以下、発明を実施するための実施例を、図面を用いて説明する。
<実施例1>
実施例1では、治療の種類や疾病の種類によらず、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が最も高い治療手段の提案を実現する治療選択支援システムを提供する。具体的には、実施例1の治療選択支援システムは、まず、患者の情報に基づいて、治療目標毎に治療目標達成度を予測する。また、患者の情報に基づいて、治療手段の適正度を評価する。最後に、これらの二つの指標を用いて計算されたスコアに基づいて、適切な治療手段を提案する。
以下、実施例1にかかる治療選択支援システムが実行する処理、具体的には、患者毎に、治療手段ごとの治療目標達成度及び治療手段適正度を計算し、これら二つの指標の組み合わせによって、治療手段を提案する処理と、その効果を説明する。
まず、治療目標達成度を説明する。治療目標達成度は、患者が有する背景情報、例えば、性別や年齢や検査値や疾病の情報と、当該患者の過去の治療履歴の情報とに基づいて、当該治療行為を実施した場合の治療目標の達成度合いを予測した指標である。実施例1の治療選択支援システムは、この指標を、患者背景毎かつ治療手段毎に予測するモデルを過去の患者の治療実績の情報に基づいて構築し、意思決定支援時に治療行為毎に治療目標達成度を予測する。この指標によって、個別の患者毎に設定した治療目標を達成する上で、個別の患者毎の最適な治療手段を把握することを支援できる。
次に、治療手段適正度を説明する。治療手段適正度は、患者が有する背景情報、例えば、性別や年齢や検査値や疾病の情報と、当該患者の過去の治療履歴の情報とに基づいて、当該治療手段を実施する適正度を表す指標である。ここで適正度とは、例えば、過去の類似患者がどの程度、当該治療手段を実施されていたかを示す指標であって、例えば、当該治療手段が割り当てられる確率値として計算される指標である。実施例1の治療選択支援システムは、この指標を、患者毎かつ治療手段毎に計算可能な計算モデルを、過去の患者の治療実績の情報に基づいて構築しておき、意思決定支援時に治療行為ごとの治療手段適正度を当該計算モデルを用いて計算する。この指標によって、患者特性に合致する治療、具体的には、過去の診療実績において、患者背景が類似する患者に行われた治療実績に近い治療手段を個別の患者毎に把握することを支援できる。
最後に、治療目標達成度及び治療手段適正度の二つの指標を組み合わせて計算したスコアに基づいて、治療手段を提案することの効果を説明する。治療目標に応じた適切な治療を選択するためには、当該患者に対して、治療目標の達成度合いが最も高いと見込まれる治療を選択するのが望ましい。一方、治療手段の選択は、患者毎に均一に実施されるわけではなく、患者背景に応じて、ある種のバイアスを伴って選択される。そのため、このバイアスを考慮せず、治療目標の達成度合いだけに基づいて治療手段を提案すると、不適切な治療手段が提案される可能性がある。
以下、例を挙げて説明する。例えば、ある同じ検査値に働きかける薬剤Aと薬剤Bとが存在し、薬剤Aは検査値を抑制する効果が小さく、薬剤Bは薬剤Aより検査値を抑制する効果が大きいとする。この場合、例えば、「薬剤処方後の検査値をある値以下に制御する」という治療目標に対する治療目標達成確率は、薬剤Bの方が高いと予測される。このとき、仮に全ての患者背景に対して、検査値の抑制効果が大きいという過去履歴情報が存在した場合、全ての患者に対する適切な治療手段として、薬剤Bが提案される。一方、実際の診療の現場においては、例えば、薬剤による過剰な治療を抑えるため、薬剤Bは、薬剤Aと比較して、検査値が高い患者に多く処方される傾向があり、検査値が低い患者には薬剤Bは処方されていなかったとする。この場合、検査値が低い患者に薬剤Bを処方する処方パターンは、実際の診療実績と乖離した治療パターンになる。そこで、実施例1にかかる治療選択支援システムでは、治療手段適正度と治療目標達成度との二つの指標を組み合わせたスコアを用いることによって、実際に実施された治療と乖離せず、かつ、治療目標を達成する可能性が高い治療を提案できる。
ここで、治療手段適正度を活用する追加の効果を説明する。治療手段適正度は、どのような背景を有する患者に対して、どのような治療手段が医師により選択されたかという、実際の診療現場における意思決定の履歴情報に基づいて定められる、治療選択の傾向の情報である。この治療選択の傾向の情報には、例えば、薬剤の過剰投与を防ぐために医師が自身の経験に基づいて調整した処方量の決定や、副作用を避けるために医師が経験的な判断に基づいて選択した治療手段の決定などの情報が含まれる。これらの情報は、臨床現場における医師の実際の意思決定結果の集合知の情報であって、ガイドラインなどの医学的コンセンサス情報より細分化された意思決定プロセスの結果が蓄積された情報である。実施例1にかかる治療選択支援システムは、治療目標達成度の情報と、治療手段適正度の情報を併せて、治療手段を評価することによって、実際の診療の現場で医師が下した判断の実績と矛盾しない意思決定であって、かつ、患者の治療目標に最適な治療を選択するという効果を実現している。
以下、図面を参照しながら、実施例1の治療選択支援システムを説明する。
図1は、実施例1の治療選択支援システムの構成を示すブロック図である。実施例1の治療選択支援システムは、データ分析部101及びデータベース150を有する。データ分析部101は、入力部102、出力部103、演算装置104、メモリ105及び記憶媒体106を有する計算機で構成される。
入力部102は、マウス及びキーボードなどのヒューマンインターフェイスであり、データ分析部101への入力を受け付ける。出力部103は、治療選択支援システムの処理結果をユーザが視認可能な形式で出力するディスプレイ又はプリンタである。なお、データ分析部101は、入力部102及び出力部103を有さず、ネットワークを介して接続された端末(図示省略)において、ユーザの入力を受け付け、処理結果を出力してもよい。
記憶媒体106は、データ分析部101によるデータ分析処理を実現するためのプログラム、及び、データ分析処理の実行結果等を格納する記憶装置である。記憶媒体106は、例えば、大容量かつ不揮発性の記憶装置(磁気ディスクドライブ、又は、不揮発性メモリ等)によって構成される。
メモリ105は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、記憶媒体106に格納されるプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
演算装置104は、記憶媒体106が格納するプログラムをメモリ105にロードし、実行することによってデータ分析部101の機能を実現する。演算装置104、例えば、CPU又はGPUなどである。以下に説明する処理及び演算は、演算装置104が実行する。なお、演算装置104がプログラムを実行して行う処理の一部をハードウェア(例えば、FPGA)で行ってもよい。
データベース150は、医療情報記憶部151、治療目標情報記憶部152、治療目標達成判定情報記憶部153、整形情報記憶部154、治療目標達成度予測モデル記憶部155及び治療手段適正度計算モデル記憶部156を有する。
医療情報記憶部151は、大容量かつ不揮発性の記憶装置(磁気ディスクドライブ、又は、不揮発性メモリ等)によって構成され、医療情報を記憶する。医療情報は、過去の患者や現在の患者の情報であって、性別や年齢などの患者基本情報201(図2)、過去に実施した検査情報301(図3)、過去の診療における疾病情報401(図4)、過去に実施した治療情報501(図5)などを含む。
治療目標情報記憶部152は、治療の目標となる治療目標情報601(図6)を含む。
治療目標達成判定情報記憶部153は、治療目標達成判定部107が医療情報記憶部151に含まれる情報と治療目標情報記憶部152に含まれる情報に基づいて作成した治療目標達成判定情報801(図8)を含む。
整形情報記憶部154は、データ整形部108が、医療情報記憶部151に含まれる情報と、治療目標達成判定情報記憶部153に含まれる情報とに基づいて作成した整形情報901(図9)を含む。
治療目標達成度予測モデル記憶部155は、治療目標達成度予測モデル構築部109が、整形情報記憶部154に含まれる情報に基づいて構築したモデルのデータを含む。
治療手段適正度計算モデル記憶部156は、治療手段適正度計算モデル構築部110が、整形情報記憶部154に含まれる情報に基づいて構築したモデルのデータを含む。
治療目標達成度予測部112は、治療目標達成度予測モデル記憶部155に記憶されたモデルに基づいて、治療目標達成度を予測する。
治療手段適正度計算部113は、治療手段適正度計算モデル記憶部156に記憶されたモデルに基づいて、治療手段適正度を計算する。
治療手段提案部111は、治療目標達成度予測部112が予測した治療目標達成度と、治療手段適正度計算部113が計算した適正度とに基づいて治療手段を提案する。
演算装置104が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD−ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してデータ分析部101に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の記憶媒体106に格納される。このため、データ分析部101は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェイスを有するとよい。
データ分析部101及びデータベース150の各々は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。
以下、各種情報と、各処理部107から113について詳細に説明する。なお、図1に記載の構成要素のうち、実施例1で説明しないもの(治療目標提案部114)は、実施例2で説明する。
図2は、患者基本情報201の例を示す図である。患者基本情報201は、患者の基本的な情報を患者毎に纏めた情報である。患者基本情報201は、患者ID202、性別203、年齢204などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子である。性別203及び年齢204は、それぞれ、当該患者の性別及び年齢である。
図3は、検査情報301の例を示す図である。検査情報301は、患者に実施した検査の情報を纏めた情報である。検査情報301は、患者ID202、診療ID302、日付303、項目ID304、値305、単位306などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID302は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、例えば、検査ごとや通院ごとなどで割り当てられる識別子である。日付303は、当該検査を実施した日付であり、診療行為を実施した時刻の情報を含んでもよい。項目ID304は、当該検査の種類を一意に識別するための識別子である。値305は、当該検査の結果を定量的又は定性的に示した情報である。単位306は、値305の単位の情報である。図3は、検査情報として、収縮時血圧の値及び体重の値の情報が含まれている例を示す。
図4は、疾病情報401の例を示す図である。疾病情報401は、患者の疾病の情報を纏めた情報である。疾病情報401は、患者ID202、診療ID302、日付303、疾病ID402などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID302は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報301に含まれるものと同義である。日付303は、当該疾病の情報が取得された日付であり、検査情報301に含まれるものと同義である。疾病ID402は、患者の疾病の状態を表す情報であり、例えば、疾病の種類を表すコード情報や、診療行為を表すコード情報などが含まれる。
図5は、治療情報501の例を示す図である。治療情報501は、患者に実施した治療手段の情報を纏めた情報である。治療情報501は、患者ID202、診療ID302、日付303、薬剤ID502、処方量503、単位504などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID302は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報301に含まれるものと同義である。日付303は、当該診療行為を実施した日付であり、検査情報301に含まれるものと同義である。薬剤ID502は、当該患者に治療として処方された薬剤を一意に識別するための識別子である。処方量503は、当該治療手段(薬剤)の処方量の情報である。単位504は、処方量503の単位の情報である。
図6は、治療目標情報601の例を示す図である。治療目標情報601は、治療目標の情報である。治療目標情報601は、目標ID602、項目ID304、目標値603、目標期間604、目標期間単位605などを構成要素として含む。目標ID602は、治療目標を一意に識別するための識別子である。項目ID304は、目標対象の項目、例えば検査値の種類などを一意に識別するための識別子であり、検査情報301に含まれるものと同義でよい。目標値603は、目標情報ごとに設定された目標値である。目標期間604は、治療実施から目標達成を判定するまでの期間である。目標期間単位605は、目標期間604の単位を表す情報である。治療目標情報601は、例えば、入力部102からユーザに入力された情報に基づいて作成される。
