JP2019081963A - アルマイト部材、アルマイト部材の製造方法及び処理剤 - Google Patents

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Takaaki Sato
孝彰 佐藤
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Abstract

【課題】優れた封孔性と耐食性を有するアルマイト部材を提供する。【解決手段】アルマイト部材は、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化皮膜を有し、フッ素と、コバルト及び/又はクロムとが存在し、且つ、ニッケルを含まない成分で封孔されるアルマイト部材であり、アルマイト部材の表面からアルミニウム基材又はアルミニウム合金基材方向にかけて、酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域でコバルト又はクロムが存在し、厚み方向で、アルマイト部材の表面から3μmの間において、コバルトの存在比率が0.5質量%以上40質量%以下、及び/又は、クロムの存在比率が1質量%以上40質量%以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、アルマイト部材、アルマイト部材の製造方法及び処理剤に関する。
アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理技術の一つとして、アルマイト(陽極酸化)処理が古くから行われている。アルマイト処理は陽極電解によりアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に多孔質層とバリア層からなる酸化膜を形成させ、その後に多孔質層に生じる孔を封孔することでアルミニウム部材に耐食性を付与させる技術である。また、アルマイト処理後に染料等の着色剤に浸漬させ、多孔質層の孔に染料を染み込ませ、その後に封孔処理を行うことで優れた色調と耐食性を付与させることが可能な技術でもある。染料を選択することで多くの色調が得られ、更に耐食性も優れていることから、アルマイト処理は古くから工業分野で広く利用されている。
ここで、封孔処理に関しては、アルマイト処理後の素材を純水や酢酸ニッケル水溶液に浸漬し、純水なら沸騰水で30分以上、酢酸ニッケル水溶液でも90℃以上で15分以上行うことでアルマイトの多孔質層の孔を封孔させるのが一般的な技術となっている。この封孔処理を行うことで優れた耐食性を得ることができる。ただし、染色した場合、沸騰水での封孔は泣き出しと呼ばれる染料の流出が起きることから、酢酸ニッケル水溶液で封孔するのが一般的である。しかしながら、この封孔処理は、純水なら沸騰水で30分以上、酢酸ニッケル水溶液でも90℃以上で15分以上行う必要があり、工業的にはこの温度を維持するためのコストと、封孔にかかる時間が問題となっている。温度を低下させることと時間を短縮させることで、生産性の向上とコスト低減を果たすことができるのである。また封孔処理を行ったアルマイト処理品の耐食性を塩水噴霧試験で評価した場合、ADC12材上では24〜48時間で白錆が発生するため、更なる耐食性向上を果たすための検討も行われている。
特開2004−277866号公報 特表2002−532631号公報 特開2012−036469号公報 特開2007−277597号公報 特表平11−509579号公報 特開平10−088109号公報 特開平5−106087号公報 特開2010−248545号公報
アルミニウム研究会誌 2013 No.2 通巻430号
アルマイトの封孔処理の低温化、またアルマイトの耐食性を向上させる手段は既に検討されている。しかしながら、耐食性を向上させ、また同時に封孔処理の低温・短時間化を果たせる技術は得られていない。例えば、特許文献1にはアルマイトの部材を浸漬し、電圧を印加する方法が開示されている。この方法では新たな電気設備を追加する事が必須となり、従来の浸漬及びスプレーといった簡潔な処理ではなく、経済的、生産性の面で好ましいものではない。
特許文献2では、フルオロアルキル基を有するアクリル酸、メタクリル酸のフッ素化ポリマー又はコポリマーを含有し、更にリチウムイオン、マグネシウムイオンを含有する溶液にてpH5.5〜8.5、75℃以上にて処理する方法が開示されている。ニッケルは含有していないが、処理温度が高温である。
特許文献3にはアルミニウムまたはアルミニウム合金上の保護皮膜に関する記載があるが、アルマイト上への転用を試みたものの耐食性を得ることはできなかった。
特許文献4にはα−アミノ酸及び金属を含む溶液で封孔処理を行う方法が開示されているが、処理温度が50℃以上とやや高温である上、耐食性も高いものではなかった。
特許文献5にはリチウムイオン及びフッ化物イオンを含有する溶液を用いる方法が開示されているが、その処理後に二段処理として従来の沸騰水封孔と同等の80〜100℃の溶液への処理が必要で、経済的、工程的に好ましいものではなく、また、耐食性を得ることはできなかった。
特許文献6、7には、汚染物の付着を抑えるための組成が開示されているが、どちらも70℃以上の処理温度が必要であり、経済的に好ましいものではない。
特許文献8には、染色したアルマイトを水溶性カチオンポリマー水溶液にて処理することにより、染料の固着を強固にし、その後にマグネシウム塩及び/またはカルシウム塩を含む封孔処理液によって封孔する方法が開示されているが、二段処理を必要とし、封孔処理の処理温度が80℃以上と高いため経済的に好ましくない。
非特許文献1には低温封孔処理も記載されているが、エージング(安定化のための放置)に時間がかかり、また低温クラックを生じ耐食性が劣る。また封孔処理後に湯洗を必須とするため、処理工程の短縮化には対応できない。
本発明は、上記課題に鑑み、優れた封孔性と耐食性を有するアルマイト部材を提供することを課題とする。
