JP2019085637A - 断熱構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単に製造でき、断熱性能を向上させた断熱構造体を提供する。【解決手段】 断熱構造体1は、積層された複数の階層部からなる。前記複数の階層部は、その層厚方向に垂直な方向にそれぞれ延びる複数の支持部を有し、前記階層部の支持部同士の間に空隙が形成されている。隣接する2つの前記階層部のうちの一方の階層部を構成する前記支持部が、前記2つの階層部のうちの他方の階層部を構成する前記支持部に支持されている。【選択図】図1
Description
本発明は、断熱構造体及びその製造方法に関する。
例えば、下記特許文献1に記載されているように、燃焼室の内壁面に陽極酸化皮膜が形成された内燃機関は知られている。この内燃機関においては、陽極酸化皮膜を構成する中空セルの内周面及び外周面を、溶解液を用いて溶解させることにより、中空セルの内径を拡大させるとともに、隣接する中空セル間の空隙を拡大させて、陽極酸化皮膜の気孔率を所定の値(10%〜20%)に設定している。これにより、燃焼室の断熱性能の向上(つまり、熱伝導率の低下)を図っている。
また、例えば、特許文献2に記載されているように、フィルターとして用いられる構造体は知られている。この構造体は、合成樹脂材(例えばウレタン製材)に発泡処理を施しておき、さらに加圧処理及び/又は化学処理を施して気孔同士を連通させる。そして、無電解めっき法、蒸着法、スパッタ法などを用いて、気孔の内周面に金属材を成膜する。最後に、合成樹脂材を溶解させることにより、金属材で構成された支持部材が3次元的に接続された構造体(立体網目構造体)が形成される。
特許文献1では、中空セルの内径を拡大させるとともに、隣接する中空セル間の空隙を拡大させている。すなわち、中空セルの壁厚を小さくしている。したがって、この場合、中空セルの壁部の耐力が低下する。つまり、断熱構造体としての陽極酸化皮膜の強度が低下する。陽極酸化皮膜に外力(圧力)が印加された際、中空セル同士が離間している部分では中空セル同士が互いに支持し合うことができず、陽極酸化皮膜が破損する虞がある。そのため、中空セルの壁厚をあまり小さく設定できない。つまり、陽極酸化皮膜の気孔率をあまり大きく設定できない。したがって、断熱構造体としての陽極酸化被膜の断熱性能をあまり高く設定できない。また、気孔率(すなわち中空セルの壁厚)を所定の値に設定するために、溶解液の温度及び濃度、並びに処理時間などを管理する必要がある。
また、特許文献2の構造体を製造するためには、多くの工程を経る必要がある。
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、簡単に製造でき、断熱性能を向上させた断熱構造体を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、積層された複数の階層部(F1〜F5)からなる断熱構造体であって、前記複数の階層部は、その層厚方向に垂直な方向にそれぞれ延びる複数の支持部(SPF1〜SPF5)を有し、前記階層部の支持部同士の間に空隙が形成されており、隣接する2つの前記階層部のうちの一方の階層部を構成する前記支持部が、前記2つの階層部のうちの他方の階層部を構成する前記支持部に支持されている、断熱構造体(SB,1,1A,1B)としたことにある。
また、本発明の特徴は、粉末状の金属材からなる材料層(M11〜M17)を形成しておき、前記材料層の表面にて前記レーザー光のスポット(SP)を走査して、前記材料層(M11〜M17)のうち、前記レーザー光のスポットが走査された部分の金属材を結合させる工程を繰り返すことにより、層厚方向に垂直な方向へそれぞれ延びる複数の第1支持部であって、隣接する第1支持部同士の間に空隙を有する第1階層部を形成する第1工程と、前記第1階層部の上面に積層される第2階層部を形成する工程であって、前記粉末状の金属材からなる材料層(M21〜M26)を前記第1階層部の上方に形成しておき、前記第1階層部の上方に形成した材料層の表面にて前記レーザー光のスポットを走査して、前記材料層(M21〜M26)のうち、前記レーザー光のスポットが走査された部分の金属材を結合させる工程を繰り返すことにより、層厚方向に垂直な方向へそれぞれ延びていて、前記第1階層部の複数の第1支持部に支持された複数の第2支持部であって、隣接する第2支持部同士の間に空隙を有する第2階層部を形成する第2工程と、を含む断熱構造体の製造方法としたことにある。
