JP2019081942A - 自己析出型皮膜を有するチタン系基材及びその製造方法、並びに、自己析出型皮膜形成剤 - Google Patents

自己析出型皮膜を有するチタン系基材及びその製造方法、並びに、自己析出型皮膜形成剤 Download PDF

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Abstract

【課題】表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に絶縁性に優れた自己析出型皮膜を有するチタン系基材等の提供。【解決手段】表面にチタンを有するチタン系基材と表面上に自己析出型皮膜を有し、自己析出型皮膜が樹脂の架橋物と金属成分とを含み、樹脂が、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性又は水分散性のポリマーの少なくとも1種であり、金属成分が、チタンと、ニッケル、鉄、銅及びバナジウムから選ばれる少なくとも1種の金属である、自己析出型皮膜を有するチタン系基材。チタン系基材の表面を自己析出型皮膜形成剤に浸漬し、未硬化状態の皮膜を形成し、更に水洗し、その後、加熱によって皮膜を硬化させる自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、無電解で化学反応させて樹脂を析出させることにより形成させた皮膜(以下、「自己析出型皮膜」と称する。)を有するチタン系基材及びその製造方法、並びに、該製造方法に用いる自己析出型皮膜形成剤に関するものである。
従来、自己析出型皮膜を形成させる技術が開発されている。例えば、特許文献1には、所定の水分散性又は水溶性有機樹脂と、酸と、酸化剤とを含有する自己析出型水性樹脂組成物を、金属表面に接触させて、金属表面上に樹脂被膜を形成し、樹脂被膜に、それが未硬化状態にある間に、所定の水溶性アミン樹脂及びアミン化合物を含有する水溶液を接触させて、未硬化樹脂被覆に後処理を施し、この後処理された樹脂被覆を乾燥硬化する金属表面の耐食被覆方法が開示されている。この方法によれば、耐食性および密着性に優れ、かつ常に安定な品質を提供できる自己析出型樹脂被膜を形成できる。
特開平11−197597号公報
本発明は、表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に絶縁性に優れた自己析出型皮膜を有するチタン系基材及びその製造方法、並びに、該製造方法に用いる自己析出型皮膜形成剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に特定の自己析出型皮膜形成剤を接触させて未硬化状態の皮膜を形成させた後、該未硬化状態の皮膜を水洗し、加熱して硬化させることにより、絶縁性に優れた自己析出型皮膜を有するチタン系基材を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)表面にチタンを有するチタン系基材と、前記表面の上に自己析出型皮膜を有し、
前記自己析出型皮膜は、樹脂又はその架橋物と、金属成分とを含み、
前記樹脂は、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種であり、
前記金属成分は、チタンと、ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる少なくとも1種の金属である、自己析出型皮膜を有するチタン系基材;
(2)表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に未硬化状態の皮膜を形成するための、前記チタン系基材の表面上に自己析出型皮膜形成剤を接触させる第1工程と、
前記未硬化状態の皮膜を水洗する第2工程と、
水洗した前記未硬化状態の皮膜を加熱して硬化させる第3工程と、
を含み、
前記自己析出型皮膜形成剤は、
アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種の成分Aと、
フッ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、蓚酸イオンおよび蟻酸イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンと、
ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる金属を含むイオンと、
を含む、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法;
(3)前記第2工程の後であって、前記第3工程の前に、前記未硬化状態の皮膜にアルカリ性溶液を接触させる第4工程をさらに含む、上記(2)に記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法;
