JP2019094387A - 樹脂シート及び電子部品用包装材 - Google Patents

樹脂シート及び電子部品用包装材 Download PDF

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Abstract

【課題】ビニル芳香族炭化水素系樹脂(例えば、スチレン系樹脂)の高い剛性と優れた成形加工性を生かしつつ、透明性を有する樹脂シート及びその成形体である電子部品包装材を提供することを目的とする。【解決手段】ブロック共重合体a及び共重合体bを含有するブロック共重合体組成物を含む樹脂シートであって、ブロック共重合体aが、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、前記ブロック共重合体a中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記共役ジエン単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜95/5であり、共重合体bが、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とのランダム共重合体であり、前記共重合体b中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜90/10であり、ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値が、4.0%以下である樹脂シート。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シート及び電子部品用包装材に関する。
一般にビニル芳香族炭化水素系樹脂(例えば、スチレン系樹脂)は、成形加工性、剛性、透明性等に優れ、かつ安価で比重が低く、経済的にも優れており、ビニル芳香族炭化水素系樹脂(例えば、スチレン系樹脂)で成形されたシートは、様々な分野で広く使用されている。
これまで、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)等の電子部品を電子機器に実装するためのキャリアテープは、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、半透明色のビニル芳香族炭化水素系樹脂(例えば、スチレン系樹脂)等で構成されたシートで成形されたものが主流である。例えば、半透明色のスチレン系樹脂シートとしては、汎用ポリスチレン樹脂とゴム変性された耐衝撃性ポリスチレン樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体とを混合した組成物からなるスチレン系樹脂シートで形成されている。キャリアテープは、その使用形態から透明性(視認性)、剛性、耐衝撃性、成形性等の物性をバランスよく良好なものとすることが要求されており、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るために種々の検討がなされている。
例えば、透明性、成形性、及び耐衝撃性に優れるキャリアテープを得るため、特定のグラフト率と特定の平均ゴム粒子径を有する耐衝撃性ポリスチレン樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるエンボスキャリアテープや、ポリマー構造の異なる2種類のスチレン−ブタジエン共重合体とポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンからなるキャリアテープが知られている。
さらには、透明性の向上を目指し、ブロック共重合体、スチレン系樹脂、特定の平均粒子径のゴム粒子を含む耐衝撃性ポリスチレン樹脂からなるキャリアテープ用樹脂シートが開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2008−274215号公報
しかしながら、さらなる電子部品実装の高効率化のために長尺化が求められ、また、高密度実装化に伴うICの小型化の要求も強い。ビニル芳香族炭化水素系樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は剛性が高く、成形加工性に優れることから、透明性に優れたビニル芳香族炭化水素系樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)からなるキャリアテープ等の電子部品用包装材が求められている。
そこで、本発明の目的は、ビニル芳香族炭化水素系樹脂(例えば、スチレン系樹脂)の高い剛性と優れた成形加工性を生かしつつ、透明性を有する樹脂シート及びその成形体である電子部品包装材を提供することにある。
本発明者らは、特定の共重合体から構成されるブロック共重合体組成物を含む樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)において、とりわけ高い透明性を有する樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)とこの樹脂シートを用いて得られる電子部品用包装材を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
ブロック共重合体a及び共重合体bを含有するブロック共重合体組成物を含む樹脂シートであって、
前記ブロック共重合体aが、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、
前記ブロック共重合体a中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記共役ジエン単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜95/5であり、
前記共重合体bが、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とのランダム共重合体であり、
前記共重合体b中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜90/10であり、
ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値が、4.0%以下である樹脂シート。
[2]
JIS P 8115に準拠して測定される耐折回数が、MD方向及びTD方向のいずれにおいても500回以上である、[1]の樹脂シート。
[3]
前記ブロック共重合体aが、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも2つ有する、[1]又は[2]の樹脂シート。
[4]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定法により測定される分子量分布曲線において、
分子量が30000以上300000以下の範囲内に、前記ブロック共重合体a由来のピーク分子量が、少なくとも1つ存在し、
前記ブロック共重合体a中のビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)が、10000以上60000以下であり、
前記重合体ブロックSの分子量分布(Mw/Mn)が、1.5以上4.0以下である、[1]〜[3]のいずれかの樹脂シート。
[5]
ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値が、2.0%以下である、[1]〜[4]のいずれかの樹脂シート。
[6]
前記共重合体bの構成単位である(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位が、メタクリル酸メチル単量体単位である、[1]〜[5]のいずれかの樹脂シート。
[7]
[1]〜[6]のいずれかの樹脂シートの成形体である電子部品用包装材。
本発明によれば、優れた剛性、成形加工性、及び透明性を同時に満たすことができる樹脂シート及びその成形体である電子分品包装材(例えば、キャリアテープ等)を提供可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、ブロック共重合体a及び共重合体bを含有するブロック共重合体組成物を含む樹脂シートであって、ブロック共重合体aは、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、ブロック共重合体a中のビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位との質量割合は、前者/後者=50/50〜95/5であり、共重合体bは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とのランダム共重合体であり、共重合体b中のビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合は、前者/後者=50/50〜90/10であり、ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値は、4.0%以下である。本実施形態の樹脂シートは、上記のような構成を有することにより、優れた剛性、成形加工性、及び透明性を同時に満たすことができる。
〔ブロック共重合体組成物〕
本実施形態のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体a及び共重合体bを含有する。ブロック共重合体aは、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、ブロック共重合体aは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位との質量割合が前者/後者=50/50〜95/5である。また、共重合体bは、ビニル芳香族炭化水素単量体と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とのランダム共重合体であり、共重合体bは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜90/10である。