この場合、前記複数の階層部のうちの第1階層部は、所定の第1方向へそれぞれ延びる複数の支持部を有し、前記第1階層部に隣接する第2階層部は、前記第1方向に交差する第2方向へそれぞれ延びる複数の支持部を有するとよい。
前記複数の階層部に陽極酸化皮膜が形成されているとよい。
本発明に係る断熱構造体は、複数の支持部からなる階層部が積層された立体網目構造を有する。そして、隣接する階層部の支持部同士が互いに支持し合っている。つまり、階層部同士が互いに支持し合っている。そのため、断熱構造体の強度を比較的高く保ったまま、空隙率(気孔率)を従来の断熱構造体より増大させて、断熱性能を向上させることができる。
また、このような断熱構造体は、積層造形装置を用いて製造することができる。したがって、特許文献1のような溶解液の温度及び濃度、並びに処理時間の管理が必要な製造方法に比べて、簡単に断熱構造体を製造できる。また、特許文献2の断熱構造体の製造方法に比べて工程数が少ない。
また、本発明の他の特徴は、前記空隙が、前記陽極酸化皮膜よりも高硬度の充填材で塞がれている、断熱構造体としたことにある。これによれば、断熱構造体の強度をさらに高く設定できる。
また、本発明の他の特徴は、前記複数の階層部(F1〜F5)のうち、それらの積層方向における一端部に配置された階層部(F1)が所定の基材(BP)の表面に形成され、前記複数の階層部にうち、それらの積層方向における他端部に配置された階層部(F5)を構成する各支持部間の空隙が、前記陽極酸化皮膜より熱伝導性の低い充填材で塞がれており、前記複数の階層部のうち、前記基材側に配置された複数の階層部(F1〜F4)の空隙が前記充填材で塞がれることなく中空状に保持されている、断熱構造体としたことにある。
支持部間の空隙は断熱構造体の外部空間へ連通している場合、前記外部空間の流体(気体又は液体)は空隙に浸入して基材の上面に至る。よって、断熱構造体が基材の表面に形成された構造物全体としての熱伝導率は、基材の熱伝導率の影響を大きく受ける。本発明のように、基材とは反対側の階層部の空隙が充填材で塞がれ、基材側の複数の階層部の空隙が中空状態に保たれることにより、前記外部空間の流体が断熱構造体の内部に浸入し難くなり、基材及び断熱構造体からなる構造物全体としての熱伝導率をさらに向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る断熱構造体1について説明する。まず、断熱構造体1の概略について説明する。断熱構造体1は、図1に示すように、円板状の基板BP(又は円柱状の基材)の上面に形成される。基板BPの直径は、例えば、50mmである。基板BP及び断熱構造体1は、アルミニウム合金材で構成されている。基板BPの上面に、所定の方向に延びる複数の支持部(梁状の部材)を有する複数の階層部が積み上げられて立体網目構造を有する断熱構造体SB(図2参照)が形成され、その表面に陽極酸化皮膜が形成される。このようにして、断熱構造体1が製造される。
つぎに、断熱構造体SBの構成について具体的に説明する。断熱構造体SBは、図3に示すように、第1階層部F1〜第5階層部F5からなる。第1階層部F1が基板BPの上面に形成され、さらにその上に第2階層部F2、第3階層部F3、第4階層部F4及び第5階層部F5が積層されている。詳しくは後述するように、第1階層部F1〜第5階層部F5の層厚(上下方向の寸法)は、0.18mm〜0.21mmである。断熱構造体SB全体のとしての層厚は、0.99mmである。
