以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本発明による光部品および発光装置の構成、ならびに、これらの製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。
図面が示す構成要素の寸法、形状等は、わかり易さのために誇張されている場合があり、実際の光部品、発光装置、および、製造装置における、寸法、形状および構成要素間の大小関係または位置関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
以下の説明では、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、および、それらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置をわかり易さのために用いているに過ぎない。
本明細書において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本明細書において「垂直」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面等が90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
(発光装置)
図1は、本発明の実施形態による発光装置の例示的な外観を示す。図1に示す発光装置300は、蓋部材100と、発光素子を内部に有するパッケージ200とを含む。図1に例示する構成において、蓋部材100は、概ね円筒形状を有し、上面に窓部100wを有している。パッケージ200に収容された発光素子から発せられた光は、窓部100wを介して発光装置300の外部に取り出される。
図2は、パッケージ200から蓋部材100を分離した状態を1つの図として示す図である。パッケージ200は、ステム240と、ステム240に支持された第1筒状部210と、第1筒状部210の内部に配置された発光素子220と、発光素子220への給電のためのリード端子250とを含む。第1筒状部210は、上面に開口212を有する。この例では、パッケージ200は、第1筒状部210に支持されることにより開口212の位置に配置されたレンズ260をさらに有する。発光素子220から出射された光は、レンズ260を通過して蓋部材100の窓部100wに入射する。したがって、発光素子220から出射された光は、窓部100wを介して発光装置300の外部に取り出される。
第1筒状部210は、例えば、蓋部材100と同様に概ね円筒形状を有し、蓋部材100の内部に挿入可能に構成されている。蓋部材100の内部にパッケージ200の第1筒状部210が挿入されることにより、蓋部材100およびパッケージ200が一体とされ、発光装置300が構成される。蓋部材100および第1筒状部210の外形は、例えば第1筒状部210を覆うようにして蓋部材100が第1筒状部210に装着にできる限りにおいて任意であり、円筒形状に限定されない。これらの外形が共通であることも必須ではない。
図3は、発光装置300の模式的な部分断面図である。図3に例示されるように、パッケージ200は、典型的には、ステム240上のヒートシンク230、および、リード端子250と上述の発光素子220とを互いに電気的に接続するワイヤ270をさらに含む。
発光素子220は、ヒートシンク230に固定されることによって第1筒状部210の内部の所定の位置に配置される。図3に例示される構成において、発光素子220は、半導体レーザ素子221と、半導体レーザ素子221を支持する台座部222(サブマウントとも呼ばれる。)を含む。この例では、半導体レーザ素子221が台座部222を介してヒートシンク230に固定されることにより、発光素子220とレンズ260とが光学的に結合される。なお、パッケージ200は、半導体レーザ素子221の出力をモニタリングするためのフォトダイオード等をさらに有し得る。
ここで、蓋部材100に注目する。図示する例において、蓋部材100は、第1筒状部210を覆う第2筒状部160と、光部品190と、光部品190を第2筒状部160に固定する押さえ部材150とを有する。光部品190は、波長変換部材110と、光拡散部材120と、貫通部140wが設けられた支持部材140とを含む。
この例では、第2筒状部160は、概ね円筒状の第1部分160sと、第1部分160sの上面上の第2部分160tとから構成され、第1部分160sおよび第2部分160tを貫通する開口160wを有している。開口160wは、蓋部材100がパッケージ200に取り付けられた状態において第1筒状部210の開口212の上方に位置し、支持部材140の貫通部140wも同様に開口212の上方に位置する。
図1〜図3に示す発光装置300は、あくまでも一例である。例えば、図3に示す構成において、第1筒状部210と、蓋部材100とは、別個の独立した部材である。しかしながら、これらが別個の独立した部材であることは必須ではなく、例えば第1筒状部210および蓋部材100が一体に形成されていてもかまわない。換言すれば、単一の部材によって、発光素子220を覆い、かつ、光部品190を支持する構造体が実現されていてもよい。また、発光装置がロッド状のリード端子を有することも必須ではない。例えば、発光素子として半導体レーザ素子が組み込まれた表面実装型パッケージに本実施形態による光部品を組み合わせることももちろん可能である。
図4は、光部品190のうち、支持部材140の貫通部140wとその周辺を取り出して拡大して示す。図4に示す光部品190Aは、上述の光部品190の一例であり、支持部材140Aは、上述の支持部材140の一例である。支持部材140Aは、下面140aと、下面140aとは反対側に位置する上面140bとを有する。下面140aは、蓋部材100がパッケージ200に取り付けられた状態において第2筒状部160の第2部分160tの上面に対向する側の面である。上面140bは、典型的には、下面140aに平行である。
図示するように、下面140aおよび上面140bには、それぞれ、第1開口140dおよび第2開口140eが設けられている。上面140bから下面140aまで貫通する貫通部140wは、第1開口140dおよび第2開口140eに加えて、これら2つの開口の間に位置する内側面140fをさらに含む。
図4に示す例では、内側面140fは、断面視において下面140aの法線に対して傾斜している。したがって、ここでは、貫通部140wは、第1開口140dから第2開口140eに向かって拡がる形状を有している。この例では、下面140a(あるいは上面140b)の法線方向から見たとき、第2開口140eは、第1開口140dよりも大きい。なお、下面140aの法線は、典型的には、半導体レーザ素子221およびレンズ260を含む光学系の光軸に平行である。
断面視における内側面140fの形状は、図4に示すような直線状に限定されず、例えば曲線状であってもよい。第2開口140eが第1開口140dよりも大きい場合において、内側面140fが段差部を有していてもよい。すなわち、貫通部140wが、第1開口140dから第2開口140eに向かって段階的に拡がるような形状を有していてもよい。
上述したように、蓋部材100は、波長変換部材110および光拡散部材120を有する。これらのうち、波長変換部材110は、その全体が貫通部140w内に位置する。光拡散部材120は、波長変換部材110の上方に位置し、光拡散材の粒子130を含有する。光拡散部材120の少なくとも一部は、貫通部140w内に位置する。光拡散部材120のうち貫通部140w内に位置する部分は、波長変換部材110と比較して第1開口140dからより遠くに位置する。
