JP2019081868A - インクジェットインキ、およびそれを用いた印刷物、電界発光素子 - Google Patents

インクジェットインキ、およびそれを用いた印刷物、電界発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】量子ドット、溶剤、特定の樹脂を含むインクジェットインキを用いて、蛍光特性および、インクジェット吐出性に優れた量子ドット含有インクジェットインキを提供すること。【解決手段】量子ドット、バインダー樹脂、および溶剤を含有するインクジェットインキであって、バインダー樹脂が、シクロオレフィン系樹脂を含み、溶剤が、常圧における沸点が120℃以上である溶剤を含み、25℃における粘度が3〜50mPa・sの範囲であることを特徴とするインクジェットインキ。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインキ、およびそれを用いた印刷物、電界発光素子に関する。
量子ドットは、量子力学に従う独特な光学特性を発現させるために、電子を微小な空間に閉じ込めるために形成された極小さな粒(ドット)である。1粒の量子ドットの大きさは、直径1ナノメートルから数10ナノメートルであり、約1万個以下の原子で構成されている。発する蛍光の波長が、粒の大きさで連続的に制御できること、蛍光強度の波長分布が対称性の高いシャープな発光が得られることから近年注目を集めている。
量子ドットは、人体を透過しやすい波長に蛍光を調整でき、体内のあらゆる場所に送達できることより発光材料として生体イメージング用途(非特許文献1)、褪色の恐れがない波長変換材料として太陽電池用途(特許文献1)、鮮明な発光材料、波長変換材料としてエレクトロニクス・フォトニクス用途(特許文献2,3)への展開検討が行われている。
これらの用途に展開するときに、微細なパターンを形成することが必要になる。パターン形成のために感光材料を用いて、レジスト液作成し、マスクを介して光照射する方法が提案されている(特許文献4)。しかし、感光材料や光照射時に量子ドットが劣化したり、現像で取り除く部分にも量子ドットが含まれ、量子ドット材料の利用効率が悪いなどの問題があった。
レジスト化しない方法としてインクジェット法が知られている。これまで、インクジェット法に用いることのできる量子ドットインキは作成されていない。
特開2006−216560号公報 特開2008−112154号公報 特開2009−251129号公報 特開2015−127733号公報
神隆、「半導体量子ドット、その合成法と生命科学への応用」、生産と技術、第63巻、第2号、2011年、p58〜p65 Journal of the American chemical society 2007 129 15432-15433
本発明の目的は、量子ドットの蛍光特性を損なうことなく、インクジェット法で印刷可能なインキを提供することである。
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定組成のインキとすることで量子ドットの蛍光特性を損なうことなく、インクジェット印刷を行うことを見出した。
すなわち、本発明は、量子ドット、バインダー樹脂、および溶剤を含有するインクジェットインキであって、バインダー樹脂が、シクロオレフィン系樹脂を含み、溶剤が、常圧における沸点が120℃以上である溶剤を含み、25℃における粘度が3〜50mPa・sの範囲であることを特徴とするインクジェットインキに関する。
また、本発明は、シクロオレフィン系樹脂が、シクロペンテンを部分構造に有するモノマーに由来する構造単位を含む樹脂であることを特徴とする前記のインクジェットインキに関する。
また、本発明は、シクロオレフィン系樹脂が、水添物であることを特徴とする前記のインクジェットインキに関する。
また、本発明は、溶剤が炭化水素系溶剤であることを特徴とする前記のインクジェットインキに関する。
また、本発明は、溶剤が芳香族炭化水素系溶剤であることを特徴とする前記のインクジェットインキに関する。
また、本発明は、量子ドットの表面が炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有する有機物で処理されていることを特徴とする前記のインクジェットインキに関する。
また、本発明は、前記のインクジェットインキを用いて形成された印刷物に関する。
また、本発明は、前記のインクジェットインキを用いて形成された発光層を有する電界発光素子に関する。
本発明によれば、半導体量子ドットを含み、印刷後に蛍光特性に優れた量子ドットインクジェットインキが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェットインキは、量子ドット、シクロオレフィン系樹脂、常圧における沸点が120℃以上である溶剤を少なくとも含有する。
<量子ドット>
本発明で用いられる量子ドットは、半導体微粒子であり、半導体微粒子は、無機物を成分とする半導体であり、単一組成でも、コアシェル型でも、3層以上の複数層になっていてもよい。
本発明の半導体は、2族元素、10属元素、11族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素および16族元素で示される元素の群から選ばれる少なくとも2種以上の元素を含む化合物からなる半導体である。
さらに好ましくは化合物半導体である。化合物半導体は、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、Sb、Pb、S,Se,Teで示される元素群から選ばれる少なくとも2種の元素を含む化合物からなる半導体である。
さらに好ましくは、人に対する安全性が懸念される元素を除いた、Zn、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、N、P、S,Teで示される元素群から選ばれる少なくとも2種の元素を含む化合物からなる半導体である。
可視光を発光する用途では、バンドギャップの狭さからInを構成元素として含む半導体が、さらに好ましい。
コアシェル型の半導体微粒子は、コアを形成する半導体と異なる成分からなる半導体でコア構造が被覆された構造となる。外部がバントギャップの大きい半導体とすることで、光励起によって生成された励起子(電子−正孔対)はコア内に閉じ込められる。その結果、半導体微粒子表面での無輻射遷移の確率が減少し、発光の量子収率および半導体量子ドットの蛍光特性の安定性が向上する。
本発明の半導体微粒子の平均粒径は0.5nm〜100nmであることが好ましく、所望の発色が得られる粒径を選択することができる。コアシェル型の場合、一つの半導体微粒子の中に複数のシェル微粒子を含有してもよい。単一半導体組成である場合の半導体微粒子の平均粒径および、コアシェル型のコアの平均粒径は0.5nm〜10nmであることが好ましい。平均粒径が0.5nm未満となる合成は困難であり、また、10nmを超えると量子閉じ込め効果が得られず、求める蛍光が得られない。