第1階層部F1は、複数の支持部SPF1から構成されている。各支持部SPF1は、角柱状部である。各支持部SPF1は、所定の方向に直線状に延びている(図4参照)。以下の説明において、支持部SPF1の延設方向を前後方向と呼ぶ。また、前後方向に垂直且つ上下方向(各階層部の積層方向)に垂直な方向を左右方向と呼ぶ。図5に示すように、支持部SPF1の長手方向に垂直な断面は、矩形を呈する。支持部SPF1の幅方向の寸法wは、例えば、0.2mmである。また、支持部SPF1の高さ方向の寸法hは、例えば、0.21mmである。これらの支持部SPF1が左右方向に等間隔に配列されている。隣り合う支持部SPF1,SPF1の間隔Δdは、例えば、0.758mmである。隣り合う支持部SPF1,SPF1の間は空隙である。
第2階層部F2〜第5階層部F5も複数の角柱状の支持部SPF2〜支持部SPF5からそれぞれ構成されている(図2及び図3参照)。支持部SPF2〜支持部SPF5の形状(長手方向に垂直な断面形状)は支持部SPF1の形状と略同一であるが、厳密には、支持部SPF1〜支持部SPF5の上下方向の寸法hが若干異なる。支持部SPF2〜支持部SPF5の上下方向の寸法hについては、後述する。支持部SPF1〜支持部SPF5の幅方向の寸法wは同一である。また、隣り合う支持部の間隔も、支持部SPF1,SPF1の間隔Δdと同一である。ただし、支持部SPF2〜支持部SPF4の延設方向が支持部SPF1の延設方向とは異なる。つまり、これらの階層部の支持部と、支持部SPF1とはねじれの位置にある。
具体的には、断熱構造体1の平面視において、支持部SPF2は、左右方向及び前後方向に対して45°だけ傾斜した方向に延設されている(図6参照)。また、同平面視において、支持部SPF3は、支持部SPF1の延設方向に垂直な方向(すなわち左右方向)に延設されている(図7参照)。また、同平面視において、支持部SPF4は、支持部SPF2の延設方向に垂直な方向に延設されている(図8参照)。なお、支持部SPF5は,支持部SPF1と平行(すなわち前後方向)に延設されている(図9参照)。なお、隣接する2つの階層部(例えば、第1階層部F1と第2階層部F2)のうち、上側の階層部(例えば第2階層部F2)の支持部(例えば支持部SPF2)は、下側の階層部(例えば第1階層部F1)を構成する2つの支持部(支持部SPF1)に橋架されている。この橋架部の下方の部分(下側の2つの支持部の間の部分であって、上側の支持部の下方に位置する部分)も空隙である。
つぎに、断熱構造体1の製造方法について説明する。まず、図10に示す積層造形装置AMを用いて、断熱構造体SBが形成される。以下、積層造形装置AMの構成について簡単に説明しておく。積層造形装置AMは、テーブルTA、コンテナCN、材料供給装置MF及びレーザー照射機LMを備える。テーブルTAは、略正方形の板状部材である。このテーブルTAの上面に基板BPが載置され、その基板BPの上面に断熱構造体SBが形成される。以下、テーブルTAの一方の辺が左右方向に平行であり、他方の辺が前後方向に平行であるものとする。
コンテナCNは、上下方向に延びる角筒状部材である。コンテナCNの長手方向に垂直な断面は略正方形を呈する。コンテナCNの断面の内周縁の1辺の寸法は、テーブルTAの1辺の寸法と略同一である。コンテナCNの内部にテーブルTAが収容されている。テーブルTAは、コンテナCNの内側面に沿って上下方向に移動可能である。テーブルTAの下面が図示しないアクチュエータに接続されており、このアクチュエータによって、テーブルTAが上下方向に移動される。
材料供給装置MFは、前後方向に延びる容器であり、内部に粉末状のアルミニウム材を含む金属材料を貯留している。材料供給装置MFの底部に材料供給口が設けられている。この材料供給口は開閉可能である。材料供給口は、コンテナCNの上端面と略同一の高さに位置している。材料供給装置MFは、図示しないアクチュエータに接続されており、このアクチュエータによって、材料供給装置MFが左右方向に移動される。材料供給装置MFがテーブルTAの上方を通過しているとき、材料供給口が開かれて、コンテナCN内に金属材料が供給される。これにより、コンテナCN内の空間の上端部(テーブルTAの上方)に材料層が形成される。
