JP2019100469A - 摩擦ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】引き摺りトルクを低減することができる摩擦ブレーキ装置を提供する。【解決手段】押圧プレート57は、圧油の供給により回転プレート56aおよび固定プレート56bを摩擦係合させる。弾性部材62は、係合力に抗する付勢力を押圧プレート57に付与する。ストッパ機構63,68は、押圧プレート57から伝達される弾性部材62の弾性力を受ける。アクチュエータ70,73は、押圧力に抗する反力を検出する検出部72を有し、検出部72で検出された反力に基づいて軸線方向におけるストッパ機構63,68の位置を調整する。【選択図】図2
Description
本発明は、回転部材および固定部材の間に係合力を発生させる摩擦ブレーキ装置に関するものである。
従来、車両の駆動力源として駆動トルクを発生する駆動用モータ、駆動用モータと駆動輪との間でトルクを伝達する動力伝達機構、および駆動輪に制動トルクを付与するブレーキ機構を備えたモータ駆動ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の装置は、駆動力源、動力伝達機構、およびブレーキ機構を一体的に取り扱えるように一体化されている。ブレーキ機構としては、低トルク、かつ高回転化に対応する必要があり、例えばキャリパ式の油圧ブレーキ機構が多く採用されている。
キャリパ式の油圧ブレーキ機構では、ブレーキパッドがディスクロータを挟み込むように押圧するため、油圧を解除して解除方向にピストンを引き戻すのにピストンリングの弾性復元力を利用している。つまり、シリンダ部の内周面には、ピストンリングを装着するための環状のシール溝が形成されている。シール溝の制動方向の側面に、ピストンリングの制動方向への移動を規制する移動規制部と、移動を許容する移動許容部とが形成されている。移動許容部は、移動規制部から内径側にいくに従い徐々に制動方向に向かって傾くように面取りされたテーパ面で構成されている。
このような構成のブレーキ装置では、ピストンが制動方向へ移動したときに、ピストンに追随して移動許容部に向かってピストンリングの弾性変形を利用して油圧解除時にピストンを解除方向に移動させている。
しかしながら、上記のようなブレーキ装置は、ピストンリングの弾性変形を利用して油圧解除時にピストンを解除方向に移動させる。このため、ブレーキパッドとブレーキロータとのクリアランスを適切に管理する構造がなく、よって、ブレーキパッドが解除位置に戻らないことがある。この場合には、ブレーキパッドとブレーキロータとの間に摩擦力が発生し、引摺りトルクにより車両の燃料消費量あるいは電力消費量が増大する。
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、引き摺りトルクを低減または防止することができる摩擦ブレーキ装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、駆動力源から伝達されるトルクにより回転する回転部材と、前記回転部材に対向して配置され、前記回転部材の回転方向への回転が止められた固定部材と、前記回転部材の回転軸の軸線方向に押圧されることにより前記回転部材および前記固定部材の間に係合力を発生させる押圧部材と、前記係合力を発生させるための押圧力を前記押圧部材に付与する押圧力付与機構とを備えた摩擦ブレーキ装置において、前記押圧力に抗する弾性力を前記押圧部材に付与する弾性部材と、前記押圧部材から伝達される前記弾性部材の弾性力を受けるストッパ機構と、前記押圧力に抗する反力を検出する検出部を有し、前記検出部で検出された反力に基づいて前記軸線方向における前記ストッパ機構の位置を調整可能なアクチュエータとを備えたことを特徴とするものである。
本発明によれば、弾性部材により係合力に抗する弾性力を押圧部材に付与する。このため、回転部材と固定部材と間に生じる係合力を確実に解除することができる。また、本発明は、押圧部材から伝達される弾性部材の弾性力を受けるストッパ機構と、検出部で検出された反力に基づいて軸線方向におけるストッパ部材の位置を調整するアクチュエータとを備えている。このため、長期的に使用することで回転部材と固定部材との間のクリアランスが変化して係合力が低下することを抑制または防止することができる。