本発明の量子ドットは、平均粒径が2nm〜1μmであることが好ましい。
量子ドットの形状は、球状に限らず、棒状、円盤状、そのほかの形状であっても良い。
量子ドットはさらに有機物で処理されていても良い。処理剤として用いる有機物は、沸点が高く、アルキル鎖部分の相互作用が期待できる有機物が好ましため、炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有する有機物が好ましい。また、半導体微粒子への作用を強固にするために極性基を有してもよく、処理できる有機物として、有機酸、有機アミン、硫黄含有有機物、リン含有有機物があげられる。
有機酸としては、末端にカルボン酸を有する化合物を用いることができ、芳香環、エーテル基を含むことができ、分子中にカルボン酸を複数有していても構わない。具体例として、安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ブチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、シクロヘキシル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、エチルヘキサン酸、ヘキセン酸、オクテン酸、シトロネル酸、スベリン酸、エチレングリコールビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、(2−ブトキシエトキシ)酢酸などがあげられる。
炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有する有機酸としては、有機酸のうち、炭素数8以上のアルキル基を有する化合物であり、具体的には、ノナン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エイコサジエン酸、リノレン酸、セバシン酸、(2-オクチルオキシ)酢酸、等があげられる。
有機アミンとしては、末端にアミノ基を有する化合物を用いることができ、n−ブチルアミン、iso−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミンがあげられる。
炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有する有機アミンとしては、
オクチルアミン、ドデカアミン、ヘプタデカン-9-アミン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミンなどがあげられる。
硫黄含有有機物としては、チオール類とジスルフィド類があげられる。
チオール類としては、アリルメルカプタン、1,3-ベンゼンジメタンチオール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールブタンチオール、n-ヘキサンチオール、n−ヘプタンチオール、などがあげられる。
炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有するチオール類の硫黄含有有機物としては、ドデカンチオール、1-ドコサンチオール、tert-ドデシルメルカプタン等があげられる。
ジスルフィド類としては、ビス(4-クロロ-2-ニトロフェニル)ジスルフィド、ヘキシルスルフィド、3,3',5,5'-テトラクロロジフェニルジスルフィド等があげられる。
炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有するスルフィド類の硫黄含有有機物としては、ドデシルジスルフィド、オクタデシルジスルフィド、ドデシルオクタデシルジスルフィドなどがあげられる。
リン含有有機物としては、リン酸ブチル、リン酸ヘキシル、リン酸ジイソプロピル、(2-エチルヘキシル)ホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、プロピルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸メチル、イソプロピルホスホン酸ヘキシルなどがあげられる。
炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有するリン含有有機物としては、リン酸オクチル、リン酸ジドデシル、リン酸ドデシル、ドデシルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸ドデシル、デシルホスホン酸、デシルホスホン酸イソプロピルなどがあげられる。
量子ドットの合成方法としては、ガラス中で作成する方法、水溶液中で合成する方法、有機溶媒中で合成する方法など、一般的に知られている方法を用いることができる。たとえば、InP/ZnSコアシェル型量子ドットに関しては技術文献「Journal of American Chemical Society.2007,129,15432−15433」、「Journal of American Chemical Society.2016,138,5923−5929」、InCuS2/ZnSコアシェル型量子ドットに関しては技術文献「JournalofAmericanChemicalSociety.2009,131,5691−5697」技術文献「ChemistryofMaterials.2009,21,2422−2429」、Si量子ドットに関しては技術文献「JournalofAmericanChemicalSociety.2010,132,248−253」記載されている方法を参照して合成することができる。
インキ中の量子ドットの含有量は、所望の蛍光強度に合わせて任意に、固形分中、0.01%〜90%の範囲に任意に選択することができる。下限以下では、十分な強度の蛍光が得られず、上限以上の濃度では、インキが被着物に付着することができない。
インキ中の量子ドットは、赤色と緑色のように、複数の発光ピークを得るために、量子ドットを混合して用いることもでき、その比率は合計で上記のインキ中の含有率の範囲で、自由に選択することができる。
<バインダー樹脂>
本発明で用いられるバインダー樹脂は、シクロオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする。効果メカニズムは明らかになっていないが、シクロオレフィン樹脂に量子ドットを含有させることにより酸素や水蒸気をバリアする効果が作用した結果と推定している。また、印刷物の形状が安定しているのは、オレフィン系の樹脂の中で、環状構造を持つことにより樹脂が強直であることは関係していると推定している。
シクロオレフィン系樹脂は、シクロペンテンを部分構造に有するモノマー由来の環状構造を有する樹脂であることが好ましい。シクロペンテンを部分構造に有するモノマーの環状構造として、シクロペンテン、2−ノルボルネン、テトラシクロ[6.2.1.1(3,6).0(2,7)]ドデカ-4-エンがあげられ、これらの環状構造が有していても良い置換基として、アルキル基、エステル基、エーテル基、ケトン基があげられる。