次に、治療目標達成判定部107の処理を説明する。治療目標達成判定部107は、過去に実施した治療手段が、治療の目標を達成したか否かを判定する処理を実行する。
図7は、治療目標達成判定部107が実行する処理のフローチャートである。
まず、ステップS701では、医療情報記憶部151に記憶された検査情報301及び治療情報501を読み出し、メモリ105に記憶する。
ステップS702では、治療目標情報記憶部152に記憶された治療目標情報601を読み出し、メモリ105に記憶する。
ステップS703では、メモリ105に記憶された検査情報301、治療情報501及び治療目標情報601に基づいて、治療手段ごとに治療目標の達成を判定し、治療目標達成判定情報801(図8)を作成する。以下、詳細に説明する。まず、患者基本情報201と検査情報301と治療情報501と治療目標情報601とを、治療情報501に含まれる患者ID毎かつ診療ID毎かつ、治療目標情報601に含まれる目標ID毎に関連付けて、整形する。次に、患者ID毎かつ診療ID毎かつ目標ID毎に関連付けられた情報毎に、治療目標情報601に含まれる項目ID304の項目の情報であって、治療情報501に含まれる日付303から、目標期間604以内に取得された検査情報301に含まれる値305を検索し、検索された値305と目標値603とを比較して、目標の達成を判定する。
以下、図3、図5、図6を用いて、患者IDがP0001、診療IDがV0001のデータを例に具体的に説明する。このデータは、図5に示すように、日付が2017年10月7日に、薬剤IDがM0011の薬を処方されたことを表す。この患者が、図6に示す治療目標情報601の目標IDがG0011の目標を達成したか否かを判定する例を説明する。目標IDがG0011の目標は、項目IDがI0002の検査項目の値が、目標期間及び目標期間単位で規定された30日以内に、目標値の150を達成することが定義されている。患者IDがP0001の患者の場合、診療IDがV0001の治療が2017年10月7日に実施されているため、その日から30日以内の、項目IDがI0002の検査情報を検索し、目標が達成されているかを判定する。本例の場合、検査情報301に、患者IDがP0001、2017年11月6日に値が148のデータが含まれている、すなわち、目標値以下の検査データがあるので、目標達成と判定する。
目標達成判定方法のいくつかの例を説明する。実施例1では、疾病や治療や検査の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標期間の間に一度でも値を達成したときを、目標達成と判定する方法である。第2の方法は、目標期間の間に特定の回数以上目標を達成した場合を目標達成として判定する方法である。第3の方法は、目標期間の間に一度も目標値を達成していない検査情報が存在しない場合を目標達成と判定する方法である。
図8は、治療目標達成判定情報801の例を示す図である。治療目標達成判定情報801は、患者ID202、診療ID302、目標ID602、達成値802、達成判定803を含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID302は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報301に含まれるものと同義である。目標ID602は、治療目標を一意に識別するための識別子であり、治療目標情報601に含まれるものと同義である。達成値802は、目標を達成した際の値(例えば、検査結果の値305)である。達成判定803は、目標を達成したか否かを表す情報であり、例えばTRUE又はFLASEなどの2値情報、T又はFなどの記号情報、1又は0などの数値情報として表現されうる。また、達成判定803は連続値の情報でもよい。例えば、目標値として設定された値と達成された(又は達成されなかった)値との差を計算し、計算された差の値を達成判定803に記録してもよい。
なお、目標期間の間に当該項目IDの検査情報がない場合、治療目標達成判定情報801のデータを作成しなくてもよいし、データが取得されていない旨を表す情報を達成判定803に記録したデータを作成してもよい。
ステップS704では、ステップS703で作成した治療目標達成判定情報801を出力し、治療目標達成判定情報記憶部153に記憶する。
次に、データ整形部108が実行する処理を説明する。データ整形部108では、医療情報記憶部151に記憶されている患者基本情報、検査情報、疾病情報、治療情報、及び、治療目標達成判定情報記憶部153に記憶されている治療目標達成判定情報801を、整形して一つの整形データを作成する。本整形データは、治療手段の実施状況と、治療手段を実施された患者の情報と、治療手段の目標達成結果とを統合して含もみ、後述する各種モデル構築処理にて用いられる。以下、整形情報について、具体的に説明する。
図9は、整形情報901の例を示す図である。整形情報901は、患者ID毎かつ目標ID毎かつ診療ID毎に、患者の基本情報と、検査情報と、疾病情報と、当該診療IDに実施した治療手段の実施情報と、過去の実施していた治療手段の履歴情報と、治療目標達成の有無の情報を纏めた情報である。
整形情報901は、医療情報902、治療履歴情報903、治療実施情報904、治療目標達成判定情報905を含む。医療情報902は、当該患者の診療実施時の基本的な情報及び健康状態の情報を含み、具体的には、患者ID202、日付303、診療ID、性別203、年齢204、検査値の情報(例えば、収縮期血圧906)、疾病の情報、診療行為の情報などを含む。
治療履歴情報903は、当該診療が実施された日より前に実施された治療手段の情報を纏めた情報であり、例えば、当該診療が実施される日まで継続して処方された薬剤の情報、過去30日間に処方された薬剤の情報を集約した情報などが含まれる。この集約は、例えば、薬剤毎の処方の有無を示す2値の情報でもよいし、薬剤毎の処方量を直接用いてもよい。また、薬剤毎に設定された処方上限量に対する割合として、0以上1以下の値を、処方量をあらわす指標として用いてもよい。
治療実施情報904は、当該診療において実施された治療手段の情報を纏めた情報である。例えば、当該診療が実施された日に処方された薬剤の情報が集約された情報である。この集約は、例えば、薬剤毎の処方の有無を示す2値の情報でもよいし、薬剤毎の処方量を直接用いてもよい。また、薬剤毎に設定された処方上限量に対する割合として、0以上1以下の値を、処方量を表す指標として用いてもよい。治療目標達成判定情報905は、当該治療手段の実施が、治療目標を達成したか否かの情報である。具体的には、治療目標達成判定情報801の中で、当該治療実施情報904に対応付けられるものが格納される。
なお、整形情報901を構成する際に、全てのカテゴリ変数を数値変数に変換してもよい。例えば、性別203の情報は、男性を1、女性を0と表す数値に変換してもよい。また、治療履歴情報903及び治療実施情報904に関しても、薬剤毎に処方量の単位が異なる場合、処方量上限に対する割合の値として正規化や標準化をしてもよい。達成判定803の情報は、達成を1、未達成を0と表すような数値に変換してもよい。このような変換によって、後述する各種モデル構築処理における数値計算処理において、適用可能な演算の範囲が拡大する効果がある。構築した整形情報901は、整形情報記憶部154に記憶される。
なお、実施例1では、図9に示すように、患者に過去に実施された治療手段の情報を、患者毎かつ治療手段毎かつ治療手段が割り当てられたタイミング毎に纏めた形式の整形情報901を使用したが、患者に過去に実施された治療手段の情報が含まれていれば他の形式でもよい。
次に、治療目標達成度予測モデル構築部109を説明する。治療目標達成度予測モデル構築部109では、治療手段ごとの目標達成度を患者毎かつ治療手段毎に予測する治療目標達成度予測モデルを構築する。
図10は、治療目標達成度予測モデル構築部109が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS1001では、整形情報記憶部154に記憶された整形情報901を読み出す。
ステップS1002では、整形情報901に記憶された情報の中で、治療目標達成度予測モデルを構築する特定の治療目標の目標IDと一致する情報を整形情報901から抽出する。
ステップS1003では、当該治療目標に関して、ステップS1002で抽出された整形情報に基づいて、治療目標達成度予測モデルを構築する。治療目標達成度予測モデルは、整形情報901に含まれる目標の達成判定803の情報を患者毎かつ治療手段ごとに予測するモデルである。
治療目標達成度予測モデルのいくつかの例を説明する。実施例1では、いずれの方法でモデルを構築してもよい。第1のモデルは、治療目標の達成の有無の確率を予測するモデルである。第2のモデルは、治療目標の達成値と目標値との差の値を予測するモデルである。治療目標達成度予測モデルの入力変数は、医療情報902、治療履歴情報903及び治療実施情報904に含まれる情報の全て又はいずれかの組み合わせとする。例えば、治療目標の達成の有無の確率を予測するモデルとしては、統計的モデルであるロジスティック回帰や、機械学習を用いたベイジアンネットワーク、多層パーセプトロン、BOOSTING TREEなどの様々なモデルを用いることができる。
ステップS1004では、ステップ1003で構築した治療目標達成度予測モデルを、該当する治療目標の目標IDと併せて、治療目標達成度予測モデル記憶部155に記憶する。
次に、治療手段適正度計算モデル構築部110を説明する。治療手段適正度計算モデル構築部110では、治療手段毎の適正度を患者毎かつ診療時毎に予測する治療手段適正度計算モデルを構築する。
図11は、治療手段適正度計算モデル構築部110が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS1101では、整形情報記憶部154に記憶された整形情報901を読み出す。
ステップS1102では、整形情報901に基づいて、治療手段適正度計算モデルを構築する。治療手段適正度計算モデルは、整形情報901に含まれる治療手段の適正度を患者毎かつ治療手段ごとに予測するモデルである。
治療目標達成度予測モデルのいくつかの例を説明する。実施例1では、治療手段の特性によって、いずれの方法でモデルを構築してもよい。第1のモデルは、患者毎に当該治療手段が割り当てられる確率を、過去の情報に基づいて予測するモデルである、第2のモデルは、患者毎に当該治療手段が割り当てられた過去の類似症例患者の人数を予測するモデルである。治療手段適正度計算モデルの入力変数は、医療情報902、治療履歴情報903及び治療実施情報904に含まれる全て又はいずれかの情報の組み合わせとする。例えば、予測モデルとしては、統計的モデルであるロジスティック回帰や、機械学習を用いたベイジアンネットワーク、多層パーセプトロン、BOOSTING TREEなどの様々な方法を用いることができる。
ステップS1103では、ステップ1102で構築した治療手段適正度計算モデルを、治療手段適正度計算モデル記憶部156に記憶する。
次に、治療手段提案部111を説明する。治療手段提案部111は、患者毎に適切な治療手段を提案する。具体的には、治療手段提案部111は、治療目標達成度予測部112及び治療手段適正度計算部113を有する。治療目標達成度予測部112は治療目標達成度を、治療手段適正度計算部113は治療手段適正度を、治療手段ごとに評価する。その後、治療目標達成度及び治療手段適正度の二つの指標を組み合わせて、治療手段を評価するスコアを計算し、計算されたスコアに基づいて、適切な治療手段を患者に提案する。
図12は、治療手段提案部111が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS1201では、治療手段を提案する対象の患者基本情報201が治療手段提案部111に入力される。入力される情報は、年齢や性別の検査情報301、過去の疾病情報401、治療情報501などが含まれる。このとき、入力された情報は、整形情報記憶部154に記憶された整形情報901と同じ形式に整形してメモリ105に記憶される。
ステップS1202では、治療の目標が治療手段提案部111に入力される。例えば、治療の目標は、治療目標情報記憶部152に記憶されている治療目標情報601の中から、適切な治療目標の情報を選択するとよい。
ステップS1203では、治療手段の候補が治療手段提案部111に入力される。例えば、治療手段は、いくつかの具体的な薬剤名称の集合として与えられてもよいし、類似する薬剤を纏めた分類の粒度で与えられてもよい。
ステップS1204では、治療手段提案部111が、治療手段の候補から治療手段を一つ選択する。
ステップS1205では、治療手段提案部111が、治療手段を患者に適用した場合の仮想的な手段適応データを構築する。具体的には、整形情報901の治療実施情報904の中に、予測する治療手段の情報を仮想的に格納し、治療手段を実施した場合のシナリオを表すレコードを作成する。
ステップS1206では、治療目標達成度予測部112が、ステップS1205で作成した仮想的な手段適応データに基づいて、治療手段を適用した場合の目標達成度を予測する。具体的には、治療目標達成度予測部112は、治療目標達成度予測モデル記憶部155に記憶された治療目標達成度予測モデルの中で、ステップS1202で選択した治療目標に該当する治療目標達成度予測モデルを用いて、当該治療手段の目標達成度を予測する。
