JP2019099980A - 絹繊維の被覆方法および被覆された糸、布帛又は繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】黄変が視覚されにくく、紫外線による劣化を抑制でき、耐摩耗性を向上させて毛羽立ちを防止できる絹繊維の被覆方法、および被覆された糸、布帛又は繊維製品提供すること。【解決手段】本発明の絹繊維の被覆は、一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンを分散させた酸性分散液を、摂氏90度乃至120度でセリシンを含有する絹繊維に接触させて行う。繊維表面に吸着した酸化チタンをバインダー樹脂層で被覆し、バインダー樹脂層に顔料を含有させることで着色を行う。【選択図】図4

Description

本発明は、酸化チタンによる絹繊維の被覆方法、および絹繊維を被覆している酸化チタンがさらにバインダー樹脂層で被覆されている糸、布帛又は繊維製品に関する。
絹素材を、強い紫外線、高温多湿という厳しい環境に晒される自動車内で使用する場合、黄変とそれに伴って劣化を防止する必要がある。従来、絹素材の黄変防止あるいは抑制効果が認められている薬品としては、チオ尿素−ホルマリン樹脂、含水酸基化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、紫外線吸収剤などがある。
自動車内装品の中でも、カーシートに関しては優れた耐摩耗性が要求される。絹素材における上記物理的性能の改善方法としては、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素などを利用して、繊維分子間に架橋結合構造を導入する方法が知られている。
特許第3858229号
熱、水分、酸素など様々な要因が組み合わされて生じる黄変については、それらを遮断することは本質的に不可能であるため、完全には避けがたいといえる。このように避けがたい要因から生じる黄変については、ある程度の変色が生じても表面上は視覚されない工夫を施すことが本発明の課題のひとつである。
紫外線は黄変の原因の一つであるが、絹繊維の強伸度を劣化させることも重大な問題である。本発明が解決すべき課題のひとつとして、日光に含まれる紫外線が絹繊維に与える損傷を抑制するため、繊維に到達する紫外線を低減することが挙げられる。
絹繊維は、繊維長さ方向の引張りには高強度で強靱な素材であるが、表面に摩擦力が加えられると毛羽立ちを生じやすい。この弱点は、自動車内装品の中でも、特にカーシートに関して重要な問題である。すなわち、耐摩耗性を向上させて摩擦力による毛羽立ちを防止することも、本発明が解決すべき課題である。
上記課題を解決するために本発明では、一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンを分散させた酸性分散液を摂氏90度乃至120度に加熱し、セリシンを含有する絹繊維を前記分散液に接触させた後に、摂氏70度以下に冷却することを特徴とする絹繊維の被覆を行う。
本発明の絹繊維で構成された糸、布帛又は繊維製品は、セリシンを一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンで被覆し、さらに前記酸化チタンをバインダー樹脂層で被覆する。
本発明の絹繊維で構成された糸、布帛又は繊維製品は、セリシンを一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンで被覆し、前記酸化チタンをバインダー樹脂層で被覆し、さらに前記バインダー樹脂層に顔料を含有させることによって着色を行う。
本発明のバインダー樹脂はウレタン系樹脂を使用する。
本発明の絹繊維は、生糸の状態からセリシンを3割乃至7割取り除く。
本発明のセリシンを被覆する一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンは、可視光の波長の約1/2の大きさのため、最大の散乱能、隠ぺい力および着色力を示す白色顔料である。この酸化チタンで絹繊維の表面を被覆することにより、熱、水分、酸素など様々な要因の組み合わせにより黄変が生じた場合においても、表面上は視覚されないか若しくは視覚されにくくすることが可能となる。