本発明者らは、従来技術の抱える前記問題点であるアルマイトの耐食性向上の手段について鋭意検討した。その結果、アルマイト処理品の表面に陽極酸化皮膜とコバルト及び/又はクロムが存在するアルミニウム部材を提供することで優れた封孔性と耐食性を有する処理物が得られることを見出した。それと同時に、従来の酢酸ニッケル封孔処理に比べ低温・短時間処理も可能となり、大幅な作業性向上やコストメリットを得ることにも成功した。また、アルマイト後の処理においてジルコニウム、カルシウム、亜鉛、バナジウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、アルミニウムを添加することによって、耐食性を低下させることなく、処理後の処理材が落ち着いた外観となり意匠性を持たせ又、耐光性を向上させることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化皮膜と、コバルト及び/又はクロムとが存在するアルマイト部材であり、前記アルマイト部材の表面から前記アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材方向にかけて、前記酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域で前記コバルト又はクロムが存在し、厚み方向で、前記アルマイト部材の表面から3μmの間において、前記コバルトの存在比率が0.5質量%以上40質量%以下、及び/又は、前記クロムの存在比率が1質量%以上40質量%以下であるアルマイト部材である。
本発明のアルマイト部材は更に別の一実施形態において、アルマイト処理後に染色処理されている。
本発明のアルマイト部材は更に別の一実施形態において、前記アルマイト部材の表面が、ケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうち一種以上を含有するコーティング、プライマー、塗装、クリアコートのいずれか一種以上の処理がされている。
本発明のアルマイト部材は更に別の一実施形態において、更に、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、バナジウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、及び、アルミニウムからなる群のうち一種類以上の金属のイオンを含有する。
本発明は別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、コバルト及び/又はクロムが存在し、塩水噴霧試験で48時間以上の耐食性を有するアルマイト部材である。
本発明は更に別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、コバルト及び/又はクロムが存在し、且つ、ニッケルを含まず、塩水噴霧試験で48時間以上の耐食性を有するアルマイト部材である。
本発明のアルマイト部材は更に別の一実施形態において、前記塩水噴霧試験で72時間以上の耐食性を有する。
本発明は更に別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化前処理、陽極酸化処理、陽極酸化後処理、乾燥処理をこの順で行う本発明のアルマイト部材の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化前処理、陽極酸化処理、陽極酸化後処理、湯洗、乾燥処理をこの順で行う本発明のアルマイト部材の製造方法である。
本発明のアルマイト部材の製造方法は一実施形態において、前記陽極酸化前処理を、脱脂、エッチング、脱スマット、研磨処理、及び、梨地処理から選択される一つ以上の工程で行う。
本発明のアルマイト部材の製造方法は別の一実施形態において、前記陽極酸化後処理を、5〜70℃、pH2〜7、1〜900秒の処理条件で行う。
本発明のアルマイト部材の製造方法は更に別の一実施形態において、前記陽極酸化後処理を、浸漬又はスプレー噴霧にて行う。
本発明のアルマイト部材の製造方法は更に別の一実施形態において、前記陽極酸化処理と、前記陽極酸化後処理との間に、染色処理を行う。
本発明のアルマイト部材の製造方法は更に別の一実施形態において、前記陽極酸化後処理と、前記乾燥処理との間に、ケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうち一種以上を含有するコーティング、プライマー、塗装、クリアコートのいずれか一種以上の処理を行う。
本発明は更に別の一側面において、本発明のアルマイト部材を得るために、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後の陽極酸化後処理において用いられる処理剤であり、コバルトイオン及び/又はクロムイオンと、フッ素イオンとを含有する処理剤である。
本発明の処理剤は一実施形態において、更に、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、バナジウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、及び、アルミニウムからなる群のうち一種類以上の金属のイオンを含有する。
本発明の処理剤は一実施形態において、本発明のアルマイト部材を得るために、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する前の陽極酸化前処理において用いられる処理剤であり、苛性アルカリ、シリカ、硝酸、鉱酸、有機酸、フッ素化合物、及び、界面活性剤を含有する処理剤である。
本発明によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で優れた耐食性と封孔性を有するアルマイト処理部材を得ることが出来る。更に従来の酢酸ニッケル封孔処理に比べ低温かつ短時間で処理が可能であり、生産性向上とコストメリットが期待できる。
比較例1のグロー放電発光表面分析結果である。 実施例1のグロー放電発光表面分析結果である。 実施例2のグロー放電発光表面分析結果である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(全体像)である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(酸素マッピング画面)である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(アルミニウムマッピング画面)である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(クロムマッピング画面)である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(コバルトマッピング画面)である。 実施例1のアルマイト部材の断面図(フッ素マッピング画面)である。