図1は、本発明の実施形態にかかる摩擦ブレーキ装置の一例を採用した駆動装置を示す断面図である。図1に示すように駆動装置10は、車両に搭載されるものであり、車幅方向の右側に配置された第1駆動輪11、左側に配置された第2駆動輪12、第1駆動輪11用の第1モータ13、第2駆動輪12用の第2モータ14、第1駆動輪11用の第1動力伝達機構15、第2駆動輪12用の第2動力伝達機構16、差動機構17、第1駆動輪11用の第1ブレーキ機構18、および第2駆動輪12用の第2ブレーキ機構19を備える。なお、図1に示した車幅方向の右方および左方は、例えば図1にて車両を背面(後方)から視た図とした場合の左右方向であり、車両を正面(前方)から視た図を図1とする場合には左右方向が逆になる。
また、第1駆動輪11、第1モータ13、第1動力伝達機構15、第1ブレーキ機構18、第2駆動輪12、第2モータ14、第2動力伝達機構16、および第2ブレーキ機構19は、車幅方向における中央を挟んだ両側に略対称に配置されている。したがって、以下の説明では、車幅方向の右側に配置された第1駆動輪11、第1モータ13、第1動力伝達機構15、および第1ブレーキ機構18について説明する。左側に配置された機構については、右側に配置された機構と同じまたは同様な構成であるため、同じ部材に同番号および末尾に「L」を付与してここでの詳しい説明を省略する。第1モータ13および第2モータ14は、本発明の実施形態における駆動力源の一例である。
第1モータ13は、発電機能のあるモータであって、その一例として永久磁石形の同期モータで構成されている。具体的には、ドラム状に形成されたモータハウジング21の内部に環状のステータ22が取り付けられ、そのステータ22の内部に環状のロータ23が設けられている。ロータ23は、出力軸24に一体的に連結されており、出力軸24は、第1モータ13の駆動により回転軸L1を中心に回転する。出力軸24は、モータハウジング21の両側の隔壁25,26に設けられたベアリング27,28を介して回転自在に支持されている。
第1動力伝達機構15は、出力ギヤ30、カウンタシャフト31、カウンタドリブンギヤ32、ピニオンギヤ33、および終減速ギヤ34を備え、第1モータ13から出力される駆動力を第1駆動輪11に伝達する。
出力ギヤ30は、出力軸24の左方の端部に連結されている。カウンタシャフト31は、出力軸24と平行に配置されている。カウンタシャフト31には、ピニオンギヤ33とカウンタドリブンギヤ32とを同軸上に一体的に取り付けた二段ギヤが連結されている。カウンタドリブンギヤ32は、出力ギヤ30に噛み合っている。ピニオンギヤ33は、カウンタドリブンギヤ32よりも小径に形成されている。ピニオンギヤ33には、ピニオンギヤ33よりも大径の終減速ギヤ34が噛み合っている。
終減速ギヤ34は、カウンタシャフト31と平行に配置された副軸35が連結されている。副軸35は、出力軸24の軸方向(車幅方向)に移動可能でかつ回転方向にトルクを伝達可能にするスプライン結合によりドライブシャフト36の一端に連結されている。ドライブシャフト36は、従来知られているドライブシャフトと同様に、両端の回転軸線を車両の高さ方向に変更するための等速ジョイントなどの図示しない連結機構を有している。そのドライブシャフト36の他端には、第1駆動輪11が連結されている。なお、ドライブシャフト36は、副軸35と同軸上に配置されている。
本実施形態における第1動力伝達機構15は、出力ギヤ30とカウンタドリブンギヤ32とのギヤ比、およびピニオンギヤ33と終減速ギヤ34とのギヤ比に応じて出力ギヤ30のトルクを増大してドライブシャフト36に伝達する減速機構により構成されていてよい。
なお、第1動力伝達機構15は、センターハウジング37の内部に収容されている。センターハウジング37には、車幅方向における両側に、前述したモータハウジング21が取り付けられている。また、カウンタシャフト31や副軸35は、センターハウジング37に取り付けられた隔壁によりベアリングを介して回転自在に支持されている。
また、第1モータ13の出力軸24は、第2モータ14の出力軸24Lと同軸上に配置されており、かつ第1動力伝達機構15のドライブシャフト36は、第2動力伝達機構16のドライブシャフト36Lと同軸上に配置されている。また、第1動力伝達機構15のカウンタシャフト31は、第2動力伝達機構16のカウンタシャフト31Lと同軸上に、かつ第1動力伝達機構15の副軸35は、第2動力伝達機構16の副軸35Lと同軸上に配置されている。