(4)前記自己析出型皮膜形成剤に、過マンガン酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄、過酸化水素、次亜塩素酸およびオゾンから選ばれる少なくとも1種の成分Dを配合させる、上記(2)または(3)に記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法;
(5)前記成分Aの濃度が15g/L〜300g/Lの範囲内であり、前記陰イオンのモル濃度が0.002mol/L〜1.5mol/Lの範囲内であり、前記金属を含むイオンのモル濃度が0.002mol/L〜0.3mol/Lの範囲内であり、前記成分Dの濃度が0.9g/L〜3.0g/Lである、上記(4)に記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法;
(6)前記自己析出型皮膜形成剤のpHが2.0〜5.0の範囲内である、上記(2)〜(5)のいずれかに記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法;
(7)表面にチタンを有するチタン系基材に用いられる自己析出型皮膜形成剤であって、
アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種の成分Aと、
フッ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、蓚酸イオンおよび蟻酸イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンと、
ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる金属を含むイオンと、
を含む自己析出型皮膜形成剤;
などである。
本発明によれば、表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に絶縁性に優れた自己析出型皮膜を有するチタン系基材及びその製造方法、並びに、該製造方法に用いる自己析出型皮膜形成剤を提供することができる。
以下、本発明に係る、自己析出型皮膜を有するチタン系基材及びその製造方法並びに自己析出型皮膜形成剤について説明する。
<自己析出型皮膜形成剤>
本実施形態に係る自己析出型皮膜形成剤(以下、単に「皮膜形成剤」と称する。)は、表面にチタンを有するチタン系基材に用いられる。皮膜形成剤は、所定の水溶性ポリマーまたは水分散性ポリマーと、特定の陰イオンと、特定の金属を含むイオンとを含む。このような皮膜形成剤をチタン系基材の表面上に接触させた後、水洗、加熱硬化を行うことにより、絶縁性に優れた自己析出型皮膜(以下、単に「絶縁性皮膜」と称する。)を形成することができる。従って、皮膜形成剤は、チタン系基材に対する絶縁性皮膜形成剤として有用である。なお、皮膜形成剤は、水性媒体と、所定の水溶性ポリマーまたは水分散性ポリマーと、特定の陰イオンと、特定の金属を含むイオンのみからなるものであってもよいが、その他の成分が含まれていてもよい。
(水溶性ポリマーまたは水分散性ポリマー:成分A)
水溶性ポリマーまたは水分散性のポリマー(以下、「成分A」と称する。)は、予め重合したものを用いてもよいし、水性媒体中で乳化重合したものを用いてもよい。成分Aとしては、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーなどを用いることができるが、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基を有するものを用いることが好ましい。これらのポリマーは、1種のみ用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。
皮膜形成剤における成分Aの濃度は、特に制限されるものではないが、固形分質量濃度として、15g/L〜300g/Lの範囲内であることが好ましく、30g/L〜200g/Lの範囲内であることがより好ましく、50g/L〜100g/Lの範囲内であることが特に好ましい。
(金属を含むイオン)
金属を含むイオンとしては、例えば、ニッケルイオン、鉄イオン、銅イオン、バナジウムイオン等の金属イオン;ニッケル、鉄、銅またはバナジウムを含む錯イオン;等を挙げることができる。これらのイオンは、本実施形態に係る皮膜形成剤に1種または2種以上含まれていてもよい。皮膜形成剤における各種金属を含むイオンの合計モル濃度は、特に制限されるものではないが、0.002mol/L〜0.3mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.007mol/L〜0.24mol/Lの範囲内であることがより好ましく、0.01mol/L〜0.2mol/Lの範囲内であることが特に好ましい。