(アルマイト部材)
本発明のアルマイト部材は、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化皮膜と、コバルト及び/又はクロムとが存在する。アルマイト部材の高耐食性が得られる詳細な機構については、分析結果から、このように基材の表面に、陽極酸化皮膜と、コバルト及び/又はクロムとが存在することで、封孔すると同時に皮膜を形成しており、耐食性と封孔性に優れたアルマイト部材が得られる。
本発明のアルマイト部材は、アルマイト部材の表面からアルミニウム基材又はアルミニウム合金基材方向にかけて、酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域でコバルトが存在し、厚み方向で、アルマイト部材の表面から3μmの間において、コバルトの存在比率が0.5質量%以上40質量%以下、及び/又は、クロムの存在比率が1質量%以上40質量%以下である。厚み方向で、アルマイト部材の表面から3μmの間に当該コバルトの存在比率及びクロムの存在比率は、アルマイト部材の表面全域に亘っていなくてもよい。当該存在比率を充足する領域は、少なくとも、優れた封孔性と耐食性が必要な領域に設けていればよい。このような構成であれば、皮膜自体が安定化し、優れた耐食性、外観及び塗装密着性が得られる。また、厚み方向で、アルマイト部材の表面から3μmの間において、コバルトの存在比率が1質量%以上11質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上7質量%以下であるのがより好ましい。また、厚み方向で、アルマイト部材の表面から3μmの間において、クロムの存在比率が5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以上25質量%以下であるのがより好ましい。
本発明のアルマイト部材は、別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、コバルト及び/又はクロムが存在し、塩水噴霧試験で48時間以上、好ましくは72時間以上、より好ましくは120時間以上の耐食性を有するアルマイト部材である。また、本発明のアルマイト部材は、更に別の一側面において、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、コバルト及び/又はクロムが存在し、且つ、ニッケルを含まず、塩水噴霧試験で48時間以上、好ましくは72時間以上、より好ましくは120時間以上の耐食性を有するアルマイト部材である。
(被処理金属基材)
本発明の高耐食性を形成する被処理金属基材としては、アルミニウム部材、展伸材やダイキャストを含むアルミニウム合金部材に対し効果的に作用する。本発明のアルマイト部材は、当該アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化前処理、陽極酸化処理、陽極酸化後処理、乾燥処理をこの順で行うことで作製される。
(陽極酸化前処理)
被処理金属基材に対し、まず、陽極酸化前処理を行う。陽極酸化前処理の処理剤は、苛性アルカリ、シリカ、硝酸、鉱酸、有機酸、フッ素化合物、及び、界面活性剤を含有するのが好ましい。このような構成であれば、油や離型剤や汚れの除去が可能で、後の工程で均一なアルマイト外観や良好な耐食性が得られる。
(陽極酸化前処理の脱脂)
陽極酸化前処理として脱脂を行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観、耐食性および塗装密着性を向上させることができる。脱脂には酸性タイプやアルカリタイプの脱脂剤が使用できる。脱脂時間に関しては部材の油付着度合いにより処理条件を変化させる必要があるが、脱脂時間が短い場合は脱脂不良となり、最終的な処理物で外観ムラや優れた耐食性が得られなくなる。
(陽極酸化前処理のエッチング)
陽極酸化前処理としてエッチングを行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観、染色性、耐食性および塗装密着性を向上させることが可能である。離型剤などが付着している部材ではエッチングにより離型剤の除去が可能である。酸やアルカリを用いたエッチング処理を行うことで離型剤が除去でき、耐食性が向上する。離型剤等の除去が不十分であった場合、最終的な処理物で外観ムラや優れた耐食性が得られなくなる。
(陽極酸化前処理の脱スマット)
処理物表面にスマットが発生した場合には、脱スマット処理(例えば、硝酸につけることでスマット(しみ)を除く処理)が可能である。陽極酸化前処理として脱スマット処理を行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観、染色性、耐食性および塗装密着性を向上させることが可能である。脱スマット処理が不十分であった場合には最終的な処理物で外観ムラや優れた耐食性が得られなくなる。
(陽極酸化前処理の研磨処理)
陽極酸化前処理として研磨処理を行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観、染色性、耐食性および塗装密着性を向上させることが可能である。特に処理物の意匠性や湯じわ除去等の効果を得ることが可能となる。酸性型やアルカリ性型研磨剤を使用でき、また化学研磨処理や電解研磨処理を行うことが出来る。
(陽極酸化前処理の梨地処理)
陽極酸化前処理として梨地処理(艶等を無くす処理)を行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観、染色性、耐食性および塗装密着性を向上させることが可能である。特に処理物の意匠性や湯じわ除去等の効果を得るため、梨地処理を行うことが可能である。酸性型やアルカリ性型梨地剤を使用でき、また化学梨地処理や電解梨地処理を行うことが出来る。
(アルミニウム陽極酸化処理)
