得られるとともに、溶接欠陥がなく、優れた溶接作業性を得ることができる。
フラックス入りワイヤのスラグ剤と溶接金属の酸素量との関係を示すグラフである。 本発明の実施例の開先形状と各電極の位置とを示す模式図である。 本発明の実施例のシャルピー試験片及び溶接金属(WM)引張試験片の採取位置を示す模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書中において、溶接金属とは、溶接中に溶融及び凝固した金属を意味し、溶接熱影響部(HAZ)とは、溶接熱によって組織、治金的性質、及び機械的性質等が変化を生じた、溶融していない母材の部分を意味する。溶接金属の成分は、被溶接材である母材鋼板(鋼板)の成分と、立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下「フラックス入りワイヤ」又は「ワイヤ」と略す)の合金成分とが混合されてなる。ワイヤの合金成分とは、ワイヤにおいて単体又は合金として存在する成分を意味する。従って、例えば弗化物、酸化物、及び炭酸塩等の、スラグ剤及びアーク安定剤等を形成する元素は、合金成分ではないものとみなされる。スラグ剤及びアーク安定剤等は、溶接中に溶接金属外に実質的に排出されるからである。
従来、溶接金属の靭性を向上させるために、酸素量の低減、及びアシキュラーフェライトの活用が有効であることが知られている。さらに従来技術では、溶接金属の酸素量を低減するために、スラグの塩基度を高めることが有効であるとされている。しかし、スラグの塩基度が高い場合であっても、スラグ量が少なければ溶接金属の酸素量は下げられない。一方、スラグ量を多くすると、溶接中にアークが不安定となり、溶接金属に溶接欠陥が生じる。そこで本実施形態に係るワイヤでは、スラグ量と、スラグの塩基度との両者が調整され、これにより、溶接作業性に影響を及ぼすことなく溶接金属の酸素量を低減することができた。
本実施形態に係るワイヤは、溶接金属のミクロ組織がアシキュラーフェライト主体となるように、その成分が制御された。具体的には、ワイヤの合金成分にTi、Al、及びBを含有させることにより、溶接金属中にアシキュラーフェライトの生成核を微細分散させた。本発明者らの検討によれば、Ti、Al、及びBのいずれかが1種でも溶接金属に含有されていない場合、微細な組織を有する溶接金属は得られなかった。そのため、Ti、Al、及びBの全てが溶接金属に含有されなければならない。
本発明の技術思想を以下に示す。
まず、溶接金属の靭性を確保するために、溶接金属の酸素量とミクロ組織とを好ましい範囲内に制御するように、ワイヤの構成を定めた。
溶接金属中の酸素量は、ワイヤのフラックスに含まれるスラグ剤を用いて制御した。具体的には、スラグ剤として、NaO、NaF、CaO、CaF、MgO、MgF、MnO、及びMnFのうちの1種または2種以上をワイヤのフラックスに含有させた。
上述の構成は、図1に示される、本発明者らが実施したワイヤのスラグ剤と溶接金属の酸素量との関係の調査の結果に基づいて定められた。本発明者らの知見によれば、溶接金属の酸素量は、式(1)で表わされる脱酸能指標Xと、上記スラグ剤である金属弗化物及び金属酸化物の、ワイヤ全質量に対する質量%での合計量(スラグ剤合計量)Yとの積(X×Y)で整理することができる。X×Yが50以下で溶接金属の酸素量が増加し、10以下では溶接金属の酸素量が0.0600mass%程度となった。
X=100×{2.0×([NaO]+[NaF])+1.5×([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF])+1.0×([MnO]+[MnF])}/([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF]+[NaO]+[NaF]+[MnO]+[MnF])……式(1)
なお、無添加の物質については、上式にゼロを代入することとする。
但し、式(1)における[]付化学式は、各化学式に係るスラグ剤のフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%を示す。
脱酸能指標Xは、スラグ合計量が同一の場合のスラグ剤の脱酸能を示す指標であり、本発明者らの実験結果によれば、その適正範囲は100〜200であった。脱酸能指標Xが100未満では、必要とされる脱酸能が得られない。後述するスラグ剤合計量Yの上限値に鑑みると、脱酸能指標Xは200を超えることがないので、200が脱酸能指標Xの上限となる。Xの下限は、好ましくは120である。
