JP2019096638A - 電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
Description
本発明では、弁作用金属の中から、酸化膜の比誘電率に優れるチタンを選択し、さらにチタンと同族のジルコニウムとの合金が、鉄などの不純物の存在比を低減することで合金組成のバラツキが少なく、優れた漏れ電流特性を達成できることを見出した。
陽極体としてのTi−Zr合金中の鉄系金属の総量は、50ppm以下であることがより好ましい。
なお、合金中の鉄系金属としては、鉄の含有量が最も多く、鉄の含有量が鉄系金属の総量となることがある。
合金塊の粉末化には、公知の粉砕機が使用でき、ボールミルやビーズミル等の粉砕媒体を使用する装置が挙げられる。これらの粉砕機には、鉄系金属の汚染を抑制するため、例えば、Ti−Zr合金よりも硬度の高い、ジルコニア(ZrO2)製のタンク、粉砕媒体を使用することが好ましい。得られる粉末の粒径については特に制限はないが、100μm以下が好ましく、10μm以下が好ましい。また、ナノ粒子までの粉砕は必要はなく、サブミクロン(0.1μm:100nm)までの粉砕で十分である。
多孔質焼結体作製時の高温熱処理において、チタン−ジルコニウム合金の変態温度以上の温度で熱処理すると結晶粒界部分に鉄が濃縮される。しかし、本発明のように、合金中の鉄系金属濃度を100ppm以下とすれば、鉄の結晶粒界への偏析が低減される。その結果、陽極酸化により形成された酸化皮膜の皮膜破壊が抑制され、欠陥の無い均質な酸化皮膜を形成することが可能になり、電解コンデンサの漏れ電流が改善される。
さらに、チタンまたはジルコニウムと鉄との親和性の違いにより、合金中の鉄の濃度を100ppm未満とすればチタン−ジルコニウム合金の微視的なばらつきが低減されることが判明した。これにより、電解コンデンサの静電容量のばらつきが抑制される。本発明では、チタン−ジルコニウム合金(陽極体)中のチタン組成比率の最大値と最小値の差分が10パーセントポイント(ppt)以下であることが好ましく、5ppt以下がより好ましい。当該組成比率は任意の5カ所で測定することで全体的な組成比率と見なすことができる。
合金中に含まれる鉄以外の鉄系金属(ニッケル、クロム)についても同様の効果が得られることを確認している。
誘電体は、陽極酸化処理により形成される、酸化皮膜からなる。該誘電体の膜厚は、所望の静電容量が得られるように適宜決定されるが、導電性高分子を電解質に用いる場合、5nm以上、1000nm以下のときに、電解質層形成後の漏れ電流が低くなる。酸化皮膜の膜厚は、陽極酸化の処理電圧と陽極の組成により決定されるが、Zrの原子比率が20%以上の場合には、陽極酸化処理電圧が3V以上、500V以下であるときに、数時間の処理で膜厚を5nm以上、1000nm以下とすることができる。誘電体の膜厚は、薄くなるほど静電容量が高くなり、厚くなるほど高電圧での使用が可能となる。したがって、電解コンデンサに要求される性能に応じて、上記範囲から適宜選択することができる。
また陽極酸化処理には、公知の電解液を用いることができる。例えばリン酸、硝酸、ホウ酸、クエン酸、またはそれらのナトリウム塩、アンモニウム塩などを含む水溶液、または非水溶液を使用することができる。
電解質層には、公知の電解質を用いることができる。具体的には、カルボン酸やアミン等の電解質を含み、グリコールやエーテル等の溶媒からなる電解液、二酸化マンガンもしくはポリチオフェン、ポリピロール等の導電高分子からなる固体電解質、またはそれらの複合物等を用いることができる。これらの中でも、導電性高分子からなる固体電解質を含む場合には、電解コンデンサの漏れ電流がより低くなるため好ましい。
酸化皮膜からなる誘電体の上に形成される導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリシラン、またはそれらの誘導体から選択される1種以上を使用することができる。導電性高分子を含む電解質層の形成方法としては、化学酸化重合法、電解重合法、分散液または溶液の塗布乾燥法などが適用できる。電解質層は、導電性高分子に導電性を発現させるドーパントを含むことができ、さらに必要に応じてバインダーを含むことができる。ドーパントとしてはアニオン性のドーパントが挙げられ、特にポリ酸アニオンが好ましい。バインダーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコールや糖類等の水溶性樹脂等が挙げられる。
原料として、ヨウ化物熱分解法により作製した高純度チタン(Ti)と同じくヨウ化物熱分解法により作製した高純度ジルコニウム(Zr)を、原子比40:60の組成で秤量した後、アークボタン溶解法により合金塊を作製した。作製した高純度チタン、高純度ジルコニウムのいずれも鉄系金属の総量は100ppm未満であった。この合金塊をジルコニアタンクのボールミルとビーズミルを用いて、平均粒径(D50)=2μmの合金粉末とした。得られた合金粉末を金型に充填し加圧成型することにより、外形2.2mm×1.7mm×1.2mmの成型体を作製した。次に、この成型体を800℃の高温真空中で焼結し、多孔質焼結体を得た。このとき多孔質焼結体中に含まれる濃度をICP発光分光分析したところ、鉄濃度と鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度はいずれも10ppm未満であった。また、多孔質焼結体を透過電子顕微鏡により組成分析した結果を表1に示す。組成分析は得られた多孔質焼結体の任意の5箇所に行い、チタン組成比率の最大値と最小値の差分(パーセントポイント:ppt)を記載した。得られた多孔質焼結体を陽極体とし、0.05質量%のリン酸と50質量%のエチレングリコールと水を含む電解液を用い、25℃で100Vの陽極酸化処理を2時間行うことにより、誘電体である酸化皮膜を形成した。続いて、導電性高分子であるポリチオフェンの分散液を酸化皮膜の上に塗布した後、溶媒を乾燥させて、電解質層を形成した。さらに、グラファイトペーストと、銀ペーストを塗布し、硬化させることにより、陰極引き出し層を形成させ、固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、5Vの直流電圧を印加し、5分後の漏れ電流を測定した。結果を表1に示す。