モノマー構造例を挙げる。シクロペンテン、2−ノルボルネン、テトラシクロ[6.2.1.1(3,6).0(2,7)]ドデカ-4-エン、1-メチルジシクロペンタジエン、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸 tert-ブチル、酢酸5-ノルボルネン-2-イル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-アセチル-2-ノルボルネンなどがあげられる。
シクロオレフィン系樹脂は、シクロペンテンを部分構造に有する1種または複数種のモノマーからなっていてもよく、他のオレフィン系モノマーを含んでいても良い。他のオレフィン系モノマーとしては、二重結合を有すればどのような化合物でも構わない。他のオレフィン系モノマーの炭化水素系モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、4-tert-ブチルスチレン、ブチルビニルエーテルなどがあげられる。
シクロオレフィン系樹脂は、変色の可能性を避ける目的で水添されていても良い。水添は、Ni、Pd、Ruなどの担持型不均一触媒、あるいは、Ti、Co、Niなどの遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物などからなるチーグラー型触媒、Ru錯体、Ru錯体などの均一触媒を用いて、シクロヘキサンなどの溶媒中で室温〜250℃の温度で、常圧〜10Mpaの圧力化で行うことができる。
バインダー樹脂は、所望の蛍光強度により、固形分中で10〜99.9%の範囲で選択することができる。下限以下では、インキが十分に基材上で、膜形成することが困難で、上限以上では、十分な蛍光強度を得ることができない。
バインダー樹脂は、印刷したインキ膜の耐性やレベリング性を目的として、シクロオレフィン系樹脂以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。含有してもよい樹脂として、直鎖オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂およびシルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂などを挙げることができる。
シクロオレフィン系樹脂以外の樹脂を用いる場合には、バインダー樹脂中0〜50%の範囲で含有することが好ましい。
<溶剤>
本発明の溶剤は、常圧における沸点が120℃以上の溶剤を含むことを特徴とする。常圧における沸点が120℃以上の溶剤としては、量子ドット、シクロオレフィン系樹脂の溶解度により適時選択することができる。
インクジェット法で印刷するために、吐出ヘッドでの乾燥を防ぐために、常圧における沸点が120℃以上の溶剤である必要がある。常圧における沸点が120℃以上の溶剤の例を挙げる。1,4-ブタンジオール(228℃)、1,3-ブタンジオール(208℃)、2-エチル-1-ヘキサノール(185℃)、ベンジルアルコール(205℃)、ジイソブチルケトン(168℃)、シクロヘキサノン(156℃)、ジアセトンアルコール(168℃)、酢酸ブチル(121℃)、酢酸メトキシブチル(171℃)、酢酸セロソルブ(156℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃)、酢酸アミル(130℃)、乳酸メチル(145℃)
乳酸エチル(154℃)、乳酸ブチル(188℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(145℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(125℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(134℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、エチレングリコール(197℃)、プロピレングリコール(187℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)、メトキシメチルブタノール(173℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(121℃)、パークロロエチレン(121℃)、ジクロロベンゼン(180℃)、N-メチル-2-ピロリドン(202℃)、ジメチルホルムアミド(153℃)、3-エトキシプロピオン酸エチル(170℃)、γ―ブチロラクトン(203℃)、ジメチルスルホキシシド(189℃)などがあげられる。
溶解性から炭化水素系の常圧における沸点が120℃以上の溶剤が好ましく、特に芳香族炭化水素系の常圧における沸点が120℃以上の溶剤は好ましい。
常圧における沸点が120℃以上の炭化水素系溶剤としては、オクタン(125℃)、デカン(174℃)、1−デセン(171℃)、デカヒドロナフタレン(191℃)、ブチルシクロヘキサン(180℃)、2,3,−ジメチルヘプタン(140℃)などがあげられる。
常圧における沸点が120℃以上の芳香族炭化水素系溶剤としては、キシレン(138℃)、メシチレン(164℃)、メチルナフタレン(245℃)、tert−ブチルベンゼン(168℃)、n−ブチルベンゼン(183℃)等があげられる。
本発明のインキは、沸点が120℃未満の溶剤も含有することができる。含有する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、イソプロピルエーテル)、エチレングリコールジメチルエーテル、塩化メチレン、トリクロロエチレン、フルオロカーボン、ブロモプロパン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、1,3-ジオキソランなどを挙げることができる。
沸点が120℃未満の溶剤は、揮発分中0〜60%の範囲内で混合することが好ましい。これ以上の含有率では、インキの乾燥が早くなり、インクジェットの吐出が困難になる。
本発明のインキには、表面張力を調整し印刷基材上でのインキの濡れ性を確保する目的で、界面活性剤を添加してもよい。本発明では、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性の何れの界面活性剤も用いる事が可能である。
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪酸アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコールなどが挙げられる。
界面活性剤のなかでも、印刷基材への濡れ性を向上させるためにも、表面張力調整剤を用いる事が好ましく、具体的には、アセチレンジオール系、シリコン系、アクリル系、フッ素系が好ましい。上記の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のインキは可塑剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤等の種々の添加剤も使用することができる。