ステップS1207では、治療手段適正度計算部113が、治療手段適正度計算モデル記憶部156に記憶された治療手段適正度計算モデルを用いて、ステップS1205で作成された仮想的な治療手段適応データに基づいて、治療手段の適正度を計算する。
ステップS1208では、治療手段提案部111が、予測対象の治療手段の治療手段提案スコアを計算する。治療手段提案スコアは、ステップS1206で予測した目標達成度と、ステップS1207で計算した治療手段適正度との二つの指標に基づいて計算する。
治療手段提案スコアの計算方法のいくつかの例を説明する。実施例1では、目標の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標達成確率と適正度との四則演算の結果を治療手段提案スコアとする方法である。例えば、二つの指標の積を新たなスコアとすることができる。第2の方法は、適正度に基づく活性化関数を定義し、定義された活性化関数の値と目標達成確率とを乗じて治療手段提案スコアを計算する方法である。例えば、適正度が閾値以下の場合は0、閾値以上の場合は適正度の値をそのまま返す活性化関数を定義して、適正度がある閾値以下の場合は0、それ以外の場合は、二つの指標の積が治療手段提案スコアとなる。
ステップS1209では、治療手段提案部111が、全ての治療手段の候補の治療手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての治療手段の候補の治療手段提案スコアの計算が終了した場合、ステップS1210に進む。一方、一部の治療手段の候補の治療手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS1204に進む。
ステップS1210では、治療手段提案部111が、治療手段毎に計算された治療手段提案スコアに基づいて、適切な治療手段を提案する。
治療手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例1では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、治療手段提案スコアが最大の治療手段を提案する方法である。第2の方法は、治療手段提案スコアが閾値以上の一つ以上の治療手段を提案する方法である。提案された治療手段は、例えば、出力部103によってユーザに提示される。
図13は、実施例1のユーザインターフェイス画面1301の例を示す図である。図13に示す治療手段提案画面の例は、出力部103に表示される画面1301の例であり、患者に提案する治療手段を分析した結果を示す画面の例である。画面1301は、患者情報選択ボタン1302、治療手段提案ボタン1303、患者基本情報表示領域1304、患者検査情報表示領域1305、治療目標設定領域1306及び治療手段提案結果表示領域1307を含む。
患者情報選択ボタン1302は、分析対象の患者の情報をデータベースから取得するために操作されるボタンである。
治療手段提案ボタン1303は、選択された患者の情報に基づいて、治療手段の提案処理を実行するために操作されるボタンである。
患者基本情報表示領域1304は、選択された患者の基本情報を表示する領域である。
患者検査情報表示領域1305は、選択された患者の検査情報を表示する領域である。
治療目標設定領域1306は、治療目標を設定するための領域である。治療目標設定領域1306は、例えば、治療の目標とする項目が指定される欄、目標値が設定される欄、目標達成期間の長さや単位が設定される欄などを含む。
治療手段提案結果表示領域1307は、治療手段提案結果を表示するための領域である。治療手段提案結果表示領域1307は、例えば、治療目標達成度予測部112の処理結果や、治療手段適正度計算部113の処理結果や、治療手段提案部111の処理結果を、治療手段別に可視化して表示する。例えば、目標達成確率、治療適正度、提案スコアなどの、治療手段別に計算された指標を、円グラフや棒グラフなどのグラフ表示によって可視化するとよい。さらに、提案する治療手段の情報を表示する。
また、治療手段提案結果表示領域1307は、治療適正度及び治療目標達成度に基づいて提案スコアを計算する方法である提案スコア計算ロジックを指定するインターフェイスを含む。例えば、図13に示す例では、適正度に関するステップ関数を重みとして、治療目標達成度に乗じた値を治療の提案スコアとして計算する方法が指定されている。この場合、治療適正度が0.1未満の治療方法は、スコアが0になり、治療適正度が0.1以上の治療方法は、目標達成確率がスコア値になる。これにより、適正度が低い治療手段より適正度が高い治療手段の中から、目標達成度が高い治療を優先的に提案できる。
ユーザは、画面1301を参照することによって、患者毎の基本情報及び検査情報を確認でき、さらに、設定した治療目標に対する達成確率と、患者への適正度との両方を考慮して、患者に適切な治療手段を割り当てられる。
図14は、図13で示すユーザインターフェイス1301を用いた治療手段提案処理のシーケンス図である。この例では、ユーザインターフェイス1301と、医療情報記憶部151と、治療目標情報記憶部152と、治療手段提案部111と、治療目標達成度予測部112と、治療目標達成度予測モデル記憶部155と、治療手段適正度計算部113と、治療手段適正度計算モデル記憶部156の間における情報のやりとり及び処理の流れを示す。図14における符号S1201、S1202、S1206、S1207、S1208、S1210は、図12に示すフローチャートにおける処理ステップを示す。
まず、ユーザは、分析対象の患者の情報(例えば、患者ID、氏名など)を入力部102に入力し、患者情報選択ボタン1302を操作して、分析対象の患者の情報を医療情報記憶部151から取得する。そして、当該患者の治療目標情報を治療目標情報記憶部152から取得してもよい。なお、当該患者の治療目標情報が治療目標情報記憶部152に設定されていない場合、治療目標情報入力画面を表示し、当該患者の治療目標情報の入力を促してもよい。
その後、ユーザは、治療手段提案ボタン1303を操作して、治療手段提案処理を開始する。以後の処理は、図12で説明したものと同じである。
以上のように、実施例1の治療選択支援システムでは、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が高い治療手段を割り当てられる。
さらに、実施例1の治療選択支援システムでは、冒頭に説明した効果の他に、治療目標の達成度及び治療手段の適正度を計算するために、過去の診療実績情報に基づいて、指標を予測するモデルを事前に構築し、構築されたモデルを利用する。この処理によって、類似症例検索処理では実現できない、高性能な内挿による予測処理を実現する。ここで高性能とは、例えば、異なる二つの過去の診療実績情報の間を、単純なデータベクトル間の線形結合で近似するのではなく、過去の症例情報全体のデータを使って、非線形に近似することによって、より高い精度で治療効果を予測でき、治療手段を提案できる。
<実施例2>
実施例1では、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が最も高い治療手段の選択を可能にする治療選択支援システムの例を説明した。実施例2では、患者の情報に基づいて、患者毎の適切な治療目標を自動的に決定可能な治療選択支援システムを説明する。
実施例2の治療選択支援システムの構成は、図1で示したものと同じである。実施例2の治療選択支援システムでは、治療目標提案部114が機能している点で、前述した実施例1の治療選択システムと相違する。他の構成及び処理は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
治療目標提案部114は、患者の情報に基づいて、適切な治療目標を治療目標情報記憶部152から選択する。
図15は、実施例2において、治療手段提案部111が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS1501では、治療手段を提案する対象の患者基本情報201が治療手段提案部111に入力される。入力される情報としては、年齢や性別の検査情報、過去の治療情報、疾病情報などが含まれる。このとき、入力された情報は、整形情報記憶部154に記憶された整形情報901と同じ形式に整形してメモリ105に記憶される。
ステップS1502では、治療手段提案部111が、治療手段の候補から治療手段を一つ選択する。例えば、治療手段は、いくつかの具体的な薬剤名称の集合として与えられてもよく、類似する薬剤を纏めた分類の粒度で与えられてもよい。
ステップS1503では、治療手段提案部111が、治療手段を患者に適用した場合の仮想的な手段適応データを構築する。具体的には、整形情報901の治療実施情報904の中に、予測を実施する治療手段の情報を仮想的に格納し、治療手段を実施した場合のシナリオを表現するレコードを作成する。
ステップS1504では、治療手段適正度計算部113が、治療手段適正度計算モデル記憶部156に記憶された治療手段適正度計算モデルを用いて、ステップS1503で作成した仮想的な治療手段適応データに基づいて、治療手段の適正度を計算する。
ステップS1505では、治療目標提案部114が、治療目標の候補を一つ選択する。候補の選択は、例えば、治療目標情報記憶部152に記憶されている治療目標情報601に含まれる治療目標から候補を選択するとよい。この選択は、例えば、ある目標達成期間内で治療目標値が異なる目標を候補として選択してもよく、ある治療目標値の範囲内で治療目標達成期間が異なる目標を候補として選択してもよい。
ステップS1506では、治療目標達成度予測部112が、ステップS1503で作成した仮想的な手段適応データに基づいて、治療手段を適用した場合の目標達成度を予測する。具体的には、治療目標達成度予測部112は、治療目標達成度予測モデル記憶部155に記憶された治療目標達成度予測モデルの中で、ステップS1505で選択した治療目標に該当する治療目標達成度予測モデルを用いて、当該治療手段の目標達成度を予測する。
ステップS1507では、治療手段提案部111が、予測対象の治療手段の治療手段提案スコアを計算する。治療手段提案スコアは、ステップS1504で計算された治療手段適正度と、ステップS1506で予測された目標達成度との二つの指標に基づいて計算する。
治療手段提案スコアの計算方法のいくつかの例を説明する。実施例2では、目標の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標達成確率と適正度との四則演算の結果を治療手段提案スコアとする方法である。例えば、二つの指標の積を新たなスコアとすることができる。第2の方法は、適正度に基づく活性化関数を定義し、この活性化関数の値と目標達成確率とを乗じて治療手段提案スコアを計算する方法である。例えば、適正度が閾値以下の場合は0、閾値以上の場合は適正度の値をそのまま返す活性化関数を定義して、適正度がある閾値以下の場合は0、それ以外の場合は、二つの指標の積が治療手段提案スコアとなる。
ステップS1508では、治療手段提案部111が、全ての治療目標の候補の治療手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての治療目標の候補の治療手段提案スコアの計算が終了した場合、ステップS1509に進む。一方、一部の治療目標の候補の治療手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS1505に進む。ステップS1508において、治療手段提案スコアの計算が終了したかの判定対象となる治療目標の候補は、例えば、治療目標情報記憶部152に記憶されている治療目標情報601に含まれる全ての治療目標でもよい。また、ある治療目標達成期間内の治療目標でもよく、ある治療目標値の範囲内の治療目標でもよい。
ステップS1509では、治療手段提案部111が、全ての治療手段の候補の治療手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての治療手段の治療手段提案スコアの計算が終了した場合、ステップS1510に進む。一部の治療手段の候補の治療手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS1510に進む。
ステップS1510では、治療手段提案部111が、治療目標候補毎かつ治療手段毎に計算された治療手段提案スコアの情報に基づいて、治療目標を提案する。
治療手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例2では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、治療手段提案スコアが最大の治療目標を提案する方法である。第1の方法では、実際の診療実績から乖離しない治療によって、達成の見込みが大きい治療目標を提案できる。第2の方法は、治療手段提案スコアが閾値以上の治療手段が一つ以上ある治療目標を提案する方法である。第2の方法では、実現可能性が低い治療目標を除外して提案できる。以上、二つの例を説明したが、治療目標の提案方法は例示した方法に限られず、治療目標毎かつ治療手段毎に計算された治療手段提案スコアを活用して提案すれば様々な方法が採用できる。
ステップS1511では、治療手段提案部111が、治療手段毎に計算された治療手段提案スコアに基づいて、適切な治療手段を提案する。