上記陽極酸化前処理後の金属基材を、アルマイト処理液の処理浴に浸漬することで、アルミニウム陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理による酸化膜の膜厚は1〜70μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。1μm以下であると耐食性が低下するとともに染色処理が困難となり、70μm以上では生産性が低下するため好ましくない。1μm以上の膜厚が得られるのであればアルマイト処理液や温度・電圧等は自由に選択することができる。一般的なアルマイトや硬質アルマイトの浴に用いる処理液となる硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、燐酸、燐酸ナトリウム、硼酸、硼砂、炭酸アンモニウム、クロム酸、重クロム酸、スルファミン酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、クエン酸アンモニウム、蟻酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フェリシアン化カリウム、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、過酸化水素水、チタン酸シュウ酸カリウム、スルホサリチル酸、スルホフタル酸、スルホイソフタル酸、フェノールスルホン酸等を含有し、−5〜250℃で使用される処理剤を利用できる。
(アルミニウム陽極酸化処理後の染色処理)
陽極酸化処理と、陽極酸化後処理との間に、染色処理を行うことが出来る。このとき、その後のアルミニウム陽極酸化後処理を行うことで、泣き出しと呼ばれる染料の流出もなく、良好な外観と耐食性を得ることが可能である。染色処理を行うことで、本発明のアルマイト部材の処理外観を向上させることが可能である。
(陽極酸化後処理)
アルミニウム陽極酸化処理の後、陽極酸化後処理を行う。陽極酸化後処理は、処理液中に浸漬することで、又は、処理液をスプレー噴霧で行うことができる。処理工場に適した処理法を選択することで、本発明の処理外観、耐食性および塗装密着性を向上させることが可能である。
(陽極酸化後処理の処理液の温度)
陽極酸化後処理の処理液の温度は5〜70℃の範囲が好ましく、20〜50℃の範囲であるのがより好ましい。処理温度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。処理温度が5℃以下の場合は反応速度の低下により皮膜を得るのに時間がかかり、70℃以上の場合は維持コストの面から好ましくはない。
(陽極酸化後処理の処理液のpH)
陽極酸化後処理の処理液のpHは2〜7の範囲が好ましく、処理pH3〜5の範囲であるのがより好ましい。処理pHが上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。処理pHが2以下の場合は部材の研磨過剰が生じ処理外観ムラや耐食性の低下を招き、処理pHが7以上では反応速度の低下と処理液に沈殿が生じやすくなり、また強アルカリであることから好ましくない。pH調整が必要な場合は硝酸と苛性ソーダで行うことが出来るが、この他に硫酸、塩酸、苛性カリ、アンモニア水等も使用できる。
(陽極酸化後処理の時間)
陽極酸化後処理の時間は1〜900秒の範囲が好ましく、2〜300秒の範囲であることがより好ましい。処理時間が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。処理時間が1秒以下では反応不足による耐食性の低下を招き、900秒以上では処理過剰による処理概観ムラを招くとともに生産性も低下するため好ましくない。
(陽極酸化後処理剤)
本発明で用いる陽極酸化後処理剤は、コバルトイオン及び/又はクロムイオンと、フッ素イオンとを含有する。
(陽極酸化後処理剤−コバルトイオン源)
陽極酸化後処理剤の構成成分であるコバルトイオンのイオン源としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、リン酸コバルト、酢酸コバルト、フッ化コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物が利用できる。コバルトの化合物であれば、上記以外の物質でもコバルトの供給源として利用できる。これらコバルトの化合物は一種または二種以上を使用することができる。当該化合物のコバルトイオン濃度は0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜20g/Lであるのがより好ましい。コバルト濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。コバルト濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性と封孔性の低下を招き、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中で沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−クロムイオン源)
陽極酸化後処理剤の構成成分であるクロムイオンのイオン源としては、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、リン酸クロム、酢酸クロム、水酸化クロム等の3価クロム塩、およびクロム酸や重クロム酸等の6価クロムを還元剤により3価に還元した3価クロム等のクロム化合物が利用できる。3価クロムの化合物であれば、上記以外の物質でも3価クロムの供給源として利用できる。これらクロムの化合物は一種または二種以上を使用することができる。当該化合物のクロムイオン濃度は0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜20g/Lであるのがより好ましい。クロム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。クロム濃度が0.001g/Lより低下すると耐食性と封孔性の低下を招き、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中で沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−フッ素イオン源)