<インクジェットインキの粘度>
本発明のインキの粘度は、25℃における粘度が3〜50mPa・sの範囲である。また、インクジェットインキの吐出性の観点から、5〜30mPa・sの範囲であることが好ましく、7〜20mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。なお、粘度は、ずり速度100(1/s)における粘度である。
<インクジェット印刷方式>
本発明に用いるインクジェット印刷方式として、記録媒体に対しインクジェットインキを1回だけ吐出して記録するシングルパス方式、及び、記録媒体の最大記録幅の間を、記録媒体の搬送方向と直行する方向に短尺のシャトルヘッドを往復走査させながら記録を行うシリアル型方式の何れを採用しても良い。またインクジェット記録装置としては、インクジェットインキを吐出するインクジェットヘッド(インク吐出手段)と、インクジェットヘッドから吐出されたインキを乾燥させる乾燥工程を備える必要がある。インクジェットヘッドからインキが吐出されると、吐出されたインキは印刷基材上に着弾し画像が記録され、画像は印刷基材が搬送されるに従い、乾燥装置内に搬送され、乾燥処理が行われる。
インクジェット法には特に制限は無く、公知の方法、例えば静電誘引力を利用してインキを吐出させる電荷制御方法、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインキに照射して放射圧を利用しインキを吐出させる音響インクジェット方式、及びインキを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等の何れであっても良い。
またインクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニアス方式でも構わない。さらに吐出法式としては、電気‐機械変換方式(例:シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアモード型、シェアードウォール型等)、電気‐熱変換方式(例:サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例:電解制御型、スリットジェット型等)、及び放電方式(例:スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げる事ができるが、何れの吐出方式を用いても構わない。なお、インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する事ができる。
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、乾燥負荷軽減効果が大きく、画像品質の向上という点でも、0.2〜20ピコリットル(pL)が好ましく、1〜15ピコリットル(pL)がより好ましい。」
<電界発光素子>
本発明のインクジェットインキを用いて形成された発光層を有する電界発光素子について詳細に説明する。
電界発光素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から構成されるが、ここで、一層型電界発光素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型電界発光素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。また、発光層と陽極との間で発光層に隣接して存在し、発光層と陽極、又は発光層と、正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ層であるインターレイヤー層を挿入しても良い。したがって、多層型電界発光素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極(9)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/陰極、(10)陽極/正孔注入層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、(11)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、等の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
また、上述した各層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良く、いくつかの層が繰り返し積層されていても良い。そのような例として、近年、光取り出し効率の向上を目的に、上述の多層型電界発光素子の一部の層を多層化する「マルチ・フォトン・エミッション」と呼ばれる素子構成が提案されている。これは例えば、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/電子輸送性発光層/電子注入層/電荷発生層/発光ユニット/陰極から構成される電界発光素子に於いて、電荷発生層と発光ユニットの部分を複数層積層するといった方法が挙げられる。
正孔注入層には、発光層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。本発明の電界発光素子用材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも好適に使用することができる。これら正孔注入材料や正孔輸送材料は、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい必要がある。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−6cm/V・秒であるものが好ましい。本発明の電界発光素子用材料と混合して使用することができる、他の正孔注入材料および正孔輸送材料としては、上記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、電界発光素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
このような正孔注入材料や正孔輸送材料としては、具体的には、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等をあげることができる。
正孔注入材料や正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965号公報)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)を用いることもできる。例えば、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等や、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等をあげることができる。また、正孔注入材料として銅フタロシアニンや水素フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体も挙げられる。さらに、その他、芳香族ジメチリデン系化合物、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料や正孔輸送材料として使用することができる。