レーザー照射機LMは、コンテナCNの上方に配置されており、レーザー光(Ybファイバーレーザー)をコンテナCN内の空間の上端面へ向けて出射する。レーザー照射機LMは、互いに直交する2つの回動軸まわりに回動可能であり、前記回動軸まわりの回動角度を制御することにより、レーザー光の向きを任意に設定可能である。また、レーザー照射機LMの出射口内には、レンズが組み込まれており、このレンズの位置を制御することにより、レーザー光の焦点距離(スポットSPの位置)を任意に設定可能である。これにより、材料層の表面に沿ってレーザー光のスポットSPが走査される。材料層のうち、レーザー光のスポットSPが走査された部分が焼結(結合)する。なお、レーザー照射機LMの向きを固定しておき、出射口内又は外部に設けられた反射鏡へ向けてレーザー光を照射させ、その反射鏡の向きを制御することにより、レーザー光の向きを任意に設定してもよい。
つぎに、断熱構造体1の製造方法について具体的に説明する。まず、テーブルTAが駆動されて、その上面がコンテナCNの上端面と一致する状態に設定される。そして、テーブルTAの上面に基板BPが載置(又は固定)される。
つぎに、テーブルTAが降下されて、基板BPの上面とコンテナCNの上端面との距離が0.03mmになるようにテーブルTAの高さが設定される。この状態では、テーブルTA及び基板BPの上面と、コンテナCNの上端との間に少し隙間が形成されている。
つぎに、材料供給装置MFがコンテナCNの上端面に沿ってテーブルTAの上方を左右方向へ移動される。材料供給装置MFがテーブルTAの上方を通過しているとき、材料供給口が開かれる。これにより、前記隙間に、金属材料が充填される。つまり、図11に示すように、コンテナCNの上端部に材料層M11が形成される。
つぎに、材料層M11の表面のうち、基板BPの上方に位置する円形の領域A11において、図12に示すように、レーザー光のスポットSPが走査される。具体的には、まず、レーザー光の照射が停止した状態に設定される。つぎに、レーザー光の出射口が、領域A11の円周上の点であって、領域A11の左端から見て0.758mmだけ右方にずれた2つの点のうちの後側の点P0へ向けられる。つぎに、レーザー光の焦点距離が出射口と点P0との距離に合致するように設定される。つぎに、レーザー光の照射が開始される。この状態では、スポットSPが点P0に位置している。つぎに、領域A11の円周上の点であって、領域A11の左端から見て0.758mmだけ右方にずれた2つの点のうちの前側の点P1に達するまで、スポットSPが前方へ直線状に走査される。これにより、領域A11のうち、スポットSPが走査された部分が焼結(結合)し、前後方向に延びる薄板部TBが形成される(図13参照)。後述するように、薄板部TBが積層されて、支持部SPF1が形成される。なお、本実施形態では、スポット径は0.1mmであるが、スポットSPの周囲の部分にも熱が伝わるため、結果として、薄板部TBの幅は0.2mm程度になる。スポットSPが点P1に達すると、レーザー光の照射が一時的に停止される。
つぎに、レーザー光の出射口が、領域A11の円周上の点であって、点P0から見て右方へ0.758mmだけずれた2つの点のうちの前側の点P2へ向けられる。つぎに、レーザー光の焦点距離が出射口と点P2との距離に合致するように設定される。つぎに、レーザー光の照射が再開される。このように、スポットSPは、点P1から点P2に飛び移る。つぎに、領域A11の円周上の点であって、点P0から見て右方へ0.758mmだけずれた2つの点のうちの後側の点P3に達するまで、スポットSPが後方へ直線状に走査される。そして、レーザー光の照射が一時的に停止される。
これ以降、領域A11の残りの領域に対し、上記のようなスポットSPの走査が実行されて、前後方向に延びる複数の薄板部TBが等間隔に形成されていく。
