JP2019094908A - ガスエンジンの空燃比制御装置及び空燃比制御装置付きガスエンジンを搭載した船舶 - Google Patents
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Abstract
Description
図8において、縦軸は正味平均有効圧(BMEP)であり、横軸は空気過剰率(理論上必要な空気に対する実際の空気量の比)である。希薄燃焼において、空気過剰率が所望の空気過剰率より小さい場合はノッキングを起こしやすくなり、大きい場合は失火を起こしやすく(エンジンが停止しやすく)なる。正味平均有効圧が高くなるほどノッキングや失火を起こさないための適性な空燃比の範囲が狭くなることが分かる。
従来の空燃比制御装置は、図6に示すように、ガスエンジン100と、タービン210及びコンプレッサー220を有する過給機200とを備える。また、空燃比制御手段300を備え、空燃比制御手段300によって、スロットルバルブ(Throttle valve)310、可変バルブタイミング機構(Variable valve timing)320、可変ノズル(Variable Geometry Turbo )330、燃料供給手段340、排気ガスバイパス経路350、排気ガスバイパス制御弁(Waste gate valve)360が制御される。
空気の量を調整制御するためには、過給機200のコンプレッサー220の出口にスロットルバルブ310を設けて空気供給量を制御すると同時に、過給機200のタービン210側に設けた可変ノズル330の制御、及び排気ガスバイパス制御弁360で余分な排気ガスを逃がす制御が必要である。更に、ガスエンジン100側に設けた吸、排気のタイミングを可変にする可変バルブタイミング機構320で排気エネルギーを調整する必要がある。このような制御によって空燃比制御ができ、舶用に耐える動特性が得られる。
しかしながら、従来の空燃比制御方法では、負荷変動等に対応してエンジンの出力を保持しようと燃料ガスと空気の供給量を変化させる場合において、過給機200よりも燃料供給手段340のほうの応答が速いため、燃料ガスと空気の混合バランスが崩れてしまい、図7に示すように空燃比が変動して燃焼が不安定になってしまう。
また、特許文献2には、エンジンに供給される燃料ガスの発熱量及びエンジンの始動時を含む運転時の最適熱量に対応する最適燃料ガス量を算出し、最適燃料ガス量と給気圧力検出値及び給気温度検出値に基づき算出された実際の空気量とに適合する過給機の最適回転数を算出し、最適過給機回転数になるように過給機に連結された電動モータを制御するモータコントローラを有してなる、モータ駆動過給機付きガスエンジンが開示されている。
また、特許文献3には、ガスエンジンから検出されたエンジン回転速度信号と、その目標値となる速度指令値信号との偏差に基づき燃料ガス流量指令値を演算し、燃料ガス流量指令値に応じて燃料流量制御バルブの燃料ガス流量を設定する速度制御工程と、燃料ガス流量指令値に対して適正空燃比となる混合気流量指令値を算出し、混合気流量指令値と実混合気流量との偏差に基づきスロットルバルブの目標開度を設定するフィードバック制御を行う空燃比制御工程とを備えたガスエンジンの統合制御方法が開示されている。
また、特許文献4には、給気圧力センサからの給気圧力の検出値及び負荷検出器からのエンジン負荷の検出値に基づき、燃料噴射量を給気圧力及びエンジン負荷にそれぞれ対応する目標燃料噴射量に調整するとともに、過給機回転数検出器あるいは排気圧力センサから入力される過給機回転数あるいは排気圧力の検出値に基づき、燃料噴射量を過給機回転数及び排気圧力のいずれか一方または双方にそれぞれ対応する目標燃料噴射量に調整する制御装置を備える発電用ディーゼルエンジンの燃料制御装置が開示されている。
特許文献1のガスエンジンの空燃比制御方法は、燃料流量、給気圧力及び給気温度を検出して必要空気量及び実空気量を算出する必要があるとともに、給気通路中の給気の一部を外部に放出するための給気放出手段等を必要とするものである。
また、特許文献2のモータ駆動過給機付きガスエンジンは、最適燃料ガス量を算出し、給気圧力及び給気温度を検出して過給機の最適回転数を算出して電動モータを制御するモータコントローラを必要とするものであるが、空燃比を制御するための機器の応答性を考慮して制御を行うものではないため、負荷変動時に空燃比を一定に保つことが難しい。
また、特許文献3のガスエンジンの制御方法は、検出したエンジン回転速度に基づいて各演算を行い、スロットルバルブの目標開度を設定するフィードバック制御を必要とするものであるが、過給機の応答性を考慮して制御を行うものではないため負荷変動時に空燃比を一定に保つことが難しい。