本明細書中、重合体を構成する各単量体単位の命名は、単量体単位が由来する単量体の命名に従う。例えば、「ビニル芳香族炭化水素単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族炭化水素単量体を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。さらに、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位」とは、単量体である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が重合した結果生じる重合体の構成単位を示し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。
なお、本明細書中、「主体とする」とは、所定の単量体単位の含有量が90質量%以上であることをいう。例えば、ブロック共重合体aにおいて、「ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロック」とは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位が90質量%以上であるブロックをいう。ビニル芳香族単量体単位が90質量%未満、かつ共役ジエン単量体単位が10質量%を超える重合体ブロックはランダム共重合体ブロックと定義する。ランダム共重合体ブロックは、完全ランダム構造でも、テーパード構造(連鎖に沿って、共重合組成比率が段階的に変化するもの)でもよい。
(ブロック共重合体aと共重合体bの質量割合)
ブロック共重合体aと共重合体bの質量割合は、特に限定されないが、前者/後者=20/80〜75/25であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましく、35/65〜65/35であることがさらに好ましく、35/65〜60/40であることが特に好ましいブロック共重合体aの含有量が20質量%以上であることにより、樹脂シートの耐折強さが一層向上し、JIS P 8115に準拠して測定される耐折回数が、押出し方向(MD)及び押出し垂直方向(TD)の双方において500回以上を満足する傾向にある。一方、共重合体bの含有量が25質量%以上であることにより、本実施形態のブロック共重合体組成物を含む樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を電子部品用包装材に成形する際に、加工性が一層良好になり、電子部品用包装材として一層十分な座屈強度が得られ易い傾向にある。また、質量割合を上記範囲内とすることにより、ブロック共重合体組成物としての成形加工性が一層向上し、その結果、厚み精度が一層良好な樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)が得られる傾向となる。更には、樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)としての高い剛性と良好な成形加工性を保持しつつ、高い透明性と卓越した耐折強さを発揮し、キャリアテープ等の電子部品用包装材に好適に使用することができる。
〔ブロック共重合体a〕
ブロック共重合体aは、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体である。ブロック共重合体a中のビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位の総量に対して、ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、共役ジエン単量体単位の含有量が5質量%以上50質量%以下である。ブロック共重合体aは、ビニル芳香族単量体単位(ビニル芳香族単量体に由来する単位)及び共役ジエン単量体単位(共役ジエン単量体に由来する単位)以外の重合可能な他の単量体単位を、必要に応じて含んでもよい。
ビニル芳香族単量体は、分子内に芳香環とビニル基とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、及び1,1−ジフェニルエチレンが挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、スチレンであることが好ましい。
共役ジエン単量体としては、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの共役ジエン単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、及び/又はイソプレンであることが好ましい。
ブロック共重合体aにおけるビニル芳香族単量体単位と、共役ジエン単量体単位との質量割合は、前者/後者=50/50〜95/5である。質量割合が上記範囲内にあることにより、高い透明性を有する樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)が得られる傾向にある。同様の観点から、質量割合は、好ましくは55/45〜90/10であり、より好ましくは60/40〜85/15であり、更に好ましくは65/35〜80/20であり、特に好ましくは67/33〜78/22である。
ビニル芳香族単量体単位、及び共役ジエン単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載する方法により定量することができる。
ブロック共重合体aとしては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)〜(8)に示すブロック構造を有するブロック共重合体が挙げられる。
S1−B1…(1)
S1−B/S1…(2)
S1−B1−S2…(3)
S1−B/S1−S2…(4)
S1−B1−S2−B2…(5)
S1−B/S1−S2−B/S2…(6)
S1−B/S1−B/S2−S2…(7)
S1−B1−S2−B2−S3…(8)
上記一般式(1)〜(8)中、S1、S2、及びS3は、それぞれビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(S)を示し、B、B1、及びB2は、それぞれ共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)を示し、B/S1及びB/S2は、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン共重合体単位の含有量が各々90質量%未満であるランダム共重合体ブロック(B/S)を示す。)
なお、上記一般式(1)〜(8)中の、S、B、B/Sに付した番号は、それぞれ、重合体ブロック(S)と、重合体ブロック(B)と、ランダム共重合体ブロック(B/S)と、を同定するための番号であり、数字が異なるものは、それぞれのブロックの分子量(重合度)、あるいは共重合比率が同一であっても異なっていてもよい。
また、重合体ブロック(S)及び重合体ブロック(B)は、それぞれ、成分や組成が異なるブロックが連続した連続構造により形成されていてもよい。例えば、重合体ブロック(B)が、B1−B2−B3(B1、B2、及びB3は、それぞれ異なる組成又は成分を有するBブロック)であってもよい。また、ランダム共重合体ブロック(B/S)の連鎖構造は、ランダムブロックでも、テーパードブロック(連鎖に沿って、徐々に組成比率が変化したもの)であってもよい。
また、ブロック共重合体aは、線状重合体でも分岐状重合体のいずれでもよい。分岐状重合体を得る方法としては、例えば、重合終末端をカップリング反応させる方法や、多官能開始剤を用いて重合初期から分岐させる方法等が挙げられる。
また、本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の耐折強さ等の力学特性(特に耐折強さ)の観点から、をいうものとブロック共重合体aは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックSを少なくとも2つ以上有するブロック共重合体であることが好ましい。
(ブロック共重合体aのピーク分子量及び分子量分布)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定法(GPC測定法)により測定される分子量分布曲線において、分子量が30000以上300000以下の範囲内に、ブロック共重合体a由来のピーク分子量が少なくとも1つ存在することが好ましい。これにより、ブロック共重合体組成物の成形加工性が一層良好となるとともに、樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の力学特性が一層良好となる傾向にある。同様の観点から、ブロック共重合体a由来のピーク分子量は、40000以上250000以下の範囲内に存在することがより好ましく、50000以上210000以下の範囲内に存在することがさらに好ましい。なお、ブロック共重合体aのピーク分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(ブロック共重合体aの分子量分布(Mw/Mn))
ブロック共重合体aの分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されない。後述するカップリング剤等により一部ポリマーの重合活性末端を会合させることにより、異なる分子量の組み合わせを有するブロック共重合体aが得られる。
更には、重合途中にエタノール等のアルコールの添加量(モル数)を、重合開始剤の添加剤(モル数)よりも小さくすることにより、一部のポリマーの重合を停止させることが可能であり、結果として、異なる分子量の混合物であるブロック共重合体aを得ることができる。なお、ブロック共重合体aの分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(重合体ブロックSの数平均分子量(Mn))