領域A11へのレーザー光の照射が終了すると、テーブルTAがさらに0.03mmだけ降下される。そして、材料供給装置MFにより、材料層M11とコンテナCNの上端との間の隙間に、金属材料が充填される。つまり、材料層M11に材料層M12が積層される(図17参照)。そして、材料層M12のうち、テーブルTAの上方に位置する領域A12にレーザー光が照射される。この際のスポットSPの軌跡は、領域A11におけるスポットSPの軌跡と同一である(図12参照)。以降、材料層M11の領域A11及び材料層M12の領域A12と同様に、材料層M13〜材料層M17の領域A13〜領域A17にレーザー光が照射される。このようにして、領域A11〜領域A17における薄板部TBが積層されて、複数の支持部SPF1からなる第1階層部F1が形成される。なお、各材料層の層厚が0.03mmであるので、7個の材料層から構成された第1階層部F1の層厚(つまり、支持部SPF1の上下方向の寸法h)は、0.21mmである。
つぎに、第1階層部F1に第2階層部F2が積層される。まず、テーブルTAが降下されて、第1階層部F1の上面とコンテナCNの上端面との距離が0.03mmになるようにテーブルTAの高さが設定される。材料供給装置MFにより、コンテナCN内に金属材料が供給され、第1階層部F1の上面に材料層M21が形成される(図17参照)。つぎに、材料層M21の表面のうち、基板BPの上方に位置する領域A21に、レーザー光が照射される。すなわち、領域A21内にて、図14に示すように、レーザー光のスポットSPが走査される。領域A21におけるスポットSPの軌跡は、領域A11におけるスポットSPの軌跡を領域A11の中心周りに反時計方向へ45°だけ回転させた軌跡に相当する。
領域A21へのレーザー光の照射が終了すると、テーブルTAがさらに0.03mmだけ降下される。そして、材料供給装置MFによって、コンテナCN内に金属材料が供給される。つまり、材料層M21に材料層M22が積層される。そして、材料層M22のうち、テーブルTAの上方に位置する領域A22にレーザー光が照射される。この際のスポットSPの軌跡は、領域A21におけるスポットSPの軌跡と同一である。これ以降、材料層M21の領域A21及び材料層M22の領域A22と同様に、材料層M23〜材料層M26の領域A23〜領域A26にレーザー光が照射される。これにより、領域A21〜領域A26において、左右方向及び前後方向に対して45°だけ傾斜した方向に延びる複数の薄板部TBが、その延設方向に垂直な方向へ等間隔に形成される。このように、領域A21〜領域A26の薄板部TBが積層されて、複数の支持部SPF2からなる第2階層部F2が形成される。なお、第1階層部F1が7個の材料層から構成されるのに対し、第2階層部F2は6個の材料層から構成される(図17参照)。各材料層の層厚が0.03mmであるので、6個の層から構成された第2階層部F2の層厚(つまり、支持部SPF2の上下方向の寸法h)は、0、18mmである。
第3階層部F3〜第5階層部F5も、第1階層部F1及び第2階層部F5と同様に形成される。すなわち、各材料層へのレーザー光の照射が終了するごとにテーブルTAが0.03mmだけ降下され、次の材料層が積層される。これを繰り返すことにより、第2階層部F2に、第3階層部F3、第4階層部F4及び第5階層部F5がこの順に積層される。第3階層部F3は、材料層M31〜材料層M37の領域A31〜領域A37にレーザー光を照射して形成される(図15参照)。領域A31におけるスポットSPの軌跡は、領域A21におけるスポットSPの軌跡を領域A21の中心周りに反時計方向へ45°だけ回転させた軌跡に相当する。このようにして、領域A31において、左右方向に延びる複数の薄板部TBが、その延設方向に垂直な方向へ等間隔に形成される。領域A32〜領域A37にも領域A31と同様の薄板部TBが形成される。このように、領域A31〜領域A37の薄板部TBが積層されることにより、複数の支持部SPF3からなる第3階層部F3が形成される。なお、第3階層部F3は、7個の材料層から構成される(図17参照)。したがって、第3階層部F3の層厚(つまり、支持部SPF3の上下方向の寸法h)は、0.21mmである。