差動機構17は、第1動力伝達機構15の出力軸24と第2動力伝達機構16の出力軸24Lとに伝達される相互のトルクを異ならせることができる機構である。その差動機構17は、連結軸39、フランジ部40、締結プレート41、延長軸42、収容部43、スナップリング44、ヨーク45、押圧板46、円筒部47、コイルバネ48、およびコイル49などで構成されている。
連結軸39は、出力軸24の一端にスプライン結合により連結されている。フランジ部40は、連結軸39に形成されている。フランジ部40の外周面には、スプライン歯40aが形成されている。また、フランジ部40と同心円上に環状の締結プレート41が配置されている。締結プレート41の内周面には、スプライン歯41aが形成されている。フランジ部40と締結プレート41とは、スプライン歯40a,41aの係合により出力軸24の軸方向に移動可能になっている。
第2モータ14の出力軸24の一端には、延長軸42がスプライン結合により連結されている。延長軸42には、連結軸39との間に収容部43が一体的に形成されている。収容部43は、開放側を出力軸24に向けた断面略C字状に形成された凹部38を有する。凹部38には、前述した締結プレート41が相対回転可能に取り付けられている。また、凹部38の開口には、締結プレート41が収容部43から抜け出ることを防止するためのスナップリング44が取り付けられている。
さらに、凹部38には、環状のヨーク45が一体的に取り付けられており、そのヨーク45と締結プレート41との間に環状の押圧板46が配置されている。押圧板46および収容部43は、スプライン結合しており、よって、押圧板46は、収容部43と一体に回転するとともに、収容部43内で出力軸24の軸線方向(車幅方向)に移動することができる。
また、押圧板46は、磁性材料により構成されており、その内径部には、出力軸24の軸方向における収容部43の底面側に延出した円筒部47が形成されている。コイルバネ48は、円筒部47の外周に、かつ収容部43の底面と押圧板46との間に圧縮されるように配置され、押圧板46を出力軸24の軸方向における締結プレート41に向けて付勢する。さらに、収容部43の外周には、コイル49が配置されている。
コイル49は、通電されることによりコイルバネ48の弾性力に抗した磁力を発生させる。磁力は、締結プレート41から出力軸24の軸方向に沿って離れるように押圧板46に作用する。一方、コイル49が通電されていない場合には、押圧板46がコイルバネ48の付勢により締結プレート41に押圧される。押圧板46と締結プレート41との間には、コイルバネ48の付勢に応じた摩擦力が生じる。摩擦力は、直進走行や比較的旋回半径が大きい走行路を走行する場合における左右の出力軸24に作用するトルク差あるいは回転速度差によって、押圧板46と締結プレート41とが相対回転しない程度に定められている。差動機構17は、コイル49を電磁アクチュエータとした摩擦クラッチを構成している。
第1ブレーキ機構18は、サービスブレーキ機構51、およびパーキングブレーキ機構52を備える。パーキングブレーキ機構52は、駐車時、あるいは停車時に作動させて制動力を保持する。サービスブレーキ機構51は、油圧ブレーキ機構53を備える。
油圧ブレーキ機構53は、マスタシリンダユニット75、動力液圧源76、液圧アクチュエータ77、およびそれらをつなぐ液圧回路78などを備える。
動力液圧源76は、アキュムレータ、圧力センサ、モータ、およびポンプ(いずれも図示なし)などを有し、アキュムレータに所定圧力範囲のブレーキ液圧を蓄圧することで、マスタシリンダユニット75に加えるブレーキ液圧を発生させる。アキュムレータに蓄えられたブレーキ液圧(アキュムレータ圧)は、所定圧力範囲となるように圧力センサにより圧力検出を行い、アキュムレータ圧が低いと、モータを駆動することでポンプによるブレーキフルードの吸入吐出動作を行わせる。