図4に示す例では、光拡散部材120は、波長変換部材110と同様にその全体が貫通部140w内に位置し、その上面120bは、支持部材140Aの上面140bに整合している。光拡散部材120の全体が貫通部140w内に位置することは必須ではないが、光拡散部材120の光拡散部材120の全体が貫通部140w内に位置していると、光拡散部材120のうち貫通部140wの外に位置する部分から支持部材140Aの外部に光が取り出されることを回避できる。したがって、輝度向上の観点からは、光拡散部材120の全体が貫通部140w内に位置していると有利である。なお、この例では、光拡散部材120の上面120bは、平面である。後述するように、例えば、光拡散部材120の一部が支持部材140(ここでは支持部材140A)の上面140bから盛り上がっており、光拡散部材120の上面120bが曲面等の形状を有することもあり得る。この場合、光拡散部材120のうち上面140bよりも上方にある部分を除去すれば、光拡散部材120の上面120bを平坦化することができる。
図4に模式的に示すように、光拡散部材120中の粒子130は、波長変換部材110の側に偏って配置されている。言い換えると、光拡散部材120は、第1領域R1と、第1領域R1よりも波長変換部材110の近くに位置し、第1領域R1における粒子130の数密度よりも大きな数密度を有する第2領域R2とを有する。なお、これら第1領域R1および第2領域R2は、光拡散部材120における仮想的な領域であり、第1領域R1と第2領域R2との間に明確な境界が存在するわけではない。例えば、光拡散部材120のうち粒子130をほとんど含有しない、波長変換部材110から離れた位置にある部分を第1領域R1と呼ぶことができる。第1領域R1は、粒子130が存在しない領域であってもよいが、粒子130の数密度が第2領域R2よりも小さければ、粒子130を含んでいてもかまわない。
粒子130の数密度は、光拡散部材120を厚さ方向に沿って、換言すれば、支持部材140の下面140a(あるいは上面140b)に垂直に切断し、その切断面の任意の領域内に現れた粒子130の個数を数えることによって特定可能である。切断面の観察には、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いることができる。例えば、切断面のうち、光拡散部材120の下面付近における任意の領域と、その領域と同じ面積を有する、光拡散部材120の上面120b付近における任意の領域とのそれぞれについて、粒子130の数を数える。その結果、後者と比較して前者における粒子130の数の方が大きければ、光拡散部材120が、第1領域R1と、第1領域R1よりも粒子130の数密度が大きな第2領域R2とを有するといってよい。典型的には、上面視における光拡散部材120の中心を通り、かつ、レーザ光の進行方向に平行な面で切断したときの断面に現れた粒子130の数密度を比較すればよい。
図3を参照すればわかるように、半導体レーザ素子221から出射され、レンズ260を通過した光は、第2筒状部160の開口160wを介して貫通部140wに向かって進行する。すなわち、発光装置300の外部に取り出される光は、第1の透光部材としての波長変換部材110および第2の透光部材としての光拡散部材120を通過した光である。波長変換部材110を通過した光を光拡散部材120に入射させることにより、波長変換部材110を通過した光を光拡散部材120によって拡散透過させることができる。なお、本明細書における「透光」および「透光性」の用語は、「透明」であることに限定されず、入射した光に対して例えば拡散性を示すことをも包含するように広く解釈される。
以下、図3および図4を参照しながら、発光装置300の各部の詳細を説明する。
[半導体レーザ素子221]
半導体レーザ素子221としては、レーザダイオード等の、レーザ光を発振可能な公知の発光素子を適用できる。半導体レーザ素子221は、典型的には、端面発光型のレーザダイオード(EEL)である。半導体レーザ素子221は、フォトニック結晶レーザー(PCSEL)であってもよい。半導体レーザ素子221の発光ピーク波長は、例えば300nm以上600nm以下の範囲内に位置する。波長変換部材110が、後述するYAG蛍光体を含有する場合、発光ピーク波長が400nm以上470nm以下の範囲内に位置すると有益であり、420nm以上470nm以下の範囲内に位置するとより有益である。
後に詳しく説明するように、本実施形態では、波長変換部材110および支持部材140が高耐熱性の材料から形成されるので、半導体レーザ素子221として、より高出力の素子を適用することが容易になる。例えば、出力が1W以上100W以下程度の素子を半導体レーザ素子221として用い得る。なお、パッケージ200は、2以上の半導体レーザ素子を有していてもよい。パッケージ200が複数の半導体レーザ素子を有することにより、より高い輝度を得やすい。パッケージ200が2以上の半導体レーザ素子を有する場合、これらの素子の間で発光ピーク波長が共通であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
上述したように、半導体レーザ素子221は、台座部222を介してヒートシンク230に固定される。台座部222は、窒化アルミニウム、炭化珪素等の高い熱伝導率を有する材料から形成され得る。半導体レーザ素子221において発生した熱は、台座部222を介してヒートシンク230に逃がすことができる。
図3を参照して説明したように、発光素子220には、一端がリード端子250に接続されたワイヤ270(例えば金ワイヤ)が接続される。リード端子250およびワイヤ270は、発光素子220の半導体レーザ素子221に所定の電流を供給する機能を有する。リード端子250は、ステム240に設けられた貫通孔を介してパッケージ200の外側まで延びている。リード端子250は、ガラス等の封止部材により、絶縁性を確保しながらステム240に対して固定される。
[支持部材140]
支持部材140は、例えば0.20mm以上10mm以下程度の範囲の厚さを有し、波長変換部材110を支持する機能を有する。図3に例示する構成において、支持部材140は、概ね円盤形状を有する。支持部材140は、例えば4.0mm程度の直径を有し、その最も厚い部分の厚さは、例えば0.67mm程度であり得る。
支持部材140は、光反射性の部材であり、耐熱性に優れた材料から形成される。支持部材140は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むセラミックス、または、そのようなセラミックスを含む複合部材とすることができる。支持部材140は、金属部材であってもよい。ただし、支持部材140のうち、少なくとも光が到達し得る部分がセラミックスから構成されていると、高出力のレーザ光が照射されることに起因する劣化を抑制し得るので有益である。特に、酸化アルミニウムを主原料とする材料から支持部材140が形成されていると、可視光に対して高い反射率を得られるので有益である。
支持部材140は、半導体レーザ素子221の発光ピーク波長を有する光に対して、例えば50%以上の反射率を有する。半導体レーザ素子221の発光ピーク波長を有する光に対する反射率は、60%以上であってもよく、発光ピーク波長を有する光に対する反射率が70%以上であるとより有益であり、80%以上であるとさらに有益である。支持部材140がセラミックスから構成されていると、支持部材140が金属から構成されている場合とは異なり、レーザ光の入射による変色に起因した反射率の低下を回避し得るので有利である。