スラグ剤合計量Yの適正範囲は0.10%〜1.00%未満であった。本発明者らの実験結果によれば、スラグ剤合計量Yが0.10%未満では、スラグ量が不足するので、溶接金属中の酸素量が高くなった。スラグ剤合計量Yが1.00%以上では、スラグ量が多すぎるので、溶接中にアークが不安定になり、溶接欠陥が生じやすくなった。スラグ剤合計量Yの好ましい下限は0.20%である。スラグ剤合計量Yの好ましい上限は0.80%である。
上述のように、溶接金属中の酸素量はX×Yで整理され、その適正範囲は10〜200である。X×Yが10未満になると、スラグの脱酸能又は量が不足して、溶接金属中の酸素量は十分に下がらない。X×Yが200を超えると、スラグ量が多すぎるので、溶接中にアークが不安定になり、溶接欠陥が生じる。X×Yの下限は、好ましくは50であり、より好ましくは100であり、さらに好ましくは120である。X×Yの上限は、好ましくは180であり、より好ましくは150である。
上述されたスラグ剤であるNaO、NaF、CaO、CaF、MgO、MgF、MnO、及びMnFのそれぞれについて別個に上下限値を定める必要は無い。ただし、スラグ剤の合計量Yが1.00%未満とされる点、並びに上述した脱酸能指標Xの規定、スラグ剤の合計量Yの規定、及びX×Yの規定が満たされる限りスラグ剤の種類が特に限定されない点に鑑みると、NaO、NaF、CaO、CaF、MgO、MgF、MnO、及びMnFそれぞれの含有量がとりうる値は0〜1.00%未満となる。
また、溶接金属において粒界フェライトの生成を抑制するために、式(2)で表されるCeqが0.40〜0.75となるように、本実施形態に係るワイヤの合金成分を調整した。これにより、溶接金属のCeqが好適な範囲内となり、溶接金属の靱性低下の原因となる粒界フェライトの生成、及び溶接金属の過剰硬化の両方を抑制することができる。ただし、Ceqが過剰になると溶接金属が硬くなり過ぎること、又はミクロ偏析が顕著になることで、靭性が劣化する。そこで、Bの効果を最大限活用するために、MoとBを複合添加した。Moを添加することで、Bの焼入性の効果は助長される。これにより、Ceqが過剰とならないようにした。ワイヤの合金成分のCeqが低すぎると、溶接金属に粒界フェライトが生成し、溶接金属の強度及び靭性が確保できなかった。ワイヤの合金成分のCeqが過剰であると、溶接金属の硬さが過剰となり、溶接金属の靭性が確保できなかった。ワイヤの合金成分のCeqの下限は、好ましくは0.42、より好ましくは0.45である。ワイヤの合金成分のCeqの上限は、好ましくは0.70、より好ましくは0.60である。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(2)
なお、無添加の元素については、上式にゼロを代入することとする。
但し、前記式(2)における[]付元素記号は、各元素記号に係る合金成分中の元素のフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%での含有量を示す。
さらに、本実施形態に係るワイヤの合金成分の限定理由を述べる。以下の説明において、各元素の説明における「%」は、特に断りが無い限り「フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%」を意味する。
(C:0.02〜0.10%)
Cは、固溶強化で溶接金属の耐力及び引張強度を確保する重要な元素である。C含有量が0.02%未満では、溶接金属の耐力及び引張強度を確保できない。一方、C含有量が0.10%を超えると、Cが溶接金属中に過剰に残留し、溶接金属の耐力及び引張強度が過度に上昇して、溶接金属の靭性が低下する。溶接金属の靭性及び耐力を安定的に確保するには、C含有量を0.03〜0.08%とすることが好ましい。
(Si:0.20〜0.90%)
Siは、脱酸元素であり、溶接金属のO量を低減して清浄度を高めるために、0.20%以上をワイヤに含有させることが必要である。ただし、0.90%を超えてSiを含有させると、溶接金属の靱性を劣化させるため、Si含有量の上限を0.90%とする。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Si含有量の上限を、0.70%又は0.50%としてもよい。