重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000〜60000であり、より好ましくは15000〜50000であり、さらに好ましくは20000〜40000である。重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)が上記範囲内であることにより、一層優れた力学特性及び良好な成形外観をバランスよく備えた樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を得ることができる。ブロック共重合体aにおける重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)は、重合開始剤に対するビニル芳香族単量体の供給量(フィード量)を調整することにより制御可能である。
また、本実施形態において、ブロック共重合体aが、重合体ブロックSを少なくとも2つ以上有する場合、これらの重合体ブロックSの分子量は、各々独立して、制御することが可能である。なお、上記重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)は、ブロック共重合体a中の全ての重合体ブロックSを合わせた数平均分子量とする。例えば、S1−B/S1−S2構造のブロック共重合体aの場合、重合体ブロックSの平均分子量は、S1とS2を合わせた数平均分子量となる。
ブロック共重合体aにおける重合体ブロックSの数平均分子量は、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得た重合体ブロックS成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族単量体重合体成分は除かれている。)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することにより得ることができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(重合体ブロック(S)の分子量分布(Mw/Mn))
重合体ブロック(S)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜4.0であり、より好ましくは1.6〜3.6であり、さらに好ましくは1.7〜3.2である。重合体ブロック(S)の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内であることにより、成形加工性、及びブロック共重合体aと共重合体bとの分散性のバランスが一層良好なものとなり、フローマークのない良好な成形外観を有する成形体が得られる傾向にある。ブロック共重合体aにおける重合体ブロックSの分子量分布(Mw/Mn)は、重合開始剤に対するビニル芳香族単量体の供給量(フィード量)を調整することにより制御可能である。
また、本実施形態において、ブロック共重合体aが、重合体ブロックSを少なくとも2つ以上有する場合、これらの重合体ブロックSの分子量分布は、各々独立して、制御することが可能である。なお、上記重合体ブロックSの分子量分布(Mw/Mn)は、ブロック共重合体a中の全ての重合体ブロックSを合わせた全体の平均分子量分布とする。例えば、S1−B/S1−S2構造のブロック共重合体aの場合、重合体ブロックSの平均分子量は、S1及びS2の平均分子量分布とする。
ブロック共重合体aにおける重合体ブロックSの分子量分布(Mw/Mn)を制御する別の方法としては、例えば、重合体ブロック(S)の重合途中において、重合開始剤よりも少ないモル数量のエタノール等のアルコールを添加し、一部のポリマーの重合を停止させる方法が挙げられる。これにより重合体ブロックSは、2つのピーク分子量を有するようになる。このように2つ以上の異なる鎖長分布を有する重合体ブロックSを有するブロック共重合体aを得ることによっても、重合体ブロックSの分子量分布を制御することが可能である。
ブロック共重合体aにおける重合体ブロックSの分子量分布は、具体的には後述する実施例記載の方法で求めることができる。
(ブロック共重合体aの製造方法)
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を構成するブロック共重合体aの製造方法は、公知の技術を利用できる。代表的な従来技術を例示すれば、炭化水素溶剤中で有機リチウム化合物等のアニオン開始剤を用い、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体をブロック共重合する方法が挙げられる。例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49567号公報、特公昭58−11446号公報に記載された方法により製造することができる。
ブロック共重合体aは、炭化水素溶媒中、ビニル芳香族単量体を重合することにより、あるいは、必要に応じて共役ジエン単量体を共重合することにより得られる。ブロック共重合体aの製造に用いる炭化水素溶媒としては、従来公知の炭化水素溶媒が使用でき、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族単量体等が挙げられる。これらの炭化水素溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、有機リチウム開始剤を用いる場合は、n−へキサン、シクロヘキサンが一般的で好ましく使用される。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体に対しアニオン重合活性を示す重合開始剤が挙げられ、具体的には、脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族単量体アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等のアルカリ金属化合物が挙げられる。
アルカリ金属化合物中のアルカリ金属としては、特に限定されないがい、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。好適なアルカリ金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。このようなアルカリ金属化合物としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにはジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
また更に、米国特許第5708092号、英国特許第2241239号、米国特許第5527753号に示す外国特許に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、n−ブチルリチウムであることが好ましい。
ブロック共重合体aの製造プロセスとしては、特に限定されないが、例えば、重合途中から開始剤を追加添加するプロセス、重合途中に重合活性点未満のアルコール、水等を添加した後、再度モノマーを供給して重合を継続するプロセス等が挙げられる。このようなプロセスを適宜選択することにより、互いに分子量の異なる複数の成分が存在するブロック共重合体aを作製することができる。
また、ブロック共重合体aの製造プロセスにおいて、重合原料であるビニル芳香族単量体及び共役ジエン単量体の仕込み比率を調整することにより、最終的に得られるブロック共重合体aのビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量及び共役ジエン単量体単位の含有量を制御できる。
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる共重合体ブロックを作製する方法としては、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体との混合物を連続的に重合系に供給して重合する方法、極性化合物あるいはランダム化剤を使用して、ビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体とを共重合する等の方法等が挙げられる。
極性化合物及びランダム化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類;チオエーテル類;ホスフィン類;ホスホルアミド類;アルキルベンゼンスルホン酸塩;カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
ブロック共重合体aの重合工程における重合温度は、重合開始剤を用いたアニオン重合の場合、一般的には−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃の範囲である。
重合に要する時間は、条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは1時間から10時間の範囲である。また、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス等をもって置換することが好ましい。重合圧力は上記重合温度範囲で単量体及び重合溶媒を液層に維持するために十分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に重合系内には重合開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が意図せず混入しないよう留意することが好ましい。
ブロック共重合体aにランダム共重合体ブロックが含有される場合、ビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体との混合物を連続的に重合系に供給して重合する、及び/又は、極性化合物或いはランダム化剤を使用してビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体を共重合する等の方法が採用できる。
本実施形態のブロック共重合体組成物の構成成分であるブロック重合体aの製造において、重合開始剤として有機アルカリ金属を用いる場合、重合反応を停止させる際に、2分子以上が結合して停止させるカップリング反応を好適に利用することができる。カップリング反応は、下記に例示するカップリング剤を重合系内に添加することができる。また、カップリング剤の添加量を調整することで、重合系内の一部のポリマーのみをカップリングさせ、未カップリングポリマーとカップリングポリマーを共存させることで、分子量分布において2つ以上のピークを有するブロック共重合体aを製造することも可能である。