陽極酸化後処理剤の構成成分であるフッ素イオンのイオン源としては、フッ化水素、フッ化アンモニウム、酸性フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、酸性フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、酸性フッ化ナトリウム、フッ化コバルト、ジルコンフッ化アンモニウム、ホウフッ化物等のフッ素化合物が利用できる。フッ素化合物であれば、上記以外の物質でもフッ素供給源として利用できる。これらフッ素化合物は一種または二種以上を使用することができる。当該化合物のフッ素イオンの濃度としては0.01〜100g/Lが好ましく、0.1〜50g/Lであるのがより好ましい。フッ素イオン濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。フッ素イオン濃度が0.01g/Lより低下すると耐食性と封孔性の低下を招き、100g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中で沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−ジルコニウム源)
また、陽極酸化後処理剤がジルコニウム源を含んでも良い。ジルコニウム源としては、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコニウムゾル等のジルコニウム化合物が利用できる。ジルコニウムの化合物であれば、上記以外の物質でもジルコニウムの供給源として利用できる。これらジルコニウム化合物は、一種又は二種以上を使用することができる。当該化合物のジルコニウム濃度としては、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜20g/Lであるのがより好ましい。ジルコニウム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。ジルコニウム濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中に沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−カルシウム源)
また、陽極酸化後処理剤がカルシウム源を含んでも良い。カルシウム源としては、フッ化カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、チオグリコール酸カルシウム、タングステン酸カルシウム等のカルシウム化合物が利用できる。これらカルシウム化合物は一種又は二種以上を使用することができる。当該化合物のカルシウム濃度としては、0.01〜10g/Lが好ましく、0.1〜1g/Lであるのがより好ましい。カルシウム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。カルシウム濃度が0.01g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、10g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、処理液中に沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−亜鉛源)
また、陽極酸化後処理剤が亜鉛源を含んでも良い。亜鉛源としては、酸化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛等の亜鉛化合物が利用できる。亜鉛の化合物であれば、上記以外の物質でも亜鉛の供給源として利用できる。これら亜鉛化合物は一種または二種以上を使用することができる。亜鉛濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。亜鉛濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。亜鉛濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−バナジウム源)
また、陽極酸化後処理剤がバナジウム源を含んでも良い。バナジウム源としては、硝酸バナジウム、硫酸バナジウム、塩化バナジウム、バナジン酸、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム化合物が利用できる。バナジウムの化合物であれば、上記以外の物質でもバナジウムの供給源として利用できる。これらバナジウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。バナジウム濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lであるのがより好ましい。バナジウム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。バナジウム濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−ニッケル源)
また、陽極酸化後処理剤がニッケル源を含んでも良い。ニッケル源としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、燐酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、酢酸ニッケル、フッ化ニッケル等のニッケル化合物が利用できる。ニッケルの化合物であれば、上記以外の物質でもニッケルの供給源として利用できる。これらニッケル化合物は一種または二種以上を使用することができる。ニッケル濃度は、0.001〜20g/Lが好ましく、0.01〜10g/Lであるのがより好ましい。ニッケル濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。ニッケル濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、20g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−チタン源)