(Mn:1.0〜4.0%)
Mnは、溶接金属の焼入性を確保して強度を高める元素である。その効果を確実に発揮させるためには、1.0%以上のMnをワイヤに含有させる必要がある。一方、4.0%を超えてMnを含有させると、溶接金属の粒界脆化感受性が増加して、溶接金属の靱性が劣化するため、Mn含有量の上限を4.0%とする。より安定して溶接金属の強度を高めるためには、Mn含有量の下限を1.4%、1.6%又は1.8%としてもよい。また、溶接金属の靭性を安定して確保するためには、Mn含有量の上限は、3.5%又は3.0%としてもよい。
(P:0.030%以下)
Pは不純物元素であり、溶接金属の靱性を阻害するので、その含有量を極力低減する必要があるが、溶接金属の靱性への悪影響が許容できる範囲として、P含有量は0.030%以下とする。P含有量の下限値は0%であるが、0.0001%、0.0005%、又は0.001%としてもよい。
(S:0.030%以下)
Sも不純物元素であり、溶接金属中に過大に存在すると溶接金属の靱性と延性とをともに劣化させるため、その含有量を極力低減することが好ましい。溶接金属の靱性及び延性への悪影響が許容できる範囲として、S含有量は0.030%以下とする。S含有量の下限値は0%であるが、0.0001%、0.0005%、又は0.001%としてもよい。
(Ni:0.10〜3.00%)
Niは溶接金属の焼入性を向上させることで溶接金属の強度を高め、さらに固溶靱化(固溶により靭性を高める作用)により組織、成分によらず溶接金属の靱性を向上させる元素であり、ワイヤに含有させる場合には、その効果を得るために0.10%以上含有させる。Ni含有量が多いほど溶接金属の靱性を向上させる上で有利であるが、Ni含有量が3.00%を超えると耐溶接割れ性が低下するため、Ni含有量の上限を3.00%とする。
(Mo:0.05〜1.00%)
Moは、溶接金属の高強度化に有効な元素である。これは、Moを含有させることで溶接金属の焼入性が向上するためである。Mo含有量が1.00%を超えると、溶接金属が硬化し靭性が劣化する。そのため、Moを含有させる場合、その含有量は1.00%以下とする。一方、上述の効果を得るためには、Moを0.05%以上含有させる必要がある。Mo含有量は好ましくは0.10%以上である。
(V:0.200%以下)
Vは、溶接金属の焼入性を高めることで溶接金属の高強度化に有効な元素であり、含有させる場合には0.200%以下の範囲で含有させる。0.200%を超えてVを含有させると、溶接金属において炭化物の析出が過剰となるので、溶接金属が硬化し、溶接金属の靭性を劣化させる。一方、上述の効果を十分に得るためには、0.010%以上のVを含有させることが好ましい。
(Ti:0.050〜0.250%)
Tiは脱酸元素として有効であり、溶接金属中のO量を低減させる効果がある。また、Tiは溶接金属中に僅かに残留して、固溶Nを固定することにより、Nの靱性への悪影響を緩和するためにも有効である。その効果を得るために、ワイヤ中に0.050%以上のTiを含有させる。一方、0.250%を超えてTiを含有させると、溶接金属において過度な析出物の生成による靱性劣化が生じる可能性が高くなる。なお、一般的には、Tiはフェロチタンとしてフラックス中に添加される。Ti含有量の好ましい下限は、0.100%であり、Ti含有量の好ましい上限は0.200%である。
(B:0.0010〜0.0200%)
Bは、溶接金属中に適正量含有させると、固溶Nと結びついてBNを形成して、固溶Nの靭性に対する悪影響を減じる効果がある。また、Bは溶接金属の焼入性を高めて強度向上に寄与する効果もある。その効果を得るために、ワイヤ中に0.0010%以上のBを含有させる。一方、B含有量が0.0200%超になると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBNやFe23(C、B)等のB化合物を形成して溶接金属の靭性を劣化させる。B含有量の好ましい下限は、0.0050%である。B含有量の好ましい上限は0.0150%である。
(Al:0.05〜0.50%)