本実施形態のブロック共重合体組成物を構成するブロック重合体aの製造に好適に使用できるカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、2官能以上の任意のカップリング剤が挙げられる。具体的には、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のアミノ基を含有するシラン化合物が挙げられる。また、他のカップリング剤としては、例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチル)ジメチルアミン等のシリル基を含有するシラン化合物が挙げられる。また、他のカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシランγ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラントリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン等のグリシドキシ基を含有するシラン化合物が挙げられる。また、他のカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン等のメタクリロキシ基を含有するシラン化合物が挙げられる。また、他のカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシランβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシランβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン等のエポキシシクロヘキシル基を含有するシラン化合物が挙げられる。その他のカップリング剤としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N'−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンが挙げられる。
なお、ブロック共重合体aのリビング末端に上記カップリング剤を付加反応させる場合には、ブロック共重合体aのリビング末端の構造はなんら限定されないが、本実施形態のブロック共重合体組成物の機械的強度等の観点から、ビニル芳香族炭化水素単量体を主体とするブロックのリビング末端であることが好ましい。カップリング剤の使用量は、ブロック共重合体aのリビング末端1当量に対して、0.1当量以上10当量以下であることが好ましく0.5当量以上4当量以下であることがより好ましい。カップリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(共重合体b)
共重合体bは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位(ビニル芳香族炭化水素単量体に由来する単位)と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位((メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位)とのランダム共重合体であり、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位以外の重合可能な他の単量体単位を、必要に応じて含んでもよい。
ビニル芳香族単量体は、分子内に芳香環とビニル基とを有すれば特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらのビニル芳香族単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、スチレンであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を意味する。アルキルエステルは、炭素数1〜8(C1〜C8)のアルキルアルコールとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのエステル化合物の1種以上であればよい。(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル(ブチルアクリレート)、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル等のアクリル酸C1-6アルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル等のメタクリル酸C1-6アルキルエステル、及びメタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸シクロヘキシルエステルが挙げられ、これらの中でも、共重合体bの軟化温度を一層高くでき、その結果、得られる樹脂シートの成形性及び耐熱変形性を一層向上できる観点から、アクリル酸C1-6アルキルエステル、メタクリル酸C1-6アルキルエステルであることが好ましく、アクリル酸C1-4アルキルエステル、メタクリル酸C1-4アルキルエステルであることがより好ましく、さらに好ましくはアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルであり、特にメタクリル酸メチルである。
本実施形態の共重合体bは、本発明の作用効果(特に後述する共重合体bの屈折率を調整することに起因する透明性の向上、及びVICAT軟化温度の向上)を阻害しない範囲内で、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位以外の共重合可能な他の単量体単位(以下、単に「他の単量体単位」ともいう。)を含んでもよい。共重合体b(100質量%)中の他の単量体単位の含有量は、上記の通り、本発明の作用効果を阻害しない範囲内であれば特に限定されないが、例えば、2質量%以下である。
共重合体b中のビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合は、前者/後者=50/50〜90/10であり、好ましくは60/40〜90/10であり、より好ましくは70/30〜85/15である。質量割合が上記範囲内にあることにより、吸湿性が低く、かつ力学特性に優れたブロック共重合体組成物が得られる。一方、ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量が50質量%未満である場合、吸湿性が強くなり、成形前の事前乾燥が必要になるとともに、ブロック共重合体aと共重合体bとの相容性が低下し、ブロック共重合体組成物の力学特性が低下する。また、ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量が90質量%を超えると、力学特性(特に耐折強さ)が低下する。
共重合体bは、公知の方法により重合して製造することができる。一例を上げれば、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の重合方法を用いて製造できる。ビニル芳香族炭化水素単量体と(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共存下に、ラジカル重合による製造法が工業的には一般的である。共重合体bの製造方法においては、有機過酸化物等の重合開始剤を使用しても、開始剤を使用しない熱重合でも良い。また、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒や脂肪族メルカプタン等の連鎖移動剤を使用することができる。
重合溶媒は、連続重合過程における反応系内の粘度を低く保つために用いるものであり、その有機溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
特に多官能ビニル芳香族炭化水素単量体を使用する場合などは、ゲル化を抑制する観点から重合溶媒を使用することが好ましい。重合溶媒を使用することにより、ゲルを生じ難くなり、重合プロセスにおける高度な制御が可能となり、所望の組成と物性を有する共重合体bを得ることがより容易となる。
重合溶媒の使用量は、本実施形態においては特に限定されるものではないが、ゲル化を制御するという観点から、通常、重合反応器内の組成物全体に対し、1〜50質量%であることが好ましく、5〜25質量%の範囲内であることがより好ましい。重合溶媒の使用量が50質量%以下であることにより、ゲル化の抑制と重合プロセスにおける制御のし易さと生産性に優れた共重合体bを得ることができる傾向にある。
本実施形態の共重合体bの製造時には、有機過酸化物等の重合開始剤を好ましく使用することができる。重合開始剤としては、例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類;t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類;t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類;N,N'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
さらにブロック共重合体bの重合過程において、その分子量調整を目的として連鎖移動剤を用いることができ、連鎖移動剤としては、例えば、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
共重合体bの重量平均分子量(Mw)は、80000〜400000の範囲であることが一般的であり好ましい。共重合体bがこの重量平均分子量の範囲であることにより、力学特性と成形加工性のバランスが良好なブロック共重合体組成物を得ることができる。重量平均分子量が80000以上であると、流動性を一層抑制できる傾向にあり、脆くなりにくく、加工時に割れ等が発生しにくい傾向にある。一方、重量平均分子量が400000以下であることにより、十分な流動性を確保でき、成形加工性が一層良好になる傾向にある。
共重合体bは、共重合体bの軟化温度を一層高くでき、その結果、得られる樹脂シートの成形性及び耐熱変形性を一層向上できる観点から、スチレン単量体単位と、アクリル酸C1-4アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸C1-4アルキルエステル単量体単位との共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル共重合体、及びスチレン−ブチルアクリレート共重合体)が好ましい。