マスタシリンダユニット75は、一例として液圧ブースタ付きマスタシリンダとしてもよい。液圧ブースタ付きマスタシリンダは、液圧ブースタ80、マスタシリンダ81、レギュレータ82、およびリザーバ83を含む。ブレーキペダル84の踏み込みによりマスタシリンダ81のブレーキフルードが加圧される。液圧ブースタ80は、ブレーキペダル84に連結されており、ブレーキペダル84に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ81に伝達する。動力液圧源76からレギュレータ82を介して液圧ブースタ80にブレーキフルードが供給されることにより、ブレーキペダル84の踏力(ペダル踏力)が増幅される。マスタシリンダ81は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ81は、ブレーキペダル84への踏み込みが解除されている際にリザーバ83と連通する。一方、レギュレータ82は、リザーバ83と動力液圧源76のアキュムレータとの双方と連通しており、リザーバ83を低圧源とするとともに、アキュムレータを高圧源とし、マスタシリンダ圧と略等しい液圧(レギュレータ圧)を発生する。
液圧アクチュエータ77は、動力液圧源76またはマスタシリンダユニット75から供給されるブレーキフルードの液圧を適宜調整してホイールシリンダ(詳しくは後述するシリンダ部66)に伝達する。ホイールシリンダは、本実施形態ではサービスブレーキ機構51,51Lにそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では、油圧ブレーキ機構53を使用しているが、本発明ではこれに限らず、例えば空圧式ブレーキ機構を使用してもよい。油圧ブレーキ機構53は、本発明の実施形態における押圧力付与機構の一例である。
図2は、図1に示した駆動装置の要部を示す拡大断面図である。図2に示すように具体的には、サービスブレーキ機構51は、摩擦プレート56、押圧プレート57、固定環59、および受け圧ピストン部材63などを備えている。
摩擦プレート56は、所定の摩擦材またはプレートに摩擦材を取り付けたものであり、環状の回転プレート56a、および環状の固定プレート56bから構成されている。同図に示す実施形態では、摩擦プレート56は、2枚の回転プレート56a−1,56a−2、および2枚の固定プレート56b−1,56b−2から構成されている。固定プレート56bは、詳しくは後述する固定環59のストッパ部59cとの間で回転プレート56aを押圧する。なお、摩擦プレート56の数および配置順については前述した実施形態に限定されない。回転プレート56aは、ボス部材58に固定されている。ボス部材58は、出力軸24のうち、差動機構17側の一端とは逆側の他端にスプライン結合により連結されており、出力軸24と一緒に回転する。
固定環59は、環状形状をしており、モータハウジング21に固定されている。固定環59には、開放側を車幅方向における右方に向けた断面略C字状の凹部59aが形成されている。凹部59aには、摩擦プレート56が収容されている。また、固定環59は、出力軸24を挿通する開口59b、回転プレート56aの押圧を受けるストッパ部59c、および固定プレート56bをスプライン結合により連結する結合部59dを有する。開口59bは、ストッパ部59cの中央に形成され、結合部59dは、固定環59の内周部に形成されている。固定プレート56bは、出力軸24の回転軸L1の軸線方向への移動が可能で、かつ軸線を中心とする周方向への回転が不可能なように固定環59に取り付けられている。回転プレート56aと固定プレート56bとが車幅方向に交互に配置されることで、多板の摩擦プレートが構成される。なお、逆に回転プレート56aを固定プレート56bに向けて移動させることで生じる摩擦係合により出力軸24に制動力を発生させる構造であってもよい。また、回転プレート56aを一対の固定プレート56bで挟み込むことで生じる摩擦係合により制動力を発生させる構成であってもよい。回転プレート56aは、本発明の実施形態における回転部材の一例である。固定プレート56bは、本発明の実施形態における固定部材の一例である。
固定環59には、外周部と凹部59aとの間に、バネ受け部59eが形成されている。バネ受け部59eは、軸線を中心とする周方向に複数設けられている。バネ受け部59eには、リターンスプリング62が挿入されている。リターンスプリング62の自由長は、一端がバネ受け部59eの底面に当接した状態で、他端がバネ受け部59eから突出する長さになっている。また、リターンスプリング62は、複数のバネ受け部59eにそれぞれ配置されている。押圧プレート57の端面57aは、バネ受け部59eの開口に臨んでおり、リターンスプリング62の他端に当接している。複数のリターンスプリング62は、押圧プレート57を解除位置に向けて付勢する。リターンスプリング62の代わりに、少なくとも車幅方向に弾性力を有する弾性部材を使用してもよい。リターンスプリング62は、本発明の実施形態における弾性部材の一例である。