第4階層部F4は、材料層M41〜材料層M47の領域A41〜領域A46にレーザー光を照射して形成される(図16参照)。領域A41におけるスポットSPの軌跡は、領域A31におけるスポットSPの軌跡を領域A31の中心周りに反時計方向へ45°だけ回転させた軌跡に相当する。このようにして、領域A41において、前後方向及び左右方向に対して45°だけ傾斜した方向(領域A21〜領域A26における走査方向に対して直交する方向)に延びる複数の薄板部TBが、その延設方向に垂直な方向へ等間隔に形成される。領域A42〜領域A47にも領域A41と同様の薄板部TBが形成される。このように、領域A41〜領域A46の薄板部TBが積層されることにより、複数の支持部SPF4からなる第4階層部F4が形成される。なお、第4階層部F4は、7個の材料層から構成される(図17参照)。したがって、第4階層部F4の層厚(つまり、支持部SPF4の上下方向の寸法h)は、0.21mmである。
第5階層部F5は、材料層M51〜材料層M56の領域A51〜領域A56にレーザー光を照射して形成される(図12参照)。領域A51におけるスポットSPの軌跡は、第1階層部F1を形成する際のスポットSPの軌跡と同一である。このようにして、領域A51において、前後方向に延びる複数の薄板部TBが、左右方向へ等間隔に形成される。領域A52〜領域A56にも領域A51と同様の薄板部TBが形成される。このように、領域A51〜領域A56の薄板部TBが積層されることにより、複数の支持部SPF5からなる第5階層部F5が形成される。なお、第5階層部F5は、6個の材料層から構成される(図17参照)。したがって、第5階層部F5の層厚(つまり、支持部SPF5の上下方向の寸法h)は、0.18mmである。
最後に、焼結されずにコンテナCN内に残った粉末状の金属材料が取り除かれる。上記のようにして形成された第1階層部F1〜第5階層部F5からなる断熱構造体SBの空隙率は75%である。なお、隣接する2つの階層部のうち、下側の階層部を形成する工程が本発明の第1工程に相当し、上側の改組部を形成する工程が本発明の第2工程に相当する。
つぎに、断熱構造体SB及び電極板が電解液(例えば硫酸)に浸漬される。そして、断熱構造体SBが電源装置の陽極端子に電気的に接続され、電極板が前記電源装置の負極端子に電気的に接続された状態で通電される。これにより、断熱構造体SB(支持部SPF1〜支持部SPF5の表面)に陽極酸化被膜(アルマイト)が形成される。このようにして、断熱構造体1が製造される。なお、断熱構造体SBの表面に陽極酸化皮膜を形成する工程が、本発明の第3工程に相当する。
アルミニウムのバルク体、前記バルク体の表面に陽極酸化被膜を形成した特許文献1と同様の従来の断熱構造体、断熱構造体SB、断熱構造体1A、及び断熱構造体1Bの熱伝導率の測定結果を、図18に示す。なお、断熱構造体1Aの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)は、比較的薄く、断熱構造体1Bの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)は、比較的厚い。また、周知のレーザーフラッシュ法を用いて熱伝導率を測定した。上記のように、断熱構造体SBの空隙率(75%)は、従来の断熱構造体の空隙率(10%)よりも大きい。そして、断熱構造体SBの熱伝導率が従来の構造体の熱伝導率に比べて小さい。断熱構造体SBに陽極酸化被膜(アルマイト)を形成した断熱構造体1の熱伝導率は、断熱構造体SBに比べてさらに小さい。そして、陽極酸化被膜の膜厚の大きい断熱構造体1Bの方が、陽極酸化被膜の膜厚の小さい断熱構造体1Aよりも熱伝導率を小さく設定できることが確かめられた。
上記のように、断熱構造体SBは、立体網目構造を有する。つまり、1つの階層部の支持部が、その階層部に隣接する階層部の支持部に橋架されて、支持部同士が互いに支持し合っている。つまり、階層部同士が互いに支持し合っている。そのため、断熱構造体SBの強度を比較的高く保ったまま、従来の断熱構造体より空隙率を増大させて、断熱性能を向上させることができる。