治療手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例2では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、ステップS1510で提案した治療目標に対する治療手段の中で、治療手段提案スコアが最大の治療手段を提案する方法である。第2の方法は、ステップS1510で提案した治療目標に対する治療手段の中で、治療手段提案スコアが閾値以上の一つ以上の治療手段を提案する方法である。提案された治療手段は、例えば、出力部103によってユーザに提示される。
以上のように、実施例2の治療選択支援システムでは、患者の情報に基づいて、患者毎の適切な治療目標を自動的に決定できる。
実施例2の治療選択支援システムでは、冒頭に説明した効果の他に、治療目標を患者毎に提案できる。例えば、患者に対してある治療目標を設定した場合、どの治療手段を用いても治療達成の見込みが小さいとき、その治療目標は患者にとって達成が困難な目標である可能性がある。実施例2の治療選択支援システムでは、治療手段提案スコアを、治療目標毎かつ治療手段毎に計算し、このスコアを用いて治療目標を判定することによって、例えば、達成の可能性が高い治療目標の情報をユーザに提供できる。
<実施例3>
実施例3では、糖尿病治療において、継続的な治療に伴う薬剤の効果の減少を考慮しながら、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が最も高い治療手段の提案を実現する治療選択支援システムを提供する。具体的には、実施例3の治療選択支援システムは、まず、過去の糖尿病の治療履歴及び血糖値の履歴に基づいて、患者毎の血糖制御能を薬剤機序ごとに推定する。次に、患者の情報と血糖制御能の情報に基づいて、治療目標に対する血糖制御手段の目標達成度を予測する。さらに、患者の情報及び血糖制御能の情報に基づいて、血糖制御手段の適正度を評価する処理を実行する。最後に、これらの二つの指標を用いて計算されたスコアに基づいて、適切な血糖制御手段を提案する。
以下、実施例3にかかる治療選択支援システムが実行する処理、具体的には、治療手段ごとの治療目標達成度及び治療手段適正度を計算し、これら二つの指標の組み合わせにより、治療手段を提案する処理と、その効果を説明し、さらに、治療目標達成度及び治療適正度の計算に、患者毎に推定した血糖制御能の情報を利用する効果を説明する。
まず、治療目標達成度を説明する。治療目標達成度は、患者が有する背景情報、例えば、性別や年齢や検査値や疾病の情報と、当該患者の過去の治療履歴の情報とに基づいて、当該治療行為を実施した場合の治療目標の達成度合いを予測した指標である。実施例1の治療選択支援システムは、この指標を、患者背景毎かつ治療手段毎に予測するモデルを過去の患者の治療実績の情報に基づいて構築し、意思決定支援時に治療行為毎に治療目標達成度を予測する。この指標によって、個別の患者毎に設定した治療目標を達成する上で、個別の患者毎の最適な治療手段を把握することを支援できる。
次に、治療手段適正度を説明する。治療手段適正度は、患者が有する背景情報、例えば、性別や年齢や検査値や疾病の情報と、当該患者の過去の治療履歴の情報とに基づいて、当該治療手段を実施する適正度を表す指標である。ここで適正度とは、例えば、過去の類似患者がどの程度、当該治療手段を実施されていたかを示す指標であって、例えば、当該治療手段が割り当てられる確率値として計算される指標である。実施例1の治療選択支援システムは、この指標を、患者毎かつ治療手段毎に計算可能な計算モデルを、過去の患者の治療実績の情報に基づいて構築しておき、意思決定支援時に治療行為ごとの治療手段適正度を当該計算モデルを用いて計算する。この指標によって、患者特性に合致する治療、具体的には、過去の診療実績において、患者背景が類似する患者に行われた治療実績に近い治療手段を個別の患者毎に把握することを支援できる。
次に、治療目標達成度及び治療手段適正度の二つの指標を組み合わせて計算したスコアに基づいて、治療手段を提案することの効果を説明する。治療目標に応じた適切な治療を選択するためには、当該患者に対して、治療目標の達成度合いが最も高いと見込まれる治療を選択するのが望ましい。一方、治療手段の選択は、患者毎に均一に実施されるわけではなく、患者背景に応じて、ある種のバイアスを伴って選択される。そのため、このバイアスを考慮せず、治療目標の達成度合いだけに基づいて治療手段を提案すると、不適切な治療手段が提案される可能性がある。
以下、例を挙げて説明する。例えば、ある同じ検査値に働きかける薬剤Aと薬剤Bとが存在し、薬剤Aは検査値を抑制する効果が小さく、薬剤Bは薬剤Aより検査値を抑制する効果が大きいとする。この場合、例えば、「薬剤処方後の検査値をある値以下に制御する」という治療目標に対する治療目標達成確率は、薬剤Bの方が高いと予測される。このとき、仮に全ての患者背景に対して、検査値の抑制効果が大きいという過去履歴情報が存在した場合、全ての患者に対する適切な治療手段として、薬剤Bが提案される。一方、実際の診療の現場においては、例えば、薬剤による過剰な治療を抑えるため、薬剤Bは、薬剤Aと比較して、検査値が高い患者に多く処方される傾向があり、検査値が低い患者には薬剤Bは処方されていなかったとする。この場合、検査値が低い患者に薬剤Bを処方する処方パターンは、実際の診療実績と乖離した治療パターンになる。そこで、実施例3にかかる治療選択支援システムでは、治療手段適正度と治療目標達成度との二つの指標を組み合わせたスコアを用いることによって、実際に実施された治療と乖離せず、かつ、治療目標を達成する可能性が高い治療を提案できる。
ここで、治療手段適正度を活用する追加の効果を説明する。治療手段適正度は、どのような背景を有する患者に対して、どのような治療手段が医師により選択されたかという、実際の診療現場における意思決定の履歴情報に基づいて定められる、治療選択の傾向の情報である。この治療選択の傾向の情報には、例えば、薬剤の過剰投与を防ぐために医師が自身の経験に基づいて調整した処方量の決定や、副作用を避けるために医師が経験的な判断に基づいて選択した治療手段の決定などの情報が含まれる。これらの情報は、臨床現場における医師の実際の意思決定結果の集合知の情報であって、ガイドラインなどの医学的コンセンサス情報より細分化された意思決定プロセスの結果が蓄積された情報である。実施例3にかかる治療選択支援システムは、治療目標達成度の情報と、治療手段適正度の情報を併せて、治療手段を評価することによって、実際の診療の現場で医師が下した判断の実績と矛盾しない意思決定であって、かつ、患者の治療目標に最適な治療を選択するという効果を実現している。
最後に、治療目標達成度及び治療適正度の計算に利用される血糖制御能推定の概要と、その効果を説明する。糖尿病は慢性疾患であり、治療が長期化する傾向にある。このとき、長期の治療に伴い、患者の体質が変化し、従来と同じ治療では効果が減少する場合がある。例えば、インスリンの分泌を促す種類の薬を継続して処方すると、すい臓の機能が疲弊し、同量の薬剤を服用しても血糖制御の目標を達成できない場合があることが知られている。この場合、医師は、薬剤に対する患者の反応を観察しながら、試行錯誤的に、処方量を増加したり、異なる薬剤機序の薬剤へ切り替える等を選択する必要がある。
血糖制御能推定は、この作業負担を軽減するための処理であって、電子システム内に記録された過去の処方薬剤情報を薬剤機序で分類し、累積処方量や効果の減少を集約した情報を推定する。この情報を用いて、治療目標達成度及び治療手段適正度の二つを推定することによって、継続的な治療に伴う薬剤の効果の減少を考慮した血糖制御手段を提案できる。
例えば、治療目標達成度の予測においては、過去の長期的な機序別な薬剤の処方のパターンの情報や、どの機序の薬剤が効かなくなってきているか等の患者体質変化の情報を考慮することによって、個別の患者により高精度な治療目標達成度を予測できる。また、治療手段適正度の計算においては、薬剤機序別の過去の履歴情報を用いることによって、医師が、過去の長期的な治療履歴の情報を考慮して決定した治療パターンと乖離しない治療手段を提案できる効果がある。
以下、図面を参照しながら、実施例3にかかる治療選択支援システムを説明する。
図16は、実施例3の治療選択支援システムの構成を示すブロック図である。実施例3の治療選択支援システムは、データ分析部1601及びデータベース1650を有する。データ分析部1601は、入力部1602、出力部1603、演算装置1604、メモリ1605及び記憶媒体1606を有する。
入力部1602は、マウス及びキーボードなどのヒューマンインターフェイスであり、データ分析部1601への入力を受け付ける。出力部1603は、治療選択支援システムの処理結果をユーザが視認可能な形式で出力するディスプレイ又はプリンタである。なお、データ分析部101は、入力部102及び出力部103を有さず、ネットワークを介して接続された端末(図示省略)において、ユーザの入力を受け付け、処理結果を出力してもよい。
記憶媒体1606は、データ分析部1601によるデータ分析処理を実現するためのプログラム、及び、データ分析処理の実行結果等を格納する記憶装置である。記憶媒体1606は、例えば、大容量かつ不揮発性の記憶装置(磁気ディスクドライブ、又は、不揮発性メモリ等)によって構成される。
メモリ1605は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、記憶媒体1606に格納されるプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
演算装置1604は、記憶媒体1606が格納するプログラムをメモリ1605にロードし、実行することによってデータ分析部1601の機能を実現する。演算装置1604、例えば、CPU又はGPUなどである。以下に説明する処理及び演算は、演算装置1604が実行する。なお、演算装置1604がプログラムを実行して行う処理の一部をハードウェア(例えば、FPGA)で行ってもよい。
データベース1650は、医療情報記憶部1651、血糖制御目標情報記憶部1652、薬剤機序情報記憶部1653、血糖制御目標達成判定情報記憶部1654、整形情報記憶部1655、血糖制御能情報記憶部1656、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657及び血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658を有する。
医療情報記憶部1651は、医療情報を記憶する。医療情報は、過去の患者や現在の患者の情報であって、性別や年齢などの患者基本情報201(図2)、過去に実施した検査情報1701(図17)、過去の診療における疾病情報1801(図18)、過去に実施した血糖制御手段実施情報1901(図19)などを含む。
血糖制御目標情報記憶部1652は、血糖制御の目標となる血糖制御目標情報2001(図20)を含む。
薬剤機序情報記憶部1653は、薬剤の分類毎の機序の情報2401(図24)を含む。
血糖制御目標達成判定情報記憶部1654は、血糖制御目標達成判定部1607が医療情報記憶部1651に含まれる情報と血糖制御目標情報記憶部1652に含まれる情報に基づいて作成した血糖制御目標達成判定情報2201(図22)を含む。
整形情報記憶部1655は、データ整形部1608が、医療情報記憶部1651に含まれる情報と、血糖制御目標達成判定情報記憶部1654に含まれる情報とに基づいて作成した整形情報2301(図23)を含む。
血糖制御能情報記憶部1656は、血糖制御能推定部1609が、整形情報記憶部1655に含まれる情報及び薬剤機序情報記憶部1653に基づいて推定した、血糖制御能の情報や血糖制御能の推定方式や血糖制御能を推定するモデルの情報を含む。
血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657は、血糖制御目標達成度予測モデル構築部1610が、整形情報記憶部1655に含まれる情報と、血糖制御能情報記憶部1656に含まれる情報とに基づいて構築したモデルのデータを含む。
血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658は、血糖制御手段適正度計算モデル構築部1611が、整形情報記憶部1655に含まれる情報及び血糖制御能情報記憶部1656に含まれる情報に基づいて構築したモデルのデータを含む。
血糖制御目標達成度予測部1613は、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657に記憶されたモデルに基づいて、血糖制御目標達成度を予測する。
血糖制御手段適正度計算部1614は、血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658に記憶されたモデルに基づいて、血糖制御手段適正度を計算する。
血糖制御手段提案部1612は、血糖制御目標達成度予測部1613が予測した血糖制御目標達成度と、血糖制御手段適正度計算部1614が計算した適正度とに基づいて血糖制御手段を提案する。
演算装置1604が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD−ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してデータ分析部1601に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の記憶媒体1606に格納される。このため、データ分析部1601は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェイスを有するとよい。