また、一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンは、紫外線透過率を約60%低下させることができる。酸化チタンの紫外線吸収特性としては、一次粒子径10ナノメートル乃至50ナノメートルの超微粒子酸化チタンの方が優れているが、透明のため黄変の隠ぺいが不可能であるとともに、光触媒作用により絹繊維やバインダー樹脂の分解劣化を促進する危険性があるために好ましくない。すなわち、本発明のセリシン層を被覆する一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンは、紫外線による絹繊維の損傷を半分以下に低減することができるとともに、光触媒作用による悪影響を及ぼさない。
本発明の酸化チタンを被覆するバインダー樹脂層は、酸化チタンの脱落を防ぐ効果がある。逆に、酸化チタンによって生じる繊維表面の凹凸は、繊維表面でバインダー樹脂を高い密着性によって保持する効果がある。バインダー樹脂として、特にウレタン系樹脂を使用することにより、ウレタン結合およびウレア結合で構成されるハードセグメントの凝集力に由来する耐摩耗性が得られる。
本発明のバインダー樹脂層に含有させる顔料は、製品に色彩を付与する効果がある。また、顔料によって付与される色彩は、酸化チタンが絹繊維を被覆することで鮮やかな発色性が得られる。さらに、顔料は酸化チタンと同様に隠ぺい力および着色力を示すため、黄変が生じても表面上は視覚されないか若しくは視覚されにくくなる。紫外線についても、酸化チタンと同様に紫外線透過率を低下させることができる。
本発明の絹繊維は、生糸の状態からセリシンを3割乃至7割取り除くことにより、酸化チタンを保持する接着力と繊維素材としての柔軟性がバランス良く得られる。セリシンは、生糸に20パーセント乃至30パーセント含まれる膠質のタンパク質であり、本発明の酸化チタンのような粒子状物質を絹繊維表面に付着させる接着力を有する。しかし、夾雑物や二次的な付着物を含んでいるため、生糸のままでは手触りが堅く光沢にも欠ける。そのため、生糸の状態からセリシンを3割以上取り除くことにより手触りを柔らかくすることができ、逆に3割以上を残すことにより酸化チタンを付着させる接着力を保持できる。
また、生糸の状態からセリシンを3割以上残すことにより、フィブロイン繊維がセリシンに内包された状態を保つことができる。フィブロイン繊維は直径100ナノメートル乃至400ナノメートルのフィブリルが束になって構成されており、これが摩擦などの機械的刺激によって分解されると毛羽となる。残存するセリシンは、フィブリル構造の分解を抑制できるため、耐摩耗性の保持に効果を発揮する。
本発明の絹繊維は、摂氏90度乃至120度に加熱した酸性の酸化チタン分散液に接触させた後に摂氏70度以下に冷却することにより、セリシンの接着力を利用して酸化チタンを表面に付着して被覆させることができる。セリシンはアルカリ性では分解され、酸性においては摂氏90度付近から徐々に溶解が顕著となり、摂氏120度を超えるとセリシンが完全に溶解除去されて分解も進行する。すなわち、摂氏90度乃至120度の範囲では、セリシンが部分的に溶解した状態となって酸化チタンを繊維表面に効率よく付着させることができる。
実施例1の絹糸の電子顕微鏡写真である。 実施例2の絹糸の電子顕微鏡写真である。 比較例1の絹糸の電子顕微鏡写真である。 実施例4の被覆した絹糸の断面模式図である。
以下、本発明の酸化チタンによる絹繊維の被覆方法、および絹繊維を被覆している酸化チタンがさらにバインダー樹脂層で被覆されている糸、布帛又は繊維製品に関する実施の形態を説明する。
本発明で利用する絹繊維とは、蚕の繭から採取される動物繊維を指す。絹繊維を大きく分けると、家蚕絹と野蚕絹とになる。家蚕絹とは屋内で飼育された家蚕の繭から採った絹繊維であり、一般に絹繊維又は生糸という場合は家蚕絹のことを指す。野蚕絹とは、野生植物の葉を飼料として山野で飼育された、野性的蚕が作る繭から採取した絹繊維である。本発明の絹繊維としては、一般的な家蚕絹が好ましく用いられるが、野蚕糸を利用することも可能である。
絹繊維の中で特に生糸とは、繭から採取された直後の絹繊維に20パーセント乃至30パーセント含有される、セリシンと呼ばれる膠質のタンパク質が除去されずにそのまま残存している状態の絹糸を指す。セリシンは加熱された湿潤状態では粘着性を示し、本発明では酸化チタンを付着させるのに利用する。しかし、用途によって生糸のままでは手触りが堅すぎる場合、本発明では粘着性を残しながら手触りを柔軟にするには、生糸の状態からセリシンの3割乃至7割を取り除くことを実施する。
生糸の状態からセリシンの3割乃至7割を取り除く方法は、絹精練の歩練り法によって実施可能である。絹の精練方法としては、セッケン練り、アルカリ練り、セッケン・アルカリ練りが一般的であるが、これらの方法では分解によってセリシンの低分子化が急速に進むため、3割乃至7割を取り除く方法としては適さない。好ましい方法としては、歩練り法の薬剤として市販されている酵素等を利用する方法、あるいは一般に知られる酸精練法が挙げられる。酵素を利用する方法としては、幸新堂化学工業所製のセリコンA、BおよびCを利用したセリシンコントロール法が好ましく実施可能である。
