以下、本発明に係る無線端末測定装置及び無線端末測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る無線端末測定装置1は、複数のアンテナ110を有するDUT100に複数の試験信号を入力し、DUT100から出力される複数の被測定信号に対して送受信特性などの測定を行うものである。例えば、無線端末測定装置1は、端末保持具50と、測定部51と、表示部52と、操作部53と、を備えている。
DUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びディジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。
アンテナ110は、垂直偏波や水平偏波などの直線偏波の電波を放射するようになっている。また、アンテナ110は、直線偏波の偏波方向を時間的に切り替えることが可能な構成であってもよい。
図2(a),(b)に示すように、端末保持具50は、例えば外形が方形状の誘電体材料からなり、DUT100の挿入・取り出しが可能なスロット部54と、複数の円偏波アンテナ20と、を内部に備えている。さらに、端末保持具50は、スロット部54の開口を開閉するための扉55を有していてもよい。図2(c)に示すように、DUT100が端末保持具50内に収容されて保持されることにより、DUT100の一面側に設置されたアンテナと他面側に設置されたもう一つのアンテナを含む複数のアンテナ110と複数の円偏波アンテナ20との位置関係が固定されるようになっている。
図3(a),(b)は、それぞれ図2(c)のA−A線断面図とB−B線断面図である。これらの図に示すように、端末保持具50は、円偏波アンテナ20をDUT100のアンテナ110の放射面に対して所定角度傾けて保持するための保持部56を有している。なお、端末保持具50の内壁面50aには、DUT100のアンテナ110又は円偏波アンテナ20で発生する電磁波が端末保持具50の外に漏洩するのを防止するための電波吸収体が貼り付けられていることが望ましい。
あるいは、端末保持具50は、複数の円偏波アンテナ20が取り付けられた留め具のような構成であってもよい。この場合には、端末保持具50でDUT100を挟むことにより、DUT100の複数のアンテナ110と複数の円偏波アンテナ20との位置関係が固定される。
図1に示すように、測定部51は、信号送信部61と、信号受信部62と、解析処理部63と、切替部64と、記憶部65と、試験制御部66とを備えており、DUT100に対して送信電波の出力レベルや受信感度などに関する測定を行うようになっている。
信号送信部61は、端末保持具50により保持されたDUT100に、複数の円偏波アンテナ20及びDUT100の複数のアンテナ110を介して同時に複数の試験信号を出力するようになっている。
信号受信部62は、複数の試験信号が入力されたDUT100から出力される複数の被測定信号を、DUT100の複数のアンテナ110及び複数の円偏波アンテナ20を介して受信するようになっている。
解析処理部63は、信号受信部62により受信された複数の被測定信号に対して、DUT100の通信規格に対応した解析処理を行うようになっている。解析処理部63が行う解析処理の具体例としては、変調精度(EVM)、送信パワーレベル、送信スペクトラムマスク、エラーベクトル振幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射の測定などが挙げられる。
さらに、解析処理部63は、MIMOの受信試験に関する解析処理として、最小入力感度、最大入力レベル、隣接チャネル除去、非隣接チャネル除去などを実行することができる。
なお、上記の試験信号は、本実施形態の無線端末測定装置1に対してDUT100を呼接続状態とするなどの、DUT100の通信規格に対応した各種制御を行うための制御信号を含むものとする。また、上記の被測定信号は、本実施形態の無線端末測定装置1から出力された試験信号に対するDUT100からの応答信号や、当該試験信号とは無関係にDUT100から出力される送信信号である。
切替部64は、信号送信部61から出力される試験信号の出力周波数を通過させる広帯域の方向性結合器であり、例えばウィルキンソン型の分配器で構成される。切替部64は、円偏波アンテナ20と同軸ケーブルで接続されており、信号送信部61から出力された試験信号を円偏波アンテナ20に入力するとともに、円偏波アンテナ20で受信されたDUT100からの被測定信号を信号受信部62に入力することが可能となっている。
試験制御部66は、例えばCPU、記憶部65を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、測定部51を構成する上記各部の動作を制御する。
なお、信号送信部61、信号受信部62、及び解析処理部63は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、あらかじめ記憶部65に記憶された所定のプログラムが試験制御部66により実行されることによりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、信号送信部61、信号受信部62、及び解析処理部63は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。なお、試験制御部66は、新たなプログラム、あるいはバージョンを変更したプログラムを外部から受けて、記憶部65への追加又は更新を行うこともできる。
表示部52は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、試験制御部66からの制御信号に基づいて、測定結果の表示や、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
操作部53は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部52の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部53は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部53は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部53による入力操作は、試験制御部66により検知されるようになっている。ユーザは、操作部53を用いて、複数の通信規格の中からDUT100が対応している通信規格を選択できるようになっている。