特に、電子部品包装材として用いる場合、耐熱変形性が良好であることが好ましく、この観点から、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)であることが好ましい。一方、優れた透明性及び耐折強さの観点から、スチレン−ブチルアクリレート共重合体であることが好ましい。MS樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、新日鉄住金化学株式会社製品「エスチレン(登録商標)MS」が挙げられる。
(ブロック共重合体組成物に配合可能なその他の添加剤)
本実施形態のブロック共重合体組成物は、本実施形態の作用効果を阻害しない範囲で、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものが挙げられ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ等の無機充填剤、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミド等脂肪酸アマイド等の滑剤及び離型剤、パラフィンオイル、プロセスオイル、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤及び可塑剤、ヒンダードフェノール系、リン系の熱安定剤及び酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、有機顔料、無機顔料、有機染料等の着色剤等が例示される。
〔本実施形態の樹脂シートの製造方法〕
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の製造方法は、特に制限されないが、例えば、溶融を経ず常温でドライブレンドした後、加熱溶融混練りしてダイ(フラット状、T状、円筒状等)から押出して成形する方法が一般的である。その他、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、単軸若しくは二軸押出機等の混合機や混練機を使用して調製した樹脂組成物をダイ(フラット状、T状、円筒状等)から押出して成形する方法でもよい。本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、1軸延伸又は2軸延伸してもよいが、通常は、押出方向に引き取りを作用した無延伸シートあるいは低延伸シートである。より好ましくは抱き込み主ロールとタッチロールとを備えたTダイ押出機を用いて製造した無延伸シート又は押出し方向側の低延伸シートである。
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10μm〜4mm、より好ましくは50μm〜2.0mm、更に好ましくは0.1mm〜1.5mm、更により好ましくは、0.2mm〜1.0mmである。
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、単層であっても多層であってもよい。多層の場合は、各層の樹脂組成が同一であっても異なっていてもよい。各層の樹脂組成が異なっている場合、複数の層を構成する各層の内少なくとも一層に本発明のブロック共重合体組成物からなる層が含まれていればよく、最表裏層でも内部の中間層でもよい。また、工程内リサイクルを目的として、中間層の少なくとも一層にシートの端材を用いてブレンドしてもよい。その場合、新材とリサイクル材を任意の割合でブレンドしてもリサイクル材単独でもよい。リサイクル材は同一ラインから発生するものが好ましいが、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、他の系列で発生した異なる樹脂組成物をブレンドしてもよい。
また、本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)や電子部品用包装材の表面は、表面処理(例えば、コロナ放電やグロー放電等の放電処理、酸処理等)してもよい。本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)や電子部品用包装材の表面は、印刷性に優れるため、導電性被膜又は帯電防止層(例えば、導電性インキによる被膜など)を形成してもよい。
〔耐折強さ〕
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、JIS P8115に準拠して測定される耐折回数が、MD方向及びTD方向のいずれにおいても500回以上であることが好ましい。より詳細には、9.8Nのばね荷重を与えた状態におけるMIT耐折試験機において、試験片が破断に至るまでの耐折回数が、MD方向及びTD方向のいずれかにおいて100回以上であれば、十分な剛性を有するといえるが、耐折回数は、500回以上であるのが好ましい。特に電子部品用包装材の代表的な一形態であるキャリアテープは長尺な電子部品用包装材であり、保管・運搬のみならず組立装置に実装して使用されるため、不意のトラブル等により折り曲がってしまった際にも容易に破断しない事が要求される。この特性はJIS P8115:2001に規定されるMIT耐折試験機を用いて破断に至るまでの耐折回数で評価が可能である。更に好ましくは、耐折回数が、押出し方向(MD)が1000回以上、押出し垂直方向(TD)が500回以上であり、より好ましくは耐折回数が、押出し方向(MD)と押出し垂直方向(TD)の双方共1000回以上であり、最も好ましくは耐折回数が、押出し方向(MD)と押出し垂直方向(TD)の双方共2000回以上である。
従来の一般的な樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の耐折強さは、シートの厚みに依存し、薄い方が屈曲時の応力が低くなるため耐折強さは向上する傾向にある。しかしながら、本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、ブロック共重合体と汎用ポリスチレン(GPPS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)との組成物からなる従来より多用されている乳白半透明シートと比較して、耐折強さの厚み依存性が比較的少なく、100回以上を発現する厚みの範囲が従来シートよりかなり広く、0.5mm以上の比較的厚物のシートでも耐折強さ100回以上を発現しやすい。
〔内部ヘイズ値〕
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、ISO14782に準拠して測定した内部ヘイズ値が4.0%以下(例えば、0%以上4.0%以下)であり、3.5%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがさらに好ましく、2.0%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値とは全光線透過率に対する拡散透過率の割合(単位:%)であり、数値が小さいほど透明性が高いことを意味する。完全な透明体はヘイズ値がゼロとなる。内部ヘイズ値を小さくするためには、ブロック共重合体aと共重合体bの屈折率差を限りなくゼロに近づけることで達成できる。好ましい屈折率差の絶対値は0.004以下であり、より好ましい屈折率差の絶対値は0.003以下であり、更に好ましい屈折率差の絶対値は0.002以下であり、最も好ましい屈折率差の絶対値は0.001以下である。この屈折率差の絶対値を上記の値以下とすることで、本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の内部ヘイズ値を2.0%以下とすることが可能となる。各ブロック共重合体a及び共重合体bの屈折率は、それぞれの単量体単位の種類と、単量体単位の含有量により一義的に決定できる傾向にある。例えば、共重合体bの場合、ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量が100質量%である重合体が最も屈折率が高くなり、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との合計に対する後者の含有量を大きくすることにより、屈折率を低下することができる。このようにして、ブロック共重合体aのビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位との質量割合を制御することにより、ブロック共重合体aの屈折率を調整でき、ブロック共重合体bのビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合を制御することにより、共重合体bの屈折率を調整でき、各ブロック共重合体a及び共重合体bの屈折率を適宜調整することにより、屈折率差をゼロに近づけることができる。
また、ブロック共重合体a及び共重合体bの屈折率はアッベ式屈折率計で容易に測定することができる。具体的には、圧縮成形機を用いて約0.2mm厚みのブロック共重合体a成分及び共重合体b成分のフィルムを作製し、そのフィルムを気温23℃、湿度50%の環境下で24時間経過後、アタゴ社製アッベ屈折計を用いて、測定光波長589nmにて、JIS K7142:2008「プラスチック−屈折率の求め方」に準拠し、屈折率を測定することができる。
更に、内部ヘイズとは、樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の表面の凹凸等の形状要因を排除した樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)の組成物そのもののヘイズ値を指している。内部ヘイズ値が4.0%以下とすることにより、本発明の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、優れた透明性を具備し、とりわけ内容物の視認性及び易検査性に優れた電子部品用包装材を得ることができる。内部ヘイズの測定方法はなんら限定されないが、例えば、樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を適切なサイズにカットし、流動パラフィンを満たした光学石英セルに空気泡ができないように静かに浸し、ヘイズ測定器で測定することができる。