また、特許文献4の発電用ディーゼルエンジンの燃料制御装置は、給気圧力、エンジン負荷、過給機回転数、及び排気圧力など複数の検出値を制御に用いるものであるが、燃料―空気制御系における適度な応答性を保持するものであり、過給機の応答性を考慮して制御を行うものではないため、負荷変動時に空燃比を一定に保つことが難しい。また、発電用ディーゼルエンジンに関する制御装置であり、ディーゼルエンジンよりも細かい制御が求められるガスエンジンに関するものではない。
負荷が変動した場合には、過給機の応答が遅れるが、燃料供給量制御手段は過給機よりも応答が速いので、負荷変動が生じた場合など燃料ガスの燃料供給量の設定が変更された際は、空気供給量よりも燃料ガスの燃料供給量のほうが先に必要量に到達するため空燃比が変動して燃焼が不安定になってしまう。そこで、請求項1に記載の本発明によれば、過給機の回転数に基づいて燃料ガスの燃料供給量の時間的変化を燃料供給量制御手段にて遅くする、即ち燃料ガスの燃料供給量が必要量に到達するまでの時間を空気供給量に合わせて遅くすることで、空燃比を制御する機器を多く増やすことなく空燃比を一定にして、ガスエンジンにおける燃焼を安定させることができる。また、応答の速い可変ピッチプロペラのピッチを変えてガスエンジンにかかる負荷を増減することで、空燃比を一定に保ち易くできる。
図1は本発明の一実施形態による空燃比制御装置付きガスエンジンを搭載した船舶の概略構成図、図2は同ガスエンジンの空燃比制御装置の概略構成図、図3は同空燃比制御装置のエンジン負荷変動に対する空燃比制御を示す図である。
駆動源4は、燃料ガスと空気とを混合して燃焼させ動力を得る希薄燃焼式のガスエンジン10と、過給機20を有する。過給機20は、ガスエンジン10から排気された排気ガスにより駆動され、ガスエンジン10に加圧空気を供給する。
なお、ガスエンジン10は希薄燃焼式以外の超希薄燃焼式や負荷変動時に同様な課題を有する他の方式のガスエンジンであってもよい。
本実施形態のガスエンジンの空燃比制御装置は、ガスエンジン10へ供給する燃料ガスの供給量を制御する燃料供給量制御手段30と、過給機20の回転数を検出する過給機回転数検出手段31と、空気と燃料ガスとの混合比である空燃比を制御する空燃比制御手段32とを備える。
過給機20は、ガスエンジン10の排気経路に設けられ排ガスにより駆動されるタービン21と、このタービン21によって動作し空気を加圧するコンプレッサー22と、タービン21の上流側(排気ガス導入側)に配置される可変ノズル23とを有する。
可変ノズル23は、ノズル翼の向きや角度によって排気ガス通路を変化させてガスエンジン10から供給される排気ガスの流速を調整して加圧空気の加圧特性を改善することができる。
過給機20からガスエンジン10までの間の経路には空気冷却器(図示無し)を有しており、コンプレッサー22で加圧され高温となった空気は、空気冷却器で冷却されてガスエンジン10に導入される。
燃料供給量制御手段30にはデジタル的にオン/オフするソレノイド弁を用いている。一般的なオン/オフ型のソレノイド弁を用いることで、燃料供給量制御手段30を複雑にすることなく安価に、また信頼性も高く構成することができる。
すなわち、ガスエンジン10に係る負荷が増加又は減少した場合には、ガスエンジン10の回転数を維持するために、空気供給量及びガス燃料供給量が増加又は減少するように制御される。その制御において、まず、検出した過給機20の回転数から実際の空気供給量を算出し、必要空気量に到達するまでの空気供給量の増加速度又は減少速度を求める。次に、必要空気量に到達するまでの空気供給量の増加速度又は減少速度と、予め定められた適正空燃比とに基づいて、適正空燃比から外れずに燃料ガスの供給量が必要量に到達するように燃料ガスの供給量の増加速度又は減少速度を設定する。そして、設定した燃料ガスの供給量の増加速度又は減少速度に基づいて、空燃比制御手段32はソレノイド弁30を制御する。
なお、図3に示すように、ガスエンジン10の負荷が上昇した際に空燃比は一定であるが、ガスエンジン10の回転数は大きく低下している。しかし、負荷が発電機であって回転数低下による停電を防止するために回転数を一定に維持する必要がある場合等とは異なり、本実施形態のように負荷が船舶のプロペラ3である場合には、ガスエンジン10の回転数が低下しても一定の推進力を保つことができるため、回転数を一定に維持するよりも空燃比を一定に維持する制御を優先させることができる。