以下、円偏波アンテナ20の構成について説明する。図4から図8は、円偏波アンテナ20の基本構造を示している。
すなわち、図4は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す斜視図である。また、図5(a),(b)は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す正面図である。また、図6は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す背面図である。また、図7(a)は、図5(a)の4A−4A線拡大断面図である。また、図7(b)は、図5(a)の変形例における4B−4B線拡大断面図である。また、図8は、図5(a)の5−5線拡大断面図である。
本実施形態における円偏波アンテナ20は、基本的には、図4から図8に示すように、誘電体基板21と、誘電体基板21の一面21a側に重合される地板導体22と、誘電体基板21の反対面21bに形成され、所定の偏波の回転方向を有する円偏波型のアンテナ素子23と、を有している。
さらに、地板導体22を挟んだ誘電体基板21の反対側には、アンテナ素子23に励振信号を給電するための給電部26が形成されている。給電部26は、給電用誘電体基板27と、給電用誘電体基板27の地板導体22と反対側の表面に形成され、地板導体22をアースとするマイクロストリップ線路の給電ライン28と、を有する。
上記の誘電体基板21及び給電用誘電体基板27としては、準ミリ波帯で低損失のRO4003(Rogers社)などの材料を用いることができる。
この誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の材質としては、低損失で誘電率が2〜5程度の材料であれば使用可能であり、例えば、ガラスクロステフロン基板や各種熱硬化樹脂基板が候補となる。例えば、図7(a)に示す構成では、誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の誘電率をいずれも3.62とし、誘電体基板21の高さh1を1.1mm、給電用誘電体基板27の高さh2を0.3mmなどとすることができる。
アンテナ素子23は、誘電体基板21の反対面21b側に、例えば、パターン印刷技術によって形成された右巻き矩形スパイラル(図5(a)参照)又は左巻き矩形スパイラル(図5(b)参照)の不平衡型のアンテナである。
また、円偏波アンテナ20は、アンテナ素子23のスパイラル中心側の側端部(給電点)に一端が接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に貫通して地板導体22の穴22aを非導通に通過し、更に給電部26を構成する給電用誘電体基板27を貫通してその表面に他端側を突出させる給電ピン(feed pin)25を有している。
なお、給電部26は、上記のマイクロストリップ線路の構成に限定されず、不平衡型の給電線、例えば、同軸ケーブルや、地板導体22をアースとするコプレーナ線路あるいはマイクロストリップ線路等により給電ピン25の他端側から給電される構成であればよい。図5(a)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が左回りの円偏波(left hand circular polarization:LHCP)の電波を放射することができる。一方、図5(b)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が右回りの円偏波(right hand circular polarization:RHCP)の電波を放射することができる。なお、図6以降の図面では、特に断りのない限り主偏波がLHCPの構成のみを示す。
ただし、これだけの構造のみによる円偏波アンテナでは、誘電体基板21の表面に沿った表面波が励振されるため、その表面波の影響によって円偏波アンテナとして所望の特性が得られない。
そこで、本実施形態の円偏波アンテナ20では、誘電体基板21の表面に沿った表面波の励振を抑制するための構造として、上記構造に加えて、図7(a)、図8に示しているように、複数の金属ポスト30によって構成されるキャビティ構造を採用している。
具体的には、例えば円柱状の複数の金属ポスト30は、それぞれの一端側が地板導体22に接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に沿って貫通し、かつそれぞれの他端側が誘電体基板21の反対面21bまで延びて、アンテナ素子23を囲むように所定間隔で設けられることにより、キャビティを構成する。
さらに、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記キャビティ構造に加えて、誘電体基板21の反対面21b側に、複数の金属ポスト30の各他端側をその並び方向に沿って順次短絡し、かつ各金属ポスト30との接続位置からアンテナ素子23方向に所定距離延びて設けられる枠状導体32を備えている。
そして、本実施形態の円偏波アンテナ20では、このキャビティ構造と、枠状導体32との相乗効果によって、表面波を抑圧することができるようにしている。つまり、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記のキャビティ構造と枠状導体32とを備えることにより、従来の一般的な平面アンテナと比較して、アンテナ側面からの電波の漏れを大幅に抑制することができる。
なお、複数の金属ポスト30は、図7(b)に示すように、誘電体基板21を貫通する複数の穴301を形成し、この複数の穴301の内壁にメッキ加工(スルーホールメッキ)することによって複数の中空状の金属ポスト30′として実現することもできる。
この場合、スルーホールメッキによる複数の中空状の金属ポスト30′の下端部は、誘電体基板21の一面21a側にパターン印刷技術によって形成されるランド302を介して地板導体22に接続されるようになされている。
以下、上記のキャビティ構造と枠状導体32とによる表面波抑圧の効果を説明するために、各部の構造パラメータと、当該構造パラメータを変えて得られた円偏波アンテナ20の特性についてのシミュレーション結果について説明する。
まず、各部の構造パラメータとなり得る要素について説明する。
この円偏波アンテナ20の使用周波数はK及びKaバンド帯の18〜40GHzであり、アンテナ素子23の方形スパイラルは、基本長をa0とし、該a0並びにその任意倍数の長さの線路を90度の角度ごとに配置して構成する。