Alは脱酸元素であり、Siと同様に、溶接金属中のO低減、及び清浄度向上に効果がある。さらに、溶接金属中でのアシキュラーフェライトの生成のために、Alは必須の元素であり、従って溶接金属の靭性確保のためには欠かせないものである。Al含有量が適正範囲である場合、酸化物はAl含有のスピネル型酸化物になり、これが核となって溶接金属中にアシキュラーフェライトが生成する場合がある。Alのこれら効果を得るためには、ワイヤ中に0.05%以上のAlを含有させる。Al含有量が0.05%未満では、脱酸力が不足したり、アシキュラーフェライトが生成しなくなったりする。Al含有量が0.50%超になると、溶接金属中のAlが過剰となり、酸化物組成がAlになり、アシキュラーフェライトが生成しなくなる。Al含有量の好ましい下限は、0.08%である。Al含有量の好ましい上限は0.30%である。
(Mg:0.01〜0.50%)
Mgは、脱酸剤として働いて溶接金属の酸素量を低減し、靭性を向上させる。この効果を得るためには、0.01%以上のMnをワイヤに含有させる必要がある。一方、Al含有量が、0.50%を超えると、溶接部にブローホールが発生する。なお、Al含有量の好ましい範囲は0.05〜0.30%である。
(REM:0〜0.0010%未満)
REMはスパッタの発生を増大させる元素であるため、可能な限りその含有量を低減することが必要である。REMは少ないほど好ましいので、下限値は特に規定されず、又は0%でもよい。ただし、0.0010%未満であれば、REMの含有は許容される。ここで、「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。
本実施形態に係るワイヤは、以上の基本的な成分のほかに、必要に応じて下記の成分を任意の合金成分として含むことができる。ただし、本実施形態に係るワイヤは、その課題を解決するために任意の合金成分を必須としないので、これら任意の合金成分それぞれの含有量の下限値は0%である。
(Cu:0.10〜0.50%)
Cuは、溶接金属の強度及び耐食性を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。Cu含有量の下限値は0%であるが、Cuを含有する効果を得るためには、Cuをワイヤに0.10%以上含有させることが好ましい。より好ましくはCu含有量を0.20%以上とする。一方、0.50%を超えてCuを含有させても、合金コスト上昇に見合った性能の改善が見られない。好ましくはCu含有量の上限を1.00%以下とし、より好ましくは0.50%以下とする。なお、Cuの含有量については、ワイヤの鋼製外皮自体やフラックス中に含有されている分に加えて、ワイヤ表面に銅めっきされる場合にはその分も含む。
(Cr:0.05〜0.50%)
Crは、耐食性を高めるとともに、焼入性を高めることで強度の向上に有用であるので、必要に応じて含有させてもよい。Cr含有量の下限値は0%であるが、Crを含有する効果を得るためには、Crを0.05%以上含有させることが好ましい。一方、0.50%を超えてCrを含有させても、硬化して靱性を劣化させる場合がある。
(Nb:0.01〜0.05%)
Nbは溶接金属の引張強度の確保のために有効な元素である。これは、ワイヤにNbを含有させると、溶接金属において微細炭化物が形成され、析出強化が起こるためである。Nb含有量の下限値は0%であるが、Nbの効果を得るためには、Nbを0.01%以上含有させることが好ましい。一方、0.05%を超えてNbを含有させても、溶接金属中に粗大な析出物を形成して靭性を劣化させるため、好ましくない。
以上が本実施形態に係るフラックス入りワイヤの成分組成の限定理由であるが、その他の残部成分はFeと不純物である。
Fe成分としては、例えば鋼製外皮のFe、フラックス中に添加された鉄粉、及び合金粉中のFeが含まれる。鉄粉は、本実施形態に係るワイヤに含まれなくても良いので、その含有量の下限値は0%である。鉄粉を充填率の調整のために添加する場合には、溶接金属の靭性を確保するために、含有量は30%未満が好ましい。
なお、上記の合金成分は、ワイヤにおいて単体又は合金として存在する成分である。上述したように、合金成分の含有量には、それらの元素がフラックス中に金属弗化物、金属酸化物、及び金属炭酸塩等の形態で含有される場合の含有量は含めない。
また、合金成分は鋼製外皮中に含有されていても、フラックス中の金属粉や合金粉として含有されていても、その効果は同じである。従って、鋼製外皮及びフラックスの何れも合金成分を含有することが可能である。合金成分がフラックス中に含有される場合は必ずしも純物質である必要はなく、Fe−Ti等の合金の形態で含有されていても何ら問題はない。