押圧プレート57は、環状に形成されており、受け圧ピストン部材63の外周に取り付けられている。受け圧ピストン部材63は、押圧プレート57から伝達される回転軸L1の軸線方向に沿う軸力を受け止める段差部63cを有する。なお、押圧プレート57および受け圧ピストン部材63は、本発明の実施形態における押圧部材の一例である。
受け圧ピストン部材63は、軸線方向を中心とする周方向への回転、および出力軸24の軸方向への移動がそれぞれ可能なようにブレーキハウジング61の内部に組み込まれている。受け圧ピストン部材63は、押圧プレート57を軸線を中心とする周方向への回転が止められている。受け圧ピストン部材63の回転止めとしては、ブレーキハウジング61との間でのスプライン結合により、または受け圧ピストン部材63に設けられた突部とブレーキハウジング61に軸方向に沿って設けられた直進溝との係合により行ってもよい。
モータハウジング21には、ブレーキハウジング61が固定されている。ブレーキハウジング61は、シリンダ部66を内部に有する。シリンダ部66は、開放側を車幅方向の左方に向けた断面略C字状に形成されている。シリンダ部66には、受け圧ピストン部材63の外周が液密状態を確保可能に当接している。ブレーキハウジング61は、シリンダ部66に油圧を供給するため油通路67を有する。油通路67を通して液圧アクチュエータ77からシリンダ部66の内部に油圧が供給されると、受け圧ピストン部材63が制動位置に向けて押圧されて出力軸24に制動力を発生させる。なお、ブレーキハウジング61は、液密状態が確保可能にモータハウジング21に固定されている。
受け圧ピストン部材63は、円筒形状に形成され、かつ円筒形状の中心軸が出力軸24の回転軸L1と同軸になるように配置されており、内部に凹部63aが形成されている。凹部63aは、開口側を車幅方向の右方に向けた断面略C字状に形成されている。凹部63aには、ナット部材64が嵌め込まれている。ナット部材64は、受け圧ピストン部材63に係合することで、回転軸L1の軸線を中心とする周方向への回転が止められている。ナット部材64は、車幅方向の左方の先端に受け部64bを有する。受け部64bは、凹部63aの底部63bに当接してリターンスプリング62から伝達される弾性力を受ける。また、ナット部材64の内周部は、雌ネジ64aを有する。雌ネジ64aには、ネジ軸68の外周に形成された雄ネジ68aが噛み合う。ナット部材64とネジ軸68とは、ネジ軸68から伝達される回転運動を直線運動に変換してナット部材64に伝達する送りネジ機構を構成する。ナット部材64およびネジ軸68などは、本発明の実施形態におけるストッパ機構の一例である。
受け圧ピストン部材63は、圧油の供給によりナット部材64の底部63bに当接した位置から回転プレート56aおよび固定プレート56bの間に係合力を発生させる制動位置(車幅方向の左方に寄った位置)に向けて移動される。ナット部材64の底部63bに当接した位置は、係合力を解除する解除位置である。なお、制動位置は、要求される制動力により適宜変更される。
ネジ軸68の後端68bは、外周がブレーキハウジング61の開口61aに嵌合している。その嵌合は、回転軸L1の軸線方向に移動可能に、かつ軸線を中心とする周方向に回転可能に、かつオイルシールなどにより液密状態が確保可能な嵌合になっている。後端68bの内部には、スプライン結合によりパーキング用モータ70のロータ軸(出力軸)71が連結されている。パーキング用モータ70、ネジ軸68、およびナット部材64などは、パーキングブレーキ機構52を構成する。
ネジ軸68は、パーキング用モータ70の駆動によりナット部材64を軸線方向に沿って移動させる。ナット部材64の移動は、回転プレート56aおよび固定プレート56bの間に係合力を生じさせる位置に受け圧ピストン部材63を移動させる制動位置(車幅方向の左方に寄った位置)とその押圧を解除する解除位置(車幅方向の右方に寄った位置)との間で行われる。なお、この際の制動位置は、サービスブレーキ機構51の制動位置のうち、車両の停止状態を維持させるのに必要な係合力が得られる位置である。解除位置は、詳しくは後述する初期位置に対応し、初期位置は詳しくは後述する調整制御より適宜変更される。