また、支持部材140がセラミックスから構成されていると、高い耐熱性が得られるので、レーザ光の照射に起因した波長変換部材110の発熱による損傷を受けにくく有利である。高い耐熱性を得る観点からは、支持部材140を形成するための材料の主原料の融点が数百℃以上であると有利であり、融点が1000℃以上であるとより有利であり、1500℃以上であるとさらに有利である。
支持部材140が熱伝導性の良好な材料から構成されていると、レーザ光の入射によって波長変換部材110に生じる熱を支持部材140を介して逃がしやすく、波長変換部材110に含有される蛍光体における、励起光の波長を変換する変換効率の低下を抑制し得るので有利である。支持部材140の20℃における熱伝導率は、例えば数W/m・k以上である。支持部材140の20℃における熱伝導率が10W/m・k以上であると有益であり、25W/m・k以上であるとより有益であり、50W/m・k以上であるとさらに有益である。例えば、約24重量%のジルコニウムを含有する、酸化アルミニウムのセラミックスから構成された部材は、高い光反射性、耐熱性および熱伝導性を示し得る。
支持部材140は、下面140aに位置する第1開口140dと、上面140bに位置する第2開口140eと、内側面140fによって規定される貫通部140wを有する。この例では、貫通部140wは、支持部材140の中央に位置している。典型的には、貫通部140wに入射するレーザ光のビームの形状にあわせて、第1開口140dの外縁および第2開口140eの外縁は、円形状または楕円形状を有する。第1開口140dおよび第2開口140eの外縁の形状は、三角形状、四角形状等の多角形状であってもよい。
上述したように、図4に示す例では、下面140a(あるいは上面140b)の法線方向から見たとき、第2開口140eは、第1開口140dよりも大きい。貫通部140wの内部の空間は、例えば円錐台形状を有し、第1開口140dおよび第2開口140eは、例えば、それぞれ、直径が0.20mm程度および0.65mm程度の円形状を有し得る。図4に例示するように、貫通部140wの形状を、半導体レーザ素子221から出射された光の進行方向に沿って拡がる形状とすることにより、貫通部140w内の光のうち第1開口140dに向かって進行する反射光または散乱光を第2開口140eに向けて内側面140fで反射させ得る。すなわち、半導体レーザ素子221から出射された光をより効率的に発光装置300の外部に取り出すことが可能になる。なお、貫通部140wの内部の空間の形状は、円錐台形状に限定されず、柱状、角錐台形状、または、これらが組み合わされた形状等を有していてもよい。
[波長変換部材110]
波長変換部材110は、貫通部140wの第1開口140d側に位置する下面110aと、第2開口140e側に位置する上面110bと、これらの面の間に位置する側面110cとを有する。この例では、側面110cは、支持部材140Aの下面140aの法線に対して傾斜しており、波長変換部材110は、上面110bから下面110aに向かって窄まる円錐台形状を有する。断面視における側面110cの形状は、直線状に限定されず、曲線状、段差状であってもよい。
波長変換部材110の下面110aおよび上面110bは、例えば、0.10mm以上3.0mm以下の範囲の直径を有し得る。下面110aの直径および上面110bの直径は、それぞれ、例えば0.3mmおよび0.5mm程度であり得る。上面110bおよび下面110aは、典型的には、光軸に対して垂直な平坦面であるが、これらの一方または両方が、段差もしくは傾斜を有する面、または、曲面であってもよい。
上述したように、波長変換部材110には、レンズ260を通過したレーザ光が入射する。そのため、波長変換部材110の材料として、耐光性および耐熱性に優れた材料を選択することが有益である。波長変換部材110の材料のうち、主となる材料としては、例えば、1000℃以上3000℃以下程度の範囲内に融点を有する材料が用いられる。レーザ光の入射に起因した劣化を低減する観点からは、波長変換部材110の主要な材料の融点が1300℃以上であるとより有利であり、融点が1500℃以上であるとさらに有利である。
波長変換部材110の材料の典型例は、セラミックスである。例えば、約1900℃〜2100℃の範囲に融点を有する酸化アルミニウム(Al2O3)、約1500℃〜1700℃の範囲に融点を有する二酸化珪素(SiO2)、約2600℃〜2800℃の範囲に融点を有する酸化ジルコニウム(ZrO2)、約1800℃〜2000℃の範囲に融点を有する酸化バリウム(BaO)、約1700℃〜1900℃の範囲に融点を有する酸化チタン(TiO2)、約2425℃の融点を有する酸化イットリウム(Y2O3)、約1900℃の融点を有する窒化珪素(Si3N4)、約2200℃の融点を有する窒化アルミニウム(AlN)、約2730℃の融点を有する炭化珪素(SiC)等のセラミックスを波長変換部材110の主な材料として用い得る。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせられて用いられてもよい。高融点、熱伝導性、光透過性等の観点から、波長変換部材110の主な材料が、酸化アルミニウムまたは二酸化珪素を含むセラミックス、特に、酸化アルミニウムを含むセラミックスであると有利である。
波長変換部材110の主な材料である母材が、酸化アルミニウムあるいは二酸化珪素を含むセラミックスであると高い光透過率を得やすい。波長変換部材110の母材は、半導体レーザ素子221から出射される光および波長変換部材110によって波長変換された光に対して、例えば、40%以上の透過率を有する。光の利用効率の観点から、半導体レーザ素子221から出射される光および波長変換された光に対する波長変換部材110の透過率が、50%以上であると有益であり、60%であるとより有益である。半導体レーザ素子221から出射される光および波長変換された光に対する波長変換部材110の透過率は、80%以上であってもよい。
また、波長変換部材110の母材が、半導体レーザ素子221から出射される光および波長変換部材110によって波長変換された光に対して、低い吸収率を有していると有益である。波長変換部材110から取り出される光の出力は、半導体レーザ素子221から出射される光の出力の例えば40%以上とすることができ、60%以上としてもよい。
波長変換部材110は、蛍光体をさらに含有し、半導体レーザ素子221から出射される光の少なくとも一部を波長変換して、半導体レーザ素子221からの出射光の波長とは異なる波長の光を発する。波長変換部材110は、例えば、半導体レーザ素子221からの青色光の一部を波長変換して黄色光を発する。このような構成によれば、波長変換部材110を通過した青色光と、波長変換部材110から発せられた黄色光との混色によって、白色光が得られる。
蛍光体としては、例えば、半導体レーザ素子221の出射光の波長、得ようとする光の色などを考慮して、公知の蛍光体を適宜用いることができる。例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウムおよび/またはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al2O3−SiO2)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)、サイアロン系蛍光体(αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等)、KSF系蛍光体(K2SiF6:Mn)等を用いることができる。波長変換部材110中の蛍光体は、量子ドット蛍光体であってもよい。蛍光体の材料としては、一般に有機材料よりも高い耐熱性を示す無機材料を用い得る。