また、ワイヤ表面に、防錆性、通電性、及び、耐チップ磨耗性に有効なCuメッキを施す場合がある。そのような場合は、ワイヤの成分として0.3%程度のCuを含むことになる。Cuメッキを施したフラックス入りワイヤも本実施形態に係るワイヤの範囲に含まれる。
続いて、フラックス入りワイヤの形態について説明する。フラックス入りワイヤには、鋼製外皮にスリット状の隙間が無い(いわゆるシームレス形状である)「シームレスワイヤ」と、鋼製外皮にスリット状の隙間を有する「シームを有するワイヤ」とに大別できる。本実施形態に係るワイヤではいずれの断面構造も採用することができるが、製造負荷を考慮すると「シームを有するワイヤ」とすることが好ましい。
また、溶接時のワイヤの送給性を向上させるために、ワイヤ表面に潤滑剤を塗布することができる。潤滑剤の種類は特に限定されず、パーフルオロポリエーテル油(PFPE油)、及び植物油などを塗布することができる。
なお、ワイヤ形態を鋼製外皮にシームを有する管とした場合には、大気中の水分が外皮のシーム部からフラックス中に侵入するので、そのままでは、水分等の水素源の侵入により溶接部に低温割れが生じる可能性が高くなる。そのため、製造後使用するまでの期間が長い場合は、ワイヤ全体を真空包装するか、乾燥した状態に保持できる容器内でワイヤを保存することが望ましい。
以上のように構成される本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、通常のフラックス入りワイヤの製造工程によって製造することができる。すなわち、まず、外皮となる鋼帯、及び、金属弗化物、合金成分、金属酸化物、金属炭酸塩及びアーク安定剤が所定の含有量になるように配合したフラックスを準備し、鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールによりオープン管(U字型)に成形して鋼製外皮とし、この成形途中でオープン管の開口部からフラックスを供給し、開口部の相対するエッジ面を突合せシーム溶接し、溶接により得られた継目無し管を伸線し、伸線途中あるいは伸線工程完了後に焼鈍処理して、所望の線径を有し、鋼製外皮の内部にフラックスが充填されたシームレスワイヤを得る。また、シームを有するワイヤは、オープン管の開口部からフラックスを供給した後、シーム溶接をしない継目有りの管とし、それを伸線することで得られる。
次に、本発明の別の態様に係る溶接継手の製造方法を説明する。本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、上述された本実施形態に係るフラックス入りワイヤを用いて鋼板を溶接する工程を備える。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法において、溶接継手の母材鋼板(鋼板)は特に限定されない。本実施形態に係るワイヤの上述の特徴によれば、鋼板の種類によらず、従来よりも優れた降伏強度、引張強さ、及び低温靱性を有する溶接金属が得られる。一方、本実施形態に係る溶接継手の製造方法において、鋼板は、引張強度が570MPa級以上で板厚60〜80mmの厚板とすることが好ましい。この場合、特に従来技術に対する優位性が高められる。また、鋼板の板厚を60mm以上とすることで、入熱量が小さくなることを防ぎ、溶接金属が硬くなりすぎて溶接金属の靭性が劣化するおそれを確実に抑制できる。鋼板の板厚を80mm以下とすることで、入熱量が過剰になることを防ぎ、継手全体での引張強さとHAZ靭性とを向上させることができる。
また、鋼板のCeqは0.30〜0.40%とすることが好ましい。この場合、溶接熱影響部(HAZ)を含む継手全体の機械特性を安定させることができるからである。鋼板のCeqを0.30%以上とすることで、継手全体での引張強さを一層強化することができる。鋼板のCeqを0.40%以下とすることで、HAZ靭性の不足を確実に防ぐことができる。鋼板のCeqは以下の式(4)により算出できる。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(4)
なお、無添加の元素については、上式にゼロを代入するものとする。