空燃比制御手段32は、ガスエンジン10の回転数を考慮して実際のガス流量を算出し、そのガス流量を、燃料ガスの供給量が必要量に到達するまでの燃料ガスの供給量の増加速度又は減少速度の算出に用いる。燃料ガスの供給量が必要量に到達するまでの燃料ガスの供給量の増加速度又は減少速度を設定する際のパラメータとして実際のガス流量を用いることで、より正確に燃料ガスの供給量の時間的変化を制御することができる。
さらに、エンジン回転数検出手段33でガスエンジン10の回転数を検出できることを利用し、負荷が上昇したときに空燃比を保とうとしてガスエンジン10の回転数が下限を超える場合(ガスエンジン10が停止してしまうような場合)、又は負荷が減少したときにガスエンジン10の回転数が上限を超えて危険になる場合には、空燃比制御装置による空燃比制御を中止するように制御することができる。
スロットル弁26は、空燃比制御手段32の制御によって定常負荷時は絞った位置に臨ませている。そして、燃料ガスの供給量の設定が変更された場合は、空燃比制御手段32は、過給機回転数検出手段31による過給機20の回転数の検出結果が必要回転数より小さいつまり空気供給量が不足すると判断すると、スロットル弁26を開放して空気供給量を増加させる。定常負荷時にはスロットル弁26を絞って余力を持たせておき、負荷が上昇した際は応答の速いスロットル弁26を開放して空気供給量を速く増加させることで必要空気量に到達するまでの時間を短縮することができ、空燃比を一定に保ち易くなる。
空燃比制御手段32は、燃料ガスの供給量の設定が変更された場合は、過給機回転数検出手段31による過給機20の回転数の検出結果に基づいて、バイパス制御弁25の開閉制御を行う。すなわち、過給機20の回転数が必要回転数より低い場合つまり空気供給量が不足する場合には、予め開けてあるバイパス経路24の開度を応答の速いバイパス制御弁25で絞り、過給機20の回転数を増し空気供給量を速く増やすことができる。また、過給機20の回転数が必要回転数より大きい場合にはバイパス制御弁25を開いてバイパス経路24に排気ガスを流し、タービン21を迂回させることで過給機20の回転数を下げて空気供給量を速く減少させることができる。
このように、排気ガスは過給機20の回転数に応じてタービン21を迂回させることで、過給機20の回転数を調整することができ、空燃比を一定に保ち易くなる。
空燃比制御手段32は、燃料ガスの供給量の設定が変更された場合は、過給機回転数検出手段31による過給機20の回転数の検出結果に基づいて、可変ピッチプロペラ3のピッチ制御を行う。すなわち、過給機20の回転数が必要回転数より小さい場合又は大きい場合には応答の速い可変ピッチプロペラ3のピッチを変えてガスエンジン10にかかる負荷を増減することで、空燃比を一定に保ち易くなる。
本実施形態によるガスエンジンの空燃比制御装置は、可変ノズル23、バイパス経路24、バイパス制御弁25、スロットル弁26、及びエンジン回転数検出手段33を備えず、加勢手段であるモータ/ジェネレータ40を備える点において上記した実施形態と異なる。
空燃比制御手段32は、燃料ガスの供給量の設定が変更された場合は、過給機回転数検出手段31による過給機20の回転数の検出結果に基づいて、モータ/ジェネレータ40の制御を行う。すなわち、過給機20の回転数が必要回転数より小さい場合つまり空気供給量が不足する場合には、過給機20を加勢するモータとして使用して過給機20の回転数を上げて必要空気量を速く確保し、過給機20の回転数が必要回転数より大きい場合つまり空気供給量が過多の場合には、ジェネレータとして発電することで過給機20の回転を抑えて空気供給量を減らす。モータとしての加勢又はジェネレータとしての発電は電気的なものであるため、その動作は瞬時に行われる。したがって、過給機20の回転数の検出結果に基づいて、モータ/ジェネレータ40の制御を行った場合には、図5(a)に示すように、空燃比の変動を一定以下に抑え易くなると共に、エンジン回転数の落ち込みも比較的短時間に留めることができる。
さらに、本実施形態において空燃比制御手段32は、過給機回転数検出手段31の検出結果に基づいて、モータ/ジェネレータ40の制御に加えて、ソレノイド弁30による燃料ガスの供給量の時間的変化を遅くする制御を併せて行うため、図5(b)に示すように、空燃比を一定にすることができる。
なお、加勢手段40は、ジェネレータ機能を有さないモータであってもよく、また、空気圧縮機など空気圧や油圧を利用して過給機20を加勢するものであってもよい。
また、その空燃比制御装置付きガスエンジン10を搭載した船舶を提供することができる。
20 過給機
21 タービン
22 コンプレッサー
23 可変ノズル