このような方形スパイラルの典型的な例を図9(a)に示す。すなわち、この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0を0.45mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0、2a0、3a0、3a0、4a0、4a0の線路長とし、最終線路長を3a0とし、全体で9巻き(nine−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
また、図9(b)に示す方形スパイラルは、図9(a)における基本長a0よりも長くした基本長a0′とし、巻数を減らした場合である。
この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0′を0.7mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0′、2a0′、3a0′、3a0′、4a0′の線路長とし、最終線路長を約1.5a0′とし、全体で8巻き(eight−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
この場合、最終線路長は、円偏波の軸比(axial ratio)や反射特性を最適化するように約1.5a0′に選んである。
なお、以下の説明及び実施形態では、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23として方形スパイラルの例を示している。
しかるに、図10に示すように、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23としては、方形スパイラルに代えて、円形スパイラルのアンテナ素子23を用いることもできる。
この図10に示す円形スパイラルのアンテナ素子23は、例えば、基準点からの半径初期値SR=0.2mm、素子幅W=0.35mm、スパイラル間隔d=0.2mm、巻き数2.125の円形スパイラルによるアンテナ素子23の場合であり、このような円形スパイラルによるアンテナ素子23を円偏波アンテナ20に用いた場合でも、上述した方形スパイラルのアンテナ素子23を用いた場合とほぼ同等の結果が得られている。
また、誘電体基板21の外形はアンテナ素子23のスパイラル中心を中心とする正方形で、図5(a),(b)に示すように、その一辺の長さをL(以下、外形長と記す)とし、キャビティの外形もこれと同心の正方形としている。
また、キャビティは、図7(a),(b)に示すように、その内寸をLwとしている。さらに、枠状導体32には、キャビティ内壁から内側へ延びる所定幅(以下、リム幅と記す)LRを有するリムが設けられている。
また、キャビティを形成する複数の金属ポスト30の直径は、それぞれ、0.3mmであり、各金属ポスト30の間隔は0.9mmである。
図11は、複数の金属ポスト30によるキャビティ及び枠状導体32を設けない場合における垂直面(図4、図5でyz面)の放射特性についてのシミュレーション結果を示している。
図11において、F1、F1′は、外形長L=18mmのときの主偏波(左回り円偏波:LHCP)と交差偏波(右回り円偏波:RHCP)の特性であり、F2、F2′は、外形長L=24mmのときの主偏波と交差偏波の特性である。
ここで、円偏波アンテナとして要求される放射特性は、主偏波については0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性であり、交差偏波(完全な円偏波であればゼロである)については、広い角度範囲において主偏波より十分低い放射強度となる必要がある。
これに対し、図11の主偏波の特性F1、F2は、共に非対称で利得に大きな暴れがあり、また、交差偏波についてみれば、−60°、−40°の近傍で主偏波と同等又はそれに近い放射レベルになっていることが分かる。
このような放射特性の乱れは、前記した表面波の影響によって発生している。
図12は、複数の金属ポスト30によって内寸Lw=9mmのキャビティを設け、更にリム幅LR=1.2mmの枠状導体32を設けたときの、外形長L=18mm及びL=24mmにした場合の主偏波の特性F3、F4と交差偏波の特性F3′、F4′についてのシミュレーション結果を示している。
この図12から明らかなように、主偏波の特性F3、F4は、0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性となり、交差偏波の特性F3′、F4′についても、広い角度範囲において主偏波F3、F4より十分低い放射強度で緩慢な変化となっており、前記した円偏波アンテナとして要求される所望の特性が得られていることが分かる。
また、各部の構造パラメータを変えて行った前記と同様の幾つかの各種の放射特性についてのシミュレーションの結果、枠状導体32が無い場合の放射特性は、誘電体基板21の外形長Lとキャビティ内寸Lwに対する依存性を示し、概略的な傾向を言えば、外形長Lが大きい(L=24,18mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで大きくなるにつれて主偏波特性は3峰形から単峰形に近づくことが判明している。
また、誘電体基板21の外形長Lが比較的小さい(L=12mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで間で大きくなるにつれて主偏波特性は双峰形から単峰形に近づくことが判明している。
しかし、いずれの場合でも、交差偏波の暴れが大きく使用角度範囲内いずれかにおいて主偏波成分との差が小さくなり、偏波選択性が低く、上記図12のような所望の特性には至らないことが判明している。
なお、リム幅LRの1.2mmは、誘電体基板21の表面に沿って伝播する表面波の波長のほぼ1/4に相当している。つまり、このリム幅LR=1.2mmの部分は、その先端側からポスト壁側を見たとき、表面波に対してインピーダンスが無限大となるλg/4(λgは管内波長)の長さの伝送路を形成する。
したがって、誘電体基板21の表面に沿った電流が流れないことになり、この電流阻止作用によって表面波の励振が抑圧され、放射特性の暴れを防いでいることになる。
よって、円偏波アンテナ20を上記した以外の他の周波数帯に適用する場合には、その周波数に応じてリム幅LRを変更設定すればよい。
ところで、本実施形態の円偏波アンテナ20は、誘電体基板21に、複数の金属ポスト30によるキャビティと枠状導体32を設けることによって共振器を構成し、この共振器をアンテナ素子23で励振していると考えることができる。