パーキングブレーキ機構52は、車両の電源がオフされた状態であっても回転プレート56aと固定プレート56bとの間に生じる係合力を維持するように構成されている。具体的には、パーキングブレーキ機構52は、パーキング用モータ70を、例えば正転方向に回転させることによりナット部材64を制動位置に向けて移動させる。
ネジ軸68は、外周にフランジ部68cを有し、フランジ部68cには、例えばスラストベアリング69が設けられている。スラストベアリング69は、フランジ部68cとそのフランジ部68cに対して車幅方向で対向するブレーキハウジング61の対向部61bとの間に配置されており、出力軸24の軸線方向に働く力(スラスト、推力)を受け止める。対向部61bには、ネジ軸68から軸線方向に伝達される軸力を検出するための検出部72が取り付けられている。検出部72は、例えば平行に配置された一対の押圧板および歪ゲージ(いずれも図示なし)を備え、歪ゲージを一対の押圧板で挟んで構成されていてよい。一方の押圧板にはスラストベアリング69が、他方の押圧板には対向部61bがそれぞれ当接する。フランジ部68cは、軸線方向の軸力(荷重)が加わった際に外径側が内径側によりも車幅方向の右方に向けて撓む。スラストベアリング69は、フランジ部68cの撓みに伴う変形を軸力として受け止める。検出部72は、ネジ軸68の後端68bが貫通する開口を有するリング状に形成されていてよい。歪みゲージは、軸線を中心とする周を等分した位置に複数設けられていてよい。
検出部72は、ネジ軸68に軸線方向の軸力が加わった際に生じるスラストベアリング69の軸線方向への変位量を検出し、検出した変位量の情報を制御部73に送る。制御部73は判定部73aを有し、判定部73aは変位量の情報に基づいて軸力を判定する。なお、検出部72は、ネジ軸68の軸線方向の変形を検出することに限らず、例えば押圧プレート57に設けて、捩り方向の変形を検出するように構成してもよい。この場合には、判定部は捩り方向の変形に基づいてトルクを判定すればよい。検出部72としては、歪みゲージ以外に、例えば圧電素子や感圧素子を用いたセンサを使用してもよい。
制御部73は、シフトレバー86がパーキングポジションに切り替えられた場合などパーキングロックする必要がある場合に、判定部73aで判定される軸力を監視しながらパーキング用モータ70を正転させるようにモータドライバ87に通電を行う。これにより、受け圧ピストン部材63がナット部材64に対して制動位置に向けて移動する。つまり、パーキング用モータ70は、送りネジ機構を構成するナット部材64およびネジ軸68に軸線方向に沿う推力を発生させるためのトルクを付与する。
その後、パーキングロックできる程度の変形量、つまり軸力を判定部73aが判定した際にモータドライバ87への通電を停止する。これにより、パーキング用モータ70の駆動が停止する。その結果、回転プレート56aと固定プレート56bとの間に制動力が発生した状態に維持される。このため、車両の電源がオフされた場合であっても、制動力を維持することができる。
また、制御部73は、パーキングブレーキが解除された際に、判定部73aで判定される軸力を監視しながらパーキング用モータ70に、例えば逆転させるように通電して受け圧ピストン部材63を解除位置に向けて移動させる。その後、パーキングロックが解除できる程度の変形量、つまり軸力を判定部73aが判定した際にモータドライバ87への通電を停止する。
パーキング用モータ70は、ロータ軸71の回転角を検出する回転角検出部74を有する。回転角検出部74は、検出した回転角の情報を制御部73に送る。制御部73は、記憶部73bを有し、パーキングロックを解除するごとに、パーキングロックが解除できる程度の軸力を得た時点の回転角の情報を初期位置として記憶部73bに記憶する。つまり、制御部73は、ロータ軸71の回転角に基づいて受け圧ピストン部材63の軸線方向における初期位置、つまり摩擦プレート56の摩耗の度合いに基づいた係合力の解除位置を調整する。
このため、長期的に使用することで摩擦プレート56の摩擦面の摩擦抵抗が低下してパーキングロック時の制動力が低下する現象を抑制または防止することができる。これにより、摩擦プレート56の摩擦面における摩耗の度合いに基づいて、例えばナット部材64が制動位置に向けて近づくように受け圧ピストン部材63の軸線方向における初期位置が変わるため、パーキングロックを確実に行うことができる。また、サービスブレーキ機構51の作動は、摩擦プレート56の摩擦面の摩耗に応じて調整されたナット部材64の軸線方向における位置を初期位置として受け圧ピストン部材63が制動位置に向けて移動されるので、通常ブレーキの制動力を常に同じ制動力に維持することができる。なお、パーキング用モータ70、検出部72および制御部73などは、本発明の実施形態におけるアクチュエータの一例である。