金属を含むイオンの供給源(以下、「成分C」と称する。)としては、皮膜形成剤において上記各種金属を含むイオンを形成し得る物質であれば特に制限されるものではなく、例えば、ニッケル、鉄、銅、バナジウム等の金属;フッ化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、蓚酸ニッケル、蟻酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、クエン酸ニッケル、酢酸ニッケル、テトラフルオロニッケル酸バリウム、ヘキサフルオロニッケル酸カリウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)二塩化物、スルファミン酸ニッケル(II)四水和物、ビス[(2−ジメチルアミノ)フェニル]アミンニッケル(II)クロリド、フッ化鉄、塩化鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、蓚酸鉄、蟻酸鉄、炭酸鉄、硝酸鉄、クエン酸鉄、フェロセン、フェロセンカルボン酸、ジエチレントリアミン五酢酸鉄(III)二ナトリウム塩水和物、ブチルシクロペンタジエニル(シクロペンタジエニル)鉄、1,2−フェニレンビス[ジフェニル]ホスフィン鉄錯体、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)、(+)−L−アスコルビン酸鉄(II)、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)酒石酸、硫酸鉄(III)水和物、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)三塩基一水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、フッ化銅、塩化銅、硫酸銅、リン酸銅、蓚酸銅、蟻酸銅、炭酸銅、硝酸銅、クエン酸銅、酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、銅(II)フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン−テトラスルホン酸四ナトリウム塩、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)メトキシド、銅(II)2,3−ナフタロシアニン、水酸化銅(II)、フッ化バナジウム、塩化バナジウム、硫酸バナジウム、リン酸バナジウム、蓚酸バナジウム、蟻酸バナジウム、炭酸バナジウム、硝酸バナジウム、クエン酸バナジウム、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(IV)−オキシアセチルアセトナート、バナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド、バナジウム(V)オキシトリエトキシド、オキシフッ化バナジウム(V)、オキシ塩化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム等の、金属塩またはニッケル、鉄、銅、バナジウム等の金属を含む錯化物;などが挙げられる。
(陰イオン)
陰イオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、蓚酸イオンおよび蟻酸イオン等を挙げることができる。これらのイオンは、本実施形態に係る皮膜形成剤に1種または2種以上含まれていてもよい。皮膜形成剤における各種陰イオンの合計モル濃度は、特に制限されるものではないが、皮膜形成剤に含まれている各種陰イオンごとに算出した[(モル濃度)×(価数)]の値の合計が、皮膜形成剤に含まれている各種金属を含むイオンごとに算出した[(モル濃度)×(価数)]の値の合計以上となるように調整することが好ましい。陰イオンの合計モル濃度としては、0.002mol/L〜1.5mol/Lの範囲内であることが好ましく、0.007mol/L〜1.2mol/Lの範囲内であることがより好ましく、0.01mol/L〜1.0mol/Lの範囲内であることが特に好ましいが、これらの範囲に制限されるものではない。
陰イオンの供給源(以下、「成分B」と称する。)としては、水性媒体に混合した際に上記各種陰イオンを提供できる化合物であれば特に制限されるものではなく、例えば、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、蓚酸ニッケル、蟻酸ニッケル、フッ化鉄、塩化鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、蓚酸鉄、蟻酸鉄、フッ化銅、塩化銅、硫酸銅、リン酸銅、蓚酸銅、蟻酸銅、フッ化バナジウム、塩化バナジウム、硫酸バナジウム、リン酸バナジウム、蓚酸バナジウム、蟻酸バナジウムなどの成分C;フッ化水素酸、塩酸、硫酸、リン酸、蓚酸、蟻酸などの酸成分;などが挙げられる。
(水性媒体)
水性溶媒としては、水または水と水混和性有機溶媒との混合物が挙げられるが、水のみを用いることが好ましい。水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水に混合させてもよい。混合物における水の質量割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
また、皮膜形成剤における水性媒体の質量割合は、50〜99質量%の範囲内であることが好ましく、60〜99質量%の範囲内であることがより好ましく、70〜99質量%の範囲内であることが特に好ましい。