本実施形態の円偏波アンテナ20は、共振器を構成しているので、共振周波数が存在し、その共振周波数では円偏波アンテナ20の入力インピーダンスが非常に大きくなり、放射をしなくなる。
この場合、共振器の共振周波数は、共振器と円偏波のアンテナ素子23との構造パラメータで決まる。
この構造パラメータは、前述したように、キャビティの内寸Lw、リム幅LRのほか、アンテナ素子23の巻数、アンテナ素子23の基本長a0、アンテナ素子23の素子幅Wなどである。
したがって、アンテナ利得の周波数特性は、前記共振周波数付近で急激に深い落ち込み(ノッチ)が生じることになる。この共振周波数は、上記の構造パラメータを調整することにより、所望の値に設定することが可能である。
図13(a),(b)は、本実施形態の無線端末測定装置1における複数の円偏波アンテナ20とDUT100の複数のアンテナ110との位置関係の一例を示している。複数の円偏波アンテナ20は、DUT100の一面に対向する位置に配置されて、DUT100の一面側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第1円偏波アンテナ20aと、DUT100の他面に対向する位置に配置されて、DUT100の他面側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第2円偏波アンテナ20bと、に分類される。
すなわち、第1円偏波アンテナ20aは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の一面に対向する。また、第2円偏波アンテナ20bは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の他面に対向する。
各円偏波アンテナ20の反対面21bは、DUT100の各アンテナ110の放射面110aに対して平行ではなく、傾斜角度θだけ傾いている。つまり、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面又は他面の法線と、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線は交差している。
ここで、各アンテナ110の放射面110aの法線N2と、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面又は他面の法線とは平行である。また、各アンテナ110の放射方向は、各アンテナ110の放射面110aの法線方向である。
また、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線N1と、各円偏波アンテナ20の放射面の法線は平行である。また、各円偏波アンテナ20の放射方向は、各円偏波アンテナ20の放射面の法線方向である。
すなわち、図13(a)に示すように、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向は、円偏波アンテナ20の反対面21bの法線方向N1に対して平行ではない。このため、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されて端末保持具50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での被測定信号の多重反射が抑制される。
同様に、図13(b)に示すように、円偏波アンテナ20のアンテナ素子23から放射される試験信号の放射方向は、アンテナ110の放射面110aの法線方向N2に対して平行ではない。このため、円偏波アンテナ20から放射される試験信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されて端末保持具50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での試験信号の多重反射が抑制される。
円偏波アンテナ20は、アンテナ110から送信される被測定信号の直線偏波の偏波方向がいかなる方向であっても、被測定信号を良好に受信することができるように構成されている。また、円偏波アンテナ20は、自身と偏波の回転方向が異なる円偏波アンテナからの信号を受信しにくい特性がある。
本実施形態においては、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとでは偏波の回転方向が異なっている。例えば、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をRHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をLHCPとすることができる。あるいは、逆に、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をLHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をRHCPとすることができる。
このように、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向を異ならせることにより、図13(b)のように複数の円偏波アンテナ20から同時に複数の試験信号が送信される場合に、ある円偏波アンテナ20から送信された試験信号がDUT100を挟んで対向する他の円偏波アンテナ20で受信されることを抑制することができる。
なお、端末保持具50内での円偏波アンテナ20の配置箇所及び個数は、図2、図3、及び図13に示した例に限定されない。
以下、本実施形態における円偏波アンテナ20のS11とS21の測定結果について説明する。
ここで、円偏波アンテナ20から放射される電磁界の領域のうち、円偏波アンテナ20に近接する領域は、放射に寄与しない電磁界成分が主となるリアクティブ近傍界領域と呼ばれ、円偏波アンテナ20の放射面からの距離によって指向性の変化がない領域は放射遠方界領域と呼ばれる。また、リアクティブ近傍界領域と放射遠方界領域の間の領域は放射近傍界領域と呼ばれる、距離に応じて指向性が変化する領域である。
放射近傍界領域は、円偏波アンテナ20の開口長Dに対し、円偏波アンテナ20の放射面から下記の式(1)を満たす距離R離れた位置として規定される。ここで、λは自由空間波長である。
例えば、円偏波アンテナ20の開口長Dが13mmであるとすると、例えば28GHzにおける放射近傍界領域の範囲Rは、式(1)より8.9mm〜31.6mmとなる。以降に示す測定結果は、放射遠方界領域に比べて伝搬損失の小さい放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域で行われたものである。