図3は、押圧力付与機構の別の実施形態を示す断面図である。図3に示す第1ブレーキ機構100は、電磁式の摩擦ブレーキ機構である。第1ブレーキ機構100は、アーマチュア98、およびコイル99を備えている。アーマチュア98は、磁性体により円環状に形成され、かつモータハウジング21の内部に回転軸L1の軸線方向に移動自在に設けられている。アーマチュア98には、押圧部98a、被押圧部98b、外周部98c、および結合部98dを有する。押圧部98aは、第1回転プレート56a−1を軸線方向に押圧する。被押圧部98bは、ストッパ部材93に当接する。ストッパ部材93は、内径側に雌ネジ93aを有し、雌ネジ93aは、図2で説明したネジ軸68の雄ネジ68aに噛み合っている。ストッパ部材93は、ネジ軸68、パーキング用モータ70および制御部73などのアクチュエータにより初期位置に保持されている。雌ネジ93a、およびネジ軸68の雄ネジ68aなどは、送りネジ機構を構成する。
アーマチュア98の外周部98cには、例えば断面円形の直進溝94が形成されている。直進溝94は、軸線方向に沿って直進的に延ばして設けられている。また、直進溝94は、軸線を中心とする周を等分する位置に複数設けられている。各直進溝94は、外径側に配置される固定環59により、車幅方向の右方がアーマチュア98の壁98e、車幅方向の左方が固定環59のストッパ部59c、外径側が固定環59の内周部59f、および内径側がアーマチュア98の外周部98cで囲まれている。
各直進溝94には、転動体の一例である案内ピン97が嵌合している。直進溝94は、案内ピン97に対して軸線を中心とする周方向に僅かな遊びを有する。案内ピン97および直進溝94は、その遊びを超えた周方向へのアーマチュア98の回転を阻止し、かつ固定環59に対してアーマチュア98の軸方向への移動を許容する。結合部98dは、スプライン結合により第1固定プレート66b−1および第2固定プレート66b−2を軸方向に移動可能に支持する。なお、案内ピン97としては、この実施形態では断面円形の平行ピンとしているが、これに限らず、例えば断面矩形の平行ピンであってもよい。この場合には、直進溝94は、案内ピン97の断面形状に嵌合する断面形状であればよい。また、案内ピン97の代わりに、球体を使用してもよい。球体を使用する場合には、直進溝94に対して複数個使用してもよい。
コイル99は、固定環59の内部で、かつアーマチュア98の外径側に設けられており、通電することでアーマチュア98を吸引する。アーマチュア98の吸引方向は、押圧部98aが第1回転プレート56a−1を軸線方向に向けて押圧する方向(車幅方向の左方)になっている。また、アーマチュア98の吸引力は、詳しくは後述するリターンスプリング95,96の弾性力よりも大きい力となっている。第1モータ13の出力軸24は、コイル99が通電することによりアーマチュア98が車幅方向の左方に移動することにより回転プレート56aおよび固定プレート56bの間に発生する係合力により制動される。アーマチュア98は、本発明の実施形態における押圧部材の一例である。
案内ピン97を挟んで軸方向の両側には、一対のリターンスプリング95,96が案内ピン97の両端に当接するように配置されている。一対のリターンスプリング95,96は、案内ピン97が直進溝94から軸線方向に抜けることを阻止し、かつコイル99への通電が解除された際に、ストッパ部材93に向けて復帰するようにアーマチュア98を付勢する。なお、リターンスプリング95,96の直径は、案内ピン97の直径と同じまたはそれよりも小径であってよい。リターンスプリング95,96は、同じサイズおよび弾性力のものを使用してよい。また、リターンスプリング95,96の代わりに、軸線方向に弾性変形可能な弾性部材を使用してもよい。
ストッパ部材93は、スプライン結合部60により軸線を中心とする周方向への回転が止められており、パーキング用モータ70の駆動が送りネジ機構に入力されることにより制動位置と初期位置との間で移動される。ストッパ部材93の初期位置は、図2で説明した検出部72や制御部73などで構成されるアクチュエータによりパーキングロック解除の際に調整される。なお、図3では、図2で説明したと同じ部材に同符号を付与してここでの詳しい説明を省略する。また、コイル99を固定環59のうちのアーマチュア98の外周側に配置しているが、アーマチュア98と隔壁26との間に配置してもよい。