データ分析部1601及びデータベース1650の各々は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。
以下、各種情報と、各処理部1607から1614について詳細に説明する。なお、図16に記載の構成要素のうち、実施例3で説明しないもの(血糖制御目標提案部1615)は、実施例4で説明する。
図2は、患者基本情報201の例を示す図である。患者基本情報201は、患者の基本的な情報を患者毎に纏めた情報である。患者基本情報201は、患者ID202、性別203、年齢204などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子である。性別203及び年齢204は、それぞれ、当該患者の性別及び年齢である。
図17は、検査情報1701の例を示す図である。検査情報1701は、患者に実施した検査の情報を纏めた情報である。検査情報1701は、患者ID202、診療ID1702、日付1703、項目ID1704、値1705、単位1706などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID1702は患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、例えば、検査ごとや通院ごとなどの単位で割り当てられる識別子である。日付1703は、当該検査を実施した日付であり、診療行為を実施した時刻の情報を含んでもよい。項目ID1704は、当該検査の種類を一意に識別するための識別子である。値1705は、当該検査の結果の情報を定量的又は定性的に示した情報である。単位1706は、値1705の単位の情報である。図17では、検査情報として、HbA1cの値及び体重の値の情報が含まれている例を示す。
図18は、疾病情報1801の例を示す図である。疾病情報1801は、患者の疾病の情報を纏めた情報である。疾病情報1801は、患者ID202、診療ID1702、日付1703、疾病ID1802などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID1702は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報1701に含まれるものと同義である。日付1703は、当該疾病の情報が取得された際の日付の情報であって、検査情報1701に含まれるものと同義である。疾病ID1802は、患者の疾病の状態を表す情報であり、例えば、疾病の種類を表すコード情報や、診療行為を表すコード情報などが含まれる。
図19は、血糖制御手段実施情報1901の例を示す図である。血糖制御手段実施情報1901は、患者に実施した血糖制御手段の情報を纏めた情報である。血糖制御手段実施情報1901は、患者ID202、診療ID1702、日付1703、薬剤ID1902、処方量1903、単位1904などを構成要素として含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID1702は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報1701に含まれるものと同義である。日付1703は、当該診療行為を実施した日付であり、薬剤ID1902は、当該患者に実施された血糖制御手段を一意に識別するための識別子である。処方量1903は、当該血糖制御手段(例えば、薬剤)の処方量の情報である。単位1904は処方量1903の単位の情報である。
図20は、血糖制御目標情報2001の例を示す図である。血糖制御目標情報2001は、血糖制御目標の情報である。血糖制御目標情報2001は、目標ID2002、項目ID304、目標値2003、目標期間2004、目標期間単位2005などを構成要素として含む。目標ID2002は、血糖制御目標を一意に識別するための識別子である。項目ID1704は、目標対象の項目、例えば検査値の種類などを一意に識別するための識別子であり、検査情報301に含まれるものと同義でよい。目標値2003は、目標情報ごとに設定された目標値である。目標期間2004は、血糖制御の実施から目標達成を判定するまでの期間である。目標期間単位2005は、目標期間2004の単位を表す情報である。血糖制御目標情報2001は、例えば、入力部1602からユーザに入力された情報に基づいて作成される。
次に、血糖制御目標達成判定部1607の処理を説明する。血糖制御目標達成判定部1607は、過去に実施した血糖制御手段が、血糖制御の目標を達成したか否かを判定する
処理を実行する。
図21は、血糖制御目標達成判定部1607が実行する処理のフローチャートである。
まず、ステップS2101では、医療情報記憶部1651に記憶された検査情報1701及び血糖制御手段実施情報1901を読み出し、メモリ1605に記憶する。
ステップS2102では、血糖制御目標情報記憶部1652に記憶された血糖制御目標情報2001を読み出し、メモリ1605に記憶する。
ステップS2103では、メモリ1605に記憶された検査情報1701、血糖制御手段実施情報1901及び血糖制御目標情報2001に基づいて、血糖制御手段ごとに血糖制御目標達成を判定し、血糖制御目標達成判定情報2201(図22)を作成する。以下、詳細に説明する。まず、患者基本情報201と検査情報1701と血糖制御手段実施情報1901と血糖制御目標情報2001とを、血糖制御手段実施情報1901に含まれる患者ID毎かつ診療ID毎かつ、血糖制御目標情報2001に含まれる目標ID毎に関連付けて、整形する。次に、患者ID毎かつ診療ID毎かつ目標ID毎に関連付けられた情報毎に、血糖制御目標情報2001に含まれる項目ID1704の項目の情報であって、血糖制御手段実施情報1901に含まれる日付1703から、目標期間2004以内に取得された検査情報1701に含まれる値1705を検索し、検索された値と目標値2003とを比較して、目標の達成を実施する。
以下、図17、図19、図20を用いて、患者IDがP0001、診療IDがV0001のデータを例に具体的に説明する。このデータは、図19に示すように、日付が2017年10月7日に、薬剤IDがM0001の薬を処方されたことを表す。この患者が、図20に示す血糖制御目標情報2001の目標IDがG0001の目標を達成したか否かを判定する例を説明する。目標IDがG0001の目標は、項目IDがI0001の検査項目の値が、目標期間及び目標期間単位で規定された30日以内に、目標値の8.0を達成することが定義されている。患者IDがP0001の患者の場合、診療IDがV0001の治療が2017年10月7日に実施されているため、その日から30日以内の、項目IDがI0001の検査情報を検索し、目標が達成されているかを判定する。本例の場合、検査情報1701に、2017年11月6日に値が7.7のデータが含まれている、すなわち、目標値以下の検査データがあるので、目標達成と判定する。
目標達成判定方法のいくつかの例を説明する。実施例3では、疾病や治療や検査の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標期間の間に一度でも値を達成したときを、目標達成と判定する方法である。第2の方法は、目標期間の間に特定の回数以上目標を達成した場合を目標達成として判定する方法である。第3の方法は、目標期間の間に一度も目標値を達成していない検査情報が存在しない場合を目標達成と判定する方法である。
図22は、血糖制御目標達成判定情報2201の例を示す図である。血糖制御目標達成判定情報2201は、患者ID202、診療ID1702、目標ID2002、達成値2202、達成判定2203を含む。患者ID202、診療ID1702、目標ID2002は、それぞれ図2、図17、図20に含まれるものと同種の情報を含む。患者ID202は、患者を一意に識別するための識別子であり、患者基本情報201に含まれるものと同義である。診療ID1702は、患者に実施した診療行為を一意に識別するための識別子であり、検査情報1701に含まれるものと同義である。目標ID2002は、治療目標を一意に識別するための識別子であり、血糖制御目標情報2001に含まれるものと同義である。達成値2202は、目標を達成した際の値(例えば、検査結果の値1705)である。達成判定2203は、目標を達成したか否かを表す情報であり、例えばTRUE又はFLASEなどの2値情報、T又はFなどの記号情報、1又は0などの数値情報として表現されうる。また、達成判定2203は連続値の情報でもよい。例えば、目標値として設定された値と達成された(又は達成されなかった)値との差を計算し、計算された差の値を達成判定2203に記録してもよい。
なお、目標期間の間に当該項目IDの検査情報がない場合、血糖制御目標達成判定情報2201のデータを作成しなくてもよいし、データが取得されていない旨を表す情報を達成判定2203に記録したデータを作成してもよい。
ステップS2104では、ステップS2103で作成した血糖制御目標達成判定情報2201を出力し、血糖制御目標達成判定情報記憶部1654に記憶する。
次に、データ整形部1608が実行する処理を説明する。データ整形部1608では、医療情報記憶部1651に記憶されている患者基本情報、検査情報、疾病情報、治療情報、及び、血糖制御目標達成判定情報記憶部1654に記憶されている血糖制御目標達成判定情報2201を、整形して一つの整形データを作成する。本整形データは、血糖制御手段の実施状況と、血糖制御手段を実施された患者の情報と、血糖制御手段の目標達成結果とを統合して含み、後述する各種モデル構築処理にて用いられる。以下、整形情報について、具体的に説明する。
図23は、整形情報2301の例を示す図である。整形情報2301は、患者ID毎かつ目標ID毎かつ診療ID毎に、患者の基本情報と、検査情報と、疾病情報と、当該診療IDに実施した血糖制御手段の実施情報と、過去の実施していた血糖制御手段の履歴情報と、血糖制御目標達成の有無の情報を纏めた情報である。
整形情報2301は、医療情報2302、血糖制御手段履歴情報2303、血糖制御手段実施情報2304、血糖制御目標達成判定情報2305を含む。医療情報2302は、当該患者の診療実施時の基本的な情報及び健康状態の情報を含み、具体的には、患者ID202、診療ID1702、性別203、年齢204、検査値(例えば、HbA1c値2306)の情報、疾病の情報、診療行為の情報などを含む。
血糖制御手段履歴情報2303は、当該診療が実施された日より前に実施された血糖制御手段の情報を纏めた情報であり、例えば、当該診療が実施される日まで継続して処方された薬剤の情報、過去30日間に処方された薬剤の情報を集約した情報などが含まれる。この集約は、例えば、薬剤毎の処方の有無を示す2値の情報でもよいし、薬剤毎の処方量を直接用いてもよい。また、薬剤毎に設定された処方上限量に対する割合として、0以上1以下の値を、処方量をあらわす指標として用いてもよい。
血糖制御手段実施情報2304は、当該診療において実施された血糖制御手段の情報を纏めた情報である。例えば、当該診療が実施された日に処方された薬剤の情報が集約された情報である。この集約は、例えば、薬剤毎の処方の有無を示す2値の情報でもよいし、薬剤毎の処方量を直接用いてもよい。また、薬剤毎に設定された処方上限量に対する割合として、0以上1以下の値を、処方量を表す指標として用いてもよい。血糖制御目標達成判定情報2305は、当該血糖制御手段の実施が、血糖制御目標を達成したか否かの情報である。具体的には、血糖制御目標達成判定情報2201の中で、当該血糖制御手段実施情報2304に対応付けられるものが格納される。
なお、整形情報2301を構成する際に、全てのカテゴリ変数を数値変数に変換してもよい。例えば、性別203の情報は、男性を1、女性を0と表す数値に変換してもよい。また、血糖制御手段履歴情報2303及び血糖制御手段実施情報2304に関しても、薬剤毎に処方量の単位が異なる場合、処方量上限に対する割合の値として正規化や標準化してもよい。達成判定2203の情報は、達成を1、未達成を0と表す数値に変換してもよい。このような変換によって、後述する各種モデル構築処理及び血糖制御能推定処理における数値計算処理において、適用可能な演算の範囲が拡大する効果がある。構築した整形情報2301は、整形情報記憶部1655に記憶される。
なお、実施例3では、図23に示すように、患者に過去に実施された治療手段の情報を、患者毎かつ治療手段毎かつ治療手段が割り当てられたタイミング毎に纏めた形式の整形情報2301を使用したが、患者に過去に実施された治療手段の情報が含まれていれば他の形式でもよい。
次に、血糖制御能推定部1609を説明する。血糖制御能推定部1609は、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301と薬剤機序情報記憶部1653に記憶された薬剤機序情報に基づいて、血糖制御能を患者毎かつ診療のタイミング毎に推定し、推定された血糖制御能を血糖制御能情報記憶部1656に記憶する。血糖制御能は、患者に対する、血糖制御手段の機序ごとの有効性を表す指標であって、患者の過去の治療実施履歴と、当該治療実施履歴における治療目標達成可否の情報との関係性に基づいて推定される。