但し、式(4)における[]付元素は、各元素記号に係る鋼板中の元素の単位質量%での含有量を示す。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法では、得られる溶接金属のCeqは特に限定されない。一方、溶接金属のCeqを0.35〜0.50%にすることにより、粒界フェライトの生成、及び溶接金属の過剰硬化の両方を一層効果的に抑制することができる。溶接金属のCeqを0.35%以上とすることで、溶接金属における粒界フェライトの生成を防ぎ、溶接金属の強度及び靭性を一層改善することができる。溶接金属のCeqを0.50%以下とすることで、溶接金属の硬さが過剰となることを防ぎ、溶接金属の靭性を一層高めることができる。溶接金属のCeqは、好ましくは0.38以上であり、より好ましくは0.40以上である。一方、溶接金属のCeqは、好ましくは0.47以下であり、より好ましくは0.45以下である。溶接金属のCeqは、ワイヤの合金成分、鋼板の成分、及び溶接条件を適宜変更することにより制御可能である。溶接金属のCeqは以下の式(3)により算出できる。
Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(3)
なお、無添加の元素については、上式にゼロを代入するものとする。
但し、式(3)における[]付元素は、各元素記号に係る溶接金属中の元素の単位質量%での含有量を示す。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法では、溶接の種類及び具体的条件は特に限定されない。本実施形態に係るワイヤの上述の特徴によれば、鋼板の種類によらず、従来よりも優れた降伏強度、引張強さ、及び低温靱性を有する溶接金属が得られる。一方、本実施形態に係る溶接継手の製造方法では、溶接を多電極立向エレクトロガスアーク溶接とすることが好ましい。板厚60mm以上の鋼板を、多電極で立向エレクトロガスアーク溶接すると、揺動幅の増大を防止し、アークを安定化し、融合不良が生じるおそれを一層抑制することができる。また、溶接を多電極立向エレクトロガスアーク溶接とする場合、各電極には同一の溶接ワイヤを用いることが好ましい。各電極で同一のワイヤを用いることにより、溶接金属の組成を板厚方向に均一化し、溶接継手の機械特性を一層安定化させることができる。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法に含まれる溶接において、シールドガスは特に限定されないが、一般的に多用されている100vol%の炭酸ガスや、Arと3〜20vol%COとの混合ガスとすることが好ましい。これらガスは安価であるので、溶接継手の製造コストを削減することができる。本実施形態に係るワイヤは、100vol%の炭酸ガスをシールドガスとする溶接に適用してもスパッタを顕著に増加させないので、コスト削減のために、シールドガスが100vol%の炭酸ガスである溶接に適用した場合に、特に顕著な効果を発揮する。
次に、実施例により本発明の実施可能性及び効果についてさらに詳細に説明する。
鋼製外皮としてC:0.002〜0.06%、Si:0.01〜0.05%、Mn:0.20〜0.45%、P:0.004〜0.008%、S:0.002〜0.001%を含有し、残部が鉄及び不純物からなる化学成分の帯鋼を用いて、表1−1〜表2−2に示す各種成分組成のワイヤ径1.6mmのシーム有りフラックス入りワイヤを試作した。含有量が検出限界値以下である成分については、その含有量は空白で示した。これらワイヤを用いて、表3に開示される成分を有する鋼板P1〜P3を、表4に示される条件で溶接した。
図2に開先形状と各電極の位置とを示す。溶接は、開先形状の開先角度が20°、及び開先形状の先端部の間隔が10mmの条件で、裏当て材として、SB−60VT(日鐵住金溶接工業社製)を用いながら、表1の溶接ワイヤを用いて行った。溶接時の入熱量は、46kJ/mm〜61kJ/mmであった。