以上、本発明は、上述した実施形態で示した構成に限定されないのであって、特許を請求している範囲で適宜に変更して実施することができる。例えば送りネジ機構やパーキング用モータ70の代わりに、電動シリンダなどの直動アクチュエータを使用してもよい。また、回転プレート56aは、第1モータ13から伝達されるトルクにより回転する構成として説明しているが、代わりにエンジンから伝達されるトルクにより回転する構成としてもよい。さらに、受け圧ピストン部材63あるいはストッパ部材93の初期位置の調整は、パーキングロック解除の際に限らず、例えば車両の停止時に行ってもよい。この場合には、パーキングロックおよびその解除を自動的にかつ迅速に行えばよい。さらにまた、上述した各実施形態では、サービスブレーキ機構51とパーキングブレーキ機構52とを組み合わせた摩擦ブレーキ装置として説明しているが、本発明ではこれに限らず、パーキングブレーキ機構52を省略し、サービスブレーキ機構51のみとしてもよい。この場合には、制御部73は、前述したように受け圧ピストン部材63あるいはストッパ部材93の初期位置の調整を車両の停止時に行ってもよい。
10…駆動装置、 11…第1駆動輪、 12…第2駆動輪、 13…第1モータ、 14…第2モータ、 15…第1動力伝達機構、 16…第2動力伝達機構、 17…差動機構、 18…第1ブレーキ機構、 19…第2ブレーキ機構、 51…サービスブレーキ機構、 52…パーキングブレーキ機構、 56…摩擦プレート、 57…押圧プレート、 59…固定環、 62,95,96…リターンスプリング、 63…受け圧ピストン部材、 64…ナット部材、 66… シリンダ部、 67…油通路、 68…ネジ軸、 70…パーキング用モータ、 73…制御部、 98…アーマチュア、 99…コイル。
Claims (1)
- 駆動力源から伝達されるトルクにより回転する回転部材と、前記回転部材に対向して配置され、前記回転部材の回転方向への回転が止められた固定部材と、前記回転部材の回転軸の軸線方向に押圧されることにより前記回転部材および前記固定部材の間に係合力を発生させる押圧部材と、前記係合力を発生させるための押圧力を前記押圧部材に付与する押圧力付与機構とを備えた摩擦ブレーキ装置において、
前記押圧力に抗する弾性力を前記押圧部材に付与する弾性部材と、
前記押圧部材から伝達される前記弾性部材の弾性力を受けるストッパ機構と、
前記押圧力に抗する反力を検出する検出部を有し、前記検出部で検出された反力に基づいて前記軸線方向における前記ストッパ機構の位置を調整可能なアクチュエータとを備えた
ことを特徴とする摩擦ブレーキ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017232919A JP2019100469A (ja) | 2017-12-04 | 2017-12-04 | 摩擦ブレーキ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2017232919A JP2019100469A (ja) | 2017-12-04 | 2017-12-04 | 摩擦ブレーキ装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019100469A true JP2019100469A (ja) | 2019-06-24 |
Family
ID=66976556
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017232919A Pending JP2019100469A (ja) | 2017-12-04 | 2017-12-04 | 摩擦ブレーキ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019100469A (ja) |
-
2017
- 2017-12-04 JP JP2017232919A patent/JP2019100469A/ja active Pending
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