本発明において、一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンでセリシンを被覆させる絹繊維の形態としては、糸、布帛又は繊維製品の形状のいずれであっても良い。また、前記の糸、布帛又は繊維製品が絹繊維のみで構成される必要はなく、少なくとも一部に絹繊維が利用されているものであれば構わない。
本発明で利用する一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンは、一般に着色剤として使用される顔料が前記の一次粒子径の範囲で調整されているため、水系着色剤として市販されている酸化チタン分散体を利用することが可能である。具体例としては、トーヨーカラー株式会社製の汎用水系高濃度着色剤EMF WHITE HRが挙げられる。ただし、市販の水系着色剤に限らず、一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンを含有する材料であれば、本発明に制限なく利用することが可能である。
本発明において、糸、布帛又は繊維製品を構成する絹繊維のセリシンを酸化チタンで被覆させる具体的な方法は、摂氏90度乃至120度に加熱した酸性の酸化チタン分散液に絹繊維を接触させた後に摂氏70度以下に冷却できる方法であれば制限なく実施できる。具体的には、従来の染色技法を応用することが可能であり、浸染のように加熱した酸化チタン分散液に一定時間浸漬させる方法がより好ましく実施できるが、糸又は布帛を加熱した酸化チタン分散液中を通過させるパディング加工でも可能である。
本発明において、糸、布帛又は繊維製品を構成する絹繊維を加熱した酸化チタン分散液に一定時間浸漬させるための装置は、火力や蒸熱による加熱手段を備えた釜のような単純な構造の容器であっても良く、糸染め、生地染め又は製品染めに利用される染色機であっても良い。糸の染色機としては、噴射式綛糸染色機、チーズ染色機およびパッケージ染色機などが利用できる。布帛の染色機としては、ウインス染色機、液流染色機などが利用できる。繊維製品の染色機としては、パドル染色機、ロータリー染色機などが利用できる。染色機は複雑な構造の機械であるため、使用後に酸化チタンを完全に洗い流すことが難しい。そのため、酸化チタン分散液による処理には専用機として利用することが望ましい。釜のような単純構造の容器は洗浄が容易であるため、他の加工と併用しても支障はない。また、釜のような単純な容器は液の循環機能を有していないが、本発明では酸化チタンを飽和状態にまで被覆させるため、均一処理のための液循環機能がなくても問題なく利用できる。
一定時間の浸漬でのセリシン被覆に使用する酸化チタン量は、吸着可能な量を超える過剰量であればよい。ただし、使用量が多過ぎても効率が悪いため、絹糸重量の10パーセント乃至20パーセント程度を用いるのが好ましい。酸化チタンを分散させる水の量は、処理される糸、布帛又は繊維製品を浸漬するのに十分であれば良く、前記の糸、布帛又は繊維製品の重量の10倍乃至50倍であることが好ましい。
浸漬処理を開始する温度は、常温から摂氏90度乃至120度の最高処理温度まで昇温する間のどの温度であっても構わない。昇温速度は、装置の加熱能力によって可能な速度であれば特に制限はない。摂氏90度乃至120度での処理時間は、長過ぎるとセリシンの溶解が進行するため、10分間以下の短時間であることが好ましい。特に、摂氏120度での処理時間は、1分間以下の短時間であることが望ましい。冷却時の降温速度は、装置の冷却能力によって可能な速度であれば特に制限はない。終了温度は、セリシン層が安定化する温度域が望ましく、高くとも摂氏70度以下であることが好ましい。浸漬処理後は、排水した後に処理した糸、布帛又は繊維製品を水洗して、過剰に付着した酸化チタンを除去しても良い。
本発明で利用するバインダー樹脂は、適当な硬さ、柔軟性、接着力、各種耐久力や安定性があるものであれば、特に制限されることなく使用できる。具体的な組成は一概にはいえないが、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
本発明の繊維製品の中で、自動車内装品であるカーシートなどに利用する場合には、耐摩耗性と難燃性に優れるウレタン系樹脂が特に好ましく利用できる。具体例としては、DIC株式会社製の水性ポリウレタン樹脂ハイドランWLS−210が挙げられる。ただし、ウレタン系樹脂は前記製品に限定されるものではなく、本発明品の用途に適したウレタン系樹脂であれば制限なく利用することが可能である。