(その他の成分)
その他の成分としては、例えば、過マンガン酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン等の成分D;造膜助剤;潤滑剤;活性剤;着色顔料;pH調整剤;などの添加剤が挙げられるが、これらに制限されるものではない。なお、これらの他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内で皮膜形成剤に添加してもよい。
(過マンガン酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン等の成分D)
成分Dとしては、例えば、過マンガン酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄、過酸化水素、次亜塩素酸、オゾンなどが挙げられる。これらの成分は、本実施形態に係る皮膜形成剤に1種または2種以上含まれていてもよい。皮膜形成剤における成分Dの合計質量濃度は、特に制限されるものではないが、0.9g/L〜3.0g/Lの範囲内であることが好ましく、0.95g/L〜2.5g/Lの範囲内であることがより好ましく、1.0〜2.3g/Lの範囲内であることが特に好ましい。
皮膜形成剤に成分Dが含まれている場合の好ましい配合成分の組み合わせとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アクリル樹脂とフッ化水素酸とニッケルと過マンガン酸カリウムとの組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂と塩酸と鉄と硝酸との組合せ、エポキシ樹脂と硫酸と銅と二酸化硫黄との組合せ、ウレタン樹脂とリン酸とバナジウムと過酸化水素との組合せ、ポリエステル樹脂と蓚酸と鉄と次亜塩素酸との組合せ、ポリアミド樹脂と蟻酸と鉄とオゾンとの組合せ、ポリイミド樹脂と蟻酸とバナジウムとオゾンとの組合せ、フェノール樹脂と蓚酸と銅と次亜塩素酸との組合せ、シリコーン樹脂とリン酸と鉄と過酸化水素との組合せ、フッ素樹脂と硫酸とニッケルと二酸化硫黄との組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーと塩酸とニッケルと硝酸との組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーとフッ化水素酸と鉄と過酸化水素との組合せ、フッ素樹脂とフッ化水素酸と銅と過マンガン酸カリウムとの組合せ、シリコーン樹脂とフッ化水素酸とバナジウムと硝酸との組合せ、フェノール樹脂とフッ化水素酸とバナジウムと二酸化硫黄との組合せ、ポリイミド樹脂とフッ化水素酸と銅と過酸化水素との組合せ、ポリアミド樹脂とフッ化水素酸と鉄と次亜塩素酸との組合せ、ポリエステル樹脂と硫酸とニッケルとオゾンとの組合せ、ウレタン樹脂とリン酸とニッケルとオゾンとの組合せ、エポキシ樹脂と蓚酸とニッケルと次亜塩素酸との組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂と蟻酸とニッケルと過酸化水素との組合せ、アクリル樹脂と蓚酸と鉄と二酸化硫黄との組合せ、アクリル樹脂とフッ化水素酸と鉄と硝酸との組合せ、アクリル樹脂とフッ化水素酸と鉄と過マンガン酸カリウムとの組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂と塩酸と銅と過マンガン酸カリウムとの組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂と硫酸と銅と硝酸との組合せ、エポキシ樹脂とリン酸とバナジウムと二酸化硫黄との組合せ、ウレタン樹脂と硫酸とバナジウムと過酸化水素との組合せ、ポリエステル樹脂と硫酸とニッケルと次亜塩素酸との組合せ、アクリル樹脂とフッ化水素酸と鉄と過酸化水素との組合せ、エポキシ樹脂とフッ化水素酸とニッケルと次亜塩素酸との組合せ、エポキシ樹脂と硫酸と鉄とオゾンとの組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーと硫酸と銅と過酸化水素との組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーと硫酸とバナジウムと二酸化硫黄との組合せ、ポリアミド樹脂とフッ化水素酸とバナジウムと硝酸との組合せ、ポリイミド樹脂とフッ化水素酸と銅と硝酸との組合せ、シリコーン樹脂とフッ化水素酸と鉄と過マンガン酸カリウムとの組合せ、フェノール樹脂とフッ化水素酸とニッケルと過マンガン酸カリウムとの組合せ、フッ素樹脂とリン酸とニッケルと硝酸との組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーと蓚酸とニッケルと硝酸との組合せ、エポキシ−アクリル系混成ポリマーと蟻酸と鉄と二酸化硫黄との組合せ、アクリル樹脂と蓚酸と銅と二酸化硫黄との組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂とリン酸とバナジウムと過酸化水素との組合せ、エポキシ樹脂と硫酸とバナジウムと過酸化水素との組合せ、エポキシ樹脂と塩酸と銅と次亜塩素酸との組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂とフッ化水素酸と鉄と次亜塩素酸との組合せ、アクリル樹脂とフッ化水素酸と銅とオゾンとの組合せ、アクリル樹脂と塩酸とバナジウムと次亜塩素酸との組合せ、ポリ塩化ビニリデン樹脂と硫酸とニッケルと過酸化水素との組合せ、エポキシ樹脂とフッ化水素酸と鉄と硝酸との組合せ、などが挙げられる。