上述の手順によって得られた溶接継手の溶接金属の成分を表5〜8に示し、機械特性を表9〜12に示す。ただし、スラグ量過剰、高温割れ発生、ブローホール発生、又はアーク不安定が生じた場合、継手作製が不可能であったので、成分分析及び機械特性評価を実施しなかった。溶接金属の成分の分析は、JIS G0321、JIS Z3184によって行われた。成分測定をおこなう箇所は、後述するA1号引張試験片の採取箇所とした。含有量が検出限界値以下である成分については、その含有量は空白で示した。例えば、脱酸元素であるSi、Mg、及びTi等は、合金元素としてフラックス入りワイヤに含まれていたとしても、溶接中にスラグとして溶接金属外に排出され、溶接金属の成分として検出されない場合がある。このような場合、溶接金属のMg含有量は空白で示した。
溶接金属の強度は引張試験で、靭性はシャルピー衝撃試験で評価した。溶接金属から、図3に示すように、JIS Z3111(2005年)に準拠したA1号引張試験片(丸棒)と4号シャルピー試験片(2mmVノッチ)とを採取し、それぞれの機械特性試験を行って、溶接金属の引張強度とシャルピー吸収エネルギーとを測定した。なお、シャルピー試験片は、溶接線方向に対して垂直方向から、板厚の表側から板厚中心方向6mmの位置(表下)、板厚中心の位置(t/2)、板厚の裏側から板厚中心方向6mmの位置(裏下)を中心として、それぞれ3本採取し、溶接金属の中央部に2mmVノッチを加工して作製した。シャルピー衝撃試験は、試験温度−20℃の条件で3回を行い、この平均値から溶接金属の吸収エネルギー(vE−20)を、表下、t/2、及び裏下のそれぞれの位置について求めた。
溶接金属の機械特性の評価基準は、以下の通りとした。引張強さに関しては、室温での引張強度(TS)が570MPa以上であるものを合格とした。降伏強さに関しては、室温での降伏応力(YP)が460MPa以上であるものを合格とした。靱性に関しては、表下、t/2、及び裏下のそれぞれの位置での溶接金属の吸収エネルギー(vE−20)が、それぞれ80J以上のものを合格と評価した。
溶接金属のミクロ組織は、アシキュラーフェライト分率によって評価した。溶接線方向と垂直な面を鏡面研磨後、ナイタール腐食し、光学顕微鏡を用いて、t/2位置の溶接金属中央を中心に100倍の倍率で4視野撮影し、各視野のアシキュラーフェライト分率をポイントカウンティング法(30μm×30μmのメッシュ状に区切り、その交点にアシキュラーフェライトが存在する確率を求める方法)で求め、その平均値を、溶接金属のアシキュラーフェライト分率とした。なお、1つの視野の大きさは、900μm×900μmとした。アシキュラーフェライト分率が85%以上の溶接金属が得られたものを、溶接金属の組織に関して合格と評価した。
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表1〜表12から明らかなように、ワイヤ番号A01〜A33から得られた溶接継手は優れた強度(引張強さ及び降伏強さ)と靱性とを有している。一方、ワイヤ番号B01〜B09、B19、B23〜B25、B35〜B36は、本発明で規定される成分範囲を外れるものであるため、いずれも溶接欠陥が生じ、溶接継手の評価をすることができなかった。ワイヤ番号B10〜B18、B20〜B22、B26〜B34は、本発明で規定される成分範囲を外れるものであるため、いずれも溶接金属の強度又は靱性が劣位であった。
本発明に係る立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤは、大入熱溶接を行った際の溶接金属部において優れた機械的特性を有する。そのため、本発明に係る立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、安全性が向上するとともに、高効率な溶接が可能であり、溶接構造物の建設費用を飛躍的に低減することが可能となる。

Claims (5)

  1. 鋼製外皮とフラックスとを備える、立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、
    前記フラックスが、スラグ剤として、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で、
    NaO:0.00〜1.00%未満、
    NaF:0.00〜1.00%未満、
    CaO:0.00〜1.00%未満、
    CaF:0.00〜1.00%未満、
    MgO:0.00〜1.00%未満、
    MgF:0.00〜1.00%未満、
    MnO:0.00〜1.00%未満、及び
    MnF:0.00〜1.00%未満
    を含有し、
    式(1)で表わされる脱酸能指標Xが100〜200であり、