本発明におけるバインダー樹脂層による被覆の方法としては、糸又は布帛を樹脂液中に浸漬させて適度に絞った後に熱処理を行うディッピング加工が最も好ましい。この方法では布帛の両面に樹脂液を塗布できるため、酸化チタンを完全に被覆できる。スプレー加工やナイフコート加工など他のコーティング技法では布帛の片面塗布となるため、酸化チタンを完全に被覆することはできないが、片面の被覆でも構わない用途に限っては実施可能である。
本発明のバインダー樹脂層が含有する顔料による着色は、樹脂液に顔料を配合する方法によって実施可能である。
本発明で利用する顔料は、繊維の着色に利用できる顔料であれば特に制限はない。ただし、本発明の繊維製品の中で、自動車内装品であるカーシートなどに利用する場合には、耐光性や耐熱性に優れた顔料を利用する。具体例として、トーヨーカラー株式会社製の汎用水系高濃度着色剤EMF YELLOW 3G、EMF RED HFB、EMF BLUE HGおよびEMF BLACK HK−3は、フェードメーターによる100時間暴露でも変退色しない耐光性と、摂氏180度で10分間の乾熱処理に対する耐熱性を示すため、本発明の顔料として好ましく利用できる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例によって限定されるものではない。
生糸重量に対して、20重量パーセントのトーヨーカラー株式会社製汎用水系高濃度着色剤EMF WHITE HRを浴比1:40相当の水に分散させ、酢酸を水1リットル当たり1ミリリットル添加して弱酸性の処理液とした。624デニールの生糸を軽く水洗した後に前記処理液中に浸漬して、室温から毎分3度で摂氏90度まで昇温して1分間保持した後、毎分5度で摂氏70度まで降温させた。処理後、十分な水洗によって余分に吸着した酸化チタンを洗い流した。酸化チタンを吸着させた絹糸は図1のように観察され、酸化チタンが表面に吸着されていることが確認できた。
生糸重量に対して、20重量パーセントのEMF WHITE HRを浴比1:30相当の水に分散させ、酢酸を水1リットル当たり1ミリリットル添加して弱酸性の処理液とした。624デニールの生糸を軽く水洗した後、株式会社テクサム技研製の赤外線加熱式回転ポット染色試験機UR−MINI−COLORを用いて、前記処理液中で室温から毎分3度で摂氏120度まで昇温して1分間保持した後、毎分5度で摂氏70度まで降温させた。処理後、十分な水洗によって余分に吸着した酸化チタンを洗い流した。酸化チタンを吸着させた絹糸は図2のように観察され、酸化チタンが表面に吸着されていることが確認できた。
(比較例1)
生糸重量に対して20重量パーセントのEMF WHITE HRを、浴比1:15相当の摂氏40度の水に分散させて処理液とした。624デニールの生糸を摂氏85度の熱水中に10分間浸漬してセリシンを柔らかくした後、前記処理液中に浸漬し、軽く動かして空気を追い出してそのまま3時間放置した。処理後、十分な水洗によって余分に吸着した酸化チタンを洗い流した。酸化チタンを吸着させた絹糸は図3のように観察され、酸化チタンは表面にほとんど吸着されていないことが確認された。
(耐光性評価)
実施例1、実施例2および比較例1の酸化チタンを吸着させた絹糸と生糸について、紫外線照射による変色性を評価するため、JIS L 0842に準拠して5級のブルースケールが標準退色するまでカーボンアーク灯光による露光を行った。処理前後の変色の判定は、JIS L 0801を参考にして汚染用グレースケールによる視感の判定を行った。その結果、生糸と比較例1の絹糸は3−4級相当の変色が生じたのに対し、実施例1および実施例2の絹糸は4−5級相当の比較的軽度な変色であった。これらの結果から、酸化チタンの多量な吸着が確認された実施例1および実施例2の絹糸では、紫外線遮蔽性と変色隠ぺい力による耐光性の向上が確認できた。
624デニールの生糸からセリシンの7割を取り除いた絹糸を用意するため、生糸重量に対して幸新堂化学工業所製のセリコンA、BおよびCをそれぞれ7、1および1重量パーセント溶解させた浴比1:20に相当する水浴中、摂氏55度乃至60度で20分間の処理を行った後に水洗および乾燥を行った。この絹糸の15倍量の水を摂氏90度に温めて、1リットル当たり1グラムの酢酸を添加して弱酸性とし、絹糸重量に対して10重量パーセントのEMF WHITE HRを分散させた。この分散液中に絹糸を浸漬させ、軽く動かして空気を追い出しながら摂氏70度以下にまで徐冷した後に水洗および乾燥を行った。こうして酸化チタンを吸着した絹糸に、ハイドランWLS−210を40重量パーセント含有する水溶液を塗布して摂氏90度で乾燥させ、表面に吸着している酸化チタンをウレタン系樹脂層で被覆した。