本治療選択支援システムにおいて、血糖制御能を推定する目的を説明する。糖尿病では、治療が長期化すると、以前と同じ薬剤でも効果が減少し、血糖を低下させる目標を達成できない場合がある。例えば、インスリンの分泌を促す種類の薬剤では、投薬治療の長期化に伴い、すい臓のインスリン分泌能が衰えて、同じ機序の薬を処方しても効果が生じない場合があることが知られている。このように、糖尿病の治療においては、過去に処方した薬剤の機序と処方期間、及び当該薬剤の効果が継続的な有効性を時系列的に考慮して、投薬を決定することが重要である。そこで、過去の投薬のパターンとその効果から血糖制御能を推定し、この情報に基づいて適切な薬剤を提案することによって、より正確な投薬治療提案を実現する。
まず、図24を用いて、血糖制御能推定に用いる薬剤機序情報を説明する。図24は、薬剤機序情報2401の例を示す図である。薬剤機序情報2401は、血糖制御手段毎の薬剤機序の情報を含む情報である。薬剤機序情報2401は、薬剤ID1902、分類2402、化合物2403、機序2404などを構成要素として含む。薬剤ID1902は、血糖制御手段実施情報1901に含まれるものと同義である。分類2402は、血糖制御手段である薬剤の分類を示す情報である。化合物2403は、薬剤に含まれる化合物を示す情報である。機序2404は、薬剤の機序分類を示す情報であり、例えばインスリン抵抗性改善、インスリン分泌促進、糖排出調節、糖吸収調節などの分類情報が含まれる。
次に、図25を用いて血糖制御能推定処理が実行する処理を説明する。図25は、血糖制御能推定部1609が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS2501では、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301を読み出す。
ステップS2502では、薬剤機序情報記憶部1653に記憶された薬剤機序情報2401を読み出す。
ステップS2503では、整形情報2301及び薬剤機序情報2401に基づいて、患者毎かつ診療ID毎の血糖制御能を薬剤機序ごとに推定する。
血糖制御能の推定方法のいくつかの例を説明する。実施例3では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、当該患者毎かつ診療ID毎に、当該診療IDの日より前に実施された血糖制御手段の履歴情報を、薬剤機序情報2401に基づいて薬剤機序ごとに集計して、各薬剤機序別の処方履歴情報を集約した情報を、血糖制御能とする方法である。例えば、診療IDの日付から過去1年間に処方された薬剤の累積処方量を薬剤機序ごとに集計する。集計した情報は、例えば集計した量をそのまま用いてもよいし、累積処方量が少ないほど大きく、累積処方量が多いほど小さくなる数値指標に変換して、返還された数値指標を血糖制御能として用いてもよい。また、処方量でなく処方期間を用いてもよい。第1の方法によって、患者の過去の薬剤機序毎の累積処方量や処方期間の情報から、患者の薬剤機序別の血糖制御能を推定できる。
第2の方法は、当該患者毎かつ診療ID毎に、当該診療IDの日より前に実施された血糖制御手段の履歴情報を、薬剤機序情報2401に基づいて薬剤機序ごとに集計して、各薬剤機序別の処方履歴情報を集約した情報と、治療目標対象として着目している検査値の変化の情報との関連性の分析結果に基づいて、血糖制御能を推定する方法である。例えば、薬剤機序毎の過去の継続的な処方期間と、患者の医療情報2302と、検査値の変化量との関連を表すモデル(例えば、回帰モデル)を構築する。この回帰モデルを、整形情報2301内の全てのデータを用いて構築した後に、患者ID毎かつ診療ID毎に予測した各検査値の変化量予測の期待値の情報を血糖制御能の情報として利用する。第2の方法によって、例えば、ある薬剤機序の薬剤を新規に処方した場合と、継続して処方を続ける場合とにおける検査値に与える影響の差を表す数値情報を計算できる。
第3の方法は、患者の薬剤機序毎の時系列の処方実績と、時系列の治療効果との関係性を表すモデルを構築し、構築されたモデルから血糖制御能の情報を抽出する方法である。まず、整形情報に含まれる各レコードのうち、血糖制御手段履歴情報2303及び血糖制御手段実施情報2304を、薬剤機序情報2401に基づいて薬剤機序ごとに集約した情報を構築する。集約方法としては、例えば、薬剤ごとの処方量を最大処方量に対する割合によって表し、その値を合算することで集約してもよい。次に、集約した薬剤機序ごとの血糖制御手段履歴情報2303と血糖制御手段実施情報2304と患者の医療情報2302とを、ある時点における患者の状態を表すベクトルとして表す。このベクトルを患者単位で時系列に並べたベクトル列の情報に基づいて、患者毎の時系列のベクトルの遷移を予測するモデルを構築し、構築されたモデルから、血糖制御能の情報を抽出する。モデル化の方法としては、時系列の推移に伴い、時系列の内部状態を有するモデルを構築する。例えば、時系列を考慮した状態空間モデルや、時系列を考慮した深層学習モデル、例えばLSTM(LONG−SHORT−TERM−MEMORY)などの公知の方法を用いることができる。そして、構築されたモデルから、各時系列ステップの血糖制御能の情報を推定する。例えばLSTMを用いる場合、まず全ての患者の情報を用いて、次の時系列ステップのベクトルを予測するモデルを構築する。次に、各患者の時系列ステップごとに、それまでの時系列の情報を全て入力して予測を実施し、その際に取得された内部状態ベクトルの情報を血糖制御能の情報として扱う。この内部状態を、患者毎かつ診療ID毎かつ薬剤機序毎に推定し、内部状態を表すベクトルを血糖制御能として推定する。
ステップS2504では、ステップ2503で採用された血糖制御能推定方式を、血糖制御能情報記憶部1656に記憶する。例えば、推定に用いた推定式、ロジック、モデルなどの処理演算方法を、演算装置1604で利用可能な形式で記憶する。
ステップS2505では、ステップS2503で推定された血糖制御能の情報を、血糖制御能情報記憶部1656に記憶する。
図26は、血糖制御能情報記憶部1656に記憶される血糖制御能情報2601の例を示す図である。血糖制御能情報2601は、患者ID202及び診療ID203の他に、血糖制御能として、例えば、インスリン抵抗性改善2602、インスリン分泌促進2603、糖吸収調整2604、糖排出調整2605などの情報を含む。さらに、血糖制御能情報2601は、血糖制御能推定方式2606を含む。
血糖制御能に含まれる各情報2602〜2605は、各機序の薬剤が、患者に既に処方されている期間、及び、当該機序の薬剤の効果を示す指標であり、例えば、この例では、0以上1以下の値で表現される。例えば、指標値が1の場合、これまでに一度も処方されていないことを示す。また、指標値が0場合、同一薬剤の処方が継続された結果、血糖が変化しづらくなっている状態であることを示す。
血糖制御能推定方式2606は、ステップ2503で採用された血糖制御能推定方式、例えば、推定に用いた推定式、ロジック、モデルなどを、演算装置1604で利用可能な形式(例えば、ファイル名や、当該式を起動するための情報)で記憶する。
次に、血糖制御目標達成度予測モデル構築部1610を説明する。血糖制御目標達成度予測モデル構築部1610では、血糖制御手段ごとの目標達成度を患者毎かつ血糖制御手段毎に予測する血糖制御目標達成度予測モデルを構築する。
図27は、血糖制御目標達成度予測モデル構築部1610が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS2701では、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301を読み出す。
ステップS2702では、血糖制御能情報記憶部1656に記憶された血糖制御能情報2601を読み出す。
ステップS2703では、整形情報2301に記憶された情報の中で、血糖制御目標達成度予測モデルを構築する特定の目標IDと一致する情報を整形情報2301から抽出する。例えば、目標IDがG0001に関する血糖制御目標達成度予測モデルを構築する場合は、目標IDがG0001と一致する情報を整形情報2301から抽出する。併せて、抽出した目標IDに対応する整形情報2301の患者ID202及び診療ID1702が一致する血糖制御能2602〜2605を血糖制御能情報2601から抽出する。
ステップS2704では、ステップS2703で決定した血糖制御目標に基づいて抽出された整形情報2301及び血糖制御能情報2601に基づいて、血糖制御目標達成度予測モデルを構築する。血糖制御目標達成度予測モデルは、患者毎かつ血糖制御手段毎に、患者の情報及び血糖制御能の情報に基づいて、整形情報2301に含まれる目標の達成判定2203の情報を予測するモデルである。
血糖制御目標達成度予測モデルのいくつかの例を説明する。実施例3では、いずれの方法でモデルを構築してもよい。第1のモデルは、血糖制御目標の達成の有無の確率を予測するモデルである。第2のモデルは、血糖制御目標の達成値と目標値との差の値を予測するモデルである。血糖制御目標達成度予測モデルの入力変数は、医療情報2302、血糖制御手段履歴情報2303、血糖制御手段実施情報2304及び血糖制御能情報2601に含まれる情報の全て又はいずれかの組み合わせとする。例えば、血糖制御目標の達成の有無の確率を予測するモデルとしては、統計的モデルであるロジスティック回帰や、機械学習を用いたベイジアンネットワーク、多層パーセプトロン、BOOSTING TREEなどの様々なモデルを用いることができる。
ステップS2704では、ステップ2703で構築した血糖制御目標達成度予測モデルを、該当する血糖制御目標の目標ID、及び、ステップS2702で読み出し血糖制御能を推定する際に用いた血糖制御能推定方式の情報と併せて、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657に記憶する。
次に、血糖制御手段適正度計算モデル構築部1611を説明する。血糖制御手段適正度計算モデル構築部1611では、血糖制御手段毎の適正度を患者毎かつ診療時毎に予測する血糖制御手段適正度計算モデルを構築する。
図28は、血糖制御手段適正度計算モデル構築部1611が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS2801では、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301を読み出す。
ステップS2802では、血糖制御能情報記憶部1656に記憶された血糖制御能情報2601を読み出す。
ステップS2803では、整形情報2301及び血糖制御能情報2601に基づいて、血糖制御手段適正度計算モデルを構築する。血糖制御手段適正度計算モデルは、整形情報2301に含まれる血糖制御手段の適正度を患者毎かつ血糖制御手段ごとに予測するモデルである。
治血糖制御手段適正度計算モデルのいくつかの例を説明する。実施例3では、血糖制御手段の特性によって、いずれの方法でモデルを構築してもよい。第1のモデルは、患者毎に当該血糖制御手段が割り当てられる確率を、過去の情報に基づいて予測するモデルである。第2のモデルは、患者毎に当該血糖制御手段が割り当てられた過去の類似症例患者の人数を予測するモデルである。血糖制御手段適正度計算モデルの入力変数は、医療情報2302、血糖制御手段履歴情報2303、血糖制御手段実施情報2304及び血糖制御能情報2601に含まれる全て又はいずれかの情報の組み合わせとする。例えば、予測モデルの形態としては、統計的モデルであるロジスティック回帰や、機械学習を用いたベイジアンネットワーク、多層パーセプトロン、BOOSTING TREEなどの様々な方法を用いることができる。
ステップS2804では、ステップ2803で構築した血糖制御手段適正度計算モデルを、ステップS2802で読み出した血糖制御能を推定する際に用いた血糖制御能推定方式の情報と併せて、血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658に記憶する。
次に、血糖制御手段提案部1612を説明する。血糖制御手段提案部1612は、患者毎に適切な血糖制御手段を提案する。具体的には、血糖制御手段提案部1612は、血糖制御目標達成度予測部1613及び血糖制御手段適正度計算部1614を有する。血糖制御手段提案部1612は血糖制御目標達成度を、血糖制御目標達成度予測部1613は血糖制御手段適正度を、血糖制御手段ごとに評価する。その後、血糖制御目標達成度及び血糖制御手段適正度の二つの指標を組み合わせて、血糖制御手段を評価するスコアを計算し、計算されたスコアに基づいて、適切な血糖制御手段を患者に提案する。
図29は、血糖制御手段提案部1612が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS2901では、血糖制御手段を提案する対象の患者基本情報201が血糖制御手段提案部1612に入力される。入力される情報は、年齢や性別の検査情報1701、過去の疾病情報1801、血糖制御手段実施情報1901などが含まれる。このとき、入力された情報は、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301と同じ形式に整形してメモリ1605に記憶される。
ステップS2902では、血糖制御の目標が血糖制御手段提案部1612に入力される。例えば、血糖制御の目標は、血糖制御目標情報記憶部1652に記憶されている血糖制御目標情報2001の中から、適切な血糖制御目標の情報を選択するとよい。