蛍光体は、複数の種類が組み合わせられて用いられてもよい。上述の蛍光体を、所望の色調に適した組み合わせおよび配合比で用い得る。これにより、演色性および/または色再現性を調整し得る。
レーザ光による、波長変換部材110における、励起光の波長を変換する変換効率の低下を抑制する観点から、波長変換部材110中に含まれた蛍光体が比較的高い耐熱性を有すると有益である。波長変換部材110中の蛍光体は、0.5μm以上の平均粒径(メジアン径)を有し得る。本明細書において、平均粒径は、空気透過法によって得られるF.S.S.S.No(Fisher Sub Sieve Sizer’s No)を指す。蛍光体の粒子の平均粒径が5μm以上であるとより有益である。蛍光体の粒子の平均粒径は、例えば、50μm以下、30μm以下または25μm以下であり得る。
波長変換部材110に対する、蛍光体の体積比は、例えば0.05体積%以上50体積%以下の範囲であり、より好ましくは、1体積%以上30体積%以下の範囲である。図4に示すように波長変換部材110の下面110aをレーザ光が照射される被照射面とし、上面110bを光取り出し面とする場合には、蛍光体の量を増大させるほど光の利用効率が低下し得るので、蛍光体の体積比は、30体積%以下であることが好ましい。波長変換部材110は、例えば、波長変換部材110の全体積に対して25体積%のYAG蛍光体が含有された酸化アルミニウムのセラミックス等から構成され得る。
波長変換部材110は、単層構造であってもよいし、複数の部材を含む積層構造を有していてもよい。波長変換部材110は、2種以上の蛍光体を含有していてもよい。波長変換部材110が積層構造を有する場合、積層構造の各層にそれぞれ異なる蛍光体が含有されてもよい。波長変換部材110は、必要に応じて、光拡散材をさらに含んでいてもよい。光拡散材としては、波長変換部材110を構成する他の材料とは異なる屈折率を有する材料を用いることができる。波長変換部材110の上面110b側には光拡散部材120が配置されるので、波長変換部材110は、拡散材を含有していなくてもよい。波長変換部材110が拡散材を含有する場合、波長変換部材110中の拡散材の数密度は、光拡散部材120の第2領域R2における粒子130よりも小さくてよい。
図4に例示する構成において、波長変換部材110は、側面110cの概ね全体が貫通部140wの内側面140fに接しており、上面110b側に光拡散部材120がさらに配置されることにより、貫通部140w内に固定されている。なお、波長変換部材110の厚さ(下面110aおよび上面110bの間の距離)は、例えば0.30mm程度であり得る。波長変換部材110の厚さは、貫通部140wの長さ(第1開口140dから第2開口140eまでの距離)に応じて、例えば0.20mm以上10mm以下程度の範囲内で適宜に設定し得る。なお、波長変換部材110の側面110cと、貫通部140wの内側面140fとが互いに接する面積を拡大することにより、波長変換部材110で発生した熱を支持部材140に逃がしやすくなる。
この例のように、波長変換部材110が、貫通部140wの内部の空間の形状に整合するような形状を有すると、波長変換部材110の側面110cのより多くの部分を貫通部140wの内側面140fに接触させることができる。また、波長変換部材110を貫通部140w内の所定の位置に配置させやすくなる。ただし、支持部材140に対する波長変換部材110の固定の態様は、この例に限定されない。
図5および図6は、支持部材140に対する波長変換部材110の固定方法の他の例を示す。図5に示す例では、第1開口140dを覆う透光性板142が支持部材140の下面140aに固定されている。この例において、波長変換部材110は、その下面110aが透光性板142によって支持され、また、上面110b側に光拡散部材120が配置されることにより、貫通部140w内の所定の位置に固定される。透光性板142として、サファイア、マグネシア(酸化マグネシウム)等の放熱性の高い材料の板を用いると有益である。
波長変換部材110の側面110cの全体が貫通部140wの内側面140fに直接に接していることも必須ではない。図6に例示する光部品190Bの支持部材140Bは、内側面140fの少なくとも一部を覆う、第3の透光部材としての接合部材170を有する。この例では、波長変換部材110は、接合部材170を介して支持部材140Bに固定される。ここで、光部品190Bは、上述の光部品190の他の一例であり、支持部材140Bは、上述の支持部材140の他の一例である。支持部材140Bが接合部材170を有する場合において、波長変換部材110の側面110cの一部が貫通部140wの内側面140fに接していてもかまわない。
[接合部材170]
接合部材170は、波長変換部材110を支持部材140Bに対して固定する機能を有する。図6に示す例では、接合部材170は、貫通部140wの内側面140fを覆っている。ここでは、光拡散部材120の上面120bは、支持部材140Bの上面140bに整合している。なお、接合部材170は、支持部材140の上面140bおよび/または下面140aを覆うことも可能である。ただし、接合部材170が透光性の部材である場合、接合部材170が光の経路となり得る。そのため、図6に示すように、接合部材170を貫通部140wの内側面140f上に選択的に設けることにより、光のにじみを低減することができる。接合部材170の厚さは、例えば、貫通部140wの内側面140f上において0.01μm以上5μm以下、好ましくは、0.05μm以上3μm以下程度の範囲である。
図6からわかるように、接合部材170の少なくとも一部は、貫通部140wの内側面140f上に位置する。そのため、典型的には、接合部材170の材料として、透光性を有する無機材料が用いられる。半導体レーザ素子221から出射される光に対する、接合部材170の透過率が40%以上であると有益であり、50%以上であるとより有益である。
接合部材170の材料としては、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等の、比較的低い融点を有するガラスを挙げることができる。後述するように、貫通部140wの内側面140fが接合部材170を有する場合、加熱により接合部材170を変形させてその後に接合部材170を冷却することによって、接合部材170を介して波長変換部材110を支持部材140に固定することができる。したがって、接合部材170の材料が、波長変換部材110の主な材料の融点よりも低い軟化点を有すると有益である。ここで、軟化点は、リトルトン点またはリトルトン温度ともよばれ、JIS R 3103−1:2001に準拠した測定方法によって測定することができる。接合部材170の材料としては、例えば1150℃程度以下の軟化点を有する材料が選択される。接合部材170の材料の軟化点が950℃程度以下であるとより有益であり、850℃程度以下であるとさらに有益である。
[光拡散部材120]