また、陽極酸化後処理剤がチタン源を含んでも良い。チタン源としては、塩化チタン、シュウ酸チタンカリウム、チタンフッ化アンモン、フッ化チタンカリウム、硫酸チタン等のチタン化合物が利用できる。これらチタン化合物は一種または二種以上を使用することができる。チタン濃度は、0.01〜50g/Lが好ましく、0.1〜20g/Lであるのがより好ましい。チタン濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。チタン濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−マグネシウム源)
また、陽極酸化後処理剤がマグネシウム源を含んでも良い。マグネシウム源としては、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物が利用できる。マグネシウムの化合物であれば、上記以外の物質でもマグネシウムの供給源として利用できる。これらマグネシウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。マグネシウム濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lの範囲であるのがより好ましい。マグネシウム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。マグネシウム濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理剤−アルミニウム源)
また、陽極酸化後処理剤がアルミニウム源を含んでも良い。アルミニウム源としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、コルイダルアルミナ等のアルミニウム化合物が利用できる。アルミニウムの化合物であれば、上記以外の物質でもアルミニウムの供給源として利用できる。これらアルミニウム化合物は一種または二種以上を使用することができる。アルミニウム濃度は、0.001〜50g/Lが好ましく、0.01〜30g/Lの範囲であるのがより好ましい。アルミニウム濃度が上記範囲内で良好な皮膜が得られ、良好な外観、封孔性、耐食性が得られる。アルミニウム濃度が0.001g/Lより低下すると意匠性、耐光性向上効果が得られにくく、50g/Lを超えるとコストメリットの低下と共に、沈殿が発生しやすくなり好ましくない。
(陽極酸化後処理の後湯洗)
陽極酸化後処理の後に湯洗を行うことも可能である。湯洗の有無で外観や耐食性に影響はないが、湯洗を行うことで洗浄能力が向上するとともに、部材の温度が上昇しその後の乾燥工程での乾燥を容易に、短時間で行うことができる。温度や時間に指定はないが、40〜80℃、10秒〜5分浸漬が量産性に優れている。
(陽極酸化後処理の後のコーティング、プライマー、塗装、クリアコート)
陽極酸化後処理の後に、ケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうち一種以上を含有するコーティング、プライマー、塗装、クリアコートのいずれか一つ以上の処理を行っても良い。当該コーティングは、主に耐食性を付与することができる。当該プライマーは、主に塗装の下地として使用され、密着性を付与することができる。当該塗装は主に色調を制御するために使用される。当該クリアコートは、主にワックスのような艶出しのために使用される。これらコーティング、プライマー、塗装、クリアコートに特に限定はなく、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート等の樹脂類やケイ酸塩、コロイダルシリカ等を成分とするコーティング、プライマー、塗装、クリアコートを用いても良い。これらの濃度は、0.01〜800g/Lが好ましいが、適切な濃度は成分の種類により異なる。コーティング剤としては、具体的には、コスマーコート(商品名、関西ペイント(株))、ハイシール272(商品名、日本表面化学(株))、ストロンJコート(商品名、日本表面化学(株))、トライナーTR−170(商品名、日本表面化学(株))、フィニガード(商品名、Coventya社)等が挙げられる。アクリル樹脂としては、具体的には、GX−235T(商品名、日本表面化学(株))、ヒロタイト(商品名、日立化成(株))、アロセット(商品名、(株)日本触媒)等があり、オレフィン樹脂については、フローセン(商品名、住友精化(株))、PES(商品名、日本ユニカー(株))、ケミパール(商品名、三井化学(株))、サンファイン(商品名、旭化成(株))、エポキシ樹脂としてはALプライマー(商品名、イサム塗料(株))、イサムエポロ500(商品名、イサム塗料(株))等が、挙げられる。また、電着塗装を行うことも出来る。
(乾燥処理)
陽極酸化後処理の後、或いは、上記コーティング、プライマー、塗装又はクリアコートが行われた場合はそれらの後に、乾燥処理を行う。
(乾燥温度)
乾燥温度は部材を乾燥させることができれば制限はないが、20〜200℃の範囲が好ましく、60〜120℃の範囲であることがより好ましい。乾燥温度が20℃より低い場合は乾燥時間がかかり生産性を低下させ、また200℃以上の場合はコストが上昇するため好ましくない。
(乾燥時間)
乾燥時間は部材を乾燥させることができれば制限はないが、1〜20分の範囲が好ましく、5〜15分の範囲であることがより好ましい。乾燥時間が1分より短い場合は乾燥不足を招きやすく、また20分以上の場合は生産性が低下するため好ましくない。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
処理対象の金属基材(素材)としては、アルミニウム基材としてA1100を用い、アルミニウム合金基材としてADC12材及びA5052材を用いた。一連の実験工程は、脱脂、アルカリエッチング、脱スマット処理、アルミニウム陽極酸化処理、必要に応じ染色処理、アルミニウム陽極酸化後の処理、必要に応じコーティング・プライマー・塗装・クリアコート処理、乾燥の順で、指定がない限り浸漬処理を行った。これら各工程の間には全て水洗を行った。ただし、コーティング・プライマー・塗装・クリアコート後の水洗は行わず乾燥した。脱脂はケイクリン6(日本表面化学株式会社製非鉄用脱脂剤)50mL/L、50℃、5分の条件で行った。アルカリエッチングは苛性ソーダ50g/L、60℃、30秒の条件で行った。脱スマット処理は67.5%硝酸300mL/L、室温、1分の条件で行った。研磨処理はケミライト53(日本表面化学株式会社製化学研磨剤)950mL/L、67.5%硝酸50mL/L、100℃、30秒で行った。梨地処理はアルエッチ83(日本表面化学株式会社製化学梨地剤)150g/L、65℃、2分で行った。