ステップS2903では、ステップS2901で整形された整形情報に基づいて、対象の患者の血糖制御能を推定する。具体的には、血糖制御能情報記憶部1656に記憶された血糖制御能情報2601の中の血糖制御能推定方式2606の中から、対象の患者に適用する血糖制御能推定方式を選択して、当該血糖制御能情報が推定された方法と同じ方法で血糖制御能を推定する。血糖制御能の推定方式は、予め決まった推定方式を利用してもよいし、患者個別に適切な方法をユーザが指定してもよい。
ステップS2904では、血糖制御手段の候補が血糖制御手段提案部1612に入力される。血糖制御手段は、例えば、いくつかの具体的な薬剤名称の集合として与えられてもよいし、類似する薬剤を纏めた分類の粒度で与えられてもよい。
ステップS2905では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段の候補から、予測を実施する血糖制御手段を一つ選択する。
ステップS2906では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段を患者に適用した場合の仮想的な手段適応データを構築する。具体的には、整形情報2301の血糖制御手段実施情報2304の中に、予測する血糖制御手段の情報を仮想的に格納し、血糖制御手段を実施した場合のシナリオを表すレコードを作成する。
ステップS2907では、血糖制御目標達成度予測部1613が、ステップS2906で作成した仮想的な手段適応データに基づいて、血糖制御手段を適用した場合の目標達成度を予測する。具体的には、血糖制御目標達成度予測部1613は、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657に記憶された血糖制御目標達成度予測モデルの中で、ステップS2902で選択した血糖制御目標に該当する血糖制御目標達成度予測モデルを用いて、当該血糖制御手段の目標達成度を予測する。
ステップS2908では、血糖制御手段適正度計算部1614が、血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658に記憶された血糖制御手段適正度計算モデルを用いて、ステップS2906で作成された仮想的な手段適応データに基づいて、血糖制御手段の適正度を計算する。
ステップS2909では、血糖制御手段提案部1612が、予測対象の血糖制御手段の血糖制御手段提案スコアを計算する。血糖制御手段提案スコアは、ステップS2907で予測した目標達成度と、ステップS2908で計算した適正度との二つの指標に基づいて計算する。
血糖制御手段提案スコアの計算方法のいくつかの例を説明する。実施例3では、目標の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標達成確率と適正度との四則演算の結果を血糖制御手段提案スコアとする方法である。例えば、二つの指標の積を新たなスコアとすることができる。第2の方法は、適正度に基づく活性化関数を定義し、定義された活性化関数の値を目標達成確率とを乗じて血糖制御手段提案スコアを計算する方法である。例えば、適正度が閾値以下の場合は0、閾値以上の場合は適正度の値をそのまま返す活性化関数を定義して、適正度がある閾値以下の場合は0、それ以外の場合は、二つの指標の積が血糖制御手段提案スコアとなる。
ステップS2910では、血糖制御手段提案部1612が、全ての血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアの計算が終了した場合、ステップS2911に進む。一方、一部の血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS2905に進む。
ステップS2911では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段毎に計算されたスコアに基づいて、適切な血糖制御手段を提案する。
治療手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例3では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、血糖制御手段提案スコアが最大の血糖制御手段を提案する方法である。第2の方法は、血糖制御手段提案スコアが閾値以上の一つ以上の血糖制御手段を提案する方法である。提案された血糖制御手段は、例えば、出力部1603によってユーザに提示される。
図30A、図30Bは、実施例3のユーザインターフェイス画面3001の例を示す図である。図30A、図30Bに示す血糖制御手段提案画面の例は、出力部1603に表示される画面3001の例であり、患者に提案する血糖制御手段を分析した結果を示す画面の例である。画面3001は、患者情報選択ボタン3002、血糖制御能推定ボタン3003、血糖制御手段提案ボタン3004、患者基本情報表示領域3005、患者検査情報表示領域3006、血糖制御能推定結果表示領域3007、血糖制御目標設定領域3008及び血糖制御手段提案結果表示領域3009を含む。
患者情報選択ボタン3002は、分析対象の患者の情報をデータベースから取得するために操作されるボタンである。
血糖制御能推定ボタン3003は、分析対象の患者の血糖制御能を推定するために操作されるボタンである。
血糖制御手段提案ボタン3004は、選択された患者の情報に基づいて、血糖制御手段の提案処理を実行するために操作されるボタンである。
患者基本情報表示領域3005は、選択された患者の基本情報を表示する領域である。
患者検査情報表示領域3006は、選択された患者の検査情報を表示する領域である。
血糖制御能推定結果表示領域3007は、選択された患者の血糖制御能の推定結果を表示する領域である。
血糖制御目標設定領域3008は、血糖制御の目標を設定するための領域である。血糖制御目標設定領域3008は、例えば、血糖制御の目標とする項目が指定される欄、目標値が設定される欄、目標達成期間の長さや単位が設定される欄などを含む。
血糖制御手段提案結果表示領域3009は、血糖制御手段提案結果を表示するための領域である。血糖制御手段提案結果表示領域3009は、例えば、血糖制御目標達成度予測部1613の処理結果や、血糖制御手段適正度計算部1614の処理結果や、血糖制御手段提案部1612の処理結果を、血糖制御手段別に可視化して表示する。例えば、目標達成確率、血糖制御適正度、提案スコアなどの、血糖制御手段別に計算された指標を、円グラフや棒グラフなどのグラフを表示によって可視化するとよい。さらに、提案する血糖制御手段の情報を表示する。
さらに、血糖制御手段提案結果表示領域3009は、血糖制御適正度及び血糖制御目標達成度に基づいて提案スコアを計算する方法である提案スコア計算ロジックを指定するインターフェイスを含む。図30Aでは、血糖制御手段提案結果表示領域3009は上側の一部の領域のみが図示されている(提案スコア計算ロジック設定領域の下側が表示されていない)が、画面3001右側のスクロースバーの操作によって、血糖制御手段提案結果表示領域3009は全部が表示されている状態を図30Bに図示した。
血糖制御手段提案結果表示領域3009は、例えば、図30A、図30Bに示す例では、適正度に関するステップ関数を重みとして、血糖制御目標達成度に乗じた値を血糖制御の提案スコアとして計算する方法が指定されている。この場合、血糖制御適正度が0.1未満の血糖制御方法は、スコアが0になり、血糖制御適正度が0.1以上の血糖制御方法は、目標達成確率がスコアの値になる。これにより、適正度が低い血糖制御手段より適正度が高い血糖制御手段の中から、目標達成度が高い血糖制御を優先的に提案できる。
ユーザは、画面3001を参照することによって、患者毎の基本情報及び検査情報を確認でき、さらに、設定した血糖制御目標に対する達成確率と、患者への適正度との両方を考慮して、患者に適切な血糖制御手段を割り当てられる。
図31は、図30A、図30Bで示したユーザインターフェイス3001を用いた血糖制御手段提案処理のシーケンス図である。この例では、ユーザインターフェイス3001と、医療情報記憶部1651と、血糖制御目標情報記憶部1652と、血糖制御手段提案部1612と、血糖制御能推定部1609と、血糖制御目標達成度予測部1613と、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657と、血糖制御手段適正度計算部1614との間における情報のやりとり及び処理の流れを示す。図31における符号S2901、S2902、S2903、S2907、S2908、S2909、S2911は、図29に示すフローチャートにおける処理ステップを示す。
まず、ユーザは、分析対象の患者の情報(例えば、患者ID、氏名など)を入力部102に入力し、患者情報選択ボタン3002を操作して、分析対象の患者の情報を医療情報記憶部1651から取得する。そして、当該患者の血糖制御目標情報を血糖制御目標情報記憶部1652から取得してもよい。なお、当該患者の血糖制御目標情報が血糖制御目標情報記憶部1652に設定されていない場合、血糖制御目標情報入力画面を表示し、当該患者の血糖制御目標情報の入力を促してもよい。
その後、ユーザは、血糖制御手段提案ボタン3004を操作して、血糖制御手段提案処理を開始する。以後の処理は、図29で説明したものと同じである。
以上のように、実施例3の治療選択支援システムでは、糖尿病治療において、継続的な治療に伴う薬剤の効果の減退を考慮しながら、患者毎に設定された血糖制御目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が高い治療手段を割り当てられる。
<実施例4>
実施例3では、患者毎に設定された血糖制御目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、血糖制御目標達成度が最も高い血糖制御手段の選択を可能にする治療選択支援システムの例を説明した。実施例4では、患者の情報に基づいて、患者毎の適切な血糖制御目標を自動的に決定可能な治療選択支援システムを説明する。
実施例4の治療選択支援システムの構成は、図16で示したものと同じである。実施例4の治療選択支援システムでは、血糖制御目標提案部1615が機能している点で、前述した実施例3の治療選択システムと相違する。他の構成及び処理は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
血糖制御目標提案部1615は、患者の情報に基づいて、適切な血糖制御目標を血糖制御目標情報記憶部1652から選択する。
図32は、実施例4において、血糖制御手段提案部1612が実行する処理のフローチャートである。以下、各処理ステップを説明する。
ステップS3201では、血糖制御手段を提案する対象の患者基本情報201が血糖制御手段提案部1612に入力される。入力される情報は、年齢や性別の検査情報1701、過去の疾病情報1801、血糖制御手段実施情報1901などが含まれる。このとき、入力された情報は、整形情報記憶部1655に記憶された整形情報2301と同じ形式に整形してメモリ1605に記憶される。
ステップS3202では、ステップS3201で整形された整形情報に基づいて、対象の患者の血糖制御能を推定する。具体的には、血糖制御能情報記憶部1656に記憶された血糖制御能情報2601の中の血糖制御能推定方式2606の中から、対象の患者に適用する血糖制御能推定方式を選択して、当該血糖制御能情報が推定された方法と同じ方法で血糖制御能を推定する。血糖制御能の推定方式は、予め決まった推定方式を利用してもよいし、患者個別に適切な方法をユーザが指定してもよい。
ステップS3203では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段の候補から血糖制御手段を一つ選択する。例えば、血糖制御手段は、いくつかの具体的な薬剤名称の集合として与えられてもよく、類似する薬剤を纏めた分類の粒度で与えられてもよい。
ステップS3204では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段を患者に適用した場合の仮想的な手段適応データを構築する。具体的には、整形情報2301の血糖制御手段実施情報2304の中に、予測する血糖制御手段の情報を仮想的に格納し、血糖制御手段を実施した場合のシナリオを表すレコードを作成する。
ステップS3205では、血糖制御手段適正度計算部1614が、血糖制御手段適正度計算モデル記憶部1658に記憶された血糖制御手段適正度計算モデルを用いて、ステップS3204で作成された仮想的な手段適応データに基づいて、血糖制御手段の適正度を計算する。
ステップS3206では、血糖制御目標提案部1615が、血糖制御目標の候補となる情報を一つ選択する。例えば、血糖制御目標情報記憶部1652に記憶されている血糖制御目標情報2001の中に含まれる血糖制御目標から候補を選択するとよい。この選択は、例えば、ある目標達成期間内で血糖制御目標値が異なる目標を候補として選択してもよく、ある血糖制御目標値に範囲内で血糖制御目標達成期間が異なる目標を候補として選択してもよい。
ステップS3207では、血糖制御目標達成度予測部1613が、ステップS3204で作成した仮想的な手段適応データに基づいて、血糖制御手段を適用した場合の目標達成度を予測する。具体的には、血糖制御目標達成度予測部1613は、血糖制御目標達成度予測モデル記憶部1657に記憶された血糖制御目標達成度予測モデルの中で、ステップS3206で選択した血糖制御目標に該当する血糖制御目標達成度予測モデルを用いて、当該血糖制御手段の目標達成度を予測する。