図14(a)に示すように、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20を、給電ライン28の延伸方向が揃う向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)を平行に向かい合わせた状態(以下、「0°の対向状態」とも称する)において、信号分析装置70を用いてS11とS21を測定した結果を図15及び図16に示す。
また、図14(b)に示すように、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20を、給電ライン28の延伸方向が垂直になる向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)を平行に向かい合わせた状態(以下、「90°の対向状態」とも称する)において、信号分析装置70を用いてS11とS21を測定した結果を図17及び図18に示す。
ここで、信号分析装置70は、例えばネットワークアナライザ、又は、トラッキングジェネレータ機能付シグナルアナライザにより構成される。ここでのS11とS21の測定は、2つの円偏波アンテナ20間の距離を2cmにした状態で計5回行われたものである。ただし、1回の測定が終わるごとに2つの円偏波アンテナ20を無限大とみなせる距離だけ離した後に、次の回の測定が行われている。
図15〜図18から、5回の測定で得られたS11とS21の周波数特性はグラフ上でほぼ重なっており、S11とS21のいずれについても再現性の高い測定結果が得られたことが分かる。なお、図18の90°の対向状態では28GHz付近のS21の凹みが見られるが、これは2つの円偏波アンテナ20間で逆位相の信号成分同士が打ち消し合うような多重反射が発生したことにより、振幅誤差が現れたものと考えられる。
図19及び図20は、0°の対向状態において、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度θを変化させた場合のS21の測定結果を示すグラフである。ここで、2つの円偏波アンテナ20間の距離とは、各円偏波アンテナ20の誘電体基板21の反対面21bにおいて給電ピン25の中心軸が交わる位置間の距離であるとする。
図19(a)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1cmとし、傾斜角度θを0°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すように25.5GHz付近に振幅誤差による凹みが見られる。
図19(b)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1cmとし、傾斜角度θを5°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すようにθ=0°の場合に見られた25.5GHz付近の凹みが大幅に改善していることが分かる。
図20(a)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1.5cmとし、傾斜角度θを0°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すように27.3GHz付近に振幅誤差による凹みが見られる。
図20(b)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1.5cmとし、傾斜角度θを5°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すようにθ=0°の場合に見られた27.3GHz付近の凹みが消失していることが分かる。
図21は、主偏波の回転方向が同一である2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21と、主偏波の回転方向が異なる2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21を信号分析装置70を用いて測定した結果を示すグラフである。
ここでのS21の測定は、2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度をそれぞれ2cmと5°にした状態で行われたものである。また、図14(a)に示すように、2つの円偏波アンテナ20は、給電ライン28の延伸方向が揃う向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)が向かい合った状態となっている。
図21のグラフから、主偏波が共にRHCPである2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21(実線)と比較して、主偏波がRHCPとLHCPである2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21(破線)は、23GHz以上の周波数範囲で20dB程度低く、良好なアイソレーション性能を示していることが分かる。
本実施形態の無線端末測定装置1においては、主偏波の回転方向が異なる第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bがDUT100を挟んで対向しているため、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとの間で更に良好なアイソレーション性能を得ることができる。
さらに、図14(a)に示した測定系において、2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度をそれぞれ2cmと5°にした場合の28.5GHzにおける残留EVMは図22に示すようになった。すなわち、測定系A,Bのように2つの円偏波アンテナ20の主偏波がいずれもRHCPである場合には、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス内に入れて測定した場合と、シールドボックス外で測定した場合とで、残留EVMの値に変化は見られなかった。また、測定系C,Dのように2つの円偏波アンテナ20の一方の主偏波がLHCPであり、他方の主偏波がRHCPである場合にも、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス内に入れて測定した場合と、シールドボックス外で測定した場合とで、残留EVMの値に変化は見られなかった。