〔耐熱変形性〕
本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)は、例えば、再度加熱され、キャリアテープ等の電子部品包装材に成形される。その際、一定の張力をかけた状態で成形するため、また、高温環境下で運搬されたり、保管されたりする場合も想定されるため、ある程度の耐熱変形性を有することが望ましい。耐熱変形性はISO306で規定されたVICAT軟化温度で評価を行うことができる。測定条件は、荷重10N、昇温速度50℃/分である。サンプル形状はシートのままでは測定不可のため、再度加熱プレス成形し4mm厚みの試験片を作成する。キャリアテープ用途としては、VICAT軟化温度は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、75℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることがよりさらに好ましく、85℃以上であることがよりさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。60℃以上のVICAT軟化を有する樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を用いることにより、良好な成形性を有し、また、電子部品包装材としても品質的にも優れたものとなる。
〔電子部品用包装材〕
本実施形態の電子部品用包装材は、本実施形態の樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)を更に成形することにより得られる。樹脂シート(例えば、スチレン系樹脂シート)から電子部品用包装材を得るための成形方法は何ら限定されず、公知の成形方法を採用することが可能である。電子部品用包装材を得るための成形方法としては、例えば、真空成形、圧空成形、ブロー成形、折り曲げ加工、マッチモールド成形等に加え、プラグアシスト成形、エアスリップ成形、熱板圧空成形、真空圧空成形等の公知の熱成形方法が挙げられ、好適に用いることができる。
電子部品用包装材は、種々の電子部品を包装する樹脂製品で、半導体や集積回路(IC)、コンデンサー等を包装するための樹脂製包装材である。その目的として、保管・搬送に加え、包装材ごとそのまま組立装置に実装できるものが主流である。電子部品用包装材はトレー状の他、テープ状のものが多用され、とりわけ樹脂製リールに巻かれた「キャリアテープ」に好適に使用することができる。樹脂製リールに巻かれたキャリアテープはそのまま組立装置に実装可能な包装材として、幅広く使用されている。キャリアテープに要求される特性として、内容物にもよるが、内容物を視認できる、あるいは内容物の検査が可能な透明性が要求される場合がある。また、キャリアテープはとても長尺な電子部品用包装材であり、実装中に不意のトラブル等で破断することは機械化による自動生産・大量生産を行う上で大きな不具合の要因となるため、容易に破断しない高度な耐折強さが強く要求される。
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ずブロック共重合体a、及び共重合体bを製造し、これらの原料を用いて厚みの異なる種々の樹脂シートを作成し、そこから試験片を切り出して各種の物性評価を行った。
以下に示すように、各ブロック共重合体a1〜a7を製造した(製造例1〜7)。
(製造例1)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン20質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部と、テトラメチルメチレンジアミン0.015質量部とを添加し、80℃で20分間重合した。その後、得られた重合液に、1,3−ブタジエン8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を一度に添加し、80℃で15分間重合した。次に、重合液に、1,3−ブタジエン9質量部とスチレン15質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した。次に、重合液に、1,3−ブタジエン8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を一度に添加して、80℃で15分間重合した。次に、重合液に、スチレン3質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加して80℃で5分間重合した。次に、重合液に、エタノールをn−ブチルリチウムに対して0.4倍モル添加して、5分間保持した。次に、重合液に、スチレン37質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で25分間重合した。
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムの添加量に対して0.6モル倍添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、その後、溶媒を除去することによってブロック共重合体a1を回収した。
(製造例2)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン20質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.015質量部を添加し、80℃で20分間重合した(工程1)。次に、重合液に、1,3−ブタジエン14質量部とスチレン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した(工程2)。次に、重合液に、1,3−ブタジエン16質量部とスチレン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した(工程3)。次に、重合液に、スチレン30質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加して80℃で30分間重合した(工程4)。
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して等倍モル添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、その後、溶媒を除去することによってブロック共重合体a2を回収した。
(ブロック共重合体a3)
工程1において、スチレン20質量部に代えて、スチレン31質量部としたこと、工程2において、1,3−ブタジエン14質量部及びスチレン10質量部に代えて、1,3−ブタジエン21質量部及びスチレン20質量部としたこと、工程3において、1,3−ブタジエン16質量部及びスチレン10質量部に代えて、1,3−ブタジエン2質量部及びスチレン6質量部としたこと、工程4において、スチレン30質量部に代えて、スチレン20質量部としたこと以外は、製造例2と同様にしてブロック共重合体a3を回収した。
(製造例4)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン15質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.015質量部を添加し、80℃で20分間重合した(工程1)。次に、重合液に、1,3−ブタジエン38質量部とスチレン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した(工程2)。次に、重合液に、スチレン37質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加して80℃で30分間重合した(工程3)。
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して等倍モル添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、その後、溶媒を除去することによってブロック共重合体a4を回収した。
(製造例5)
工程1において、スチレン20質量部に代えて、スチレン26質量部としたこと、工程に4において、スチレン30質量部に代えて、スチレン24質量部としたこと以外は、製造例2と同様にしてブロック共重合体a5を回収した。
(製造例6)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン60質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.015質量部を添加し、80℃で20分間重合した。次に、重合液に、1,3−ブタジエン30質量部とスチレン10質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した。
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して等倍モル添加し、ブロック共重合体100質量部に対して、熱安定剤として2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、その後、溶媒を除去することによってブロック共重合体a6を回収した。
(製造例7)
工程1において、スチレン15質量部に代えて、スチレン17質量部としたこと、工程2において、1,3−ブタジエン38質量部及びスチレン10質量部に代えて、1,3−ブタジエン60質量部及びスチレン7質量部としたこと、工程3において、スチレン37質量部に代えて、スチレン16質量部としたこと以外は、製造例4と同様にしてブロック共重合体a7を回収した。
各製造例1〜7により得られたブロック共重合体a1〜a7の各種特性を表1に示す。
表1に示す各ブロック共重合体a1〜a7の構造は、下記の方法に従い測定した。
<各ブロック共重合体a1〜a7のビニル芳香族単量体単位(スチレン単位)の含有量>