ステップS3208では、血糖制御手段提案部1612が、予測対象の血糖制御手段の血糖制御手段提案スコアを計算する。血糖制御手段提案スコアは、ステップS3205で計算された血糖制御手段適正度と、ステップS3207で予測された目標達成度との二つの指標に基づいて計算する。
血糖制御手段提案スコアの計算方法のいくつかの例を説明する。実施例4では、目標の特性によって、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、目標達成確率と適正度との四則演算の結果を新たなスコアとする。例えば、二つの指標の積を新たなスコアとすることができる。第2の方法は、適正度に基づく活性化関数を定義し、この活性化関数の値を目標達成確率とを乗じて血糖制御手段提案スコアを計算する方法である。例えば、適正度が閾値以下の場合は0、閾値以上の場合は適正度の値をそのまま返す活性化関数を定義して、適正度がある閾値以下の場合は0、それ以外の場合は、二つの指標の積がスコアとなるスコアを定義となる。
ステップS3209では、血糖制御手段提案部1612が、全ての血糖制御目標の候補の血糖制御手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアを計算が終了した場合、ステップS3210に進む。一方、一部の血糖制御目標の候補の血糖制御手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS3203に進む。ステップS3209において、血糖制御手段提案スコアの計算が終了したかの判定対象となる血糖制御目標の候補は、例えば、血糖制御目標情報記憶部1652に記憶されている血糖制御目標情報2001に含まれる全ての血糖制御目標でもよい。また、ある血糖制御目標達成期間内の血糖制御目標でもよく、ある血糖制御目標の範囲内の血糖制御目標でもよい。
ステップS3210では、血糖制御手段提案部1612が、全ての血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアを計算したか否かを判定する。全ての血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアの計算が終了した場合、ステップS3211に進む。一方、一部の血糖制御手段の候補の血糖制御手段提案スコアの計算が終了していない場合、ステップS3203に進む。
ステップS3211では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御目標候補毎かつ血糖制御手段毎に計算された血糖制御手段提案スコアの情報に基づいて、血糖制御目標を提案する。
治療手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例4では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、血糖制御手段提案スコアが最も高い値が計算された血糖制御目標を、患者に対する血糖制御目標として提案する方法である。第1の方法では、実際の診療実績から乖離しない治療(血糖制御)によって、達成の見込みが大きい血糖制御目標を提案できる。第2の方法は、血糖制御手段提案スコアが閾値以上の血糖制御手段が一つ以上ある血糖制御目標を提案する方法である。第2の方法では、実現可能性が低い治療目標(血糖制御目標)を除外して提案できる。以上、二つの例を説明したが、血糖制御目標の提案方法は例示した方法に限られず、血糖制御目標毎かつ血糖制御手段毎に計算された血糖制御手段提案スコアを活用して提案すれば様々な方法が採用できる。
ステップS3212では、血糖制御手段提案部1612が、血糖制御手段毎に計算された血糖制御手段提案スコアに基づいて、適切な血糖制御手段を提案する。
血糖制御手段の提案方法のいくつかの例を説明する。実施例4では、いずれの方法を採用してもよい。第1の方法は、ステップS3208で提案した血糖制御目標に対する血糖制御手段の中で、血糖制御手段提案スコアが最大の血糖制御手段を提案する方法である。第2の方法は、ステップS3208で提案した血糖制御目標に対する血糖制御手段の中で、血糖制御手段提案スコアが閾値以上の一つ以上の血糖制御手段を提案する方法である。提案された血糖制御手段は、例えば、出力部1603によってユーザに提示される。
以上のように、実施例4の治療選択支援システムでは、患者の情報に基づいて、患者毎の適切な血糖制御目標を自動的に決定できる。
実施例4にかかる治療選択支援システムでは、冒頭に説明した効果の他に、血糖制御目標を患者毎に提案できる。例えば、患者に対してある血糖制御目標を設定した場合、どの血糖制御手段を用いても血糖制御達成の見込みが小さいとき、その血糖制御目標は患者にとって達成が困難な目標である可能性がある。実施例4の治療選択支援システムでは、血糖制御手段提案スコアを、血糖制御目標毎かつ血糖制御手段毎に計算し、このスコアを用いて血糖制御目標を判定することによって、例えば、達成の可能性が高い血糖制御目標の情報をユーザに提供できる。
実施例3及び4では、糖尿病の治療手段(血糖制御手段)を例にして説明したが、より一般化すると、本発明は他の慢性疾患における対処療法にも適用可能である。この場合、実施例3、4の各構成や処理において「血糖制御」を「治療」と読み替える。例えば、高血圧、精神疾患(うつ病)、認知症、癌の抗癌剤治療にも適用可能である。特に、複数の臓器が影響している疾患では、効能が生じる臓器が治療手段によって異なるので、機序情報を考慮することによって、より適切な治療手段を提案できる。
以上に説明したように、本発明の実施例によると、データ分析部101は、整形情報901に基づいて、治療手段毎の治療目標の達成度を含む治療目標達成判定情報801を作成する治療目標達成判定部107と、整形情報901及び治療目標達成判定情報801に基づいて、治療目標の達成度を予測するための治療目標達成度予測モデルを構築する治療目標達成度予測モデル構築部109と、整形情報901及び治療目標達成判定情報801に基づいて、治療手段の適正度を計算するための治療手段適正度計算モデルを構築する治療手段適正度計算モデル構築部110と、治療目標達成度予測モデルを用いて、患者の治療目標の達成度を治療手段毎に予測する治療目標達成度予測部112と、治療手段適正度計算モデルを用いて、患者に対する治療手段の適正度を計算する治療手段適正度計算部113と、予測された治療目標達成度及び計算された治療手段適正度に基づいて、患者に適する治療手段の情報を提供する治療手段提案部111とを備えるので、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が高い治療手段の選択できる。
また、治療目標達成判定部107は、治療目標の達成の可否によって、治療目標の達成度を判定し、治療目標達成度予測モデル構築部109は、整形情報901及び治療目標達成判定情報801に基づいて、治療目標の達成確率を予測するための治療目標達成度予測モデルを構築し、治療目標達成度予測部112は、治療目標達成度として、治療目標の達成確率を治療手段毎に予測するので、ユーザが分かりやすい確率を指標に用いて、治療目標の達成確率を予測できる。
また、治療手段適正度計算モデル構築部110は、整形情報901及び治療目標達成判定情報801に基づいて、患者に治療手段が割り当てられる確率を予測するための治療手段適正度計算モデルを構築し、治療手段適正度計算部113は、治療手段適正度として、患者に当該治療手段が割り当てられる確率を治療手段毎に予測するので、ユーザが分かりやすい確率を指標に用いて、治療手段の適正度を予測できる。
また、治療手段提案部111は、治療目標達成度の値を治療手段適正度の値で重み付けして計算される提案スコアに基づいて、患者に適する治療手段の情報を提供するので、治療手段の有効性を提案スコアによって定量的に把握でき、治療手段の情報を的確に提供できる。
また、データ分析部101は、治療目標達成度及び治療手段適正度に基づいて、患者に適する治療目標の情報を提供する治療目標提案部114を備えるので、患者毎の適切な(例えば、達成可能性が高い)治療目標を決定できる。
また、データ分析部101は、作用機序分類毎の治療手段の実施履歴を含む治療効能情報(血糖制御能情報2601)を作成する治療効能推定部(血糖制御能推定部1609)を備え、治療目標達成度予測モデル構築部(血糖制御目標達成度予測モデル構築部1610)は、整形情報2301、治療目標達成判定情報(血糖制御目標達成判定情報2201)及び治療効能情報(血糖制御能情報2601)に基づいて、治療目標達成度予測モデルを構築し、治療手段適正度計算モデル構築部(血糖制御手段適正度計算モデル構築部1611)は、整形情報2301、治療目標達成判定情報(血糖制御目標達成判定情報2201)及び治療効能情報(血糖制御能情報2601)に基づいて、治療手段適正度計算モデルを構築するので、継続的な治療に伴う薬剤機序別の効果の減少を考慮しつつ、患者毎に設定された治療目標に対して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が高い治療手段を割り当てられる。
また、治療効能推定部(血糖制御能推定部1609)は、整形情報に含まれる治療手段の作用機序分類毎の実施と、治療手段の結果との関係を示す関係性モデルを構築し、関係性モデルを用いて、治療手段が割り当てられたタイミング毎の治療結果を予測し、予測された治療結果又は治療の結果を予測するために用いたパラメータの情報を含む治療効能情報(血糖制御能情報2601)を作成するので、長期的な治療履歴を考慮して、過去の診療実績から乖離せず、かつ、治療目標達成度が高い治療手段を割り当てられる。
特許請求の範囲に記載した以外の本発明の観点の代表的なものとして、以下のものがあげられる。
(1)治療選択支援システムが糖尿病治療のための血糖制御手段の選択を支援する方法であって、
前記治療選択支援システムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置に接続された記憶デバイスと、前記演算装置に接続された通信インターフェイスとを有する計算機によって構成され、
前記記憶デバイスは、前記血糖制御手段と、少なくとも糖吸収調節、糖排出調節、インスリン分泌促進及びインスリン抵抗性改善を含む作用機序分類とが対応づけられた機序情報と、患者に行われた治療の情報を含む整形情報と、を格納し、
前記方法は、
前記演算装置が、前記整形情報に基づいて、前記血糖制御手段毎の血糖制御目標の達成度を含む目標達成判定情報を作成する目標達成判定手順と、
前記演算装置が、前記作用機序分類毎の前記血糖制御手段の実施履歴を含む血糖制御能情報を作成する血糖制御能推定手順と、
前記演算装置が、前記整形情報、前記目標達成判定情報及び前記血糖制御能情報に基づいて、血糖制御目標の達成度を予測するための達成度予測モデルを構築する達成度予測モデル構築手順と、
前記演算装置が、前記整形情報、前記目標達成判定情報及び前記血糖制御能情報に基づいて、前記血糖制御手段の適正度を計算するための適正度計算モデルを構築する適正度計算モデル構築手順と、
前記演算装置が、前記達成度予測モデルを用いて、前記患者の血糖制御目標の達成度を前記血糖制御手段毎に予測する達成度予測手順と、
前記演算装置が、前記適正度計算モデルを用いて、前記患者に対する前記血糖制御手段の適正度を計算する適正度計算手順と、
前記演算装置が、前記予測された達成度及び前記計算された適正度に基づいて、前記患者に適する血糖制御手段の情報を提供する血糖制御手段提案手順と、を含むことを特徴とする方法。
(2)前記血糖制御能推定手順では、
前記演算装置が、前記整形情報に含まれる血糖制御手段の前記作用機序分類毎の実施と、前記血糖制御手段の結果との関係を示す関係性モデルを構築し、
前記演算装置が、前記関係性モデルを用いて、前記血糖制御手段による結果を予測し、
前記演算装置が、前記予測された結果又は前記結果を予測するために用いたパラメータの情報を含む血糖制御能情報を作成することを特徴とする方法。
(3)前記目標達成判定手順では、前記演算装置が、前記血糖制御目標の達成の可否によって、前記血糖制御目標の達成度を判定し、
前記達成度予測モデル構築手順では、前記演算装置が、前記整形情報及び前記目標達成判定情報に基づいて、前記血糖制御目標の達成確率を予測するための達成度予測モデルを構築し、
前記達成度予測手順では、前記演算装置が、前記血糖制御目標の達成度として、前記血糖制御目標の達成確率を前記血糖制御手段毎に予測することを特徴とする方法。
(4)前記適正度計算モデル構築手順では、前記演算装置が、前記整形情報及び前記目標達成判定情報に基づいて、前記患者に当該血糖制御手段が割り当てられる確率を予測するための適正度計算モデルを構築し、
前記適正度計算手順では、前記演算装置が、前記血糖制御手段の適正度として、前記患者に当該血糖制御手段が割り当てられる確率を前記血糖制御手段毎に予測することを特徴とする方法。
(5)前記血糖制御手段提案手順では、前記演算装置が、前記達成度の値を前記適正度の値で重み付けして計算される提案スコアに基づいて、前記患者に適する血糖制御手段の情報を提供することを特徴とする方法。
(6)さらに、前記達成度及び前記適正度に基づいて、前記患者に適する血糖制御目標の情報を提供する血糖制御目標提案手順を含むことを特徴とする方法。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。