さらに、測定系A〜Dにおいて2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21を測定したところ、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス内に入れて測定した場合と、シールドボックス外で測定した場合とで、伝送特性S21に変化は見られなかった。
以上のことから、本実施形態の無線端末測定装置1の端末保持具50内においても、複数の円偏波アンテナ20による反射波が振幅誤差をもたらさないことが分かる。
以下、本実施形態に係る無線端末測定装置1を用いる無線端末測定方法について、図23のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
まず、ユーザにより、DUT100が端末保持具50に保持される(ステップS1)。
次に、測定部51の信号送信部61は、複数の円偏波アンテナ20及びDUT100の複数のアンテナ110を介してDUT100に同時に複数の試験信号を出力する(信号送信ステップS2)。
次に、測定部51の信号受信部62は、複数の試験信号が入力されたDUT100から出力された複数の被測定信号を、DUT100の複数のアンテナ110及び複数の円偏波アンテナ20を介して受信する(信号受信ステップS3)。
次に、測定部51の解析処理部63は、信号受信ステップS3で受信された複数の被測定信号に対して、DUT100の通信規格に対応した解析処理を行う(解析処理ステップS4)。
以上説明したように、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100を挟んで対向する第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向が異なっているため、対向する円偏波アンテナ20間にシールド材などの信号を遮断する物体を設置することなく、対向する円偏波アンテナ20間のアイソレーション性能を保つことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向が、円偏波アンテナ20の反対面21bの法線方向に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における被測定信号の多重反射を低減することができる。すなわち、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を抑制して、DUT100に対する測定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、円偏波アンテナ20のアンテナ素子23から放射される試験信号の放射方向が、アンテナ110の放射面の法線方向に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における試験信号の多重反射を低減することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、円偏波アンテナ20の反対面21bが、アンテナ110の放射面に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における被測定信号及び試験信号の多重反射を低減することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1が備える円偏波アンテナ20では、誘電体基板21を貫通する金属ポスト30を、アンテナ素子23を囲むように並べてキャビティ構造とし、さらに、この金属ポスト30の先端を並び方向に沿って短絡し、かつアンテナ素子23方向に所定距離延びた枠状導体32を設けている。これにより、円偏波アンテナ20は、表面波の発生を抑制でき、アンテナの放射特性を所望の特性にすることができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、円偏波アンテナ20を用いているため、アンテナ110から放射される被測定信号の直線偏波(例えば、垂直偏波や水平偏波)の向きに関わらず精度の良い測定が可能である。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、近接での測定を行うものであるため、電波暗室(チャンバー)を使用しなくても精度の良い測定が可能である。
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る無線端末測定装置2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の動作についても適宜説明を省略する。
図24に示すように、本実施形態の無線端末測定装置2は、ベルトコンベア(搬送部)81と、測定ボックスとしての電磁波シールドボックス82と、駆動制御部83と、測定部51と、表示部52と、操作部53と、を備えている。
電磁波シールドボックス82は、DUT100が搬送されるための入口82a及び出口82bを有し、搬送路81aの少なくとも一部を含む空間を覆うようになっている。また、電磁波シールドボックス82は、DUT100のアンテナ110と空間的に結合される複数の円偏波アンテナ20(第1円偏波アンテナ20a及び第2円偏波アンテナ20b)と、検知部84と、を内部に収容するようになっている。
複数の円偏波アンテナ20は、DUT100の全体が後述する通信可能領域Rに搬送された状態で、反対面21bがDUT100の各アンテナ110の放射面110aに対して傾斜角度θだけ傾くとともに、第1円偏波アンテナ20a及び第2円偏波アンテナ20bでDUT100を挟んだ状態になるように、電磁波シールドボックス82内に配置されている。
さらに、電磁波シールドボックス82は、搬送路81aの上方に設けられ、DUT100の複数のアンテナ110又は複数の円偏波アンテナ20で発生する電磁波が入口82a及び出口82bから漏洩するのを防止する電磁波吸収材を含む電磁波吸収部85a,85bを備える。
検知部84は、例えば、光線を出射する光源と、光源が出射する光線を受光する受光器とを有し、光源が光線を出射している間に受光器がこの光線を受光できなくなったことを検出するいわゆる投受光器等の構成を有しており、DUT100の電磁波シールドボックス82内への進入を検知できるようになっている。また、検知部84は、DUT100を検知したときに、DUT100を検知したことを示す検知信号を、後述の駆動制御部83の判断部132に出力するようになっている。