また、上記のように、本実施形態に係る断熱構造体SBは、積層造形装置AMを用いて製造される。したがって、特許文献1のように溶解液の温度及び濃度、並びに処理時間の管理が必要な製造方法に比べて、簡単に断熱構造体SBを製造できる。また、特許文献2の断熱構造体の製造方法に比べて工程数が少ない。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、断熱構造体SBは、第1階層部F1〜第5階層部F5から構成されているが、階層数を増加させても良いし、減少させて良い。また、各支持部の断面形状は矩形(図5参照)に限られず、任意に設定可能である。また、支持部SPF1〜支持部SPF5の寸法は上記実施形態に限られず、任意に設定可能である。また、例えば、各階層部の形状は上記実施形態の形状に限られない。例えば、図19に示すように、同心円状に形成された複数の支持部からなる階層部と、放射状に延びる複数の支持部からなる階層部とが交互に設けられても良い。また、図20に示すように、断熱構造体1(断熱構造体SB)の平面視において各階層部(又はいずれかの階層部)の空隙が多角形を呈するように設定しても良い。
また、断熱構造体1の空隙は、外部空間(断熱構造体1の外側の空間)へ連通している。この場合、前記外部空間の流体(気体又は液体)は空隙に浸入して基板BPの上面に至る。よって、断熱構造体1が基板BPの上面に形成された構造物全体としての熱伝導率は、基板BPの熱伝導率の影響を大きく受ける。そこで、上記実施形態の断熱構造体1の空隙を、充填材で塞ぐとよい。この場合、例えば、断熱構造体1Bの表層(例えば、第5階層部F5)の空隙)に低熱伝導性材料を塗布して当該部分の空隙を塞ぎ、基板BP側の複数の階層部(例えば、第1階層部F1〜第4階層部F4)の空隙は低熱伝導性材料で塞がれることなく中空状態が保持されている断熱構造体1Cとするとよい(図21参照)。なお、上記の充填材として、耐久性、熱伝導率及び耐熱性の観点からセラミックスが好適である。特に、シリカ系セラミックス、シリカ系コーティング材が好適である。これによれば、外部空間の流体が基板BPの上面に到達し難くなり、断熱構造体1Cが基板BPの上に形成された構造物全体としての熱伝導率を、断熱構造体1Bが基板BPの上に形成された構造物全体としての熱伝導率よりさらに小さく設定できるだけでなく、断熱構造体1Cの強度を断熱構造体1Bよりさらに向上させ、耐久性を高めることができる。
例えば図22A及び図22Bに示すように、断熱構造体1Bの上面及び断熱構造体1Cの上面にプッシュプルゲージを押し当て、それぞれ1kgfの荷重を付加したときの凹部の直径を比較した。この場合、断熱構造体1B(図22A)においては、前記凹部の直径が1605μmであるのに対し、断熱構造体1C(図22B)においては、前記凹部の直径が578μmであった。このように、断熱構造体1Cの強度が断熱構造体1Bより向上していることが確かめられた。
1,1A,1B,1C,SB・・・断熱構造体、AM・・・積層造形装置、BP・・・基板、CN・・・コンテナ、F1〜F5・・・階層部、LM・・・レーザー照射機、M11〜M56・・・材料層、MF・・・材料供給装置、SP・・・スポット、SPF1〜SPF5・・・支持部、TA・・・テーブル、TB・・・薄板部
Claims (8)
- 積層された複数の階層部からなる断熱構造体であって、
前記複数の階層部は、その層厚方向に垂直な方向にそれぞれ延びる複数の支持部を有し、
前記階層部の支持部同士の間に空隙が形成されており、
隣接する2つの前記階層部のうちの一方の階層部を構成する前記支持部が、前記2つの階層部のうちの他方の階層部を構成する前記支持部に支持されている、断熱構造体。 - 請求項1に記載の断熱構造体において、
前記複数の階層部のうちの第1階層部は、所定の第1方向へそれぞれ延びる複数の支持部を有し、
前記第1階層部に隣接する第2階層部は、前記第1方向に交差する第2方向へそれぞれ延びる複数の支持部を有する、断熱構造体。 - 請求項1又は2に記載の断熱構造体において、