(pH)
本実施形態に係る皮膜形成剤のpHは特に制限されないが、pH2.0〜5.0の範囲内であることが好ましい。なお、本明細書におけるpHの値は、pHメーターを用いて25℃で測定した値を意味する。皮膜形成剤のpHは、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、ホウ酸、有機酸(例えば、蓚酸、蟻酸等)等の酸成分;水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、アルカリ金属塩、アンモニア、アンモニウム塩(例えば、炭酸水素アンモニウム等)、アミン類等のアルカリ成分等のpH調整剤を用いて調整することができるが、これらの成分に限定されるものではない。なお、pH調整剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
<皮膜形成剤の製造方法>
皮膜形成剤は、例えば、水性媒体に成分Bと成分C(成分Bと成分Cは同じものであっても異なるものであってもよい。)と、必要に応じて成分Dとを混合して混合物を調製した後、必要に応じてpHを調整し、この混合物を、成分Aの水溶液に混合することにより製造することができる。
<絶縁性皮膜を有するチタン系基材の製造方法>
本実施形態に係る、絶縁性皮膜を有するチタン系基材の製造方法(以下、単に「製造方法」と称する。)は、チタン系基材の表面上に未硬化状態の皮膜を形成するための、前記チタン系基材の表面上に本実施形態に係る皮膜形成剤を接触させる第1工程と、未硬化状態の皮膜を水洗する第2工程と、水洗した未硬化状態の皮膜を加熱して硬化させる第3工程と、を含む。
(チタン系基材)
チタン系基材は、基材の全部又は一部の表面にチタンを含むものであれば特に制限されるものではなく、基材の全部又は一部の表面が、少なくとも、純チタン、チタン合金、チタン又はチタン合金の膜等で構成されているものであればよい。基材の表面の全部又は一部がチタン又はチタン合金の膜で構成されたチタン系基材としては、各種金属材料(合金材料を含む);セラミック;ガラス;樹脂フィルム;シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、サファイア、ガラス、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化ガリウム(GaN)等のウェハー;等の材料の表面上に、蒸着法やスパッタリング法等でチタン又はチタン合金の膜を形成したものを具体的に挙げることができる。チタン合金としては、例えば、JIS H 4600:2012に定められている、チタン−パラジウム合金系、チタン−ニッケル−クロム−ルテニウム−パラジウム合金系、チタン−タンタル合金系、チタン−パラジウム−コバルト合金系、チタン−ニッケル−ルテニウム合金系、チタン−アルミニウム合金系、チタン−アルミニウム−バナジウム合金系などが挙げられる。なお、チタン系基材は、形状やサイズは特に制限されるものではなく、各種精密部品、電子部品、航空用部品、自動車用部品、医療機器、医療器具、家電製品用部品、半導体材料、配線基盤、ボルト、ナット、化学プラント用容器・パイプ、建材、輸送機器、通信・光学機器、音響機器等の成形品であってもよいし、成形前の板材、シート材、フィルム材、線材等の非成形品であってもよい。また、チタン系基材は、平滑状または凹凸状の表面を有していてもよいし、細孔(例えば、1μm〜1000μmφの細孔)を有していてもよい。
(第1工程)
第1工程における皮膜形成剤の接触方法は、例えば、浸漬、スプレー、流しかけ等の方法、又はこれらを組み合わせた方法を挙げることができるが、チタン系基材と皮膜形成剤との間で化学反応が生じる方法であれば特に制限されるものではない。なお、浸漬法を適用する場合には、皮膜形成剤を攪拌しながら、チタン系基材と接触させることが好ましい。また、接触温度としては、特に限定されないが、5〜40℃の範囲内であることが好ましく、10〜35℃の範囲内であることがより好ましく、15〜30℃の範囲内であることが特に好ましい。接触時間としては、特に限定されないが、30〜600秒間行うことが好ましく、45〜450秒間行うことがより好ましく、60〜300秒間行うことが特に好ましい。
(第2工程)
未硬化状態の皮膜に対する水洗方法としては、例えば、浸漬、スプレー、流しかけ等の方法、又はこれらを組み合わせた方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、水洗に用いる水の温度及び水洗時間については、チタン系基材の表面上に付着した余剰の皮膜形成剤を除去できれば特に制限されるものではない。