駆動制御部83は、例えばCPU、記憶部133を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、記憶部133にあらかじめ記憶された所定のプログラムを実行することにより、搬送制御部131及び判断部132をソフトウェア的に構成するようになっている。
搬送制御部131は、ベルトコンベア81を駆動制御するようになっており、判断部132から出力された制御信号に応じて、搬送速度を変化させることが可能となっている。なお、搬送速度は常に一定であってもよい。
記憶部133は、DUT100のサイズの情報、DUT100の通信可能領域Rの情報などを記憶している。ここで、通信可能領域Rは、DUT100の各アンテナ110と各円偏波アンテナ20が十分な強度で空間的に結合できる領域であって、かつ、後述の電磁波吸収部85a,85bが閉状態を維持できる領域として設定される。
判断部132は、検知部84から出力される検知信号、搬送制御部131から出力されるDUT100の搬送速度の情報、記憶部133に記憶されたDUT100の情報に基づいて、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されているか否かを判断するようになっている。例えば、判断部132は、検知部84から検知信号が出力された時点から、DUT100の全体が通信可能領域Rに収まるまでに要する時間、及び、DUT100の少なくとも一部が通信可能領域Rの外に出るまでに要する時間を割り出すことで上記の判断を行うことができる。
また、既に述べたように、判断部132は、搬送速度を変化させるための制御信号を搬送制御部131に出力するようになっていてもよい。例えば、判断部132は、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されている場合のベルトコンベア81による搬送速度を、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていない場合の搬送速度よりも遅くする制御信号を出力してもよい。
あるいは判断部132は、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されている場合に、ベルトコンベア81による搬送を所定時間停止させ、搬送速度を所定時間ゼロとする制御信号を出力してもよい。
なお、上述の検知部84は撮像装置で構成されていてもよく、この場合には判断部132は、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されているか否かを画像処理で分析するものであってもよい。
信号送信部61は、駆動制御部83の判断部132によってDUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていると判断されたことを条件として、ベルトコンベア81が搬送するDUT100に、複数の円偏波アンテナ20及びDUT100の複数のアンテナ110を介して同時に複数の試験信号を出力するようになっている。
信号受信部62は、駆動制御部83の判断部132によってDUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていると判断されたことを条件として、複数の試験信号が入力されたDUT100から出力される複数の被測定信号を、DUT100の複数のアンテナ110及び複数の円偏波アンテナ20を介して受信するようになっている。
信号送信部61及び信号受信部62が上記のように制御されることにより、DUT100が電磁波シールドボックス82内に収容されている時間内に性能試験が完了するようになっている。
図25は、DUT100の搬送方向(Y方向)に沿った、ベルトコンベア81及び電磁波シールドボックス82の断面図である。ベルトコンベア81は、例えば無端状のベルト111を複数対の搬送ローラ112a,112b,113a,113bに巻回し、そのベルト111の上走部の搬送路81a内で、DUT100を電磁波シールドボックス82の入口82a側から出口82b側へ搬送するようになっている。
また、ベルトコンベア81は、ベルト111を回転させるためのモータ114を、搬送ローラ112bの軸線方向一端部に備えている。モータ114は、搬送制御部131によって駆動制御されるようになっている。
図26及び図27は、電磁波シールドボックス82における電磁波吸収部85a,85bの配置例を示す斜視図である。図26は、電磁波シールドボックス82の入口82a及び出口82bをベルト111が搬送方向に通過する構成を示している。一方、図27は、電磁波シールドボックス82が底面に開口部を有しており、ベルト111がその開口部を常に塞ぐ形で搬送方向に通過する構成を示している。
ここで、電磁波シールドボックス82の筐体120は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金などの導電性の金属から成っており、電磁波シールド機能を有する。電磁波シールドボックス82は、これらの材質の金属の板に対して折り曲げなどの加工を行うことによって製造できるが、軽量化、省資源化のためにこれらの材質の板にパンチングによる穴あけを行なってもよい。あるいは、始めから板の代わりに網状の材料を採用してもよい。なお、穴や網目の大きさは、DUT100が出力する被測定信号の電波の波長よりも十分に小さければ(例えば1/10波長以下)、電磁波シールドボックスとしての遮蔽性能を保つことができる。
ベルト111は、布やゴムに導電性の物質や金属の粒子を混合した導電性のベルトであることが好ましい。また、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金のシートをコンベアに使用可能な弾力性を確保する構造に加工してベルトとしてもよい。あるいは、上述の金属の網状の構造を、コンベアに使用される布やゴムに積層するようにしてベルトとしてもよい。
なお、図26の構成においては、電磁波シールドボックス82と、導電性の電磁波吸収部85a,85bにより遮蔽が十分に確保されていれば、ベルト111は必ずしも金属製でなくてもよい。一方、図27の構成においては、導電性のベルト111と電磁波シールドボックス82の間が、導電性のスライダー等を介して良好に導電可能に接触している必要がある。