原料として、未精製のスポンジチタン(鉄系金属の総量約300ppm)と実施例1と同様にヨウ化物熱分解法により作製した高純度ジルコニウムを用いた以外は実施例1と同じ方法で、多孔質焼結体を得た。このとき多孔質焼結体中に含まれる濃度をICP発光分光分析したところ、鉄濃度と鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度はいずれも50ppmであった。また、多孔質焼結体を透過電子顕微鏡により組成分析した結果を表1に示す。得られた多孔質焼結体を陽極体とし、実施例1と同じ方法で固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、5Vの直流電圧を印加し、5分後の漏れ電流を測定した。結果を表1に示す
原料として、実施例1と同様にヨウ化物熱分解法により作製した高純度チタンと未精製のスポンジジルコニウム(鉄系金属の総量約500ppm)を用いた以外は実施例1と同じ方法で、多孔質焼結体を得た。このとき多孔質焼結体中に含まれる濃度をICP発光分光分析したところ、鉄濃度と鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度はいずれも90ppmであった。また、多孔質焼結体を透過電子顕微鏡により組成分析した結果を表1に示す。得られた多孔質焼結体を陽極体とし、実施例1と同じ方法で固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、5Vの直流電圧を印加し、5分後の漏れ電流を測定した。結果を表1に示す
原料として、実施例2で使用の未精製のスポンジチタンと実施例3で使用の未精製のスポンジジルコニウムを用いた以外は実施例1と同じ方法で、多孔質焼結体を得た。このとき多孔質焼結体中に含まれる濃度をICP発光分光分析したところ、鉄濃度と鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度はいずれも140ppmであった。また、多孔質焼結体を透過電子顕微鏡により組成分析した結果を表1に示す。得られた多孔質焼結体を陽極体とし、実施例1と同じ方法で固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、5Vの直流電圧を印加し、5分後の漏れ電流を測定した。結果を表1に示す
ステンレスタンクのボールミルとビーズミルを用いた以外は実施例1と同じ方法で多孔質焼結体を得た。このとき多孔質焼結体中に含まれる濃度をICP発光分光分析したところ、鉄濃度が80ppm、鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度は110ppmであった。また、多孔質焼結体を透過電子顕微鏡により組成分析した結果を表1に示す。得られた多孔質焼結体を陽極体とし、実施例1と同じ方法で固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサについて、5Vの直流電圧を印加し、5分後の漏れ電流を測定した。結果を表1に示す
2:誘電体層
3:電解質層(導電性高分子)
4:グラファイト層
5:銀層
6:導電性接着剤
7:電極
8:金属リード
9:外装樹脂
Claims (8)
- 陽極体としてチタンとジルコニウムからなる合金と、誘電体として前記陽極体を陽極酸化して得られる酸化皮膜と、電解質とを含む電解コンデンサであって、陽極体の合金における鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度が100ppm以下であることを特徴とする電解コンデンサ。
- 前記陽極体は、多孔質体である請求項1に記載の電解コンデンサ。
- 前記陽極体は、任意の5カ所で測定したチタン組成比率の最大値と最小値の差が10パーセントポイント以下である請求項1又は2に記載の電解コンデンサ。
- 前記電解質は、固体電解質である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
- 前記固体電解質は、導電性高分子を含む請求項4に記載の電解コンデンサ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法であって、単体チタンと単体ジルコニウムを混合し、合金化した合金塊を得る工程と、該合金塊を粉砕して粉末を得る工程と、該粉末を真空焼結して多孔質の陽極体を得る工程を含むことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
- 前記単体チタンと単体ジルコニウムの一方は鉄、ニッケル、クロムの総量の濃度が100ppm未満の高純度品であり、他方は前記総量が100ppmを越える材料である請求項6に記載の電解コンデンサの製造方法。
- 前記粉末を得る工程は、前記合金塊を鉄系金属と接触しない装置を用いて粉末化したものである請求項6又は7に記載の電解コンデンサの製造方法。
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