(第3工程)
水洗した未硬化状態の皮膜の加熱方法としては、未硬化状態の皮膜を硬化させるまで該皮膜中の水分を蒸発することができれば特に限定されず、例えば、電気やガス、石油燃料を用いた循環式熱風乾燥炉などを用いた加熱方法を挙げることができる。加熱温度としては、特に限定されないが、50〜200℃の範囲内であることが好ましく、60〜190℃の範囲内であることがより好ましく、70〜180℃の範囲内であることが特に好ましい。
(前処理)
本実施形態に係る製造方法は、第1工程の前に、チタン系基材の表面に付着した油分や汚れなどを除去するために脱脂処理を行った後、水洗処理を行ってもよい。また、必要に応じて水洗処理後に酸洗処理を行ってもよい。必要であれば、酸洗処理後に水洗処理をさらに行ってもよい。なお、脱脂処理としては、例えば、アルカリ脱脂や溶剤脱脂等の処理を挙げることができるが、中性洗剤による洗浄や湯洗などの処理をさらに組み合わせて行ってもよい。脱脂処理方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬、流しかけ、スプレーなどの方法を挙げることができる。
酸洗処理に用いる酸成分としては、特に限定されないが、例えば、硝酸、硫酸、フッ化水素酸などを用いることができる。また、酸成分に溶剤や界面活性剤などを添加した処理液を用いることにより、酸洗と脱脂とを同時に行うことも可能である。酸洗処理方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬、流しかけ、スプレーなどの方法を挙げることができる。
(第4工程)
本実施形態に係る製造方法は、第2工程の後であって、第3工程の前に、必要に応じて未硬化状態の皮膜にアルカリ性溶液を接触させる第4工程を実施してもよい。アルカリ性溶液との接触方法は、例えば、浸漬、スプレー、流しかけ等の方法、又はこれらを組み合わせた方法を挙げることができる。なお、接触温度としては、特に限定されないが、5〜40℃の範囲内であることが好ましく、10〜35℃の範囲内であることがより好ましく、15〜30℃の範囲内であることが特に好ましい。接触時間としては、特に限定されないが、3〜300秒間行うことが好ましく、10〜120秒間行うことがより好ましく、20〜60秒間行うことが特に好ましい。また、第4工程後であって、第3工程前に、必要であれば水洗処理を行ってもよい。
(アルカリ性溶液)
アルカリ性溶液としては、アルカリ成分を水に溶解した水溶液であれば特に制限されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液;水酸化カリウム水溶液;アンモニア水溶液;メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂等のアミン化合物の水溶液;などが挙げられる。アルカリ性溶液のpHは8.0〜13.0の範囲内であればよいが、8.5〜12.5の範囲内であることが好ましく、9.0〜12.0の範囲内であることがより好ましい。
アルカリ性溶液は、さらに樹脂成分が含まれていてもよい。樹脂成分としては特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、アルカリ性溶液を調製する際に樹脂成分を用いる場合には、固形分質量濃度として、10g/L〜500g/Lの範囲内であることが好ましく、30g/L〜400g/Lの範囲内であることがより好ましく、50g/L〜300g/Lの範囲内であることが特に好ましい。
<絶縁性皮膜を有するチタン系基材>
本実施形態に係る、絶縁性皮膜を有するチタン系基材は、上記製造方法により製造できる。チタン系基材の表面上に有する絶縁性皮膜は、樹脂又はその架橋物と、金属成分とを含む。樹脂又は架橋物を構成する樹脂は、皮膜形成剤に含まれる樹脂である。金属成分は、皮膜形成剤に含まれる、ニッケル、鉄、銅、バナジウム等と、チタン系基材からエッチングされたチタンとである。なお、チタン系基材と絶縁性皮膜との間には、酸化チタンの皮膜が存在していてもよい。
絶縁性皮膜の膜厚は特に限定されないが、1.5μm以上が好ましく、2.5〜30μmの範囲内であることがより好ましく、2.5〜10μmの範囲内であることがさらに好ましく、3.0〜5.0μmの範囲内であることが特に好ましい。
本実施形態に係る、絶縁性皮膜を有するチタン系基材は、絶縁性を必要とするチタン系基材を用いる様々な産業にて適用可能である。より具体的には、各種精密部品、電子部品、航空用部品、自動車用部品、医療機器、医療器具、家電製品用部品、半導体材料、配線基盤、ボルト、ナット、化学プラント用容器・パイプ、建材、輸送機器、通信・光学機器、音響機器等、多岐に渡る分野で有用である。
以下、実施例により本発明の効果を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
<チタン系基材>
チタン系基材として以下の材料を用いた。
1.純チタン2種
2.Ti−6%Al−4%V合金