光拡散部材120は、波長変換部材110の上面110bを覆う透光性の部材である。後に詳しく説明するように、光拡散部材120は、支持部材140の材料よりも低い融点を有する透光部材から形成される。光拡散部材120の材料としては、例えば接合部材170の材料として例示した材料を用いることができる。光拡散部材120を構成する母材の材料は、接合部材170の材料と比較して同等かあるいは高い融点を有していてもよいし、接合部材170の材料よりも低い融点を有していてもよい。発光装置300の信頼性の観点からは、光拡散部材120の母材として、接合部材170の材料よりも融点が高い材料を用いると有益である。ただし、光拡散部材120の母材の融点が高すぎると光拡散材の粒子130の融点との差が縮小するので、例えば、光拡散部材120の母材として、接合部材170よりも高い融点を有するが、接合部材170との間の融点の差が50℃以内である材料を用い得る。ここでは、光拡散部材120を構成する母材の材料として、波長変換部材110の材料よりも低い融点を有する材料を用いる。光拡散部材120を構成する母材の材料の典型例は、ホウケイ酸ガラスに代表されるガラスである。
後に詳しく説明するように、光拡散部材120は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光部材の少なくとも一部と、光拡散材の粒子130とを波長変換部材110を配置後の貫通部140w内に配置し、加熱によって透光部材を変形させた後に冷却を実行することによって形成することができる。透光部材を加熱によって変形させることにより、波長変換部材110の上面110bと、光拡散部材120との間にエアギャップの形成を抑制し得る。
[光拡散材の粒子130]
光拡散部材120は、光拡散材の粒子130を含有する。光拡散部材120が光拡散材の粒子130を含有することにより、波長変換部材110を通過した光(例えば青色光)と、波長変換部材110によって波長変換された光(例えば黄色光)とをより均一に混合し得る。図6等に模式的に示すように、粒子130は、波長変換部材110のより近くに位置する第2領域R2において、第1領域R1よりも密に配置され得る。光拡散材の粒子130の典型例は、透光性を有するセラミックスの粒子である。光拡散材の粒子130としては、接合部材170として用いた材料の軟化点よりも高い融点を有する材料の粒子を用い得る。例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ジルコニウム等の粒子を単独で、あるいは、これらを組み合わせて光拡散材の粒子130に適用し得る。粒子130は、0.02μm以上の平均粒径(メジアン径)を有し得る。粒子130の平均粒径が0.1μm以上であるとより有益である。粒子130の平均粒径は、例えば、10μm以下とすることができ、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
光拡散部材120中の光拡散材の粒子130の含有量は、光拡散部材120の総体積に対して、例えば1.0体積%以上30体積%以下である。光拡散部材120の総体積に対する光拡散材の粒子130の含有量が2.0体積%以上20体積%以下の範囲内であるとより有益である。光拡散部材120は、光拡散材の粒子130に加えて、蛍光体の粒子をさらに含有していてもよい。光拡散部材120の総体積に対する蛍光体の粒子の含有量は、例えば0.5体積%以上20体積%以下であり、より好ましくは、1.0体積%以上10体積%以下である。
光拡散部材120は、例えば、粒子130として酸化アルミニウムの粒子を4.0体積%の体積比で含有する、主にホウケイ酸ガラスから形成された部材であり得る。光拡散部材120の厚さ、換言すれば、波長変換部材110の上面110bから、光拡散部材120の上面120bのうち上面110bから最も離れた部分までの、支持部材140の下面140aの法線に沿った距離は、例えば、0.2mmである。光拡散部材120は、波長変換部材110を支持部材140により確実に固定する機能も有するので、光拡散部材120が一定以上の厚さを有すると有益である。光拡散部材120は、30μm以上300μm以下程度の範囲内の厚さを有し得る。
[第2筒状部160]
再び図3を参照する。第2筒状部160は、パッケージ200の第1筒状部210を覆う構造体であり、典型的には、パッケージ200に対して溶接が可能な材料から形成される。第2筒状部160は、例えば、ニッケル、銅、コバルト、アルミニウムおよび鉄からなる群から選択される1種以上を含む材料から形成される。第2筒状部160が、鉄、または、ステンレス鋼もしくは鉄−ニッケル合金(例えばコバール)等の、鉄を主成分とする材料から形成されていると、パッケージ200のステム240に例えば溶接によって第2筒状部160を接合できるので有益である。第2筒状部160の第1部分160sを構成する材料と、第2部分160tを構成する材料とは、共通であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
[押さえ部材150]
押さえ部材150は、例えばその一部が溶接等によって第2筒状部160に接合されることにより、支持部材140を第2筒状部160の所定の位置に固定する。ここでは、支持部材140が円盤形状を有することに対応して、押さえ部材150は、上面視において概ね環状の形状を有し、支持部材140の上面140bのうち、貫通部140wの周囲に位置する、相対的に薄い部分を第2筒状部160の第1部分160sに向けて押圧している。押さえ部材150の材料としては、第2筒状部160の材料と同様の材料、例えば、鉄またはその合金を用いることができる。
[ステム240]
ステム240は、第1筒状部210、ヒートシンク230およびリード端子250を支持する。ステム240の材料としては、AlN、SiC、Al2O3等のセラミックスまたは金属材料を用いることができる。ステム240のうち、蓋部材100の第2筒状部160に接する部分が金属材料から構成されていると、溶接によって蓋部材100をステム240に固定し得るので有益である。
図4等を参照して説明したように、波長変換部材110は、支持部材140の貫通部140w内に配置され、光拡散材の粒子130を含有する光拡散部材120によってその上面110bが覆われる。本実施形態では、光拡散部材120のうち、波長変換部材110のより近くに位置する第2領域R2における粒子130の数密度が相対的に高くされている。そのため、波長変換部材110により近い位置で光を散乱させ得る。波長変換部材110により近い位置で光を散乱させることにより、波長変換部材110を通過した光(例えば青色光)と、波長変換部材110によって波長変換された光(例えば黄色光)とをより効果的に混合して、貫通部140wから出射される光における色ムラを低減し得る。
なお、第2開口140eにより近い位置、換言すれば、波長変換部材110からより離れた位置で粒子130によって光が散乱させられると、散乱による混色が不十分となる可能性があり、また、散乱によって光が広がり、光拡散部材120の上面120bにおける輝度が低下する可能性がある。特に、セラミックスの形で支持部材140を形成した場合、光拡散部材120によって散乱された光が、支持部材140の内部にも進入し得る。そのため、第2開口140eに近い位置での光の散乱によって、輝度がより低下し得る。
これに対し、本実施形態では、波長変換部材110により近い位置で光を散乱させている。波長変換部材110により近い位置で光を散乱させることにより、貫通部140wの第2開口140eにより近い位置での光の散乱が抑制されるので、第2開口140eの外縁における光のにじみを抑制し得る。また、第1領域R1と比較して粒子130の数密度が相対的に高い第2領域R2を設けることにより、光拡散部材120の全体に粒子130を分散させた場合と比較して、拡散透過に寄与する部分を薄くし得るので、光の利用効率を向上させる効果も得られる。拡散透過に寄与する部分を薄くしながらも光拡散部材120の厚さを大きくすることが可能であるので、光拡散部材120によって波長変換部材110をより確実に支持部材140に固定することが可能になり、貫通部140wからの波長変換部材110の脱落を防止する効果も期待できる。