    前記スラグ剤の合計量Yが、0.10〜1.00%未満であり、
    前記脱酸能指標Xと前記合計量Yとの積が10〜200であり、
    前記フラックス入りワイヤが、0%以上30%未満の鉄粉を含み、
    さらに前記フラックス入りワイヤが、合金成分として、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
    C:0.02〜0.10%、
    Si:0.20〜0.90%、
    Mn:1.0〜4.0%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Ni:0.10〜3.00%、
    Mo:0.05〜1.00%、
    V:0.200%以下、
    Ti:0.050〜0.250%、
    B: 0.0010〜0.0200%、
    Al:0.05〜0.50%、
    Mg:0.01〜0.50%、及び
    REM:0〜0.0010%未満
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    式(2)で表されるCeqが0.45〜0.75%である
    ことを特徴とする立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
    X=100×{2.0×([NaO]+[NaF])+1.5×([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF])+1.0×([MnO]+[MnF])}/([CaO]+[CaF]+[MgO]+[MgF]+[NaO]+[NaF]+[MnO]+[MnF])……式(1)
    Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(2)
    但し、前記式(1)における[]付化学式は、各化学式に係る前記スラグ剤の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を示し、前記式(2)における[]付元素は、各元素記号に係る前記合金成分中の元素の前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%での含有量を示す。
  2. 前記フラックス入りワイヤが、さらに前記合金成分として、前記フラックス入りワイヤの前記全質量に対する質量%で、
    Cu:0.10〜0.50%、
    Cr:0.05〜0.50%、及び
    Nb:0.01〜0.05%
    のうちの1種または2種以上を含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 請求項1又は2に記載の立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて鋼板を溶接することを特徴とする溶接継手の製造方法。
  4. 式(3)で表される、溶接継手の溶接金属のCeqが0.35〜0.50%であることを特徴とする請求項3に記載の溶接継手の製造方法。
    Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(3)
    但し、前記式(3)における[]付元素は、各元素記号に係る前記溶接金属中の元素の単位質量%での含有量を示す。
  5. 前記溶接が多電極立向エレクトロガスアーク溶接であり、
    前記多電極立向エレクトロガスアーク溶接において、全ての電極の前記立向エレクトロガスアーク溶接用フラックス入りワイヤが同一であり、
    式(4)で表される、前記鋼板のCeqが0.30〜0.40%であり、
    前記鋼板の板厚が60〜80mmである
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の溶接継手の製造方法。
    Ceq=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14……式(4)
    但し、前記式(4)における[]付元素は、各元素記号に係る前記鋼板中の元素の単位質量%での含有量を示す。
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