電磁波吸収部85a,85bは、DUT100が電磁波シールドボックス82の入口82a又は出口82bを通過している場合に入口82a又は出口82bを開状態とし、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内に搬送された場合に入口82a及び出口82bを閉状態とするようになっている。
電磁波吸収部85a,85bは、図26及び図27に示すように、ベルトコンベア81がDUT100を搬送する搬送方向(Y方向)に直交する水平方向(X方向)に複数の短冊状に設けられた電磁波遮蔽部材から成る。この電磁波遮蔽部材は、例えば、布やゴムに導電性の物質や金属の粒子を混合したもの、あるいは、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金のシートから成る。このように構成された電磁波吸収部85a,85bは、筐体120の入口82a及び出口82bを塞ぐように筐体120に吊り下げられて設けられている。
電磁波吸収部85a,85bの他の例としては、図28及び図29に示すように、搬送方向(Y方向)に直交する水平方向(X方向)を軸として揺動可能な金属板(図28)や、搬送方向(Y方向)に直交する垂直方向(Z方向)にスライド可能な金属板(図29)が挙げられる。これらの金属板は、任意の検知手段から出力されるDUT100の検知情報に基づいて、任意の駆動装置で駆動されるようになっている。
なお、電磁波シールドボックス82内での円偏波アンテナ20の配置箇所及び個数は、図24〜図29に示した例に限定されない。例えば、電磁波シールドボックス82のDUT100の搬送方向に複数の区画を連続的に設け、それぞれの区画に複数の円偏波アンテナ20が配置される構成とすることも可能である。
以下、本実施形態に係る無線端末測定装置2を用いる無線端末測定方法について、図30のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
まず、駆動制御部83の搬送制御部131は、DUT100を搬送路81a内で搬送する(搬送ステップS11)。
次に、駆動制御部83の判断部132は、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されているか否かを判断する(判断ステップS12)。図31(a)に示すように、DUT100が電磁波シールドボックス82の入口82aを通過中の状態では、検知部84がDUT100を検知しておらず、判断部132はDUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていないと判断する。
一方、図31(b)に示すように、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82の入口82aを通過し、電磁波吸収部85a,85bが閉状態となった状態では、検知部84から出力される検知信号、搬送制御部131から出力されるDUT100の搬送速度の情報、駆動制御部83の記憶部133に記憶されたDUT100の情報に基づいて、判断部132はDUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていると判断する。
次に、測定部51の信号送信部61は、判断ステップS12によってDUT100の全体が通信可能領域Rに搬送されていると判断されたことを条件として、ベルトコンベア81が搬送するDUT100に、複数の円偏波アンテナ20及びDUT100の複数のアンテナ110を介して同時に複数の試験信号を出力する(信号送信ステップS13)。
次に、測定部51の信号受信部62は、判断ステップS12によってDUT100の全体が通信可能領域Rに搬送されていると判断されたことを条件として、複数の試験信号が入力されたDUT100から出力された複数の被測定信号を、DUT100の複数のアンテナ110及び複数の円偏波アンテナ20を介して受信する(信号受信ステップS14)。
次に、測定部51の解析処理部63は、信号受信ステップS14で受信された複数の被測定信号に対して、DUT100の通信規格に対応した解析処理を行う(解析処理ステップS15)。
つまり、電磁波吸収部85a,85bが閉状態、かつ、DUT100が通信可能領域Rに搬送されている場合にのみ、円偏波アンテナ20とDUT100のアンテナ110との間で信号の送受信が行われるようになっている。
なお、図31(c)に示すように、DUT100が電磁波シールドボックス82の出口82bを通過中であり、出口82b側の電磁波吸収部85bが開状態となった状態では、上述の検知信号、DUT100の搬送速度の情報、DUT100の情報に基づいて、判断部132はDUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の通信可能領域Rに搬送されていないと判断する。なお、このとき同時に電磁波シールドボックス82の入口82aを他のDUT100が通過中であることが測定効率の点から望ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る無線端末測定装置2は、DUT100の全体が電磁波シールドボックス82内の所定領域に搬送されていることを自動的に判断してDUT100に対する性能試験を開始するため、多様な無線端末に対して性能試験を実行し、その試験時間を大幅に短縮することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置2は、DUT100と測定装置とをケーブルで接続する必要や、DUT100を手作業で電磁波シールドボックス82内に出し入れする必要がなくなるため、DUT100の試験時間を大幅に短縮することが可能となる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置2は、ケーブル接続用の専用の治具が不要となるため、多品種の無線機器を製造している工場において測定器を共用化でき、試験コストの軽減が可能となる。
なお、本発明の範囲には、本実施形態における測定部51及びベルトコンベア81が、互いに独立した測定装置及び搬送装置として動作可能であり、これらが駆動制御部83の機能を含む外部制御装置で制御される構成も含まれる。
なお、本実施形態に係る無線端末測定装置2において、電磁波シールドボックス82の代わりに、電磁波シールド機能を有さない測定ボックスを使用しても、DUT100のアンテナ110及び円偏波アンテナ20が近接した配置で測定するため、電磁波の漏洩は十分に防止されている。本実施形態に係る無線端末測定装置2は、電磁波シールドボックス82や、電磁波吸収部85a,85bを有することで、更に電磁波遮蔽の効果を得ることができる。