3.Ti−15%V−3%Cr−3%Sn−3%Al合金
<皮膜形成剤の調製>
表1に示すように、各成分を所定の濃度となるようにイオン交換水に配合した後、酢酸またはアンモニア水を用いてpHを調整し、実施例1〜23の皮膜形成剤を調製した。より具体的には、イオン交換水に成分B、成分C,成分D等を混合して各成分を溶解させた後、pHを調整し、次に、成分Aをさらに加えて混合し、続いて、pH調整を行うことにより、各種皮膜形成剤を調製した。なお、表1中の各記号は、以下の成分をそれぞれ示す。
Figure 2019081942
(成分A)
A1:プライマルWL−91(アクリル樹脂、固形分濃度:41.5重量%、ダウケミカルカンパニー製)
A2:サランラテックスL232A(ポリ塩化ビニリデン樹脂、固形分濃度:48重量%、旭化成ケミカルズ株式会社製)
A3:エピレッツ3522W60(エポキシ樹脂、固形分濃度:60重量%、三菱ケミカル株式会社製)
A4:F−2125D(ウレタン樹脂、固形分濃度:30重量%、第一工業製薬株式会社製)
A5:バイロナールMD−1500(ポリエステル樹脂、固形分濃度:30重量%、東洋紡株式会社製)
(成分B;全て純正化学株式会社製の特級試薬)
B1:フッ化水素酸(46〜48重量%)
B2:塩酸(35〜37重量%)
B3:硫酸(95重量%以上)
B4:リン酸(85重量%以上)
B5:無水蓚酸(98重量%以上)
B6:蟻酸(98重量%以上)
(成分C;全て純正化学株式会社製)
C1:ニッケル
C2:鉄
C3:銅
C4:五酸化二バナジウム
(成分D;全て純正化学株式会社製の特級試薬または化学用)
D1:硝酸(60〜61重量%)
D2:過酸化水素(30〜35.5重量%)
D3:次亜塩素酸ナトリウム・5水和物(39重量%)
<アルカリ性溶液の調製>
表2に示すように、所定の濃度となるように、あるいは、所定のpHとなるように、成分Eをイオン交換水に加えて各種アルカリ性溶液(No.1〜11のアルカリ性溶液)を調製した。なお、成分EとしてE4を用いた場合には、酢酸またはアンモニア水を用いてpHを調整した。なお、表2中の各記号は、以下の成分をそれぞれ示す。
(成分E;E1〜E3は純正化学株式会社製の試薬特級)
E1:水酸化ナトリウム(97重量%以上)
E2:水酸化カリウム(85重量%以上)
E3:アンモニア水(28〜30%)
E4:サイメル385(メラミン樹脂、固形分濃度:85重量%、日本サイテックインダストリーズ製)
Figure 2019081942
<試験板(絶縁性皮膜を有するチタン系基材)の製造方法>
後述の評価試験に用いた各試験板(実施例24〜46の試験板)は、以下の各処理を行うことにより製造した。より詳細には、実施例24〜40、実施例42、実施例43及び実施例46の試験板は、以下の脱脂処理及び酸洗処理を行った後、表3に示す皮膜形成剤と接触させて未硬化状態の皮膜を作製し、次に水洗し、続いて表3に示すアルカリ性溶液と接触させ、最後に加熱して未硬化状態の皮膜を硬化させることにより作製した。また、実施例41及び45の試験板は、以下の脱脂処理を行わないで以下の酸洗処理を行った後、表3に示す皮膜形成剤と接触させて未硬化状態の皮膜を作製し、次に水洗し、続いて表3に示すアルカリ性溶液と接触させ、最後に加熱して未硬化状態の皮膜を硬化させることにより作製した。実施例44の試験板は、以下の脱脂処理及び酸洗処理を行った後、表3に示す皮膜形成剤と接触させて未硬化状態の皮膜を作製し、次に水洗し、最後に加熱して未硬化状態の皮膜を硬化させることにより作製した。
(1)脱脂処理
アルカリ脱脂剤(ファインクリーナーE6400:日本パーカライジング株式会社製)を水に混合して2重量%の水溶液を調製し、この水溶液に各種チタン系基材を50℃で120秒間浸漬して脱脂処理を行った。脱脂処理後、チタン系基材をイオン交換水に浸漬して洗浄した。
(2)酸洗処理
フッ化水素酸(純正化学株式会社;特級試薬)を水に混合して1重量%の水溶液に調製し、この水溶液に、脱脂処理及び水洗処理を行ったチタン系基材を25℃で120秒間浸漬して酸洗処理を行った。酸洗処理後、チタン系基材をイオン交換水に浸漬して洗浄した。なお、表3における「酸洗」の欄には、酸洗処理を行った場合には「○」を、酸洗処理を行わなかった場合には「−」をそれぞれ示した。
(3)皮膜形成剤との接触及び水洗
表3に示す接触温度及び接触時間にて、各処理を施したチタン系基材を実施例1〜23の皮膜形成剤に浸漬することによって未硬化状態の皮膜を形成させた。未硬化状態の皮膜を有するチタン系基材を、25℃で30秒間、イオン交換水に浸漬して洗浄した。
(4)アルカリ性溶液との接触及び水洗
表3に示す接触温度及び接触時間にて、未硬化状態の皮膜を有するチタン系基材をNo.1〜11のアルカリ性溶液に浸漬した。なお、No.1及びNo.8〜11のアルカリ性溶液を用いた場合には、25℃で30秒間、イオン交換水に浸漬して洗浄した。
(5)加熱工程
未硬化状態の皮膜を有するチタン系基材を、循環式熱風乾燥炉にて80℃で10分間保持した後、180℃で20分保持することにより、未硬化状態の皮膜を硬化させて絶縁性皮膜を有するチタン系基材(各試験板)を作製した。