さらに、正孔注入層に使用できる材料としては、酸化モリブデン(MnO)、酸化バナジウム(VO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化銅(CuO)、酸化タングステン(WO)、酸化イリジウム(IrO)などの無機酸化物もあげられる。
芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−ビフェニリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン等があげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも使用することができる。
正孔注入材料として、特に好ましい例を表2に示す。
また、本発明の化合物(電界発光素子用材料)と共に用いることが出来る正孔輸送材料としては、下記表3に示す化合物も挙げられる。
上に説明した正孔注入層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化する。正孔注入層の膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
インターレイヤー層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の芳香族アミンを含むポリマーが例示される。また、インターレイヤー層の成膜方法は、高分子量の材料を用いる場合には、溶液からの成膜による方法が例示される。
溶液からのインターレイヤー層の成膜には、公知の湿式成膜法、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
インターレイヤー層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。
一方、電子注入層には、発光層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにドープした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行)や、第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例として挙げられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
上記電子注入材料の中で好ましいものとしては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。本発明に使用可能な好ましい金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体が好適である。8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物が挙げられる。
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert− ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいオキサジアゾール誘導体の具体例を表4に示す。
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいトリアゾール誘導体の具体例を表5に示す。表5中、Phは、フェニル基を表わす。
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいシロール誘導体としての具体例を、表6に示す。
さらに、正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを防ぎ、薄膜形成性に優れた層を形成できる正孔阻止材料が用いられる。そのような正孔阻止材料の例としては、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物や、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。
本発明の電界発光素子の発光層としては、以下の機能を併せ持つものが好適である。
注入機能;電界印加時に陽極または正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極または電子注入層より電子を注入することができる機能
輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさには、違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよい。
本発明のインクジェットインキを用いて形成された発光層は好適に用いることが出来る。本発明のインクジェットインキを用いて形成された発光層を得るために、本発明のインクジェットインキに他の発光性の化合物と組み合わせて発光層を形成することができる。
本発明のインクジェットインキを用いて形成された発光層をえるために、本発明のインクジェットインキに添加しても良い、青色から緑色の発光を示す化合物としては、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を用いることができる。これら化合物の具体例としては、例えば特開昭59−194393号公報に開示されている化合物をあげることができる。さらに他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971)628〜637頁および640頁に列挙されている。
前記金属キレート化オキシノイド化合物としては、例えば、特開昭63−295695号公報に開示されている化合物を用いることができる。その代表例としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体や、ジリチウムエピントリジオン等が好適な化合物としてあげることができる。
また、前記スチリルベンゼン系化合物としては、例えば、欧州特許第0319881号明細書や欧州特許第0373582号明細書に開示されているものを用いることができる。そして、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も、発光層の材料として用いることができる。このほか、欧州特許第0387715号明細書に開示されているポリフェニル系化合物も、本発明のインクジェットインキに加えても良い。