24 バイパス経路
25 バイパス制御弁
26 スロットル弁
30 燃料供給量制御手段(ソレノイド弁)
31 過給機回転数検出手段
32 空燃比制御手段
33 エンジン回転数検出手段
40 加勢手段(モータ/ジェネレータ)
Claims (11)
- 燃料ガスと空気とを混合して燃焼させ動力を得るガスエンジンの空燃比制御装置であって、前記ガスエンジンへ供給する前記燃料ガスの燃料供給量を制御する燃料供給量制御手段と、前記空気を加圧するコンプレッサー及び前記ガスエンジンの排気ガスにより駆動されるタービンを有した過給機と、前記過給機の回転数を検出する過給機回転数検出手段と、前記燃料ガスの前記燃料供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の検出結果に基づいて前記燃料供給量制御手段による前記燃料ガスの前記燃料供給量の時間的変化を遅くするように制御する空燃比制御手段と、前記ガスエンジンにより駆動される可変ピッチプロペラとを備え、前記空燃比制御手段は、前記燃料ガスの前記供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の前記検出結果に基づいて前記可変ピッチプロペラを制御することを特徴とするガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記燃料供給量制御手段は、デジタル的にオン/オフするソレノイド弁であることを特徴とする請求項1に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記空燃比制御手段は、前記ソレノイド弁のデューティー比を制御することを特徴とする請求項2に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記ガスエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段を備え、前記空燃比制御手段は、前記エンジン回転数検出手段の検出結果に基づいて制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記過給機を加勢する加勢手段を備え、前記空燃比制御手段は、前記燃料ガスの前記燃料供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の前記検出結果に基づいて前記加勢手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記加勢手段は、前記過給機を駆動するとともに前記過給機により回転され発電を行う機能を有したモータ/ジェネレータであることを特徴とする請求項5に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記過給機の前記コンプレッサーと前記ガスエンジンの間の経路にスロットル弁を備え、
前記空燃比制御手段は、前記燃料ガスの前記燃料供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の前記検出結果に基づいて前記スロットル弁を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。 - 前記空燃比制御手段は、前記スロットル弁を定常負荷時は絞った位置に臨ませる制御をすることを特徴とする請求項7に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記過給機の前記タービンの上流側に可変ノズルを備え、前記空燃比制御手段は、前記燃料ガスの前記燃料供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の前記検出結果に基づいて前記可変ノズルを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 前記過給機の前記タービンを迂回するバイパス経路と、前記バイパス経路を開閉するバイパス制御弁を備え、前記空燃比制御手段は、前記燃料ガスの前記燃料供給量の設定変更がされた場合に前記過給機回転数検出手段の前記検出結果に基づいて前記バイパス制御弁を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置。
- 請求項1から請求項10のうちの1項に記載のガスエンジンの空燃比制御装置を備えたことを特徴とする空燃比制御装置付きガスエンジンを搭載した船舶。
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