前記複数の階層部に陽極酸化皮膜が形成されている、断熱構造体。 - 請求項3に記載の断熱構造体において、
前記空隙が、前記陽極酸化皮膜よりも高硬度の充填材で塞がれている、断熱構造体。 - 請求項3に記載の断熱構造体において、
前記複数の階層部のうち、それらの積層方向における一端部に配置された階層部が所定の基材の表面に形成され、
前記複数の階層部にうち、それらの積層方向における他端部に配置された階層部を構成する各支持部間の空隙が、前記陽極酸化皮膜より熱伝導性の低い充填材で塞がれており、前記複数の階層部のうち、前記基材側に配置された複数の階層部の空隙が前記充填材で塞がれることなく中空状に保持されている、断熱構造体。 - 粉末状の金属材からなる材料層を形成しておき、前記材料層の表面にて前記レーザー光のスポットを走査して、前記材料層のうち、前記レーザー光のスポットが走査された部分の金属材を結合させる工程を繰り返すことにより、層厚方向に垂直な方向へそれぞれ延びる複数の第1支持部であって、隣接する第1支持部同士の間に空隙を有する第1階層部を形成する第1工程と、
前記第1階層部の上面に積層される第2階層部を形成する工程であって、前記粉末状の金属材からなる材料層を前記第1階層部の上方に形成しておき、前記第1階層部の上方に形成した材料層の表面にて前記レーザー光のスポットを走査して、前記材料層のうち、前記レーザー光のスポットが走査された部分の金属材を結合させる工程を繰り返すことにより、層厚方向に垂直な方向へそれぞれ延びていて、前記第1階層部の複数の第1支持部に支持された複数の第2支持部であって、隣接する第2支持部同士の間に空隙を有する第2階層部を形成する第2工程と、を含む断熱構造体の製造方法。 - 請求項6に記載の断熱構造体の製造方法において、
前記複数の第1支持部は、所定の第1方向にそれぞれ延設され、
前記複数の第2支持部は、前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれ延設されている、断熱構造体の製造方法。 - 請求項4又は5に記載の断熱構造体の製造方法において、
前記第1階層部及び前記第2階層部の表面に陽極酸化皮膜を形成する第3工程をさらに含む、断熱構造体の製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017213733 | 2017-11-06 | ||
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JP2018006140A Pending JP2019085637A (ja) | 2017-11-06 | 2018-01-18 | 断熱構造体及びその製造方法 |
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Country | Link |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024076154A1 (ko) * | 2022-10-05 | 2024-04-11 | 성균관대학교산학협력단 | 3d 프린팅으로 제조된 난연 및 단열 특성을 갖는 복합 구조체 및 이의 제조방법 |
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2018
- 2018-01-18 JP JP2018006140A patent/JP2019085637A/ja active Pending
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WO2024076154A1 (ko) * | 2022-10-05 | 2024-04-11 | 성균관대학교산학협력단 | 3d 프린팅으로 제조된 난연 및 단열 특성을 갖는 복합 구조체 및 이의 제조방법 |
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