さらに、上述した蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物およびスチリルベンゼン系化合物等以外に、例えば12−フタロペリノン(J. Appl. Phys.,第27巻,L713(1988年))、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(以上Appl. Phys. Lett.,第56巻,L799(1990年))、ナフタルイミド誘導体(特開平2−305886号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報、または第38回応用物理学関係連合講演会で浜田らによって開示されたオキサジアゾール誘導体)、アルダジン誘導体(特開平2−220393号公報)、ピラジリン誘導体(特開平2−220394号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ピロロピロール誘導体(特開平2−296891号公報)、スチリルアミン誘導体(Appl. Phys. Lett., 第56巻,L799(1990年)、クマリン系化合物(特開平2−191694号公報)、国際特許公報WO90/13148やAppl. Phys. Lett.,vol58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物、9,9’,10,10’−テトラフェニル−2,2’−ビアントラセン、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体、ポリフルオレン誘導体やそれら共重合体等、例えば、下記一般式[3]〜一般式[5]の構造をもつものが挙げられる。
一般式[3]
(式中、Rx1およびRX2は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n1は、3〜100の整数を表す。)
一般式[4]
(式中、Rx3およびRX4は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n2およびn3は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。)
一般式[5]
(式中、RX5およびRX6は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n4およびn5は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。Phはフェニル基を表す。)
また、特開平5−258862号公報等に記載されている一般式(Rs−Q)−Al−O−L3(式中、L3はフェニル部分を含んでなる炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−L3はフェノラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子を示し、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回り結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を示す〕で表される化合物も挙げられる。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
白色の発光を得る場合の発光層としては特に制限はないが、下記のものを用いることができる。電界発光積層構造体の各層のエネルギー準位を規定し、トンネル注入を利用して発光させるもの(欧州特許第0390551号公報)。
同じくトンネル注入を利用する素子で実施例として白色発光素子が記載されているもの(特開平3−230584号公報)。二層構造の発光層が記載されているもの(特開平2−220390号公報および特開平2−216790号公報)。発光層を複数に分割してそれぞれ発光波長の異なる材料で構成されたもの(特開平4−51491号公報)。青色発光体(蛍光ピーク380〜480nm)と緑色発光体(480〜580nm)とを積層させ、さらに赤色蛍光体を含有させた構成のもの(特開平6−207170号公報)。青色発光層が青色蛍光色素を含有し、緑色発光層が赤色蛍光色素を含有した領域を有し、さらに緑色蛍光体を含有する構成のもの(特開平7−142169号公報)。
さらに、本発明の電界発光素子の陽極に使用される材料は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SnO、ZnO等の導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下としてあるものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
また、本発明の電界発光素子の陰極に使用される材料は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
本発明の電界発光素子を作製する方法については、上記の材料および方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、および必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で電界発光素子を作製することもできる。
この電界発光素子は、透光性の基板上に作製する。この透光性基板は電界発光素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上、好ましくは90%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板が挙げられる。
本発明の電界発光素子の発光層を除く各層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかの方法を適用することができる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているLITI(Laser Induced Thermal Imaging、レーザー熱転写)法や、印刷(オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷)、インクジェット等の方法を適用することもできる。
有機層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。また特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機層を形成することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚が厚すぎると一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要となり効率が悪くなり、逆に膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生し、電界を印加しても充分な発光輝度が得にくくなる。したがって、各層の膜厚は、1nmから1μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がより好ましい。