Figure 2019081942
<皮膜外観の評価>
各試験板において、絶縁性皮膜を有する面の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて皮膜外観を評価した。その結果を表4に示す。
(評価基準)
○:異常なし
△:ピンホール発生またはムラ発生
×:皮膜形成せず
<膜厚の測定>
エポマウントAセット(リファインテック株式会社製;27−770)を用いて埋込用樹脂を調製した後、各試験板を設置した型に流し込み硬化させた。その硬化物を機械研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製 JSM−6490)にて膜厚を測定した。その結果を表4に示す。
<電気絶縁性の評価>
耐電圧試験機(菊水電子株式会社製TOS9201)を用いて各試験板の電気絶縁性を測定した。測定には、SUS304で作製されたφ25mm円柱型の電極を用いた。測定は、20V/秒にて印加電圧を上昇させて、皮膜を流れる電流値が1mA時点の絶縁破壊電圧を計測することにより行った。なお、計測は5回行い、その平均値を求めた。本測定にて得られた絶縁破壊電圧と、上記膜厚測定にて得られた膜厚を用いて、膜厚1μmあたりの絶縁破壊電圧(V/μm)を、以下の式:
絶縁破壊電圧(V)/膜厚(μm)=膜厚1μmあたりの絶縁破壊電圧
を用いて算出し、以下の評価基準に従って電気絶縁性を評価した。その結果を表4に示す。
(評価基準)
○:60(V/μm)以上
△:30(V/μm)以上60(V/μm)未満
×:30(V/μm)未満
<皮膜形成剤の液安定性>
実施例1〜23の皮膜形成剤を作製した後、25±5℃の環境下で1週間静置した。静置後の皮膜形成剤を目視にて観察し、以下の評価基準に従って液安定性を評価した。
(評価基準)
○:変化なし
×:皮膜形成剤において沈殿物が確認できた
Figure 2019081942

Claims (5)

  1. 表面にチタンを有するチタン系基材と、前記表面の上に自己析出型皮膜を有し、
    前記自己析出型皮膜は、樹脂又はその架橋物と、金属成分とを含み、
    前記樹脂は、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種であり、
    前記金属成分は、チタンと、ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる少なくとも1種の金属である、自己析出型皮膜を有するチタン系基材。
  2. 表面にチタンを有するチタン系基材の表面上に未硬化状態の皮膜を形成するための、前記チタン系基材の表面上に自己析出型皮膜形成剤を接触させる第1工程と、
    前記未硬化状態の皮膜を水洗する第2工程と、
    水洗した前記未硬化状態の皮膜を加熱して硬化させる第3工程と、
    を含み、
    前記自己析出型皮膜形成剤は、
    アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種の成分Aと、
    フッ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、蓚酸イオンおよび蟻酸イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンと、
    ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる金属を含むイオンと、
    を含む、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法。
  3. 前記第2工程の後であって、前記第3工程の前に、前記未硬化状態の皮膜にアルカリ性溶液を接触させる第4工程をさらに含む、請求項2に記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法。
  4. 前記自己析出型皮膜形成剤に、過マンガン酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄、過酸化水素、次亜塩素酸およびオゾンから選ばれる少なくとも1種の成分Dを配合させる、請求項2または3に記載の、自己析出型皮膜を有するチタン系基材の製造方法。
  5. 表面にチタンを有するチタン系基材に用いられる自己析出型皮膜形成剤であって、
    アクリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびエポキシ−アクリル系混成ポリマーから選ばれる水溶性または水分散性のポリマーの少なくとも1種の成分Aと、
    フッ素イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、蓚酸イオンおよび蟻酸イオンから選ばれる少なくとも1種の陰イオンと、
    ニッケル、鉄、銅およびバナジウムから選ばれる金属を含むイオンと、
    を含む自己析出型皮膜形成剤。
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