アルマイト処理(陽極酸化処理)は98%精製硫酸150mL/L、16V、1.3A/dm2、素材毎に渦電流膜厚計で10μmの膜厚になるよう時間を調整した。染色処理はジャスコカラーBL(日本表面化学株式会社製の黒色染料)10g/L、60℃、pH4.2、10分の条件で行った。アルミニウム陽極酸化後の処理のスプレー処理は1.3kgf/cm2で行った。アルミニウム陽極酸化後の処理の後の湯洗は45℃、1分で行った。湯洗を行う場合はアルミニウム陽極酸化後の処理、水洗、湯洗、乾燥の工程で処理した。ストロンJコート(日本表面化学株式会社製のシリカ系コーティング剤)は濃度原液、40℃、10秒で行った。ハイシール272(日本表面化学株式会社製のアクリル系コーティング剤)は500mL/L、室温、10秒で処理した。GX−235T(日本表面化学株式会社製のアクリル系クリアコート)は100mL/L、室温、10秒で処理した。ハイポンファインプライマーII(日本ペイント株式会社製の変性エポキシ樹脂プライマー)は濃度原液、室温でバーコーター塗布(No.3で約7μm)を行った。ファインウレタンU100(日本ペイント株式会社製のウレタン塗料)は濃度原液、室温でバーコーター塗布(No.3で約7μm)を行った。比較例1〜3の酢酸ニッケル封孔剤はアルシール87(日本表面化学株式会社製)6g/L、90℃、pH5.9、15分処理で行った。乾燥は80℃、10分の条件で行った。なお、比較例2は、(2)陽極酸化処理を行わず、(1)前処理、水洗、(3)陽極酸化後処理、水洗、乾燥をこの順で処理した。比較例14の電解処理は、−5V処理の陰極電解処理(陽極カーボン板)によって行った。比較例17は、(3)陽極酸化後処理で、1度目にNo.40の処理液の組成での処理、水洗、2度目に純水で処理、乾燥をこの順で処理した。
耐食性試験はJIS Z 2371に従う塩水噴霧試験を行った。塗装密着性試験は試験片表面にエポキシ系樹脂を塗布し、焼付け乾燥した後に碁盤目状にクロスカットを入れ、沸騰水に30分浸漬後、セロハンテープを圧着させ、これを垂直方向にはく離し評価した。コート処理を行った実施例に関しては、そのまま碁盤目状にクロスカットを入れ、沸騰水に30分浸漬後、セロハンテープを圧着させ、これを垂直方向にはく離し評価した。コバルトとクロムは、堀場製作所社製マーカス型高周波グロー放電発光分析装置GD−Profiler2を用いて、グロー放電発光表面分析で、酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域に存在しているかを確認し、さらに、サンプルの表面から深さ方向で0μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μmの各部分を測定し各存在比率(質量%)を求め、その平均を算出した。(3)アルミニウム陽極酸化後の処理後にコーティング、プライマー、塗装、クリアコートを行った実施例12〜17に関しては、コーティング、プライマー、塗装、クリアコートの前にグロー放電発光表面分析によりコバルトとクロムを分析した。インク試験はJIS H 8683−1に従う試験を行った。
試験条件、薬剤組成、および評価結果を下記表に示す。表中の(1)は陽極酸化前処理に関連する条件、(2)はアルミニウム陽極酸化処理に関連する条件、(3)は陽極酸化後処理に関連する条件を記している。
外観の評価は、サンプル表面について、目視で行った。
塩水噴霧試験評価(耐食性評価)は、以下の基準による。
A:1008時間後白錆発生無し
B:48時間後白錆発生
C:24時間後白錆発生
塗装密着性を判断する表中の碁盤目試験評価は、以下の基準による。
A:はく離無し
B:はく離5%未満
C:はく離10%未満
D:はく離50%未満
E:はく離50%以上
封孔性を示すインク試験は、以下の基準による。
A:インク残り無し
B:インク残り有り
(評価)
実験結果から、陽極酸化皮膜とコバルト及び/またはクロムが存在するアルミニウム部材を生成することで、優れた外観・耐食性・塗装密着性・封孔性が得られることが確認された。更にジルコニウム、カルシウム、亜鉛、バナジウム、ニッケル、チタン、マグネシウム、アルミニウムからなる群のうち一種類以上の金属イオンを含有するアルミニウム陽極酸化後の処理剤を用いることで、更に意匠性が向上したが、耐食性に悪影響は無かった。一方比較例からは、実施例に匹敵する耐食性を得るには至らないことが確認された。また従来処理品となる比較例1の酢酸ニッケル封孔処理品と比較しても、低温・短時間処理で優れた耐食性が得られた。
実施例1〜110はいずれも、酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域にコバルト又はクロムが存在していることが確認された。
図1に比較例1の、図2に実施例1のグロー放電発光表面分析結果を示す。これらはどちらもADC12材の処理品である。ADC12材には銅やシリカも含有されているが、表が重なり見にくくなるため、本発明に関係のない元素は省略している。まず比較例1は酢酸ニッケルを用いた従来技術の封孔処理である。この封孔処理はアルマイト多孔質層の孔内で皮膜の体積膨張を伴う水和封反応(I)と水酸化ニッケルを析出させる析出反応(II)の二種類の反応機構によりアルマイト多孔質層の封孔が行われていると推測されている。グロー放電発光表面分析結果からこの酢酸ニッケルを用いた封孔処理は表層から0.01μmより浅い位置でニッケルが多く析出しており、表層の浅い位置で封孔が行われていることが推測できる。
Al23 + H2O → Al23・H2O (ベーマイト) (I)
Ni(CH3COO) 2 +2H2O→ Ni(OH)2 + 2CH3COOH (II)
一方、本発明である実施例1のグロー放電発光表面分析結果からは、成分となるコバルトとクロムが4μm以上まで非常に厚く存在していることが確認できる