また、電界発光素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
本発明の電界発光素子に印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
本発明の電界発光素子の駆動方法は、パッシブマトリクス法のみならず、アクティブマトリックス法での駆動も可能である。また、本発明の電界発光素子から光を取り出す方法としては、陽極側から光を取り出すボトム・エミッションという方法のみならず、陰極側から光を取り出すトップ・エミッションという方法にも適用可能である。これらの方法や技術は、城戸淳二著、「電界発光のすべて」、日本実業出版社(2003年発行)に記載されている。
本発明の電界発光素子のフルカラー化方式の主な方式としては、3色塗り分け方式、色変換方式、カラーフィルター方式が挙げられる。3色塗り分け方式では、シャドウマスクを使った蒸着法や、インクジェット法や印刷法が挙げられる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているレーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI法ともいわれる)も用いることができる。色変換方式では、青色発光の発光層を使って、蛍光色素を分散した色変換(CCM)層を通して、青色より長波長の緑色と赤色に変換する方法である。カラーフィルター方式では、白色発光の電界発光素子を使って、液晶用カラーフィルターを通して3原色の光を取り出す方法であるが、これら3原色に加えて、一部白色光をそのまま取り出して発光に利用することで、素子全体の発光効率をあげることもできる。
さらに、本発明の電界発光素子は、マイクロキャビティ構造を採用しても構わない。これは、電界発光素子は、発光層が陽極と陰極との間に挟持された構造であり、発光した光は陽極と陰極との間で多重干渉を生じるが、陽極及び陰極の反射率、透過率などの光学的な特性と、これらに挟持された有機層の膜厚とを適当に選ぶことにより、多重干渉効果を積極的に利用し、素子より取り出される発光波長を制御するという技術である。これにより、発光色度を改善することも可能となる。この多重干渉効果のメカニズムについては、J.Yamada等によるAM−LCD Digest of Technical Papers,OD−2,p.77〜80(2002)に記載されている。
以上述べたように、本発明のインクジェットインキを用いて形成された発光層を用いた電界発光素子は、低い駆動電圧で長時間の発光を得ることが可能である。故に、本電界発光素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや各種の平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」および「%」は「質量部」および「質量%」を表す。
<樹脂溶液1の製造方法>
ノルボルネン200部、シクロペンテン50部、1−ヘキセン180部およびトルエン750部を、窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、トリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部、tert−ブタノール/メタノール/W=0.35/0.3/1(モル比)になるように調整したWCl溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を加え、80℃で3時間加熱攪拌して、開環重合反応、水素添加反応を行い、次いでトリメチルベンゼンを用いてNV(不揮発成分の略、以下同じ)10%に調製して樹脂溶液1を得た。
<樹脂溶液2の製造方法>
(シクロオレフィンエチレン共重合)
TOPAS6015(Ticona社製、ノルボルネンとエチレンの付加共重合体)をトルエンにNV10%となるように溶解した。
<樹脂溶液3の製造方法>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン250部、1−ヘキセン180部およびトルエン750部を、窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、トリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部、tert−ブタノール/メタノール/W=0.35/0.3/1(モル比)になるように調整したWCl溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を加え、80℃で3時間加熱攪拌して、開環重合反応、水素添加反応を行い、次いでトルエンを用いてNVVを10%に調製して樹脂溶液3を得た。
<樹脂溶液4の製造方法>
パラフィンワックス155(日本精蝋社製、環状構造を含まないオレフィン)をデカンにNV10%となるように溶解した。
<樹脂溶液5の製造方法>
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にキシレン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート18.0部、メタクリル酸メチル12.0部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにキシレンを添加して樹脂溶液5を調製した。
<樹脂溶液6の調製方法>
ブチラール樹脂エスレックBL-S(積水化学工業社製)をNV10%となるようにトルエンに溶解した。
<樹脂溶液7の調製方法>
ノルボルネン200部、シクロペンテン50部、1−ヘキセン180部およびトルエン750部を、窒素置換した反応容器に仕込み、60℃に加熱した。これに、トリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部、tert−ブタノール/メタノール/W=0.35/0.3/1(モル比)になるように調整したWCl溶液(濃度0.05モル/l)3.7部を加え、80℃で3時間加熱攪拌して、開環重合反応、水素添加反応を行い、次いでトルエンを用いてNV10%に調製して樹脂溶液7を得た。
<量子ドット分散液1の合成>
無水酢酸亜鉛0.55部、ドデカンチオール7.0部、オレイルアミン5.0部を加熱溶解し添加液を作成した。
塩化インジウム0.22部、オクチルアミン8.25部を反応容器に入れ、窒素バブリングを行いながら、165℃に加熱した。塩化インジウムが溶解した後、ジエチルアミノホスフィン0.86部を短時間で注入し、20分間165℃に制御した。その後、急冷し、40℃に冷却した。上記添加液を注入し、240℃2時間加熱した後に、室温まで放冷した。放冷後、ヘキサンとエタノールを用いて再沈殿法で精製を行った。トルエンを用いて、固形分濃度10%に調製し、炭素数12の炭化水素基を有する有機物であるドデカンチオールで表面処理された量子ドット分散液1を得た。この量子ドットの量子収率は0.29であった。