このように、波長変換部材110により近い位置での光の散乱は、色ムラの低減と、輝度の低下の抑制との両方に寄与する。特に、光拡散部材120が、光軸に沿った方向に関し、波長変換部材110の上面110bを基準としたときに実質的に粒子130のほとんどが光拡散部材120の高さの半分までの領域中に含まれるような粒子130の分布を有していると、これらの効果をより効率良く得ることができ、有利である。
上述した各例の貫通部140wのように、第1開口140dと比較して第2開口140eを拡大することにより、貫通部140wの形状を例えばレーザ光の進行方向に沿って徐々に広がる形状としてもよい。このような貫通部140wの形状によれば、光拡散部材120によって散乱されて貫通部140wの内側面140fに入射した光を内側面140fで第2開口140eに向けて反射させ得る。したがって、光の利用効率向上の効果が期待できる。特に、上述した各例のように、光の出射側である第2開口140eからより離れた位置で光を散乱させれば、散乱によって支持部材140の内部に進入し、支持部材140の内部で反射を繰り返して再び貫通部140w内に向けて出射した光のうち、第2開口140eに向かって進行する光の割合を増大させ得る。すなわち、第2開口140eからより離れた位置で光を散乱させるような構成によれば、光の利用効率のさらなる向上を期待できる。
なお、光部品190は、ショートパスフィルター、ロングパスフィルター等の光学フィルタ、反射防止層、放熱部材等をさらに有していてもよい。例えば、公知の方法および材料により、波長変換部材110、光拡散部材120等の下面および/または上面に光学フィルタ等を形成してもよい。
[光部品および発光装置の製造方法の実施形態]
図7は、本実施形態による光部品の製造方法の概要を示すフローチャートである。図7に例示された光部品の製造方法は、概略的には、貫通部が設けられた支持部材を準備する工程(ステップS1)と、波長変換部材、光拡散材の粒子、および、透光部材の少なくとも一部を支持部材の貫通部内に配置する工程(ステップS2)と、加熱により、透光部材および光拡散材の粒子から、光拡散材の粒子を含有する光拡散部材を形成する工程(ステップS3)とを含む。後述するように、波長変換部材、光拡散材の粒子、および、透光部材の少なくとも一部の貫通部内への配置の工程においては、波長変換部材、光拡散材の粒子、および、透光部材が支持部材の上方、すなわち、上面に位置する第2開口側に向かってこの順に配置されるようにして、これらの部材を貫通部内に配置する。以下、各工程の詳細を説明する。
まず、貫通部が設けられた支持部材を準備する(図7のステップS1)。ここでは、図8に例示するように、下面140aと、下面140aとは反対側に位置する上面140bとを有し、上面視において上面140bのほぼ中央に位置する貫通部140wが設けられた支持部材140Aを準備する。貫通部140wは、下面140aおよび上面140bにそれぞれ位置する第1開口140dおよび第2開口140eを含む。
支持部材140Aは、例えば以下のようにして作製することができる。支持部材140Aの材料としては、上述の材料を用いることができる。例えば、まず、酸化アルミニウム等の粉末を準備し、準備した粉末を例えばグラファイト製の型に充填して成型した後、成型後の圧粉体を型から出し、または、粉末を型に入れたまま、所定の形状に焼結する。あるいは、酸化アルミニウム等の粉末、バインダおよび溶剤等を含有するスラリーを準備し、ドクターブレード法等の公知の方法により、スラリーから所望の厚さのセラミックグリーンシートを得、これを焼結することにより図8に示すような支持部材140Aを得てもよい。この場合、貫通部140wとなる、下面140aと上面140bとを結ぶ貫通孔の形成は、公知の方法により、セラミックグリーンシートの段階、あるいは、セラミックグリーンシートの焼成後の段階において実行することができる。
ここでは、図8に示すように、第1開口140dから第2開口140eに向かって拡がるような形状を有する貫通部140wを形成する。貫通部140wは、例えば円錐台形状を有し、第2開口140eは、第1開口140dよりも大きい。この例では、貫通部140wの内側面140fは、下面140aの法線に対して傾斜している。
次に、波長変換部材、透光部材の少なくとも一部、および、光拡散材の粒子を貫通部140w内に配置する(図7のステップS2)。ここでは、図9に模式的に示すように、まず、波長変換部材110を貫通部140w内に配置する。
この例では、波長変換部材110は、下面110a、上面110b、および、これらの間に位置する側面110cを有する円錐台形状を有する。下面110aは、貫通部140wの第1開口140d側に位置し、その面積は、上面110bの面積よりも小さい。この例のように、貫通部140wの形状に対応した形状を有する波長変換部材110を用いることにより、貫通部140w内の所定の位置に波長変換部材110を配置し得る。また、支持部材140Aに対して波長変換部材110をより確実に固定することが可能になる。
図9に例示する工程において、波長変換部材110の側面110cは、貫通部140wの内側面140fに接している。波長変換部材110を貫通部140wの内側面140fに接触させることにより、レーザ光の入射に起因して波長変換部材110で生じた熱を支持部材140Aを介して逃がしやすくなり、発熱による、波長変換部材110における、励起光の波長を変換する変換効率の低下を抑制し得る。波長変換部材110として、貫通部140wの形状に対応した形状を有する部材を用いることにより、波長変換部材110の側面110cと貫通部140wの内側面140fとの間の接触面積を増大させ、波長変換部材110に生じた熱をより効果的に支持部材140(ここでは支持部材140A)に逃がし得る。
なお、図9に示す例では、貫通部140wの内側面140fの断面視における形状は、直線状であるが、内側面140fは、段差を有していてもよい。図10に示す支持部材140Cの内側面140fは、段差を有している。図10に例示するように、内側面140fが段差を有すると、波長変換部材110を貫通部140w内の所定の位置により確実に配置し得る。また、波長変換部材110と貫通部140wの内側面140fとの間の接触面積がより増大するので、放熱性向上の効果も期待できる。
支持部材140に対する波長変換部材110の固定の態様は、この例に限定されない。貫通部140wの内側面140fと波長変換部材110の側面110cとの間に金属ペースト等の接合材を介在させ、接合材によって波長変換部材110を支持部材140に接合してもよい。
波長変換部材110は、ここでは、板状のセラミックス部材である。波長変換部材110は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、主原料としての酸化アルミニウム等の粉末および蛍光体の粒子を含む材料と、バインダおよび溶剤等とを含有するスラリーを準備し、ドクターブレード法等の公知の方法により、スラリーから所望の厚さのセラミックグリーンシートを得る。その後、金型等を用いてセラミックグリーンシートを所望の形状とし、セラミックグリーンシートを焼成することにより、波長変換部材110を得ることができる。また、主原料としての酸化アルミニウム等の粉末と、蛍光体の粒子とを含む材料を準備し、準備した材料を例えばグラファイト製の型に充填して所定の形状に焼結することによって波長変換部材110を得ることもできる。焼結体を得た後、必要に応じて、研削等によって焼結体の形状を整えてもよい。焼結には、放電プラズマ焼結法を適用し得る。波長変換部材110の材料として、添加剤、光拡散材等がさらに含有された材料を用いてもよい。