各ブロック共重合体a1〜a7のビニル芳香族単量体単位の含有量は、UV計(紫外線吸光光度計)により測定した。具体的には、各ブロック共重合体a1〜a7約30mg(0.1mg単位まで正確に秤量)をクロロホルム100mLに溶解させ、そのポリマー溶液を石英セルに満たして分析装置にセットし、これに紫外線波長260〜290nmを走査させ、得られた吸光ピーク高さの値により検量線法を用いて求めた。なお、ビニル芳香族単量体がスチレンの場合、ピーク波長は、269.2nmに現れる。
<各ブロック共重合体a1〜a7の共役ジエン単量体単位(ブタジエン単位)の含有量>
各ブロック共重合体a1〜a7の共役ジエン単量体単位(ブタジエン単位)の含有量は、上記で得られたビニル芳香族単量体単位の質量%を元に、100質量%から差し引いて算出した。
<各ブロック共重合体a1〜a7の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn、ピーク分子量、及び分子量ピーク数>
各ブロック共重合体a1〜a7の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、ピーク分子量、及び分子量ピーク数は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置により、下記測定条件により測定した。
(測定条件)
GPC装置:東ソー社製 HLC−8220
カラム :東ソー社製 SuperMultiporeHZ−Mを2本直列に接続
カラム温度:40℃
送液量 :0.2mL/分
検出器 :屈折計(RI)
なお、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、分子量測定を行う目的の重合体約10mgをテトラヒドロフラン20mLに溶解させ、ろ過して不溶分を除去してGPC測定用サンプルを得た。
具体的な測定法を以下に述べる。まず、分子量が各々異なる分子量既知の標準ポリスチレンサンプルを9点用いて検量線を作成した。最も高分子量の標準ポリスチレンの重量平均分子量(Mw)は1090000、最も低分子量のものは1050のものを使用した。続いて、分子量を測定するブロック重合体(a)を用いて上記の要領で測定用サンプルを調整した。
カラムが収納されている槽内温度が一定になったことを確認した後、溶液サンプルを注入し、測定を開始した。測定終了後、得られた分子量分布曲線の統計処理を行い、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値とした。また、ピーク分子量及び分子量ピーク数は、上記分子量分布曲線より判断した。
<各ブロック共重合体a1〜a7の重合体ブロック(S)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)>
次に、各ブロック共重合体a1〜a7を構成している重合体ブロック(S)の分子量測定を行った。具体的には、重合体約20mgを約10mLのクロロホルムに溶解した後、オスミウム酸溶液20mLを加えて30分間湯煎し、共役ジエン部分を分解する。分解後のポリマー溶液に約200mLのメタノールを静かに注ぎ、溶剤に溶解しない成分を沈殿させた。この沈殿した成分が重合体ブロック(S)であり、ブロックを形成していないスチレン単量体や、重合度の低いスチレンは、メタノール/ターシャリーブチルアルコール/クロロホルム混合溶液に溶解したままである。この沈殿物をろ過後、純メタノールで洗浄し、真空乾燥を行って重合体ブロック(S)を得た。
ここで、上述のオスミウム酸溶液とは、酸化オスミウム(VIII)1gと、日油株式会社より上市され入手可能な商品名「パーブチルH(化学名ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド,純度69%)」2kgとを、ターシャリーブチルアルコール3Lで溶解・混合した溶液である。
このように得られた重合体ブロック(S)約10mgをテトラヒドロフラン20mLに再び溶解させてGPC装置により測定した。測定条件及び方法は、上記ブロック共重合体aの分子量の測定条件及び方法に準じて行った。
<ブロック共重合体aのメルトフローレート>
規格ISO1133に準拠し、温度200℃、及び荷重5kgfの条件にて測定を行った。
次に、以下に示すようにして、各共重合体b1〜b6を合成した(製造例8〜13)。
(製造例8)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン69.7質量部、ブチルアクリレート15.3質量部、エチルベンゼン15質量部と、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製 商品名パーヘキサC)0.02質量部を調合して原料組成液とし、反応器内に仕込み、反応温度120℃にて連続塊状重合を行った。その後、酸化防止剤として3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(BASFジャパン製 商品名イルガノックス1076)を0.2質量部添加し、その後、溶媒と未反応モノマーを除去することによって共重合体b1を回収した。
(製造例9)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン68.0質量部、メチルメタアクリレート17.0質量部、エチルベンゼン15質量部と、2,2−ビス(4,4−ジ-tert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製 商品名パーテトラA)0.02質量部を調合して原料組成液とし、反応器内に仕込み、反応温度120℃にて連続塊状重合を行った。その後、酸化防止剤として3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸を0.2質量部添加し、その後、溶媒と未反応モノマーを除去することによって共重合体b2を回収した。
(製造例10)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン59.5質量部、メチルメタアクリレート25.5質量部、エチルベンゼン15質量部と、2,2−ビス(4,4−ジ-tert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.02質量部を調合して原料組成液とし、反応器内に仕込み、反応温度120℃にて連続塊状重合を行った。その後、酸化防止剤として3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸を0.2質量部添加し、その後、溶媒と未反応モノマーを除去することによって共重合体b3を回収した。
(製造例11)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン34.0質量部、メチルメタアクリレート51.0質量部、エチルベンゼン15質量部と、2,2−ビス(4,4−ジ-tert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.02質量部を調合して原料組成液とし、反応器内に仕込み、反応温度120℃にて連続塊状重合を行った。その後、酸化防止剤として3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸を0.2質量部添加し、その後、溶媒と未反応モノマーを除去することによって共重合体b4を回収した。
(製造例12)
窒素ガス雰囲気下において、スチレン78.2質量部、メタクリル酸6.8質量部、エチルベンゼン15質量部と、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製 商品名パーヘキサC)0.02質量部を調合して原料組成液とし、反応器内に仕込み、反応温度120℃にて連続塊状重合を行った。その後、酸化防止剤として3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸を0.2質量部添加し、その後、溶媒と未反応モノマーを除去することによって共重合体b5を回収した。
比較例に用いるスチレン単独重合体樹脂(GPPS)として、PSジャパン(株)製PSJポリスチレン 685を用いた。スチレン単独重合体樹脂(GPPS)は、(メタ)アクリル酸(アルキルエステル)単量体を含まないスチレン単独重合体であり、本明細書中では重合体cと表記する。
各製造例8〜12により得られたブロック共重合体b1〜b5、及び共重合体cの各種特性を表2に示す。
表2に示す各共重合体b1〜b5、及び重合体c(以下、「(共)重合体b又はc」ともいう。)に関する構造は、下記の方法に従い測定した。
<(共)重合体b又はcのビニル芳香族単量体(スチレン)の含有量>
(共)重合体b又はcのビニル芳香族単量体単位の含有量は、UV計(紫外線吸光光度計)により測定した。具体的には、(共)重合体b又はcを約30mg(0.1mg単位まで正確に秤量)をクロロホルム100mLに溶解させ、そのポリマー溶液を石英セルに満たして分析装置にセットし、これに紫外線波長260〜290nmを走査させ、得られた吸光ピーク高さの値により検量線法を用いて求めた。なお、ビニル芳香族単量体がスチレンの場合、ピーク波長は269.2nmに現れる。
<(共)重合体b又はcの(メタ)アクリル酸(アルキルエステル)含有量>
(共)重合体b又はcの(メタ)アクリル酸(アルキルエステル)含有量は、上記で得られたビニル芳香族単量体単位の質量%を元に、100質量%から差し引いて算出した。
<(共)重合体b又はcのピーク分子量、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び分子量分布Mw/Mn>
(共)重合体b又はcのピーク分子量、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置により、下記測定条件で測定した。
(測定条件)
GPC装置:東ソー社製 HLC−8220
カラム :東ソー社製 SuperMultiporeHZ−Mを2本直列に接続
カラム温度:40℃
送液量 :0.2mL/分
検出器 :屈折計(RI)
なお、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、分子量測定を行う目的の重合体50mgに対し、テトラヒドロフラン10mLを加え、完全に溶解させ、ろ過して不溶分を除去してGPC測定用サンプルを得た。