624デニールの生糸からセリシンの3割を取り除いた絹糸を用意するため、生糸重量に対して幸新堂化学工業所製のセリコンA、BおよびCをそれぞれ3、1および0.25重量パーセント溶解させた浴比1:20に相当する水浴中、摂氏55度乃至60度で20分間の処理を行った後に水洗および乾燥を行った。この絹糸の15倍量の水を摂氏90度に温めて、1リットル当たり1グラムの酢酸を添加して弱酸性とし、絹糸重量に対して10重量パーセントのEMF WHITE HRを分散させた。この分散液中に絹糸を浸漬させ、軽く動かして空気を追い出しながら摂氏70度以下にまで徐冷した後に水洗および乾燥を行った。こうして酸化チタンを吸着した絹糸に、ハイドランWLS−210を40重量パーセント、EMF YELLOW 3Gを3重量パーセント含有するメタノール/水系分散液を塗布して摂氏90度で乾燥させ、表面に吸着している酸化チタンを顔料が含有されているウレタン系樹脂層で被覆した。
図4は、実施例4の被覆した絹糸の断面模式図である。前記絹糸は、フィブロイン繊維1を包んで存在するセリシン2が一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタン3で被覆され、さらに顔料を含有するウレタン系樹脂4で被覆された構造となっている。
(耐摩耗性評価)
実施例4の顔料で着色した絹糸について、バインダー樹脂層の耐摩耗性を評価するため、JIS L 0849に準拠にして摩擦試験機II形による摩擦試験を行った。その結果、乾燥試験および湿潤試験はともに4−5級となり、摩擦用白綿布への汚染がほとんど認められなかった。これにより、絹糸を被覆した顔料を含有するウレタン系樹脂層は、繊維製品としての使用に関して十分な耐摩耗性を有することが確認できた。
(比較例2)
624デニールの生糸を摂氏80度の熱水で水洗して乾燥した後、ハイドランWLS−210を40重量パーセント、EMF BLUE HGを3重量パーセント含有するメタノール/水系分散液を塗布して摂氏90度で乾燥させた。酸化チタンが吸着していない生糸の表面は処理液とのなじみが良くないため、着色されないで白く残る部分もあり、色濃度が低く発色も悪かった。
実施例4と同様の方法で、ハイドランWLS−210とともに顔料としてEMF BLUE HGとEMF BLACK HK−3を用いて、表面に吸着している酸化チタンを顔料が含有されているウレタン系樹脂層で被覆された青色と黒色の絹糸を製作した。黒色の絹糸を経糸として1センチメートル当たり20本の密度とし、青色の絹糸を緯糸として1センチメートル当たり24本の密度として作製したジャカード織物をカーシートの表地として縫製した。
1 フィブロイン繊維
2 セリシン
3 酸化チタン
4 顔料を含有するウレタン系樹脂

Claims (7)

  1. 一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンを分散させた酸性分散液を摂氏90度乃至120度に加熱し、セリシンを含む絹繊維を前記酸性分散液に接触させた後に、摂氏70度以下に冷却することを特徴とする絹繊維の被覆方法。
  2. セリシンが一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンで被覆され、前記酸化チタンがバインダー樹脂層で被覆されていることを特徴とする、絹繊維で構成された糸、布帛又は繊維製品。
  3. セリシンが一次粒子径200ナノメートル乃至400ナノメートルの酸化チタンで被覆され、前記酸化チタンがバインダー樹脂層で被覆されており、前記バインダー樹脂層が含有する顔料で着色されていることを特徴とする、絹繊維で構成された糸、布帛又は繊維製品。
  4. 前記バインダー樹脂が、ウレタン系樹脂であることを特徴とする、請求項2又は3記載の糸、布帛又は繊維製品。
  5. 絹繊維のセリシンが、生糸の状態から3割乃至7割取り除かれていることを特徴とする、請求項1記載の絹繊維の被覆方法。
  6. 絹繊維のセリシンが、生糸の状態から3割乃至7割取り除かれていることを特徴とする、請求項2、3又は4記載の絹繊維で構成された糸、布帛又は繊維製品。
  7. 繊維製品が、自動車内装品であることを特徴とする、請求項2、3、4又は6記載の繊維製品。
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