本実施形態では、貫通部140w内への波長変換部材110の配置とともに、あるいは、波長変換部材110の配置後に、透光部材の少なくとも一部と、光拡散材の粒子130とを貫通部140w内に配置する。このとき、波長変換部材110の上方に、光拡散材の粒子130と、透光部材とを上方に向かって順に配置する。
例えば、主面を有する柱状(あるいは板状)の透光部材120Qを準備する。ここでは、透光部材120Qとして、ホウケイ酸ガラス等のガラス部材を用いる。さらに、図11に模式的に示すように、透光部材120Qの主面(ここでは下面120a)に光拡散材の粒子130を配置する。下面120aへの粒子130の配置は、例えば、粒子130が分散された樹脂組成物を印刷法等によって下面120aに付与した後、加熱により樹脂組成物中の溶剤を揮発させることによって実行可能である。光拡散材の粒子130としては、酸化アルミニウム等の、透光部材120Qの軟化点よりも高い融点を有する材料の粒子を用い得る。必要に応じて、ダイシング装置等により、粒子130が下面120aに配置された透光部材120Qを所望の寸法に加工してもよい。なお、透光部材120Qは、蛍光体が予め含有された部材であってもよい。
その後、図12に模式的に示すように、予め粒子130が配置された透光部材120Qの下面120aを波長変換部材110の上面110bに対向させて、透光部材120Qの一部と、光拡散材の粒子130とを貫通部140w内に配置する。典型的には、透光部材120Qの一部と、光拡散材の粒子130とを貫通部140w内に配置した状態において、上面120bを含む透光部材120Qの他の一部は、図12に示すように貫通部140wの外側に突出する。この段階において、透光部材120Qの一部が第2開口140eの外側の領域上に位置していてもかまわない。このような比較的大きな体積の透光部材120Qを用いることにより、後述する光拡散部材120によって第2開口140eをより確実に塞ぐことができる。換言すれば、貫通部140w内の空間を光拡散部材120でより確実に充填することが可能になる。
このような手法によれば、光拡散材の粒子130を比較的容易に波長変換部材110の上面110bと透光部材120Qとの間に位置させることができる。なお、波長変換部材110の貫通部140w内への配置と、透光部材120Qの一部および光拡散材の粒子130の貫通部140w内への配置とは、同時に実行されてもよいし、この例のように順次に実行されてもよい。
なお、貫通部140w内への波長変換部材110の配置に際しては、波長変換部材110を第1開口140dに向けて押圧することにより、波長変換部材110を貫通部140wの内側面140fにより確実に固定することができる。この例のように、波長変換部材110を貫通部140w内に配置後に、透光部材120Qおよび光拡散材の粒子130を貫通部140w内に配置すると、透光部材120Qを介して波長変換部材110を第1開口140dに向けて押圧できるので有益である。
次に、加熱により、波長変換部材の上面を覆う光拡散部材を透光部材および光拡散材の粒子から形成する(図7のステップS3)。例えば、波長変換部材110、透光部材120Qの一部、および、光拡散材の粒子130が貫通部140w内に配置された状態の支持部材140Aを電気炉の内部に配置し、電気炉の内部を850℃程度まで加熱することにより、透光部材120Qの少なくとも一部を変形させる。例えば、透光部材120Qの材料がガラスである場合は、そのガラスの軟化点以上に透光部材120Qを加熱する。このとき、透光部材120Qの一部または全部が溶融してもかまわない。ただし、透光部材120Qが液体状になると支持部材140(ここでは支持部材140A)の上面140bに広がってしまうことが起こり得る。そのため、液体状となった材料が、後述の図13に示すように第2開口140eの周囲に大きく広がらない程度に粘度を維持できるような温度域で変形を生じさせることが有益である。波長変換部材110、光拡散材の粒子130および支持部材140のそれぞれは、典型的には、それらが変形を生じ始める温度が、透光部材120Qの変形が生じ始める温度(例えば軟化点)よりも高い材料から形成される。これにより、透光部材120Qに加熱による変形および/または溶融が生じても、これらの部材には基本的に変形は生じない。
加熱により、透光部材120Qは、粒子130を透光部材120Qの内部に取り込むように変形する。このとき、一部の粒子130は、透光部材120Qの内部に移動し得る。透光部材120Qの内部への粒子130の移動の程度は、加熱温度および/または加熱時間により調整し得る。透光部材120Qの加熱の工程において、透光部材120Qの上面120bを波長変換部材110に向けて押圧すると有益である。波長変換部材110に向けた透光部材120Qの上面120bの押圧は、透光部材120Qの形状を貫通部140wの形状に整合させることを容易にする。なお、図12および図13における下方向が重力の方向(すなわち、鉛直方向)となるように各部材を配置すると、重力を利用して透光部材120Qを図13に示すような形状に変形させ得る。
その後、冷却によって透光部材120Qを硬化させることにより、波長変換部材110の上面110bを覆う、粒子130を含有する光拡散部材120を形成することができる。すなわち、図4に示す光部品190Aが得られる。なお、透光部材120Qが加熱された状態で透光部材120Qを貫通部140wの形状に整合した形状に変形させることにより、貫通部140wの形状に整合した形状を有する光拡散部材120を形成して、光拡散部材120によって波長変換部材110を支持部材140により確実に固定させ得る。また、波長変換部材110の上方に光拡散材の粒子130と、透光部材120Qとを配置する際、粒子130とともに蛍光体を波長変換部材110と透光部材120Qとの間に配置することにより、蛍光体が含有された形で光拡散部材120を形成することも可能である。
透光部材120Qの一部と、光拡散材の粒子130とを貫通部140w内に配置した状態において、第2開口140eからの透光部材120Qの突出量が大きい場合には、図13に模式的に示す光部品190Cのように、第2開口140eの外側に光拡散部材120の一部が位置し得る。透光部材120Qの加熱の前の段階で透光部材120Qの一部が第2開口140eの外側の領域上に位置する場合にも同様に、加熱によって変形した透光部材120Qの冷却後に、第2開口140eの外側にその一部が位置する光拡散部材120が得られることがある。このように、光拡散部材120の上面120bは、支持部材140Aの上面140bに整合した平面形状に限定されず、上面140bから盛り上がる曲面形状等であり得る。ただし、光拡散部材120の上面120bの面積が大きくなるほど、上面120bにおける輝度が低下する。そのため、輝度向上の観点からは、研削または研磨によって光拡散部材120の一部を除去して、光拡散部材120の上面120bを例えば支持部材140の上面140bに整合させると有益である。光拡散部材120の上面120bは、平坦面に限定されない。光拡散部材120の上面120bに微細な凹凸を付与してもよい。