<量子ドット分散液2の調整>
量子ドット分散液1を、トルエンを用いて固形分濃度1%に希釈した。同量の5%ヘキサンチールのトルエン溶液を添加し、12時間撹拌した。ヘキサンとエタノールを用いて再沈殿法で精製を行った。トリメチルベンゼンを用いて、固形分濃度10%に調製し、炭素数6の炭化水素基を有する有機物であるヘキサンチオールで表面処理された量子ドット分散液2を得た。この量子ドットの量子収率は0.25であった。
<インクジェットインキの作成>
(実施例1〜8、比較例1〜6)
表1に示したインキ組成にて、密閉できる容器に、量子ドット溶液、樹脂溶液、溶剤の順番で計量し、その後、密閉して、3分間、振とうしてインクジェットインキを作成した。
なお、表1中、トリメチルベンゼンとは、1,3,5−トリメチルベンゼンを表す。
<評価方法>
以下の評価方法によって得られた評価結果を表1に示す。
(粘度測定)
25℃にて、振動式粘度計ビスコメイトVM−10A−L(SEKONIC社製)を用いて、測定した。
(インキ外観検査)
目視にて、インキ外観濁りなく透明な状態を〇、濁りを△、析出物が生じたものを×とした。△〜×ではインキを作成することができない。
(IJ吐出性検査、印刷物外観検査)
下記のインクジェット吐出条件で、インクジェット印刷を行い、IJ吐出性検査、印刷物外観検査を行った。
インクジェット吐出性検査は、インクジェット吐出性印刷パターン通りに吐出できたものを〇、ノズルつまり等異常があったものを×とした。×では印刷することができない。
印刷物外観検査は、印刷物外観印字パターン通りの画像を〇、かすれが見られる場合を〇△、歪んだ画像を△、印刷パターンの形跡なく付着した状態を×とした。△〜×は不適である。

・インクジェット吐出試験条件
印刷機DimatixMaterialsPrinter
カートリッジ10DimatixMaterialsCartriges、10pL
印刷パターン1mm間隔の格子模様
基板丸カバーガラス・松浪ガラス工業製
基板温度30℃
印刷後乾燥40℃20分
(量子収率測定)
測定機絶対PL量子収率測定装置C9920−02
励起波長400nm積分範囲375−425nm
蛍光積分範囲430−800nm
QY維持率は印刷初期のQYを1として、4週間後の比率を示した。
なお、QYとは量子収率の略語である。
本発明のインクジェットインキを用いると、インクジェット印刷可能であり、量子収率も高く印刷できることが確認された。
<電界発光素子の作成>
以下に記載のとおり、電界発光素子を作成した。実施例においては、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。蒸着(真空蒸着)は10−6Torrの真空中にて、基板の加熱や冷却といった温度制御はしない条件下で行った。
インクジェット吐出試験条件
印刷機DimatixMaterialsPrinter
カートリッジ10DimatixMaterialsCartriges、10pL
印刷パターン ベタ(2mm×2mmの素子が合計6つ形成される1.2cm×1.2cm範囲の面積)
基板温度30℃
印刷後乾燥40℃20分
また、素子の発光特性は、発光素子面積2mm×2mmの電界発光素子を用いて特性を測定した。
(実施例9)
密閉できる容器に、QD分散液1を1重量部、樹脂溶液1を1重量部、次いで、溶剤としてトリメチルベンゼンを30重量部の順番で計量し、その後、密閉して、3分間、浸透してインクジェットインキを作成した。
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Heraeus社製CLEVIOUS(登録商標) P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、110℃にて20分間乾燥させて膜厚35nmの正孔注入層を得た。次いで、ポリ(N―ビニルカルバゾール)を、1.0重量%の濃度でモノクロロベンゼンに溶解させ、スピンコート法で製膜し110℃にて20分間乾燥させて、35nmの膜厚の正孔輸送層を形成した。その上に、作成したインクジェットインキを用い、上述の条件でインクジェット吐出性印刷で20nmの膜厚の発光層を形成したその上に、Avantama社製 酸化亜鉛のイソプロパノール分散液 N−10を、スピンコート法で製膜し、80nmの電子輸送層を形成した。最後に、アルミニウム(Al)を200nm蒸着して電極を形成し、電界発光素子を得た。
この素子は、8Vにて外部量子効率2.8%、発光輝度18000(cd/m2)の赤色発光を示し、その発光スペクトルのピーク波長は563nmであり、半値全幅は61nmであった。この素子を発光輝度1000(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命は1000時間以上であった。また、電流密度10(mA/cm)で駆動させた時の発光効率は5.9(cd/A)、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の相対輝度(=(100時間後の輝度)/(初期輝度))は0.90であった。

Claims (8)

  1. 量子ドット、バインダー樹脂、および溶剤を含有するインクジェットインキであって、
    バインダー樹脂が、シクロオレフィン系樹脂を含み、
    溶剤が、常圧における沸点が120℃以上である溶剤を含み、
    25℃における粘度が3〜50mPa・sの範囲であることを特徴とするインクジェットインキ。
  2. シクロオレフィン系樹脂が、シクロペンテンを部分構造に有するモノマーに由来する構造単位を含む樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインキ。
  3. シクロオレフィン系樹脂が、水添物であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットインキ。
  4. 溶剤が炭化水素系溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインキ。
  5. 溶剤が芳香族炭化水素系溶剤であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットインキ。
  6. 量子ドットの表面が炭素数8以上のアルキル基を部分構造として有する有機物で処理されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインキ。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインキを用いて形成された印刷物。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインキを用いて形成された発光層を有する電界発光素子。



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