具体的な測定法を以下に述べる。まず、分子量が各々異なる分子量既知の標準ポリスチレンサンプルを9点用いて検量線を作成した。最も高分子量の標準ポリスチレンの重量平均分子量(Mw)は1090000、最も低分子量のものは1050のものを使用した。続いて、分子量を測定する(共)重合体b又はcを用いて上記の要領で測定用サンプルを調整した。
カラムが収納されている槽内温度が一定になったことを確認した後、溶液サンプルを注入し、測定を開始した。測定終了後、得られた分子量分布曲線の統計処理を行い、ピーク分子量、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値とした。また、ピーク分子量は、上記分子量分布曲線より判断した。
<(共)重合体b又はcのVICAT軟化温度>
規格ISO306に準拠し、昇温速度50K/分及び荷重50Nにて測定を行った。
<(共)重合体b又はcのメルトフローレート>
規格ISO1133に準拠し、温度200℃及び荷重5kgfにて測定を行った。
〔樹脂組成物のシート成形〕
後述する各実施例及び比較例の樹脂組成物を用いて、小型のラボシートの押出成形を実施した。シート成形は、株式会社池貝製シート押出成形機FS40−36V+TS400(単軸スクリュー、ダルメージ混練付き、スクリュー径40mm、L/D=36、Tダイ幅400mm、鏡面ロール)を用いて、シリンダー温度210℃、ロール温度70℃にて、スクリュー回転数とロール引き取り速度を調整することにより、厚み0.25mmと0.60mmの単層シートを各々作製した。両端は各々約30mm程度トリミングし、幅220mmの原反シートを得た。
<内部ヘイズ値>
上述で得られた樹脂シートを切り出し、流動パラフィンを満たした光学用石英セルに入れて、スガ試験機製ヘーズメーターHZ−1型を用いて測定した。(単位:%)ただし、ヘイズ値が40%を超える場合は、ISO14782にも記載があるように正確な測定が不可能なため、実施例の結果には「40%超(不透明)」と記載した。
<耐折強さ>
上述で得られた樹脂シートを切り出し、試験片を作成した。MIT耐折試験機として、テスター産業製BE−201型(スプリング式)を用いて、23℃常温下にて、ばね荷重9.8N、175サイクル/毎分、屈曲角度135°にてサンプルが破断するまでの屈曲回数を測定した。1往復で屈曲回数1回と数えた。また、MIT耐折試験機に付属しているカウンターは屈曲部が真下を通過する際のサンプルが真っ直ぐな状態になった時に1回と数えるため、最初の1回は実質的に0.5回となるが、これは耐折回数1回としてカウントした。MIT耐折試験を行う際は、試験片の屈曲部にシートサンプルの瑕疵(ブツやゲル等、あるいは、切り出した端面のバリ等)が無い事を事前に目視にて確認した。なお、瑕疵があった場合は、そのシートの実力よりはるかに低い値で破断することがある。サンプル数は10本とし、最高と最低の2点をデータから除き、残り8点の破断に至るまでの屈曲回数の加算平均値をそのシートの耐折強さとして、以下の評価基準に基づき評価した。
MIT耐折試験機による耐折回数平均結果
◎+:2000回以上
◎ :1000回以上2000回未満
〇 :500回以上1000回未満
△ :100回以上500回未満
× :100回未満
スチレン系樹脂シートから試験片のタンザクを切り出す際、押出し流れ方向に沿ってタンザク長手方向に切り出したものをMD、押出し流れ方向に対して垂直方向を短冊長手方向として切り出したものをTDとした。なお、キャリアテープ等の実際の電子部品包装材は、MD方向での耐折強さが実用上に合致する。なお、MD方向及びTD方向のいずれかにおいて耐折回数が100回以上である場合、十分な剛性を有するといえる。
<VICAT軟化温度>
上述で得られた樹脂シートを切り出し、シート片を重ねて熱プレス成形機にて加熱し、その後冷却して、幅10mm、厚み4mm、長さ50mmの短冊状の試験片を作成した。その試験片を用いて、ISO306で規定されるVICAT軟化温度を、荷重10N、昇温速度50℃/分にて測定した。
〔実施例1〜25、比較例1〜13、参考例1〜3〕
上記のようにして製造したブロック共重合体aと、共重合体bとを用いて、各々所定の配合比率でペレットどうしによるドライブレンドを行い、下記表3及び表4に示す配合比率に従って、Tダイ押出シート成形を行い、厚み0.25mm及び0.60mmの厚みの異なる2種類のシートを作成した。得られたスチレン系樹脂シートを用いて前述の各種特性評価を行った。また、参考例として、ブロック共重合体と汎用ポリスチレン(GPPS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)との組成物からなる従来より多用されている乳白半透明シート(厚み0.60mmと0.25mm)と、透明シートとして様々な用途に用いられているPET−Gシート(厚み0.45mm)についても同様な試験を行った。配合組成と評価結果を下記表3及び表4に示す。
実施例1〜25から、本発明のスチレン系樹脂シートは優れた透明性を有していることは明らかである。また、特に、参考例1と2に示した従来型の乳白色の組成物シートは、これまで耐折強さにシートの厚み依存性が大きいことが知られており、0.3mm以下の薄いシートでは良好な耐折強さを発揮しても、0.6mmの厚いシートにすると、耐折強さが極端に低下する問題があった。しかしながら、本発明のスチレン系樹脂シートは耐折強さの厚み依存性が比較的少なく、厚いシートとしても良好な耐折強さを発揮することが分かった。さらには、参考例3に示したPET−Gシートは、耐折強さが低く、本発明のスチレン系樹脂シートと比較して大幅に劣ることが分かった。
また、本発明のスチレン系樹脂シートは適度な剛性と耐熱変形性も有しており、キャリアテープ等の電子部品包装材として好適に使用することができる。
〔実施例26〕
ブロック共重合体a2と共重合体b2を用い、表裏層厚み0.03mm、中間層厚み0.19mm、全体厚み0.25mmの3層シートを製造した。3層シートは全て同じ配合組成とし、表裏層は新材のみを使用し、中間層には新材を70質量%とトリミングした端部を粉砕したものを30質量%混合した。シート成形は、株式会社プラスチック工学研究所製3層フィルム成形機(各々単軸スクリュー、マドック付き、スクリュー径32mm、L/D=28、Tダイ幅400mm、鏡面ロール)を用いて、シリンダー温度210℃、ロール温度70℃にて、スクリュー回転数とロール引き取り速度を調整することにより3層シートを作製した。配合組成と評価結果を下記表5に示す。
〔実施例27、28〕
各実施例22及び実施例26で得られた0.25mm厚みのスチレン系樹脂シートを用いて110℃で加熱し、プレス成形により電子部品を収納できるポケット部を有するキャリアテープを成形した(実施例28及び実施例29)。得られたキャリアテープは、透明性と適度な剛性と耐熱性を具備し、故意に折り曲げても容易に破断せず卓越した耐折強さを有しており、好適に実用に供することができた。
本発明の樹脂シートは、とりわけ電子部品包装材として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. ブロック共重合体a及び共重合体bを含有するブロック共重合体組成物を含む樹脂シートであって、
    前記ブロック共重合体aが、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体であり、
    前記ブロック共重合体a中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記共役ジエン単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜95/5であり、
    前記共重合体bが、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とのランダム共重合体であり、
    前記共重合体b中の前記ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、前記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位との質量割合が、前者/後者=50/50〜90/10であり、
    ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値が、4.0%以下である樹脂シート。
  2. JIS P 8115に準拠して測定される耐折回数が、MD方向及びTD方向のいずれにおいても500回以上である、請求項1記載の樹脂シート。
  3. 前記ブロック共重合体aが、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも2つ有する、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
  4. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定法により測定される分子量分布曲線において、
    分子量が30000以上300000以下の範囲内に、前記ブロック共重合体a由来のピーク分子量が、少なくとも1つ存在し、
    前記ブロック共重合体a中のビニル芳香族炭化水素単量体単位からなる重合体ブロックSの数平均分子量(Mn)が、10000以上60000以下であり、
    前記重合体ブロックSの分子量分布(Mw/Mn)が、1.5以上4.0以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シート。
  5. ISO14782に準拠して測定される内部ヘイズ値が、2.0%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シート。
  6. 前記共重合体bの構成単位である(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位が、メタクリル酸メチル単量体単位である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂シート。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂シートの成形体である電子部品用包装材。
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