以上に説明したように、本実施形態によれば、透光部材120Qおよび光拡散材の粒子130から、第1領域R1および第2領域R2を有する光拡散部材120を形成可能である。さらに、本実施形態では、光拡散材の粒子130が波長変換部材110の上面110bと透光部材120Qとの間に位置した状態で加熱によって透光部材120Qを変形および/または溶融させている。そのため、第1領域R1と比較して波長変換部材110により近い第2領域R2において粒子130の数密度がより高くされた光拡散部材120を得ることが可能である。特に、上述の例では、透光部材120Qの下面120aに光拡散材の粒子130の層を予め形成してから、透光部材120Qの下面120aを波長変換部材110の上面110bに対向させて透光部材120Qの一部を貫通部140w内に配置している。そのため、透光材料の粉砕、光拡散材との混合、および、これらの混合物の焼成といった複雑な工程を必要とすることなく光拡散部材120を形成することが可能である。また、粒子130の分布に意図的に偏りが与えられた光拡散部材120を容易に形成することが可能である。
波長変換部材110により近い第2領域R2における粒子130の数密度を相対的に高くすることにより、上述したように、出射される光の色ムラを抑制して、第2開口140eの外縁における光のにじみを抑制し得る。また、第2開口140eから離れた位置で光を散乱させることにより、上述したように、散乱によって支持部材140の内部に進入し、支持部材140の内部で反射を繰り返して再び貫通部140w内に向けて出射した光のうち、第2開口140eに向かって進行する光の割合を増大させる効果が期待できる。
透光部材および光拡散材の粒子130から、第1領域R1および第2領域R2を有する光拡散部材120を形成する方法は、図11および図12を参照して説明した例に限定されない。例えば、図14に示すように、波長変換部材110の上面110bに光拡散材の粒子130を配置し、上面110bに光拡散材の粒子130の層が形成された状態の波長変換部材110を貫通部140w内に最初に配置してもよい。この場合、図15に例示するように、透光部材120Qに代えて、下面120aに粒子130が配置されていない透光部材120Rの一部を貫通部140w内に配置してもよい。このような方法によっても、光拡散材の粒子130を波長変換部材110の上面110bと透光部材120Rとの間に位置させることができる。
また、支持部材140に対する波長変換部材110の固定の方法も、波長変換部材110と支持部材140とが直接に接する態様に限定されない。例えば、図16に示す、少なくとも貫通部140wの内側面140fに接合部材170を有する支持部材140Bを用いてもよい。支持部材140Bは、例えば、上述の支持部材140Aを準備後、内側面140fの全部または一部に接合部材170を形成することにより得られる。接合部材170の形成には、ゾルゲル法、スピンコート法、スパッタ法等の公知の方法を適用し得る。例えばホウケイ酸ガラスの層を接合部材170として形成する場合、ホウケイ酸ガラスからなるターゲットを用いることにより、スパッタ装置を利用して接合部材170を形成することができる。あるいは、貫通部140wの内側面140fに予め接合部材170が設けられた支持部材を購入によって準備してもよい。
支持部材140Bの準備後、図17に示すように、例えば、波長変換部材110を貫通部140w内に配置する。貫通部140w内への波長変換部材110の配置後、貫通部140w内に波長変換部材110が配置された構造体を例えば電気炉内で加熱する。
既に説明したように、接合部材170の材料としては、波長変換部材110の材料の融点よりも低い軟化点(または融点)を有する材料が選択される。また、接合部材170の材料にホウケイ酸ガラス等の比較的低い融点を有する材料が用いられることに対して、典型的な実施形態では、支持部材140Aが、耐熱性に優れたセラミックスから構成される。典型的には、接合部材170の材料の軟化点(または融点)は、支持部材140Aを構成する材料の融点よりも低い。したがって、適当な温度下で加熱することにより、貫通部140w内に波長変換部材110が配置された構造体のうち、接合部材170を選択的に変形させ得る。
ここでの加熱は、接合部材170の材料の軟化点(あるいは融点)以上かつ波長変換部材110を構成するセラミックスの融点以下の温度範囲、典型的には、600℃以上1000℃以下程度の温度範囲で実行される。例えば、接合部材170の材料がホウケイ酸ガラスであり、支持部材140が、酸化ジルコニウムを含有する酸化アルミニウムのセラミックスであり、波長変換部材110の主な材料が酸化アルミニウムである場合、800℃以上1000℃以下程度の温度範囲での加熱を実行することにより、接合部材170を選択的に軟化または溶融させ得る。
加熱の工程においては、波長変換部材110を第1開口140dに向けて押圧してもよい。加熱(および押圧)により、接合部材170のうち、波長変換部材110の側面110cに接する部分が変形し、波長変換部材110の一部が接合部材170の層に入り込み得る。換言すれば、接合部材170のうち、波長変換部材110の配置された部分が薄くなる。このとき、波長変換部材110の側面110cの一部または全部が貫通部140wの内側面140fに接してもかまわない。接合部材170の一部が変形した状態でこれらの部材を冷却することにより、接合部材170を介して、波長変換部材110を支持部材140Bに固定することができる。図11を参照して説明したように、粒子130を予め透光部材120Qの下面120aに配置しておけば、透光部材120Qを配置する前の波長変換部材110の上面110bには粒子130が位置しないので、第1開口140dに向けて波長変換部材110の上面110bを押圧しやすい。
支持部材140Bへの波長変換部材110の固定後、図18に示すように、例えば、図9〜図12を参照して説明した例と同様にして、下面120aに光拡散材の粒子130が配置された透光部材120Qの下面120a側の一部を貫通部140w内に配置する。さらに、加熱によって透光部材120Qの少なくとも一部を変形させた後に冷却を実行することにより、粒子130を含有する光拡散部材120を形成することができる。すなわち、図6に示す光部品190Bが得られる。上述したように、粒子130をまず透光部材120Qに固定してから、その後に透光部材120Qとともに粒子130を波長変換部材110上に配置すると有益である。粉体の形で粒子130を波長変換部材110の上面110bに置いただけでは、加熱に用いる電気炉等の炉内の圧力を変化させようとすると、圧力の変化によって粒子130が移動してしまうからである。
図16〜図18を参照して説明した上述の例では、加熱によって変形させた接合部材170によって波長変換部材110が貫通部140w内に固定されるので、支持部材140Bからの波長変換部材110の脱落等をより確実に防止し得る。また、波長変換部材110の側面110cと貫通部140wの内側面140fとの間が接合部材170によって充填され得るので、レーザ光の照射によって波長変換部材110に生じた熱を接合部材170を介して支持部材140に効果的に逃がし得る。
上述した工程に従って光部品190を得た後、例えば図3に示すように押さえ部材150によって光部品190を第2筒状部160に固定することにより、上述した蓋部材100を得ることができる。さらに、図2に示すように、半導体レーザ素子221を含む発光素子220を有するパッケージ200に蓋部材100を取り付けることにより、半導体レーザ素子221と光部品190とを光学的に結合して、半導体レーザ素子221を有する発光装置300を得ることができる。このとき、光部品190の波長変換部材110の下面110aの側をレーザ光が入射する側とし、光拡散部材120の上面120bの側を光取り出し側とする。