また、図3に実施例2のグロー放電発光表面分析結果を示す。比較例1は酢酸ニッケルを用いた従来技術の封孔処理であり、比較例1のADC12材と同様にニッケルは表層のみに存在している。実施例2のグロー放電発光表面分析結果からは、成分となるコバルトとクロムが4μm以上まで非常に厚く存在していることが確認できる。A1100等の展伸材は耐食性が得られやすい素材であり、実施例2は40℃180秒処理である。実施例2と比較例3の40℃180秒処理同士の耐食性を考慮すると、本発明の優位性が改めて証明できる。
また図4〜9に、実施例1のFE−SEM−EDX断面元素マッピング写真を示す。ここからもアルマイト皮膜の内部にまでコバルトとクロムが存在していることが確認できる。図9よりフッ素はグロー放電発光表面分析結果では検出されない元素であるが、FE−SEM−EDX断面元素マッピングでは検出される物質であり、アルマイト皮膜の内部にまで存在していることが確認できる。この皮膜の詳細な反応機構は不明だが、一般的な6価クロメートやクロム皮膜等の化成皮膜の厚みは0.01〜0.8μmが一般的であり、この0.01μm以上に厚く存在するコバルトとクロムの皮膜が本発明では得られるため、優れた耐食性が得られるものと推測される。

Claims (17)

  1. アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化皮膜を有し、フッ素と、コバルト及び/又はクロムとが存在し、且つ、ニッケルを含まない成分で封孔されるアルマイト部材であり、
    前記アルマイト部材の表面から前記アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材方向にかけて、前記酸化皮膜全域又は0.01μm以上の厚み領域で前記コバルト又はクロムが存在し、
    厚み方向で、前記アルマイト部材の表面から3μmの間において、前記コバルトの存在比率が0.5質量%以上40質量%以下、及び/又は、前記クロムの存在比率が1質量%以上40質量%以下であるアルマイト部材。
  2. アルマイト処理後に染色処理された請求項1に記載のアルマイト部材。
  3. 前記アルマイト部材の表面が、ケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうち一種以上を含有するコーティング、プライマー、塗装、クリアコートのいずれか一種以上の処理がされた請求項1又は2に記載のアルマイト部材。
  4. 更に、カルシウム、亜鉛、バナジウム、チタン、マグネシウム、及び、アルミニウムからなる群のうち一種類以上の金属を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルマイト部材。
  5. 前記アルマイト部材が、ニッケル及びジルコニウムを含まない成分で封孔される請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルマイト部材。
  6. アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面において、フッ素と、コバルト及び/又はクロムが存在し、且つ、ニッケルを含まない成分で封孔され、塩水噴霧試験で48時間以上の耐食性を有するアルマイト部材。
  7. 前記塩水噴霧試験で72時間以上の耐食性を有する請求項6に記載のアルマイト部材。
  8. 前記アルマイト部材が、ニッケル及びジルコニウムを含まない成分で封孔される請求項6又は7に記載のアルマイト部材。
  9. アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化前処理、陽極酸化処理、陽極酸化後処理、乾燥処理をこの順で行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルマイト部材の製造方法。
  10. アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に、陽極酸化前処理、陽極酸化処理、陽極酸化後処理、湯洗、乾燥処理をこの順で行う請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルマイト部材の製造方法。
  11. 前記陽極酸化前処理を、脱脂、エッチング、脱スマット、研磨処理、及び、梨地処理から選択される一つ以上の工程で行う請求項9又は10に記載のアルマイト部材の製造方法。
  12. 前記陽極酸化後処理を、浸漬又はスプレー噴霧にて行い、5〜70℃、pH2〜7、1〜900秒の処理条件で行う請求項9〜11のいずれか一項に記載のアルマイト部材の製造方法。
  13. 前記陽極酸化処理と、前記陽極酸化後処理との間に、染色処理を行う請求項9〜12のいずれか一項に記載のアルマイト部材の製造方法。
  14. 前記陽極酸化後処理と、前記乾燥処理との間に、ケイ素、樹脂及びワックスからなる群のうち一種以上を含有するコーティング、プライマー、塗装、クリアコートのいずれか一種以上の処理を行う請求項9〜13のいずれか一項に記載のアルマイト部材の製造方法。
  15. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルマイト部材を得るために、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成した後の陽極酸化後処理において用いられる処理剤であり、コバルトイオン及び/又はクロムイオンと、フッ素イオンとを含有し、ニッケルを含まない処理剤。
  16. 更に、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、バナジウム、チタン、マグネシウム、及び、アルミニウムからなる群のうち一種類以上の金属のイオンを含有する請求項15に記載の処理剤。
  17. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルマイト部材を得るために、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材の表面に陽極酸化皮膜を形成する前の陽極酸化前処理において用いられる処理剤であり、苛性アルカリ、シリカ、硝酸、鉱酸、有機酸、フッ素化合物、及び、界面活性剤を含有する処理剤。
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